それはあまりにも唐突に起こった出来事だった。
誰しもが普段と同じ日常を過ごし、明日も同様の日々を送るものであると思い、眠りについた……
だが、目を覚ましたのはごく一部の者だけだった。
里も、山も、森も……
人妖も、動物も、植物さえもが眠りについたまま目覚めることがなく、幻想郷全体を深く冥い静寂が支配していた……
これは明確な"異変"だ。
"それ"は深き夢の世界から現れる悪夢の支配者。
微睡みの中に漂う無垢な精神を貪り、安息を求める者達に恐怖を与えるおぞましき幻魔の軍勢『エファ・アルティス』
現世を救うために悪夢を支配する幻魔との戦いが幕を開ける……
>>2 時系列と注意
>>3 異変側の勢力
【時系列と注意】
物語の舞台となる幻想郷は春雪異変が終わり、妖夢々のエクストラクリア後から数日後の時系列となっています!オリジナル要素が強めになると思いますので、東方projectについて知らない方でも参加しやすくなっていると思います!
また、「始幻想」と「夜想譚」と地続きの世界線となっています。
※キャラ崩壊あり
※死亡や再起不能になる可能性あり
※シリアス多め
※主は心情ロルがかなり苦手
※ロルは2行以上お願いします
※オリキャラは紫や霊夢以上になるとパワーバランスや世界観、敵対者の強さの調整が困難になるため禁止
以上が苦手な方や無理だと言う方はそっ閉じして下さると幸いです。
【エファ・アルティス】
幻魔の女王
「イライザ・インサーニア」
が束ねる幻魔(悪夢の化身)によって構成された一大勢力であり、人々の悪夢の数だけ存在する上に、一部の上位幻魔(幻魔の中でも強い力を持った者)は実体を持って現世に現れ、現世にも直接干渉する事が出来る。
幻想郷全域にかけた『超広域永続昏睡幻術』によってあらゆる存在が昏睡し、自力では目覚めることが出来なくなった世界の中で悪夢の世界へ乗り込む方法を探し、イライザを倒すことが目的となります。
【こんばんは!霊夢さんで参加希望です!】
5:◆3.:2021/03/29(月) 21:27勿論OKです!!
6:悪夢の始まり◆3.:2021/03/29(月) 22:28 【幻想郷全域】
春雪異変が解決し、紫と藍の二人との戦いも、異変解決後の宴も終わり、冥界と現世の境界も修復され、全ての騒動が収まり夜が訪れた……
だが、その日の夜は異様なまでの静寂に包まれていた。
思えば、この時から既に"奴ら"は動き始めていたのだろう。
夜が明けた後の幻想郷は何処までも沈黙に支配されており、人や妖だけでなく、鳥や虫すらもその深き眠りについており、誰も話さず、誰の声も聞こえてこない……まるで世界そのものが死滅したかのような不吉さを孕んだ沈黙が続いている……
そんな沈黙と静寂が支配する世界の中、偶然か、それとも必然なのか……ごく一部の者だけが目を覚ます……
・・・・・不気味なくらい静かね・・・・・まぁ、騒がしくなくて助かるっちゃあ助かるけど・・・・・
(恐ろしすぎるくらいに静寂が広がる夜・・・・・
夜が静かなのは寝る分にはいいのだが、博麗の巫女としての本能か、それとも人間という種族に元から備わっている本能か、なんて言えばいいのかはわからないものの、何か胸騒ぎがしていた・・・・・)
【早朝の博麗神社】
???
「おはようございます、霊夢さん。」
夜が明け、本来ならば鳥の囀りや虫のさざめき、妖怪や妖精の喧騒が聞こえてくるはずであるにも関わらず、何の声も聞こえて来ない……それはまるで幻想郷そのものが死滅してしまったかのように……
いや、命の気配ならば普段通りなのだが、まるで活動することを辞めたかのように不気味な静寂が続いている。
そんな異様な状態の中で、更に見たこともない、1m程の大きさの桃色のシャボン玉が浮遊し、霊夢の前に現れ、霊夢に向けて穏やかな声の女性の声で念話を行い語りかける。
博麗の勘ではこの水球がこの異変の元凶の一派ではないと言うことを告げているものの、完全に無関係ではないとも伝える。
・・・・・アンタ、何者・・・・・?
(純粋なシャボン玉ではないのは明白ではあるが、妖怪とも妖精とも違うような感じの、なんとも珍妙なその桃色のシャボン玉に対して、霊夢は何者なのかと問いかける・・・・・
得体の知れない)存在に対して、警戒しながら・・・・・)
???
「私ですか?私は……この"異変"について知る者です。」
シャボン玉では表情も素性もわからない。
念話ではその本心や考えを読み取れない。
だが、辺りの不気味なまでの沈黙の理由について知っていると言うのは本当だろう。
だが、まだ神社から出ていない霊夢は今、幻想郷がどうなっているのかが把握出来ていないと思われるため、その言葉も全て懐疑的なものになっている。
異変かどうか見定めるのは私よ、アンタみたいなぽっと出の得体の知れないシャボン玉が決めることじゃないわ・・・・・
(相手は・・・・・というか、シャボン玉は今の状況を異変と言ってはいるものの、やはり得体の知れないシャボン玉の言うことはそんなにすぐには信用出来ないからなのか、異変かどうか見定めるのは自分の役目であると言葉を返す・・・・・
今幻想郷に異変が起きているのなら、どこかに異変の黒幕がいるはずだが、不自然な程に静かなのはただ単に夜だからなのではとも思えてくる・・・・・
ただ、それにしても静かすぎではあるのだが・・・・・)
???
「そうですか……まあ、いきなりこんな事を言われて戸惑わない者はいませんからね、暫くは消えていましょう。」
《パチンッ》
謎の声は霊夢の言葉に対して軽口を返す訳でもない、否定や反論をする事もなく、拍子抜けする程あっさりと引き下がり、風船が割れるような炸裂音ではなく、気泡が弾けるような小さな音をたてて水球が消え、同時に念話も終了し、辺りには再び静寂が戻る。
魔理沙
「…………………。」
普段ならば元気よく箒またがってやって来る魔理沙が何を思ったのか神社の石段をゆっくりと歩いて登って来ている。気配や遠目に見た姿は別に普段の彼女と何の変わりも無いが、先程の声の主が話していた"異変"と言う単語が言い知れぬ不安感を伴う。
な、何だったの・・・・・今は・・・・・夢・・・・・ではないわよね・・・・・?
(幻想郷という、妖怪や妖精、魔女や不老不死までもがいるこの地においても、なんとも現実味がないというか、今のは現実ではなく夢だったのてはないだろうかと錯覚し始める・・・・・
そして、普段とは違って石段を歩いて登ってくる魔理沙に気づけば「・・・・・あら、魔理沙・・・・・どうしたの?こんな時間に・・・・・」と、さっきのこともあってか、少々警戒しながら聞いてみる・・・・・)
魔理沙
「……………」
【恋符「マスタースパーク」】
魔理沙は霊夢の問いかけに対して言葉を返すこと無く、黙り込んだまま右手に八卦炉を召喚し、そのまま何の躊躇もなく霊夢に向けて彼女の代名詞とも言える金色に輝く巨大な光線…マスタースパークを解き放ち、あまりにも突然かつ殺意に満ちた襲撃を仕掛ける……
普段から弾幕ごっこをしている事はあったものの、今回はごっこ遊びなどではなく、本気で霊夢を消し去ろうとした一撃をいきなり繰り出しており、位置的に霊夢が避けてしまうと神社が破壊されてしまうようになっている。
なっ・・・・・!?
ドゴゴゴゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢はいきなりのことに理解が追いつかないままだが、なんとか防御しようと弾幕を放って魔理沙のマスタースパークを相殺してなんとか食い止める・・・・・
そして「ちょっと!いきなり何すんのよ魔理沙!」と怒鳴り散らす・・・・・)
魔理沙
「……………。」
魔理沙は一切の言葉を口にせず、そのまま追撃としてスペルカードを手に持つ。まるで意識が存在せず、肉体だけが何者かに操られているかのように……
このまま神社の境内で戦いを続けていれば、神社が破壊されるどころか、結界の要となっている神社の周辺にある木々が薙ぎ倒され、焼き払われてしまうだろう。
これじゃあキリがないっ・・・・・!魔理沙!やるんならもっと神社から離れて思いっきりやりましょうよ・・・・・!
(そう言うと霊夢は、人気のない場所へと移動する為に飛び始める・・・・・
今の魔理沙なら、自分についてきて簡単に誘導できると思ったからなのか、森の方へと、それも、森の中でも特に戦うに十分な場所へと飛ぶ・・・・・)
《ゴオッ》
魔理沙との戦闘による神社への被害を避けるために森に向かって飛ぶ霊夢に向けて全長5mもある巨大な氷柱が放たれる……
ちょっ・・・!?移動すらままならないっていうの・・・・・!?
(幸い、避けてそのまま氷柱が地面に落ちても平気なように人気のない場所の上空までこの時点で既に移動していた為、霊夢は間一髪のところで氷柱を避ける・・・・・
にしてもまさか、移動すらままならないほどに追撃をしたけてくるとは思わなかったのか、霊夢は驚きを隠せないでいる・・・・・)
チルノ
「……………………。」
魔理沙からの突然の襲撃に加えて氷柱が迫って来ている事に驚いている霊夢の前に氷柱を放った張本人であるチルノが現れる、チルノの表情は完全な無であり、死んでいるにしては肌色が良く、眠っているにしてはあまりにも生気の感じられない昏睡した状態である事がわかる。
昏睡状態であるにも関わらず、霊夢の前に現れたチルノは両手を広げて自分の周囲に無数の氷の塊を形成し始め、その氷塊から無数の小さな氷弾を霊夢に向けて放ち、空中で撃ち落とそうとする。
くっ・・・・・!
バッ・・・・・!
(避けるぐらいならまだ簡単に出来る・・・・・
だが、魔理沙同様にチルノまで、しかも続け様に襲ってきた・・・・・
この様子だと、恐らくほかの住人達も同じように何者かに操られている状態であるということが容易く想像出来る・・・・・
そう考えると、これはまだ序章に過ぎないとも思える・・・・・)
《ゴオォォォォォォォォ…》
対話による意志疎通は不可能。
前方からはチルノが放つ吹雪のごとき氷弾の暴風が霊夢を呑み込もうとする……まだ魔理沙の姿は見えないものの、前から迫り来る氷の弾幕にも明確な殺意が感じられる。
まったくもう・・・・・!どうなってんのよ・・・・・!!!!!
ゴッ・・・・・!
(霊夢は負けじと弾幕で抵抗しながら、同時に回避もこなしていく・・・・・
しかし、魔理沙に続いてチルノまで殺意全開で襲ってきているのを見ると、操っているであろう黒幕は近くにいるのか、それとも遠隔操作のような感じで操っているのか、霊夢は辺りを見渡しながら怪しい人物の影はないかどうかを伺い始める・・・・・)
【恋符「マスタースパーク」】
《ゴオォォォォォォォォ》
少し意識を周りに向けると周囲に……いや、幻想郷全域を何か得たいの知れない"何か"が包み込んでいるようなものが感じられる。
眼前から迫るチルノの弾幕を避け、或いは相殺している中、後方から巨大な金色の光線が迫り、目の前のチルノに気を取られているであろう霊夢に対して不意打ちをするようにして破壊エネルギーの奔流に呑み込もうとする。
少しは大人しくしなさいよっ!!!!!
(操られているからか、親しい間柄でも容赦なく攻撃してくる・・・・・
だが、もっと言えば、攻撃している側の本当の意思ではないということ・・・・・
攻撃を回避しながら、少しずつ距離を縮めながら魔理沙に近づいてゆく・・・・・
これで少しでも隙を突ければ・・・・・)
チルノ
「………………。」
【凍符「パーフェクトフリーズ」】
眼前から迫る氷弾、後方からの金色に輝く光線の二つを掻い潜り、チルノに向けてではなく、この場において火力が最も高い魔理沙に向かう霊夢に対して背中を向けられた事で攻撃チャンスと判断したのか、チルノは両手に冷気を集束させて冷凍光線を放ち、霊夢の体を凍り付かせようとする。
そうやすやすと凍るわけないでしょーがっ!!!!!
(博麗の巫女として、常人よりも警戒しながらの戦闘は得意だ・・・・・
チルノや魔理沙の攻撃は当たれば脅威だが、避けてしまえばそうでもない・・・・・
チルノの攻撃の時は魔理沙に、魔理沙の攻撃の時はチルノに警戒心を強めながら、それでもギリギリの紙一重で攻撃を避けてゆく・・・・・)
【苛烈なる挟撃】
前方には魔理沙の放つ星型光弾やレーザーによる弾幕、後方からは当たれば体が凍り付く氷弾の弾幕と言うように種類の異なる多彩な弾幕による挟撃が霊夢を襲う。
だが、挟撃としての弾幕の性質上、チルノと魔理沙は互いの放つ弾幕を避ける必要が出て来ており、霊夢への攻撃を仕掛けると同時に弾幕を避けることも行っている。もし、上手く二人の弾幕を利用して同士討ちさせるような形に出来れば……
《とりあえず、この状況を打破しなければ何も進まないわね・・・・・》
(そう思うと、霊夢は魔理沙とチルノの攻撃を逆に利用しようと考え始める・・・・・
どうにかして同士討ちさせることで隙を突ければ、この異変の解決にも近づく・・・・・
霊夢は早速、ただ自分を攻撃しようとしてくる二人の攻撃を、上手いこと誘導しようと飛行し始める・・・・・)
魔理沙&チルノ
「………………。」
魔理沙とチルノは意識を失っているため目を閉じているものの、霊夢の動きに合わせて顔を動かし、霊夢を真っ直ぐに追尾しながら弾幕を放ち続ける。
少しでも気を緩めれば魔理沙の放つレーザーによって体を撃ち抜かれるか、チルノの放つ氷弾によって凍り付かされてしまうと言う危機的状態となってしまっている。些細な判断ミスは死へと直結する……
生と死が紙一重となる異変……幻想郷の守護者は常に試練に見舞われている。
《笑えない状況ね・・・・・》
(この攻撃を相殺させるにしても、一歩間違えれば取り返しのつかないことになる・・・・・
チルノはまだ妖精だから魔理沙の攻撃や自分の攻撃に巻き込まれたとしても、まだ平気だろう・・・・・
問題は魔理沙、攻撃を相殺させようとして魔理沙が攻撃に巻き込まれてしまったら、魔理沙自身の攻撃もそうだが、チルノの攻撃は特に命を落とすことにも繋がりかねない・・・・・)
チルノ
「………………。」
【氷符「アイシクルフォール」】
魔理沙
「………………。」
【魔符「スターダストレヴァリエ」】
操られている二人の事を思い反撃や攻撃の誘導について悩む霊夢とは対照的に自分自身の意識を奪われ、その力を利用されている二人は躊躇い無く追撃を行う。
チルノは両手を振り上げて霊夢の頭上に無数の氷柱を形成して雨のように降らせ、魔理沙は両手を交差させて少し力を溜めた後に勢いよく両手を広げて巨大な星形の弾幕を広範囲に解き放ち、頭上からと正面からの二方向からの猛攻を繰り出す。
もし、チルノの放つ冷気系統の技を上手く魔理沙に当てることが出来れば魔理沙を一時的に凍らせて動きを封じることが出来るかもしれない。
・・・・・こうなったら・・・・・イチかバチか・・・・・!
(霊夢は、このままでは本当にやられてしまうと感じたのか、こうなったら一時的に魔理沙をチルノの攻撃を利用して凍らせて動きを止めてチルノとの一対一に持ち込むしかないと判断して、魔理沙の攻撃をギリギリで避けながらチルノの攻撃を誘導し始める・・・・・
下手をすれば、自分が命を落とす可能性もあるかもしれないが、やるしかない・・・・・)
《ドドドドドドドドドドドドドド》
雨のように頭上から降り注ぐ氷柱と視界を奪うように放たれる巨大な星形光弾の弾幕が霊夢を仕留めようとするが、そのどれもが本来の彼女達のものに比べると密度や精度が甘く、二人を操っている黒幕はスペルカードをただただ相手を打ち倒すためだけの武器としてしか使っていないのだと言うことがわかる。
そんな中、チルノは両手を合わせて冷気を集中させ始め、先程の強力な冷凍光線、パーフェクトフリーズを放とうとしている。本気で放たれた場合、この技に掠るだけでも体が凍り付く効果があり、これを上手く誘導する事が出来れば魔理沙を凍らせて最低限のダメージで戦闘不能にする事が出来るかもしれない。
《もし普段よりも性能が高かったらと思うと、ゾッとするわね・・・・・》
(こんな容赦なく攻撃してくる状況下で、もしも普段よりも技の性能が高かったらと思うと、心底恐怖する・・・・・
そして、チルノが再びさっきのとんでもない技を放とうとしているのを見て今がチャンスだと思ったのか、攻撃を逆に利用して魔理沙の動きを封じることができるように、呼吸を整え始める・・・・・)
魔理沙
「………………。」
魔理沙は煌々と輝く星弾を放ちながら真っ直ぐに霊夢に向かう。チルノが冷凍光線を放とうとしている中でも魔理沙も八卦炉を手に、マスタースパークを放つ準備をしている事から、上手く誘導する事が出来れば二人まとめて撃破する事が出来る。
《ゴオォォォォォォォォ》
《ヒュオォォォォォォォォ》
そして、遂に二人はこの戦いを終わらせるため、それぞれの持つ最大技を解き放つ。霊夢の背後に回り込んだチルノは冷凍光線(パーフェクトフリーズ)を、霊夢の正面にいる魔理沙は破壊光線(マスタースパーク)と直撃すれば大妖怪クラスでもただでは済まない破壊力の光線が霊夢に襲い掛かる。
今っ・・・・・!!!!!
バッ・・・・・!
(霊夢はチルノと魔理沙の攻撃が放たれた瞬間、本当にギリギリまで迫ってきたその時に、宙高く飛んでそのまま二人の攻撃を激突させる・・・・・
魔理沙とチルノの動きをこれで一時的に封じられなければ、絶体絶命なのだが、果たして・・・・・)
魔理沙&チルノ
「…………!!」
瞬時に光線の軌道から逃れた事でチルノと魔理沙の二人が放った光線が激突すると、刹那の拮抗の後、魔理沙の放ったマスタースパークが冷凍光線を打ち破り、チルノの体をマスタースパークが吹き飛ばして"一回休み"にし、打ち破られた冷凍光線の一部が魔理沙の手足を凍らせて戦闘不能に陥らせる。
妖精であるチルノは消し飛ばされたとしてもまた蘇り、魔理沙もある程度の回復魔法を使える事から二人とも再度復帰してくるものの、それでも時間稼ぎには充分になる。
二人は明らかに何者かに操られており、この異常事態と神社に現れた桃色の水球が無関係であるとは考えにくい……
今の内にできるだけ遠くに避難した方が得策ね・・・・・
(そう言うと、霊夢はチルノと魔理沙の二人が戦闘不能になっている今の内にと、なるべく遠くへと避難するように飛行し始める・・・・・
霊夢は、もしや人里も同じように操られている人間達がいるのだろうかと、上空から人里を少し観察してみる・・・・・)
【人間の里/広場】
人間の里に辿り着いた霊夢の眼下では、案の定、里の人々が倒れ、意識を失っていると言う異様な光景が広がっており、普段通りの日常を過ごしている最中、突如として意識が奪われたのだと言うことが判明する……
里に到着するまでにも森の中で妖怪や妖精だけでなく、野生動物達も昏睡状態に陥っていた……
異様な道化師
「クスクスクス…
やはり"イライザ様"の力は素晴らしい。この地にいるすべての者を昏睡させる事が出来るとは……!」
そんな人間の里の広場では、飄々とした態度で踊るようにして広場で倒れている人々を見て喜んでいるピエロのような姿をした異質な存在がいる。
完全に幻想郷の全ての者が意識を失っていると思っているからか、彼は油断しており、機密情報であると思われる謎の人物の名前を口にしている。
《イライザ・・・・・?聞かない名前ね・・・・・》
(謎の不気味な笑みを浮かべる道化師が出したイライザという名前・・・・・
どんな人物かはまだわからないが、初めて聞く名前であると同時に、さっき博麗神社にて現れた謎のシャボン玉を思い出す・・・・・
あれはそのイライザがシャボン玉を介して自分の目の前に現れたのか、それともまた違う人物がシャボン玉を介して現れたのかは謎だが、少なくともイライザという謎の人物は、この幻想郷に住まう妖怪とも妖精とも違う別の種族であろうということは察することが出来る・・・・・)
異様な道化師
「ぐっすりと眠り込んでいる今、誰もかれもボクに逆らえない。
この幻想郷にどれだけの数の有力者がいるのかは知らないけど、今なら殺り放題だ!」
この道化師の目的は、昏睡状態になった幻想郷の有力者達の殺害。
先程のチルノや魔理沙も多大なダメージを受けたにも関わらず目覚めることが無かったように、意識を何かしらの手段で奪われ、封じられている現在の状況では、まともに対抗する事が出来ない……
有力者や守護者が全滅してしまえば、もはや夢の支配から幻想郷が逃れる事は永劫に叶わなくなり、永遠に支配される傀儡にされてしまうだろう……そうなれば、底無しの悪意を持つヴァイスリゾームの手先として消耗されると言う破滅的な未来しか無くなる……
果たして本当にそうかしらね・・・・・?
(これ以上事態が悪化する前になんとかして防がなければと思い、霊夢は上空から地面へと降り立つ・・・・・
相手は自分の存在にも気づけないあたり、気配を察するのはできないのか・・・・・
それとも、敢えてこうして降りてくるように誘導したのか、それともただ気づかれなかっただけなのか・・・・・)
異様な道化師
「………!!?」
幻想郷内で意識がある者が居るとは思っていなかったのか、目の前に現れた霊夢を見て、驚き、思わず少し後ずさるものの、たまたまイライザの術にかからずに済むような幸運に恵まれただけの存在だと考え、すぐ冷静さを取り戻す。
異様な道化師
「イライザ様の術にかかっていない奴が居た……!?
……ケケケ!どうやって逃れたのかは知らないが、夢の中に居た方が苦しまずに済んだものを!!」
道化師は左手に持っていた歪な顔のようなボールを霊夢に向けて投げ付ける。すると、空中で歪な頭が巨大化し、民家を丸ごと噛み砕けるようなサイズにまで肥大化して霊夢を喰らおうとする。
アンタ、さっきからイライザイライザ言ってるけど、肝心のそのイライザさんは私のことを知ってか知らずか、アンタには前もって何も伝えていなかったようね・・・・・?
(霊夢は、民家が巻き添えにならないように誘導しながら襲撃を避けつつ、謎の不気味な道化師に上記を述べる・・・・・
道化師の反応からして、幻想郷には博麗の巫女という守護者がいることを知らないようにも見受けられることから、この道化師を刺客としてよこしたイライザという謎の人物も、博麗の巫女を知らないのか、それともただ単に道化師には伝えていないだけなのか・・・・・)
異様な道化師
「ケタケタケタケタケタ!!!
確率にすると1兆分の1の幸運……いや、凶運と呼ぶべきかな?キミが何者なのかはキミを始末した後にでも伺うさ!」
【戯符「悪夢の曲芸術」】
道化師の投げた巨大な人面のボールは霊夢に避けられるとそのまま道化師の元へ戻り、術者である道化師自身もその巨頭の上にまるで玉乗りをするかのように飛び乗り、ケタケタと笑いながら腰の後ろから毒々しい紫や赤、黒の混ざった青、暗い緑色の刃身を持った色とりどりのナイフを無数に取り出す。
キラー・クラウン
「ボクは高等幻魔の一人、『キラー・クラウン』!
悪夢のショーを取り仕切るピエロ達の団長だ!
キミには特別に"ボク達"のショーを特等席で見せてあげるよ!!」
手にした色とりどりのナイフを高速でジャグリングし始めると、彼が乗っている巨頭が口を開き、その中から狂気の笑みを浮かべた無数の道化師達が這い出て来る……その一体一体から感じられる妖力や魔力はさほどの脅威ではないものの、キラー・クラウンと名乗る道化師の"ショー"と言う言葉から何をしでかして来るのか予測する事が難しくなっている。
なるほど・・・・・塵も積もれば山となるってことね、力でダメなら数ってこと・・・・・
(霊夢は、這い出てきた道化師達がどんな行動に出たとしても瞬時に対応できるように身構え始める・・・・・
まだ自分にのみ攻撃してくるだけならばまだいいものの、近くにある民家にでも突っ込まれたり、攻撃されたりでもしたらかなり厄介だと思いながら、逆に自分はできるだけ民家を巻き込まないように戦わなければならないと警戒する・・・・・)
悪夢道化師達
『ケタケタケタケタケタ!!!!』
無数に現れた道化師達は耳を塞ぎたくなるようなおぞましい笑いの合唱をあげ、道化師の一部が霊夢に向かってブーメランのように血錆びが付いた曲刀を投げ付け、更に別の一団が手にしたショットガンを発砲し、遠距離から中距離攻撃を仕掛けていく。
あまり私を見くびらないことねっ・・・・・!
(次々と攻撃を避けて上記を言えば、霊夢は続けて「博麗の巫女は代々幻想郷を守ってきた守護者なのよ、あんた達みたいな得体の知れない化け物なんかにそうやすやすとやられるわけにはいかないのよ・・・・・!!!!!」と言い、手当り次第に道化師達に弾幕を放ってゆく・・・・・)
悪夢の道化師達
『ケタケタケタケタケタ……!!』
『キィィィィィィィィィィィッ!!!』
霊夢の放った弾幕が直撃すると、耐久力もそれほど高くはないためか、それとも下等な幻魔が現世に顕現すると脆い実体しか得られないからか、次々と道化師達が砕けて行くものの、道化師達が一斉に各々が手にした曲刀を投げ付けたり、銃器を発砲したり、両手に持った刃物を振り上げ、金切り声を上げながら高速で霊夢に向かって突進し始め、数の多さを利用した飽和攻撃を仕掛ける。
この妖怪や妖精がわんさかいる幻想郷で、そんな物理攻撃程度でやられるとでも本気で思っているの・・・・・?
ドドドドドドドドドッ!!!!!
(霊夢からすれば数は多けれどこの程度の物理攻撃、武器を使っての攻撃だとしてもすべてを避けることはそう難しくはない・・・・・
霊夢は、避けながらすべての道化師達に弾幕を浴びせながら次々と道化師達を砕いてゆく・・・・・
下等な幻魔程度ならば所詮はこの程度か・・・・・)
キラー・クラウン
「ケケケケッ!まだまだショーは始まったばかりさ…!」
無数のナイフ
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!』
キラーは無数に押し寄せる、ピエロの大群による刃物や銃弾を用いた攻撃の嵐の中、弾幕ごっこによって鍛えられた反射神経と勘によって避け、反撃として放つ光弾によってピエロ達が瞬く間に破壊されていくのを見て、劣勢に追い込まれつつあるにも関わらず楽しそうに笑い続けている。
ジャグリングしていた色とりどりのナイフを霊夢に向かって投げ付けると、それら全てに目玉と口が現れ、おぞましい笑い声を上げながら高速で回転し、霊夢に向かって追尾し切り裂こうとする。
ピエロ達による飽和攻撃も継続しているため、新たに追尾する生きたナイフが霊夢に襲い掛かると言ったように徐々に厄介なキラー・クラウンの力が牙を向いていく……
雑魚にしては結構健闘するじゃないの!
(霊夢は、数が増えることも先に考えて紙一重になってきてはいるがすべての攻撃を避け続ける・・・・・
そして、上空へ高く飛び弾幕の雨を降らせ始める・・・・・
民家を巻き込まないようにするのは大変ではあるが、それでも巻き込まないようにしながら弾幕の雨を降らし続け道化師達を一気に消しにかかる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
キラー・クラウンの投げた生きたナイフは
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
《ギュオォォォォォォォォォォォッ》
霊夢の上空から放った弾幕の雨によって飛行能力を持たないピエロの大群は一方的に撃ち抜かれ消滅していくものの、キラー・クラウンの投げた生きたナイフは十本中三本が撃ち落とされたものの、残った七本は執拗に霊夢に向かって飛び掛かり続ける。
更に追い討ちをかけるべく、キラー・クラウンは自分が乗っている巨頭に大きく口を開けさせ、その口内に魔力を集束させる事でこの辺り一帯をまとめて吹き飛ばせるほどの破壊力を持ったエネルギー波を解き放とうとし始め。
もし、これが放たれてしまえば例え霊夢が回避に間に合ってもこの近辺に住む全ての者がバラバラに吹き飛ばされ絶命させられてしまうだろう……
くっ・・・・・!次から次へと・・・・・!
(霊夢は、少しの間も与えないほどにすぐにまた更なる追撃を、それも今度は霊夢自身へではなく人里へ向けて放とうとしている・・・・・
戦いで自分がボコボコにされて傷つくのはまだぜんぜんいい・・・・・だが、里の住人達を巻き込むような、それも命に関わるようなこととあれば尚のこと食い止めなければならない・・・・・
霊夢は、キラー・クラウンへ向けて猛スピードで飛んでくる・・・・・)
キラー・クラウン
「おっ!勇敢だねぇ!でも残念!もうボクにも止められないよぉ?」
クラウンはケタケタと笑いながら迫ってくる霊夢を見て、集束させたエネルギー波を解き放とうとする。もし、ここで結界を使って集束されたエネルギー波を暴発させることが出来れば……
だが、もし結界が抑え込めずに破壊された場合、防御や避難する間も無く霊夢は消し飛ばされてしまうだろう……より安全な策や方法があるのならば別の手段を用いて対応する事も可能かもしれない。
なら私が止めるまでよ・・・・・!!!!!
(霊夢は迫ってくるナイフを利用してキラー・クラウンに突っ込んでそのままナイフをキラー・クラウンに当てるつもりだったが、このままでは間に合わないということを悟ると、結界を展開させようとする・・・・・
失敗すれば死、あるのみだが、やらなければやられることもまた確か・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
防ぐんだ?防げるんだぁ?だけどさぁ、そ・れ・もいつまで持つかなぁぁぁぁ?火力アーップ!だよ!!」
巨頭が解き放った強烈なエネルギー波が波動状に放たれ、霊夢の展開した結界と激突し、辺りに凄まじい轟音が巻き起こり、周囲の建物がカタカタと震え始める中、キラーはケタケタと大笑いをしながら巨頭をペシペシと叩いて更にエネルギー波の威力を上げ、その圧倒的な火力によって無理矢理押しきろうとする。
キラーは霊夢が周囲への被害を恐れて避けられないことを利用しての攻撃であり、こうしている間も追撃出来るように空中を浮遊させているナイフ達を霊夢の頭上から降り注がせる事で二方向から同時に攻撃を加えようとする。
このまま防戦一方でいれば確実に押し負けてしまうだろう……
くっ・・・・・!?
バッ・・・・・!
(霊夢は咄嗟に頭上の方にも結界を展開させる・・・・・
が、一つの攻撃を防ぎながら、もう一つの攻撃を防ぐのはかなり負担がかかる・・・・・
結界にも徐々に亀裂が入り始める・・・・・)
キラー・クラウン
「さあ、これで更に技を追加したらどうなるのかな?楽しみだなぁ!」
クラウンは右手を振り上げて自身の持つ魔力によって直径5mもの魔光弾を形成していく……この魔光弾は着弾すると広範囲に爆発が巻き起こるため、結界で防いだとしても爆発による影響で霊夢の周辺が丸ごと吹き飛んでしまう……
巨頭から放つエネルギー波、空を舞う生きたナイフ、それらを前にキラーは亀裂が入り始めた結界を見て勝利を確信し、このまま一気に圧倒的な手数で押し潰そうとしている……
【オリキャラで参加希望です。】
63:◆3.:2021/04/25(日) 05:37 【OKです!
世界観や物語を崩壊させるようなキャラにならないようにしてくださいね〜】
ぐっ・・・・・!
ゴォッ・・・・・!
(霊夢は、もうこうなったらと弾幕を形成して飛ばして相手の魔光弾を相殺しようとする・・・・・
恐らくキラー・クラウンそのものの戦闘力はさほど高くはないと思われるが、こうも立て続けに攻撃を繰り出されては、戦闘力の高い低いは関係なくなってくる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!
防御から攻撃に回るつもりかい?馬鹿だねぇ、それは悪手にしかならないよ!」
これまでは結界の展開に回していた力を反撃のための弾幕として使うようになれば当然、ただでさえ亀裂が生じていた結界ではエネルギー波と生きたナイフを防ぎきれなくなってしまう……
霊夢の放った弾幕が魔光弾を狙っているとわかると逆に迎え撃つように魔光弾を放ち、霊夢の弾幕によって幾らか勢いや威力が削れているものの、それでも今の霊夢の結界を破壊して消し飛ばすには充分すぎるほどの威力がある……
生きたナイフは霊夢が回避しようとしても即座に追撃できるように霊夢の側面や背後に回り込んでガリガリと結界を削り始め、正面から放たれたエネルギー波は言わずもがな。
何かしらの打開策が無ければ今ここで霊夢は絶命することになってしまうだろう……
「ん……ん……?」
よく食べに来る人里の団子屋前で、彼は片手に三色団子を持ちながら地面に突っ伏していた。
広場から離れているものの、彼の耳には度重なる騒音が届いており、彼は騒音と自身に対する違和感で目を覚ました。
肩まである長い銀髪を揺らしながら立ち上がり、緋色の目で辺りを見回せば、先程まで話していた団子屋のおばちゃんや、後ろを歩いていた買い物帰りの女性等々が、死んだ様に眠っていたのである。
明らかにオカシイ事が起こっているのを彼は瞬時に察知して、聞き慣れない弾幕の音を頼りに二人の居る広場へ向かった……
>>66
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《このままじゃやられる・・・・・っ・・・・・!やばい・・・・・っ!》
(力の高い低いではなく、つまりは戦い方が勝敗を分ける鍵となる・・・・・
今この状況において、人里が戦いの場となっていることも、キラー・クラウンからすれば霊夢が自由に戦えない制限を生むことに繋がるため、正に敵の狩場にはうってつけというところだろうか・・・・・
霊夢は、打開策が思い浮かばないまま、死を覚悟しそうになる・・・・・
博麗の巫女と言えどもここまで追い詰められれば、瞬時に何か反撃の方法を思いつくのは困難を極めるだろう・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!思ったよりも大したことは無かったね!!
しかし……どうしてイライザ様の術にかからなかったのかはわからなかった……ま、今となっちゃどうでもいい事だけどね!」
醜悪な巨頭
『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!』
キラーの放った魔光弾が炸裂し、凄まじい爆音と衝撃が辺り一帯を薙ぎ倒し、周辺の建物もろとも霊夢を吹き飛ばし、クレーターを形成する。
キラーは逃げ場も無く、完全に追い込まれた状態であった霊夢では最早助かることはないだろうと確信しており、巨頭と共に楽しそうに、だが悪意と狂気に満ちた笑い声をあげて嘲笑う……
・・・・・
(霊夢がいたはずの場所には、キラー・クラウンの攻撃によって形成された巨大なクレーターだけができており、霊夢の死体は確認することは出来ない・・・・・
跡形もなく消滅した、と考えるのが自然だろうか・・・・・)
キラー・クラウン
「さぁて、次の標的は………」
回避出来ないように生けるナイフを霊夢の側面や背後に移動させていたため、例え結界が破壊される寸前に逃れようとしたとしてもナイフの餌食になっているだろう。
死体の確認は出来ないが、里の一角を吹き飛ばすほどの威力を受けたとなればただの人間の耐久では生存は不可能だ。死体すら残らないのも無理はない。
悪夢を支配するイライザの術にかかっていなかった事には驚いたものの、さほど強力な技や力を見せてくる事も無かったため、所詮は運が良かっただけであり、他に術がかかっていない者もいないだろう。
となれば、後はこの里にいる不穏分子の抹殺を行うだけであると考え、生きたナイフを手元に回収して巨頭を元のテニスボールサイズにまで縮めて戦闘警戒を解く。
・・・・・
(里の一角が吹き飛ばされるほどの威力の攻撃だったため、死体を確認しないで警戒態勢を解くキラー・クラウンを祝福するかのように、月明かりが雲の隙間から差してくる・・・・・
辺り一帯はさっきまで霊夢との戦いがあったのが嘘かのように再び静まり返っている・・・・・)
キラー・クラウン戦闘警戒を解いた次の瞬間・・・・・
ゴォッ・・・・・!
(キラー・クラウンの頬を、何かが掠ってゆく・・・・・
そして、頬を掠った何かはそのまま空中で爆発を起こして消える・・・・・
見た目としては、さっきの霊夢の放った弾幕に似ている感じだ・・・・・)
キラー・クラウン
「…………!」
後方と側面からも攻撃を仕掛けた事で回避できない状況にしつつ、結界もろとも全て消し飛ばした事で勝利を確信していた中、背後から霊夢の放ったものに似た弾幕が頬を掠ると後ろを振り返る。
元々現世の生物ですらないキラーには血液は存在しないためか、仮面のような彼の顔の傷口からは血が流れず、仮面の下にある無数の目がギョロギョロと周囲を見渡して警戒し始める。
グォッ・・・・・!!!!!
(キラークラウンが周囲を警戒してもお構い無しに、弾幕は次々と放たれる・・・・・
それこそ、無数の目で周囲を見渡しながらでも防御が間に合わないほどのスピードで、次から次へとキラー・クラウンめがけて弾幕が放たれる・・・・・)
キラー・クラウン
「ぐぎぎ……まだしぶとく生きていたのか……!
だ・け・ど!何処にいるかはわかったよぉ!!」
【巨芸「笑う暴食頭」】
放たれた弾幕が次々とキラーの体に炸裂すると、現世に顕現するために作り出した実体には痛覚が存在しないため、痛みやダメージはそれほど無いものの、再生するためには時間も魔力も必要となる。
加えて実体が破壊されれば周囲に逃げ込むための悪夢の源が無ければ存在を維持で来なくなり消滅してしまう。
手にしたテニスボール程度の大きさの歪な頭を投げ付け、最初に見せたように空中で徐々に巨大化し、放たれた弾幕を貪り喰らいながら霊夢が居るであろう方向に向かわせる。
どこ見てんのよ・・・・・?
ドガッ・・・・・!
ゴッ・・・・・!
(霊夢はいつの間にかキラー・クラウンの背後に回っており、そしてそのまま強い蹴りを食らわせ、更にそのまま追撃として弾幕を再び放つ・・・・・
霊夢の声には、相手に対する怒りがこもっているのが感じられる・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
いつの間にか背後に回り込んだ霊夢の蹴りを受けて大きくよろめく。
体格的に霊夢とあまり身長の変わらないキラーは体重も軽く、防御技を持たないキラーは衝撃を受けると簡単に動いてしまう。
キラー・クラウン
「おかしいなぁ、どうやって生き残ったんだい?」
【刃芸「生けるナイフ」】
確かに逃げ場を奪った上で結界もろとも消した筈の霊夢がどうやって生き残ったのかについて問いかけると、振り向き様に右手を大きく振るい、その袖下から五本もの生きたナイフを投げ付け、切り裂こうとする。
アンタに説明する必要があるのかしら?
ガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンを睨みつけながら、蹴り上げて反撃したり、刃以外の部分を掴んでナイフ同士をぶつけさせたりして反撃に出始める・・・・・
ナイフが生きていたところでなんだとでも言いたげな表情で、じわじわと距離を詰めてゆく・・・・・)
キラー・クラウン
「…………なるほど、飛んで逃げた……と言う感じだね?
まあ、それなら対処法方は簡単だ!こっちにおいで!!」
キラーはケタケタと笑いながら、見た目や言動に反してそれなりに洞察力や判断力があるのか、即座に霊夢が飛んで逃げたのだと推察すると、先程投げた巨頭がキラーの頭上を飛び越えて戻ると、そのまま霊夢を喰らおうと飛び掛かる。
生けるナイフもろとも頭上から襲撃させることで回避先が頭上や地下ではなく、左右前後に限定した上でキラーは再度腰の後ろから十本以上のナイフを取り出してブーメランのようにして投げ放ち、これまた空中で目口を生やさせ、それぞれに明確な殺意と悪意を持たせてほぼ全方向から同時攻撃を仕掛けようとする。
武器を用いての攻撃・・・・・本当にワンパターンね・・・・・?
(霊夢は、すべての攻撃が自分へ到達する前に避けて、そのまま巨頭やナイフ達を誘導し始める・・・・・
霊夢自身も反撃手段が多いというわけではないが、キラー・クラウンがほとんどの攻撃を武器達に任さっきりなことから、やはりキラー・クラウン自身の戦闘力はそれほど高くはなく、武器の方に警戒力を高め始める・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
いやぁ、まさかここまで持ちこたえるだなんて"夢にも"思わなかったよ!つまらない肉塊の体しか持たないちっぽけな人間にしてはやるなぁ!!」
キラーは両手の指を同時に鳴らすと何も無い空間から八つの青や赤、黄、緑とこれまた色とりどりの小さなボールを取り出すとそれを用いて高速でジャグリングをし始め、余裕淡々と言った様子からか、それともこれも次の技の準備か、もしくはその両方からかは不明だが曲芸を続けていく。
霊夢の眼前には巨頭が何重にも重なった醜悪な牙と口を剥き出しにして霊夢を飲み込もうと迫り、その巨頭の横や上には十本もの生きたナイフが笑いながら回転して霊夢を切り裂こうとする。
気味が悪い連中ね・・・・・
ガッ・・・・・
(霊夢は試しに結界を展開して、巨頭やナイフ達を閉じ込めてみる・・・・・
これで少しは時間を稼げればと思っての行動だが、果たしてこれが吉と出るか、それとも凶と出るかはわからなければ、寧ろ不利になる可能性だってある・・・・・)
《ガガガガガガガガガガガガガガッ》
霊夢の展開した結界によって巨頭と生きたナイフが封じ込められる。
霊夢の展開する結界の強度はそれらの攻撃を完全に防ぐことが出来るようだが、結界内では巨頭や生きたナイフが滅茶苦茶に暴れまわり、ゲラゲラとけたたましく笑い続け、異様な光景となっている……
キラー・クラウン
「ほらほら、新しいものが見たいようだから今度はジャグリングも見せてあげるよ!」
《ドドドドドドドドドドドドドッ》
キラーはいつの間にか結界上空まで飛び上がっており、手にした十個のボールを一斉に霊夢目掛けて投げ付ける。地面に激突したボールは爆発を巻き起こし、爆発によって生じた岩がまるで弾丸のように飛び交い、上からは爆発するボール、下からはその爆発によって巻き上げられた塵や岩、石が霊夢を挟撃しようとする。
くっ・・・・・!視界が・・・・・
(巻き上げられる塵によって視界を遮られた状態で上下から繰り出される猛攻撃に、霊夢は紙一重で避けることでなんとかギリギリで対応している・・・・・
しかし、視界が遮られている以上、攻撃がいつ直撃してもおかしくはない・・・・・)
《ヒュオッ》
土埃によって視界が遮られ、辛うじて上からの爆破玉と下からの破片を避ける霊夢に向かって一本のナイフが迫る。先程放たれた生きたナイフ達は未だに巨頭と共に結界内で暴れまわっているため、キラーが新たに取り出して放ったものだ。
吸血鬼のような高い再生力も、妖怪のような生命力も無い、あくまでも人間である霊夢に対して刃物で一度傷を付ければその時点で継戦能力はほぼ失われる。何の事はない、ナイフ一発を当てればキラーの勝ちは決まるため、キラーは積極的にそれを狙っている。
ズブッ・・・・・
ゴポッ・・・・・
え・・・・・?
(霊夢は爆破と破片の挟み撃ちを避けることに専念するあまり、ナイフに気づくのが遅れ、右胸に刺さりそのまま吐血して宙高くから地上へと落ちてゆく・・・・・
所詮霊夢も一人の人間、妖怪や妖精とは違う・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!これは当たったかな?
今度は変に逃げられないように完全に仕留めてあげるよ!」
キラーは右手にジャグリングボールを持つと、今度はそのボールに爆発ではなく人体の貫通が出来るように魔力を込めつつ、霊夢の腹部目掛けて投げ付ける事でナイフが刺さった霊夢の体を貫き、確実に仕留めようとする。
・・・・・
ドォッ・・・・・!
(霊夢は落ちてゆく中、何とか必死に抵抗しようと力を振り絞って弾幕を放つ・・・・・
しかし、ダメージを負った状態でできる反撃など、たかが知れてる・・・・・
そして、まだ反撃できるほどの力が残っていたことに、自分でも驚いていた・・・・・)
キラー・クラウン
「無理はしない方がいいよぉ?」
キラーの投げつけた貫通性に特化したボールが霊夢の放った光弾を次々と貫いて行くものの、霊夢の目の前で磨耗しきって消滅するが、弾幕を突き破って迫るボールに気が取られているであろう隙を付いて右手に持った短剣のように巨大なナイフを振るい、霊夢の喉を切り裂いて即座に絶命させようとする。
キラーは気遣うような言葉を口にしているものの、彼の中に霊夢への慈悲や慈愛などは毛頭無く、悪意しか含まれていない……
ぐっ・・・・・!
ビシャッ・・・・・!
(霊夢は、喉を切られないように咄嗟に腕でガードするが、腕でガードすれば当然喉の代わりに腕を切りつけられ、出血する・・・・・
が、霊夢はこれを逆にチャンスだと受け取り、切りつけられた腕を思いっきり振るい、敢えて血を出すことで相手の目に飛び散らせて血で目潰しをしようとする・・・・・
そして、至近距離まで相手の方から迫ってきてくれたことで、相手に思いっきり蹴りを食らわそうとする・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
キラーの無数の目が蠢く仮面の下へ霊夢の血による目潰しを受けると痛覚は無くとも視界が一時的に失われ、キラーが追撃として振るったナイフによる心臓への刺突が空振りに終わり、逆に霊夢が反撃出来るチャンスが生じる。
っ・・・・・!
ドガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンが目を潰されたことで、反撃をするチャンスが生まれた瞬間を見逃さなかった・・・・・
そのまま霊夢はキラー・クラウンの体を蹴り、そのまま地面へ落として更に弾幕による追撃をそのまま行おうとする・・・・・
自分の血まで利用したからには、これが吉と出てもらいたいところではあるが、果たして・・・・・)
キラー・クラウン
「そうかぁ……そうかぁ!ボクはここで終わりかァ!
ケタケタケタケタケタ!!!」
霊夢によって地面へ叩き付けられたところへ、霊夢の放った集中弾幕を受ける。するとキラーの体に無数の亀裂が生じていき、限界を迎えて実体が砕け、終焉が近付いて来るのを感じ取るものの、キラーは憎しみや後悔と言った本来の生命体が潰えるときに見せるような感情は一切見せず、高笑いしながら砕け散り、跡形もなく消滅していく……
はぁ・・・・・はぁ・・・・・随分、あっさり終わったわね・・・・・
(とりあえずは一旦解決、といったところだろうか・・・・・
だが、あの不気味な道化師の言葉からして、今回の大元が今もどこかで暗躍しているはず・・・・・
なるべく早く再び戦闘をできるように少しでも回復しておかなければならない・・・・・)
《ザアァァァァァァァァァ…》
術者であるキラーの消滅に伴い、結界内に隔離していた巨頭や生きたナイフ達もキラーと同じように実体を失い、塵となり消えていく……
ナイフが刺さり、出血すると言う手傷を受けてしまったものの、幻想郷に襲来してきた刺客を排除することができた。
キラーの目論見や背後に控えているであろう組織に対する警戒を怠ってはいけないものの、一時的に脅威が取り除かれたと言ってもいいだろう。
予想外の苦戦を強いられはしたものの、勝利した……筈だった。
???
「あら、随分と手こずったみたいね?
"私の術"が効かなかった事や"博麗の血筋"と言っていたから警戒していたのだけれど……過大評価が過ぎたみたいね?」
《ゾワッ》
霊夢の背後から声が聞こえてくる……
先程までは誰も居なかった筈の場所に涌き出るようにして現れたその声の主は今倒したキラーすら比較にならないレベルの強大な力を有しており、その姿を見ずとも肌にビリビリと伝わる強力なオーラと、身体中に冷や汗が出る程のおぞましい雰囲気を伴っている……
・・・・・
(思わぬ出来事に、鳥肌が立つ・・・・・
しかし、キラー・クラウンの言葉と、突如として現れた謎の人物の言葉を聞く限り、今背後にいる人物こそ正しく、この騒動の黒幕にして総大将・・・・・)
・・・・・アンタが、イライザ・・・・・?
(霊夢は振り返ることなく、背を向けたまま上記を述べる・・・・・
流石に今やりあったところで、到底勝ち目はない・・・・・
まず間違いなく簡単に手にかけられてしまうのは目に見えている・・・・・)
イライザ
「ええ、その通り。私がこの幻想郷に昏睡術をかけて意識を奪い、その肉体を傀儡とした幻魔達の女王であり……貴方達にとっての"敵"よ?」
イライザは霊夢がこの里に着く前に操られたチルノと魔理沙との戦闘を繰り広げていた事まで知っているようで、クスクスと不敵な笑いを溢しながら自分を明確に霊夢や幻想郷にとっての敵であると応える……
イライザを倒せば幻想郷の住人達は目を覚ますだろう。
だが、それを実行するには絶望的なまでの力の差がある……
何時でも不意討ちをしかけられたと思われるものの、それをせずに敢えて霊夢の背後に姿を現し、言葉を交わしていることから、イライザは姿を現すと言うリスクを遥かに凌駕するほどの力があると言うことを暗に示している……
随分と厄介なことをしてくれるのね・・・・・あの不気味な道化師も、戦闘能力は低いくせして戦ったらこのザマよ・・・・・?
(回復が必要な時に敢えてタイミングを見計らって出てきたとも思えるイライザ・・・・・
あの道化師を部下に持つボスならば、それもまぁまぁ納得が行くが・・・・・
しかし、問題なのはこの状況・・・・・どう頑張ってもダメージを負っている今の霊夢に勝ち目はない・・・・・)
イライザ
「クスクス……彼は純粋な悪夢の化身でありながら現世に実体を持って現れる事が出来る稀有な存在だった……実体化した時に大きく力が失われてしまったようだけど、それでも今の幻想郷を制圧するには充分な戦力を持っていたわ。悪夢の中で戦っていればまず貴方に勝ち目は無かったのよ?」
キラー・クラウンを始めとする幻魔の大半が悪夢の世界でのみ充分な力を発揮することが出来る。逆に現世に体現できる者や現世に干渉することが出来る者はイライザを含めても十に満たない。
これがイライザが大軍団を送り込まなかった理由でもあり、雑兵では現世に出てくることすら出来ない。
故に優秀な手駒の一つを失った事に僅かばかりの憤りを感じているのか、万全の状態でならば敗れることも無かったと言う。
イライザ
「まあ、幾ら弱まっていたとは言え、たかが人間一匹に敗れるようならそこまでの奴だったって事になるのだけれどもね?」
霊夢に向かって一歩前へ歩き出す。
イライザの言葉通りであるのならば、今のイライザの放つ肌を打つ強烈なプレッシャーさえも本来のものよりも大きく劣化しているものであり、その本来の力は想像を絶するものとなっているだろう……
次の瞬間、イライザは霊夢の目の前に姿を現す。
イライザの双翼にある禍々しい眼が霊夢を嘲笑うように注視しており、彼女の死人のように白い肌、底無し沼のような深紫色の瞳が霊夢の魂すらも引き込み、呑み込もうとしているかのような感覚さえ感じられる。
イライザ
「さて、楽しいお喋りの時間は終わりにしましょうか?幸運な巫女さん?」
イライザは再び一歩、二歩と歩みを続けながら言葉を続ける……
イライザの言葉の一つ一つが感覚を、意識を鈍らせ、翼にある眼光は心の底にまで入り込んでくるような違和感を伴い、それらが合わさる事で魂すら引き寄せられるような感覚が強くなって来る。
ただの気のせいや比喩表現などではなく、実際に魂が根底からイライザへ引き抜かれようとしている。