ここは明確スイーツ研究部!

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1:モンブラン:2017/01/27(金) 22:06

文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。

101:モンブラン:2017/03/22(水) 09:43

13.明後日!?
『大好きなママへ』

新しい海のびんせんに書く。
やっぱり、『大好きな』が付けたい。

「真美ちゃんどう?書けてる?おばあちゃん特製の紅茶を持ってきたわ」

「ありがとう、おばあちゃん」

紅茶を一口飲むと、口の中に広がるこの味。
おばあちゃんの紅茶、本当に美味しいんだよね。
ママの入れる紅茶より美味しい。
おばあちゃん、紅茶を専門にしているわけじゃないのに。
 プルルルルプルルルルプルルルル

「電話だ。出なきゃ出なきゃ」

おばあちゃんが急いでリビングのすぐ横の廊下の電話機を取る音が聞こえる。
「真美ちゃん!隅木田くんって子から電話よ〜」

「隅木田くん!?」

わたしも急いで電話機に向かって走っていく。
電話機を握ると、隅木田くんが荒い声をあげた。

「パーティが急遽明後日になった!」

「えええっ!」

「俺たちはまた、矢本の家で作ってみることにした。真美ちゃん来れる?」

「行きます!」

電話を切って、おばあちゃんに軽く事情を話した。

「おばあちゃんが送るわ」

矢本くん家、遠いって言ったからかな?

102:モンブラン:2017/03/24(金) 20:29

14.ヤバイ!
「おばあちゃん、じゃあね」

ここは矢本くんの家。
おばあちゃんは矢本くんの家の人にあいさつするらしい。
いつもの方に行こうとしたら、矢本くんにグイッっと手首をつかまれた。
矢本くんは、なぜか家の前にいて、わたしの手首をつかんで奥に歩いていくんだよ。
ちょっと、何してくれるの!?

「今日は、俺と香音、梨歩佳、梨萌佳の屋敷だ。というか、これからそっちになる。ちゃんと来いよな」

矢本くんと久しぶりに聞いた香音さんと、梨歩佳さん梨萌佳さんの屋敷!?

「こんばんは、真美ちゃん。急にごめんね」

「いえいえ。いいんです。ところで、隅木田くん。どうして明後日になったんですか?」

「ああ。全員に声を掛けたら、明後日しか空かなくなった。もう夏休みに入るからね」

そっか。
明スイより大事だよね。
家族の方が。

「で、個数などが決まってきた」

急に坂宮が言った。
みんなの視線は、隅木田くんから坂宮に変わる。
坂宮は胸を張って言った。

「作るもの1。大きなケーキ5つ」

ひいぃっ!

「ショートケーキ27つ」

ひいぃひいぃっ!

「クッキー300枚。オリジナルパンケーキ260枚」

ひゃーーーーーー!

「最後に、オリジナルトリュフ」

ひゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!
何その数と物!
大きなケーキ5つって何よ!
クッキー300枚ってどーゆーこと!?

「やるからにはやるしかない。これも試しはなしでいくしかないか」

隅木田くんが下を向きながら言う。
お試しやりたかったけど、無理だったらしょうがないよね。

「この前のチーム分けはなしとする。ここに、梨歩佳と梨萌佳が補助で入ってくれることとなった」

ケーキのこと、坂宮と話してないや。
どうしよう。
急にこうなると思ってなかったから。
しょうがない?
いやいや、明スイメンバーとしてダメだよね。

「じゃあ、振り分けわたしがしてもいいかしら?拓斗兄、ひとりでオリジナルパンケーキね。坂宮くん、梨萌佳とクッキーお願いね。隅木田先輩は、真美ちゃんとわたしとトリュフでいいですよね?」

梨歩佳さんの振り分けで、わたしはトリュフを作ることになった。

103:モンブラン:2017/03/24(金) 20:37

15.ケーキ作り
「隅木田くん、ちょっとその…ありがとうございます」

「あとは、ここの指示に従うだけですぐできます。ここの味を工夫するだけですが、隅木田先輩できますか?」

「梨歩佳さんと真美ちゃんは別のことやるの?」

「ええ。時間的にそうしようかと」

「いいよ」

「ありがとうございます!真美ちゃんやろう!大きなケーキ作り」

「はい!」

こうして、梨歩佳さんとケーキ作りをすることになった。
えっと、チョコレート味。
工夫するところは牛乳を入れるところでチョコレートの溶かしたものも入れるんだね。
チョコレートの味が増すってこと。

「真美ちゃん。チョコレート溶かしてくれる?」

「はい!」

梨歩佳さんと、初めより距離が縮まっている気がする!

104:モンブラン:2017/03/26(日) 21:19

「さあ。ここは焼くだけ。真美ちゃんどう?進んでる?」

「はい。記事が出来ました。今からチョコレートを溶かします」

梨歩佳さんはにっこり笑って、「チョコレート溶かすから、新しいストロベリー味の生地作ってくれる?」と言ってくれた。

「ストロベリー、ストロベリー!」

ストロベリー味は、わたしの大好物。
ついついつまみ食いしちゃいそう。

「真美。一緒に作ろうぜ。今手が飽いてるから。クッキー焼き中」

「ありがとう、坂宮。じゃあ、ストロベリー味の生地作ってくれる?わたしはストロベリーの溶かさなきゃいけないから」

「いいよ。あと、ひとつ。坂宮って呼ぶのやめて」

え…?
坂宮だけ『くん』が付いてなくてイヤだったとか?

「俺、言ったよね?真美のこと好きって。俺のこと嫌いでも、ちょっとくらい聞いてくれてもいいだろ」

「何を?」


『俺のこと、名字じゃなくて名前で呼べって』


な、名前で呼ぶの?
陽都くん?って?
それとも、呼び捨てで陽都?
男の子の名前を呼び捨ては無理っ!
周りもシーンとなる。


『ハルトって呼べばいい話じゃん。おい、作業戻れよ』


は!?
いきなり言って何よ!
ハルトって呼ぶの!?
無理無理!
坂宮に限って、無理だから!
ハルトに限らなくても!
…って、心の中じゃ、ハルトって言ってるよね?
まあ、いいや。
ハルト。

105:モンブラン:2017/03/26(日) 21:38

16.おばあちゃんの心配
「坂宮だけずるくない?」

「俺も、矢本くんって呼ばれてるんだぜ。」

は!?
隅木田くんと矢本くんまで何言い出すわけ!?
呼び方なんてどうでもいいし。

「ピーンポーン。真美ちゃん!」

「おばあちゃん?」

「真美ちゃんいつまでいる気なの?ご迷惑がかかるでしょう?それに、もうお風呂入らなきゃ」

お風呂?
ああ、この前は隅木田くんの勉強会って説得だったもんね。
おばあちゃんに明スイのこと話したけど、おばあちゃん心配性だから?

「大丈夫だよ。急がなくちゃいけないものだし」

「体調崩したら大変でしょう?みんなも家に帰って休んだ方がいいわ。明日があるでしょう?学校があるけど、また集まればいいじゃない?」

おばあちゃん…。
確かにおばあちゃんの言う通り。
でも、明日は明スイがあるし。

「とりあえず、真美ちゃんは帰りなよ。おやすみ、真美ちゃん」

「真美、おやすみ」

「多田本、明日な」

「みんな、おやすみなさい」

矢本くんたちの屋敷を出て、またちょっと歩いて駐車場に戻った。
普通に車に乗って、ちょっとおしゃべりしながら帰った。

「真美ちゃん。もうこんなに長くかかるのやめなさいね。いくら何でも遅すぎるわ」

「ごめんなさい。もう二度とこんなに遅くならないようにします」

「分かればいいのよ。明日も学校あるんだし、ゆっくり休まないと。ね?」

そうだね。
おばあちゃんの方がよく分かっているよ。
本当に。

「ところで真美ちゃん。明明後日お見舞いに行きましょう。それまでに手紙を書くなら書いておきなさいね」

「はい」

お風呂の準備に部屋に行ってお風呂に入って、今日はもう休むことにした。

はぁ。
今日はいろいろあったな…。
もう眠たいや。
今日はもうすぐ寝よう。

106:みかぜ◆3Y:2017/03/26(日) 21:45

モンブラン、遅れたけど100おめでとう!1000レス行くまで応援してるね!モンブランも小説面白いからはまる!

107:モンブラン:2017/03/26(日) 21:53

17.久しぶりブランコ
「行ってきます」

「真美ちゃん。昨日しっかり寝たから張り切って学校行けるでしょ?行ってらっしゃい」

「おばあちゃん、昨日は声をかけてくれてありがとう。じゃあ行ってくる」

家を出て、学校を目指して歩く。
今日もいい天気。
暑いけど、太陽がバッチリ見えてて、夏!って感じがする。
夏なんだけどねっ!

「マミおはよう。今日はあいさついないみたいだね」

「ハル、おはよう!ユリのスクープは今日ないね」

ああ、叫ぶようなあいさつね。
なんか、昨日のこととかよみがえってきた。
何だろう、この気持ち。
明スイの活動を出てきたわたし。
みんな怒ってないよね?
昨日のこととか、ハルト…に聞いてみよっと。

「ハルとマミ、おはよう!」

「ヒマとユリ!おはよう」

「おはよう!」

またいつもの4人で歩く。
校門を4人でくぐる。
やっぱりわたし、この4人でいるときが一番好きかも。
明スイかな?
一番好きな時間。
まあ、同じくらい好きかな。

ああ、楽しかった国語終わった。
せっかくの楽しい時間って本当に短いよね。

「みんな。久しぶりにみんなでブランコしない?」

急にヒマが提案する。
ブランコ。
中等部へ行ってもできるけど、恥ずかしくてできないブランコ。
今ここで楽しんでおく。ってことだよね?

「もちろん!」

「ヒマに賛成!」

「わたしももちろん!」

みんな初等部用の制服を着ていて、バッヂは6年のバッヂ。
でも、小さいから目立たないよね。
恥ずかしいとも思わないよね。

「さあ、ブランコで楽しむよ!」

ハルが言って、みんなで声を合わせてブランコを漕ぎ始めた。

108:モンブラン:2017/03/26(日) 21:54

>>106
みかぜありがとう!
ここでもコメントありがとね。
頑張って書くよ!

109:モンブラン:2017/03/27(月) 10:03

18.解散!?
今日は、なぜか流れるように一日が終わった。
申し訳ない気持ちが大きいのかな?とも思った。
でも、早く帰って悪い気持ちはない。
わたしは早く帰るんだもの。
人に決められることじゃないしね。

「ただいま」

「お帰り。真美ちゃん。今日は気分よく学校行けたでしょう?」

うんって言うしかないよね。
心の中でモヤモヤがあったけど。
作り笑いで、おばあちゃんに向けてうなずいた。
すぐにリビングを出て、部屋にある明確ゼミのスクールカバンを取る。

「おばあちゃん。今日は授業早いから弁当持っていくね」

「うん。行ってらっしゃい」

「行ってきます」

ちょっと急ぎめで家を出ると、家の前を通っていた梨歩佳さんに会った。
う、会いたくない。
でも、そんな願いは叶わない。

「真美ちゃん。明スイの、もう終わったから」

「ありがとうございます。すみません。続きからいなくなって」

「別にいいわよ。どうせ明スイも解散だしね。とりあえず、明後日のパーティには参加してもらうって」

カイサン?
カイサンって、解散?
みんなバラバラになっちゃうの?

「真美ちゃん。パーティではよろしくね。ドレスは、わたしの家の使っていいから。パーティの前にわたしの家に来てね」

「ちょっと待ってください!」

梨歩佳さんが行こうとしていたのを、わたしは本気で止めた。
だって、解散だなんて。

「どうして解散するんですか!?」

「依頼来てないでしょ?もう活動する意味がないのよ。そう言っていたわ。拓斗兄が」

嘘…。
矢本くんが言ったの!?

110:モンブラン:2017/03/27(月) 10:17

19.重い荷物
パーティ当日。
最後になるものかと思いながら、おばあちゃんに送ってもらって矢本くんの家に行く。

「こんにちは。真美ちゃん。今日もこっちの屋敷で着替えるわよ」

「今日はよろしくお願いします」

この前は矢本くんの棟だったけど、今日は梨歩佳さんの棟に案内された。
ちょっと歩いて、ひとつの部屋に入っていく。

「ここがドレスルーム。あんまり引きずるドレスはやめてね。これくらいのドレスにして」

梨歩佳さんが手で示したのは、だいたい膝くらいのドレス。
わたし、ドレスなんて普段着ないからこのドレスも…。

「さっさと決めてね。真美ちゃんの係は案内なんだから」

「案内ですか?」

「そう。わたしが、ここの屋敷の隣、母屋の屋敷の方から案内するから、ここの屋敷の、パーティ会場の案内をすることが真美ちゃんの仕事」

そんなの聞いていない。
反論しようとしたけど、わたしはふと思った。
ハルトも隅木田くんも矢本くんも、梨歩佳さんも梨萌佳さんも。
みんな学校を休んでいたこと。
きっと、明スイの活動をしていたってこと。
でも、その話題は話せなかった。
自分がメンバーと感じなくなって。
梨歩佳さんと梨萌佳さんは、正式メンバーじゃないのに活動してくれている。なのに、正式メンバーのわたしは活動していない。
自分のことしか考えていない自分が、何だかとても憎い気がしてきた。

屋敷の前にセットされた椅子に座る。
これが、最後の明スイになるんだ。
そう考えると、胸がムズムズした。
やっぱり、みんなに言うべき?
解散はよくないって。
でも、自分勝手なわたしのこと、みんなは聞いてくれる?
聞いてくれるわけない。
きっと、わたしのこと憎いもんね。

「真美ちゃん。お客様が来たら、この紙を渡して案内して」

「分かりました。…あの!昨日はすみませんでした」

隅木田くんにも謝ると、ちょっと笑った気がした。

「梨歩佳さんから聞いたかもしれないけど、解散するから関係ないよ」

「で、でも」

「間にあったんだし、重い荷物まで背負いたくないよ」

重い、荷物…。
わたしが重い荷物ってこと?

111:モンブラン:2017/03/27(月) 10:30

20.パーティスタート
「皆さん。今日はお集まりいただき、ありがとうございました。急な日付変更に関わらず、皆様がお集まりできたことは、とても嬉しいことです。では、ただいまから始めさせていただきます、明確スイーツ研究部、最初であり最後のパーティを始めます」

梨歩佳さんの司会で、周りがザワザワしてきた。
きっと、最初であり最後であるってことだよね。

「まず、ここにスイーツを用意したわたしたちの紹介をします」

さっきのザワザワから、歓声に変わった。
楽しみにしてくれてて嬉しい。
この笑顔は、もう見られないのかな?

「まず、隅木田優斗さん。多くのことをまとめ、オリジナルトリュフを作りました」

『キャーーーーーー!』

『トリュフ食べた〜い!』

女の子たちの間で歓声が最高潮だ。

「ふたり目。矢本拓斗さんです。オリジナルパンケーキ大きなケーキを作りました」

『オリジナルパンケーキ!』

『わたしがたくさん食べるわ〜!』

「次に、坂宮陽都さん。クッキー作りと大きなケーキ作りをしました」

『クッキーのところ、ずっといたいくらいだわ!』

『ケーキ超絶食べて見せる!』

「次に、多田本真美さんです。オリジナルトリュフ、大きなケーキ、ショートケーキを作りました」

辺りはシーンとなる。
こんなに目立つ人たちの中の、地味なわたしだもんね。
これでいいけど、ちょっと傷つく、かな。
もっと頑張るべきだけどね。

「次に、矢本梨歩佳。矢本梨萌佳です。クッキー作り、オリジナルトリュフ作り、大きなケーキ作り、ショートケーキ作りをしました」

『梨歩佳先輩と梨萌佳先輩すごい!』

『どれも素敵ね!』

最後のパーティも、わたしが重たい荷物背負ってるみたい。
期待外れだよね、わたし。
もう、来たくなかったよ。

112:モンブラン:2017/03/27(月) 10:45

21.隅木田くんの気持ち
ワイワイ、ガヤガヤ。
パーティー会場は大盛り上がり。
今、報酬をもらい中。

「真美ちゃん。解散することだけど」

「明スイの活動は最後なんですよね?わたしはもう関係ないんですよね?」

ちょっとキツい言い方で隅木田くんに言っちゃった。
こういうところ、ダメだよね。
ダメじゃなくて、最低だよね。

「解散のことどう思う?」

隅木田くんは、イヤな顔ひとつ見せずににっこり笑って言った。

「解散したくないですよ。みんなの幸せそうな時間、もっと作りたいです。わたしたちの力で」

「僕もそう思うよ。矢本はもうやめるって言っていた。梨歩佳さんと、梨萌佳さんもやめるって」

「梨歩佳さんと梨萌佳さんは手伝ってくれてましたから、問題はありませんが、矢本くん、何か明スイイヤなことがあったんでしょうか?」

隅木田くんも考え込むように椅子に座った。
わたしも隣に座る。
梨歩佳さんは後輩と、梨萌佳さんは友達と話している。
手伝ってくれていたから、ありがとうございました。なんだけど。

「矢本は、イヤなんじゃなくて、やって意味があると思っていないのかもしれないね」

「そうですか」

113:みかぜ◆3Y 特にかくhogeる。:2017/03/27(月) 10:48

え?!どうなっちゃうの?!

114:モンブラン:2017/03/27(月) 11:09

22.お見舞い
 ガラッ
ゆっくり、ゆっくり、歩いていく。
海のびんせんを持って。
また、ゆっくりカーテンを開ける。
笑顔で横になっていたのはママ。

「久しぶり、菜和」

「ママ、会いたかったよっ!」

何となく、笑っていたら目頭が熱くなってくる。
なんか、ママがいない生活が考えられない自分がいた。
わたしは、ママに助けられてきたんだ。改めて、ママの大きな存在に気付かされる。
わたしって、明スイのことも大きな存在なんだよね。
矢本くんは、明スイってどんな存在なんだろう。
わたしみたいに、大きな存在?
それとも、ホコリみたいな小さい存在?どうしたら、明スイを存続されられるんだろう。

「真美ちゃん。海のびんせん」

「あぁ。ママ、手紙」

手紙を渡すとき、ママと手が触れた。
このママの温もりが忘れられない。
温かい、ママが抱き締めてくれる時の温もり。

「真美、本当にありがとう」

「頑張って、元気な姿で赤ちゃん産んで、ママとパパとわたしと、赤ちゃんとおばあちゃんとお出掛けしようね」

「もちろんよ。楽しみにしててね」

まだまだこの生活が続きそうだけど、わたしももっと頑張るもんね!

             (つづく)

115:モンブラン:2017/03/27(月) 11:21

あとがき
            モンブラン

皆様こんにちは。
ここは明確スイーツ研究部!略して明スイ作者のモンブランです!
今回の明スイ4巻、いかがでしたか?
今回の明スイは、最高のパーティーにしたい真美ちゃん。
ですが、ママーーー菜和(なお)が倒れてしまう。
そこにおばあちゃんが来る。
そして、パーティーでは解散!?ということでしたね。
今回も、作者でありながらドキドキビクビク震えております。
何となく、真美ちゃんがラプンツェルに感じてきました!(笑)

今は皆さん春休みでしょうか。
宿題もなく満喫していると思いますが、時間があれば、明スイを読んでくださると嬉しいです。
わたしも、春休みを満喫しながらも、着々と中学校の準備をしています!

次回の明スイはですね。
矢本くんと梨歩佳さん、梨萌佳さんがいない状態で、聡日さんの依頼をすることになります!
さあ、どうなるのでしょうか!

お礼のコーナーです。
いつも読んでくれる方々、本当にありがとうございます!
コメントをくれた、シフォンさんと、みかぜさん!
このふたりには、いつも元気付けられます!
本当にありがとう!
次回の明スイも、よろしくお願いします!

追伸
明スイに関して質問コーナーを開きたいと思います。
キャラクターの誕生日など、いろんな質問待ってます!

116:モンブラン:2017/03/27(月) 11:23

創作板に建てました。
『莉愛の小説を一番早く!』
モンブラン=莉愛。
明スイの短編載せてます。
ぜひ読んでください!

117:モンブラン:2017/04/04(火) 12:13

お久しぶりです!
春休みを満喫しておりました。
ですが、今から新刊書きます!

118:モンブラン:2017/04/04(火) 12:22

『ここは明確スイーツ研究部!5』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

119:モンブラン:2017/04/04(火) 12:34

1.楽しい夏休み!
「あ〜と10分だねっ!」

ヒマがリズムに乗って言う。
ハルもユリも、もちろんわたしも!
ウキウキ気分で並んでいる。
ここは、最近新しくできた遊園地。

「ヒマヒマっ!キャラクターが門の前で待ってるよっ!」

「えっ?どこどこ!?」

確か、ハッピーサマーランドって遊園地だったかな。
この前4人で行ったサマーサマーパークだったっけ?
サマーサマーランド?
まあ、どっちだったか忘れたけど、その前に行った遊園地の姉妹遊園地。
ここにはサマーサマーの方と違って、キャラクターがいる。
小さいディズニーみたいだって。

えっと、わたしは多田本真美。
記憶が薄れてきてるけど、思い出として残ってるからねっ!

ハルとヒマは、背伸びしながらキャラクターを見ている。
わたしは身長が小さいから、背伸びしてもどうせ見えないし。
まあ、諦めてるって感じ。

『皆様、大変お待たせしました。ただいまから、ハッピーサマーランドを開演致します』

アナウンスが入ると、ハルとヒマはぴょんぴょん跳び跳ねる。
ハッピーサマーランド、ずっと計画してきたから。

『では、押さないよう、ゆっくり園内にお入りください』

「やっと入れる〜!」

「2時間並んで良かったね!」

ハルとヒマは、スキップしながら園内に入っていった。
ユリと、目を見合わせる。

「わたしたちも、思いきり遊ぼう!」

「そうだね。今日は宿題も部活も忘れて遊ぼうか!」

わたしたちも、ユリとスキップしながら園内に入っていった。

120:モンブラン:2017/04/05(水) 08:40

2.恐怖!インコップコースター
「まずはプラン通り、インコップコースターだよっ!ここで、わたしとユリでベストリアムシューティングの券を取りに行くよ!」

インコップコースター!
ハッピーサマーランドのメインジェットコースター。
ベストリアムシューティングは、ハッピーサマーランドの主人公。
ディズニーでいうとミッキーにあたるキャラクターのシューティングゲームの券ーーー並ばなくても乗れる券を取りに行った。

「マミ、わたしたちはそのまま並ぶんだから、早く行くよ!」

「うん!」

わたしたちが並ぶと、前にインコップコースターが動くのが見えた。
それにあたり、わたしたちも前に進む。ちょっとすると、インコップコースターが見えなくなってっ!

『キャーーーーー!』

『もームリィーーーーーーー!』

『ギョエーーーーーー!』

さ、叫び声ひどくない?
背筋がぁ!

「マミ、本当にこのアトラクション楽しそうだね!マジ楽しみ!」

「ヒマは楽しみでもわたしはぁっ!」

ヒマは、苦笑いしながら前を見た。
また、前が進む。
ということは?

「インコップコースター動いた!」

ヒマが言って上を見ると、インコップコースターが落ちていった。

『もー止めてぇぇーーー!』

『キャーーーーーー!』

『死ぬーーーーーーーーーー!』

うううっ!
怖すぎるよ!
後ろを振り返ると、楽しそうなウキウキした顔の人たちがズラリ!
もう、イヤーー!

「ただいま!…マ、マミ?」

ハルたちが帰ってきたのも知らない。
もう、そっちのことなんて考えられない。
インコップコースター…!
乗るの無理ーーー!

121:モンブラン:2017/04/12(水) 19:16

3.出発夜の旅
「はい。ではお乗りください」

案内されちゃったよぉ。
ん〜、怖すぎて死にそう、気絶しそうだよ〜!

「ヒマ、隣に乗らない?」

え、ユリ、ヒマを誘った!?
どうしてどうしてっ!

「も、もちろん。って、ユリどうしたわけ?ジェットコースター好きになったりとか?」

「いや。ただヒマと乗りたかったの」

はぁ。
ユリにジェットコースターのレベル抜かれた〜。

「じゃあ、ハル。隣で乗ろう」

「うん!マミと乗るの、久しぶりだから楽しみだな!」

確かに、ハルと乗るのは、ディズニー依頼かな?
四年生くらいにハルと私と家族たちと行ったから。

「皆さん、ご乗車いただきありがとうございました。インコップコースターでは、360度しますので、安全ベルト、忘れないよう心がけましょう」

さ、サンビャクロクジュウド!?
キイテナイゾ!

「360度するんだ!益々楽しみになってきたよ!」

ハル、そういう発言は求めてない。
とりあえず早く終わってっ!

「では、インコップコースター、恐怖の夜の旅を、お楽しみください!行ってらっしゃい!」

うわ、見送られた。
本当に楽しい夜の旅に、なるかなぁ?

122:玲葉:2017/04/12(水) 19:17

面白い!これからも読ませてくださいッ!
真美ちゃん、大好き!

123:モンブラン:2017/04/12(水) 19:21

玲葉さん、ありがとうございます!
自信なくしていたところでした!
ぜひ読んでください!
よろしくお願いします!
では、続き書きます!

124:モンブラン:2017/04/12(水) 19:43

4.天国への道
うぅ、どんどん上がっていく…。
天国への階段みたいだよぉ。
怖すぎるぅ。

「マミ、落ちるよ!落ちる、落ちる!キャーーーーーーーー!」

「もうダメだ〜!」

ヒマとユリも叫んでいる。
もちろん、ハルも私も。
すると、グルンッ!
さ、サンビャクロクジュウドシタ!
ワタシマワリマシタ!

ああ…。
怖すぎて…声…すら…出…ない…ッ!
どうし、よお…ッ!

お…ッ!
終わったゾ〜!
インコップコースター乗った!
私は凄いぞ!

「マミとユリ、お疲れ様」

「うん。ユリも、お疲れ様だね」

本当にお疲れだよ。
こんな疲れるの、考えられないよ。

「大丈夫!マミもお疲れだよね。まだベストリアムの時間じゃないから、ハルハルパークに移動しない?」

ハルハルパークーーーここは、ハッピーサマーランドの真ん中、ハッピーハッピーパーク。
ここのハッピーハッピーパークの右がハルハルパーク。

「いいねえ。ハルハルパークは、写真館があるでしょ?ベストリアムと写真撮らない?」

「賛成!でも、並んでる間にベストリアムのシューティングゲームの時間が来ちゃいそうだし」

「ハル、ヒマ。その問題はないよ。お母さんに言ったら、ベストリアムの写真館は行くだろう。ということで、前売券買ってもらったから。1グループ一枚だから大丈夫!」

ユリ、気が利く!
どうして思い付かなかったんだろ。
ユリはすごいよ!

「ユリ。それ、いつでも使えるの?」

「今日の間ならいつでも使えるわ」

「よかった。じゃあ、写真は避けよ。マミの顔が青っぽいし」

え…。
私の顔が青っぽい!?
ウッソー!

125:モンブラン:2017/04/23(日) 20:45

5.マフィン作り
久しぶりの遊園地も終わり、普通の日常に戻った。
今は、スイーツを作ってるところ。
きっと、矢本くん戻ってきてくれるし、たとえ戻って来れなかったとしても、わたしたちの活動は終わらないはずだから。

「真美ちゃん、本当に手伝わなくていいの?ちょっと心配よ」

おばあちゃんは、心配そうにわたしを見つめる。
手を出してくれるけど、ひとりでやるから、いいよ。って言ってるし。
わたしだって、きっとひとりでできるはずだから!

「おばあちゃんはゆっくりしてて。ずっと動いてちゃダメだよ」

「そんなことないわ。真美ちゃんが作るところ、見ていたいもの」

そう言って、おばあちゃんはカウンター越しにわたしを見ている。
また、マフィン作りを再開する。
夏休み、今までの恩ということで、おばあちゃんと、ハル、ヒマ、ユリにマフィンをプレゼントすることにした。
その練習用。
出来たら、おばあちゃんにはあげないつもり。
完成形しか食べてほしくないし。

「スイーツ作ってる真美ちゃんが、とても生き生きして見えるわ」

おばあちゃんがふとつぶやく。
生き生きして、見える?
私の生き生きした顔ってどんな顔だろう?

「とっても輝いて見えるわ。真美ちゃんの姿、菜和に見せてあげたい」

菜和ーーーわたしのママ。
今入院しているの。
妊娠しているから。
でも、おばあちゃんはスマホじゃなくてガラケーだから、写真送れないよ。

「カメラで撮るわ。菜和が、赤ちゃんを抱いて帰ってきたら、カメラを見せてあげるの」

おばあちゃんのこの顔、生き生きしているのかも。
まるで、夢ではない、遥かかなた、すぐそこじゃない遠くを見つめる顔。
未来を、想像している。

「おばあちゃん、楽しい?」

「おばあちゃん?楽しいわ」

おばあちゃんも楽しいんだ。
私と同じ、楽しいかな?

126:モンブラン:2017/05/01(月) 19:11

6.秘密の真由ちゃん
 ピヨピヨ ピヨピヨ
か、カワイイッ!
マフィンを焼いている最中。
暇なので、お庭に出て気晴らしって感じで休憩に来た。

「真美ちゃん、雀ちゃんが好きなの」

ふふふ。
この子は、普通の雀ちゃんじゃない。
わたしが…秘密で飼っている雀ちゃんなのだから。
名前もあるんだ。

「真由ちゃんって言うの。わたしがつけてあげた名前だよ!」

そう、真由ちゃん。
わたしの名前をつけるとき、真由と迷ったんだって。
この雀ちゃん、わたし第二号って感じで真由ちゃんにしたの。
真美って名前だと、同じで紛らわしいしね。

「そうか。真由ちゃんねえ」

おばあちゃんは、なぜか黙りこむ。
どうしたんだろう。
お腹でも痛いのかな?
心配しているのに気付いたのか、笑って部屋の中に入っていった。

「真由ちゃん。お散歩でも行ってきたら?そうしたら、おやつをあげる」

真由ちゃんは答えたのか、どこかへ飛びたって行った。

「真美ちゃん。菜和から電話よ」

「え、ママから電話!?」

おばあちゃんは笑って、電話機を渡してくれた。
ママからってことは、病院からかけてるんだよね。
わたしと話すために、わざわざ。

「あの、もしもし」

ちょっと緊張ぎみに言うと、ママの、やんわりした声が聞こえてきた。

「もしもし。久しぶりね、真美ちゃん。夏休みは、どう?」

「夏休み?え、楽しいよ!この前も、遊園地に行ったの。ハルたちと」

少しの沈黙があって、ママが言う。

「楽しかったみたいね。きっと真美ちゃん笑ってるわ。真由ちゃんは?」

真由ちゃん?
雀ちゃんだよね。
ママに、真由ちゃんの話したことないのに。
すると、電話の向こうでクスッっと笑い声が聞こえた。

「真由ちゃんは雀でしょ?真美ちゃんが夢中になってることくらい、ママも知っているわよ」

ウソ!
真由ちゃんのこと知ってたの!?
さ、さ、さすが、ママ!

127:絵菜◆8Q:2017/05/02(火) 21:05

名前変えました。
元モンブランです!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

7.真由ちゃん小屋
そう言えば、この前に、矢本くんがやめようとする前。
明スイクッキーをママにプレゼントした時のこと。
明スイのこと話したことないのに、ママは明スイを知ってた。

「真美ちゃんが夢中になることくらい、ママも知ってるわよ」

そう言ってた。
わたしがママになっても、ママみたいになれるのかな?

「真美ちゃんの声が聞けて嬉しいわ。もうそろそろ切るわね。じゃあね」

「うん。バイバイ」

わたしがそう言って切ると、ママの笑顔が思い浮かぶ。
いつもニコニコしていて、周りを笑顔にさせてくれる。
辛いときも、苦しいときも、いつも、笑って過ごしている。

「真美ちゃん。真由ちゃんが帰ってきたわ。おやつあげましょう」

「おばあちゃんに、真由ちゃん飼ってること言ってないよ?」

ママと同じで、おばあちゃんも気付いていたの?
短い期間だったのに?
ま、まさかぁ。

「おやつ、真美ちゃんの部屋を掃除していたら見付けたの。雀用って、真由ちゃんしかいないでしょ?」

おばあちゃん…。
さすがだね。
真由ちゃんのおやつ見付けるなんて。
難しいところに隠したつもりなのに。
ママとおばあちゃんには、全てお見通しなのだ。
隠してもすぐバレるだろう。

「おやつ、あげにいきましょう」

「うん!」

暖かいひざし。
見えないけど、青い風。
澄み渡っている空。
そして、かわいい真由ちゃん。

「真由ちゃん、こっちこっち!」

わたしが声をかけると、チュンチュンと泣いて、おやつを食べに来た。
手のひらから、肩へ移動させる。
完全に、飼ってるっぽいし!

「おばあちゃん!雀の小屋って、いくらするかな?」

「真美ちゃんが作ってあげたら?おばあちゃんも手伝うから」

わたしが、真由ちゃんの小屋を作る?
そんな、無理無理。
器用じゃないし、真由ちゃんかわいそうだもん。
それに、おばあちゃん頼りすぎだし。
そのとき!
 ピーッピーッピーッピーッ

「マフィン焼けた!」

「真由ちゃん。ここにおやつ置いとくから、食べ終わったらここで待っててね。真由ちゃんが食べれるサイズのマフィン持ってくるから!」

そう言い残して、キッチンに戻った。

128:絵菜◆8Q:2017/05/02(火) 21:16

8.砂糖と塩を…
うぅ、美味しそう。
ふっくらしていて、香りもよし!
これなら、あげられるレベルに達しているかな?

「真由ちゃん!これこれ!マフィン!はい、どうぞ」

マフィンの小さいのを、真由ちゃんの前に置く。
トントンしながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ食べる真由ちゃん。
かわいい。

「真美ちゃん?おばあちゃんも食べていい?」

「おばあちゃんはダ〜メ!」

なんってったって、おばあちゃんにはプレゼントだからね。
これは、ただの試作品。
本番じゃないんだから!

「まあ、また作ったら食べさせてね。とっても美味しそうなのに」

うふふ。
でも、ごめんね、おばあちゃん。
わたし、サプライズしたうから。

「真由ちゃん、美味しいかい?」

おばあちゃんが、真由ちゃんの顔を覗き込む。
それに答えるように、真由ちゃんはチュンチュンと鳴いた。
さあ、わたしも食べてみよっと。

「いただきま〜す!」

一口。
んんん?
ちょっと辛いんだけど。

「ゲホッゲホッゲホッ!」

「真美ちゃん!?大丈夫!?」

「ん、ゲホッゲホッ!大丈夫ゲホッ!気にしないでゲホッゲホッ!」

多分、多分だよ?
このときだと思う。
この問題が起きたの。


「甘めにしよっかな。砂糖たっぷり入れよっと!」

そう言いながら、倍の量の砂糖を入れたつもりだった。
でも、わたしは多分塩と間違えた。
塩をたっぷり入れたせいで、辛くて咳き込むのだ。

「ゲホッゲホッゲホッ!」

「うがいよくしておいで。これからは間違えないわよ。失敗は成功のモト!いいのよ」

そうだよね!
失敗は成功のモト!だよね!
次からは気を付けよう!

129:絵菜◆8Q:2017/05/21(日) 13:22

9.転校っ!
カーテンを開くと、満月の月が見え、ん?
私の家の前に、男の子がいる。
誰だろう。
パジャマのままだけど、パーカー着てけばいいよね。
お気に入りのパーカーを羽織り、家を出る。

「あ、真美ちゃん。」

「す、隅木田くん?何かあったんですか?」

多いなカバンを提げ、わたしの部屋辺りをジッっと見つめる。
な、何だろう。

「矢本がね、転校することを言いに来ただけ。お父さんと矢本のふたりで暮らすんだって。明スイ、そんなに嫌だったのかな。」

ふたり暮らし!
明スイで、依頼を一気にパパっとやったからいけなかったのかなっ?

「まずは、聡日さんの依頼をやろう。尾崎桃乃さんと尾崎桃音さんいただろ?ふたりが、お礼したいから、明日、明確ゼミのカフェ集合ね。じゃ。」

え、それだけのために?
私の家に、電話をかければ。
そう考えていると、街灯の光に照らされた隅木田くんは、見えなくなっていた。


カーテンを閉め、パーカーを脱ぐ。
明日、明確ゼミでは、全国テストがあるんだ。
勉強はずっとしてきたし、いいよね。

「真美ちゃん、マフィンは、明日の朝作るってことでいい?」

ドアの向こうで、おばあちゃんが言う。マフィンの、本番だよね。

「いいよ。マフィン作り終わったら、配りに行く。ママには、明後日にしようかな」

「そうね。じゃあ、明日はいろいろあるから、早く寝るといいわね。おやすみなさい」

「ん、おやすみなさい」

130:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:09

10.ファンっ!
カーテンを開ける。
明るい日射し。
外には真由ちゃんがいるだけ。
今日は全国テストかぁ。
そして、マフィン作り。
パジャマから私服に着替え、顔を洗ってリビングへ行く。

「おはよう。おばあちゃん。パパ」

本来なら、おはよう。おばあちゃん。なんだけど、今日パパがいた。
仕事かと思った。

「おはよう、真美。今日は全国テストだな。頑張れよ。あと、真美宛に手紙がきていた」

わたし宛?
手紙なんて、まともにもらった記憶ないな。
久しぶりにもらうかも。

「これだ」

パパから受け取り、差出人の欄を見てみる。
すると、多田本真美様。
矢本拓斗より。とあった。
矢本くんから手紙っ!
急いで出して読んでみる。

『多田本真美様

今まで、明確スイーツ研究部、ありがとう。俺は、引っ越します。多田本真美さんと仲良くなれたこと、誇りに思います。さようなら。

           by矢本拓斗』

それは、筆ペンで書かれており、短くまとめてあり、かっこよかった。
byってところとか。
でも、昨日聞いたけど、本当に引っ越すことが明らかになってしまった。

「真美も、返事書いたらどうだ?お母さんと一緒に、便箋買いに行ったんだろ?」

あ、お母さんっていうのは、おばあちゃんのこと。
パパは、おばあちゃんのことをお母さんって呼ぶから。

「うん。そうする」

「そうね。じゃあ、朝ごはんにしましょうか」

そう言って、おばあちゃんはトーストが乗ったお盆を持ってきた。
う〜ん、いい香り。

「いただきまーす!」

朝のわたしの発声で、おばあちゃんは席につき、パパま新聞紙を閉じて席についた。


飛ばないように気を付けなきゃ。
今は、マフィン作り中。
特別にだけど、パパにもあげることにしたんだ〜。

「おばあちゃんとパパは見ないで!」

そう言いながら、グイグイ押す。
リビングのソファーに座らせて、キッチンに戻る。

「わたしが、わたしなりに、わたしだけで作るの。だから、見ないで」

言い、またかき混ぜる。
絶対美味しいマフィンにするんだ。
矢本くんにも、渡せたらいいな。
今日は、カフェに来るって言ってたから、その時手紙に添えて。
もちろん、明スイメンバーにも、尾崎姉妹にもねっ!


カバンを提げ、ドアを閉める。
う〜、緊張する。
全国テストと、マフィンを渡すことが。受け取ってくれなかったらどうしようってね。
矢本くんに言われたら、すごくきついよね、うん。
カバンに、マフィンが数通り入っていることを確認して歩く。
明確ゼミへ行く足取りが、重い。
いつもは、行って秀才になれて、行って明スイができて、嬉しいのに。

「あ、明スイメンバーだ。あたし、春山ひかりです。この前のパーティー、出席しました〜!本当に良かったですよ!あたし、明スイの中で、真美さんファンです!ネットで、明スイ話題になってますし、メンバーのファンクラブあるんですよ!あたし、真美さんのファンクラブ副会長です!」

え、嘘!
明スイのファンクラブ!?
それに、メンバーのファンクラブ!?
わたしのファンクラブ!?
ネットで話題!?
ついに、わたしにも話題になる時期が来たのかも!

「ありがとうございます!春山ひかりさんですね。初めまして、多田本真美です。よろしく」

ちょっと気取って言ってみる。
すると、ひかりさんはスマホを取り出した。
何するんだろ。

「メアド教えてください。あと、写真いいですか?」

メアド…。
それって、メールアドレスの略しだよね。
スマホ持ってないー。

「すみません。スマホ持ってなくて。写真は、いいですよ!」

「スマホ持ってないんですね。それくらい明スイに打ち込んでて。素敵〜!では、写真お願いしま〜す!」

う〜!
夢だ〜!

131:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:36

11.今日は忙しい
「では、お願いしま〜す」

ひかりさんが写真を撮ると、キャーッっと言いながらスマホをしまう。
これで、良かったかな。

「ありがとうございましたぁ!」

そう言って、ひかりさんは走っていってしまった。
何か、気持ちいい。
芸能人って、こんな気分なんだ〜。
…って、明確ゼミ行かないと!
めちゃくちゃ走って、何とか15分前には着いた。

「ねえ、真美ちゃんだ〜!」

「写真撮る〜!」

「真美ちゃん、こっち向いて〜!」

本当にファンクラブ出来てるのかも!
マジで!?
こっち向いてって言ってくれた子の方を見ると、写真を連続で撮っている。
確か、レンシャってやつ。

「ありがとうございます。通してくれますか?放課後、用事を済ませたらでいいでしょうか?」

「は〜い、いいで〜す!」

この感覚、めっちゃ夢だわ!
どうして言うこと聞いてくれるの!?
みんな通してくれるし。
教室に入っても、いつもぼっちだったのにみんなが寄ってくるし。
わたしが夢見てる暮らしはこれだ!

「真美ちゃんって呼んでいいですか?筆箱にサインしてください!」

「真美さん、全国テスト頑張りましょうね〜!」

「また今度空いてますか?」

そんなにわたしのファンがいてくれてるなんて!
マフィンたくさん持ってきたら良かったよ、本当に。
明日、もっと作って持ってこよ!

「後で受け答えします。みんなで全国テスト頑張りましょう!」

そう言うと、教室中が活気づいた。
よ〜し、国語、数字、理科、地理、歴史、英語。
頑張るぞー!


お、終わった〜!
と同時に、教室の子達が集まってきた。

「筆箱にサインお願いします!」

「依頼してもいいですか?」

「また今度出かけませんかー?」

よーし!
受け答えるぞ!

「サインの筆箱どれですか?出してください。依頼お待ちしてます!いつですか?空いてたら出かけましょう」

飛び交う言葉。
わたしのために。

「この筆箱です〜!」

「はい、サインです、どうぞ」

よし、一人目終わり!
ネクスト!
次は、空いてるか空いてないか?

「明日どうですか?」

「明日は予定あります。明後日はどうでしょう?」

「はい!ぜひ!」

明後日、この人と出かける。
忘れないようにしないと。

「すみません。今から予定あるので、これで終わりにします。失礼します」

今日は忙しい!
マフィン作り、ひかりさんの受け答え、ファンの子達の受け答え、全国テスト、ファンの子達の受け答え、明スイ、ファンの子達の受け答え。
ネクスト、明スイ!

132:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:52

12.良かった
初めてカフェに行くので、今は軽い足取りで行く。
真ん中辺りの席にいたんだけど、ファンの子達がいっぱい!

「真美ちゃんも来た〜!」

「明スイ揃ったらカッコいい〜!」

超目立ってるじゃん。
わたしって、目立つの苦手なのに。
こんなに受け答え可能なんて。

「ちょっといいかな?俺たち、集まる時間もできないから、今はいいかな?この用事が済んだらでいい?」

隅木田くんが言うと、ファンの子は笑顔で去っていった。
受け答え、長くなりそう。

「ファンクラブ出来ててビックリだ。本当に」

坂宮がつぶやき、明スイメンバーは軽くうなずく。
尾崎姉妹は、笑いながらうなずく。

「あ、桃乃さん、桃音さん、どうぞ。マフィン作ってきました。坂宮と隅木田くんと矢本くんも」

みんなにマフィンを配る。
顔色をうかがいながら。
尾崎姉妹は、にっこにこ。
坂宮と隅木田くんも。
矢本くんは、無表情で受けとる。

「ありがとうございます!」

「サンキュー、真美」

「ありがとね、真美ちゃん」

良かった、うまく渡せて。
すると、尾崎姉妹が切り出す。

「今日は、パーティーのお礼をしたいと思ってきました!」

何だろう、楽しみっ!

133:絵菜◆8Q:2017/05/29(月) 20:52

13.矢本くんの笑顔
「パーティーを企画してくださった明スイの方々ですが、手紙を書きましたので、どうぞ」

桃乃さんが言い、手紙を4人全員に配ってくれた。
それに、2枚も。
今日だけで、3枚ももらってる。

「あと、真美ちゃんが配ってて、わたし達の何か、ちっこいのですけど、クッキーを焼いてきました。どうぞ」

クッキー!
明スイで作るクッキー以外、食べるの久しぶりだな〜。
いっつも、試食品だし。

「今、食べてください。感想聞きたいので」

目の前で食べられるんだ〜!
嬉しい。

「ん〜。美味しいです。クッキーの甘みが口の中いっぱいに広がって、後味が残るときも、甘みが残ってて素晴らしいです!」

わたしが、ヒマを真似してグルメリポートのように食リポをしてみる。
すると、尾崎姉妹、坂宮、隅木田くんは笑ってくれたけど、矢本くんも笑ってくれたのだ。
明スイの楽しさ、思い出したかな?
まだ、思い出せてないかな?

「ファンの子が待ってるので、わたし達はこれくらいでいいですよ」

あ、いいんだ。
尾崎姉妹って、控えめな印象なかったけど、しっかり周りが見れるいい子達かもしれない。

「今日はありがとね。僕、これを通してこの4人で明スイ頑張ろうって思えたよ。ねえ、みんな」

わたしは、にっこり笑って大きくうなずいた。
でも、矢本くんの反応が気になったんだ。
矢本くんに視線を流すと、矢本くんまでもが笑ってうなずいていた。
明スイ、続けてくれるかな。

「じゃあ、これで失礼」

坂宮が気取って言い、みんなでカフェをあとにした。
矢本くんに話しかけたい。
明スイをどうしていきたいのか知りたいから。
なのに…。
話しかけられない。
この空気を読み、隅木田くんが矢本くんに話しかけた。

「手紙サンキュー、矢本。でも、本当に引っ越すのか?」

「…」

矢本くんは、答えない。
沈黙が広がり、この場に居づらい。

「矢本は、明スイを抜けたいのか」

「いや。引っ越すのも、今日ので心、撃たれたから」

やっぱり、尾崎姉妹の企画、嬉しかったんだね。
それで心を撃たれ、明スイを続ける気になったかな。

「明スイメンバー来た〜!」

ん、いいとこなのにー!
でも、ファンサービスって感じで。
ってわたし、めっちゃ気取ってる!

134:絵菜◆8Q:2017/06/10(土) 13:44

14.わたしのまま
「真美ちゃん、こっちこっち!」

さっきのファンの子達だ。
カフェに来てた。

「真美ちゃ〜ん!さっき約束しましたよね〜?来てくださ〜い!」

「わたしたちも約束しましたよ!」

ファン同士の喧嘩!?
わたしが止められたら…。
隅木田くんをチラッっと見ると、うなずいている。
強そうな瞳で。
よし、わたしが!

「あ、…」

い、言えない。
せっかくファンができたのに、嫌われたらって考えて。
どうしよう。

「真美ちゃん困ってるよ。ファンの子達、やめてあげて」

矢本くん…。
ありがとう、ございます。
ヒマ。
ヒマのお兄ちゃん優しいね。
ひとりっこ…お姉ちゃんになるわたしには、この気持ちまだ分からない。
でも、きっと分かるようになるよね。

「ごめんなさい。真美ちゃん」

ファンの子達、謝ってる。
本当にいい子だね。
…って!
ファンサービス慣れてないから、めんどくさいとしか思えんっ!


ため息をついてドアを開ける。
家の匂いが落ち着かせてくれる。
はぁ〜。

「真美ちゃんおかえり。インターネット開いてたら、真美ちゃんの写真とかコメントがいっぱい。どうして?明スイで?」

「そうなの。だから、明確ゼミでも、前が見てないくらい大勢のファンの子が…」

下を向きながら言うと、おばあちゃんはクスッっと笑った。

「今までの真美ちゃんが好きなのよ。ファンの子は。だから、真美ちゃんは真美ちゃんのままでいないと」

わたしは、わたしのまま?
それって、いつものわたしでいるってことだよね。
…こういうことかな?
いつものわたしのファンだから、何かを変えず、いつものわたしでいる。
ってことは、矢本くんのファンも、抜けることはもちろん。
笑っていたらそれでいいんじゃないのかな。

135:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 09:24

15.忘れ物?
バスタオルを肩に、部屋で久しぶりに漫画を読んでいる。
最近は、明スイの活動がないけど、時々集合をかけてくれる隅木田くんだけど…。
ちょっと辛いの、かな。

「真美、電話だ。隅木田くんからだ。塾に忘れ物があったらしいぞ!」

忘れ物!?
え、わたし、カフェに忘れ物したのかな?
いやいや、忘れてない忘れてない。

「真美?起きてないのか?」

「あ、起きてる起きてる」

階段をかけ降りながら、パパが握っていた電話機を受け取る。
耳にあてると、隅木田くんの声が聞こえた。

「真美ちゃん、忘れ物してるよ。明スイのこと、考える暇がなかったとか?大丈夫?」

「へ?」

ど、どういうこと?
明スイのことを考える?
忘れ物?
頭の中が空っぽになって、何も考えられなくなった。

「明スイで、依頼がたくさん来た。その中に、ひとつだけやっていない依頼がある」

「聡日さんですよね?」

「アタリ。聡日さんの依頼だけ、明スイみんなで出ないことは差別だ。矢本も納得している」

確かに、差別だよね。
きっと、坂宮も納得したはずだし。

「でね、聡日さんの依頼は、変えてほしいそうだ。どうしてわたしはパーティーに出られなかったのって言われたから、もっと多くしてって」

そのことについても、差別だよね。
止めなかったわたしは、ひどい。
わたしのバカバカ、バカッ!

「明日、朝10時から夕方5時まで、聡日さんのスイーツについてを決めるんだ。だから、矢本の家に来てほしい。来れる?」

…わたし、ママのお見舞い行かなきゃいけないよね。
マフィンも冷めちゃうし。

「用事ある?用事済ませてからでも、真美ちゃんの力が必要だから、来てほしい」

「えっと、お母さんのお見舞いに行くんですけど、その後でもいいですか?お見舞いは、おばあちゃんの時間に合わせるので」

「そっか。いいよ。待ってる。じゃあね、おやすみなさい」

ピッっと音がする。
ピーッピーッピーッピーッ。


 ピーッピーッピーッピーッ
今日は早く起きようと思って、目覚まし時計をセットした。
久しぶりに聞いた。
っていうか、昨日の電話が切れたのと音が似てる!
最近夏は夏でも薄いパジャマに変えたから、そのパジャマを着ていると涼しい。
カーテンを開けると、あいにくの雨。
心も晴れない。

「お母さん、今日、菜和のお見舞いいくんですか?」

「ええ。真美ちゃんがマフィンを作ったから、あげたいと」

一階で、おばあちゃんとパパがしゃべっている。
もし、わたしが寝てたとして、(起きてるけど)わたしが起きたらどうするつもりっ!

「僕も行っていいですか?」

「もちろんです。きっと菜和も喜ぶに違いないわあ」

確かに、ママは大勢で自分のために何かしてくれると、すごく喜ぶもんな。
わたしより、やっぱりおばあちゃんの方がママのこと知ってるのかも。
そんなことを考えながら着替えると、服の間に紙が挟まっていた。

136:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 09:52

16.由来とは?
この服、本当に久しぶりだなあ。
黄色のワンピースの先に、ママアレンジの花の刺繍がある。
ポケットの中の紙を開くと、ママの字で手紙かな(?)が書いてあった。

真美ちゃんへ

ママは、真美ちゃんを産むとき、名前をたくさん考えました。
ママは、菜が付く名前って。
パパは、美が付く名前って。
おばあちゃんは、和が付く名前って。
みんなたくさん考えたのよ。
ふと思い当たった事件で、ママは数々の真実を知ることになった。
辛いことや嬉しいこと、たくさん。
それでママは、真美ちゃんにも、辛いことや嬉しいことを受け入れ、知り、優しい、いい子に育ってほしかった。
だから、『真美』にしました。
気に入らない名前って思ったこと、あるかもしれない。
でも、しっかり真実を受け止めて、自分らしく頑張ってください。

          ママ・菜和より

わたしの由来、知らなかった。
パパに、周りも見ることは大切って言われてたけど、付け足しで自分らしくって言われてきた。
わたしは、やっぱり、わたしらしく。
昨日おばあちゃんも言ってたよね。
真美ちゃんらしく生きなさいみたいなこと。
わたしのファンは、今のわたしのファンだからって。
ママ、どうしてこのワンピースに挟んだの?
どうして手紙なの?
謎が深まるなか、手紙を引き出しにしまい、一階に降りた。

「おはよう」

「おはよう、真美」

「真美ちゃんおはよう」

パパは新聞を読み。
おばあちゃんはパンを焼き。
わたしはボーッっと立ち。

「真美ちゃん、手紙、準備した?」

「うん。海の便箋に書いた。マフィンも、袋詰めしたよ。あと、パパとおばあちゃんにも、どうぞ」

袋詰めしてあるマフィンを、パパに。
そして、おばあちゃんにあげた。
反応は…?

「ありがとう。真美」

笑顔を思いっきりパパに向ける。
おばあちゃんの方を見ると、にっこり笑って、「美味しそう、ありがと」と言ってくれた。
そいえば、学校でのテスト、夏休み明けにあるよね。
わたし、塾の勉強しかしてない。
はぁ〜。
彦宮学園は、一学期のテストは、単元テストのみ。
だけど、二学期から急激にテスト量が増える。
勉強しないと。
夏休み明け彦宮テストってやつ。
順位も出るし!
ううううー!
嫌っ!

137:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 10:19

17.意外な繋がり
パパの車から降り、病院の自動ドアを通り、予防のシュッシュッってやるやつをする。
ママの部屋を開けると、本を読みながら寝ていた。

「マ〜マ!久しぶり!」

「あ、真美ちゃん」

わたしは、ママのベッドの側にあった椅子に座る。
おばあちゃんとパパも、同じように椅子に座った。
すると、隣のベッドで寝ていた人が言った。

「菜和さん、お見舞い?いいわねえ。何ちゃん?」

「多田本真美です」

「そうかいそうかい。わたしはねえ、夢花見すみれ。ずいぶん歳だけど、菜和さんが仲良くしてくれてるのよ」

夢花見すみれさんは、おばあちゃんくらいだろうか。
おばあちゃんのような笑みを見せ、シワを作って笑った。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
どこかで聞いたことがあるような、ないような?
夢花見さん、夢花見さん…。
あ!

「夢花見すみれさん。もしかして、夢花見京香さんの親戚ですか?」

「京ちゃん?京ちゃんの祖母だけど」

やっぱり。

「京香ちゃん、わたしと同じクラスなんですよ。仲良くしてます」

本当よ、本当。
たまにだけど、話すもん。
京香ちゃんって、いつも琴乃ちゃんといるもんな。

「京ちゃん、琴ちゃんと仲良かったらしいけどねえ。真美ちゃんとも仲良くなれたなんて。素敵」

夢花見すみれさんとも話ながら、ママとも話ながら。
そして、夢花見すみれさんが診察室に移動したら、手紙とマフィンをあげたんだ。

「まあ。ありがとう、真美ちゃん。夢花見さんと食べるわね」

と、おしゃべりして、しゃべることがなくなったから、病院を出た。
…さあ、今からは明スイだ!

「パパ、今から言う通りに行って。友達の家に行くから!」

138:絵菜◆8Q:2017/06/23(金) 22:49

18.ふたつの出来事
 ピンポーン
矢本くんの家の向こうの屋敷のドアフォンを押す。

「だからぁ!違うって言ってるだろ!どうして分からないんだ!美帆子、聞いてたか!?」

「嫌よ!あなたのことなんか聞かないわ。拓斗は、家で暮らすの!」

矢本くんの話でケンカ!?
この流れ、絶対言い争いだけど。

「美帆子のバカっ!拓斗の話を聞いてやれよ。もっといい学校行きたいって言ってんだよ、行かせてやれよ」

「残り1年くらい彦宮学園でいいじゃないの!引っ越すなんて、拓斗は絶対認めないから!」

勉強で引っ越すの?
明スイが嫌なんじゃないの?
あれ?

「真美ちゃん、いいよ。矢本の階の、キッチン来て」

あ、隅木田くんいるんだ。
わたし、遅いかも。
門を開けて、屋敷に入ろうとすると、母屋から梨歩佳さんが来た。
な、泣きながら。

「あ、真美ちゃん。あの時は、キツい言い方してごめんなさい。ちゃんと、反省したの。本当にごめんね」

「い、いえいえ。あの、どうして泣いてるんですか?」

梨歩佳さんは、ちゃんと戸惑い、振っ切るように上を見上げた。
まるで、選択を試みているかのよう。

「ちょっと、梨萌佳とケンカしたの。仲良くしたかったから、ショックが募るばかりで」

梨歩佳さん、嘘ついてる。
絶対、美帆子さん(?)と男の人のことに違いない。

「美帆子!」

「いやーーー!」

え!?
すると、梨歩佳さんが立ち止まって、母屋に向かって走った。
すると、途中で振り返り、ウインクした。

「梨萌佳と男友達と美帆子がケンカしてるんだわ。ごめんなさい」

いいや。
大人だと思う。
お母さんの声に似てるもん。
こっそり着いていって、真実を突き止めてやる!

139:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 10:28

19.真実は
梨歩佳さんが行って10秒後くらいに着いていく。
ドアを開ける音がした。
正面玄関は使ってないと思うから、ここのドアかな?
梨歩佳さんが入ったと思われるドアを開けると、大理石が敷き詰められたキッチンだった。
さすが矢本くんの家!
大理石って、すごい〜!

「ママ、パパ!辞めてよ。拓斗兄の好きにしてあげればいいじゃん!」

梨歩佳さんの声だ!
や、やっぱり両親なんだね。
ヒマと香音ちゃん、梨萌佳さんもいるのかな?

「お姉ちゃん、拓斗兄呼んで来て!しっかり話し合えばいいじゃん!」

ヒマの声だ!
すると、梨歩佳さんがこっちに走ってくる。
あわわわわ。
靴は持ってるから…。
隠れるしかない!
冷蔵庫とキッチン棚の間に身を潜める。梨歩佳さんは、気付かずに出ていった。
内心焦った〜!

「わたし、出てるね。ちょっと、紅茶出してくる」

ヒマの声がして、泣いているヒマが、キッチンに来た。
確か、紅茶出してくるって言ってたよね。
冷蔵庫も、キッチン棚も、来るんじゃないのっ!

「………ひっ!誰かいるわ〜!」

ヒマ、わたしに気付いたのかなっ!
どうしよう。
とりあえず、わたしってバレてでもいいから、悲鳴を押さえるしか…!

「って、マミ!?どうしてここに?」

「梨歩佳さんと会って、すごい音がしたから、どうしたのかと思って来ちゃったの。ごめんなさい」

「まあ。とりあえず出て。紅茶出したら、屋敷の、わたしの階へ案内するから。外で待ってて」

ヒマ…ありがとう。
怒らないでくれたし、招待してくれたし。
ヒマの階は、初めてだなあ。

黙って、ヒマの階への階段を上る。
ひとつの部屋の前でヒマは止まり、ドアを開けた。

「どうぞ。ここがわたしの部屋」

「ヒマの部屋、綺麗だね!」

「そんなことないよ。…で、ママとパパのことだけど」

あ…。
聞いちゃったんだもんね。
ごめんなさいだよ。

「拓斗兄が、パパとふたりで暮らすってことを、パパがママに言ったの。そしたら、ママは嫌って言った。そりゃあそうだよね。拓斗兄、何でもできるもん」

そうだったんだ。
…って、わたし聞いていいの!?
駄目な気がしなくもない。

「まあ、忘れてね。忘れられないと言われても、わたしたちのことだから。じゃあ、もうこの話は終わり。明スイでしょ?拓斗兄の階行きなよ。じゃあ、また夏休み明けに」

その時のヒマの顔は、悲しげだった。

140:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 10:56

20.抜けたいのか
「ああ、真美ちゃん。遅かったね。どうしたの?」

「いいえ。何でもありません。聡日さんのこと、何か決まりましたか?」

トートバッグから、明スイノートを取り出す。
しっかり書き留めてきたノート。
そこの新しいページのタイトルに、聡日さんの明スイ活動と書き込む。

「聡日さんには、マフィンをあげようと思ってるんだ。真美ちゃんが作ってくれたマフィン、美味しかったから。で、これはパーティーにしなくていいって言ってたから、聡日さんの家に行って渡す。って感じ」

パーティーしないんだ。
っていうか、またマフィン作るなら、もっと美味しくできそう!
楽しみだなあ。
すると、ドアが開いて、矢本くんが帰ってきた。

「矢本、ってことで、マフィン作ってみよう。渡すのは、明明後日でいいかな?」

みんながうなずいて、マフィン作りの練習が始まった。
わたしは、矢本くんと生地を作る仕事になった。

「よろしくね、矢本くん」

「うん。多田本、悪いけどそこのボウル取ってくれる?」

「うん。はい、どうぞ」

そう言えば、ちょっと前からハニーちゃんとか、ハミーちゃん呼びなくなったんだよね。
多田本って呼ばれてるし。
どうしてだろう。

「多田本、ごめんな。明スイ抜けるなんて言って」

「いいよ。矢本くんがやめたいなら、やめてもいいよ。やりたくないのにやってても、いいスイーツは作れないから」

「そうだな」

ああ、沈黙が広がっちゃった。
ごめんなさい。
でも、矢本くん、明スイ続けたいんじゃないのかな。

141:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:11

21.言っちゃった…!
「完成したな!うまそっ!」

すると、矢本くんが作ったマフィンをひっくり返した。
どうしてっ!

「おい、矢本!」

「ごめん。俺、ちょっと行くわ」

「矢本くん!」

ぐちゃぐちゃになったマフィン。
味見もしていないのに、これでいいかなんて分からない。
完成したばっかりなのに。

「矢本の家にいたら、ここの材料を使うことになる。俺の家に来て、作ろうぜ。さ、行こ」

そうだよね。
もう一度作り直すしかないよね。
でも、坂宮の家に行くなんて楽しみ!

「じゃあ、掃除して行くか」

隅木田くんが行って、ぞうきんやモップを借りて掃除する。
あれから、矢本くんは戻ってこないし、ちっとも気配がない。
どうしてひっくり返したんだろう。

「僕が返してくる。荷物まとめてて」

隅木田くんがぞうきんとモップを持ってキッチンを出る。
すると、矢本くんがキッチンに入ってきた。

「俺、マジで明スイ抜けるわ。じゃ、また会ったら」

「矢本くん、どういうこと?」

「さようならってこと」

え?
バイバイってことでしょ。
会ったらって。
会う気ないじゃん!

「矢本くん、ふざけないでよ!マフィンひっくり返して、抜けるだなんて!そういう人がいると、迷惑なんだよ!はっきり言いなよ!」

あああ、、、。
言ってしまった…。

「もう言ったよ。もう帰れ」

「もう帰りますよ!!!坂宮、行くよ」

隅木田くんは、キッチンの隅でわたしたちを眺め、帰るときに荷物を持って一緒に出た。

142:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:22

22.報酬ゲット
 ピンポーン

「明確スイーツ研究部です。聡日さんいらっしゃいますか?」

ここは聡日さんの家。
坂宮の家の前。
大きい家で素敵。

「ありがとう。美味しそうなマフィンだ〜!後で食べるね」

報酬ゲット!
聡日さんの笑顔。
家も素敵だけど、聡日さんの笑顔も素敵っ!
聡日さんにマフィンを渡し終わると、坂宮の家でくつろぐことにした。
マンションで、和室がない洋室のみの部屋だ。

「おじゃまします」

坂宮の部屋に案内してもらい、矢本くんのことについて話し合う。

「真美、よく言ったよな。女って尊敬する」

「矢本も、グッっと来たと思う。ナイスだよ」

「いえいえ。本当に良かったんでしょうか」

ちょっと、心配。
思ったこと言っちゃったけど、矢本くん嫌味言われたようにしか聞こえてないよね。
わたしの言い方からして。

「大丈夫。…ところで、これからの明スイ活動どうする?」

「また今度、8月に夜店あるよな。明スイで出してみないか?」

坂宮が言い、隅木田くんもいいと言ってくれた。
もちろん、わたしも。
屋台出せるなんて、夢みたい。
初めての、本当の報酬だ!

「やってみるか」

うん!
矢本くんも、真実をしっかりして、受け止める。
それがわたしの由来だよね。
出来たら、帰ってきてほしいけど。
ねっ!

             (つづく)

143:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:29

あとがき
               絵菜

こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元モンブランの絵菜です。
ついに5巻!
ここまでこれて嬉しいです。
夏休みに入った真美ちゃん。
矢本くんに言ってしまい、いなくなってしまい、ショックを受ける。
そんな中の明スイ活動。
わたしも、ドキドキしっぱなしです!

皆さん、梅雨ですがいかがですか?
雨で、外に出られないので、ぜひ明スイを楽しんでいただけたら嬉しいと思います!
自信をなくしていた中、コメントしてくださった玲葉さん!
ありがとうございました。

昨日、期末テストが終わりました!
あまり出来なかったと思うので、また頑張っていきます!
と、ここで雑談は終わりにして。

次回の6巻は、矢本くんが帰ってくるのか、帰ってこないのか!
これは言えませんが、屋台を出しますよ!
新しい新キャラクターも出ます!
では次回会いましょう。

144:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 19:03

『ここは明確スイーツ研究部!6』

登場人物

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

145:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 19:34

1.お出掛け
暑い日射しがキツい夏の朝。
おばあちゃんが庭の花のお手入れをしていた。
花、喜んでるだろうな〜。
おばあちゃんのお手入れは優しく、気持ちいいと思う。
こんな暑い日も負けないだろう。

「今日から8月、皆さんも頑張っていきましょう。では、また明日!」

アナウンサーの七井さんが手を振り、朝のニュースが終わった。
わたし、七井アナウンサー、ファンなんだよね。
食レポも上手いし、声高いし。

わたしは、多田本真美。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
ただいま夏休み真っ只中。
夏休みは、部活があるのもある。
わたしの部活はないけど、明確スイーツ研究部っていう、スイーツを作ってプレゼントする組織はやってるよ。

七井アナウンサー、かっこいいな。
髪の毛をいつもアレンジしていて、化粧も濃すぎない。
美貌っていうのだよ。

「真美、今日は晴奈ちゃんと遊ぶんだよな。気を付けて行ってこいよ」

「うん。久しぶりにふたりで遊ぶの。いつも一緒にいるヒマは旅行中、ユリは家族でプールだって」

パパは、今日も仕事で忙しい。
ママも、妊娠中で入院してるからいないんだ。
おばあちゃんと出掛けることはあるんだけど、パパとママも一緒に行きたいけど…夏休み中は無理そうかな。

「今日は何をして遊ぶんだ?」

「今日はねぇ。ふたりで昼ごはんを作ってみるの。ハルの家で。で、一緒に隣の町のショッピングモール行くの」

「迷惑かけないようにしろよ。…ショッピングモールか。ママと赤ちゃんとパパとおばあちゃんと真美で行きたいな」

うん!
そこのショッピングモールは、他の県からも来る人がいて人気。
オソロイの物を買ったり、プリクラ撮ったりするんだ!

「じゃあ、そろそろ行ってくるね。行ってきます!」

スニーカーを履き、お気に入りのカチューシャをして、自転車に飛び乗って家を飛び出した。

146:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 21:16

2.オムライス作り
ハルの家まで行き、ドアフォンを押す。ハルっていうのは、緑川晴奈。
わたしの幼なじみ。
わたしがヒマーーー矢本陽茉理とケンカしたときも、味方でいてくれた。

「あ、真美ちゃん?ちょっと待ってくれる?」

わぁ、ハルのお母さんの声だ〜。
ハルのお母さんは、新聞を配達する仕事についている。
どうして知っているかと言えば、ママも昔そこで働いていたから。

「マミ!入って入って!」

ハルがドアを開けてくれて、ハルの家に入る。
久しぶりに来たな。
6年生になって来てないから…。
何ヵ月ぶりだろ。

「おじゃましま〜す」

ハルの匂いだ。
何となくだけど、花園の匂いがして、すごくいい匂いがするんだ。

「マミ、荷物そこ置いて。今日作るのは、オムライスだよね」

「うん!」

そう。
今日のメニューはオムライス。
ふんわり卵を使って、ケチャップのチャーハンに乗っかった卵…。
美味しくできるかなっ?

「じゃあ、作ってみるか」

時計を見上げると、11時を回ったところだった。
1時間あれば出来るはずだし。

「エプロンして。早く作ろ〜!」

そうだね!
オムライス早く食べて、ショッピングモールへ早く行きましょ〜!

147:絵菜◆8Q:2017/06/25(日) 08:09

3.憧れのスマホ
「真美ぃ、やってぇ。できなぁい」

ハルったら〜!
玉ねぎを刻んでいたら、ボロボロと涙で崩れたハル。
プッ!
顔がおかしくて笑っちゃった!

「ちょっとぉ!何がおかしいのよぉ」

「なんでもないなんでもない。やるから、ハルは休んでていいよ」

「ホント?ありがとう!」

ハル、本気で休む気か…。
「いいや、いいよ。わたしも何か…」って言わないのかい!
まあ、いいけどね。
ハルの家でやらせていただいてるんだもの。

「ねえ、真美。ちょっとお姉ちゃん呼んでもいい?」

「いいよ!…久しぶりだなぁ。すっごく楽しみ!」

ハルのお姉ちゃんーーー緑川愛奈ちゃん。公立の紅北中学校1年生。
紅北中学校は、わたしが小学校も中学校も受験しなかったら通うところ。
つまり、地区の中学校。
愛奈ちゃんは、受験しなかったみたいだから、紅北中学校にいるんだ。

「お姉ちゃ〜ん!」

2階へ向かって、ハルが声をかける。
すると、スマホを握った愛奈ちゃんが来た。

「愛奈ちゃん久しぶり!わぁ、スマホカッコいい〜!」

「真美ちゃん!お久しぶり〜。スマホねぇ、春休みに買ったの〜」

スマホの裏側は、デコストーンでデコしてある。
まさに、中学生女子。って感じ。
可愛いな〜。
わたしもスマホ欲しい〜。
私立彦宮学園ーーーわたしが受験した学校で、小学校、中学校、高校とあるんだ。
そこでは、スマホの利用はOK。
授業以外は学校で使ってもいいんだ。
ヒマは持ってるけど、わたし、ハル、ユリは持っていない。
だから、ヒマに憧れるんだ〜。

「真美ちゃん、バイバイ。わたし、朝練今からだから。じゃね」

「バイバ〜イ!」

スマホ、ママに頼んでみよっと。

148:絵菜◆8Q:2017/06/25(日) 08:21

4.デビュー!
「いっただっきま〜すっ!」

ハルと声を合わせて手を合わせ、オムライスへスプーンをのばす。
とろけるようなふわふわ卵。
ケチャップがよく聞いたチャーハン。

「ん〜!美味しい。卵、さすがだね!ハルのお母さん、ありがとうございました!」

「いえいえ」

ハルのお母さんは、ニコリと笑って、2階へ上がっていった。
もう、ホンットうまい!
また今度、ママに作ってあげよっと。

「マミマミ!これ美味しいねぇ!」

「うんうん!早く食べて、ショッピングモール行こっ!」

「いくいく!」

スプーンを握りしめて、オムライスにスプーンをガツガツ入れるのでした。

ふぅ。
お、大きい…。

「ここがショッピングモールかぁ。お姉ちゃんも来てたよぉ」

へぇ。
大きな入口に立ち尽くしていて、め、迷惑かもっ!

「とりあえずハル、入ろっ!」

うんうん。
そうだよそうだよ!
ハルも大きくうなずいて、『ショッピングモールin友達と』デビューした。

149:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 15:37

5.しょっちちゃん
ハルと、まずは文房具屋を見た。
ペンや鉛筆、ハサミ、キャップに消しゴムまで…。
たくさんの種類があるけど。

「マミ、あの子だよ!この前、わたしが通ってるギター教室の子!」

ハルが指差した方には、楽しそうにワイワイしている女の子達がいた。
ハルは、ギターを習っている。
ちなみに、英語も。
ハルの将来の夢が看護師だから、英語を勉強してるんだって。
ギターは、ハルのお母さんの勧めって聞いたけど。

「お〜い、しょっち!」

ハルが声をかけると、女の子達が振り向いた。
その中でも、ひときわ目立つ女の子が近寄ってきた。

「ああ〜!はるるんじゃ〜ん。となりの子と来たの?」

「うん!この子、マミってゆーの」

ハル、何となく人柄変わったっ?
女の子は、小さな紙を渡してくれた。

「ハロー!マイネームイズ、沼野…潮河ちよみ〜!よろしく!」

潮河ちよみちゃんは、名刺みたいなのを配っていたみたい。
名前、潮河ちよみデェス!。
年齢、11歳小6ダヨっ!
ヨロピクピク〜!
と書いてあった。

「初めまして。多田本真美です。ハルの幼なじみです」

ちよみちゃんは、「潮河の『し』ちよみの『ちよ』で『しょっち』って呼ばれてんの!よろね、じゃ」

しょっちちゃんは、手を振りながら友達の輪に戻っていった。

「マミ、せっかくだし、このショッピングモール限定の友情お守り買ってかない?」

「いいね。このピンクの友情お守りにしよっかな〜」

「わたしは、好きなオレンジで!じゃあ、さっさと会計済ませて遊ぼ!」

ちょっと思ってた以上に高かったけどね、わたし達の友情、そんなに安いものじゃないよ!
っていうか、買えないよっ!

150:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 17:21

6.彦宮道の夜店
結局、友情お守りに加えて、ボールペン、コンパクトな、小さなハサミも買った。

「オソロイで学校行くの楽しみだね!わたし、明日からある部活も頑張れるかも!」

ハルは、バドミントン部。
わたしは、あこちゃんとのことがあって、バドミントン部をやめた。
つまり、元バドミントン部なんだ。
今は、華道部ーーー花を活ける部活だよ!華道部は、夏休みに部活がないって理由で入ったんだけど、楽しいんだ!

「マミが活けてくれた花、キッチンに飾ってあったけど見た?」

「え、あったっけ?」

わたしが、一番始めに生けた花、スミレとバラの、タイトルは『犬と猫』。
ハルにあげたんだぁ。

「せっかく飾ったのにぃ」

「ごめぇん」

「ん、いいよいいよ!分かりにくいとこに、正式に言えば隠したんだもん」

なら、分かるわけないでしょ!?
文房具屋の前でおしゃべりしていたことに気付いて、ちょっと後ずさりしながら休憩スペースへ移動した。

「こんなに大きい声が出てると思ってなかったよっ!」

ハルが言い、一番近い休憩スペースに腰をおろす。
自動販売機でカルピスを買い、飲みながらまたおしゃべりを続ける。

「ねえねえ!再来週さ、彦宮道で夜店あるでしょ?それ、わたしとマミ、ヒマ、ユリで行かない?」

「いいね!みんなで浴衣来たらどうかな?」

「浴衣っ!いいね〜!」

彦宮道とは、わたしたちが通っている彦宮学園を囲う道のこと。
毎年1回ずつ行われるのだ。

「4人で夜店、楽しみ〜!あ、あそこに浴衣のお店あるよ!ちょっと見に行ってみよ!」

カルピスをカバンに入れて、カチューシャをし直して。
ハルと一緒に浴衣屋へ走った。

151:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 17:36

7.女の子
「真美ちゃん、ファンの子がちょっと減ったみたいだねえ。明スイ」

おばあちゃんがインターネットを開きながらつぶやいた。
ファンの子、減っちゃったんだ。
わたし、坂宮、隅木田くん、矢本くんで活動している、明確スイーツ研究部は、解散するところだった。
でも、何とか食い止めたものの、矢本くんが抜けかけている。
何とかして止めなくてはならないのに、わたしは怒ってしまった。
…反省してるんだけど。
矢本くん、インターネットでブログ書いてるらしくて、それで明スイのこと書いてるらしいんだよね。
それで、矢本くんのファンがいなくなっちゃったのかな。

「真美ちゃんのファンもいるでしょ?すごいじゃないの」

そう。
明スイメンバーのわたしも、目立ちたくないのに、気付いたら目立ってた。
ちょっと慣れてきたけど。

「真美ちゃん、そう言えば、菜和から電話があったのよ」

ママからっ?
菜和とは、ママのこと。
妊婦さんだから、入院してるんだ。

「電話かけるね」

病院に電話して、看護師さんに要件を伝えて、ママに代わってもらう。

「もしもし」

「もしもしっ!真美だよ!マフィン、夢花見すみれさん、何て言ってた?」

夢花見すみれさんーーークラスメイト、夢花見京香ちゃんの祖母。
ママとベッドが隣なんだ。
この前マフィンをあげたときも、夢花見すみれさんと食べるって言ってて。

「喜んでたわよ。でも、一昨日退院したの。クラスメイトの京香ちゃんに、おめでとうって言ってあげたら?」

そうだね。
京ちゃんこと京香ちゃんは、同じ華道部だし、部活の時に言おっと。

「何の用だったの?」

「ああ。赤ちゃんの性別が分かったのよ。女の子だった」

女の子!
じゃあ、借りては返し、借りては返しを繰り返していた男の子の名前の本は返そう。
女の子の本を中心に、また借り直してみるか。

「お母さんから聞いたわ。真美ちゃんが、赤ちゃんのこと考えてくれてるって。ありがとう」

「うんん。妹が出来るんだもの」

ママは笑って、就寝時間ということで電話を切った。

152:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 18:18

8.ばあばの喫茶店
翌日。
カーテンを開けると、久しぶりの雨だった。
バドミントン部は、中部も外部もあるから、ハル、大丈夫かなぁ?
さっと着替えて、トートバッグに、女の子、男の子の本を入れる。
そして、カッパを着て、自転車に飛び乗った。
今日だけはおばあちゃんも用事があるし、パパは仕事で帰ってこられなかったから、ひとりだった。
そのまま図書館へ向かう。
元から、トートバッグにはサイフを入れてあるため、図書館のカードはしっかり入っている。

「お願いします。あと、女の子の名前の本、もう一度借りるのでいいですか?」

係りの人のOKをいただいて、女の子の名前のコーナーへ行く。
実は昨日、ママとの電話が終わると、隅木田くんから電話がかかってきた。
今日、朝8時30分から明スイ活動とのことだった。
それまでに、図書館、朝食を済ませなければならない。
朝食は、家ではなく、パパのお母さんの方が経営している喫茶店だ。
図書館のとなりに位置するので、鍵を持っていて、母屋で喫茶で出すものをもらうのだ。
こっちのおばあちゃんは、ばあばと呼ぶの。
本をさっと選び、借り、喫茶店へ自転車を走らせた。
何となく、大雨が涙に感じて、ママのことが頭をよぎった。
赤ちゃんの性別が分かったってことはだよ?
相当大きくなったってことでしょ?
ママの体調が悪化するのが比例したらどうしよう!
母屋のドアを開けると、ばあばとじいじはいなかった。
もう仕事をしているのだろう。

「ばあば〜」

「真美ちゃんかい?」

ばあばの声が聞こえる方へ進む。
久しぶりに会ったな〜。

「ばあば!久しぶり!」

「久しぶりだねぇ。もうこんなに大きくなって。ここにトーストがあるからお食べ」

ダイニングの机に乗っているトーストは、こんがり焼けていて、マーガリンが溶けかかっている。
ん〜、美味しそう!

「いっただっきます!」

喫茶店に広がるトーストの匂いに混じって、わたしの大きな声も響いた。

153:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 18:39

9.どうするか
「じゃあね、ばあば」

ばあばの喫茶店を出て、ちょっと遠いけど、坂宮の家まで雨の中走る。
車がどんどん走っていくけど、自転車でゆっくり進んでいて、疲れる。
目の前で車が走ってるからかな。

 ピンポーン
ドアフォンを押して、坂宮の家におじゃまする。

「おじゃまします」

坂宮の家に来るのは、これで2回目。
まだ、隅木田くんは来ていないらしく、坂宮の家の客間へ通してくれた。
坂宮の家はマンションなんだけど、客間付きなんてすごいよね。
ちょっとすると隅木田くんも来て、相変わらず矢本くんは来ずに始まる。

「僕的に、彦宮道祭りにしたらと思うんだ。どう?」

彦宮道祭り…!
ハルと約束した日でもある…。
ど、どうしよう。

「で、お店の名前だけど、明確スイーツ研究部。そのままでいいと思う」

うん。
それに関してはいいと思う。
それで集まってくれるかもしれないしね。

「それから、メニューはこれから考えるとして。彦宮道祭り、店名に意見等ある人」

わたしは、手を挙げざるを得なかったんだ。
だって、先に約束したのはハルだし、彦宮道祭りって聞いてなかったし。
隅木田くんに指名されて、立つ。

「彦宮道祭りは、幼なじみの緑川晴奈って子、矢本くんの妹の、矢本陽茉理って子、その子と一緒にいた、利等万由里歌って子と、夜店に行かないかって話してて」

先に明スイで屋台出すって決めてたのに、怒られるに決まってる。
勝手に決めつけてたけど、ふたりとも怒らずにいいよって言ってくれた。
う、嬉しい。
こんなことになるとは、思ってなかったから。

「そこの屋台が無理だと、隣町の屋台しかないかな。でも、遠いんだよな。どうする?屋台出す?」

「すみません。わたしのせいでこんなことになってしまって」

隅木田くんは、首を横に振り、また対策案を考えてくれている。
わたしも考えないと。

「出すのは決まりだよ。絶対出すぞ」

坂宮、意志強い、偉いっ!
でも…どうすればいいの〜?

154:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 19:12

10.一緒に
「…ああああ!!」

これだ、これだ〜!
やっと見つけたぞ〜!
解決案、わたしが見つけたぁ!

「どうしたの?真美ちゃん」

「思い付きました。これですよ!わたしと行く、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんも一緒に屋台出すのはどうですか?」

隅木田くんと坂宮は、はあっ!っと、喜んだ顔をしたけど、またがっかりしな顔になった。
え?
どうして?
何か、不備でもあるかな?

「真美ちゃん、迷惑かかっちゃうし。無理だよ」

「いいえ。晴奈ちゃんは、料理が好きですし、陽茉理ちゃんは、食レポが上手いんですよ!味見なら持ってこいですから。由里歌ちゃんは、ずっと料理部入ってたんですよ?いいじゃないですか!」

ちょっと語尾を強調して言う。
すると、坂宮の目には活気が戻ってきたんだ。

「真美、ナイスアイデア!」

隅木田くんも賛成らしく、拍手してくれた。
わぁ〜、良かった〜!
でも、問題はこの先。
ハル達がOKしてくれるかどうか。というところ。
OKしてくれなかったら無意味だし。
でも…隅木田くんの言う通り迷惑だったら…。
いやいや、きっといいって言ってくれる…かな。
お願いします、いいって言って…ください!

155:まい◆8Q:2017/07/01(土) 20:28

絵菜→まいに変えました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.メニューとは
そのあと、一緒にハル、ヒマ、ユリに電話をかけて聞いていった。
たまたま、ヒマの電話番号を明スイメンバーであるわたしたちが知っていて、そこでユリの電話番号を聞いたと言うわけ。

「そう。うん、ん。ありがとう、じゃあ、夏休み明けね、うん」

最後の、ユリとの電話を切る。
最高の会話だったよ!
ユリ、テニスの試合で優勝したんだってね!
すっご〜い!
さっすがユリ!

「で、利等万さんどう?」

「OKでしたっ!」

満面の笑みで言うと、ふたりともすごく喜んでくれた。
良かった〜!
ハルの意見で、わたしを含めて女の子4人は、浴衣を着てやることになったんだ。
それには賛成してくれたわけで。
楽しくなりそうだな〜。

「じゃあ、メニュー決めよっか。僕の意見は、怪盗日本が来たときの合わせたのみたいにすること」

あああ。
怪盗日本ーーー怪盗日本(ジャパン)は、彦宮学園の名物の時計だ。
彦宮時計と言う。
これの時、避難してたんだけど、どうしようもなく騒がしくて。
どうにかして食べ物の補給ということで、明スイメンバーで作ったんだ。
マドレーヌとムースを合わせてマドレムースにしたりとか。
美味しかったな、あれ。
今回は、シュークリームとカップケーキを合わせてシューカップみたいなの作ってみたいなぁ。

「どう?」

「い、いいと思います!」

手を挙げながら言い、坂宮の方を見ると、坂宮もニヤッっと笑ってOKサインを出す。
よ〜し!
この前より進化した美味しいスイーツ作るんだから!
絶対売り切れまで持ち込むぞ!
坂宮は、ノートを取り出して、ペンに『彦宮道祭り』と書く。
隅木田くんに回して、____+____=_______と書いていた。
シュークリーム+カップケーキ=シューカップ!
あ!
わたしが作ったマフィン、これはそのままで売りたいな〜!
いや。
売るんじゃなくて、買ってくれたらおまけにしよう。
我ながらいいアイデアだ!
挙手して当てられると、シューカップの話、マフィンの話をして、にっこり笑ってうなずいた。

156:まい◆8Q:2017/07/01(土) 20:41

12.虹を探して
トートバッグの中に、ちょっと濡れてるカッパの袋、寄り道して100円ショップで買ったノート。
そして、女の子の名前の本がたくさん入っている。
虹が綺麗。
小さい時に考えたっけ。
そいえば、こんなことあったような、ないような…。

ママが虹を作ってくれる。
シャワーから虹が出てる〜!
幼なじみであるはるなちゃんと虹を見て喜んだ。
すると、本物の虹が空高くを架かっているのが見えた。

「まぁみちゃん。虹、追いかけよぉ」

「いいよ、はるなちゃん!虹の上に上ってダンス踊ろう!」

そう言って、ママが車で運転してくれて虹を追いかけた。
でも、先が分からなかった。って。

あのとき、どうして虹を探したんだろう。
…産まれてくる赤ちゃんに、虹を探そうとしてたら聞いてみよ!
きっと、同じこと考える…はず!

自転車を停めて、カッパも干して、家のドアを開ける。
まだ誰もいない。
鍵を内からかけて、部屋へ入る。
わたし、何か大きな忘れ物してる気がするんだよね。
普通に、夏休みを満喫中。
満喫中ーーー遊び中ーーー遊びーーー。
。。。、、、…。。。…!!!

「ぎょえーーーーーーーーーー!」

き、近所迷惑だっ!
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイッ!
何となく、明スイのことが頭にいっぱいでぇ!

「宿題やるの忘れてた〜!」

157:まい◆8Q:2017/07/02(日) 09:21

13.名付け親
プリント終わりっ!
ふ〜!
算数って、やっぱり時間かかるぅ〜!
ヒマが羨ましいな、本当。

「ただいま〜」

あっ、おばあちゃんだ!
再来週の彦宮道祭りのこと、話さないと。
一階へ降りると、おばあちゃんのとなりにママもいた。

「えええっ?ママっ!?」

ママはにっこり笑って、わたしを抱きしめてくれた。
もちろん、優しく。
いつもよりも。
赤ちゃんがつぶれちゃうものね。

「久しぶりかしら。真美ちゃん、いつも赤ちゃんのこと考えてくれてありがとう」

「うんん。名前のことくらいしか考えてないけど」

ママはクスクス笑って、おばあちゃんと、わたしと。
リビングに入って、ゆっくり話すことにした。

「赤ちゃんの名付け親は、真美ちゃんかしらねえ」

この子の名付け親がっ!
わたしになるの?

「菜和、里尾家の伝統を守りなさい。真美ちゃん、里尾家はね、名前を書いた紙を草舟に乗せて、一番速くゴールに着いた名前に決まるのよ。真美ちゃんが子供を産むときも守ってね。これを続けていくのよ。その家族、祖母祖父が参加するの」

へえ。
ってことは、わたしもぉっ!
おばあちゃんの方を向くと、にっこり笑ってうなずいた。
わたしの名前が採用されるかもっ?

「わたしは、七海ちゃんだよ」

おばあちゃんが言う。
七海ちゃんかあ。
かわいい名前だなあ。
由来は、誰にでも優しく、広い心を持ってほしいから。だそうだ。

「ママは、特に決めてないわ」

ふうん。
わたしもぉ、決めてないけど。
かわいい名前がぁ、いいかなぁ。

158:まい◆8Q:2017/07/02(日) 09:50

14.みんなで作ってみる
「初めましてかな。僕は隅木田優斗。よろしくね」

「俺は知ってるだろ」

何よ、坂宮。
改めて自己紹介したらいいのに。
今日は、屋台に出すものを作ってみるんだ。
ハル、ヒマ、ユリも一緒に。

「初めまして。わたしは緑川晴奈っていいます。よろしくお願いします」

「こんにちは。お兄ちゃんがお世話になってたと思います。矢本陽茉理です。よろしくお願いします」

「初めまして、こんにちは。利等万由里歌です」

みんなが自己紹介し終わり、みんながみんなの名前を覚えると、役割分担をすることになった。

「まず、味が重要なシューカップは、僕と矢本さんね」

ああ、食レポのヒマか。
で、次は何?

「カップケーキを、おまけで作るのは、真美ちゃんひとりで。この間作ったのをアレンジしてみて」

はい!
ひとりで作るのは寂しいけど、みんながいるし…いいよねっ!
あとの、ハル、ユリ、坂宮は?

「で、利等万さんは、一番難しいクレースをお願い」

クレース?
後から隅木田くんに聞いてみた結果、クレース=クレープ+ムースだそうだ。そこに補助で、わたしが入ると。
そういうことね。

「で、緑川さんと坂宮で、チュロス。作ってみて」

まだまだ、これでメニューは全部じゃない。
ここは、ヒマの家。
広いキッチンーーーヒマの階を使わせていただいている。

「じゃあ開始っ!」

隅木田くんの号令で、みんなが手を動かし始める。
今日は、8時集合にしたんだけど、終わる予定は6時。
遅い…。

「ユリ、頑張って作るよ!」

「うん!クレープの生地は、部活で習ったから、アレンジ方法とか考えたり作ったりしてて。助けがいるなら、わたし手伝うから!」

ありがとう!
そういう目でうなずき、アレンジ方法を考える。
ハルと坂宮も、仲良くヒマのスマホを見ながらチュロスの作り方を調べている。
よーし!
作ってみるぞ!

159:まい◆8Q:2017/07/02(日) 10:15

15.妙な気持ち
よーし!
この前マフィンを作ったときは、そのままで作った。
でも今回は、板チョコを小さくして、それをそのまま焼く。
ちょっと溶けて、そこをデコレーションチョコレートで可愛くしたら!
きっと人気になる…かな!

「陽茉理ちゃん、ナイス!これでいこうか」

隅木田くんの声が聞こえた。
さっきまで矢本さんって呼んでたのに、陽茉理ちゃんって呼ばれてた。
…何、わたし!
何て呼ぼうが関係ないでしょ!?
うんうん。
そうよそうよ。

「どうしたの真美。ヒマの方ばっかり見て。どうかした?」

ユリ、するどい!
ちょっと見てただけなのにぃ。
ユリは、ニヤッっと笑う。
って!
恋愛とかって想像してるでしょ!
違う違う、全然違うーっ!
もーう!
ユリったらーっ!
ちょっと笑みを混ぜてユリをにらむと、ユリは凶悪の苦笑いをしていた。

「よし!」

そう言って、一応この前作ったのと同じように作っていく。
あ、生地は、ストロベリー味も準備したんだ!
チョコレート味も!
この3種類を作る予定だよっ!

「晴奈、スマホ取って」

坂宮はハルのこと呼び捨てかあ。
別に、坂宮は何とも思わないけど。
名前でハルが呼ばれてても、ふうん。そうですか。って感じ。
これって、何っ?

160:まい◆8Q:2017/07/02(日) 10:30

16.エスカレートする気持ち
「ユリ、ちょっといい?」

ストロベリーの生地、チョコレートの生地が同時に出来たので、ユリに手伝ってもらう。
ヒマのキッチンに、この前とは違うマフィンの匂いが香りたつ。

「いい匂い。さすが真美ちゃん」

「い、いえいえ」

隅木田くんが言ってくれると、何となくポッっと顔が赤くなった?
ちょっと、今のどういうこと?

「マミ、体調悪い?顔が赤いよ」

ユリっ!
お願い、ウソって言って〜!
「いえいえ、大丈夫です」って、言えないんだけどーっ!

「真美ちゃん大丈夫?陽茉理ちゃん、どこか、休めるところある?」

「はい。わたしのお部屋で良ければ」

うわーっ!
わたしが体調悪いってことで話しちゃってるーっ!
違うって言わなきゃなのに言えないよーっ!
どうしてどうして!

「僕が付き添うよ。陽茉理ちゃんは、シュークリームが焼けるのを待ってていいから。真美ちゃん、行こ」

「隅木田さん。わたしが付き添いますから。わたしのお部屋、やっぱりわたしがいないのに入るのは…」

「そうだね」

隅木田さん呼び!?
先輩じゃない〜!?
わたし、どうかしちゃってるよ!

「ヒマ、わたし、大丈夫〜!」

「いやいや、休んで」

「いいいいいいい、いいですぅ!」

あああーっっっ!
もう、どういうことなのっ?

161:まい◆8Q:2017/07/02(日) 19:58

17.恋っ!?
ヒマは、ちょっとため息をついて、隅木田くんと一緒にまた作り始めた。
羨ましいよ〜!
やっぱりわたし、変?
どうしてそんなこと思うの?
え〜?
どうしてなの〜?

「マミ、ちょっと」

ユリに呼ばれて、キッチンの隅に移動する。
何となくだけど、ユリはニマリと笑っている。
ちょっと、何か仕組んだ!?

「マミさぁ、隅木田先輩のこと好きなの?やっぱり」

「はぁぁん!?」

ヤバイ、大きな声出ちゃった!
あわてて口を押さえて、ユリの方を向き直す。
だって、どうして、何でっ?

「すっごく、隅木田先輩の方見てるから。それに、恥ずかしそうに顔を赤らめて」

「…えええ!?」

「わたし、応援してるからっ!」

ちょっ、ユリっ!
わたしはねえ、隅木田くんが好きじゃないの!
…いやいや、好きだよ。
友達とし、て…ね?
…。
本当にそうだよ、ね?

「真美ちゃん、ちょっとそこにあるノート取ってくれる?」

隅木田くんのことを考えていると、隅木田くんが話しかけてきて驚いた。
ノ、ノート持ってきてってっ?

「はい、今行きます」

隅木田くんのノートには、『明スイノート 隅木田優斗』と書いてある。
ちょっと触っただけなのに、幸せ。
何となく嬉しい。

「マミ、ファイト!」

そうだね!
もしかしたら、恋か、、、な!

「うん!」

隅木田くんのノートを手に、隅木田くんのところへ行く。
ちょっとずつ、隅木田くんに近づいていってるっ!
鼓動がぁっ!
 ドクドクドクドクドクドク!

「はいぃぃ!ど、どおぞぉぉぅっ!」

「ありがとう、真美ちゃん」

隅木田くんがにっこり笑うと、わたしの心にハートの矢が刺さった。

162:まい◆8Q:2017/07/02(日) 20:38

18.ヒマもっ?
「じゃあ、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんありがとう。さようなら」

みんな、名前でちゃん付けっ!
ちょっとヤキモチかな。

「あ、由里歌ちゃん、ひとりでクレープ、どうもありがとう」

「いえいえ。気を付けてお帰りください」

そう。
わたしたちは、残って女子会しながら夜ご飯をいただく。
そして、ヒマの家の車で帰らせていただくというシステム。

「隅木田くんっ!坂宮、バイバイ!」

わたしが思いきって言ってみると、隅木田くんは笑って手を振ってくれた。
ん〜!
カッコいい〜!
勉強も出来て、かっこよくて、優しくて紳士っ!
完璧じゃないの!
ふたりが帰ると、キッチンを片付け、掃除し、となりのヒマの部屋での女子会だ。

「さあ!ハル、マミ、ユリ!恋バナしよう!恋バナ恋バナっ!」

す、隅木田くんのこと話さなきゃいけないのかなっ?
いやいやいやいや、いやです〜!

「まずは、ハルの好きな人から!」

ヒマの司会で、みんなの視線がハルへ集まる。
ハルは、戸惑いつつも、前かがみにして、小さな声で言った。

「ふ、じ、も、と、せ、ん、せ、い」

ふ、藤本先生〜!
それは、学年主任の40代の先生。
ま、まあ、優しいし、か、カッコいいのかなあ?

「何かさぁ、笑顔がかわいくってさ、英語習ってるから、英語どんどん発言出来るでしょ?当てるときがかっこいくって!」

ハル、乙女だぁ。
わたしは、隅木田くんの時も乙女にならないと思うけど、ハルが乙女になるときは見たことない。

「じゃあヒマは誰なのよっ!」

「えへへ、わたしはねえ…。隅木田さん!」

ええ…!
隅木田くんなのっ!?

163:まい◆8Q:2017/07/02(日) 20:54

19.ユリは
「さっきぃ、優しく教えてくれたし、一目惚れしちゃったぁ。でも、彼女がいるんだって」

か、彼女いるの!?
聞いたことなかった!

「ちょっと残念だったけど、あきらめずに隅木田さんを好きでいるよ!」

ヒマも、恋したんだ。
わたしは、今日恋って気付いたのに。
ヒマは素早いな〜。

「マミは誰なの?」

ヒマに聞かれて、一瞬戸惑った。
この環境で、いないなんて言えない。
でも、隅木田くんとも言えない。

「マミ〜?聞いてるぅ?」

「き、聞いてるよ、聞いてるよ!」

「隅木田先輩」

えっ?
ユリ、今言った?
ちょっと、本当に言ったの?

「マミの好きな人は、隅木田先輩。ヒマと一緒だよ」

「ユリ…、どうして言ったの…!」

ちょっと声が震えながら聞いてみる。
すると、ユリはサラッっと言う。

「聞かれてたから、質問に代わりに答えてあげたの。そうでしょ?」

…。
ヒマは、黙ってジッっとしている。
ハルとわたしは、冷や汗を流しながらユリを見る。

「で、隅木田先輩が好きなんだって」

うん…。
そうだけどね。
ユリって、こんなにはっきり言う子だったっけ?
まあ…いいや。

「そういうユリの…好きな人は…誰…なの…?」

「被ってごめんなさい。隅木田先輩。わたしが…隅木田先輩の彼女」

はあっ?

164:まい◆8Q:2017/07/02(日) 21:21

20.失恋か
ハル以外が、隅木田先輩なの?
そんな…!
それに、ユリは彼女だなんて。
ずっとお芝居してたのかな?
会ったときとか。
…はぁ。

「わたし、失恋。もうあきらめよっ!ユリを応援するよ」

ヒマっ!
あきらめるのっ?
可愛くて、優しくて、おっとりしていて、控えめなユリこと利等万由里歌。
はっきりしているところもあって、一途で、秀才なヒマこと矢本陽茉理。
それに、国語が得意で、明スイに入っている普通なマミこと多田本真美。
隅木田くんは、わたしのことは選ばないから、失恋かな。
恋って分かった瞬間に。

「もう…恋バナやめよう。うーん?そうだ!中学校の話は?」

気の利くハルは、話を変えてくれた。
すると、ユリもヒマもわたしも!
顔が急に変わった。

「わたし、彦宮に残ることにしたの」

ユリが言い、ヒマも口を開ける。
良かった。
ちょっとは雰囲気が和らいだ。

「わたし、私立慶美音学園希望。双子の香音とふたりで行こって約束しているから」

ヒマ、私立慶美音学園なんだ!
彦宮学園は、そこそこ偏差値は高いし、ヒマは秀才だからだから行けるだろう。
わたしは…無理かも…。

「わたしは、彦宮に残ることにした」

ハルも残るんだ。
はぁ〜。
ママたちと…相談するか。

165:まい◆8Q:2017/07/02(日) 21:48

訂正
ハルが恋している藤本先生→副学年主任でした。すみません。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
21.ふたつの中学校
その夜、おばあちゃんにこの前話せなかった夜店のこと。
中学校のことを話した。

「そうだねえ。菜和にも相談してみるといいよ。でも、おばあちゃんも考えないとねえ」

うーん。
夜店のことはともかくとして、中学校だよねー。
中学校を決めるのは、10月の初めだからねぇ。
もう決まってる子、いるし。

「夜店は、いいよ。頑張っておいで。中学校のことは、おばあちゃんよく分からないけど、彦宮学園に残ってもいいし、受験し直してもいいし。そのことは、真美ちゃんがどうしたいか。じゃないの?」

わたしがどうしたいか?
別にどうしても…。
そろそろ、それくらいのことはわたしだけでも決められるようにならないとだよね。
頼ってばかりはよくない。
受験するかしないかくらいは、決めないとだよね。
彦宮に残るか、他へ行くか。

「お金かかるかもだけど、受験したいかな」

「うん。そう言うのが大事よ。もしかしたらだけど…パンフレットってこれかしら?」

それは、担任の先生にもらったパンフレットだった。
おばあちゃん、どうして!?

「菜和のクローゼットを整理してたら見つけたんだよ」

パンフレットを開いて、偏差値、学校の制服、部活、費用を見る。
偏差値は、今のよりちょっと上を見ていく。
最後まで見て引っ掛かるのは、ふたつある。
ひとつ目は、私立青山野学園。
偏差値はまあまあ、制服が可愛くて、華道部もある。
費用はそこそこ高いかな。
ふたつ目は、私立降羽田女学院。
女子高で、偏差値、制服は完璧!
交通費がちょっと…。
それで、部活はまあまあ。
費用も同じようにかかりまくるっ!

「何々?私立青山野学園、私立降羽田女学院ねえ。どちらでもいいと思うわ。菜和に相談してみたら?」

うん!
このどちらかにしようかな!

166:まい◆8Q:2017/07/03(月) 16:45

22.青山野に決まり!
「今日は夜店の日ねぇ。おばあちゃんも、行きたいけどねえ」

おばあちゃんは、ひとりで夜店に行きにくいそうだ。
おじいちゃんが亡くなったから、ふたりでも行けないし。
実家の方に友達はいるけれど、ここから遠いし。
若い子ばかりで行きにくいって。
ママは、症状が悪化しちゃったみたいだし、パパも出張でイタリアへ…。

「菜和に電話して、中学校のこと相談してごらん。きっといいこと言ってくれるから」

おばあちゃんが言うと、ほぼ同時に電話機がなる。
 プルルルルプルルルル
おばあちゃんが手に取ると、ピッっと音を鳴らした。
ちょっと話してから、電話機はわたしの手の中へ!?

「菜和からよ」

マ、ママから電話!?
あわてて電話機を持ち直して、耳に当てる。
何も聞こえない。
…。
すると、何かを落とした音が聞こえたんだ。

「ママっ?」

「はぁい。今、ちょっと、ガラスのコップを落としてしまったの」

「そう…」

ちょっとの間、看護師さん(?)とのやりとりがかすかに聞こえ、ママの声がそのまま耳に入ってきた。

「ごめんなさいね。お母さんから、真美ちゃんが中学校のことを考えてるって電話が来て…」

おばあちゃん…。
そんなことしてくれたのね。
嬉しいよっ!
どうもありがとうっ!

「それで、私立を受験したいらしいわね。ママ、応援するから、自信持って受けなさい。ただし!軽い気持ちで受けないように」

うん。
それは承知ですっ!
本気で受けて、本気で取り組んで、行きたいんだっ!

「明確ゼミも、クラスを増やすこと。いいわね?」

「もちろん」

「ん。私立青山野学園と、私立降羽田女学院ね。ママのおすすめは、青山野よ。男の子と接する機会が減ると、後々大変なことになるんだから」

へ〜、そうなんだ。
やっぱり、ママに相談してよかった!よーし!
青山野に決定だぁ〜!

「私立青山野学園に受験してもいいですか!」

「頑張りなさい。明確ゼミは、月曜日と金曜日と土曜日だけだけど、火曜日と水曜日プラスコース、木曜日と日曜日プラスコースのどちらかを選びなさい。どちらにするの?」

「火曜日と水曜日プラスコース」

「うん。明確ゼミに連絡しておくわ。じゃあ、診察あるから。ありがとね。バイバイ」

うん、バイバイ!
電話が切れると、なぜかやる気で満ち溢れてきた。
わたしなら出来る。
青山野に受かる!
そういう勢いで、部屋へと階段をかけ上がった。

167:まい◆8Q:2017/07/03(月) 16:56

23.夜店を楽しもう!
「由里歌ちゃん、クレープ急いで!」

「真美、会計頼む!」

「ハル、そこのチョコレートソース取って!」

「ヒマ、悪いけどカップケーキ渡してくれる?」

隅木田くんとユリが書いてくれた、一際目立つ屋台。
彦宮道は、いつもよりにぎやか。
わたしの浴衣は、花火。
ハルは、金魚。
ヒマは、ハートマーク。
ユリは、スイカ。
みんなの浴衣もかわいい!

「はいはい、これこれ!」

「ありがとうございます!隅木田先輩!またのご来店、お待ちしておりますのでっ!」

ユリ、気合い入ってる〜!
ハルも、さっき藤本先生を見つけて、目がハートになってるし。
お客様は、予想通り行列。
お金は100000くらいはたまってる。
すっごーい!

「女の子たち、休憩してきていいよ!お買い物楽しんできて」

隅木田くんが言って、わたし、ヒマ、ハル、ユリの順番で屋台を出る。

「もう、4人では無理かもだし、目一杯遊んでくよぉっ!」

ハルが言って、一番隅からぜ〜んぶ見ていった。
かき氷でひんやり!
うーん、冷たい〜!
金魚すくいで1匹ゲット!
おばあちゃんと飼おっと〜!
隅木田くんと坂宮におみやげで焼きそばを!
買って、戻ったり、行ったり。
40分くらい歩いて、また隅木田くんたちとバトンタッチ!
さ〜あ、どんどんやってくよ!
笑顔とお金の報酬に、明スイに参加してくれたハルたちとも、みんなで目を見合わせて笑った。

             (つづく)

168:まい◆8Q:2017/07/03(月) 17:07

あとがき
               まい

こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元絵菜、まいです!
今回の6巻、いかがでしたか?
ちょっと、ドキドキシーン多かったではないですか?
作者でありながらも、恋愛が混じってきて面白いですね!
皆さん夜店は始まってますか?
わたしの地域は始まってますよ!
友達と行けるかなあ?
皆さんも、夜店のことなど、明スイに関連することありましたら送ってくださいね!
早目に送信させていただきます!

わたしは、最近恋が発展していてニヤケが止まらない日々です。
皆さんは恋してますか?
この作品を見て分かった方もいらっしゃるかもしれません。
気付いたら恋をしていることに。
意識してると、していないけど、ふとした瞬間、心が好きオーラ出してますよ(きっと)!
恋についても、ぜひぜひ送ってくださいな!

次回の7巻の予告です!
やっと新キャラが出ます。
矢本くんは、引っ越してないけど、本当の決断とは一体!?
あと、矢本くんの隣にいるのは誰なのよ、あれっ!
次回は、彦宮体育祭で波乱の予感!
では、次回会いましょう!

169:まい◆8Q:2017/07/04(火) 20:08

『ここは明確スイーツ研究部!7』

登場人物

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

170:まい◆8Q:2017/07/04(火) 20:32

1.English!?
夏後半の暑い日の朝。
久しぶりにスクールバッグを握りしめて歩き出す。
今日は二学期の始業式。
わたし、多田本真美は、幼なじみであり、親友の、ハルこと緑川晴奈とふたりで登校する。

「ね、初等部最後の体育大会だよ!9月にあるんだから。楽しみ」

優しくて、はっきりしていて、モジモジしない、いい子。
体育大会かぁ。
わたし、正直言って、運動は苦手。
足は、速いと見せかけて遅いし。
走り幅跳びなんかは、ルールさえ分からないんだもの。
はぁ〜って、手を後ろについたら、先生に怒られちゃったし。
そんな決まり、知らないのに!

「わたしは、100m走には、絶対出るんだよ。もう決まったの。あと、200m×4人リレーも」

ハルは、運動神経が抜群。
幼なじみで、同じ遊びをしていたのに、この運動神経のあるのとないのの差は何なのっ?
って。
いっつも体育の時は思っちゃう。

「マミ、ハル、Good morning」

ヒマが、英語で挨拶してきた。
ヒマとは、小6で仲良くなった。
本名は、矢本陽茉理。
で、そのとなりにいるのは。

「G、Good morning,every one」

ユリこと利等万由里歌も英語で挨拶してきた。
英語を習っていて、ほぼペラペラなハルがすぐさま反応する。

「Good morning every one」

確か、皆さんおはようございます。だよね?
みんなの視線が、わたしに集まる。
わたしも言えって!?
みんなとは違い、英語が苦手なわたしは、発音もド下手。
ケタ違いなんだ。

「おはよう…」

「In English!」

はいぃ!
英語でって言われた〜!

「グ、グッドモオニングエブレワアン」

発音がなってないよね。
グッドモオニングって…。
モーニング、だよね。
エブレワアンは、エブリワン。
みんなの前で話すと、緊張しちゃう。

「マミ、モーニングでしょ?モオニングはダメだよ。あと、エブリワン。エブレワアンじゃない。every one」

って言われても分かんないよお。
書けるのは書ける。
頑張って勉強したもの。
Good morning every oneって。

「おはようございます」

気付いたら学校に着いていた。
私立彦宮学園という学校に通っているわたしたち初等部の児童会長、ふみ会長こと杉田ふみが言う。
ハルは、英語で返し、わたしは、もちろん日本語で返す。
ヒマも英語。
ユリは日本語で返した。

「ふみ会長も大変。始業式の日から早く来るなんて」

うん、本当に大変。
つくづく、ふみ会長ありがとう。

171:ゆるるん◆p.:2017/07/04(火) 21:03

面白いです!(^^)!
いつ本になるんですか?って、聞きたいくらい!
これからも頑張ってください(´V`)♪

172:まい◆8Q:2017/07/09(日) 08:41

ありがとうございます!
こんなに褒められたのは初めてかも…
もし良ければ、創作板や短編小説板も顔を覗かせてください。
本当にありがとうございます!

173:まい◆8Q:2017/07/09(日) 09:24

2.隅木田くんとの関係
「キャーーー、キャーーー!藤本先生だぁ〜」

ハルが指差した先は、わたしたち6年生の副学年主任、藤本先生だ。
実は、ハルは藤本先生に恋していることが発覚し、それからは恋バナで盛り上がっているのだ。

「隅木田先輩と、あれから会ってないんだよね〜会いたいよ〜」

ユリがボソッっとつぶやく。
実は、明スイメンバー隅木田くんとユリは付き合っているのだそうだ。
ヒマも、隅木田くんが好きで、わたしも_____好き…。

「あれぇ?隅木田先輩だぁ!ユリ、行ってくるね!」

ユリは、自分のことをわたしって言ったりユリって言ったりする。
ニックネーム呼びじゃないときは、由里歌って言ってたけど。
隅木田くんは、ユリのことを、確か由里歌ちゃんって呼んでる。
ヤキモチ焼くな〜。

「わたしたちは、行こっか」

ヒマがわたしとハルの手をとって、わたしたちのクラス、6年1組へ行く。
ドアを開けると、みんながこっちを向いて、あいさつしてくれた。

「おっはよ〜」

ヒマがにっこり笑ってあいさつする。
ハルもそれに続いて、わたしも飛びっきりの笑顔を見せる。

「みんな、おはよ〜!」

今日は、始業式と夏休みの提出物出すだけだから、リュックで来なければならない。
制服を折り曲げないよう気を付けながら椅子に座る。
ここは、登校が自転車以外の人は制服で来なければならない。
わたしは歩きだから、制服をもう着ているのだ。
ちなみに、ハルは歩き。
ヒマは自転車。
ユリは電車で登校している。

「真美ちゃん、国語で表彰があるらしいから。頑張って」

えええ!?
聞いてないよ!
教えてくれた七井さんの方をマジマジと見る。

「あー、突然でごめんって、学年主任の小林先生が言ってた」

えーーーーー!

174:まい◆8Q:2017/07/09(日) 09:44

3.七井さん
「小林先生が、真美ちゃんに伝えといてって…」

「あ、ありがとう…」

明スイで結構目立ってたけど、もうこういうので目立ちなくないよ〜!
表彰って、世の中にあるので一番苦手なんだから〜!

「あとさ、彦宮道の屋台、お疲れ様。わたし、行かせてもらったよ、お姉ちゃんたちと」

ああ、この前のことか。
明スイでは、この彦宮学園の周りの道ーーー彦宮道での彦宮祭に屋台を出した。
すごい人気だったんだよっ!
すごく売れたものだから、お金がたまりにたまってっ!
手伝ってもらった、ハル、ヒマ、ユリには30000円ずつ。
明スイメンバーは50000円ずつ。
残りは明スイの資金にすることにしたんだ。

「心音お姉ちゃん、すっごく喜んでたよ!」

七井さんは、3人姉妹の末っ子。
みっつ上が心音さん。
よっつ上が心夢さん。
ハルたちと遊ぶ前まで、ずっと遊んでたから知ってるんだ。
名前は。
顔は、知らない。

「じゃあね」

七井さんが手を振って、友達の輪に戻っていったので、朝のしたくを始めることにした。

「みんな、おはよう!久しぶり〜」

クラスのキラキラした子のひとりが来る。
この子が来たら、大抵ボスも来る。
わたしが苦手な…。
うっ!
ボスの香水みたいなキツい匂いが…。

「ごっきげーんよ〜うっ!」

ああ、来た〜!

175:まい◆8Q:2017/07/09(日) 10:04

4.
「ほの〜、お久しぶり〜!」

この人は、美華ちゃん。
怪盗日本が来たとき、一緒に闘ったんだよね。
わたしと、美華ちゃんと、ふみ会長とね。
戦闘少女3人組って呼ばれてるよ!
タイプは全然違うし、話すこともないんだけど。
一応、わたしは空手を習っている。
美華ちゃんは、趣味でレスリング。
ふみ会長は柔道。
わたしが空手をやってるのを知ってるのは、美華ちゃん、ふみ会長、ヒマだけなんだ。
みんなには、何かの格闘競技をやってるって思われてるだけ。

「真、真美ちゃん、お、おはよう」

「おはようございますぅ」

美華ちゃんはクスッっと笑って、ユウこと優佳ちゃん、ほのこと穂乃果ちゃんの輪へ入っていく。
みんな、夏休み最高だっただろうな。夏休み後って、何となくウキウキするよね。
今学期の目標は、美華ちゃん、優佳ちゃん、穂乃果ちゃんと仲良くなることにしよっと。


「吹部〜!体育館集合ー!」

初等部吹部こと吹奏楽部部長のふみ会長が声をかける。
始業式では、演奏がある。
校歌と、吹部が選んだ曲とを。
あー、あとちょっとでひょーしょーだー。

176:まい◆8Q:2017/07/09(日) 10:21

4.今学期の目標
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5.新しい前田先生
「多田本真美さん。壇上へ」

ついに表彰だ〜。
彦宮校長先生の前に立つ。
初等部から高等部みんながわたしに注目する。
やだやだやだ、怖い〜!

「表彰状。多田本真美様。あなたは、校内国語上旬テストにおいて、優秀な成績を収めましたので、ここに証します。おめでとう」

 パチパチパチパチパチパチ
おおお〜!
無理ですぅ〜!
渋々受け取る。
彦宮校長先生の前でお辞儀し、足早に自分の席へ戻っていく。
 スーハースーハースーハースーハー
ここの空気って、新鮮で美味しいっ!


教卓に、担任の先生になった前田先生が立つ。
この前まで先生だった人は、子供の妊娠で出ていってしまった。
すごくいい先生だったものだから、修学旅行へ行けなくて残念。
何よりも、卒業時にいないことが寂しいな〜。

「初めまして、前田あいです。6年1組の皆さん、よろしくお願いします」

前田先生は、にっこり笑って言い、自己紹介が書いてある紙を配る。
ふむふむ。
サーフィンをやったことがあるのか。
子供はふたり…。
へ〜。

「趣味は、華道。華道部の顧問になります」

わたし、華道部。
前田先生、お願いします。

「イベントがたくさんありますから、初等部最高学年の6年生で頑張って盛り上げていきましょう」

あ〜、今月末は、彦宮体育大会だ。
格闘ないから…。
まあまあ、盛り上げていけたら、いいのかなっ!

177:まい◆8Q:2017/07/10(月) 20:16

6.特別な日
前田先生からの宿題で、作文を書くことになった。
題名は、『わたし』。
みんな一緒なんだ。
自己紹介みたいなものを書くんだ。

「真美ちゃんお帰り。ねえ、見て見て!明スイの評判、また上がってる」

おばあちゃんが、パソコンを指差して言う。
パソコンを覗くと、明スイのホームページみたいなのが出来ていて、そこにファンのコメントが書かれていた。

『明スイ最高!』

『彦宮道の屋台、並んだかいがあったよ〜!』

『見て!これ写真貼ったから!彦宮道で買ったの!』

評判上がってる〜!
矢本くんのファンは減っちゃったけど、わたしたちのファンは増えたってことかな?
それとも、ハルたちにファンが出来ちゃったとか?

「真美ちゃん、今日は外食に行きましょうか。夜」

外食、久しぶり。
それよりも、おばあちゃんから提案するって?
おばあちゃんは、家で食べる食べ物が好きで、外食は苦手なのだ。

「ほら、今日は菜和の誕生日よ。菜和にはもう言ってあるから」

ま、ママの誕生日だったっけ!?
9月1日…。
始業式であり…ママの誕生日だ!

「うん!行く行く!」

「ふふふ。和食だけど、いいかしら?菜和、和食が好きだし、和食って落ち着かない?って思って」

「和食大好きーっ!いいよーっ!」

今日は、勉強もがぜんやる気が出てきた。
よーし、やるぞっ!
二階にかけ上がり、ほしいと思っていた勉強本リストの紙を片手に、本屋へ走った。

うーん?
何にしようかな〜?
これとこれ、似てて似てない。
どういうことか分からないけど、どっちの方がいいの?

「マジで?キャハハ!」

明るい女の子たちが来て、迷っていた方の一冊を手にとる。
3人中3人が。
よーし、決まり!
あの女の子たちが取った方に、決まりだーっ!
それ以外にも、計五冊買った。
本屋の袋をギュッっと握り締めて、また家まで走った。

178:まい◆8Q:2017/07/10(月) 20:37

7.ママ!?
参考書、問題集、解答、よく出る攻略勉強方書、英語のリスニングセット。
まずは、苦手な英語から!
英語のセットのビニールを破る。
そして、リスニングCDを取りだし、音にかける。

「英語を聞いて、次にあてはまるもとを、A〜Fから選びなさい」

うーっ!
始まったよ〜。
わたしの嫌いな言葉、Good morning every oneって言ってる!
でも、英語も克服していかないと!

店内には、流行りのアイドルグループのデビュー曲が流れている。
どうして知っているかって、ハルがよく口ずさんでいるから。
ハル、ファンなんだよねえ。

「菜和、誕生日おめでとう」

「歳とっちゃったわぁ」

ママは、若いと思う。
今、37歳。
30代って言うことが、嬉しいっていうか、プライドが何かいろいろあるんだってさ。

「お待たせいたしましたーっ!こちらが、天ぷら定食ですね。天ぷら定食のお客様」

ママが手を上げる。
こんがりいい匂いの天ぷら。
それに加えて赤みがかったお味噌汁。
美味しそう。

「じゃあ、ママお先にいただきます」

ママが手をパチンと叩いていただきますをすると、ママはお腹を押さえた。
ど、どうしたの?

「お母さん、病院…」

ママっ?
だ、だいジョウ夫?

「菜和っ?真美ちゃん、救急車を」

あああ、はいっ!
ママ、大丈夫?
絶対にわたしが、助けるからっ!

179:まい◆8Q:2017/07/10(月) 20:52

8.矢本くんたち
「お腹の赤ちゃんが動いた衝撃でちょっと痛めてしまったようです」

看護師さんが伝えてくれる。
和食屋の、天ぷら定食の代金のみ払って病院へ来た。
 グーッ
お、お腹空いたよお。

「もしよろしければ、病院内のレストランをご利用しては?お腹空いてませんか?」

さっすが看護師さん。
おばあちゃんとレストランへ行って、夜ご飯を済ませた。

「ちょっとお手洗い行ってくるね」

おばあちゃんに言って、さっき見かけた男の子のあとを追う。
矢本くんみたいな人だった。
追いかけて、見つけて、正体を突き止めて、何かいろいろしてみる!

「ここっち、こっち」

ここっち?
矢本くんらしき人は、ここっちと呼んだ女の子と腕を組んで歩いている。
横顔さえ分かれば…。

「たっくん、優し〜い!」

たっくん?
矢本くんの本名って、拓斗くんだったよね?
たっくんって呼び方、ある…?

「たっくん、お母さんの来てくれてありがとねぇ。わたしの家、泊まって」

と、泊まるだとぉ!?
今、完全に横顔が見えた。
絶対にあれは矢本くん。
たっくんって呼ばれてる…矢本くん。

「七井家に泊まるの?嬉しい!」

な、な、い、家?
矢本くんの同い年なら、心音ちゃん?
心音ちゃんと付き合ってるってこと?
正面から見て確かめたくて、正面まで回ってみた。
やっぱり…!

「心音ちゃん」

「拓斗くん」

180:まい◆8Q:2017/07/12(水) 18:36

9.思わない言い合い
「ちょっと、拓斗兄、どういうことなのよ!七井先輩と仲良くして」

ひ、ヒマ!?
ど、どうしてここにっ?
矢本くんもそう思ったらしく、唖然としている。
心音ちゃんは、手を口にあてて、上目使いで矢本くんとヒマを見ている。

「七井先輩、拓斗兄とどういう関係なんですか!?」

「どうしたのよ、陽茉理ちゃん。わたしと矢本くんは、深い深い関係があるのよ。陽茉理ちゃんには話せないわ。ねえ、たっくん」

心音ちゃん!?
ひ、人が変わったっていうか、なんと言うか…。

「七井先輩、どういうことなんですか!?拓斗兄、帰るよ。さようなら、七井先輩」

ヒマはヒマで強気ではあるけど…。
矢本くんと心音ちゃん、どう出るの!?

「陽茉理ちゃん、今日は、たっくんはわたしの家に泊まる予定なの。もう時間遅いから、わたしが送ってったげるよ。陽茉理ちゃんは帰りな」

心音ちゃん、それ、本当にっ?
矢本くんが、心音ちゃん家に泊まるってことだったよね?

「いいえ。認めませんから。拓斗兄、執事が来ているから、帰るよ」

矢本くん、執事いたんだ。
ってことは、ヒマや香音ちゃんにもいたりして…。

「たっくん、陽茉理ちゃんは引かないつもりよ。またにしましょう」

ヒマの勝ちってわけか。
心音ちゃん、優しいから、そこまで強気にならないんだよね。
わたしも、心音ちゃんみたいになったら、矢本くんを明スイに戻すことができるのかな?

「あら?真美ちゃんじゃないの。お久しぶり。こんなとこで何してるの?」

ヒマと矢本くんが行って、今は心音ちゃんとふたりきりっ?

「お母さんが妊娠しているので、ちょっと…。心音ちゃんは?」

「ふふふ。わたしは、おばあちゃんが入院しているの。だから」

へ〜。
すると心音ちゃんは、身を翻して矢本くんが行った方へ行った。
お、追いかけた?
わたしも追いかけるぞ!

181:まい◆8Q:2017/07/12(水) 18:48

10.そんな子だったの!?
「たっくん!ちょっと話させて。いいでしょ?陽茉理ちゃん」

「いいよ、ここっち。ちゃんと戻るから先行ってろ。ちょっとだから」

ヒマは、ふたりに、矢本くんにははっきりと。
心音ちゃんには遠回しに。
帰れって言われていた。
かわいそうに。
大好きなお兄ちゃんを、心配しているだけなのにさ。

「たっくんと結婚したら、わたしにも執事がつくのよね。受験せずに、高校も行かずに、ふたりで遊んで、中学校卒業したらすぐくらいに、ふたりで住んで、18歳に結婚するのよねっ?」

け、結婚のハナシ!?
心音ちゃん、もう!?
っていうか、高校行かずにふたりでカップルみたいに遊んでるの!?

「そうだよ。ふたりで住むって言っても、ここっちのアパルトマンと、俺とここっちのアパルトマン造るだけ」

「まあ、素敵!たっくんって本当にカッコいいわぁ」

アパルトマンですかぁ。
なんじゃそりゃ。
何語ですか?
矢本くんは持ってますか?
アニメですか?
アンパンマンのいい間違いですかっ?

「さ、わたしの家へ」

結局!?
心音ちゃんってそんな子だったの!?
すると、矢本くんと腕を組み、ヒマが行った方と反対。
こっち側へ来た。
きっと、こっちの出口から出るつもりなんだ。
バレるっ!
そういって、トイレに駆け込み、矢本くんたちが行ったら、公衆電話でヒマに報告した。
たまたま見かけてしまったことも。

182:まい◆8Q:2017/07/12(水) 19:39

11.わたしが作家に!
ん〜、まぶしいよぉ。
はっ!
あわてて起き上がる。
時計を見ると、まだ4時だった。
カーテン開けっぱなしで寝ちゃった。
ベッドに潜り込み、目を閉じる。
うーん、眠れなさそう。
仕方なく、パジャマを脱いで、体操服に着替えた。
体操服の上から、制服を着るんだけどね、シワが出来たらいやでしょ?
だから体操服だけ着るの。
やることがなくて、読書をした。
学校の図書室で借りた本を。
だけど、もう何度も読み直した本だったから、つまらなくなって。
この本が面白かったものだから、わたしも同じように書いてみようと思ったから、小説を書いてみた。
題名は後からでもいいでしょ。
だから、とりあえず…。
主人公は…佐藤ななみにしよっと。
わたし、佐藤ななみ。
そこまで書いて、手を止める。
はた。
いきなり名前出していいかな?
情景を先に書かなくてもいい?
…初めてだし、いっか。
11歳で、小学6年生の子っと。
わたしと同じ設定にして。
って考えていると、案外スラスラ書けてきた。
ななみちゃんは、ナナって呼ばれて、人見知りでっ!
クラブに入ったら楽しくて、本当のわたしが見えた気がした。
すごく楽しく過ごしてて…。
いや、待てよ。
こんなに楽しいことの連続なわけあるわけないから、ななみちゃんに悪いけど、ちょっと不幸なことを!
親友とケンカして、親友という大きな存在に気付いたりして…。
はぁ〜、早起きって楽しいかも!

183:まい◆8Q:2017/07/12(水) 19:49

12.わたしの気持ち
「ハル、ファッション誌見たぁ?」

ヒマが、ファッションの雑誌?の話を始めてしまった。
ユリはオシャレが苦手で、ヒマのこの話題が苦手なのだ。
わたしも、ちょっと苦手。
分からないから。
ヒマが、スマホをハルだけに見せて笑っている。
わたしたちには見せてくれない。

「カワイイよね〜」

ハル、ヒマ、わたしたちの気持ち、気付いて!
…ななみちゃん…!
こういう感じなのかな。
わたしたち4人の関係は、ずっと続くものだと思ってたけど。
たまにはこういう不幸が訪れちゃうんだよね。

「ハル、話が分からないから、話変えよう」

わたしが笑いながら言うと、目すら上げずに断られた。
絶望的。
わたしでいる力なんて入らない。
ヘナッっと崩れ落ちると、ハルが初めて顔を上げる。

「マミ、だいじょーぶー?でさでさ!ここのアクセかわいくない?」

えええええ!
もう無理だよお。

「わたしの気持ち分かってよ。どうして気付いてくれないの!ふたりだけの世界で、楽しいことなんて何もない。ユリもそう思ってるはずだよ」

そう言って、教室を出る。
わたし、何てこと言ってしまったの。
バカ、バカ、バカ、バカ!
わたしのバカーーー!

184:まい◆8Q:2017/07/12(水) 20:29

13.新学期にゆううつ
後になって後悔すること。
ハルとヒマに言わなければよかった。
恋バナなんてしなくちゃよかった。
グループだけじゃなくて、いろいろな子たちと仲良くしとけばよかった。
もっと…、はっきり言えばよかった。
言って後悔してるのに、言わなくても後悔すること。
こんなに辛いことはないよ。

「真美ちゃん。プライベートだろうが何だろうが、名前で呼んでいいでしょ?あら、緑川さんたちは?」

あ、ここに、仲良くしてた友達、ちゃんといた。
ふ、ふみちゃ〜ん。
なぜか、涙が溢れてくる。
いろんな意味の涙。

「真美ちゃん?どうしたの、大丈夫?しっかり。話聞くから落ち着いて」

ふみちゃんが背中をさすってくれて、ちょっと落ち着いた?
でも、完全に落ち着いたわけではないけどね。

「わたし、もしかしたら、ハルたちとケンカしちゃったかもしれない」

「どうして?」

だって…。
わたしはふみちゃんに、ファッション誌の話が分からなかったこと。
わたしがはっきり言ったような言えなかったようなこと。
飛び出してきたことなど。

「そっか、辛かったんだね。真美ちゃんの分からない話されて、相手にもされなくなって」

ふみちゃんの温かい言葉で、また涙を流した。
今は、嬉し涙かもしれないけど。

「わたしってひとりでしょ。緑川さんたちといるなら、そうしてくれて構わないけど、わたしと一緒にいる?」

ふみちゃんとっ?
一緒にいてもいいの?
こんなわたしと!?

「ありがとう、ありがとう。でも、ごめんなさい。わたしなんかが」

「カフェで話してたときのこと考えたら楽しかったし」

ふみちゃん…。
こうして、これから距離を置きつつ、ふみちゃんと遊ぶことにした。
ほら、前田先生って新しいから分からないだろう。
でも、作文に書いちゃった…。
 キーンコーンカーンコーン
うっ!

「真美ちゃん行こ!」

うん…。
次は作文の提出だあ。
ゆ、ゆううつ。

185:まい◆8Q:2017/07/12(水) 20:50

14.悪化する気持ち
「多田本さん、ちょっと」

ハルたちとのことがあってから一週間が経った。
ついにバレたか。
そういう意味でため息をつき、先生のところへ行く。

「多田本さん、作文には、緑川さん、矢本さん、利等万さんと仲良しって書いてありましたよね。今は杉田さんといますけど、何かトラブルでもありましたか?先生で良ければ聞きますよ」

やっぱり気付かれたか。
先生、するどいですねっ!
ふみちゃんに視線を流すと、強い視線でうなずいてくれた。
嬉しいまなざしだった。
ハルたちは、わたしのことは気にしていないように話している。
はぁ〜。
学校、来たくないな〜。
前田先生にも、ふみちゃんに話したことをそのまま伝えた。

「先生も、早く気付いておくべきでしたね。ごめんなさい。緑川さんや矢本さんや利等万さんには言っておきますから、解決するといいですね。ありがとうございました。戻っていいです」

はぁ。
ますます来たくないな。
おばあちゃんに迷惑かけたくないし、仮病…使って休んで、い、いか、な?

「真美ちゃん、大丈夫だった?」

「うん。大丈夫」

ふみちゃん心配してくれてるのにごめんね。
わたしのためにしてくれてるのに。
ハル…。
なんて馴れ馴れしくも呼びたくなくなってきた。
親友であり幼なじみを。
晴奈ちゃん。
陽茉理ちゃん。
由里歌ちゃんかぁ。

「真美ちゃん、本当に大丈夫なの?わたし、児童会行きますよー」

「行ってらっしゃい。頑張って」

力なく言い、ヘナヘナ崩れ落ちた。
またか。

「真美ちゃん、大丈夫!?七井さん保健委員会でしょ?真美ちゃん連れてってあげて!涼太、前田先生に、真美ちゃんは保健室って伝えておいて」

ああ…。
意識がもうろうとしている気がして、何となく地面に肩が触った気がした。

186:まい◆8Q:2017/07/13(木) 20:57

15.異常はあるか
何となく、視界が白っぽい。
まぶしいんだ。
すっごく。
何か、太陽の光を、直線で目を閉じたまま受けたイメージ。
これが、結構辛いんだ。
ハッっとして目を覚ます。
 カチカチカチカチ
時計の秒針の音が聞こえる。
教室では、秒針の音は聞こえないから、ここは教室じゃないでしょ。
辺りを見回すと、保健室の先生が机と向かい合っている。
ということは、保健室か。
保健室は、なぜかお人形がたくさんある。
かわいいミッキーのお人形を見つけ、手に取ってみた。
柔らかい。
感触があるってことは、生きてるんだね、わたし!

「ああ、真美さん。体調はどうなの?痛いところ、ある?」

保健室の先生は、顔を覗き込んで聞いてきた。
うーん特に痛いところはないし。

「大丈夫です。えっと…わたしって、どうなったんですか?」

「ええ?七井さんがおんぶして連れてきて、教室で倒れましたって」

七井さんが!?
こ、心音ちゃんの妹だ…。
わたしが重たいの、バレたんじゃないの!?
あーヤダヤダ。
七井さんにバレたらーっ!

「意識が回復したので、病院へ行きましょう」

病院へ行くの!?
原因聞かれたら、晴奈ちゃんたちのこと言わなくちゃいけないの?
そんなのイヤだなぁ。

「さあ、行きましょう」

保健室の先生は、わたしの手を引いて保健室を出る。
鍵もカッチリ閉めて。


「特に異常はありません。では、またこのようなことがあれば。ありがとうございました。さようなら」

ふーっ!
保健室の先生が、ママって感じてきて、心細くなかった。
ママと、どうせ年齢近いと思うし。

「真美さん、帰りましょう。部活は、運動部?文化部?」

「文化部です」

「そう。なら部活行けるなら行ってもいいと思いますよ。行きますか?」

はい、行きます…。
保健室の先生に返事して、先生の車に乗り込んだ。

187:まい◆8Q:2017/07/13(木) 21:13

16.HAPPYの連続
「すみません。多田本さんいますか?隅木田ですが」

「いやーっ!隅木田くんじゃなーい」

うわーっ。
華道部の、優先輩、希羅先輩、隅木田くんファンですか!?
文化部は、初等部、中等部、高等部と一緒に行う。
それぞれの階級によって、部長はいるんだけどね。
我らが初等部の部長は、藤城さん。
話したこともなかったけど、華道部で話せたんだよねぇ。

「はい。わたしですか」

「真美ちゃん、隅木田くんの心を仕留めるなんて、案外やるじゃない」

優先輩、勘違いですよ!
確かに好きではありますけど、仕留めたわけではありませんから!

「ちょっと」

隅木田くんに、おいでおいでっていう仕草をされて、胸がキュンッ!
キャー、ヤバイーッ!

「明スイのことだけど。矢本が、戻ることになったんだ。付き合ってたらしいんだけど、別れたって。それで、俺たちが、俺たちに、活動しようと思ってるんだ。題して、矢本復帰パーティーみたいな」

おおお!
いいですねえ!
矢本くん、戻ってきてくれるんだ!
心から、感謝です。

「矢本も謝ってるし、許してやってくれ。で、矢本復帰パーティーは賛成?反対?」

「もちろん賛成です!やりましょう」

やっぱり、隅木田くんって、すごい。
隅木田くんと別れて、華道部の教室に戻ったときも、胸の高鳴りは収まらなかった。

188:まい◆8Q:2017/07/13(木) 21:38

17.新しい友達
今日は、塾に車で送ってもらった。
いろいろと、体調がなってないかもしれないしさ。
玄関には、多くの人だかりがっ!
ど、どうして?

「あ、真美先輩」

あ、河合さんだ。
華道部の後輩で、一番初めに先輩って呼んでくれた子。

「河合さん。どうして、こんなに騒がしいの?」

「6年生、中学3年生、高校3年生の順位が出ています。真美先輩の名前を探してたら、国語が一位で驚きました。さすが真美先輩。満点で一位なんて」

満点で明確ゼミ内で一位か。
嬉しいっ!
それよりも、河合さん。
わたしの名前を探してくれて、どうもありがとう。
初等部って、先輩後輩の関係って浅いけど、河合さんは、そんなの関係なしに接してくれる。
うわさでは、秀才だとか。
 キーンコーンカーンコーン

「引き留めてごめんなさい。失礼しました」

河合さんに頭を下げられて、わたしもあわてて頭を下げる。
って!
もうこんな時間。
急いで行かなくちゃ!
順位表は、後から先生が紙にしてくれるだろうしねっ!

「あの、多田本さんですよね?」

え、この子誰なの?
明スイメンバーの、ファンとか?
わたし、この子知らないけどなぁ。

「わたしの名前は、美先綾南。あやなって読むから、綾って呼んでくれればいいんですけど」

はぁ。
綾さんは、明確ゼミに新しく入ってきた子らしく、わたしと同じクラスのレベルだそうだ。
一応、わたしのクラス、上から3つ目なんですよっ!

「あなたは?」

「はい。ええっと、わたしは、綾さんからも言われました通り、多田本真美です。よろしく」

会釈すると、会釈し返してくる。
うーん、微妙な子だ。
どうしたらいいんだろう。

「さっき、矢本って男の子が、多田本さんに用事で来て、放課後談話室って言ってました」

ふーん。
って、そうなの!?
談話室に、矢本くんが報告に来たってことはっ!

「綾さん、ありがとうございました。わたしのことは、真美って呼んでください」

「いえ。あの、綾でいいですよ。綾さんだなんて、言われたことないですから」

そうだったの。
わたし、綾さんってずっと呼んでたし。何かごめんなさい。

「いいですかー?多田本さん、美先さん、着席ーっ」

先生が言い、綾…もわたしも席についた。

189:まい◆8Q:2017/07/13(木) 22:02

18.乙女の時間
「綾って感じでいい?」

「真美ちゃんでいいですか?」

わたしと綾の声が重なる。
今は、一時間目、地理が終わったところ。
二時間目の理科では、わたしの大好きなカッコいい上野先生っ!
実は、綾も一目惚れしたと言う。

「いいですよ」

「いいよ!あと、敬語も、やめてよ。タメ口で、ね?」

綾は、にっこり笑ってうなずいた。
それと同時に、上野先生が入ってきたの!

「上野先生〜!」

わたしと綾、声ピッタリだなあ。
元はね、理科嫌いではなかったの。
好きの方が大きかったのよ。
でも、苦手だし、苦手意識があって、成績は落ちるばかり。
だけど、理科が上野先生になってからは、学校の理科順位は35位以内っ!
すごいでしょ、すごいでしょ!
前は、82位だったのにさっ!

「真美ちゃんと、誰ちゃん?」

「わたしは、今日入った美先綾南って言います。よろしくお願いします」

綾の目には、ハートがいっぱい!
多分、わたしの目にもっ!
わたし、二股かけていいのかな?
うん、いいんだ。
こっちは大人の恋。
隅木田くんは、子供の恋っ!

「さあ、そろそろ着席するぞー!」

「はぁ〜い!」

わたしと綾、乙女だ…。
上野先生の声カッコいい〜。
 キーンコーンカーンコーン
ああ、幸せな時間スタートだ!

「きりーつ!」

ああ、うっとり。

「お願いしまーす!」

キャーーァン!

190:まい◆8Q:2017/07/13(木) 22:18

19.嬉しい時間
談話室のドアをノックする。
中には、大勢の明確ゼミ生がいる。
真ん中の椅子に、明スイメンバー3人は座っていた。
矢本くんもいるっ!

「みんな、遅れてごめんなさい」

言いながら、空いている椅子に腰をかけた。
明確ゼミのスクールバッグは、膝の上に置いておくことにした。

「明スイメンバーみんなが揃うのは久しぶりだな」

坂宮がつぶやき、わたしたちは、何度も何度もうなずいた。
心から嬉しい!

「ごめんなさい。俺の都合で」

矢本くんが頭を下げて謝る。
いえいえ、そんなことないのに〜。
いろいろ都合ってあるんだから、そこまで気にしなくてもいいのに〜。

「早速始めるぞ。今回の活動は、矢本復帰パーティーだ」

おおお〜!
何度このタイトルを聞いて思ったことだろう。
ついつい感動するんだよね。
わたしたちの絆が見られるから。
明スイだけの絆だけじゃなくて、失った絆も見られるけど。

「会場は、明確ゼミの5階、パーティー会場を借りる予定」

4人のために、あんなに広いところを使うのねっ!
楽しみ!

「だけど、やる時間がない。部活、体育祭と、イベントがある。だから、体育祭の終了後行うことにしようと思っている。賛成者は挙手」

隅木田くんが簡潔に言って、みんなが挙手する。
オーケー決まり。
日付は9月30日。
体育祭終了後ねっ!

「それより後は、会場の予約が出来、完全に使えるようになったら、だ」

うん。
そうだね。
パーティー会場によって変わること、あるもんね。
こうして、わたしたちは解散した。
公衆電話で、おばあちゃんに電話をかける。
初めてテレフォンカード使ったな〜。
楽しかったっ!

191:まい◆8Q:2017/07/15(土) 07:59

20.緯度、経度?
「隣がいない人は挙手お願いします」

今は、七井さんによる健康チェックの時間。
今日は、ふみちゃんが熱でお休み…ということは、ひとりぼっち。
クラスの大勢の子のところ、入ってもいいんだけどねぇ。
ふいに、あこちゃんたちとのことが頭をよぎる。
ダメダメ。
大勢は、新しい中学校に入ってから!
一時間目から、移動教室で社会だった。
社会は、最近地理を習っているので、地理室という、地球儀や資料がたくさんある部屋に行くのだ。
社会の担当は、学年主任の小林先生。

「小林先生、おはようございます」

七井さんが元気よく言い、みんなも後に続く。
七井さん偉いなあ。
あいさつがしっかり出来て。
体育祭後、学級委員長、学級委員を決めるから、立候補しなかったら推薦しようかな。

「はい、始めます」

学級委員長のふみちゃんがいないので、学級委員の柴田くんが号令をかけた。

「今から地理を始めます。お願いします。着席ーっ!」

みんなが着席したところで、小林先生はにっこり笑った。
かわいい〜。
小林先生は、男の先生なのに、すごくかわいいって有名。
わたしも、ついつい思うんだ。
カッコいいとも、たまぁに思うんだけどね。

「いいですか?地理の教科書、77ページを開いてください」

わたしたちが今習っているのは、世界地図とか、緯度、経度、赤道、本初子午線。
分かるような分からないような…あいまいではあるんだけど。

「緯度、経度を使って説明してください。いいですか?緯度、経度を使って、日本の位置を説明してください」

緯度は、えっと、緯度38度。
経度はぁ…経度135度。

「もう良さそうですか?では、隣の席の人と交換してみてください」

学級委員の柴田くんと交換する。
うちのクラスには、柴田くんがふたりいるんだ。
呼ぶのがめんどくさいったら。

「真美と違ーう」

ええええ!
絶対わたしが違うじゃん!
急いで消して、解き直す。
うーん、分からんっ!

「はい。では、言ってくれる人」

シーン。
あ、いつもふみちゃんが言ってくれてるんだ。
本当に、ふみちゃんに感謝!

「はい!わたしが言いますっ!」

七井さん!
本当に七井さん偉い。
学級委員長に、推薦しよっ!

192:まい◆8Q:2017/07/15(土) 08:10

21.日本の位置の謎
「えっとぉ、緯度が38度で、経度が135度です」

あ、一緒じゃん。
柴田くんが間違えたんじゃないの。
すると小林先生は、「残念」って言ったんだ。
何で、どうして、何でっ?
柴田くんがニヤニヤしている。
もう!
なら、柴田くんが言えばいいのに。

「俺言います」

うんうん。
とっとと正解言ったらどうなの。

「緯度が135度、経度が38度です」

え…?
それ、絶対違うと思うけど。
小林先生は、またも「残念」とつぶやいた。
まずさぁ、緯度って、縦線じゃなくて横線でしょ?
そこから間違ってない?

「杉田さん分かりますか?」

「先生、今日は杉田さん休みです」

あああ〜。
答えが分からないという空間、わたし苦手〜。
うーん…。

「はいはい!わたし分かりました!」

晴奈ちゃんが手を挙げて言う。
小林先生は晴奈ちゃんを指すと、かっこよく、「北緯38度!東経135度!です」と言い切る。
すると、小林先生は「はなまる」と言って晴奈ちゃんのプリントに丸を描いた。
そう言えば晴奈ちゃん、社会得意だったなー。
もう考えるの、やめよっ!

193:まい◆8Q:2017/07/15(土) 08:24

22.前の絆
ふみちゃんと遊ぶようになってから、家から弁当を持ってくるようになったんだ。
ひとりで、屋上のパラソル付きテーブルで弁当を食べる。
中等部の人たちに、学食取られたんだよね。
学食は、学習、おしゃべり、ご飯を済ませることが出来る。
中等部って、おしゃべりが好きらしいからなーっ。

「あ、真美。どうしてひとりなの?緑川さんたちは?」

「…」

わたしは、坂宮に聞かれたけど、答えられなかった。
聞かれたくないし、坂宮は関係ないことだもの。

「真美、何で黙ってんだよ。教えろ。どうしてひとりなんだっ!?」

「別にいいじゃん。坂宮に言っても変わらないし。ふみちゃんが今日休みだから、ひとりなだけだし」

ちょっと語尾を強めて言った。
坂宮の手には、サッカーボールが握られている。
サッカー少年だもんねぇ。

「俺は、緑川さんたちのこと聞いてんの。杉田会長は、いい」

チッ!
晴奈ちゃんのことなんか言いたくないし。
もう、場所変えよっと。

「真美、どこ行くんだよ」

「教室で食べるから。邪魔しないで」

坂宮も、ちょっと反省したのか、うつむいて校庭かな?に走っていった。
ああ、そういうつもりじゃなかったんだけど…。
坂宮、ごめんなさい。
教室で弁当の包みを開けて、弁当の続きをひとりで食べる。
わたし、こんなだからいけないのかもしれない。

「ねえ、多田本さん。ちょっと」

陽茉理ちゃんに呼ばれる。
もう、真美ちゃんって呼ぶのもイヤになって、多田本さんって呼び方にっ!
それがイヤになったら、何て呼ばれるんだろう。
ゾクゾクゾクッ!

「わたしとハル、ファッション誌の話してたじゃん。ユリもイヤって聞いたから、驚いたよ。でも、この前の、あの言い方はないんじゃない?わたしとハル、傷ついたんだから」

「ごめんなさい。でも、わたしも傷ついたんだから。謝られてないから、納得はいってないよ」

わたしもはっきり言うと、教室のざわめきは消え、注目される。
でも、気にしない。
陽茉理ちゃんたち、どう出てくるのっ?

194:まい◆8Q:2017/07/15(土) 08:37

23.ハッピーなこと
「ごめんなさい」

晴奈ちゃんと陽茉理ちゃんは、声をそろえて謝った。
わたしからも、反省、言った方がいいのかな。
すると、晴奈ちゃんが言った。

「わたし、多田本さんといて、すごく楽しかったんだけど、こんなに話さない日が続くって、多田本さん、わたしのこと嫌いなのかなって思った」

えっ。
嫌いじゃない。
陽茉理ちゃんたちと話してるから、話しかけられなかっただけでっ!

「多田本さんは、どうするの?わたしたちと、いるの?ふみ会長といるの?今決めて」

いまぁ!?
でも、ここで反論したら、は?って思われちゃう。
がまんがまん。

「わたしたちといるなら、わたしも気を付けるけど、多田本さんも気を付けてね」

陽茉理ちゃんに言われて、改めて考えてみる。
そんなに限られた条件で遊んで、楽しいわけがない?
それとも、それが絆の必須方法?

「わたし、多田本さんといたいし、もっと恋バナしたいなぁ」

由里歌ちゃんが言ってくれる。
わたし、決めた。
ごめんなさい、由里歌ちゃん。
恋バナはするけど、基本はっ。

「わたし、ふみちゃんといるかな。その他もあるかもだけど」

わたしの頬に、涙が伝う。
泣いているんだ、わたし。
今まで辛かったけど、そこから解放されたみたいな。

「そう。じゃあ、幼なじみであり、友達になろうね」

晴奈ちゃんに言われて、何度も何度もうなずいた。
陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんも、「ごめんね、ごめんね」と言いながら背中をさすってくれていた。
わたし、これで良かったんだ。
いろんな意味の涙が、ずっと出て、わたしは最後ににっこり笑った。

195:まい◆8Q:2017/07/15(土) 09:16

24.結果は?
 パンッ!
みんなの応援、音楽が同時に聞こえてきた。
あと、ピストルの音も。
応援、ピストルの言えば、体育祭。
多分だけど、彦宮学園最高の体育祭になりそう。
って、こんなこと考えてないで走らなきゃいけないね!
わたしの種目、1000mを、頭を真っ白にして走る。

「真美ちゃーん!頑張ってー!」

「多田本さん、ファイトーっ!」

「真美先輩頑張ってくださーい!」

ふみちゃん、晴奈ちゃん、河合さんが応援してくれる。
よーし!
行くぞーっ!

「真美先輩、抜かしてくださーい」

河合さんの声が聞こえて、前の人をふたり抜かす!
すると前はひとりだけっ!
よし、ラストスパート、抜かすぞ!
おばあちゃん、パパ、ママもね!
ばあば、じいじが応援してくれて…。

「い組が一着、ゴール!」

実況の仕事の陽茉理ちゃん、うまい!
さすがアナウンサー目指してるっ!
我らが、い組の女の子1000m優勝!

「真美ちゃん、ナイス!」

「多田本が優勝だーっ!」

クラスの男の子も喜んでくれた。
いつもなら、男の子は苦手なのに。
は組の坂宮は、は組代表の子ーーー2位にナイス!など、声をかけていた。
1位〜3位は、今から表彰だ。

「表彰状。6年い組1000m代表、多田本真美。記録、優勝。あなたは、私立彦宮学園体育祭1000m走において、優秀な成績を修めましたので、ここに賞する。おめでとう」

 パチパチパチパチ
彦宮先生に賞状を受けとるけど、恐くもない、おののかない。
嬉しい気持ちで、いっぱい。
い組に戻ると、みんなが「おめでとう」と言ってくれる。
ありがとう、ありがとう!
賞状を高らかに持ち上げて、「やったね!」と叫んだ。

196:まい◆8Q:2017/07/15(土) 09:31

25.優勝、明スイ笑顔のメモリー
結果発表。
い、ろ、は、に、ほ、へ組。
体育祭だけは、いろは順で、1組からい組になっていく。

「最終結果を発表します。初等部。優勝、い組!準優勝、に組!努力賞、は組!代表者は、前に出てきてください」

やった、優勝だっ!
ふみちゃんが前に出て、優勝旗、優勝トロフィー、賞状をもらった。
賞状は、教室に飾り、優勝旗、優勝トロフィーは、6年1組室に飾る。
ああ〜、いい体育祭になった!

「みんな、写真撮ろうぜ!」

前田先生が構えて、わたしは1000m走の賞状、ふみちゃんは優勝旗、柴田くんは優勝トロフィー。
七井さんが優勝の賞状、後の子は、個々の賞状を持ったり、ピースしたりしている。

「いいですかー?はい、カシャ!」

前田先生が撮った写真には、いろいろな気持ちが詰まっている。
彦宮学園6年い組で、良かった!


「よし!スイーツは全部そろったね!じゃあ、パーティー会場に運ぼ」

隅木田くんが言い、みんなでパーティー会場に運ぶ。
矢本くんも、もちろん。
パーティー会場は、わたしと矢本くんで飾り付けた飾りがたくさん!

「真美ちゃんと矢本、センスあるね。すごく楽しめそう」

隅木田くんが褒めてくれて、ニヤニヤする。
…よーし!
スイーツは全部そろったし、明スイメンバーもみんなそろったしっ!

「矢本/矢本くん復帰、おめでと!」

みんなで明スイケーキという大きなケーキに包丁を入れて、4人で同時に食べた。
ん〜、美味しい。
やっぱり明スイって最高!
             (つづく)

197:まい◆8Q:2017/07/15(土) 09:40

あとがき
               まい

こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者のまいです。
今回の7巻、いかがでしたか?
ざっくり内容を言えば、矢本くんが戻ってくるけど、喧嘩しちゃって、体育祭で…でしたね。
(ざっくりすぎるでしょ!by真美)
わーん、ごめんなさい。

皆さんは、体育祭、ありますか?
小学校では運動会、中学校では体育祭または体育大会。
わたしは、運動会の短距離走で1位をとったのが保育園から一度もない!
恥ずかしいったら!
でも、頑張って速くなるもんねっ!
皆さんも、体育祭あったら頑張ってください!

コメントをくださった方、ありがとうございました!
わたしの自信、力に繋がります。
本当にありがとう!

質問、感想待ってますね!

最後に、次回の予告!
何事も一見落着。
と思いきや、中間テスト!
こんな中で、明スイ活動出来るの!?
次回もお楽しみに!

宣伝
『*レインボーハッピー*』というスレは、わたしの小説を載せています。
ぜひ読んでみてください。

198:まい◆8Q:2017/07/15(土) 21:30

『ここは明確スイーツ研究部!8』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

199:まい◆8Q:2017/07/15(土) 21:45

1.テストの結果
うーん。
総合、46位かぁ。
165人中。

「真美ちゃん、国語何位?」

「ん?えっと、2位。惜しかった〜」

わたし、多田本真美は、私立彦宮学園という学校に通っている。
そこの、夏休み明けテストーーー彦宮テストの順位表を見てビックリ!
国語2位ってのはいいとして。
総合!
もっと下かと思ってたから、嬉しい!

「ふ、ふみちゃん、総合、何位?」

ふみちゃんこと杉田ふみは、彦宮学園初等部の児童会長。
秀才で、最近いつも一緒にいるんだ。

「1位だった。良かった〜。夏休み、ずっと勉強したもの」

ヒエーッ!
何で休まなかったのーっ?
わたし、明スイ活動であわただしくしていたのに。

「クラブの美術は、1度出席したけどね。でも、真美ちゃん、すごく忙しかっただろうに、46位って素晴らしいと思うけど」

「ありがとう」

すると、幼なじみで、元親友、緑川晴奈と目が合う。
晴奈ちゃんが歩み寄ってきて、後ろには、矢本陽茉理ちゃん、利等万由里歌ちゃんもいる。

「多田本さん、総合何位だった?」

「低かったよ〜、46」

わたしが笑いながら言うと、晴奈ちゃんたちは、「高いよ〜」、「低くないじゃ〜ん」、「何それ嫌味〜?」って言ってきた。

「そ、そう?ありがとう」

ちょっと一緒にいられなくなって、ふみちゃんのところに戻った。
すると、涼太くんが来た。

「ふみちゃん、総合1位?」

「ああ、涼太。うん。1位」

涼太くんって、ふみちゃんの幼なじみなんだって。
知らなかったけど、坂宮と同じサッカー少年なんだってね。

「涼太は?」

「俺?ふみちゃんにしては低いと思うけど、11位」

高っ!
わたし、格が違うかもっ!

200:まい◆8Q:2017/07/15(土) 22:05

2.キャラ弁
「はい、では終わりまーすっ」

前田先生が言い、学級委員長でもあるふみちゃんが号令をかける。
そして、みんなで「ありがとうございましたー!」と言う。
よし、午前終了。
お昼ご飯だ、お昼ご飯だーっ!

「真美ちゃん、明日から、学食で頼むことにしない?大変でしょ、いろいろと」

確かに、一理ある。
おばあちゃんに言ってからというものの、わたしはいつも通り。
おばあちゃんは4時に起きてくれている。

「今日は、学食で食べましょ。外だとちょっとむしむしするし」

うん。
昨日が雨だったからか、むしむししている。
暑くはないけど、暑いみたいな。
微妙な気温。

「あ、真美先輩。こんにちは。学食でお昼ご飯ですか?」

あ、河合さんだ。
河合さんとは、同じ華道部部員。
わたしのことを、先輩と慕ってくれる子だ。

「そうだよ。河合さんは?」

「わたしも学食でお昼ご飯です。ひとりなので、入れてくれませんか?」

「いいよ。ね、ふみちゃん」

ふみちゃんも大きくうなずいてくれて、久しぶりに4人用テーブルに座る。
いつもは、2人用か3人用だから。
一番人気の3人用席、空いてない。
座りたかったのになー。

「初めまして。河合です。杉田会長のおかげで、素晴らしい小学生ライフが送れております」

河合さん、礼儀正しくてすごい。
「初めまして。河合です」だなんて。
そう言えば、河合さんの名前何だったっけ?

「初めまして。杉田ふみです。河合、何さん?」

「河合莉保子です」

莉保子(リホコ)っていうんだ。
河合莉保子ちゃん。
それで、ふみちゃんは河合さんがふたりいるので、「かわりほ」と呼ぶことにしたらしい。
ネーミングセンス、あるよね。
わたしは、莉保子ちゃんにした。

「かわりほの弁当かわいい。わたし、普通におかず詰めただけだから。かわりほみたいにかわいい弁当にしようかしら」

莉保子ちゃんの弁当はキャラ弁。
ミッキーがにこやかに笑っている。

「真美先輩の弁当見せてください」

パカッっと弁当を開くと、おばあちゃんが作ったのかと驚いた。
だって、わたしが好きなキャラクター、ダッフィーのキャラ弁だったんだ。


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