それはあまりにも唐突に起こった出来事だった。
誰しもが普段と同じ日常を過ごし、明日も同様の日々を送るものであると思い、眠りについた……
だが、目を覚ましたのはごく一部の者だけだった。
里も、山も、森も……
人妖も、動物も、植物さえもが眠りについたまま目覚めることがなく、幻想郷全体を深く冥い静寂が支配していた……
これは明確な"異変"だ。
"それ"は深き夢の世界から現れる悪夢の支配者。
微睡みの中に漂う無垢な精神を貪り、安息を求める者達に恐怖を与えるおぞましき幻魔の軍勢『エファ・アルティス』
現世を救うために悪夢を支配する幻魔との戦いが幕を開ける……
>>2 時系列と注意
>>3 異変側の勢力
・・・・・っ・・・・・!
(言葉にし難いこの威圧感・・・・・
動こうにも動けなくなるこの圧倒的かつ静かな殺意の塊・・・・・
万事休す、とは正にこのことか・・・・・)
イライザ
「さようなら、紅白の巫女さん?」
《ザザザザザザザザ…》
不敵な笑みを浮かべたまま言葉を介してイライザが魂にさえ干渉する力を強めようとした瞬間、霊夢の視界の歪みが大きくなり、次の瞬間、意識が失われ………
【???】
イライザによって魂を奪われたのだろうか?
辺りには幻想郷の様々な環境や地形が滅茶苦茶に融合したような異様な空間が広がっている。
霊夢のいる博麗神社の一部に魔理沙の魔法店が隣接して存在し、周囲を見渡すと霧の湖に紅魔館の時計塔が建ち、妖怪の山の一角に広大な太陽の畑が存在していたり、魔法の森と人間の里がグチャグチャに融合し、空は薄い桃色の空が広がり、不思議な空間が何処までも広がっている。
・・・・・何よ、これ・・・・・
(意識を失っている間に自分の予想を上回る何かが起きたとしか思えないような、理解が追いつかない不気味な光景を目にし、霊夢は何がなんだかわからなくなる・・・・・
そもそも、自分が今いるここが本当に幻想郷なのか、自分は今生きているのか死んでいるのか、それすらも疑わしくなってくる・・・・・)
夢の案内人
「お目覚めのようですね?
……いえ、この言い方は多少語弊がありますかね?」
霊夢の目の前に博麗神社にも現れたものと同じ桃色の大きなシャボン玉がフワフワと宙を漂いながら出現し、再び脳内に直接語りかけるように言葉をかける……これの正体は敵か、それとも味方か……
またアンタ・・・・・?
(理解が追いつかない状況で更に混乱してくる・・・・・
意識を失う少し前に霊夢はイライザの姿をイライザが自ら霊夢の前に現れたことで見てはいるものの、その後すぐに意識を失ってしまったのでどうも容姿に関しては記憶が曖昧なこともあり、今目の前に入るシャボン玉、そして直接語りかけてきている声の主がイライザなのではないかと疑いを持つ・・・・・)
夢の案内人
「また、とは心外ですね。
危うく"あの女"に消されてしまうところを助けてあげたと言うのに。」
混乱している霊夢に対して言葉を返す。
声の主はイライザに対して快く思っていないようにも聞こえる。
仮に声の主がイライザであった場合、わざわざ遠回しに声をかけたりせずとも、最初に神社に現れた時に神社ごと消し去った方が確実だった筈だった。にも関わらずこうして異世界へ引きずり込んだのには何かしらの狙いがあるのか……
そう・・・・・助けてくれたことには感謝するけど、そっちの正体がわからない以上、こっちだって完全に信用することはできないわ・・・・・
(助けてくれた、ということは敵ではなさそうだと判断するものの、素性も何もわからない相手にはさすがに完全に信用することは出来ないと言葉を返す・・・・・
そもそも今いるこの世界の光景からして、不審に思うのも無理はないだろう・・・・・)
夢の案内人
「……私の素性については"まだ"明かすことは出来ませんが、その代わりに貴女を取り巻く現状についてなら説明することは出来ますよ。
真偽のほどがわからなくとも、何かしらのヒントやきっかけにはなるかもしれませんよ?」
声の主は落ち着いた様子で霊夢に自分の正体についてはとある理由から話すことは出来ないものの、その代わりにこの空間が何なのか、何故此処に引き込まれたのか、イライザ達幻魔の目的や正体等、現在の状況について説明することなら出来ると応える。
それなら、一通り言える部分は全部吐いてもらいたいわ・・・・・この不気味な空間についても、ね・・・・・
(明かすことは出来ないが、情報を提供しようとしてくれる辺り、少なくとも敵ではない、と言ったところだろうか・・・・・
そして、それならば言えることならば全部吐いてもらおうと霊夢は考えて、現状についてと、幻想郷が朽ち果てたようなこの不気味な異空間は何なのかと問いかける・・・・・)
夢の案内人
「わかりました、お答えしましょう。」
声の主は穏やかな声で淡々と説明をし始める。
その声からは感情を読み取ることは出来ないものの、現状、何も危害を加えるような様子は見えず、感じられない。
夢の案内人
「まず……ここは"夢の世界"と呼ばれる空間です。
もっとも、現在は悪夢の化身である幻魔によって支配されてしまっていますが……」
ここが夢の世界である事と共に、キラー・クラウンも言っていた"幻魔"と言う単語の意味が判明する。幻魔は悪夢が形を成し、自我を持った存在であり、現実にすら影響を及ぼす程の影響力を持っている……
なるほど・・・・・現実じゃあないってことね、ちょっと安心したわ・・・・・
(相手の言葉を聞けば、今いるこの空間及びこの光景は現実のものではなく、夢の空間における幻想郷であるということを知り、夢であっても幻想郷がここまで滅茶苦茶にされているのは解せないものの、現実じゃない分少なくともまだホッとした部分はある・・・・・
そして「で、その幻魔ってのはどこにいるの?叩きのめしてやるわ」と怒りを顕にし)
夢の案内人
「話が早くて助かります。
ですが、奴らは恐ろしく狡猾かつ非情な存在です。
本来ならば悪夢を喰らい、彼らを抑え込む筈の貘達ですら手に負えないほどの力を持った幻魔を前に無策で乗り込むのは危険過ぎる……」
声の主は幻魔の実力を知っているのと、先程のイライザの"悪夢の中では幻魔は本来の力を出せる"と言う言葉からこの先にはあのキラー・クラウンをも容易く凌駕する様々な悪夢の化身達が立ちはだかる事になる……
夢の案内人
「ですが……何も手がない訳でもありません。」
そこに声の主は幻魔が圧倒的優勢にある現状を打破する策を一つ考えているのか、強大な力を持った幻魔にも対抗しうる考えがあるのだと言う。
それじゃあ、その手っていうのを早いとこ教えてもらおうかしら?このまま得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのはごめんだからね・・・・・
(正夢という言葉もあるくらいだからか、霊夢は早く手を打たなけれはこの悪夢の世界が現実になるのではないだろうかという不安が脳裏を過ぎり、この状況を打破する方法を聞き出そうとする・・・・・
得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのは、冗談ではない・・・・・)
夢の案内人
「はい、私が場所を指定しますので、そこへ幻魔達の女王『イライザ・インサーニア』を呼び寄せて下さい。」
夢の案内人
「そうして下されば後は私がイライザをこの夢の世界から永劫に追放します。幻魔は夢の世界から核ごと追い出されてしまえばそのまま消滅します。イライザさえ葬ることが出来れば統率者を失った幻魔は壊滅し、その多くも消滅します。」
声の主は例え高等幻魔を全て倒せるだけの実力が霊夢にあったとしても、イライザ本体との戦闘になればその力の差から対抗することが出来ずに容易に滅ぼされてしまうと考えているのか、イライザを所定の位置にまで誘き寄せ、誘き寄せたところを夢の世界から完全に追放し、消滅させることだけがイライザを葬る策だと言う。
人間で例えるのならば酸素に満ちた地上からいきなり真空の宇宙へ放り出されるようなものであり、キラー・クラウンのように事前に現世へ現れるための実体(人間で言う宇宙服)を用意する暇すら与えなければそのままイライザを滅ぼすことが出来るだろう。
とは簡単に言うけれど、相手側が呼ばれてそう簡単にぬけぬけとやって来るものなの?
(夢の案内人が言うように、簡単に呼び寄せることはできるのかどうかが不安でもある・・・・・
イライザも馬鹿ではないだろう、呼び寄せることが出来たとしても警戒してあちらの方から寧ろ攻撃を何かしら仕掛けてくるであろう可能性も考えられる・・・・・)
夢の案内人
「呼んだところで大人しく着いてくることは無いでしょうね……」
夢の案内人
「ですが、貴方がイライザの前に辿り着いた後、撤退するようにして移動すれば確実に追いかけて来るでしょう。」
夢の案内人はイライザの力を前に負けを悟って退却するように見せることで、弱者をいたぶり、ジワジワと弱らせる事を好む卑劣なイライザの性格を逆手に取って誘き出すことが出来るだろうと言う。
これが成功すればイライザは確実に滅びるだろう。
だが、そこに辿り着くためにはキラー・クラウンのような高等幻魔が立ち塞がり、辿り着けたとしても上手く逃げる事が出来なければ霊夢の死……そして幻想郷の崩壊は確定的なものとなってしまうだろう……
追いかけられている間に勘づかれたらどうするの?
(ついさっきイライザと遭遇した時に感じた得体の知れなさは紛れもなく本物だった・・・・・
夢の案内人の言うようにおびき寄せることに成功して途中まで上手くいったとして、もし途中で勘づかれたらその時にはどういう手を打つつもりなのか、今の内に考えておかなければならない・・・・・)
夢の案内人
「気付かせないように死力を尽くして、逃げ、戦うしかありません。
あの女の性格から貴方を一瞬で消し去るような事はしないでしょうから……」
この作戦が成功するかどうかは霊夢の回避能力、そしてイライザの陰惨な性格の二つに賭けるしか無い……もし、霊夢が回避しきれなければ……もしイライザの気分や興味、感心が霊夢に向かわなくなれば……もし誘導に失敗してしまえば……
夢の案内人
「ですが、もし……この策が見抜かれた場合……貴方達は確実に終わる……」
言わずもがな、全ては破滅し、終わりを迎えてしまうだろう…
広大な幻想郷の中でイライザの術から唯一逃れることが出来た最後の希望たる霊夢が消されてしまった場合、もはや誰もイライザに対抗することが出来なくなる……全ての希望は霊夢一人にかかっている。
上手くいくかどうかなんて気にしている余裕はない、とにかくやるしかないってわけね・・・・・
(こうなったらもうなにがなんでもやるっきゃないと悟り、霊夢は覚悟を決める・・・・・
やれば自分の命が尽きるかもしれないが、やらなければ幻想郷がイライザの手に落ちる・・・・・
自分の命を危惧している場合ではない・・・・・)
夢の案内人
「貴方ならそう言ってくれると信じていました。
本当なら私ももっと手助けをしたいのですが……
残り私に出来るのは貴方をなるべくイライザの近くへ飛ばすことだけです。」
声の主は霊夢に対してもっと支援を行いたいと言う考えはあるものの、引きずり出さない限りイライザに手出しできない理由があるようで、霊夢の覚悟を決めた応え聞くと、少し安心しているように聞こえる……
私がやらなきゃ誰がやるって言うのよ・・・・・
(なんとしてでもイライザ討伐を成功させなければならない・・・・・
今のこの空間の幻想郷は、擬似現実だ・・・・・
霊夢がこの作戦を成功させなければ、この悪夢は悪夢ではなく、現実のものとなる・・・・・)
夢の案内人
「では私が貴方をイライザの懐まで移動させます。
そこが私の力が及ぶ最大限可能な悪夢の世界誘導地点でもあります。
どうか……御武運を………」
霊夢の目の前で浮いていた桃色のシャボン玉が膨らみ始め、何倍にも大きくなるとそのまま霊夢の体を包み込み、幻魔が犇めく悪夢と恐怖の世界……夢に干渉する種族でなければ入ることすら叶わない悪夢の世界の深層へと誘って行く……
【→悪夢の世界/深層】
《オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……》
霊夢の体を包み込んでいたシャボン玉が徐々に力を失い消滅する事で霊夢の眼前に広がるのは空が緑、紫、赤と様々な色へと変化する不気味な空が何処までも広がり、静寂に包まれ、寂れた博麗神社のような空間となっておる。
辺りを見渡すと、悪夢の博麗神社の正面側……つまり、博麗神社から見て外の世界に位置する辺りに、無数の廃館や朽ちた病院、寂れた学校やらが無秩序に融合する事で歪ながらも巨大な要塞が形成されている。
その異形の要塞からは無数の悪意ある魔力が蠢いており、要塞の中枢からは途方もない悪意と魔力が感じられる……この力の正体こそがイライザの本体なのだろう。
夢の案内人
「…………向かったようですね。
では、私も準備する事にしますか。
もっとも……"彼女達"が素直に協力してくれると言う根拠はありませんが……」
霊夢をイライザが支配する悪夢の深層、幻魔の世界へと送り込んで直ぐに霊夢の前には頑なに姿を現すことが無かった声の主が桃色のシャボン玉があった場所に現れる。
彼女は白黒の衣装に身を包み、青髪青瞳、眠たげな瞳をしながら、その手には悪夢の破片である桃色のスライムのようなモノを手にしている。その名は"ドレミー・スイート"幻魔と同じく夢を支配する存在であるものの、悪夢から生まれ、悪夢を支配し、新たなる悪夢を増殖させ続ける幻魔達とは対照的に人妖達の精神を蝕む悪夢を喰らい、幻魔から人々の安眠を守る獏だ。
霊夢がイライザを誘き寄せるまでの間に"彼女達"の元へと移動し、その助力を乞い、イライザもろとも幻魔達を一掃しなければならないのだが……その説得も恐らくは一筋縄では行かないだろう。霊夢がその命を賭けて幻魔達の巣窟からイライザを引きずり出す以上、こちらもまた命を賭けよう。
全てはイライザを討ち滅ぼすために。
・・・・・歪で不気味な場所ね、本当に悪趣味・・・・・
(イライザの拠点の前まで移動させられると、その異様な光景から歪で不気味で悪趣味だと述べる・・・・・
しかし、イライザの凶悪さはこんなものでは済まないだろうと思いながら、霊夢は要塞へ向けて一歩踏み出す・・・・・
中に入るまでに何か罠がないとも限らない、慎重に進まなければならない・・・・・)
《キャアアアアアアアアアアアアアッ》
霊夢が要塞に向かって歩み始めたところ、要塞の至るところから様々な悲鳴が聞こえ始める……その数は一つや二つではない……それも、ただの悲鳴ではなく、断末魔の叫びのようなものが幾つも木霊して聞こえて来る……様々な者達の恐怖が形を成した悪夢の要塞である以上、どれだけおぞましいものが潜んでいてもおかしくはないだろう。
要塞の入口と思われる、何故か開け放たれ、所々に返り血が付着し、ボロボロになった布切れがカーテンのようひはためき、扉の奥、カーテンの向こうには暗闇が広がっており、その暗闇の奥から何百もの視線が感じられる……
・・・・・気が狂いそうだわ・・・・・
(この悲鳴や視線がイライザの敢えて作り出した演出なのか、それとも今本当に起きていることなのか、わからなくなってくる・・・・・
今正に誰かが襲われて断末魔の悲鳴を上げていたとしてもおかしくはないほど狂気に満ちた世界であるため、悲鳴がイライザによる演出であろうとなかろうと、生々しく聞こえてくる・・・・・)
【悪夢の要塞/第一階層】
幸いにも要塞への侵入を阻まれることはなく、要塞内部への侵入に成功する。要塞の最下層部分、つまり第一フロアは床、天井、壁の全てが錆び付いた鉄板のようなもので構成され、窓が一つも存在せず、証明もまともに無い
また、通路の両側には無数の鉄製の扉が並んでいるものの、部屋の内容を説明するプレートには
「Δωμάτιο βασανιστηρίων(拷問部屋)」
「Αίθουσα επεξεργασίας πτώματος(死体処理室)」
「Αίθουσα εκτέλεσης(処刑部屋)」
等、恐ろしい単語の部屋しか存在せず、通常の建造物にあるような応接室や食堂、居間等は一切存在せず、ひたすらに他者を苦しめ、虐げ、命を奪うことのみを求め、存在の大半をそれらに頼っている幻魔らしいものとなっている。
鉄と血の濃密な臭いが充満しており、通路の奥の暗闇からは絶え間無く悲鳴や断末魔、唸り声が聴こえて来る。現世にいる生命体や知的存在とは根本から異なる者達である事が伝わってくる。
・・・・・まるで刑務所・・・・・いや、それ以上ね・・・・・
(悪夢の中の現実というのは、まさしく悪夢と呼ぶに相応しい世界だ・・・・・
捕まれば二度と安息は訪れないであろう恐怖と拷問の詰め合わせ・・・・・
悪夢という言葉を具現化した建物が、この要塞なのだろう・・・・・)
《ガチャッ》
霊夢が通り過ぎた部屋の扉が開け放たれ、その中から巨大な口しか顔に無い者、目が五つある者、右腕がチェーンソーになっている者等、人型をしながらも、顔のパーツが欠如していたり、関節を無視して動いている等、異様な姿をした者達が鉈やナイフを持って霊夢を追いかけ始める。
その異形達は共通して返り血に染まっており、その目や感じられる雰囲気は明確な悪意と殺意に満ちている……
・・・・・っ!
(いくら博麗の巫女と言えども、こんな不気味な場所でこんな異様な見た目の敵に追いかけられては、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
霊夢は猛スピードで要塞内を走りながら、弾幕でなんとかしようと応戦し始める・・・・・
人間、本当に怖い時は声なんて出ないとはよく言うが、まさか身をもって体験することになるとは・・・・・)
《ヒュオッ》
悪夢の拷問官達はそのおぞましい見た目とは裏腹に、耐久性そのものはさほど高くはなく、キラー・クラウンが生み出した道化師軍団とそれほど代わり無く、容易に撃破する事が可能であり、霊夢の放つ光弾が数発当たるとそれだけで塵となって消えていく。
だが、再現無く現れる大量の拷問官達による波状攻撃から逃れるべく要塞内を駆け抜ける霊夢であったものの、通路の曲がり角で待ち伏せしていた頭部の存在しない拷問官が手にした無数の棘が付いた棍棒を霊夢目掛けて振るい、打ち倒そうとする。
きもっち悪いのよアンタ達・・・・・!!!!!
ドドドドドドドドドッ・・・・・!!!!!
(霊夢は四方八方へとめがけて弾幕を撃ち放ち、拷問官たちを消滅させにかかる・・・・・
耐久力が高くないのがせめてもの救いか・・・・・
しかし、気持ち悪さでは圧倒される・・・・・)
《ズオォォォォォォォォォォ…》
通路の角から不意打ちを仕掛けようとした拷問官、通路から追いかけてくる異形の拷問官達を全方位に向けて撃ち出された弾幕を受け、次々と塵となって崩れ去って行くが、その後ろから押し寄せる拷問官が直ぐに新たな波となって霊夢に迫る。
そんな中、無数の拷問官に追いかけられた霊夢が一際開けた広間に到着すると、異形の群れが広間の入口で突然動きを止める。それは単に脅威が去ったのではなく、寧ろその反対、彼らを遥かに凌ぐ脅威が支配する場所であることを示している……
その証拠に、広間の中央にある巨大な断頭台から強烈な悪意と殺意が混ざり合った異様な魔力が感じられる。この魔力はキラー・クラウンと同等かそれ以上の魔力となっており、殺意の点で言えばあのイライザにも比肩するほど……
・・・・・あの化け物たちが計画的に私をここへ誘導したのか、それともただの偶然かはわからないけれど、いずれにせよ私は「飛んで火に入る夏の虫」ってわけね・・・・・
(イライザと対峙する前に、早くもイライザとは別の可能性がある何者かの脅威を感じる・・・・・
あの化け物立ちに自分をここまで計画的に誘導することが出来るほどの知能があるかどうかまではハッキリとはわからないが、いずれにしても今自分は窮地という名の鳥籠に囚われた・・・・・)
悪夢の処刑者
『グゥゥゥゥゥゥ……』
断頭台の裏からは顔を隠すように深く黒い頭巾を被った身長3m以上はある見上げるような大男が地響きのような唸り声をあげながら現れる。
全身には無数の血管が浮かび上がり、両手で持てる歪な血染めの斧のようなものを手にしており、頭巾には血で文字が描かれていると言う異様な風貌をした大男であり、明らかに対話が通用しないと言うことがわかる……
・・・・・話し合い・・・・・は通用しなそうね・・・・・
(イライザと対峙する前にこんな巨大な化け物をなんとかしなければいけないという現実が、霊夢に襲いかかる・・・・・
さすがは悪夢の要塞、と言ったところか・・・・・
しかし、不思議と負ける気もしない・・・・・)
悪夢の処刑者
『グォォォォォォ!!!』
《ゴオッ》
悪夢の処刑者と霊夢の間には親子以上の体格差があり、一見するとどう足掻いても勝ち目など無さそうに見える……だが、幻魔達は何も守れない、救おうとさえしない。ただの破壊衝動と殺戮衝動のままに生きるだけの怪物だ。幻想郷の未来を、運命をかけて挑む霊夢とは体格差以上に覚悟や決意に大きな差がある。
悪夢の処刑者は手にした歪な斧を右手だけで持ち、そのまま大きく振り上げ、地鳴りが生じるほどの足音をたてながら霊夢に向けて迫り、手にした斧を振り下ろすことで霊夢の体を切り裂こうとする。
line.me/ti/g2/bokaH6F0kT18R7RNJq_s-A
139:博麗の巫女◆gI:2021/05/30(日) 12:15 あまり私を見くびらないことね・・・・・?
ドガガガガガガガガガガガッ!!!!!
(霊夢は悪夢の処刑者が斧を振り上げると同時に、瞬時に飛んで攻撃を避けるとそのまま上空から弾幕の雨と言わんばかりの猛攻撃を立て続けに放ち始める・・・・・
この攻撃が効くかどうかは別として、これで少しでも動きを鈍らせることが出来ればまだいい方である・・・・・)
《グオッ》
悪夢の処刑者の体に霊夢が放つ弾幕が着弾し、ダメージを受けていくものの、その巨体故かかなりのタフさと頑丈さを持つ事から決定打にはならないようで、霊夢の弾幕を受けながらも弾幕の中を突っ切るようにして飛び上がり、手にした斧を振るって反撃しようとする。
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始めふ)
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始める・・・・・
しかも今度は、顔面に集中的に放ち始める・・・・・)
【途中送信すみません!】
《ドゴオォォォォォォォォォォッ》
悪夢の処刑者が勢い良く斧を振るうが、霊夢が避けた事で空振りするとそのまま続けて攻撃しようとするものの、距離を詰めすぎたせいか、霊夢の放った至近距離からの弾幕を避けられずに顔面部分に直撃し、彼の被っている黒い頭巾がところどころ破れる。
破れた頭巾の切れ目の下には無数の血走った目玉と赤黒い管のような小さい触手が腐肉に群がる蛆のように大量に見え、相手の素顔はかなりおぞましいものである事が見える……
隠したい気持ちもわかる顔ね、本当に不気味・・・・・
ダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢は顔の頭巾が敗れたのを見て、やはりある程度は効いているようだと確信すれば、そのまま弾幕攻撃を顔面、及び今度は足元にも放ち始め、相手を転倒させようとする・・・・・
今の自分は攻撃手段は一応弾幕のみに留めているが、悪夢の処刑者に関しては斧を振るうだけしか攻撃手段がないようにも見える・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲギャギャギャギャギャッ!!!』
霊夢の弾幕を顔と脚に受けた悪夢の処刑者は被っていた頭巾が完全に無くなり、バランスを崩して地面に倒れ込み、手にしていた斧を手放し、前のめりに倒れた状態になるものの、悪夢の処刑者の脇腹から百足の脚のようなものが生え、斧を手放した代わりに両手が鋭い鉤爪を生やし、黒い手袋を内側から貫く……
悪夢の処刑者は無数の目玉と触手が蠢く中で大きく裂けた口を持ち、不快な笑い声をあげ始め、そのまま霊夢に向かってこれまで以上のスピードで飛びかかり、霊夢の体を引き裂こうとする……
・・・っ!?
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は猛スピードで突進してきた悪夢の処刑者に向かって弾幕を放ちながら同時に宙高く飛行して応戦する・・・・・
もっと動きがのろいものかとばかり思っていたが、巨体の割りには見合わずに早いその動きとその異様な見た目に、霊夢は顔をしかめている・・・・・
人間である霊夢からすれば見た目も動きもパワーアップした巨大なゴキブリと戦っているようなものだ・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャッギャッギャッ!!!』
複数の血走った目、百足のように這い回る姿、無数の蛆が顔に群がっているような生理的な嫌悪感、骨や筋肉すら存在しいような針金のよに細く鋭い爪というように、人間が気持ち悪いと判断する様々な要素を取り込んだ見るもおぞましい姿となった処刑者は宙へ逃れた霊夢に向かって追撃すべく飛び掛かる。
だが、この場所は室内であり、どれだけ高く飛ぼうともその高度には限界がある……霊夢の放った弾幕によって体の一部が消し飛ぶものの、消し飛んだ箇所には先程まで霊夢を追いかけ回していた異形の処刑者の手足や頭が生え、攻撃する程に変異を繰り返すようになっている。
決定打に欠けた状態では絶望的な消耗戦を強いられ、肝心のイライザの元へ辿り着く事すら出来なくなってしまうだろう……だが、幸いにもこの広間には攻撃に使えそうな"物"がある。これが飾りで無ければ、致命的なダメージを与えられる可能性は高い。
・・・あーっもう!!!!!こうなったら手当り次第よ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(近くにあった不気味な甲冑が持っていた剣を掴めば、そのまま霊夢は剣を振り上げてこれで何とかなるならと悪夢の処刑者の体を突き刺したり、切り刻んだりし始める・・・・・
しかし、剣がそこそこ重いことや、剣なんて使い慣れていないことも相まって動きが鈍くなっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギィィィィィィィ!!!』
精神への干渉や攻撃、実体の無いものへの攻撃は幻魔の専売特許的な面があり、霊夢が拾って振るう幻魔の剣が処刑者の体に当たると、処刑者自身にもダメージが通る。血液が存在しないため流血はしないものの、斬り傷が再生されずに残る。
だが、剣の硬度は処刑者と比べると脆く、一度振るっただけで折れてしまい、連続的な使用は不可能であり、これもまた決定打に欠ける……
処刑者は今度は口を大きく開き、四重の牙を剥き出しにして霊夢の体を喰い千切ろうと再度飛び掛かる。だが、この広間には火力や威力においては最適と思われる"物"が存在している。そこへ上手く誘導し、作動させる事が出来れば処刑者を撃破することが出来るかもしれない。
こうなったらっ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(霊夢は元々は悪夢の処刑者の持ち物だった斧に目をつけ、これを使って悪夢の処刑者に反撃をしようとする・・・・・
しかし、形の歪さが明らかに人間用の作りではなく、悪夢の処刑者用に作られている武器と言っても過言ではないような形だからか、どうも振り上げづらい・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャアァァァァァァァァッ!!?』
元々は悪夢の処刑者の持ち物だったものの、悪夢の処刑者から奪い取り、霊夢が振るった斧が本来の持ち主である処刑者の頭に直撃すると、処刑者の頭が切り落とされ、床に落ち、落ちた頭部が寄生を発しながら塵になって消滅していく……
だが、頭を失った悪夢の処刑者が再度頭部を生やそうと力を集中させ始める。今の一撃で本来の対象である人間の精神体よりも遥かに強固な悪夢の処刑者の頭を切り裂いた事で斧はかなりの消耗を受けてしまっており、あと三回も振れば破壊されてしまうだろう。
くっ・・・・・!
(悪夢の処刑者の体の頑丈さには斧の頑丈さは劣るのか、人間用ではない上に初めて使う武器ではあるものの、ハッキリとこの武器がもう長持ちはしないだろうということがわかる・・・・・
勝負を決するのは、この斧で悪夢の処刑者を仕留められるかどうか・・・・・)
悪夢の処刑者
『ォ……オォォォォォオォォォオオォ……』
《バキバキバキバキバキ》
切断された悪夢の処刑者の頭部断面から、頭ではなく、3mもある巨大な蜘蛛の脚が生え、処刑者の背中から憎悪に歪んだ老若男女の顔が無数に浮かび上がり、呻き声をあげ、両手足の関節が明らかに本来ならば曲がらない方向へとねじ曲がり、首の断面から生えた蜘蛛の脚と合わさってガサガサと地を這い回る蜘蛛のように俊敏に霊夢に向かって飛び掛かる。
頭を切り落としても絶命しない。
新しく無数の顔を出現させることが出来ると言う、明らかに生物の理から外れた異形……それこそが幻魔なのだろう。
ああぁぁああああああぁああぁぁぁぁきもっち悪い!!!!!
ゴッ!!!!!
(もはや斧の耐久力に関して気にせずに無我夢中で悪夢の処刑者に向かって斧を振り下ろす・・・・・
もう斧がどうなろうととにかく目の前のこの気持ち悪い異形のモンスターを一刻も早くこの世から消し去りたいという気持ちでいっぱいになっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!』
悪夢の処刑者に幾度と無く振り下ろされた斧が悪夢の処刑者の巨体を切りつけて行くものの、切り裂いた傷口から新たな顔が現れ、その無数に存在する顔が口を大きく開けて笑い始める。
それはまるでどれだけ攻撃しても無駄だと言わんばかりに……
その証拠にどれだけ切り裂こうとも処刑者は傷の再生こそ遅れていれど、それも時間と共に回復してしまうため威力が弱すぎる……
そんな中、悪夢の処刑者が潜んでいた部屋の中央にある巨大な"断頭台"が視界に入る。上手く誘導してこの断頭台に付けられた巨大なギロチンの刃を落として処刑者の体を両断する事が出来れば確実に打ち倒せるだろう。いや、勝機があるとすればそれしかない。
こうなったら・・・・・
(一か八か、悪夢の処刑者を挑発するなりなんなりして誘導し、断頭台へとおびき寄せて攻撃するしかないと悟る・・・・・
そして「はぁ〜い化け物さぁ〜ん♪こっちよこっちぃ〜♪そんなのろっのろした動きじゃあ私をしてることは出来ないわよぉ〜?」と、悪夢の処刑者を馬鹿にし始める・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲキャキャキャキャ!!!』
終始言葉や言語らしいものを使用していない事から言葉による意志疎通が出来るのかどうか、挑発が効果を出しているのかどうかは不明だが、悪夢の処刑者はけたたましい笑い声をあげながら蜘蛛のように床を這い回り、霊夢に向かう。処刑者の背中や傷口に現れた無数の顔の口内から新たに尖端が鋭く尖った蜘蛛の脚が伸び始め、純粋な手数も増えつつある……
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギシャアァァァァァァァァァッ!!!』
《バッ》
断頭台近くにいる霊夢を追って這い寄る処刑者は残り10mとなったところで大きく跳び跳ね、無数の顔の口内から伸びた幾つもの蜘蛛の脚が霊夢の体を貫こうと飛び掛かる……
うわっ!?
バッ・・・・・!
(飛び跳ねてきた悪夢の処刑者を間一髪で避けると同時に、あまりの気持ち悪さに思わず挑発することすら忘れてしまい声を上げる・・・・・
しかし、同時に運良く断頭台まで誘導することに成功する・・・・・)
悪夢の処刑者
『キチキチキチキチキチ…』
飛び掛かりを回避した事で断頭台にて縄で吊り上げられた巨大な刃の真下にまで頭は無くなってはいるものの誘導する事に成功しており、このまま縄を切って刃を落とせば悪夢の処刑者の体を両断させることが出来るだろう。
だが、その事を知ってか知らずか、霊夢目掛けて切り落とされた頭部の断面から伸びた無数の蜘蛛の脚が一斉に霊夢目掛けて伸ばされ、霊夢の体に突き刺そうとする。
往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢はこの状況でまだ平然と反撃してくる悪夢の処刑者の往生際の悪さ、しつこさに恐怖や気持ち悪さを通り越してある種の関心すら覚えながら、今度は頭部の断面から伸びてきた無数の蜘蛛の脚を誘導して、相手の攻撃を逆に利用して縄を切ることでこの戦いを終わらせようとする・・・・・)
《ザンッ》
悪夢の処刑者
『ギギッ……ギャアアアアアアアアアアアッ!!!』
霊夢によって、伸ばした蜘蛛の脚で自ら縄を切ると、そのまま悪夢の処刑者の胴体……無数に浮かび上がっていた顔の中でも一際大きな顔が真っ二つに両断され、切り離された処刑者の上半身と下半身がそれぞれジタバタともがき、無数に浮かぶ顔の全てが断末魔の叫びを上げながら黒い塵となって崩れ、消えていく……
更にそれに呼応するように周囲の通路で霊夢が逃げることを阻止していた無数の異形の拷問官達も同じように呻き声をあげながら崩れ、消滅していく。
上手くいったようね・・・・・
(相手の攻撃を逆に利用して縄を切るという思いつきの作戦が、意外と上手くいったことでなんとか安心し上記を呟く・・・・・
そして「にしても・・・・・他の奴らも一気に消滅するなんて、あの気持ち悪いやつと魂か何かしらが繋がってでもいたのかしら・・・・・」と呟き、その場を後にしてイライザのいる場所目指して向かってゆく・・・・・)
【幻魔の要塞 第二階層】
《コォォォォォォォォォォ……》
悪夢の処刑者を打ち倒した事で妨害していた拷問官達が死滅した影響で何の障害にもぶつかることなくフロアを進めるようになった。そして霊夢の"勘"が示すがままに進んだ先には上層へと通じる階段があり、それを登りきった先に待ち受けていたのは、ところどころに乾いた血の染みが点在する寂れた病院のようなフロアに出る。
断末魔や悲鳴が聞こえていた先程までとは打って変わり、異様なまでの静寂さに包まれているのだが、常に誰かに監視されているような異様な視線を感じる。
・・・・・まだ騒がしい方がマシだったかもね・・・・・
(ここまで静かだと、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
さっきまでの断末魔や悲鳴が四方八方、ありとあらゆる場所から聞こえてきていた時の方がまだマシだったかもしれないと独り言を呟く・・・・・)
《ソペタペタペタペタペタ……》
霊夢が十字路を通り過ぎると、裸足の人間が凄い速さで走り抜けるような音が聞こえてくる……このフロアは寂れた病院のようなエリアとなっている事もあり、無念のまま病死した亡者達の怨念が染み込み、腐敗した無数の骸が生きている霊夢を憎んでいるような……そんなおぞましい視線が物陰や通路の影、背後からの感じられる。
だが、その視線のしたところを見ても、誰も居ない、何の痕跡もない……走り抜けた何者かの姿もわからない……直接的な攻撃をしてきた第一階層の拷問官達とは違って、姿を見せない不気味さが感じられる。
《・・・・・得体の知れない不気味さはあるけれど、攻撃してこない分まだいい方ね・・・・・》
(どこに何がいて何をしているのかがわからないという恐怖こそあるものの、今の時点では悪夢の処刑者のようにこちら側に攻撃を仕掛けてくるわけではない分、実害が出ないのであればまだいい方だと前向きに考えることも出来る・・・・・
このまま問題なくただ恐怖を感じるだけでイライザのいる場所までたどり着ければいいのだが・・・・・)
《ズッ》
足音のした十字路の方向、つまりは霊夢の直ぐ後ろに突然、感じられる視界がいっそう強くなる。それは真後ろに何者かが現れたと言うことを示しており、これまで様子見していた悪夢の化身が遂に牙を剥き始めてきたのだと思われる。
上手く後ろに迫った何者かに対して先制攻撃を仕掛けることが出来れば一気に有利になれるだろう。
・・・・・
ズゥッ・・・・・!!!!!
(霊夢は攻撃する直前まで気づいていないふりをして、そしてそのまま振り返ると同時に弾幕を連撃する・・・・・
正直、悪夢の処刑者同様にこれくらいで倒せるわけでもなければ、何とか出来るわけでもない敵だろうということは想像がつくが、少しでも何かしらのダメージを与えることが出来るなら・・・・・)
《ドドドドドドドッ…》
確かに視線を感じた筈であり、攻撃のタイミングも完璧だった筈であるにも関わらず、霊夢の放った弾幕は背後の通路の奥にある壁に激突し、爆音が周囲の沈黙を引き裂いて鳴り響く……
その次の瞬間、霊夢が振り返った瞬間を狙ったように、霊夢の背後……先程までは正面だった方から無数の手が霊夢の体を拘束しようと伸ばされる。
なっ・・・・・!?
ぐっ・・・・・!
(霊夢は予想外の出来事に反応が遅れ、そのまま無数の手に捕まってしまう・・・・・
もし最初からこうやって捕まえることを狙った上でのことだったのだとしたなら、こればかりは迂闊だった・・・・・
自分が隙を見せたのが悪い・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ゲラゲラゲラゲラゲラ!!
ニンゲン…ウマソウナ……ニンゲン……』
辺りの暗闇に紛れて姿を現した幻魔……その姿はまさに"異形"そのものであり、仮面のような顔に無数の孔が開き、おぞましい数の手で形成されたその姿は、最初は辛うじて人に近い姿を取っていたキラー・クラウンや悪夢の処刑者とは違い、完全に人の形を放棄したものとなっており、四肢を拘束された霊夢に向かって無数に存在している頭の一つが大きな口を開けて霊夢の頭を噛み砕こうと近付いて来る……
そう簡単に食べられるわけないでしょーがっ!!!!!
ドォッ・・・・・!
(霊夢は火事場の馬鹿力と言わんばかりに拘束状態から必死にもがいて片手を引き抜けば、そのまま幻魔の大口へとめがけて無数の弾幕を放ち始める・・・・・
自分でもこの状態から攻撃ができることに内心驚いている・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ゲゲゲゲゲ………』
《ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ……》
霊夢の放った弾幕がカシキの頭の一つを捉え、打ち砕くと、霊夢から手を離し、凄まじい勢いで後ろへと飛び退いて行き、再び通路の奥にある暗闇の中へと溶け込もうとしていく。
くっ・・・・・!待ちなさいっ・・・・・!
ゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は暗闇に溶け込もうとする相手に追加の弾幕攻撃を放つ・・・・・
ここで逃せばまたさっきのように不意打ちの襲撃を仕掛けてくる可能性が高く、博麗の巫女と言えど人間である霊夢は全ての不意打ち攻撃に即座に対応できるという保証もない・・・・・
早めに仕留めておく必要がある・・・・・)
霊夢の放った弾幕が辺りの暗闇を切り裂いて突き進んで行くものの、カシキ自体には命中せずに逃れられてしまう。
カシキの姿が消えると、再び周囲から暗闇の奥からカシキがじっと様子を伺っているようにも見える……何時、何処から攻撃をされるのかわからず、視界すら満足に使えないのですが暗闇の中、言い知れぬ恐ろしさを引き立たせている。
《厄介なやつね・・・・・》
(四方八方へ警戒をしながら、霊夢は札を構える・・・・・
相手は暗闇に見を潜めることが出来る、言わば闇の具現化とも言えるような魔の存在・・・・・
人間と比較すれば圧倒的有利な立場にあり、それは例え博麗の巫女だとしても変わりはないのかもしれない・・・・・)
《ズルッ》
目の前の暗闇に消え、微かな沈黙の後に、前後左右のどちらでもない、霊夢の頭上にカシキが音もなく姿を現し、無数の手で霊夢の両手を抑えると同時にその首を締めようとする。
っぐっ・・・・・!?
(人間の力では抵抗も無に等しいほどの力で首が締まってゆく・・・・・
ここで終わるわけにはいかないとはわかっているものの、ろくに抵抗できない状況であるのもまた事実であり、このままではそう遠くないうちに窒息死してしまう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ヒヒヒヒヒ……イヒヒヒヒヒヒッ!!!
クルシメ……モットクルシメ……!!!!』
カシキの伸ばした手が霊夢の首を締め始め、更に反撃が出来ないように両手を押さえている現状ではまともに対抗することが出来なくなっているだろう……それが"普通の人妖"であれば。
霊夢の脳裏には、巫女としての勘に近い"直感"が次の対策を啓示する。
霊夢の持つ霊力は邪悪な存在を討つ力。両手は封じられてはいるが、練り上げた霊力を蹴りと共に繰り出し、当てることが出来れば逆転を狙えるかもしれない。
・・・・・っ・・・・・こっ・・・・・のっ・・・・・!!!!!
グォンッ!!!!!
(霊夢は首が締まってゆく中で、出せる限りの力を出して霊力を蹴りと共になんとか繰り出す・・・・・
この攻撃を機に、霊夢の反撃からの勝利が先か、それとも霊夢が力尽きるのが先か・・・・・
どちらか一つなのは間違いないだろう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『!!!?』
霊夢の繰り出した霊力を纏った蹴りがカシキの頭の一つを蹴り飛ばすと、カシキは霊夢の首と手を拘束していた無数の腕を離し、そのまま地面に倒れる。特に意識をしていなかったにも関わらず、霊夢の蹴りはカシキの無数のある頭の中でも核に位置するモノを破壊しており、それが甚大なダメージとなってカシキを追い詰めている。
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……グゲ……』
核を破壊して大ダメージを与えることにこそ成功したものの、カシキは無数の腕をバタバタと無秩序に動かしてもがきながら無数にある頭の口から幾つもの新しい手を伸ばし始めており、このまま放っておけば悪夢の処刑者と同じように厄介な形態変化を遂げられてしまうかもしれない。
今この場で霊力を活かした渾身の一撃を撃ち込んでカシキを丸ごと消し飛ばすようにすれば、変異しきる前に倒しきれるかもしれない。
げほっ!?げほっ・・・!?
(霊夢は腕が離れたことで締まっていた首がなんとか開放され、咳き込む・・・・・
しかし、離されたからといって隙を見せるわけにもいかない・・・・・)
これでも喰らいなさい化け物っ!!!!!
グォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は霊力を込めた無数の弾幕を容赦なく撃ち始める・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギ……ギイイィィィィィィィ……!!!』
カシキの体が次々と霊夢の放つ弾幕によって打ち砕かれていく。単純な耐久力で言えば、悪夢の処刑者よりも劣り、あのキラークラウンと同等ぐらいしか無いためか、次第に無数の頭や手が砕け、消滅する中でのたうち回りながらも耳を刺すような超音波のような断末魔をあげ、霊夢の動きを封じようと足掻く。
くっ・・・・・!?往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢は耳を押さえながら、高く飛んでなるべく悪足掻きの餌食にならないように避難するかのようにカシキ・ヒェリの最後の姿を見下ろしながら往生際の悪いやつねと呟く・・・・・
耐久力は低いクセして執念深さは末恐ろしいものを感じる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『アァァァァァァァァァッ……!!』
体の大半が崩れながらも、ジタバタと暴れまわり続け、再生を行おうとしており、更には自身を見下ろす霊夢を見て、ここが室内であり天井が限られている事を利用してカシキが砕けずに残っていた頭の一つが口を大きく開き、口内から四つの手を伸ばして霊夢を捕らえようとする。
しつこいっ!!!!!
ドッ・・・・・!
(霊夢は四つの手を伸ばしてくる相手に向けて、先ほどと同様に霊力を込めた弾幕を放って応戦する・・・・・
体の脆さとは裏腹に、ここまで往生際の悪い相手とはあまり戦いたくはない・・・・・
闇に住まう者達の執念深さを垣間見た気がする・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……ゲゲゲッ……』
霊夢の放った弾幕によって無数の腕を伸ばして頭部が消し飛ぶものの、光弾だけではダメージを与えて倒すことが出来るものの、決定打には至らずにまるで木の枝に花が咲くように無数に伸ばされた腕から新しい頭が生え、反撃として無数に伸ばされた腕の掌から紫色の光弾がほぼ全方位から霊夢に向けて放たれ、大爆発を巻き起こそうとする。
なっ・・・・・!?
ヒュォッ・・・・・!
この状態でまだ抵抗するの・・・・・!?どこまでしぶといのよっ・・・・・!
(霊夢は咄嗟の出来事に驚愕するものの、紙一重でなんとか攻撃を避けることに成功する・・・・・
しかし、もはや完全回復もできないのではないかと思うほどに追い詰めたところでまだこれだけの攻撃を出来るほどの生命力や攻撃力を残していたとは、迂闊だった・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ググググ………!!!』
霊夢が驚愕し、攻撃を止めた途端にカシキの体には再び幾つもの新しい頭や手が生え始め、元通りに再生し始める。生半可な攻撃では完全に倒すことは出来ない。彼を完全に葬るためには広範囲を浄化できるような技でないと倒せないのかもしれない。
あと少しだったのに・・・・・!
(この先、この異変の総大将であるイライザとの対峙も控えている中で、早い内にカシキ・ヒェリとの戦いを終わらせようと考えていたが、その生命力と再生力をあまく見くびっていた・・・・・
弾幕程度では霊力を込めても一時しのぎにしかならないという事実を叩きつけられる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『イヒヒヒヒヒヒ……キヒヒヒヒヒヒヒ……ケヒヒヒヒヒヒヒ……!!』
霊夢の目の前でカシキはみるみる内に元の姿へと戻って行く……霊夢が弾幕によって破壊した箇所は全て再生され、手を緩めれば再生し、通常弾幕程度では致命傷を与えることは出来ない。
その凄まじい生命力と再生力を用いることで不死身がごとき強さを見せたカシキは無数にある手を伸ばして霊夢を捕まえようとする。
こうなったら・・・・・
バッ・・・・・!
(霊夢は何を思ったのか、無造作に飛行を始める・・・・・
無闇やたらに攻撃をするよりも、頭脳戦に出た方が早いという賭けとも言える戦略に出る・・・・・
カシキ・ヒェリの手を誘導しながら、霊夢は猛スピードで飛行する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ケタケタケタケタケタケタケタッ!!!』
霊夢が無造作に飛び始めると、無数の顔がカチカチと歯を鳴らし、ペタペタと無数の手を大きく広げてすり抜けなどが出来ないようにして笑いながら霊夢の後を追いかける。カシキにはあまり知能や知性がなく、本能的に動いているだけであるためか、特に勘繰るような様子は無い。
ほらほらこっちよお馬鹿さん!
(霊夢は鬼さんこちらと言わんばかりに両手を叩きながら飛行してカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・
一件考えなしにただ策を練るための時間稼ぎにも見えるものの、霊夢はちゃんと考えた上でこの行動をとっている・・・・・
あとはカシキ・ヒェリの知能の低さに逆に頼るしかない・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ガチガチガチガチガチガチ』
カシキの無数の頭がガチガチと歯音をたてながら飛行する霊夢に向けて無数の手から紫色の光弾を放ちながら彼女を捕まえようと這い始める……殆ど言葉を発していない事から挑発が通じているのかどうかは不明だが、それでも相手に追いかけられると言う状況を作ることには成功する。
ほらほらこっちよこっち!!!!!
(霊夢は何故か壁の前で立ち止まってカシキ・ヒェリを挑発し続ける・・・・・
通常、カシキ・ヒェリのような化物を相手にこのような状況に陥れば、大抵の人間は諦めて無残に〇されるのが殆どだが、霊夢は敢えてカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『オイツメタ…オイツメタ…オイツメタ……!!!』
ゲラゲラと笑いながら、壁の前で立ち止まった霊夢目掛けて無数の手の掌から紫色の光弾を集中的に放つ事で霊夢の事を消し飛ばそうとする。
案の定、カシキは高等幻魔でありながらも、それほど賢い幻魔ではないようで、霊夢の誘導を何も疑わずに追いかけ、挑発するままに攻撃を加えていく。