文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。
13.定期テスト
翌日の朝。
学校はいつにも増してざわざわしていた。
もちろんわたしも。
だって今日は、定期テスト!
順位も出る大きいのなのに、わたしと来たら、すっかり忘れてて。
「そう言えば、真美ちゃん。明日、定期テストだけど、分からない問題とかあったら教えようか?」
昨日、隅木田くんが声をかけてくれて思い出した。
定期テストの存在を。
どうしようかと戸惑っていると、梨萌佳さんがニヤニヤ笑った。
「忘れてたの?真美ちゃん。受験の期間だから、頑張らなきゃ!」
サーッっと青ざめたわたしは、自転車をびゅんびゅんにして家に帰った。
そして、この様。
目の下には、くっきりクマが。
どんよりしていて、児童会長にふさわしくない。
マスクで隠しているんだから。
「どうしたの?真美ちゃん。風邪?」
美華ちゃんが心配してくれたけど、とりあえず風邪ということにした。
先生にバレたら、ひどい顔だからね。
「真美ちゃんに問題出すね。簡単だけど…。遣唐使を送るのをやめたのは誰か答えてみて」
廃止したってことだよね。
遣唐使は、遣陏使の次に、今の中国に送られる人のこと。
この答えは簡単!
「菅原道長でしょう?」
美華ちゃんも、優佳ちゃんも、穂乃香ちゃんもケタケタ笑い出す。
ちょっと、違うって言うの!?
あわてて教科書をめくる。
菅原道真…。
わたし、菅原道長って言ったよね!?
「めちゃめちゃウケる!道長は、藤原だし〜!」
急に恥ずかしくなって赤面化する。
そっ、そんなに笑わなくてもいいのに!わたしは、顔を隠すために教科書をペラペラ高速でめくった。
14.運命の順位は
後日のホームルーム。
まだげんなりしているわたしに、とうとう順位が返ってきた。
胸騒ぎがする。
「多田本真美さん」
ああっ、わたしだ…。
教卓まで歩いていって、前田先生から順位の紙をもらう。
その時、前田先生は小さな声でささやいた。
「多田本さん、何かあったの?数学の勉強を集中的にね」
ゲ、そんなに悪かった!?
前田先生は、また次の人を呼ぶ。
確かにあんまり勉強してなかった…。
あわてて数学の欄を見る。
数学…56位!?
ヤバイ。
ママやパパ、涼太くんのおじいさんにバレたらヤバイかもぉっ!
国語は21位。
低いけど、まあいい方かな。
社会は…3位!?
やったぁ、何とかセーフ。
理科は33位。
英語は26位。
総合が…13位じゃんっ!
社会のおかげだったかも。
「真美ちゃんどうだった?」
「総合ね、13位だった!」
美華ちゃんが総合35位。
優佳ちゃんが58位で、穂乃香ちゃんが29位だったんだって。
「まーちゃん、どうだった?」
ふーちゃんが笑顔でやって来る。
順位を教えると、ふーちゃんは順位の紙を見せてくれた。
総合、2位!?
ふーちゃんを誰かが越したの!?
「まさか涼太に抜かされるなんてね。でも、これでふたりそろって中学校行けそうかも」
涼太くんが1位なの!?
さすが…。
このカップルというか、幼なじみ関係の人たちというか…。
秀才すぎっ!
「すごいね、でも」
ふーちゃんと話していると、前田先生がパンパンと手を打つ。
「みんな、良かった結果の人や、ダメだった人っていると思うけど、受験する人は特に頑張るように。いいね?」
わたしのことだよね。
グッっと拳を固めて前田先生を見る。
こんな順位じゃまだまだ。
もっといい結果じゃなきゃ、青山野に推薦だなんて…。
「ただいま…いないか」
おばあちゃん、いつ来るんだろう。
ちょっと寂しい。
パパも全然帰ってこないもんね。
リビングに書いてある置き手紙を見て、ちょっとため息をつく。
「やっぱり誰もいないよね」
ピンポーン
玄関へ行くと、実柚乃ちゃんがいた。
前もこんなとき助けてくれたな、実柚乃ちゃん。
「ねえ、真美ちゃん。実柚乃、青山野受けるって決めてから勉強して、順位が上がったよ!4位に」
えっ、えええええええ〜?
15.おばあちゃんのメール友達
本当にそんなに高いの!?
わたしの方が高かったのに、実柚乃ちゃんに抜かれちゃった。
「実柚乃ね、真美ちゃんとどうしても同じところに行きたいの。推薦は無理だから、頑張ったよ」
「嬉しい…!ありがとう…!」
実柚乃ちゃん、わたしのために努力してくれたの?
もちろん、自分の学力のためでもあると思うけど。
「実柚乃、息抜きに明スイも参加するスイーツフェスティバル行くから!それと、真美ちゃんのおばあさんに言われたんだけど。今日は、真美ちゃんの家に泊まるから!これ荷物」
今度は実柚乃ちゃんが泊まるの!?
カバンからスマホを出し、慣れた手付きで操作する。
やがて、わたしにスマホを見せてくれた。
「真美ちゃんのおばあさんとメールやってるんだ!それで来たの。真美ちゃんのお父さん、今日帰って来れないんだって」
おばあちゃん、実柚乃ちゃんとメールやってるわけ!?
何でやってるの…。
「実柚乃が、真美ちゃん家泊まっていいですか?って聞いたら、いいの?ありがとうって言ったから!」
いつの間にメール友達になっちゃってるの…。
ちょっと呆れつつ、実柚乃ちゃんを部屋に案内する。
「実柚乃ちゃんはわたしの部屋で寝てね。わたしはおばあちゃんの部屋で寝るから」
パパの夜ご飯を実柚乃ちゃんが食べればいいよね。
いきなりお泊まり会って、なんかすごいんだけど…。
16.一本の電話
今日の夜ご飯になるはずのカレーは冷蔵庫へ。
実柚乃ちゃんが作ってくれた和食定食みたいなのを食べる。
「今日はあわただしくてごめんね。急に泊まって…」
「うんん。ひとりだと寂しいから、実柚乃ちゃんが来てくれてふたりだし。おばあちゃん心配症だから」
ホントだよ。
いつの間にか実柚乃ちゃんとメール友達になって、知らないうちに泊まる準備をしてるんだもの。
「明日は、矢本先輩の家行くって聞いたから、実柚乃も着いていっていい?明スイ活動が見てみたくて」
「でっ、でも実柚乃ちゃん、スイーツフェスティバルではお客様だから、いろいろ分かっちゃうよ!」
「明スイのメンバーに迷惑かかっちゃったら、陽茉理ちゃんと遊ぶから!行くだけでもいいの」
うーん、じゃあいいかな。
わたしはコクンとうなずいた。
実柚乃ちゃんは「やったあ!ありがとう、真美ちゃん!大好き!」と喜ぶ。
ちょっとくらい、いいよね。
「実柚乃、お風呂先に入っていい?」
今、お風呂の話っ?
急に変わってビックリして、ちょっとあわあわする。
「うん、いいよ」
何かあるのかな。
やらなきゃいけないこと。
宿題やってないよね、きっと。
一緒にやろうかな〜なんて。
プルルルルルプルルルルル
「はいはいはいはい!」
パタパタスリッパを鳴らせて受話器を取りに行く。
ガッチャンと音を鳴らして、受話器を手に取った。
「もしもし。多田本ですけど」
「もしもし、パパだけど」
「パパっ!今日帰ってこないんだね。だけど、実柚乃ちゃんって言う友達が泊まることになってね!今日全然寂しくないんだよ!…パパ?」
パパは「そうか、実柚乃ちゃんか。良かったな」って言うのみ。
ちょっと沈黙が続く。
心配になったのかな、そういうこと!
「わたし、実柚乃ちゃんがいるから平気だからね!」
「真美、よく聞きなさい」
えっ?
パパは、声のトーンを低くする。
「菜和が中央病院に運ばれた。実柚乃ちゃんを家に帰してあげて…送っていくんだよ。母さんと父さんのところに行って車で中央病院に来なさい」
ママが、中央病院に運ばれた…?
前はもっと小さい病院だったのに…?
「いいか?真美」
は、はい…。
電話が切れた後でも、ちょっとの間放心状態だった。
17.ママは強いか
実柚乃ちゃんにことを話して、家に送る。
どうしてそうなったの?
早く行きたい…。
「真美ちゃん、ごめんね。じゃあ、お母さんとサポートできるように、真美ちゃんも頑張ってね」
そ、そうだよね。
わたしが頑張るんだ!
実柚乃ちゃんありがとう。
家に帰って、玄関に置いてある荷物を自転車のカゴに入れる。
家の鍵をかって、自転車を走らせた。
ばあば、じいじ、もうちょっと!
ここが、ばあばとじいじの家。
喫茶店だけど、奥が母屋。
母屋のドアフォンを押す。
「真美ちゃんっ!待っていたわ。行きましょう、中央病院へ」
じいじが運転してくれて、中央病院へ向かう。
ママ、無事でいてっ!
それから、眞理ちゃんと優眞くんも、無事でいてねっ!
「大丈夫よ、真美ちゃん。菜和さん、とっても強いんだから」
ばあばが背中をさする。
ママ、強いの?
保育園の時は、あんまり記憶がない。
小学校の時からしか…。
うーん…。
「心配無用!着くまで何も分からないわ」
ばあばがそう言った時、中央病院に着いた。
18.ママの症状は
すぐに受付カウンターに走る。
お願い、ママ、頑張って!
「多田本菜和さんの娘ですけど、部屋はどこですかっ?」
「菜和さんの娘さん?ひとりで来たの?保護者の方は?」
わたしは、ばあばとじいじを指差す。
看護師さんはやっと分かってくれて、部屋を案内してくれた。
「ここが菜和さんの病室。今は入ることが出来ないわ」
「何でですかっ?」
看護師さんは、椅子に座るよう勧めてくれた。
わたしが座った隣に、看護師さんも腰かける。
「あなたのお母さんは、もしかしたら病気があるかもしれないの。あなたのお父さんが検査をお願いしたから、今検査してるの」
病気っ…?
どうして病気になるのっ…?
何でママなのっ…?
「今は、あんまり分かっていない。だから、もうちょっと待ってね」
看護師さんは立ち上がって、ばあばとじいじにも説明した。
さっきわたしたちが来た方から、おばあちゃんが駆けてくる。
「あら、菜和さんのお母さん。ご無沙汰してます」
ばあばが軽く微笑む。
おばあちゃんは「ご無沙汰してます。いつも菜和や真美ちゃんがお世話になっております」と言ったきり、看護師さんと話し始めた。
ママが心配なんだよね。
「おばあちゃん…!」
「真美ちゃん。ちょっとおいで」
ばあばが手招きする。
ばあばの方へ行くと、耳元でそっとささやかれた。
「おばあちゃんは、動揺しているの。ばあばが聞いてあげるわ」
わたしは、ばあばが言ってくれた時、何が言いたかったのか分からなくなった。
19.意外な繋がり
翌日の朝。
今日は、お風呂も入ってないし、制服のままだったけど、ばあばの家に泊まって寝た。
矢本くんには電話して、ちゃんと理由も言って行けないって言った。
「行くけど、着替えた方がいいわね。真美ちゃん家寄ってあげるから、服に着替えなさい」
今日もじいじの運転で向かう。
家に着くなり、部屋に駆け上がって服に着替えた。
パジャマとかも詰めた方がいい?
そう思ったけど、言われてないのでやめておいた。
「早く行きましょ、真美ちゃん!」
ばあばが車の中から声を上げる。
服に着替えるなり、コートを着てマフラーをして家を飛び出す。
「昨日は制服のまま着たから本当に寒そうだったわ」
動き出した車の中で、ばあばはつぶやく。
確かに昨日、動揺してて全然気にしてなかった。
「真美ちゃんは児童会長やってるんですって?青山野に推薦で」
「うん、そうだよ!」
ばあばはすごく喜んでくれた。
あんまりこういうことは、ママに話していない。
児童会長やってること。
私立青山野学園に推薦入学できることって、ママは知ってるのかな?
「着いたわ。すぐ降りられる様に準備してね」
ばあばに言われて、カバンから出していたハンカチをギュッっと握る。
これは持っておこう。
「さあ、行って行って!」
ばあばが声を上げたと同時に、ママのいる病室へ走る。
病院の中では早歩きだけど。
「あらあら、昨日の小学生?菜和さんの娘さんの」
「はい。昨日の看護師さんですか?」
看護師さんはにっこり笑う。
そして、名字のプレートを見せてくれた。
「わたしは、受け付けカウンター兼、菜和さんの担当で検査したり、お世話するの。船水よ」
船水さん…。
珍しい名字だよね。
すると、船水さんはクスッっと笑って見せた。
「あなたは、明確生?」
「前、そうでした」
やっぱりとでも言うかのように微笑む。
も、もしかしてっ!
「船水多恵って受け付けカウンターの先生の娘」
船水先生のっ!
意外な繋がり!
「真美ちゃん」
ばあばが歩いてくる。
看護師さんと仲良くなれちゃったっ!
エヘヘ。
20.診断結果はっ?
船水さんは、わたしの良き話し相手になってくれた。
暗かった道に、明るい光が差し込んできたかのよう。
「あなたの名前は?」
「多田本真美です!船水さんの下の名前は何て言うんですか?」
「船水美海よ」
すると、病室からパパが出てきた。
ちょっとの隙間から、ママの顔が見えた。
顔は真っ赤で、汗をかいている。
すごく苦しそうだった。
「ママッッッ!」
「真美ちゃん、大丈夫よ大丈夫。ちょっと落ち着いて」
船水さんが背中をさする。
パパは、顔が明るいようで暗い。
すぐにばあばが話を聞きにいった。
「菜和さんはどうなのっ?」
パパは、声をひそめる。
緊張感が高まって、ママのいる病室の前の廊下がやけにシンとしている。
「病院ではないそうだ。しかし、出産を1ヶ月早める方針でいくことに決めました」
ってことは、来月っ?
ちょっと嬉しい気持ちがある。
「異常はないようなので、会えるとのことで、いつも通りでいく様です」
良かった…。
船水さんも笑って喜んでくれる。
こんなすごい人と、知り合えて良かったかも。
悲しいときは話を聞いてくれて。
嬉しいときは喜んでくれて。
「船水さん、ありがとうございます!失礼します!」
そう言い残して、わたしはママの病室へ足を傾けた。
21.新しいエプロン
「ママっ?」
あの時の顔よりは赤くなくて、ちょっと白っぽかった。
ママは、にっこり笑ってわたしの頬をなでる。
「ありがとう、真美ちゃん。いてくれたんでしょ?嬉しいわ」
ママのベッドの布団に体を預ける。
ちょっと、泣きそう。
目の下の辺りが熱くなってくる。
「真美ちゃん、中学校へ向けて頑張るのよ。勉強」
涙を必死にぬぐってうなずく。
ママ、勇気付いたかな?
ばあばが言った通り、ママ強い。
何よりも強い気がする。
矢本くんの家に着いた頃には、もう練習が終わっていた。
梨歩佳さんと梨萌佳さんが来ている。
「遅くなってすみません!」
ペコペコ謝っていると、梨歩佳さんが頭をポンポンしてくれた。
「大変だったね。だけど、来てくれてありがとう」
わたしは首を横にブンブン振る。
もう終わっちゃった…。
だけど、来れて良かった!
みんなに会えて、元気が付いた気がするから。
「真美ちゃんも来たことだし、ゲストを呼ぶね。実柚乃ちゃーん」
え、実柚乃ちゃん!?
キッチンの奥から顔を出したのは、昨日一緒だった実柚乃ちゃん!
「来ちゃった…。けど、メンバー分のエプロン作ったの!フェスの時、みんなで着てっ!」
配ってくれたエプロンは、みんな柄が違うものだったけど、一体感がある。
胸元に明スイと刺繍されている。
わたしは花柄。
坂宮はサッカーボール柄。
隅木田くんはストライプ柄。
矢本くんは野球ボール柄。
「ありがとう、実柚乃ちゃん!」
22.前夜祭!
あわただしく車と屋台を行ったり来たり繰り返している。
エプロンが風になびく。
「大丈夫?真美ちゃん。休憩しなくてもいい?」
隅木田くんが心配してくれる。
わたしは「大丈夫です」とだけ言って、また車へ走る。
今はスイーツフェスティバル前夜祭。
屋台を出すグループは準備を。
前夜祭のステージは『MYG47』とかいうアイドルのライブ。
「真美、これ持ってけ!」
坂宮に大量の容器を渡される。
プラスチックのばすなのに、重い…。
容器と格闘していると、隅木田くんがヒョイッっと持って見せる。
「僕が持つから、真美ちゃんは休んでなよ」
でも…。
隅木田くん、いいの…?
じゃあ、お言葉に甘えてちょっと。
「真美ちゃーん!」
向こうの方から走ってきたのは…。
実柚可さんだ!
ヘトヘトって感じだけど。
「参加ありがとね!ホームページに明スイ参加って書いたら、いろんなグループの参加が決まったよ!」
役に立てたみたいで、良かった。
そう思いつつ、席を立つ。
こうしちゃいられない。
動かないと。
「では、明日もよろしくお願いしますね。わたし、準備してきます!」
また車へ駆け出す。
これって、青春なのかな…?
23.スイーツフェスティバル開催!
ついに今日。
スイーツフェスティバル。
現場へは自転車で向かった。
場所が、近くの公立校の校庭だったからね。
「真美ちゃん!」
「実柚可さんじゃないですか。おはようございます!」
ちょうど実柚可さんも自転車だったので、ふたり並んで自転車をこぐ。
公立校って初めてで、昨日すごくビックリした。
私立校と違って、校庭の広さも全然違ったから。
「実柚可はこっち行くから。真美ちゃん頑張ってね!」
実柚可さんと別れると、明スイメンバーの集合場所、校門へ急いだ。
ちょっと遅刻かもーっ!
「おはようございます!」
隅木田くんしか着てない…。
一番最後じゃなくて良かった。
そんなことを考えていると、すぐにメンバーが顔をそろえた。
「じゃあ行こうか。僕と矢本は作る。坂宮は会計。真美ちゃんは呼び込みや試食にしようと思うんだ。交代でやってもいいけど」
うん、いいと思う!
会計とか慣れてなくて出来ないし。
それに、作るのは焦って無理そう。
試食だったら「いかがですか?」って勧めたらいいんでしょ?
出来る!
「じゃあ、それでやろうか」
自転車を駐輪場に停めて、昨日立てた屋台へ向かう。
あと、30分でスタート。
今日の舞台は『MYG47』のライブ2だそうだ。
パンッ!パンッ!パンッ!
ピストルみたいな音が鳴り響く。
開始の合図だ。
人がたくさん入ってくる。
「いらっしゃいませー!明確スイーツ研究部、いかがですか?試食品ありますよ!」
来たお客様に、手当たり次第でも試食品を勧める。
ちょっとでも多くの人が、スイーツを楽しんでもらいたいから!
「いらっしゃいませーっ!」
お客様が次々に試食品に手を伸ばす。
うん、いい感じかも。
試食したお客様のひとりが言う。
「これは、あそこで売っているの?」
「はい!最後尾に並んでいただいて」
最後尾になるところを指す…。
めちゃめちゃ長いじゃん!
さすが明スイ!
やっぱり最高だねっ!
24.人気な明スイの屋台
もうヘトヘト…。
わたしの休憩時間が回ってきた。
他の人の休憩時間なんて、めちゃめちゃ忙しいんだから!
「すみません。そのハンバーガーひとつください」
割りと空いている屋台。
ハンバーガーが売っていた。
買うと、ベンチに腰をかけてかぶりついた。
美味しいじゃん。
「どう?楽しんでる?」
「実柚可さん!もちろんです!」
ふふふと笑って、企画書をながめながら次の仕事へ向かった。
実柚可さん、忙しい…!
「真美ちゃん!」
「今度は実柚乃ちゃんだ」
オシャレな格好をして隣に腰かけた実柚乃ちゃん。
来てくれたんだ!
「明スイの買うね〜」
「ありがと」
ハンバーガーを食べ終わり、ゴミを丸めて屋台に戻った。
もちろん、実柚乃ちゃんも連れてね。
最後尾、全然見えなかったけど。
「いらっしゃいませーっ!」
エプロンを付けた、わたしの大きな声。
辺りに響いた…気がした。
(つづく)
あとがき
相原梨子
こんばんは!
そして、遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
『ここは明確スイーツ研究部!』早15巻はいかがでしたか?
まだ眞理ちゃん出てきませんね。
前は出す予定でしたが。
今回は、新年を迎え、真美ちゃんのママに変化があり…。
いろんなことがありましたね。
感想待ってます!
皆さんは、フェスティバル参加したことありますか?
私はあります。
スポーツやゲームのフェスティバル。
参加経験ありの方は、何らかの思い出があるのではないでしょうか?
良ければ、教えてください。
ここまで読んでくださったあなた!
本当に本当にありがとうございます。
次回もよろしくお願いします!
次回は、みんなが受験!
真美ちゃんは面接のみですが。
そんな中、ついに眞理ちゃんが…?
いつもよんでます!すっごく面白い(^o^)頑張ってε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
515:相原梨子◆x.:2018/02/04(日) 19:34 >>514
ありがとうございます!
返信遅れてすみません。
これからもよろしくお願いします!
『ここは明確スイーツ研究部!』
人物紹介
多田本 真美
私立彦宮学園の後期児童会長の小学6年生。
すでに、私立青山野学園の推薦入学が決まっている。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
高校は私立愛羽学園に受験する。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.初めての面接
ドクッドクッドクッドクッ
胸騒ぎが、激しい…。
どうしよう…。
失敗したら評価が…。
「はい、次の方〜」
面接室から私立青山野学園の校長先生の声が聞こえる。
ずっと練習してきたことを実行するんだから出来るはずだよね…!
「失礼します」
開いたドアをゆっくり閉めて、面接者用の椅子に腰かける。
目の前に座っている3人の人。
その中でも真ん中の、肘掛け椅子に腰かけている校長先生。
「多田本さん、お久しぶり」
「お久しぶりです」
わたしの名前は、多田本真美。
私立青山野学園に推薦入学出きる。
一応、面接はあるんだけどね。
校長先生ーーー青山野涼太くんのおじいさんはにっこり笑う。
「多田本さんは、推薦される前から入学希望校が青山野だったと書いてありますが、どうしてここを選んだんでしょうか?」
大丈夫だよ、わたし。
この質問は練習済み。
おばあちゃんとやった通りにしたらバッチリいいはずだよねっ!
「わたしの内申点に合っているという面もありますが、青山野学園はいろいろな面で良い結果を残しています。わたしも、夢を見つけていきたいと思ったからです」
校長先生をはじめ、両隣の先生も目を見開いて驚いている。
みんな、嬉しそうな顔かなっ。
校長先生の右隣、理事長の方が質問する。
「将来の夢は何も思い浮かんでいないんですか?」
「教育系、または医療系の仕事に就きたいと思っています」
すると、理事長の方は顔をしかめる。
あんまり良くない解答っ?
理事長の方は、紙をペラペラめくりながらつぶやいた。
「教育と医療は全然違う。うちは学科分けもあるので、考えた方がいいのではないでしょうか?」
学科分け…。
そっか、もっと考えれば良かった。
今すぐ答えなくちゃ!
だけど何を…?
「教育系に就きたいと思った理由は何ですか?」
「えっと…」
ヤバイヤバイ!
面接で一番言っちゃいけない言葉。
『えっと』使っちゃったよーっ!
「児童会長をやっていて…先生方の助けがあって…その…わたしも、生徒にとっていい存在になりたいからです」
あぁー…。
やっちゃったよ…。
あんなこと言わなければよかった。
やり終わった後に、どんどん後悔が積もっていく。
「どうしたの〜?肩落としてさ」
「秀花ちゃん…」
杉田秀花ちゃんは、わたしを深くいじめてしまった罪で退学。
最寄りの公立小学校に通っている。
だけど、持ち前の成績で何とか青山野学園を受けるんだ。
「面接、失敗しちゃったんだ…」
「大丈夫、真美ちゃん。頑張ろうよ。わたしの方が不利…ごめんね」
秀花ちゃんの横顔は、どこかすごく悲しげだった。
2.ママにしか出来ないこと
家に帰ると、すぐにママに電話した。
もう産まれてくる赤ちゃん、眞理ちゃんと優眞くん…。
ふたりが誇りに思えるお姉ちゃんにならなくちゃねっ!
「真美ちゃん、どうだった?面接」
「それが…あんまり…」
ママは、ふふっと笑ってくれた。
ほぐしてくれてるみたい。
おばあちゃんでも無理、パパでも無理なことが出来るママ。
やっぱり頑張れる!
「真美ちゃんなら出来るから、後ろ向きにいないで頑張って。きっと眞理ちゃんと優眞くんにも届くわ」
そうだよね…。
ふたりが産まれてきて、憧れになってもらえるお姉ちゃんなんて無理。
産まれてくる前から思われるくらいのお姉ちゃんになるんだ。
「ありがとう、ママ。わたし頑張る!ママも頑張ってね!」
ママとの電話を切って、部屋に戻る。
昨日帰ってきてくれたおばあちゃん。
ちょっとは生活が楽になる。
わたしって、本当にいろんな人に支えられてるんだなあっ。
ピチピチピチピチ
真由ちゃん…?
目を開けると、たびたび家に来ていて飼っているレベルの鳥、真由ちゃんが鳴いていた。
「そろそろ着替えるか…」
パジャマを脱いで制服を着る。
もう、この制服も着る時間短いね。
もし青山野学園から断られても、中等部で制服違うし。
「真美ちゃん起きてるのー?起きてるなら下おいでー!」
下からおばあちゃんの声が聞こえる。
久しぶりにコンビニ弁当じゃない朝ごはん。
作れないから、ずっとため置きしてた
コンビニ弁当だったから。
「おはよう、真美ちゃん」
「おはよー」
食パンが食卓に並べられている。
今日は、パパ帰ってないんだ。
仕事忙しいのかな…?
「FAXで、隅木田優斗さんから昼休みに新しく出来た校内喫茶に集合って」
隅木田優斗くんーーーわたし、隅木田くん、坂宮陽都、矢本拓斗くんがメンバーの明確スイーツ研究部のひとり。
中学2年生で、秀才なんだ。
隅木田くん直筆のFAXを見る。
校内喫茶なんて出来たんだ。
高等部まで行かなきゃいけない!
メンバーに高等部の人いないのに…。
「ずいぶん、彦宮学園は進んでるのね」
彦宮学園とは、わたしたちが通ってる学園のこと。
校内喫茶とか絶対ないよね。
進みすぎだって〜。
3.お嬢様の悩み
教科書をスクールバッグにしまうと、ジャージバッグを持って更衣室に向かった。
美華ちゃんーーー彦宮美華ちゃんの足取りが重たい。
どうしたんだろう?
体育が得意な穂乃香ちゃんが、美華ちゃんの顔を覗き込む。
「どーしたのー?美華ちゃん、バスケ苦手だから?」
今日からの体育はバスケットボール。
美華ちゃん苦手って言うけど、わたしの方が下手だよ…。
「おじ…校長先生に言われたの。絶対に体育で5を取りなさいと」
おじいさまと言いかけた美華ちゃん。
その通り、彦宮学園の校長先生は、美華ちゃんのおじいさん。
つまりお嬢様なんだ。
美華ちゃんは、肩を落とす。
「穂乃香はいいよね、運動出来て」
優佳ちゃんは隣ではにかみがちに聞いている。
運動が得意な穂乃香ちゃんとは打って変わって苦手な優佳ちゃん。
多分、わたしと同じ気持ちだと思う。
「ねえねえ、昼休みに校内喫茶行こ!行ってみたい!」
優佳ちゃんが話題を変えるように声を張り上げた。
だけど、それと同時に約束が頭をよぎってしまった。
「ごめん、優佳ちゃん。明スイの約束があるんだ…」
「そっかそっか、全ぇ然いいよー」
優佳ちゃんはハハッっと笑いながら更衣室へ駆け出した。
わたしは、ゆっくりと更衣室へ足を傾けていった。
4.隅木田くんの恋
肩で息をしながら制服に着替える。
美華ちゃんは、体育が終わってどことなく楽そう。
着替え終わった優佳ちゃんは「学食の席取っとくねーっ!」と言って学食へ走っていったし。
穂乃香ちゃんは「サイフ忘れた!家までひとっ走りするわ!」って更衣室を出ていったし。
「おーい、美華ちゃん?」
美華ちゃんは、さっきから体育が終わった安心感が大きいみたい。
先行っちゃおっと。
ジャージカバンを肩に引っかけて教室へ戻る。
その途中、わたしは見てしまった。
隅木田くんに告白している女の子を!
絶対、バレンタインにチョコレート渡すパターンだよね…。
ふたりは、ちょっと会話を交わして別れていく。
どうなったのか気になる。
すると、肩に大きな手が乗った。
「真美ちゃんどうしたの?」
「な、何でもないや!ハハハッ」
美華ちゃんもう来てるーっ!
あわてて教室に逃げ込み、サイフを手に学食へ走った。
優佳ちゃんが、学食の4人用席の前で手を振っている。
「みんなは?」
「まだ来てないよ。そっちこそ、穂乃香は分かるけど、美華ちゃんは?」
「そろそろ来ると思うけど…」
学食の入り口に視線を向けると、美華ちゃんがド派手なサイフを持って立っていた。
「こっちこっちー!…あ、真美ちゃん先に買ってていいよー」
優佳ちゃんがボソッっとつぶやく。
わたしは、学食内をグルッっと見回してメニューを決めていた…その時!
隅木田くんとさっきの女の子っ!
ふたりっきりで学食に来ることなんて絶対ないよね…!?
もしかして、付き合ってる!?
5.矢本くんの進路
もうすぐバレンタインかぁ…。
あの女の子もチョコレート渡すよね。
ここ、校内喫茶は、ばあばとじいじが経営している喫茶店にそっくり。
リアルにすごかった。
「おい、真美?」
坂宮が顔を覗かせる。
ビクッっと肩を震わせるわたし。
カレンダー見て、ボオッっとしてた!
「2月14日はスイーツの日でしょ?何かやらなきゃね」
坂宮がニコニコ笑いながらこちらを見てくる。
あ、あげないよっ!
友チョコ…義理チョコならいいけど。
明スイ仲間だもんね…。
「だけど、坂宮と矢本。受験はどうなんだよ」
隅木田くんがふたりを見る。
坂宮はヘヘッっと笑い、矢本くんは無神経な感じで目を逸らした。
「どこ受けるんだよ」
「隅木田しつこいなぁ〜。俺は彦宮残るよ〜。明スイ活動出来ないじゃん」
坂宮、彦宮学園のままなんだ。
明スイ活動が出来なくなるから。
じゃあ、わたしも残った方がいい?
「大丈夫だよ、真美ちゃん。自分で決めた道でしょ?あきらめちゃダメ」
隅木田くんがにっこり笑う。
知ってるもんね、わたしが青山野学園に推薦されたこと。
矢本くんは、遠く向こうを見るようにして、それからわたしたちを見た。
「留学するんだー、俺」
…えっ?
ウソでしょ…?
矢本くん留学しちゃうの?
じゃあ、ますます会えないじゃん!
「俺、いろいろやりたいことあって。だから…ごめん…」
謝ることじゃないって分かってる。
だけど、矢本くんと会えないなんて…。
わがままだって分かってる。
なのにどうして…?
わたしから彦宮学園から旅立って青山野学園に行くのに。
旅立って行く人は引っ掛かる。
6.今だけ?新メンバー
話を切り替えてメニューを決める。
バレンタインだし、チョコレートを使ったスイーツがいいよね。
毎年、ママとクッキー焼いてたけど。
「クックパッド開いてみたけど、マフィンや生チョコが目立ってるね」
隅木田くんのスマホを見せてもらう。
クックパッドに、いっぱいのスイーツが浮かび上がった。
すごく可愛く彩られたスイーツ。
これを作るんだね!
「簡単そうなのにする?進学あるし」
隅木田くんがクックパッドで検索している中、わたしはノートに記録した。
マフィンか、生チョコか…。
すると、隅木田くんがスマホを机の上に置いた。
「これ、いいと思うんだけど」
スマホに浮かび上がっているのは、キラッキラなマフィン。
レシピも簡単だし、もらったらめちゃめちゃ嬉しい!
「これでいいと思いますよ!」
サッっとレシピをノートに書き込む。
すると、ひとりの女の子がわたしたちを訪ねてきた。
「もしかして明スイ?あたしも入れてほしいんだけど!」
新メンバー!?
隅木田くんを見ると、ちょっと困ったような顔をしている。
そうだよねえ。
どうして、今の時期に…。
「あたしは高等部1年の恋川美沙子。スイーツ食べるの好きなの!」
わたし、名前聞いたことある!
文化祭の時にスイーツ祭りのイベントで、どれだけ多くのスイーツを食べれるかってやつで優勝してた!
恋川先輩はニシシと笑う。
「お願いっ!何でもやるから!」
恋川先輩は頭を下げる。
隅木田くんは、ますます困った顔をしてうつ向いた。
坂宮と矢本くんは上の空。
ちょっと関わらないようにしてるみたい。
「バレンタインでしょ?とりあえず、今回だけでも入れて!」
恋川先輩の圧力に押され、隅木田くんはオーケーした。
4人用の席だったので、隅木田くんが立ってくれた。
「マフィン作るつもり?ふ〜ん。じゃあ明日作ろっか!でも、作ったらどうするつもり?配るの?」
恋川先輩早いっ!
わたしは、急いでノートに書き留めた。
7.友チョコ
へとへとになりながら教室に帰る。
坂宮もため息をついていた。
あのあと、恋川先輩が進行したんだけど、坂宮を気に入ったんだ。
ずっと坂宮と話してた。
「真美はいいのか?恋川先輩が俺とくっつくの」
「別に全然いいけど」
キョトンとしながら言うと、坂宮は頭を抱えて詰めよってきた。
「何度も言ってるだろ?真美が好きって。空気読めよな」
坂宮の方が空気読めないじゃんっ!
ふたりで笑い合いながら各教室に別れた。
矢本くんのこと、陽茉理ちゃんに聞いてみようか。
だけど、めんどくさいよね、聞いてくる子って。
「真美ちゃん!バレンタインさぁ、友チョコ渡すからねっ!」
「わたしもわたしもっ!」
「わたしもお母様と作るから」
やっぱり、明スイで作るスイーツは登校してきた人たちに配るのがいいと思う。
わたしが個人的に作るのは、友チョコや義理チョコ、家族チョコにすればいいもんねっ!
「ありがとう!わたしも絶対作る!」
穂乃香ちゃんがニヤッっと笑う。
そして、わたしの肩をツンツンとつっついてきた。
「明スイメンバーだし、めっちゃ期待してるから!」
「真美ちゃん普段から作ってるもん、絶対美味しいよね!」
そんなことな…あるよね〜。
明スイみんなで作ってるスイーツだもんね。
趣味でお菓子作りはあんまりしない。
ママに送った時だけ。
(読んでない人は創作板へGO!)
「わたしは生チョコ作るから被らないようにしてよーっ!」
優佳ちゃんが人差し指をつき出して忠告してくる。
マフィンを明スイで作るでしょ。
だったら、カップケーキでも試してみようかな〜。
そして、天井を仰ぎながらひとりクスッっと笑ったのだった。
読者の皆様へ
突然なことですみません。
かなり前に発表したことですが、葉っぱ卒業を決めました。
長年付き合ってきて、デビュー作の明スイも今巻で完結です。
完結したら、皆様の明スイのオリジナル小説を書いてください。
よろしくお願いします。
では、引き続きどうぞ。
8.印刷出来ない!?
今日は休日だから、美華ちゃん家でお菓子作りの練習!
穂乃香ちゃんが作りたい生チョコをみんなで研究しながら作るんだ。
「美華ちゃーん、そろそろ印刷出来た〜?」
印刷室に顔を覗かせると、美華ちゃんが目を険しくして立っていた。
美華ちゃんの隣に立つと、印刷台に書かれている複雑な文字に混乱する。
これじゃ、印刷出来ないじゃ〜ん!
「穂乃香ちゃん、優佳ちゃん、ちょっと来て〜」
ふたりを呼ぶと、エプロンをなびかせていつもと違う雰囲気でやって来た。
やはり、ふたりとも眉間にしわを寄せてうーんと唸る。
「こんなの分かんないよぅ。美華ちゃんのお母さんとか詳しくない?」
「無理。お母様は仕事中だから。お手伝いでも呼ぶことにする」
美華ちゃんは当たり前のことをするように印刷室を出てお手伝いさんを呼び込んだ。
その声に呼ばれたお手伝いさんは、メイド服みたいなカワイイワンピース。
なんか、憧れる・・・。
「どうなさいましたか?美華様」
「印刷台が効かないのよ。とりあえず、これ印刷してきて。それから、業者の人に見てもらって。ダメだったら新しい印刷台買えばいいし・・・」
なんか聞いてると、美華ちゃんすごいことめちゃめちゃ言ってない!?
美華ちゃんの指示で業者呼べるの!?
すると、これまたお手伝いさんは当たり前なことのように頭を下げる。
クックパッドが開かれている美華ちゃんのスマホを持って印刷室を後にした。
「ごめん、みんな。ちゃんと使えるかチェックさせておくべきだったけど」
「そんなの全然いいよ〜。気にしなくていいから〜」
ホント、美華ちゃん家のいろいろも見れちゃったし。
そう考えると、何だかくすぐったい気持ちになった。
9.わたしはリーダー
お手伝いさんが息をきらして帰ってきた時にはもう3時。
他のお手伝いさんが出してくれたお菓子でおやつタイムだった。
「失礼します。印刷が出来ました」
きれいに印刷された紙を受け取り、チェックをしてわたしに差し出した美華ちゃん。
ハッっとして美華ちゃんを見る。
「ほ、ほら。ウチら素人だから真美ちゃんが見ないと分かんないじゃん。玄人でしょ?」
穂乃香ちゃんと優佳ちゃんも、「そうだよ、そうだよ」と言ってくれる。
わたしのこと、ちゃんとそういう風に見てくれるんだ。
「オーケー!穂乃香ちゃん、明スイみたいにアレンジしちゃっていい?」
「もっちろん!お願いっ!」
良かった・・・。
穂乃香ちゃん笑ってる。
ホッっとしつつ、どこをどのようにアレンジしようか迷う。
いつも隅木田くんがアレンジを決めたり指揮してくれてるから。
今回はわたしがリーダーらしくっ!
「真美ちゃん・・・、むずい・・・?」
穂乃香ちゃんがおそるおそるつぶやいたように聞こえる。
わたしは、ゆっくり穂乃香ちゃんを振り返ってにっこり笑った。
「だいじょーぶ!わたしに任せてっ!クックパッドよりいいスイーツになることまちがいなしなんだからっ!」
穂乃香ちゃんは安心したようににっこり笑い返してくれた。
さあ・・・。
「わたしに任せて」なんて言ったんだから、責任が重くなってきた・・・。
正直全然考えてなかったから・・・。
「お〜!遅くなってごめん。完成したから見てくれない?」
穂乃香ちゃんを中心に、みんなが書き直された紙を覗き込む。
そこまで大したアレンジじゃないかもだけど、見栄えを意識したんだ!
「カワイイスイーツ!早速作ろ!」
穂乃香ちゃんは目を輝かせる。
喜んでくれたんならオーケーだね。
わたし、グッジョブ!
10.
カラカラカラカラ
わたしと穂乃香ちゃんだけの作業の音がキッチンに鳴り響く。
優佳ちゃんと美華ちゃんは飽きてソファーに座り込んでしまっている。
ガチャンと音がしたかと思うと、穂乃香ちゃんが箸を置いてふたりのところへ歩み寄った。
「何でくれないわけ?意味分かんないんだけど」
突然のことだった。
誰も穂乃香ちゃんが言うなんて思ってなかった。
みんな呆然としている。
わたしもすごくビックリした。
「穂乃香ちゃん・・・」
10.仲間割れ
すみません。
10.の後を書きました。
hello!いきなりコメントごめんね。
近日復帰!のお知らせなんだけど……。
梨子は卒業するんだね……。
梨子に言いたいこと(お願い)がいくつかあるから、またいつか聴いてくれる?
そして真美ちゃんたちも受験!頑張ってね‼
私は無事合格しました!梨子の言葉に凄く救われたよ。
応援してくれてありがとう!
それじゃあ!来れたらまた来るね!