自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください
正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ
「魔女」
おとなは、みんな嘘ばっか。うそつき、みんな嘘つき、だからもう
「だれも、しんじない。あおい、いがい、もうだれも」
頭から血を流す妹を抱きしめながら、そっと頬を寄せる。誰も助けが来ない業火の中、片割れを背中に抱え割れた硝子の破片に映った自分を踏みつけた。
訓練終わり、汗を拭い湯浴みを済ませたあとお茶を啜りながらにこにこと周りを見渡す。ここも随分と人が増えたものだ。子どもから大人まで、昔は二人だけだった訓練も今では大勢ですることも多くなった。随分と日が長くなった。そんなことを考えて目を瞑る。今日は朝から嫌にあの日のことを思い出す。
昔から、私たちは一族に疎まれていた。一つは、双子で産まれたからという理由。二つは、二人が揃うといつも妖達が寄ってくるから。三つは、二人とも女であったから。
父は私たちに目を向けず義務だけ果たすようにといい姿を現さない。母は、忌み子達を産んだから、そんな理由で安倍の権威を失墜しようとする者たちに私刑を下された。
そんな中、味方となってくれる大人が一人だけいた。棗、彼はそう名乗り、なにか困ったことがあれば私たちに手を貸し、その変わりに私たちが妖達を退治した。人見知りで気が弱い葵も彼には心を許していた、それは私も同じだった。
夏の暑い日だった。今日は朝から家が騒がしく、陽炎が燃えていた。二人で手を繋いで書物庫に籠っていると、突然父が現れ私たちの両手を力強く引っ張り外へと連れ出した。それを私たちをようやく見てくれた、必要としてくれたと勘違いし、二人ではしゃいでいると突然頬を叩かれる。
「なにを浮かれている。同じ顔で気味が悪い。この騒動を片付けろ。命を落としても」
そういい、父は去っていった。なにを彼に期待していたのだろう。涙を堪えながら、二人で現れた敵を倒して、倒して、倒して、倒して、どれくらいたっただろうか。お互い体力も、霊力も限界を尽きた。六歳の二人が闘ったところで、鷹が知れている。そんな余計な考えが頭によぎった時だった。
今までよりも大きい妖が現れた。
幼い私たちはそれが今回の騒動の原因だなんて気付きもしなかった。葵の方をみて油断をしていた、その時だった。
「おねえちゃん!!!」
「…っ、あお、い?、あお…っ!」
敵の攻撃を庇った妹が頭から大量の血を流し倒れていた。う、そ…うそ、死んじゃいや、嫌だ。
「あれ、まだ生きてたの?てっきり死んだかと」
「なつめさん、あおい、あおいが!」
「分かってるよ、死にそうなんでしょ。でもね、こっちも精一杯なんだ、強く生きなよ、じゃないとこの世界では生き残れないんだからさ、利用されて終わりだよ」
「…え、あ…いっ、いや、いやいやいやいやいやいやぁぁぁぁ!」
そこからのことは覚えていない、気付いたらあの妖はこの手で潰していたらしい。周りには大量の瓦礫とボロボロになった刀があった。周りは業火に焼かれており、妹の息も弱まっていた。
強くなければ、意味がない。
弱いものは、淘汰される。
その考えは良くも悪くも私たちを変えた。
後から確認したが、棗はそもそも私たちをよく思っていなかったらしい。そして彼はあの騒動で命を落とした。笑える話だ。もしかしたら私が手にかけたのしれないが、記憶にないのだからなんとも言えない。
妖達が寄り付く体質も、あの後術式と性格ごと入れ換えたあの日以来収まった。
「そんなことも、つい最近のことのように思えましたのに…。それにしてもなにも言わずに背後に立つなんて、御前でなければ許されませんわ」
思い出した苦い感情にぐっと蓋をして、いつものように優しく笑顔を携える。これもあの後身に付いた生き残りの術だ。
「なにもせずとも、流れるものなのだから許しておくれ」
思考を覗かれるのは慣れないが、そういうものだから仕方ない。どうせその他の情報に流される。
「ふふ、今師範や御前に向けている信頼は本当です。ですから心配せずとも…これで、裏切られたら、それこそ半狂乱の魔女にでもなるやもしれませんけれど」
「そんなことは起こり得ないはずだ、そのように目を配ってるのだから」
「私も、そうならないことを強く望みますわ」
そっと視線を下げた先の湯呑みに映った自分の顔はあの日は違い、少しの笑みを携えていた。