ここは明確スイーツ研究部!

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1:モンブラン:2017/01/27(金) 22:06

文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。

69:モンブラン:2017/03/08(水) 21:06

みか、ありがとう!
アドバイスを生かして書いてみます!
本当にありがとう!

70:モンブラン:2017/03/08(水) 21:18

9.キツい言葉

「真美。坂宮くんのところ行こう」

ああ、学食で並んでたんだ。
梨歩佳さんに心の中で謝りつつ、学食へ向かう足を早くする。

「ねえ。真美。ちょっと」

「由里歌ちゃん?ど、どうしたの?」

急に腕を引っ張られて、2-3のクラスに入っていた。

「ごめんなさい。あの、陽茉理ちゃんが、ふみ会長に言えば味方になってくれるって言うから」

「大丈夫だよ。初めから、悪いのはわたしなんだから」

由里歌ちゃんは、頭を下げたまま動かない。
二年生の先輩も、由里歌ちゃんを遠目に見て避けている。

「でも、陽茉理ちゃんといるべきだから、わたしと一緒にいちゃダメだよ。お願い。陽茉理ちゃんといて」

「でも、わたしは、4人で一緒に」

「お願い!わたしが悪いのは分かっているの!でも、今はふさわしくない!陽茉理ちゃんといることがふさわしいことだよ!」

あ、あ、由里歌、ちゃん…。
わたし、由里歌ちゃんを…。

「いいんだよ。真美。真美が言ったこと間違ってないから。行こ」

由里歌ちゃんごめんなさい。
でも、本当にわたしは一緒にいられないから。

71:モンブラン:2017/03/10(金) 20:44

10.あのふたり
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

休憩所のドアを開けると、坂宮、矢本くん、隅木田くんがいた。
今日は、明スイで集合がかかったの。
でも、矢本くんと関わらない方がいいっていうか…。
明スイ抜けた方がいいのかな…。

「じゃあ、始めよう。最近、依頼をほったらかしにしているから、依頼に対応しよう」

「聡日の依頼はやめろよ!」

あ、聡日さん。
美華ちゃんといて、どうなったんだろう。

「ねえ。尾崎姉妹あったよね?ふたりとも同時に対応は無理かな?」

矢本くんが提案する。
隅木田くんは、スマホを取り出して、メモのアプリに書き込んでいる。
尾崎姉妹、ねえ。

「これが尾崎姉妹の依頼」

えっと、桃乃さんと桃音さん。
ふたりの性格、すごく違いそうだな。
わたしに合えばいいんだけど。

「ねえ。あの彦宮学園のお嬢様が来るってウワサよ」

「ええ。そのお母様とお父様離婚されたけど、お母様に着いていった美華様も、お父様に着いていった聡日様も来るらしいわ」

美華ちゃんと聡日さん、姉妹!?
なのに、別れちゃったんだ。
でも、明確ゼミで会うことになる。
このふたり、会うほど仲良しなんだ。

「明スイで、尾崎姉妹をやる話に戻っていいよね?」

「あ、いいです」

「作る物とかじゃなくて、場所とか考えよう。どこがいいかな?」

それなりに広いところがいいよね…。
わたしの家は狭いし、人とかたくさん入れないし、うるさいし!
いいところなんてないじゃん!

「俺んちのパーティー会場使う?」

矢本くんの家のパーティー会場!?

72:モンブラン:2017/03/10(金) 21:04

11.初電話
「さあ、美華様。聡日様」

あ、この人、この前の爺だ!
ブスって言った人だ!
何が美華様よ!
何が聡日様よぉ!!!

「へ〜、清潔なのね。あら?真美ちゃん?ここに通ってたの?成績伸びていないのに」

「そんなことないよ!」

美華ちゃん、みんなの前で言わないでほしかったよ!
成績伸びてないとか!

「爺。ここはなしよ。真美ちゃん、伸びてないもの。伸びなきゃ意味がないわ。聡日もやめたら?」

「いや。ここにする。陽都がいる」

聡日さんの目当てそこ!?
でも、坂宮がベッタリしてこないと思えば、楽になれるかも?

「明スイに戻るよ。真美ちゃん」

「すみません!」

「じゃあ、尾崎姉妹でいいね?」

「はい!」

みんな尾崎桃音さん、桃乃さんの依頼を対応することに賛成して、みんなスマホを取り出した。
メモアプリを開いて書き込んでいる。
わたし、スマホ持ってないや。
恥ずかしい気持ちで、メモ帳にメモしていく準備をした。

「えっと、桃音さんが、夏那さんの誕生日を祝いたい。桃音さんの依頼は、ケーキでいいかな?桃乃さんは、亡くなったおばあさんの誕生日だね。これは、ケーキでいいんだよね」

「あの。携帯電話の番号書いてあるじゃん。だから、それ見て電話かけてみたらどう?」

尾崎姉妹に電話するってことだね。
誕生日は、ケーキでいいか。
おばあさんの誕生日のは、何がいいのか。
おばあさんの誕生日はいつなのか。
とかだよね?

「真美ちゃん、女の子と話すんだから真美ちゃんが話したら?」

「わたしですか!?」

「うん。やってごらん」

ん、うん。
わたし、同級生に電話したの、初めてかもしれない。
何て話せばいいのか。

「頑張って。はい」

隅木田くんのスマホを借りて、尾崎姉妹の桃音さんに電話をかける。

 プルルルルプルルルル ピッ

「もしもし。尾崎桃音です。誰?」

73:モンブラン:2017/03/10(金) 21:09

12.大きなお菓子の家
「明スイメンバーの多田本真美です。依頼ありがとうございます」

「明スイ?依頼?わぁ!」

あぁ〜、緊張して声がふるえるかも。
っていうか、もうふるえてる?

「で?で?わたしの依頼通ったの?」

「は、はい。夏那さんの誕生日をお祝いしたいということで」

「やった〜!明確スイーツ研究部って最高だよぉ!」

「ありがとうございます。誕生日ってケーキでいいんですか?」

「悪いけど、お菓子の家ってできる?わたしたちが、お菓子の家に入るの」

えええええっ!

74:モンブラン:2017/03/11(土) 15:06

13.針本早弥花さん
桃音さん、難しい依頼を…
ピッ
電話が切れて、緊張の糸が切れた。

「真美ちゃん、どうだった?」

「桃音さん。お菓子の家を作ってほしいそうです」

みんな、じっと考える。
この…難しい課題をどうしたらいいか。
時間がだんだん過ぎていく。
休憩所の中には、女の子たちの声が聞こえる。
いい案が浮かばない。
お菓子の家なんて作れない。って。

「君たち、明確スイーツ研究部?」

「はい。そうですが」

「私、早弥花って言うの。あなたたちに依頼したわ」

「はい。ありがとうございます。針本早弥花さんですね」

針本早弥花さん。
ああ、マカロンをたくさん食べたいって依頼の人だ❗
たくさんってどれくらい?って覚えてたんだ。
で、針本早弥花さんが何の用?

75:モンブラン:2017/03/11(土) 20:53

14.ジャンルわけ
「針本早弥花さん。何の用ですか?」

隅木田くんが聞いて、早弥花さんはちょっとうつむく。
耳まで真っ赤。
隅木田くんファンかな?

「わたし、マカロンお願いしましたよね?どうなりましたか?」

「すみません。日付が限られている依頼がありまして。その後でもいいですか?」

「はい!」

早弥花さんは、返事して軽い足どりで帰っていった。
早弥花さんなんだったんだろ。
さあ、戻んなきゃ。

「お菓子の家なら、今まできた依頼を全部引き受けたらどう?聡日以外」

坂宮、ひどい!
聡日さんかわいそうだよ!

「聡日さんは、別でやる?」

「それがいいと思います!聡日さんだけは別で!」

坂宮は、そういうことじゃないと言いたそうだけど。
聡日さんも幸せになるし、いいもんね。
「じゃあ、ひとつひとつ書いてみようか。それぞれ願いが違うけどいい?」

確かに違う。
誕生日のケーキ。
おばあちゃんが亡くなって。
自分が楽しみたくて。
これをひとつにまとめるのは無理がある。

「ジャンルわけして、ジャンルごとに会を開いたらどうですか?」

わたしが言うと、隅木田くんは賛成してくれた。
矢本くんもうなずく。
多数決的にも、ジャンルわけすることに決まった。

「ケーキ。誕生日。楽しむ。お別れ。誕生日。ケーキ。ケーキ」

うぅ、ジャンルわけ、キツい。
誕生日が多すぎる。
はぁ。頑張るぞっ!

76:モンブラン:2017/03/12(日) 20:07

15.メンバーを大切にする心
「ねえ。多田本」

それは、ハニーちゃんとか、ハミーちゃんって呼んでくる矢本くんが、多田本って呼び方をしてきた。
矢本くんに近づいちゃダメ。
陽茉理ちゃんに言われたんだもの。

「何?」

「ど、どうしてそんなに冷たいの?」

「冷たくないですよ」

冷たくしてたけど、ダメ!
ダメだよ、真美。
矢本くんとなるべく話さない!
そう言い聞かせて、矢本くんの逆の方を見た。
まるで、わたしの大切な物を失っていくみたい。
なんというか、自分で捨てているような感じ。
心がムズムズする。

「真美ちゃん。ちょっと」

隅木田くんに言われて、休憩室を出る。何を言われるんだろう。
隅木田くん鋭いから、矢本くんのこと避けてることバレてる?
ちょっと行ったところの廊下で、隅木田くんは止まった。

「真美ちゃん、明スイがキライ?」

え?
わたしが明スイをキライがどうか。
これは、みんな知っているはず。
もちろん、大好き。
なのに、大好きに見えないかな。

「明スイのこと、大切に思ってくれてるかな?」

「もちろんです!大好きです!」

「ははは。嬉しいよ」

なんだろう。
隅木田くんの心から笑っていない笑い方。
全然嬉しそうじゃないし。
なんか、隅木田くん変。

「どうしてですか?」

わたしが聞くと、隅木田くんは天井を見上げた。
わたしも、天井を見てみる。
何もない。
何も起こらない。

「真美ちゃん、メンバーを大切にする心がない気がする」

「そんなことありません!」

メンバーを大切にする心?
絶対あるよ!
晴奈ちゃんだって、ずっと大切な友達と思ってるし。
みんな友達としてっ!
…陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんはどうだろう。
仲間と言う意識、ないもの。
もう、敵のよう。
これが大切にしていないのかもしれない。
陽茉理ちゃんに言われたから矢本くんから避けている。
矢本くんに申し訳ない。
わたし、ダメだ!
自分らしく生きなきゃ!

77:モンブラン:2017/03/12(日) 20:34

16.昔のサイフ
「確かに、メンバーを大切にする心、今のわたしにはありません。今から、その心を取り入れます」

隅木田くんはにっこり笑って、休憩室に戻っていった。
後に残されたわたしは、ポケットがチャリチャリいうのに気付いた。
さっきから、うるさい。
いい話だったのに。
ポケットを手で探ってみると、サイフが入っていた。
どうしてだろう。
あ、もしかして!

「まみちゃん。美味しいね」

「うん。もう最高に美味しい!」

ここはクレープ屋さん。
あこちゃんとふたりで来たの。
このチョコレートバナナクレープ、美味しい!

「おサイフ、ポケットに入れておけばいいよ。邪魔でしょ」

あこちゃんに言われて入れたサイフ。
確かに、クレープ食べるのに邪魔だしポケットの中に…。

あのときから入れっぱなし、かあ。
サイフを開けると、そのときのレシートとおつり、プリクラの写真が入っていた。
ああ、なつかしい。
でも、もう戻りたくない。
後に悔いが残るだけだから。
あれから、このズボン一回もはかなかったんだもんね。
洗濯、サイフも一気に洗ったのかな?
サイフ、すごくいい匂いだし。

「おい、真美!早く戻れよ」

「はい。今行く」

今楽しいことは明スイ。
あこちゃんたちのことは、早く忘れちゃおう。
いい例がないんだから。

78:モンブラン:2017/03/13(月) 19:21

17.預かる
「真美ちゃん。これ、もう終わったからさ」

隅木田くんが依頼書をわたしの前に出してくる。
綺麗な字で、誕生日、お祝い…。
などと、ふせんで表してある。

「これ、真美ちゃん持っててくれる?僕、いろいろ持ってるの大変で」

隅木田くんは、さっきのことがなかったみたいに接してくる。
何でだろう。
わたし、接し方迷ってたのに。
まあ、楽だからいいけど。

「わ、分かりました。持っておきますね。えっと、いつまで持ってたらいいですか?」

「僕が言うまでいい?」

「はい」


「ただいま」

家に帰ると、ママとパパの声が大音量で聞こえた。
も、もう。
うるさいなあ。
そう思いながら、ふと目にとまった人形を手に取ってみる。
古びていて、茶色のシミがたくさん付いていた。
わたし、使い方よくなかったかな?
ちょっと悲しくなって、人形を抱きしめる。
ひとりっこのわたしが使っただけだもの、わたしの使い方が荒いとしか思えない。
 プルルルルプルルルル

「真美ぃ〜、電話出てぇ」

ママ、めっちゃ酔っぱらってる気がするんですけど!

「もしもし多田本です」

「もしもし。僕は隅木田優斗です。多田本真美さんいますか?」

あ、隅木田くん。
…って、わたし、いつみんなに電話番号教えたっけ?

「真美ですが」

「真美ちゃんだったんだ。あのさ。僕たち、みんなで話し合ったんだけど」

79:モンブラン:2017/03/17(金) 19:44

18.お泊まり!?
「何を話し合ったんですか?」

「みんなの会は次回。尾崎桃乃さんの依頼を先にしよう。天国のおばあさんの誕生日、明後日だから」

明後日!?
何をすればいいのっ?
尾崎桃乃さんーーー天国のおばあさんの誕生日にケーキを渡したいだった。
誕生日が、、、明後日。

「今から、俺たちは試しで作ってみるんだ。矢本の家で。真美ちゃん来れそうかな?」

時計を見上げると、短い針が8に近づいていた。
何て言えば通じるんだろう。
勉強?お泊まり?明スイのこと言う?

「ちょっとお母さんに代わってくれる?いるかな?」

「はい、代わります」

ママに電話を代わって、また時計を見上げてみる。
短い針が8。
長い針が12になった。
ちょっきり、20時。

「本当にありがとうね。隅木田くん。真美、きっと成績伸びるわ。じゃあ、お泊まりお願いしますね」

お、お泊まりっ!?
矢本くんの家で寝るの!?
ママが電話を切って、こちらを振り返った。

「真美。お泊まりの用意しなさい」

えええええ!
本当にお泊まりなの!?
でも、明スイの活動に参加できてよかった。
ありがと、隅木田くん。
お泊まりの用意をしていると、部屋を誰かがノックしてきた。
扉を開けると、そこには陽茉理ちゃんがいた。

80:モンブラン:2017/03/17(金) 19:56

19.仲直り
「真美ちゃん。ごめんなさい」

手を止めて、陽茉理ちゃんと向き合ってふたりで話す。
その時思ったこと。
ああ、どうして今日はこんなに刺激があるの?

「夜遅くにごめんなさい。私、由里歌といて学んだことあるわ。でも、同じくらい、真美ちゃんと晴奈ちゃんといて学んだことあるの」

陽茉理ちゃんも、由里歌ちゃんと同じくらい学んだことあるんだ。
わたしと一緒。
まるで、今まで学んだことが、ケムリみたいにどこかに消えるの。
ポッカリなくなっていて、周りには何も残っていない。

「ヒドイわたしだけど、やり直すことはできるかなっ?」

「わたしもっ!わたしもやり直したいよ。陽茉理ちゃん」

なぜか、自然に涙が出てくる。
きっと、仲直りできないって思っていたわたし。
弱いよね、わたし。
そう思っているから、前に進めないんだもの。
陽茉理ちゃんと仲直りするため、動いたことはない。
わたしこそ、本当にヒドイ人だね。
でも、そんなわたしを受け入れてくれた陽茉理ちゃん。

「さあ。陽茉理ちゃん、帰ろう。わたしも、今から陽茉理ちゃんの家に行くから」

「拓斗兄たちと明スイ?」

「うん!」

陽茉理ちゃんと笑いあって、泣きあっている今。
なんか、とっても嬉しいよ!

81:モンブラン:2017/03/17(金) 20:12

20.試作品作り
わたし、坂宮、矢本くん、隅木田くんに、梨歩佳さんと梨萌佳さん、いきなり参加の陽茉理ちゃんの7人で作ることにした。
お、お菓子の家。
尾崎さん、すごい依頼だなぁ。
これも、ボランティアみたいな感じだから、報酬もなしなんだよね。
あ!報酬ならある。
仲良くなれるし、人の本当の笑顔が見られる!

「床のクッキー担当は、梨萌佳ひとりでできるな?壁一面は、多田本と陽茉理のふたり。陽茉理は普段作ってるだろ。がんばれ!家の中の細かなお菓子を、俺たち3人。梨歩佳はサポート」

矢本くんがうまく振り分けて、お菓子の家の試し作りが始まった。
これ、あくまでも試しだからなぁ。
試作品ってことだ。

「マミ、わたしたちの友情みたいに、うまく壁一面を作ろうね」

「ヒマ、頑張ろうね!」

わたしたち、本当にいいグループだったのかもしれない。
わたしの勝手な行動が、大きな存在を呼んだんだから。

「真美ちゃん、陽茉理、できそう?」

「梨歩佳姉は向こうで待ってて。わたしたちだけでやりたいの」

陽茉理ちゃん、必死だ。
梨歩佳さんは、呆れて違う方のサポートに行った。


「壁一面、完成〜!焼いてる間に作ってたもう一枚の壁も、焼くだけだ!」

「ヒマ、やったね!壁一面完成しちゃったよ!」

き、き、奇跡かもぉ〜〜〜!!!
隅木田くんも、振り返って褒めてくれた。
なかなかの出来映えだよね、これ。

「多田本。陽茉理。ボーっとするな!次は細かなお菓子だ!坂宮と隅木田、壁作りに移動!」

矢本くん、手際いい!
この調子なら、本番もうまくいくかも?

82:モンブラン:2017/03/17(金) 20:19

21.報酬
「全体完成したね〜!すごい!」

梨萌佳さんが、スマホで写真をたくさん撮っている。
小学生と中学生だけだから、かなりすごいと思う、これ!

「おい、これを使ってもいいんじゃないか?本番で」

矢本くんがふとした顔で言う。
確かに、こんなにうまくできたのに、二回目を作る必要ないじゃん!

「拓斗兄。これをホールに運びましょうよ」

陽茉理ちゃんが言って、みんなでお菓子の家をホールに運んだ。
一番近い、矢本くんのホールに。

「皆さん、本当にありがとうございました。おばあちゃんの額縁です。ここに置いてもいいですか?」

矢本くんがうなずいて、お菓子の家の前に、桃乃さんのおばあさんの額縁を置く。
溶けないよう、うまくしまった。
このお菓子の家はすごいよ!

「明スイ、本当にありがとう!おばあちゃんも喜んでいるはずよ!」

きっと今、みんな報酬をもらったと思うな。
桃乃さんの、本当の笑顔。


               続く

83:モンブラン:2017/03/17(金) 20:29

あとがき
            モンブラン

こんにちは!
ここは明確スイーツ研究部!略して明スイ作者のモンブランです!
ついに3巻に来ましたね!
ここまで、無事書けていること、とても嬉しく思います。
ありがとうございました!

さてさて。
今回の明スイいかがでしたか?
陽茉理ちゃんたちと喧嘩してしまいましたね。
でも、新の友達みたいに仲直りできましたね。
みんなは、こんな経験ないですか?
わたしは、微妙に似ています。
こんな経験味わったな〜。
思い出しながら書きました!

それから、みんなに謝りたいことが!
誤字等ございましたらごめんなさい!
そして、>>73の、桃乃さんは、夏那さんではありません!
そして、陽茉理ちゃんが、自分のことをわたしと言っていますが、漢字で私となっているところがありました!
本当にごめんなさい!
以後もっと気を付けて書きます!

次回はですね。
また4人で仲良くしますよ。
明スイは、みんなの会が開かれますので、楽しみにしていてください!
もし、感想等書いてくださったら嬉しいです。
最後になりましたが、明スイとわたしのこと、応援よろしくお願いします。


追伸
昨日、小学校を卒業しました。
無事に卒業できて幸いです。

84:モンブラン:2017/03/17(金) 21:28

短編小説板にたてました。

『莉愛の短編集』

ここではモンブランですが、莉愛という名前でやりたいと思います。
明スイの短編も書く予定です。
ぜひ読んでください。

85:モンブラン:2017/03/18(土) 19:58

『ここは明確スイーツ研究部!4』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。
明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う少年6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

86:モンブラン:2017/03/18(土) 20:15

1.学食戦争
 グ〜
お、お腹空いたよ〜!
っていうか、めっちゃ暑いし!
7月まっただ中。
本ッ当に暑いんだよぉ!

わたしは多田本真美。
暑いの大嫌いですぅ!!!

「学食学食!」

ヒマが言いながら学食に走る。
あぁ、ヒマお得意の食レポかぁ。
将来の夢がアナウンサーのヒマは、たまに食レポを披露してくれる。
このテンションは、きっと食レポ披露間違いなしだ。

「ねえねえ。わたしたちが遊び始めた日さぁ、カレー食べたじゃん?今日、シチュー食べない?」

シチューっ!
カレーの姉妹、シチュー。
汗だくだくになるけど、美味しいからいいもんねっ!

「わたし、ヒマに賛成っ!」

わたしがヒマに賛成すると、ハルもユリも賛成する。
やった!
またヒマの食レポが見れるし、みんな一緒だし!
この前わたしたちはケンカして、絶交までしたほどだった。
なのに、こうしてまた仲良くできる。
あっさり仲直りしたんだよね。

「シチュー4つね。お金ちょうだい。600円。席取りしといて。」

ハルがみんなのお金を回収して、ひとりで並ぶ。
わたし、ヒマ、ユリは、席取りをするんだ。
自分で持ってきたお弁当を食べる子、わたしたちみたいに学食で買う子。
たくさんの子が学食を使う。
とても広いけど、初等部、中等部、高等部の全員で使う場所だから。

「マミ、ユリ、ボーっとしないの!」

はっ!
席取られちゃうじゃん!

「マミ、ユリ。目指すはあそこ。走るよ。…よ〜いっどんっ!」

いつも座っていた24の机。
急げ、急げ、急げ〜!!!

「取った〜!」

「みんな、取りましたよ。」

あれ?
24の机、ヒマともうひとり、誰かも取ってるじゃん!
ここの席以外空いてないよ!
ここが無理なら、屋上の学食スペースに移動するしかないっ!

「あの、どちらが先でしょうか?」

この子、優しそうでも、譲れなさそうな瞳。
こんなに暑いのに屋上!?
絶対イヤだよ〜!!!

87:モンブラン:2017/03/18(土) 20:30

2.屋上の日向でランチ
あ、でも、屋上も空いてなかったら、校庭に机出すんだよね。
教室とかじゃ食べちゃダメだし。
校庭に机出すの、いやだな〜。
だって、重たいし、めんどくさいし。
あと、外って暑いもん!!!
外に置く机は、余分に100個くらいあるから、絶対あるんだ。

「どうする?みんな」

ああ、あの子、本当に譲らない気だ。
学食はクーラー効いてるし。
とても気持ちがいいし。

「あの、あなたたち何年ですか?」

「初等部6年よ。あなたたちは?」

「初等部5年です」

わたしたちの勝ちだ!
あの子たちは、帰ろうとしている。
偉いよ、君たち。
ちゃんとあきらめようとするから。

「あの。君たち、ここ使いなよ。わたしたち屋上行くから」

ヒマァァァ!!!
どうして暑いところ行くの!?
女の子たちは、みんなで見つめあって一言。

「ありがとうございます!」

え、いいんですか?とかないの!?
この子たち、礼儀知らないのかな?
かわいそうかも。
お母さん、どんな教育してるんだろ。
まあ、いいか。

カンカン照り。
暑すぎるよ。
これでシチューなんて無理かも。

「良かったね。屋上の席空いてて」

「でも、日向だよ。暑いじゃん」

「机出すよりいいでしょ」

ユリ、いい子だなあ。
わたし、ちっともそうは思わない。
思わないって言うより、思えない。
絶対にいやなんだもん!

「それにしても、美味しいですよね。この暑い日にシチュー。まるで、シチューが太陽を呼んでいるようです」

あ、始まった。
ヒマの食レポ。
さあ、今日の食レポはどんなのかな?
楽しみっ!

88:モンブラン:2017/03/19(日) 18:59

3.地獄の算数
「ただいま〜」

「お帰り、真美」

 プルルルルプルルルル

「真美、出てくれる?」

「はいは〜い。もしもし、多田本です」
「もしもし隅木田ですけど、真美ちゃんいますか?」

「真美です。隅木田くん、どうしたんですか?」

ちょっと沈黙があって、隅木田くんは話し始めた。
今日、談話室で集合とのこと。
荷物はノートということ。
今日は家に帰るのが遅くなるとのこと。
「ママに、どうやって言えばいいと思いますか?遅れるって」

隅木田くんは、クスッっと笑った。
え、何が笑えるの?

「真美ちゃん、お母さんに代わって」

渋々ママに電話を代わって、ちょっと時間が経つと、ママはすぐに電話を切った。
ちょっと!
わたし、電話中だったでしょ!
それに応えるように、ママはニコッっと笑って言った。

「将来、隅木田くんと結婚しなさい。あの子すごいわ。真美が算数苦手だから、仲良くしてくれているお礼で算数教えてくれるって」

隅木田くん、そんなこと言ったの?
遅くてもいいことはいいけど…。
結婚とか、本当にないからね!
まあ、クラスの野郎と比べて魅力的だし素敵だけど。
結婚とか早すぎだし!

はぁ〜、算数長かった。
永遠に続くみたいで怖かったな〜。

「これで終わります!」

算数の先生ーーー高橋先生が立つ。
みんな立ち上がって、礼をする。
よし、これで終わりだ。
あとは、明スイの集まりだけだね。
ワクワクするし、楽しい。
算数のこの時間が挽回できるんだよね。

89:モンブラン:2017/03/19(日) 19:18

4.書記の仕事
「失礼します。多田本です」

談話室は静かで、落ち着く。
たまに声がうるさい子も来るけど、だいたいがおしとやかだ。

「真美ちゃん、こっち」

隅木田くんが手を挙げたいつもの席には、もうみんなが揃っていた。
わたし、ベリだ…。

「さあ。今回はみんなでパーティだ!頑張ってやっていこう」

パーティパーティ!
みんなの依頼を一気に受けとる。
ケーキや誕生日、パーティなどなど。
たくさんのジャンル分けしたもんね!

「真美ちゃん、紙お願い」

紙は、依頼書のこと。
明スイの集合がかかったら、絶対に持っていくんだ。

「ありがとう。ケーキ担当の、坂宮と真美ちゃん。誕生日担当の、矢本。その他担当の僕と、補助の梨歩佳さんと梨萌佳さん」

隅木田くん、振り分けもしたんだ。
頭の回転速いな〜
っていうか、梨歩佳さんと梨萌佳さんやってくれるんだ。
どうせなら、明スイ入ればいいのに。

「じゃあ、真美ちゃん、ノートに書いてくれる?」

よし、わたしの出番だ!
で、でも、どうしてわたしがノートに書いていくの?
別にいいんだけどね。

「ケーキ担当からその他担当まで書いてくれる?」

えっと、ケーキが坂宮とわたし。
誕生日が矢本くん。
その他が隅木田くん。
カッコの中に、梨歩佳さんと梨萌佳さんでいいのかなっ?

「うん、さすが真美ちゃん。すごく見やすいね」

あぁ、そういうことか。
わたしはこの時、初めて気づいた。
どうしてわたしが書記なのか。
隅木田くんも、明スイのみんなが彦宮学園だから、わたしが拍手に包まれたの知ってるんだ。
隅木田くん、周りをすごく見ているから、頭の回転も速いのかもしれない。
わたしも、もっと周りを見よっと。

「じゃあ、各自その決められた仕事がうまくいくようにね。決めたら、僕か真美ちゃんに連絡ね」

またわたしぃぃ!?

90:モンブラン:2017/03/20(月) 19:26

5.ママが倒れた!?
家に帰ると、ママが苦しそうな顔でフラフラしていた。
何してるんだろ。
酔ったのかな?
ママ、そういうの飲まないのに。
パパは帰ってきてないし、ひとりであんまり飲まないよね。
すると、バタッっと倒れた。
酔いすぎ?
いやいや、全然動かないけど!
さっき苦しそうだったし…。
パパに電話だ!
 プルルルルプルルルル  ピッ

「もしもし」

「パパ?わたし!真美!」

「どうしたんだ、急いで」

パパ、もっと焦ってよ!
わたしだけに焦りを押し付けないで!

「ママがっ!ママが倒れた!」

「すぐ帰る。お母さんに電話して、それから病院に電話しなさい」

お母さんーーーおばあちゃんと病院。
パパが電話を切ってから、すぐ病院に電話した。

「もしもし」

「もしもし多田本と言います。今塾から帰ってきたら、母が倒れました」

「住所をお願いします」

病院の人にもいろいろ行って、すぐ来てもらうようにした。
おばあちゃんに電話しなきゃ!

 プルルルルプルルルルプルルルル

おばあちゃん、なかなかでないっ!
早く出てよお!

「もしもし。どちら様?」

「多田本真美だよ!おばあちゃん!」

「あら、真美ちゃん。どうしたの?」

「ママが倒れたの!わたしの家に来てくれる?パパと病院の人も来てくれるの!お願い」

「今から行くわね」

おばあちゃんが電話を切ると、救急車の音が聞こえてきた。
パパ、おばあちゃん、早くっ!

91:モンブラン:2017/03/20(月) 19:38

6.ママを信じて
赤いランプが消える。
ここは、病院。
静かな感じと、薬品の匂い。
ママ、大丈夫かなっ?

「お父さん。ちょっと」

パパ、行っちゃうの?
どうして?
ママの何かがひどいから?
それとも、死んでしまってないよね?

「真美ちゃん。こっちにおいで」

おばあちゃんが手招きしてくれる。
でも、足も、何も動かない。
口すら。
だから、物を伝えられない。
じっとしていると、おばあちゃんがこっちに来てくれた。
おばあちゃんが、私の肩に触る。
暖かい。
ママのママだから、温もりが似てる。

「真美ちゃん。心配だけど、菜和のこと信じてくれる?」

菜和というのは、ママの名前。
わたしが、ママを信じる。
そう考えると、ママと一対一で話した日が思い浮かぶ。
テストの点が悪くて泣いたとき。
ママは、「真美は伸びる子だから。いつか伸びるわよ。今は、飛ぶための準備中よ。ママを信じて。ママは真美を信じてるわ」って言った。
あのあと、わたしはいい点とれた!
ママを信じたから。
ママもわたしを信じてるし、今回もママを信じよう!
病室から、パパが出てきた。
目頭が熱くなってくる。
パパの顔が、妙だったから。
いつも温厚なパパは、こんな顔しない。
「優樹さん、どうだったんですか?菜和は、大丈夫ですか!?」

パパの名前は優樹。
パパの目からも、涙がこぼれている。
おばあちゃんも、どんどん顔が赤くなって…
涙があふれてきていた。

92:モンブラン:2017/03/20(月) 19:57

7.おばあちゃんがママ!?
「菜和は、妊娠してるらしいんです。ですが、その子が大きくなりすぎていて、苦しくなりやすいって」

に、妊娠してるの!?
わたしに、弟か妹ができるの!?
でも…ママが苦しくなるかわりに、赤ちゃんが産まれるんだ。

「真美。ママは、赤ちゃんが産まれるまで病院にいるんだ。塾は、一旦やめなさい」

明スイの活動も、できないよね。
パパが、家のいろいろをするの?
ものすごく忙しいのに?
わたし、家事ならできる。
でも、明スイはスイーツだし、ご飯の準備は難しいかも。

「優樹さん。空き部屋ありますか?家に。なければ、菜和の部屋空けれますかね?」

おばあちゃん、何を言い出すの?
空き部屋、あったっけ?

「菜和の部屋なら空けれます」

「ありがとう。じゃあ、菜和が退院するまで、わたしがお母さんでもいいですか?真美ちゃんにも、塾へ行かせてあげてください。お願いします」

おばあちゃん、お母さんになるの?
パパもビックリしたみたいで、口は開けているのに何も話していない。

「わたしがお母さんじゃ、足りないと思います。ですが、真美ちゃんにも、優樹さんにも、健康に過ごしてほしいじゃないですか」

おばあちゃん…。
おばあちゃんと結婚したおじいちゃんは、今天国にいるから、おばあちゃんはひとりぐらし。
だから、家を空けることはできる。
でも…

「お母さん、疲れますよ。大丈夫ですよ!僕がやります!」

「いいえっ!わたしがやります!」

ああ、もうどうなってくんだか。

93:モンブラン:2017/03/21(火) 09:24

8.隅木田くんと下校!?
「真美ちゃ〜ん!ご飯よ!」

おばあちゃんの声が、家中にこだまする。
わたしの家ーーー多田本家に、おばあちゃんがママとして来た。
急いで制服に着替える。
彦宮学園は制服登校だから、毎日制服を着る。
公立は、ジャージで登校するって聞いたけど。
制服の方が涼しいよねっ!

「おはよう、おばあちゃん。パパはいないの?」

「優樹さん?今日は早いらしいから、ちょっと早めに行ったわ。さあ、朝ごはんよ」

おばあちゃんのご飯、久しぶり。
トーストに目玉焼き、サラダとみかんが置いてあった。
ん〜、いい香り。

「いただきます」

勢いよくトーストを食べる。
なんか、いつものトーストより美味しい気がする。
やっぱり、おばあちゃんは昔、喫茶店でモーニングやってたからかなあ。
焼き方にも、工夫があるのかな?

「真美ちゃん、美味しい?」

「うん。とっても!これなら、元気よく登校できそうだよ!ありがとう」

おばあちゃんはにっこりして、わたしの前で一緒に朝ごはんを食べてくれた。
もうそろそろ行く時間かな。

「おばあちゃん、行ってきます」

「元気に登校するのよ。行ってらっしゃいな」

ドアを開けると、家の前でブツブツ何かを言いながらウロウロしている人がいた。
誰よこの人。
不気味でならないよ。
おばあちゃんよりわたしの方が強いはずだし、追い払おう!

「あの、すみません!ここの家に何か御用ですか?ここの家の娘、多田本真美です!」

「ちょっと、真美ちゃん。どうしたの?さあ、行こう」

え、隅木田くん!?
行こうって、わたしひとりで行くんだよ!
だって、地味に生きてこそがわたしなんだもん!
明スイ楽しいけど、目立つところがキズだよね。

「真美ちゃん。パーティだけど、日付が決まったよ。1学期の終業式の日に決まった。この辺りは、私立も公立も終業式の日は同じだから」

終業式の日ね。
パーティ…明スイの大イベント。
みんなの依頼を一気に解決!ねえ。

「で、僕がいろいろ家でしたいんだ。紙をもらってもいい?帰りでいいよ」

「では、帰る前に来てください」

「真美ちゃんと一緒に帰るよ。今日は全校下校だろ?」

隅木田くんと一緒に帰るの!?
無理に決まってますよ!
すごく目立つじゃないですかぁ!

94:モンブラン:2017/03/21(火) 09:33

9.ユリのあいさつ
「じゃあね。今日は急がなきゃいけないから」

やっと別れれる。
このまま校門なんて行けないよ。
隅木田くん大好きさんの目が怖いもんね。
ただでさえ目立ってきてるんだから。

「おはようございます!」

校門のところに、ふみ会長が立ってあいさつしている。
今日は、全校あいさつ大作戦日か。
児童会で決めたあいさつ運動。
児童会にあいさつしないと、校内にも入れないんだ。

「おはようございます!」

「多田本さんいいわよ」

やった、一発で通過!
後ろで、ふみ会長があいさつを大きな声でしているのが聞こえる。
何度も、何度も。
本当に必死にやってるな〜。

「矢本さん合格よ」

「マミ〜!合格したよ!」

ヒマ!
校門からヒマがダッシュしてくる。
この前みたいな楽しさ。
喧嘩したの、バカみたいだよね。

「ユリがふみ会長と対決してる」

「ユリ〜!頑張って!」

わたしがユリを応援すると、ユリはものすごく大きく息を吸って…


『おはようございますーーー!』


「あああ…。利等万さん合格!」

ユ、ユリの声、すごい…。
この日、彦宮学園新聞部が、利等万由里歌、あいさつフルパワーという記事を出した。

95:モンブラン:2017/03/21(火) 20:36

10.柚礼菜衣子
「マミ、ヒマ、ユリ!学食行こ!」

やっと算数終わった〜!
四時間目が算数って多いな〜。
お腹が空いて無理だよ。
得意な国語にしてくれたらいいのに。
カンカン照りの日…。
学食の席が取られちゃう!

「ちょっと、マミ?」

「ああ、ごめん。本当に暑いなって思って。席取られちゃう!」

みんなで学食へ走っていく。
結構な子たちが座っている。
四人用の席、四人用の席……。

「見っけ!行こ行こ行こ行こ!」

わたしが席ーーーいつものじゃないけどねっ!に走る。
昨日のヒマみたいに!

「ここの席取った!」

「みんな、また取れちゃったよ!」

き、昨日の譲れない子たちだ!
ヒマと目があって、会釈しあって、目で何かを話しているみたい。
お願い、今日は勝ってよ!

「じゃあね、バイバイ」

えええっ!
ヒマ譲ったの?
それとも負けたの?

「あの子、柚礼菜衣子ってニックネーム付いてるのよ」

ユズレナイコ!?
何その正直ピッタリなニックネーム。

「本当の名前は鍵野愛菜って子」

かぎのあいなちゃん。
どうしてそんなニックネーム付いちゃったの?
なんか可哀想。
心の中で思ったさっきの、取り消したいよ!

「美華ちゃんと調べたのよ。あの子のこと」

あぁ、美華ちゃんっていうのは、ここの彦宮学園校長の孫。
学園内のことは、美華ちゃんならほぼ知っている。

「辛かったのよ。あの時間。まあ、得られたものは名前とニックネームだけだけどね」

でも、柚礼菜衣子可哀想だよ。
何か隠れてる気がする!
こういうとき、隠れてないで出てきてほしいんだよ!

「でも、どうしてヒマは譲ってばかりなの?暑いのに」

ユリがヒマに聞く。

「昨日は、またああなったらわたしたちが譲ってもらえると思ったから。先にわたしたちが我慢したらいいって思ったの。今日は、鍵野さん、悲しそうだったのよね」

悲しそうだった?
わたし、そんな気しなかったけど。

96:モンブラン:2017/03/21(火) 20:50

11.おばあちゃんの気遣い
今日はみんな悲しいのかな?
ヒマは、新しい学食メニュー、彦宮限定焼きそばが入って喜んでたけど。

「ただいま」

「お帰り。真美ちゃん。菜和から電話があって、塾にはお弁当持っていってもいいって?持っていったこともあるのよね?でも、家で食べましょう。間に合うんでしょう?」

「うん。間に合うよ」

おばあちゃんはにっこり笑って、またキッチンに戻って行った。
家事を頑張ろうとしてくれているおばあちゃん。
塾とか、難しくて分からないと思うんだけどな。

「真美ちゃん。今日は塾の日でしょう?お休みの日は何曜日?」

「日曜日と水曜日だよ」

「今日は火曜日だから、明日はお休みなのね。明日はゆっくり食事しましょうね」

おばあちゃん、わたしの健康第一に考えてくれてる。
これだ!
これが明スイの考えるべきポイント!
下校の時…

「隅木田先輩〜!どうしてその子と帰るんですか〜」

隅木田くん大好きさんがすごかったのに、どんどん進んでくもん。
坂宮も怒ってたな〜。

「今取ってきますね!」

おばあちゃんも聞こえないくらい猛スピードで二階にかけ上がる。
紙を取って、また聞こえないくらい早く隅木田くんに渡す。
目立つから、一刻も早く帰ってほしいんだから!
ごめんね、隅木田くん。


「真美ちゃん。宿題あったでしょう?早めにやっておきなさいな」

なぜかママが言うと、はいはい、分かってる。って思うのに。
おばあちゃんが言うとは〜い。って思うのはなぜ?

97:モンブラン:2017/03/21(火) 21:04

11.グレードアップ
「真美ちゃん、待って待って!送っていくわよ。遅れちゃったら大変!」

おばあちゃん、自分が凝ったご飯作ったから?
ママ、絶対歩いて行かせたのに。
歩いて15分でしょう?行きなさい。って。

「歩いて行けるよ!おばあちゃん疲れちゃう。おばあちゃんも倒れちゃったらわたしヤダ!」

「真美ちゃん?大丈夫よ。おばあちゃん強いんだから。運転くらい簡単よ。さあ、乗って」

おばあちゃんの車に乗って明確ゼミに行くのは、5分くらいで着いた。
安全運転だし、話しかけてくれるし、楽だし。
おばあちゃんがママなのもいいね。
やっぱり、ママのママだもんね。

「お母さんは、自慢よ。誰よりもすごいんだから。ママの憧れ」

そうママはいつも言ってた。
おばあちゃんのことを、憧れとも言っていた。
わたしは、ママもおばあちゃんも、憧れかな。
強い、優しいおばあちゃん。
いつでも見守ってくれてたママ。
わたしの一番の憧れは、このふたりなのかもしれない。
そんなことを考えながら、明確ゼミに入っていった。

「真美さん。ちょっと」

国語の立花先生が呼んだ。
わたし、国語下がっちゃった!?
どうしよう、どうしよう!

「おめでとう、真美さん。今のクラスからグレードアップ!」

クラスが上がるってこと!?
どうしよう、嬉しさが込み上げてきちゃう!

「立花先生のおかげですよ!本当にありがとうございます!」

「これからは渋谷先生ね。今まで本当にありがとう」

立花先生から受け取ったプリントを見ながら教室に向かった。
あ、このこと、おばあちゃんに教えてあげよっと。
ママとパパにも!
ママには、お見舞いか手紙で知らせてあげよう!
毎日手紙を書いたらどうかな?
明日レターセットを買おう!
明日から手紙を書くんだ!
そう考えるとウキウキして、次の算数の時間も楽しく受けることができた。

98:シフォン:2017/03/22(水) 01:05

お久しぶりです!返事遅れてすみません(*´-`)
私は主人公ちゃんが好きですね〜
そういえば私も小説書いてるのでよかったら今度見てください(≧∀≦)駄作だけど・・・
題名は『世間知らずな私の初恋!?』です
新体操をやってる主人公のお話です〜
題名に初恋ってある割には恋愛要素は
まだまだ先ですね(笑)

99:モンブラン:2017/03/22(水) 08:45

シフォンさんお久しぶり!
読んで見ます!
あと、ありがとうございます!

100:モンブラン:2017/03/22(水) 09:09

12.海のびんせん
今日は明スイ、集合かかってない。
いつも通り歩いて帰ろうとすると、明確ゼミの狭い駐車場におばあちゃんの車が停めてあった。

「真美ちゃん。こっちよ、こっちこっち!」

おばあちゃんが、車の側から手を振っている。
急ぎ足でおばあちゃんの所に行く。

「お帰り、真美ちゃん」

「ただいま、おばあちゃん」

「今、家に陽子さんがいるの。優樹さんとふたりで話しているわ」

陽子さんは、パパのママ。
ばあばって呼んでる。
きっと、ママの話だよね。

「ちょっと、時間潰しましょう。どこか行かなきゃいけない所、ある?」

「おばあちゃん。ママに手紙を書きたいから、文房具屋に行きたい」

おばあちゃんはにっこり笑って、車にわたしを乗せてくれた。

「真美ちゃんは本当に優しいねぇ。菜和は幸せ者だわ〜」

運転しながらおばあちゃんが言う。
確かに、ママは幸せ者なのかもしれない。
パパと仲良くて、いつも笑ってるし。
新しい子も産まれるんだし。
…わたしのことはどうだろう?
幸せって思ってくれてるのかな?

「手紙セットが欲しいのよね。菜和はどんなデザインが好きかしら?」

「季節に合わせて、海のびんせんあるかな?」

「真美ちゃんはセンスもあるのね」

センス…。
わたしってセンスあるんだ!

「ここの文房具屋でいい?」

わたしはにっこり笑って大きくうなずいた。
本当は明日買うつもりだったのに、今日連れてきてくれて、それに大きな文房具屋に。

「海のデザインあるといいけど。さあ、おばあちゃんも探すから」

レターセットコーナーに行って、海のびんせんを探した。
う〜ん、浮き輪は違うよね。
スイカ、虹!?
すごくキレイだな!

「真美ちゃん、あったわよ!」

「え、ありがとう!どこどこ?」

おばあちゃんが指差していたレターセットは、淡い海のびんせん。

「これ!これがいい!」

101:モンブラン:2017/03/22(水) 09:43

13.明後日!?
『大好きなママへ』

新しい海のびんせんに書く。
やっぱり、『大好きな』が付けたい。

「真美ちゃんどう?書けてる?おばあちゃん特製の紅茶を持ってきたわ」

「ありがとう、おばあちゃん」

紅茶を一口飲むと、口の中に広がるこの味。
おばあちゃんの紅茶、本当に美味しいんだよね。
ママの入れる紅茶より美味しい。
おばあちゃん、紅茶を専門にしているわけじゃないのに。
 プルルルルプルルルルプルルルル

「電話だ。出なきゃ出なきゃ」

おばあちゃんが急いでリビングのすぐ横の廊下の電話機を取る音が聞こえる。
「真美ちゃん!隅木田くんって子から電話よ〜」

「隅木田くん!?」

わたしも急いで電話機に向かって走っていく。
電話機を握ると、隅木田くんが荒い声をあげた。

「パーティが急遽明後日になった!」

「えええっ!」

「俺たちはまた、矢本の家で作ってみることにした。真美ちゃん来れる?」

「行きます!」

電話を切って、おばあちゃんに軽く事情を話した。

「おばあちゃんが送るわ」

矢本くん家、遠いって言ったからかな?

102:モンブラン:2017/03/24(金) 20:29

14.ヤバイ!
「おばあちゃん、じゃあね」

ここは矢本くんの家。
おばあちゃんは矢本くんの家の人にあいさつするらしい。
いつもの方に行こうとしたら、矢本くんにグイッっと手首をつかまれた。
矢本くんは、なぜか家の前にいて、わたしの手首をつかんで奥に歩いていくんだよ。
ちょっと、何してくれるの!?

「今日は、俺と香音、梨歩佳、梨萌佳の屋敷だ。というか、これからそっちになる。ちゃんと来いよな」

矢本くんと久しぶりに聞いた香音さんと、梨歩佳さん梨萌佳さんの屋敷!?

「こんばんは、真美ちゃん。急にごめんね」

「いえいえ。いいんです。ところで、隅木田くん。どうして明後日になったんですか?」

「ああ。全員に声を掛けたら、明後日しか空かなくなった。もう夏休みに入るからね」

そっか。
明スイより大事だよね。
家族の方が。

「で、個数などが決まってきた」

急に坂宮が言った。
みんなの視線は、隅木田くんから坂宮に変わる。
坂宮は胸を張って言った。

「作るもの1。大きなケーキ5つ」

ひいぃっ!

「ショートケーキ27つ」

ひいぃひいぃっ!

「クッキー300枚。オリジナルパンケーキ260枚」

ひゃーーーーーー!

「最後に、オリジナルトリュフ」

ひゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!
何その数と物!
大きなケーキ5つって何よ!
クッキー300枚ってどーゆーこと!?

「やるからにはやるしかない。これも試しはなしでいくしかないか」

隅木田くんが下を向きながら言う。
お試しやりたかったけど、無理だったらしょうがないよね。

「この前のチーム分けはなしとする。ここに、梨歩佳と梨萌佳が補助で入ってくれることとなった」

ケーキのこと、坂宮と話してないや。
どうしよう。
急にこうなると思ってなかったから。
しょうがない?
いやいや、明スイメンバーとしてダメだよね。

「じゃあ、振り分けわたしがしてもいいかしら?拓斗兄、ひとりでオリジナルパンケーキね。坂宮くん、梨萌佳とクッキーお願いね。隅木田先輩は、真美ちゃんとわたしとトリュフでいいですよね?」

梨歩佳さんの振り分けで、わたしはトリュフを作ることになった。

103:モンブラン:2017/03/24(金) 20:37

15.ケーキ作り
「隅木田くん、ちょっとその…ありがとうございます」

「あとは、ここの指示に従うだけですぐできます。ここの味を工夫するだけですが、隅木田先輩できますか?」

「梨歩佳さんと真美ちゃんは別のことやるの?」

「ええ。時間的にそうしようかと」

「いいよ」

「ありがとうございます!真美ちゃんやろう!大きなケーキ作り」

「はい!」

こうして、梨歩佳さんとケーキ作りをすることになった。
えっと、チョコレート味。
工夫するところは牛乳を入れるところでチョコレートの溶かしたものも入れるんだね。
チョコレートの味が増すってこと。

「真美ちゃん。チョコレート溶かしてくれる?」

「はい!」

梨歩佳さんと、初めより距離が縮まっている気がする!

104:モンブラン:2017/03/26(日) 21:19

「さあ。ここは焼くだけ。真美ちゃんどう?進んでる?」

「はい。記事が出来ました。今からチョコレートを溶かします」

梨歩佳さんはにっこり笑って、「チョコレート溶かすから、新しいストロベリー味の生地作ってくれる?」と言ってくれた。

「ストロベリー、ストロベリー!」

ストロベリー味は、わたしの大好物。
ついついつまみ食いしちゃいそう。

「真美。一緒に作ろうぜ。今手が飽いてるから。クッキー焼き中」

「ありがとう、坂宮。じゃあ、ストロベリー味の生地作ってくれる?わたしはストロベリーの溶かさなきゃいけないから」

「いいよ。あと、ひとつ。坂宮って呼ぶのやめて」

え…?
坂宮だけ『くん』が付いてなくてイヤだったとか?

「俺、言ったよね?真美のこと好きって。俺のこと嫌いでも、ちょっとくらい聞いてくれてもいいだろ」

「何を?」


『俺のこと、名字じゃなくて名前で呼べって』


な、名前で呼ぶの?
陽都くん?って?
それとも、呼び捨てで陽都?
男の子の名前を呼び捨ては無理っ!
周りもシーンとなる。


『ハルトって呼べばいい話じゃん。おい、作業戻れよ』


は!?
いきなり言って何よ!
ハルトって呼ぶの!?
無理無理!
坂宮に限って、無理だから!
ハルトに限らなくても!
…って、心の中じゃ、ハルトって言ってるよね?
まあ、いいや。
ハルト。

105:モンブラン:2017/03/26(日) 21:38

16.おばあちゃんの心配
「坂宮だけずるくない?」

「俺も、矢本くんって呼ばれてるんだぜ。」

は!?
隅木田くんと矢本くんまで何言い出すわけ!?
呼び方なんてどうでもいいし。

「ピーンポーン。真美ちゃん!」

「おばあちゃん?」

「真美ちゃんいつまでいる気なの?ご迷惑がかかるでしょう?それに、もうお風呂入らなきゃ」

お風呂?
ああ、この前は隅木田くんの勉強会って説得だったもんね。
おばあちゃんに明スイのこと話したけど、おばあちゃん心配性だから?

「大丈夫だよ。急がなくちゃいけないものだし」

「体調崩したら大変でしょう?みんなも家に帰って休んだ方がいいわ。明日があるでしょう?学校があるけど、また集まればいいじゃない?」

おばあちゃん…。
確かにおばあちゃんの言う通り。
でも、明日は明スイがあるし。

「とりあえず、真美ちゃんは帰りなよ。おやすみ、真美ちゃん」

「真美、おやすみ」

「多田本、明日な」

「みんな、おやすみなさい」

矢本くんたちの屋敷を出て、またちょっと歩いて駐車場に戻った。
普通に車に乗って、ちょっとおしゃべりしながら帰った。

「真美ちゃん。もうこんなに長くかかるのやめなさいね。いくら何でも遅すぎるわ」

「ごめんなさい。もう二度とこんなに遅くならないようにします」

「分かればいいのよ。明日も学校あるんだし、ゆっくり休まないと。ね?」

そうだね。
おばあちゃんの方がよく分かっているよ。
本当に。

「ところで真美ちゃん。明明後日お見舞いに行きましょう。それまでに手紙を書くなら書いておきなさいね」

「はい」

お風呂の準備に部屋に行ってお風呂に入って、今日はもう休むことにした。

はぁ。
今日はいろいろあったな…。
もう眠たいや。
今日はもうすぐ寝よう。

106:みかぜ◆3Y:2017/03/26(日) 21:45

モンブラン、遅れたけど100おめでとう!1000レス行くまで応援してるね!モンブランも小説面白いからはまる!

107:モンブラン:2017/03/26(日) 21:53

17.久しぶりブランコ
「行ってきます」

「真美ちゃん。昨日しっかり寝たから張り切って学校行けるでしょ?行ってらっしゃい」

「おばあちゃん、昨日は声をかけてくれてありがとう。じゃあ行ってくる」

家を出て、学校を目指して歩く。
今日もいい天気。
暑いけど、太陽がバッチリ見えてて、夏!って感じがする。
夏なんだけどねっ!

「マミおはよう。今日はあいさついないみたいだね」

「ハル、おはよう!ユリのスクープは今日ないね」

ああ、叫ぶようなあいさつね。
なんか、昨日のこととかよみがえってきた。
何だろう、この気持ち。
明スイの活動を出てきたわたし。
みんな怒ってないよね?
昨日のこととか、ハルト…に聞いてみよっと。

「ハルとマミ、おはよう!」

「ヒマとユリ!おはよう」

「おはよう!」

またいつもの4人で歩く。
校門を4人でくぐる。
やっぱりわたし、この4人でいるときが一番好きかも。
明スイかな?
一番好きな時間。
まあ、同じくらい好きかな。

ああ、楽しかった国語終わった。
せっかくの楽しい時間って本当に短いよね。

「みんな。久しぶりにみんなでブランコしない?」

急にヒマが提案する。
ブランコ。
中等部へ行ってもできるけど、恥ずかしくてできないブランコ。
今ここで楽しんでおく。ってことだよね?

「もちろん!」

「ヒマに賛成!」

「わたしももちろん!」

みんな初等部用の制服を着ていて、バッヂは6年のバッヂ。
でも、小さいから目立たないよね。
恥ずかしいとも思わないよね。

「さあ、ブランコで楽しむよ!」

ハルが言って、みんなで声を合わせてブランコを漕ぎ始めた。

108:モンブラン:2017/03/26(日) 21:54

>>106
みかぜありがとう!
ここでもコメントありがとね。
頑張って書くよ!

109:モンブラン:2017/03/27(月) 10:03

18.解散!?
今日は、なぜか流れるように一日が終わった。
申し訳ない気持ちが大きいのかな?とも思った。
でも、早く帰って悪い気持ちはない。
わたしは早く帰るんだもの。
人に決められることじゃないしね。

「ただいま」

「お帰り。真美ちゃん。今日は気分よく学校行けたでしょう?」

うんって言うしかないよね。
心の中でモヤモヤがあったけど。
作り笑いで、おばあちゃんに向けてうなずいた。
すぐにリビングを出て、部屋にある明確ゼミのスクールカバンを取る。

「おばあちゃん。今日は授業早いから弁当持っていくね」

「うん。行ってらっしゃい」

「行ってきます」

ちょっと急ぎめで家を出ると、家の前を通っていた梨歩佳さんに会った。
う、会いたくない。
でも、そんな願いは叶わない。

「真美ちゃん。明スイの、もう終わったから」

「ありがとうございます。すみません。続きからいなくなって」

「別にいいわよ。どうせ明スイも解散だしね。とりあえず、明後日のパーティには参加してもらうって」

カイサン?
カイサンって、解散?
みんなバラバラになっちゃうの?

「真美ちゃん。パーティではよろしくね。ドレスは、わたしの家の使っていいから。パーティの前にわたしの家に来てね」

「ちょっと待ってください!」

梨歩佳さんが行こうとしていたのを、わたしは本気で止めた。
だって、解散だなんて。

「どうして解散するんですか!?」

「依頼来てないでしょ?もう活動する意味がないのよ。そう言っていたわ。拓斗兄が」

嘘…。
矢本くんが言ったの!?

110:モンブラン:2017/03/27(月) 10:17

19.重い荷物
パーティ当日。
最後になるものかと思いながら、おばあちゃんに送ってもらって矢本くんの家に行く。

「こんにちは。真美ちゃん。今日もこっちの屋敷で着替えるわよ」

「今日はよろしくお願いします」

この前は矢本くんの棟だったけど、今日は梨歩佳さんの棟に案内された。
ちょっと歩いて、ひとつの部屋に入っていく。

「ここがドレスルーム。あんまり引きずるドレスはやめてね。これくらいのドレスにして」

梨歩佳さんが手で示したのは、だいたい膝くらいのドレス。
わたし、ドレスなんて普段着ないからこのドレスも…。

「さっさと決めてね。真美ちゃんの係は案内なんだから」

「案内ですか?」

「そう。わたしが、ここの屋敷の隣、母屋の屋敷の方から案内するから、ここの屋敷の、パーティ会場の案内をすることが真美ちゃんの仕事」

そんなの聞いていない。
反論しようとしたけど、わたしはふと思った。
ハルトも隅木田くんも矢本くんも、梨歩佳さんも梨萌佳さんも。
みんな学校を休んでいたこと。
きっと、明スイの活動をしていたってこと。
でも、その話題は話せなかった。
自分がメンバーと感じなくなって。
梨歩佳さんと梨萌佳さんは、正式メンバーじゃないのに活動してくれている。なのに、正式メンバーのわたしは活動していない。
自分のことしか考えていない自分が、何だかとても憎い気がしてきた。

屋敷の前にセットされた椅子に座る。
これが、最後の明スイになるんだ。
そう考えると、胸がムズムズした。
やっぱり、みんなに言うべき?
解散はよくないって。
でも、自分勝手なわたしのこと、みんなは聞いてくれる?
聞いてくれるわけない。
きっと、わたしのこと憎いもんね。

「真美ちゃん。お客様が来たら、この紙を渡して案内して」

「分かりました。…あの!昨日はすみませんでした」

隅木田くんにも謝ると、ちょっと笑った気がした。

「梨歩佳さんから聞いたかもしれないけど、解散するから関係ないよ」

「で、でも」

「間にあったんだし、重い荷物まで背負いたくないよ」

重い、荷物…。
わたしが重い荷物ってこと?

111:モンブラン:2017/03/27(月) 10:30

20.パーティスタート
「皆さん。今日はお集まりいただき、ありがとうございました。急な日付変更に関わらず、皆様がお集まりできたことは、とても嬉しいことです。では、ただいまから始めさせていただきます、明確スイーツ研究部、最初であり最後のパーティを始めます」

梨歩佳さんの司会で、周りがザワザワしてきた。
きっと、最初であり最後であるってことだよね。

「まず、ここにスイーツを用意したわたしたちの紹介をします」

さっきのザワザワから、歓声に変わった。
楽しみにしてくれてて嬉しい。
この笑顔は、もう見られないのかな?

「まず、隅木田優斗さん。多くのことをまとめ、オリジナルトリュフを作りました」

『キャーーーーーー!』

『トリュフ食べた〜い!』

女の子たちの間で歓声が最高潮だ。

「ふたり目。矢本拓斗さんです。オリジナルパンケーキ大きなケーキを作りました」

『オリジナルパンケーキ!』

『わたしがたくさん食べるわ〜!』

「次に、坂宮陽都さん。クッキー作りと大きなケーキ作りをしました」

『クッキーのところ、ずっといたいくらいだわ!』

『ケーキ超絶食べて見せる!』

「次に、多田本真美さんです。オリジナルトリュフ、大きなケーキ、ショートケーキを作りました」

辺りはシーンとなる。
こんなに目立つ人たちの中の、地味なわたしだもんね。
これでいいけど、ちょっと傷つく、かな。
もっと頑張るべきだけどね。

「次に、矢本梨歩佳。矢本梨萌佳です。クッキー作り、オリジナルトリュフ作り、大きなケーキ作り、ショートケーキ作りをしました」

『梨歩佳先輩と梨萌佳先輩すごい!』

『どれも素敵ね!』

最後のパーティも、わたしが重たい荷物背負ってるみたい。
期待外れだよね、わたし。
もう、来たくなかったよ。

112:モンブラン:2017/03/27(月) 10:45

21.隅木田くんの気持ち
ワイワイ、ガヤガヤ。
パーティー会場は大盛り上がり。
今、報酬をもらい中。

「真美ちゃん。解散することだけど」

「明スイの活動は最後なんですよね?わたしはもう関係ないんですよね?」

ちょっとキツい言い方で隅木田くんに言っちゃった。
こういうところ、ダメだよね。
ダメじゃなくて、最低だよね。

「解散のことどう思う?」

隅木田くんは、イヤな顔ひとつ見せずににっこり笑って言った。

「解散したくないですよ。みんなの幸せそうな時間、もっと作りたいです。わたしたちの力で」

「僕もそう思うよ。矢本はもうやめるって言っていた。梨歩佳さんと、梨萌佳さんもやめるって」

「梨歩佳さんと梨萌佳さんは手伝ってくれてましたから、問題はありませんが、矢本くん、何か明スイイヤなことがあったんでしょうか?」

隅木田くんも考え込むように椅子に座った。
わたしも隣に座る。
梨歩佳さんは後輩と、梨萌佳さんは友達と話している。
手伝ってくれていたから、ありがとうございました。なんだけど。

「矢本は、イヤなんじゃなくて、やって意味があると思っていないのかもしれないね」

「そうですか」

113:みかぜ◆3Y 特にかくhogeる。:2017/03/27(月) 10:48

え?!どうなっちゃうの?!

114:モンブラン:2017/03/27(月) 11:09

22.お見舞い
 ガラッ
ゆっくり、ゆっくり、歩いていく。
海のびんせんを持って。
また、ゆっくりカーテンを開ける。
笑顔で横になっていたのはママ。

「久しぶり、菜和」

「ママ、会いたかったよっ!」

何となく、笑っていたら目頭が熱くなってくる。
なんか、ママがいない生活が考えられない自分がいた。
わたしは、ママに助けられてきたんだ。改めて、ママの大きな存在に気付かされる。
わたしって、明スイのことも大きな存在なんだよね。
矢本くんは、明スイってどんな存在なんだろう。
わたしみたいに、大きな存在?
それとも、ホコリみたいな小さい存在?どうしたら、明スイを存続されられるんだろう。

「真美ちゃん。海のびんせん」

「あぁ。ママ、手紙」

手紙を渡すとき、ママと手が触れた。
このママの温もりが忘れられない。
温かい、ママが抱き締めてくれる時の温もり。

「真美、本当にありがとう」

「頑張って、元気な姿で赤ちゃん産んで、ママとパパとわたしと、赤ちゃんとおばあちゃんとお出掛けしようね」

「もちろんよ。楽しみにしててね」

まだまだこの生活が続きそうだけど、わたしももっと頑張るもんね!

             (つづく)

115:モンブラン:2017/03/27(月) 11:21

あとがき
            モンブラン

皆様こんにちは。
ここは明確スイーツ研究部!略して明スイ作者のモンブランです!
今回の明スイ4巻、いかがでしたか?
今回の明スイは、最高のパーティーにしたい真美ちゃん。
ですが、ママーーー菜和(なお)が倒れてしまう。
そこにおばあちゃんが来る。
そして、パーティーでは解散!?ということでしたね。
今回も、作者でありながらドキドキビクビク震えております。
何となく、真美ちゃんがラプンツェルに感じてきました!(笑)

今は皆さん春休みでしょうか。
宿題もなく満喫していると思いますが、時間があれば、明スイを読んでくださると嬉しいです。
わたしも、春休みを満喫しながらも、着々と中学校の準備をしています!

次回の明スイはですね。
矢本くんと梨歩佳さん、梨萌佳さんがいない状態で、聡日さんの依頼をすることになります!
さあ、どうなるのでしょうか!

お礼のコーナーです。
いつも読んでくれる方々、本当にありがとうございます!
コメントをくれた、シフォンさんと、みかぜさん!
このふたりには、いつも元気付けられます!
本当にありがとう!
次回の明スイも、よろしくお願いします!

追伸
明スイに関して質問コーナーを開きたいと思います。
キャラクターの誕生日など、いろんな質問待ってます!

116:モンブラン:2017/03/27(月) 11:23

創作板に建てました。
『莉愛の小説を一番早く!』
モンブラン=莉愛。
明スイの短編載せてます。
ぜひ読んでください!

117:モンブラン:2017/04/04(火) 12:13

お久しぶりです!
春休みを満喫しておりました。
ですが、今から新刊書きます!

118:モンブラン:2017/04/04(火) 12:22

『ここは明確スイーツ研究部!5』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

119:モンブラン:2017/04/04(火) 12:34

1.楽しい夏休み!
「あ〜と10分だねっ!」

ヒマがリズムに乗って言う。
ハルもユリも、もちろんわたしも!
ウキウキ気分で並んでいる。
ここは、最近新しくできた遊園地。

「ヒマヒマっ!キャラクターが門の前で待ってるよっ!」

「えっ?どこどこ!?」

確か、ハッピーサマーランドって遊園地だったかな。
この前4人で行ったサマーサマーパークだったっけ?
サマーサマーランド?
まあ、どっちだったか忘れたけど、その前に行った遊園地の姉妹遊園地。
ここにはサマーサマーの方と違って、キャラクターがいる。
小さいディズニーみたいだって。

えっと、わたしは多田本真美。
記憶が薄れてきてるけど、思い出として残ってるからねっ!

ハルとヒマは、背伸びしながらキャラクターを見ている。
わたしは身長が小さいから、背伸びしてもどうせ見えないし。
まあ、諦めてるって感じ。

『皆様、大変お待たせしました。ただいまから、ハッピーサマーランドを開演致します』

アナウンスが入ると、ハルとヒマはぴょんぴょん跳び跳ねる。
ハッピーサマーランド、ずっと計画してきたから。

『では、押さないよう、ゆっくり園内にお入りください』

「やっと入れる〜!」

「2時間並んで良かったね!」

ハルとヒマは、スキップしながら園内に入っていった。
ユリと、目を見合わせる。

「わたしたちも、思いきり遊ぼう!」

「そうだね。今日は宿題も部活も忘れて遊ぼうか!」

わたしたちも、ユリとスキップしながら園内に入っていった。

120:モンブラン:2017/04/05(水) 08:40

2.恐怖!インコップコースター
「まずはプラン通り、インコップコースターだよっ!ここで、わたしとユリでベストリアムシューティングの券を取りに行くよ!」

インコップコースター!
ハッピーサマーランドのメインジェットコースター。
ベストリアムシューティングは、ハッピーサマーランドの主人公。
ディズニーでいうとミッキーにあたるキャラクターのシューティングゲームの券ーーー並ばなくても乗れる券を取りに行った。

「マミ、わたしたちはそのまま並ぶんだから、早く行くよ!」

「うん!」

わたしたちが並ぶと、前にインコップコースターが動くのが見えた。
それにあたり、わたしたちも前に進む。ちょっとすると、インコップコースターが見えなくなってっ!

『キャーーーーー!』

『もームリィーーーーーーー!』

『ギョエーーーーーー!』

さ、叫び声ひどくない?
背筋がぁ!

「マミ、本当にこのアトラクション楽しそうだね!マジ楽しみ!」

「ヒマは楽しみでもわたしはぁっ!」

ヒマは、苦笑いしながら前を見た。
また、前が進む。
ということは?

「インコップコースター動いた!」

ヒマが言って上を見ると、インコップコースターが落ちていった。

『もー止めてぇぇーーー!』

『キャーーーーーー!』

『死ぬーーーーーーーーーー!』

うううっ!
怖すぎるよ!
後ろを振り返ると、楽しそうなウキウキした顔の人たちがズラリ!
もう、イヤーー!

「ただいま!…マ、マミ?」

ハルたちが帰ってきたのも知らない。
もう、そっちのことなんて考えられない。
インコップコースター…!
乗るの無理ーーー!

121:モンブラン:2017/04/12(水) 19:16

3.出発夜の旅
「はい。ではお乗りください」

案内されちゃったよぉ。
ん〜、怖すぎて死にそう、気絶しそうだよ〜!

「ヒマ、隣に乗らない?」

え、ユリ、ヒマを誘った!?
どうしてどうしてっ!

「も、もちろん。って、ユリどうしたわけ?ジェットコースター好きになったりとか?」

「いや。ただヒマと乗りたかったの」

はぁ。
ユリにジェットコースターのレベル抜かれた〜。

「じゃあ、ハル。隣で乗ろう」

「うん!マミと乗るの、久しぶりだから楽しみだな!」

確かに、ハルと乗るのは、ディズニー依頼かな?
四年生くらいにハルと私と家族たちと行ったから。

「皆さん、ご乗車いただきありがとうございました。インコップコースターでは、360度しますので、安全ベルト、忘れないよう心がけましょう」

さ、サンビャクロクジュウド!?
キイテナイゾ!

「360度するんだ!益々楽しみになってきたよ!」

ハル、そういう発言は求めてない。
とりあえず早く終わってっ!

「では、インコップコースター、恐怖の夜の旅を、お楽しみください!行ってらっしゃい!」

うわ、見送られた。
本当に楽しい夜の旅に、なるかなぁ?

122:玲葉:2017/04/12(水) 19:17

面白い!これからも読ませてくださいッ!
真美ちゃん、大好き!

123:モンブラン:2017/04/12(水) 19:21

玲葉さん、ありがとうございます!
自信なくしていたところでした!
ぜひ読んでください!
よろしくお願いします!
では、続き書きます!

124:モンブラン:2017/04/12(水) 19:43

4.天国への道
うぅ、どんどん上がっていく…。
天国への階段みたいだよぉ。
怖すぎるぅ。

「マミ、落ちるよ!落ちる、落ちる!キャーーーーーーーー!」

「もうダメだ〜!」

ヒマとユリも叫んでいる。
もちろん、ハルも私も。
すると、グルンッ!
さ、サンビャクロクジュウドシタ!
ワタシマワリマシタ!

ああ…。
怖すぎて…声…すら…出…ない…ッ!
どうし、よお…ッ!

お…ッ!
終わったゾ〜!
インコップコースター乗った!
私は凄いぞ!

「マミとユリ、お疲れ様」

「うん。ユリも、お疲れ様だね」

本当にお疲れだよ。
こんな疲れるの、考えられないよ。

「大丈夫!マミもお疲れだよね。まだベストリアムの時間じゃないから、ハルハルパークに移動しない?」

ハルハルパークーーーここは、ハッピーサマーランドの真ん中、ハッピーハッピーパーク。
ここのハッピーハッピーパークの右がハルハルパーク。

「いいねえ。ハルハルパークは、写真館があるでしょ?ベストリアムと写真撮らない?」

「賛成!でも、並んでる間にベストリアムのシューティングゲームの時間が来ちゃいそうだし」

「ハル、ヒマ。その問題はないよ。お母さんに言ったら、ベストリアムの写真館は行くだろう。ということで、前売券買ってもらったから。1グループ一枚だから大丈夫!」

ユリ、気が利く!
どうして思い付かなかったんだろ。
ユリはすごいよ!

「ユリ。それ、いつでも使えるの?」

「今日の間ならいつでも使えるわ」

「よかった。じゃあ、写真は避けよ。マミの顔が青っぽいし」

え…。
私の顔が青っぽい!?
ウッソー!

125:モンブラン:2017/04/23(日) 20:45

5.マフィン作り
久しぶりの遊園地も終わり、普通の日常に戻った。
今は、スイーツを作ってるところ。
きっと、矢本くん戻ってきてくれるし、たとえ戻って来れなかったとしても、わたしたちの活動は終わらないはずだから。

「真美ちゃん、本当に手伝わなくていいの?ちょっと心配よ」

おばあちゃんは、心配そうにわたしを見つめる。
手を出してくれるけど、ひとりでやるから、いいよ。って言ってるし。
わたしだって、きっとひとりでできるはずだから!

「おばあちゃんはゆっくりしてて。ずっと動いてちゃダメだよ」

「そんなことないわ。真美ちゃんが作るところ、見ていたいもの」

そう言って、おばあちゃんはカウンター越しにわたしを見ている。
また、マフィン作りを再開する。
夏休み、今までの恩ということで、おばあちゃんと、ハル、ヒマ、ユリにマフィンをプレゼントすることにした。
その練習用。
出来たら、おばあちゃんにはあげないつもり。
完成形しか食べてほしくないし。

「スイーツ作ってる真美ちゃんが、とても生き生きして見えるわ」

おばあちゃんがふとつぶやく。
生き生きして、見える?
私の生き生きした顔ってどんな顔だろう?

「とっても輝いて見えるわ。真美ちゃんの姿、菜和に見せてあげたい」

菜和ーーーわたしのママ。
今入院しているの。
妊娠しているから。
でも、おばあちゃんはスマホじゃなくてガラケーだから、写真送れないよ。

「カメラで撮るわ。菜和が、赤ちゃんを抱いて帰ってきたら、カメラを見せてあげるの」

おばあちゃんのこの顔、生き生きしているのかも。
まるで、夢ではない、遥かかなた、すぐそこじゃない遠くを見つめる顔。
未来を、想像している。

「おばあちゃん、楽しい?」

「おばあちゃん?楽しいわ」

おばあちゃんも楽しいんだ。
私と同じ、楽しいかな?

126:モンブラン:2017/05/01(月) 19:11

6.秘密の真由ちゃん
 ピヨピヨ ピヨピヨ
か、カワイイッ!
マフィンを焼いている最中。
暇なので、お庭に出て気晴らしって感じで休憩に来た。

「真美ちゃん、雀ちゃんが好きなの」

ふふふ。
この子は、普通の雀ちゃんじゃない。
わたしが…秘密で飼っている雀ちゃんなのだから。
名前もあるんだ。

「真由ちゃんって言うの。わたしがつけてあげた名前だよ!」

そう、真由ちゃん。
わたしの名前をつけるとき、真由と迷ったんだって。
この雀ちゃん、わたし第二号って感じで真由ちゃんにしたの。
真美って名前だと、同じで紛らわしいしね。

「そうか。真由ちゃんねえ」

おばあちゃんは、なぜか黙りこむ。
どうしたんだろう。
お腹でも痛いのかな?
心配しているのに気付いたのか、笑って部屋の中に入っていった。

「真由ちゃん。お散歩でも行ってきたら?そうしたら、おやつをあげる」

真由ちゃんは答えたのか、どこかへ飛びたって行った。

「真美ちゃん。菜和から電話よ」

「え、ママから電話!?」

おばあちゃんは笑って、電話機を渡してくれた。
ママからってことは、病院からかけてるんだよね。
わたしと話すために、わざわざ。

「あの、もしもし」

ちょっと緊張ぎみに言うと、ママの、やんわりした声が聞こえてきた。

「もしもし。久しぶりね、真美ちゃん。夏休みは、どう?」

「夏休み?え、楽しいよ!この前も、遊園地に行ったの。ハルたちと」

少しの沈黙があって、ママが言う。

「楽しかったみたいね。きっと真美ちゃん笑ってるわ。真由ちゃんは?」

真由ちゃん?
雀ちゃんだよね。
ママに、真由ちゃんの話したことないのに。
すると、電話の向こうでクスッっと笑い声が聞こえた。

「真由ちゃんは雀でしょ?真美ちゃんが夢中になってることくらい、ママも知っているわよ」

ウソ!
真由ちゃんのこと知ってたの!?
さ、さ、さすが、ママ!

127:絵菜◆8Q:2017/05/02(火) 21:05

名前変えました。
元モンブランです!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

7.真由ちゃん小屋
そう言えば、この前に、矢本くんがやめようとする前。
明スイクッキーをママにプレゼントした時のこと。
明スイのこと話したことないのに、ママは明スイを知ってた。

「真美ちゃんが夢中になることくらい、ママも知ってるわよ」

そう言ってた。
わたしがママになっても、ママみたいになれるのかな?

「真美ちゃんの声が聞けて嬉しいわ。もうそろそろ切るわね。じゃあね」

「うん。バイバイ」

わたしがそう言って切ると、ママの笑顔が思い浮かぶ。
いつもニコニコしていて、周りを笑顔にさせてくれる。
辛いときも、苦しいときも、いつも、笑って過ごしている。

「真美ちゃん。真由ちゃんが帰ってきたわ。おやつあげましょう」

「おばあちゃんに、真由ちゃん飼ってること言ってないよ?」

ママと同じで、おばあちゃんも気付いていたの?
短い期間だったのに?
ま、まさかぁ。

「おやつ、真美ちゃんの部屋を掃除していたら見付けたの。雀用って、真由ちゃんしかいないでしょ?」

おばあちゃん…。
さすがだね。
真由ちゃんのおやつ見付けるなんて。
難しいところに隠したつもりなのに。
ママとおばあちゃんには、全てお見通しなのだ。
隠してもすぐバレるだろう。

「おやつ、あげにいきましょう」

「うん!」

暖かいひざし。
見えないけど、青い風。
澄み渡っている空。
そして、かわいい真由ちゃん。

「真由ちゃん、こっちこっち!」

わたしが声をかけると、チュンチュンと泣いて、おやつを食べに来た。
手のひらから、肩へ移動させる。
完全に、飼ってるっぽいし!

「おばあちゃん!雀の小屋って、いくらするかな?」

「真美ちゃんが作ってあげたら?おばあちゃんも手伝うから」

わたしが、真由ちゃんの小屋を作る?
そんな、無理無理。
器用じゃないし、真由ちゃんかわいそうだもん。
それに、おばあちゃん頼りすぎだし。
そのとき!
 ピーッピーッピーッピーッ

「マフィン焼けた!」

「真由ちゃん。ここにおやつ置いとくから、食べ終わったらここで待っててね。真由ちゃんが食べれるサイズのマフィン持ってくるから!」

そう言い残して、キッチンに戻った。

128:絵菜◆8Q:2017/05/02(火) 21:16

8.砂糖と塩を…
うぅ、美味しそう。
ふっくらしていて、香りもよし!
これなら、あげられるレベルに達しているかな?

「真由ちゃん!これこれ!マフィン!はい、どうぞ」

マフィンの小さいのを、真由ちゃんの前に置く。
トントンしながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ食べる真由ちゃん。
かわいい。

「真美ちゃん?おばあちゃんも食べていい?」

「おばあちゃんはダ〜メ!」

なんってったって、おばあちゃんにはプレゼントだからね。
これは、ただの試作品。
本番じゃないんだから!

「まあ、また作ったら食べさせてね。とっても美味しそうなのに」

うふふ。
でも、ごめんね、おばあちゃん。
わたし、サプライズしたうから。

「真由ちゃん、美味しいかい?」

おばあちゃんが、真由ちゃんの顔を覗き込む。
それに答えるように、真由ちゃんはチュンチュンと鳴いた。
さあ、わたしも食べてみよっと。

「いただきま〜す!」

一口。
んんん?
ちょっと辛いんだけど。

「ゲホッゲホッゲホッ!」

「真美ちゃん!?大丈夫!?」

「ん、ゲホッゲホッ!大丈夫ゲホッ!気にしないでゲホッゲホッ!」

多分、多分だよ?
このときだと思う。
この問題が起きたの。


「甘めにしよっかな。砂糖たっぷり入れよっと!」

そう言いながら、倍の量の砂糖を入れたつもりだった。
でも、わたしは多分塩と間違えた。
塩をたっぷり入れたせいで、辛くて咳き込むのだ。

「ゲホッゲホッゲホッ!」

「うがいよくしておいで。これからは間違えないわよ。失敗は成功のモト!いいのよ」

そうだよね!
失敗は成功のモト!だよね!
次からは気を付けよう!

129:絵菜◆8Q:2017/05/21(日) 13:22

9.転校っ!
カーテンを開くと、満月の月が見え、ん?
私の家の前に、男の子がいる。
誰だろう。
パジャマのままだけど、パーカー着てけばいいよね。
お気に入りのパーカーを羽織り、家を出る。

「あ、真美ちゃん。」

「す、隅木田くん?何かあったんですか?」

多いなカバンを提げ、わたしの部屋辺りをジッっと見つめる。
な、何だろう。

「矢本がね、転校することを言いに来ただけ。お父さんと矢本のふたりで暮らすんだって。明スイ、そんなに嫌だったのかな。」

ふたり暮らし!
明スイで、依頼を一気にパパっとやったからいけなかったのかなっ?

「まずは、聡日さんの依頼をやろう。尾崎桃乃さんと尾崎桃音さんいただろ?ふたりが、お礼したいから、明日、明確ゼミのカフェ集合ね。じゃ。」

え、それだけのために?
私の家に、電話をかければ。
そう考えていると、街灯の光に照らされた隅木田くんは、見えなくなっていた。


カーテンを閉め、パーカーを脱ぐ。
明日、明確ゼミでは、全国テストがあるんだ。
勉強はずっとしてきたし、いいよね。

「真美ちゃん、マフィンは、明日の朝作るってことでいい?」

ドアの向こうで、おばあちゃんが言う。マフィンの、本番だよね。

「いいよ。マフィン作り終わったら、配りに行く。ママには、明後日にしようかな」

「そうね。じゃあ、明日はいろいろあるから、早く寝るといいわね。おやすみなさい」

「ん、おやすみなさい」

130:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:09

10.ファンっ!
カーテンを開ける。
明るい日射し。
外には真由ちゃんがいるだけ。
今日は全国テストかぁ。
そして、マフィン作り。
パジャマから私服に着替え、顔を洗ってリビングへ行く。

「おはよう。おばあちゃん。パパ」

本来なら、おはよう。おばあちゃん。なんだけど、今日パパがいた。
仕事かと思った。

「おはよう、真美。今日は全国テストだな。頑張れよ。あと、真美宛に手紙がきていた」

わたし宛?
手紙なんて、まともにもらった記憶ないな。
久しぶりにもらうかも。

「これだ」

パパから受け取り、差出人の欄を見てみる。
すると、多田本真美様。
矢本拓斗より。とあった。
矢本くんから手紙っ!
急いで出して読んでみる。

『多田本真美様

今まで、明確スイーツ研究部、ありがとう。俺は、引っ越します。多田本真美さんと仲良くなれたこと、誇りに思います。さようなら。

           by矢本拓斗』

それは、筆ペンで書かれており、短くまとめてあり、かっこよかった。
byってところとか。
でも、昨日聞いたけど、本当に引っ越すことが明らかになってしまった。

「真美も、返事書いたらどうだ?お母さんと一緒に、便箋買いに行ったんだろ?」

あ、お母さんっていうのは、おばあちゃんのこと。
パパは、おばあちゃんのことをお母さんって呼ぶから。

「うん。そうする」

「そうね。じゃあ、朝ごはんにしましょうか」

そう言って、おばあちゃんはトーストが乗ったお盆を持ってきた。
う〜ん、いい香り。

「いただきまーす!」

朝のわたしの発声で、おばあちゃんは席につき、パパま新聞紙を閉じて席についた。


飛ばないように気を付けなきゃ。
今は、マフィン作り中。
特別にだけど、パパにもあげることにしたんだ〜。

「おばあちゃんとパパは見ないで!」

そう言いながら、グイグイ押す。
リビングのソファーに座らせて、キッチンに戻る。

「わたしが、わたしなりに、わたしだけで作るの。だから、見ないで」

言い、またかき混ぜる。
絶対美味しいマフィンにするんだ。
矢本くんにも、渡せたらいいな。
今日は、カフェに来るって言ってたから、その時手紙に添えて。
もちろん、明スイメンバーにも、尾崎姉妹にもねっ!


カバンを提げ、ドアを閉める。
う〜、緊張する。
全国テストと、マフィンを渡すことが。受け取ってくれなかったらどうしようってね。
矢本くんに言われたら、すごくきついよね、うん。
カバンに、マフィンが数通り入っていることを確認して歩く。
明確ゼミへ行く足取りが、重い。
いつもは、行って秀才になれて、行って明スイができて、嬉しいのに。

「あ、明スイメンバーだ。あたし、春山ひかりです。この前のパーティー、出席しました〜!本当に良かったですよ!あたし、明スイの中で、真美さんファンです!ネットで、明スイ話題になってますし、メンバーのファンクラブあるんですよ!あたし、真美さんのファンクラブ副会長です!」

え、嘘!
明スイのファンクラブ!?
それに、メンバーのファンクラブ!?
わたしのファンクラブ!?
ネットで話題!?
ついに、わたしにも話題になる時期が来たのかも!

「ありがとうございます!春山ひかりさんですね。初めまして、多田本真美です。よろしく」

ちょっと気取って言ってみる。
すると、ひかりさんはスマホを取り出した。
何するんだろ。

「メアド教えてください。あと、写真いいですか?」

メアド…。
それって、メールアドレスの略しだよね。
スマホ持ってないー。

「すみません。スマホ持ってなくて。写真は、いいですよ!」

「スマホ持ってないんですね。それくらい明スイに打ち込んでて。素敵〜!では、写真お願いしま〜す!」

う〜!
夢だ〜!

131:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:36

11.今日は忙しい
「では、お願いしま〜す」

ひかりさんが写真を撮ると、キャーッっと言いながらスマホをしまう。
これで、良かったかな。

「ありがとうございましたぁ!」

そう言って、ひかりさんは走っていってしまった。
何か、気持ちいい。
芸能人って、こんな気分なんだ〜。
…って、明確ゼミ行かないと!
めちゃくちゃ走って、何とか15分前には着いた。

「ねえ、真美ちゃんだ〜!」

「写真撮る〜!」

「真美ちゃん、こっち向いて〜!」

本当にファンクラブ出来てるのかも!
マジで!?
こっち向いてって言ってくれた子の方を見ると、写真を連続で撮っている。
確か、レンシャってやつ。

「ありがとうございます。通してくれますか?放課後、用事を済ませたらでいいでしょうか?」

「は〜い、いいで〜す!」

この感覚、めっちゃ夢だわ!
どうして言うこと聞いてくれるの!?
みんな通してくれるし。
教室に入っても、いつもぼっちだったのにみんなが寄ってくるし。
わたしが夢見てる暮らしはこれだ!

「真美ちゃんって呼んでいいですか?筆箱にサインしてください!」

「真美さん、全国テスト頑張りましょうね〜!」

「また今度空いてますか?」

そんなにわたしのファンがいてくれてるなんて!
マフィンたくさん持ってきたら良かったよ、本当に。
明日、もっと作って持ってこよ!

「後で受け答えします。みんなで全国テスト頑張りましょう!」

そう言うと、教室中が活気づいた。
よ〜し、国語、数字、理科、地理、歴史、英語。
頑張るぞー!


お、終わった〜!
と同時に、教室の子達が集まってきた。

「筆箱にサインお願いします!」

「依頼してもいいですか?」

「また今度出かけませんかー?」

よーし!
受け答えるぞ!

「サインの筆箱どれですか?出してください。依頼お待ちしてます!いつですか?空いてたら出かけましょう」

飛び交う言葉。
わたしのために。

「この筆箱です〜!」

「はい、サインです、どうぞ」

よし、一人目終わり!
ネクスト!
次は、空いてるか空いてないか?

「明日どうですか?」

「明日は予定あります。明後日はどうでしょう?」

「はい!ぜひ!」

明後日、この人と出かける。
忘れないようにしないと。

「すみません。今から予定あるので、これで終わりにします。失礼します」

今日は忙しい!
マフィン作り、ひかりさんの受け答え、ファンの子達の受け答え、全国テスト、ファンの子達の受け答え、明スイ、ファンの子達の受け答え。
ネクスト、明スイ!

132:絵菜◆8Q:2017/05/28(日) 21:52

12.良かった
初めてカフェに行くので、今は軽い足取りで行く。
真ん中辺りの席にいたんだけど、ファンの子達がいっぱい!

「真美ちゃんも来た〜!」

「明スイ揃ったらカッコいい〜!」

超目立ってるじゃん。
わたしって、目立つの苦手なのに。
こんなに受け答え可能なんて。

「ちょっといいかな?俺たち、集まる時間もできないから、今はいいかな?この用事が済んだらでいい?」

隅木田くんが言うと、ファンの子は笑顔で去っていった。
受け答え、長くなりそう。

「ファンクラブ出来ててビックリだ。本当に」

坂宮がつぶやき、明スイメンバーは軽くうなずく。
尾崎姉妹は、笑いながらうなずく。

「あ、桃乃さん、桃音さん、どうぞ。マフィン作ってきました。坂宮と隅木田くんと矢本くんも」

みんなにマフィンを配る。
顔色をうかがいながら。
尾崎姉妹は、にっこにこ。
坂宮と隅木田くんも。
矢本くんは、無表情で受けとる。

「ありがとうございます!」

「サンキュー、真美」

「ありがとね、真美ちゃん」

良かった、うまく渡せて。
すると、尾崎姉妹が切り出す。

「今日は、パーティーのお礼をしたいと思ってきました!」

何だろう、楽しみっ!

133:絵菜◆8Q:2017/05/29(月) 20:52

13.矢本くんの笑顔
「パーティーを企画してくださった明スイの方々ですが、手紙を書きましたので、どうぞ」

桃乃さんが言い、手紙を4人全員に配ってくれた。
それに、2枚も。
今日だけで、3枚ももらってる。

「あと、真美ちゃんが配ってて、わたし達の何か、ちっこいのですけど、クッキーを焼いてきました。どうぞ」

クッキー!
明スイで作るクッキー以外、食べるの久しぶりだな〜。
いっつも、試食品だし。

「今、食べてください。感想聞きたいので」

目の前で食べられるんだ〜!
嬉しい。

「ん〜。美味しいです。クッキーの甘みが口の中いっぱいに広がって、後味が残るときも、甘みが残ってて素晴らしいです!」

わたしが、ヒマを真似してグルメリポートのように食リポをしてみる。
すると、尾崎姉妹、坂宮、隅木田くんは笑ってくれたけど、矢本くんも笑ってくれたのだ。
明スイの楽しさ、思い出したかな?
まだ、思い出せてないかな?

「ファンの子が待ってるので、わたし達はこれくらいでいいですよ」

あ、いいんだ。
尾崎姉妹って、控えめな印象なかったけど、しっかり周りが見れるいい子達かもしれない。

「今日はありがとね。僕、これを通してこの4人で明スイ頑張ろうって思えたよ。ねえ、みんな」

わたしは、にっこり笑って大きくうなずいた。
でも、矢本くんの反応が気になったんだ。
矢本くんに視線を流すと、矢本くんまでもが笑ってうなずいていた。
明スイ、続けてくれるかな。

「じゃあ、これで失礼」

坂宮が気取って言い、みんなでカフェをあとにした。
矢本くんに話しかけたい。
明スイをどうしていきたいのか知りたいから。
なのに…。
話しかけられない。
この空気を読み、隅木田くんが矢本くんに話しかけた。

「手紙サンキュー、矢本。でも、本当に引っ越すのか?」

「…」

矢本くんは、答えない。
沈黙が広がり、この場に居づらい。

「矢本は、明スイを抜けたいのか」

「いや。引っ越すのも、今日ので心、撃たれたから」

やっぱり、尾崎姉妹の企画、嬉しかったんだね。
それで心を撃たれ、明スイを続ける気になったかな。

「明スイメンバー来た〜!」

ん、いいとこなのにー!
でも、ファンサービスって感じで。
ってわたし、めっちゃ気取ってる!

134:絵菜◆8Q:2017/06/10(土) 13:44

14.わたしのまま
「真美ちゃん、こっちこっち!」

さっきのファンの子達だ。
カフェに来てた。

「真美ちゃ〜ん!さっき約束しましたよね〜?来てくださ〜い!」

「わたしたちも約束しましたよ!」

ファン同士の喧嘩!?
わたしが止められたら…。
隅木田くんをチラッっと見ると、うなずいている。
強そうな瞳で。
よし、わたしが!

「あ、…」

い、言えない。
せっかくファンができたのに、嫌われたらって考えて。
どうしよう。

「真美ちゃん困ってるよ。ファンの子達、やめてあげて」

矢本くん…。
ありがとう、ございます。
ヒマ。
ヒマのお兄ちゃん優しいね。
ひとりっこ…お姉ちゃんになるわたしには、この気持ちまだ分からない。
でも、きっと分かるようになるよね。

「ごめんなさい。真美ちゃん」

ファンの子達、謝ってる。
本当にいい子だね。
…って!
ファンサービス慣れてないから、めんどくさいとしか思えんっ!


ため息をついてドアを開ける。
家の匂いが落ち着かせてくれる。
はぁ〜。

「真美ちゃんおかえり。インターネット開いてたら、真美ちゃんの写真とかコメントがいっぱい。どうして?明スイで?」

「そうなの。だから、明確ゼミでも、前が見てないくらい大勢のファンの子が…」

下を向きながら言うと、おばあちゃんはクスッっと笑った。

「今までの真美ちゃんが好きなのよ。ファンの子は。だから、真美ちゃんは真美ちゃんのままでいないと」

わたしは、わたしのまま?
それって、いつものわたしでいるってことだよね。
…こういうことかな?
いつものわたしのファンだから、何かを変えず、いつものわたしでいる。
ってことは、矢本くんのファンも、抜けることはもちろん。
笑っていたらそれでいいんじゃないのかな。

135:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 09:24

15.忘れ物?
バスタオルを肩に、部屋で久しぶりに漫画を読んでいる。
最近は、明スイの活動がないけど、時々集合をかけてくれる隅木田くんだけど…。
ちょっと辛いの、かな。

「真美、電話だ。隅木田くんからだ。塾に忘れ物があったらしいぞ!」

忘れ物!?
え、わたし、カフェに忘れ物したのかな?
いやいや、忘れてない忘れてない。

「真美?起きてないのか?」

「あ、起きてる起きてる」

階段をかけ降りながら、パパが握っていた電話機を受け取る。
耳にあてると、隅木田くんの声が聞こえた。

「真美ちゃん、忘れ物してるよ。明スイのこと、考える暇がなかったとか?大丈夫?」

「へ?」

ど、どういうこと?
明スイのことを考える?
忘れ物?
頭の中が空っぽになって、何も考えられなくなった。

「明スイで、依頼がたくさん来た。その中に、ひとつだけやっていない依頼がある」

「聡日さんですよね?」

「アタリ。聡日さんの依頼だけ、明スイみんなで出ないことは差別だ。矢本も納得している」

確かに、差別だよね。
きっと、坂宮も納得したはずだし。

「でね、聡日さんの依頼は、変えてほしいそうだ。どうしてわたしはパーティーに出られなかったのって言われたから、もっと多くしてって」

そのことについても、差別だよね。
止めなかったわたしは、ひどい。
わたしのバカバカ、バカッ!

「明日、朝10時から夕方5時まで、聡日さんのスイーツについてを決めるんだ。だから、矢本の家に来てほしい。来れる?」

…わたし、ママのお見舞い行かなきゃいけないよね。
マフィンも冷めちゃうし。

「用事ある?用事済ませてからでも、真美ちゃんの力が必要だから、来てほしい」

「えっと、お母さんのお見舞いに行くんですけど、その後でもいいですか?お見舞いは、おばあちゃんの時間に合わせるので」

「そっか。いいよ。待ってる。じゃあね、おやすみなさい」

ピッっと音がする。
ピーッピーッピーッピーッ。


 ピーッピーッピーッピーッ
今日は早く起きようと思って、目覚まし時計をセットした。
久しぶりに聞いた。
っていうか、昨日の電話が切れたのと音が似てる!
最近夏は夏でも薄いパジャマに変えたから、そのパジャマを着ていると涼しい。
カーテンを開けると、あいにくの雨。
心も晴れない。

「お母さん、今日、菜和のお見舞いいくんですか?」

「ええ。真美ちゃんがマフィンを作ったから、あげたいと」

一階で、おばあちゃんとパパがしゃべっている。
もし、わたしが寝てたとして、(起きてるけど)わたしが起きたらどうするつもりっ!

「僕も行っていいですか?」

「もちろんです。きっと菜和も喜ぶに違いないわあ」

確かに、ママは大勢で自分のために何かしてくれると、すごく喜ぶもんな。
わたしより、やっぱりおばあちゃんの方がママのこと知ってるのかも。
そんなことを考えながら着替えると、服の間に紙が挟まっていた。

136:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 09:52

16.由来とは?
この服、本当に久しぶりだなあ。
黄色のワンピースの先に、ママアレンジの花の刺繍がある。
ポケットの中の紙を開くと、ママの字で手紙かな(?)が書いてあった。

真美ちゃんへ

ママは、真美ちゃんを産むとき、名前をたくさん考えました。
ママは、菜が付く名前って。
パパは、美が付く名前って。
おばあちゃんは、和が付く名前って。
みんなたくさん考えたのよ。
ふと思い当たった事件で、ママは数々の真実を知ることになった。
辛いことや嬉しいこと、たくさん。
それでママは、真美ちゃんにも、辛いことや嬉しいことを受け入れ、知り、優しい、いい子に育ってほしかった。
だから、『真美』にしました。
気に入らない名前って思ったこと、あるかもしれない。
でも、しっかり真実を受け止めて、自分らしく頑張ってください。

          ママ・菜和より

わたしの由来、知らなかった。
パパに、周りも見ることは大切って言われてたけど、付け足しで自分らしくって言われてきた。
わたしは、やっぱり、わたしらしく。
昨日おばあちゃんも言ってたよね。
真美ちゃんらしく生きなさいみたいなこと。
わたしのファンは、今のわたしのファンだからって。
ママ、どうしてこのワンピースに挟んだの?
どうして手紙なの?
謎が深まるなか、手紙を引き出しにしまい、一階に降りた。

「おはよう」

「おはよう、真美」

「真美ちゃんおはよう」

パパは新聞を読み。
おばあちゃんはパンを焼き。
わたしはボーッっと立ち。

「真美ちゃん、手紙、準備した?」

「うん。海の便箋に書いた。マフィンも、袋詰めしたよ。あと、パパとおばあちゃんにも、どうぞ」

袋詰めしてあるマフィンを、パパに。
そして、おばあちゃんにあげた。
反応は…?

「ありがとう。真美」

笑顔を思いっきりパパに向ける。
おばあちゃんの方を見ると、にっこり笑って、「美味しそう、ありがと」と言ってくれた。
そいえば、学校でのテスト、夏休み明けにあるよね。
わたし、塾の勉強しかしてない。
はぁ〜。
彦宮学園は、一学期のテストは、単元テストのみ。
だけど、二学期から急激にテスト量が増える。
勉強しないと。
夏休み明け彦宮テストってやつ。
順位も出るし!
ううううー!
嫌っ!

137:絵菜◆8Q:2017/06/11(日) 10:19

17.意外な繋がり
パパの車から降り、病院の自動ドアを通り、予防のシュッシュッってやるやつをする。
ママの部屋を開けると、本を読みながら寝ていた。

「マ〜マ!久しぶり!」

「あ、真美ちゃん」

わたしは、ママのベッドの側にあった椅子に座る。
おばあちゃんとパパも、同じように椅子に座った。
すると、隣のベッドで寝ていた人が言った。

「菜和さん、お見舞い?いいわねえ。何ちゃん?」

「多田本真美です」

「そうかいそうかい。わたしはねえ、夢花見すみれ。ずいぶん歳だけど、菜和さんが仲良くしてくれてるのよ」

夢花見すみれさんは、おばあちゃんくらいだろうか。
おばあちゃんのような笑みを見せ、シワを作って笑った。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
どこかで聞いたことがあるような、ないような?
夢花見さん、夢花見さん…。
あ!

「夢花見すみれさん。もしかして、夢花見京香さんの親戚ですか?」

「京ちゃん?京ちゃんの祖母だけど」

やっぱり。

「京香ちゃん、わたしと同じクラスなんですよ。仲良くしてます」

本当よ、本当。
たまにだけど、話すもん。
京香ちゃんって、いつも琴乃ちゃんといるもんな。

「京ちゃん、琴ちゃんと仲良かったらしいけどねえ。真美ちゃんとも仲良くなれたなんて。素敵」

夢花見すみれさんとも話ながら、ママとも話ながら。
そして、夢花見すみれさんが診察室に移動したら、手紙とマフィンをあげたんだ。

「まあ。ありがとう、真美ちゃん。夢花見さんと食べるわね」

と、おしゃべりして、しゃべることがなくなったから、病院を出た。
…さあ、今からは明スイだ!

「パパ、今から言う通りに行って。友達の家に行くから!」

138:絵菜◆8Q:2017/06/23(金) 22:49

18.ふたつの出来事
 ピンポーン
矢本くんの家の向こうの屋敷のドアフォンを押す。

「だからぁ!違うって言ってるだろ!どうして分からないんだ!美帆子、聞いてたか!?」

「嫌よ!あなたのことなんか聞かないわ。拓斗は、家で暮らすの!」

矢本くんの話でケンカ!?
この流れ、絶対言い争いだけど。

「美帆子のバカっ!拓斗の話を聞いてやれよ。もっといい学校行きたいって言ってんだよ、行かせてやれよ」

「残り1年くらい彦宮学園でいいじゃないの!引っ越すなんて、拓斗は絶対認めないから!」

勉強で引っ越すの?
明スイが嫌なんじゃないの?
あれ?

「真美ちゃん、いいよ。矢本の階の、キッチン来て」

あ、隅木田くんいるんだ。
わたし、遅いかも。
門を開けて、屋敷に入ろうとすると、母屋から梨歩佳さんが来た。
な、泣きながら。

「あ、真美ちゃん。あの時は、キツい言い方してごめんなさい。ちゃんと、反省したの。本当にごめんね」

「い、いえいえ。あの、どうして泣いてるんですか?」

梨歩佳さんは、ちゃんと戸惑い、振っ切るように上を見上げた。
まるで、選択を試みているかのよう。

「ちょっと、梨萌佳とケンカしたの。仲良くしたかったから、ショックが募るばかりで」

梨歩佳さん、嘘ついてる。
絶対、美帆子さん(?)と男の人のことに違いない。

「美帆子!」

「いやーーー!」

え!?
すると、梨歩佳さんが立ち止まって、母屋に向かって走った。
すると、途中で振り返り、ウインクした。

「梨萌佳と男友達と美帆子がケンカしてるんだわ。ごめんなさい」

いいや。
大人だと思う。
お母さんの声に似てるもん。
こっそり着いていって、真実を突き止めてやる!

139:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 10:28

19.真実は
梨歩佳さんが行って10秒後くらいに着いていく。
ドアを開ける音がした。
正面玄関は使ってないと思うから、ここのドアかな?
梨歩佳さんが入ったと思われるドアを開けると、大理石が敷き詰められたキッチンだった。
さすが矢本くんの家!
大理石って、すごい〜!

「ママ、パパ!辞めてよ。拓斗兄の好きにしてあげればいいじゃん!」

梨歩佳さんの声だ!
や、やっぱり両親なんだね。
ヒマと香音ちゃん、梨萌佳さんもいるのかな?

「お姉ちゃん、拓斗兄呼んで来て!しっかり話し合えばいいじゃん!」

ヒマの声だ!
すると、梨歩佳さんがこっちに走ってくる。
あわわわわ。
靴は持ってるから…。
隠れるしかない!
冷蔵庫とキッチン棚の間に身を潜める。梨歩佳さんは、気付かずに出ていった。
内心焦った〜!

「わたし、出てるね。ちょっと、紅茶出してくる」

ヒマの声がして、泣いているヒマが、キッチンに来た。
確か、紅茶出してくるって言ってたよね。
冷蔵庫も、キッチン棚も、来るんじゃないのっ!

「………ひっ!誰かいるわ〜!」

ヒマ、わたしに気付いたのかなっ!
どうしよう。
とりあえず、わたしってバレてでもいいから、悲鳴を押さえるしか…!

「って、マミ!?どうしてここに?」

「梨歩佳さんと会って、すごい音がしたから、どうしたのかと思って来ちゃったの。ごめんなさい」

「まあ。とりあえず出て。紅茶出したら、屋敷の、わたしの階へ案内するから。外で待ってて」

ヒマ…ありがとう。
怒らないでくれたし、招待してくれたし。
ヒマの階は、初めてだなあ。

黙って、ヒマの階への階段を上る。
ひとつの部屋の前でヒマは止まり、ドアを開けた。

「どうぞ。ここがわたしの部屋」

「ヒマの部屋、綺麗だね!」

「そんなことないよ。…で、ママとパパのことだけど」

あ…。
聞いちゃったんだもんね。
ごめんなさいだよ。

「拓斗兄が、パパとふたりで暮らすってことを、パパがママに言ったの。そしたら、ママは嫌って言った。そりゃあそうだよね。拓斗兄、何でもできるもん」

そうだったんだ。
…って、わたし聞いていいの!?
駄目な気がしなくもない。

「まあ、忘れてね。忘れられないと言われても、わたしたちのことだから。じゃあ、もうこの話は終わり。明スイでしょ?拓斗兄の階行きなよ。じゃあ、また夏休み明けに」

その時のヒマの顔は、悲しげだった。

140:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 10:56

20.抜けたいのか
「ああ、真美ちゃん。遅かったね。どうしたの?」

「いいえ。何でもありません。聡日さんのこと、何か決まりましたか?」

トートバッグから、明スイノートを取り出す。
しっかり書き留めてきたノート。
そこの新しいページのタイトルに、聡日さんの明スイ活動と書き込む。

「聡日さんには、マフィンをあげようと思ってるんだ。真美ちゃんが作ってくれたマフィン、美味しかったから。で、これはパーティーにしなくていいって言ってたから、聡日さんの家に行って渡す。って感じ」

パーティーしないんだ。
っていうか、またマフィン作るなら、もっと美味しくできそう!
楽しみだなあ。
すると、ドアが開いて、矢本くんが帰ってきた。

「矢本、ってことで、マフィン作ってみよう。渡すのは、明明後日でいいかな?」

みんながうなずいて、マフィン作りの練習が始まった。
わたしは、矢本くんと生地を作る仕事になった。

「よろしくね、矢本くん」

「うん。多田本、悪いけどそこのボウル取ってくれる?」

「うん。はい、どうぞ」

そう言えば、ちょっと前からハニーちゃんとか、ハミーちゃん呼びなくなったんだよね。
多田本って呼ばれてるし。
どうしてだろう。

「多田本、ごめんな。明スイ抜けるなんて言って」

「いいよ。矢本くんがやめたいなら、やめてもいいよ。やりたくないのにやってても、いいスイーツは作れないから」

「そうだな」

ああ、沈黙が広がっちゃった。
ごめんなさい。
でも、矢本くん、明スイ続けたいんじゃないのかな。

141:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:11

21.言っちゃった…!
「完成したな!うまそっ!」

すると、矢本くんが作ったマフィンをひっくり返した。
どうしてっ!

「おい、矢本!」

「ごめん。俺、ちょっと行くわ」

「矢本くん!」

ぐちゃぐちゃになったマフィン。
味見もしていないのに、これでいいかなんて分からない。
完成したばっかりなのに。

「矢本の家にいたら、ここの材料を使うことになる。俺の家に来て、作ろうぜ。さ、行こ」

そうだよね。
もう一度作り直すしかないよね。
でも、坂宮の家に行くなんて楽しみ!

「じゃあ、掃除して行くか」

隅木田くんが行って、ぞうきんやモップを借りて掃除する。
あれから、矢本くんは戻ってこないし、ちっとも気配がない。
どうしてひっくり返したんだろう。

「僕が返してくる。荷物まとめてて」

隅木田くんがぞうきんとモップを持ってキッチンを出る。
すると、矢本くんがキッチンに入ってきた。

「俺、マジで明スイ抜けるわ。じゃ、また会ったら」

「矢本くん、どういうこと?」

「さようならってこと」

え?
バイバイってことでしょ。
会ったらって。
会う気ないじゃん!

「矢本くん、ふざけないでよ!マフィンひっくり返して、抜けるだなんて!そういう人がいると、迷惑なんだよ!はっきり言いなよ!」

あああ、、、。
言ってしまった…。

「もう言ったよ。もう帰れ」

「もう帰りますよ!!!坂宮、行くよ」

隅木田くんは、キッチンの隅でわたしたちを眺め、帰るときに荷物を持って一緒に出た。

142:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:22

22.報酬ゲット
 ピンポーン

「明確スイーツ研究部です。聡日さんいらっしゃいますか?」

ここは聡日さんの家。
坂宮の家の前。
大きい家で素敵。

「ありがとう。美味しそうなマフィンだ〜!後で食べるね」

報酬ゲット!
聡日さんの笑顔。
家も素敵だけど、聡日さんの笑顔も素敵っ!
聡日さんにマフィンを渡し終わると、坂宮の家でくつろぐことにした。
マンションで、和室がない洋室のみの部屋だ。

「おじゃまします」

坂宮の部屋に案内してもらい、矢本くんのことについて話し合う。

「真美、よく言ったよな。女って尊敬する」

「矢本も、グッっと来たと思う。ナイスだよ」

「いえいえ。本当に良かったんでしょうか」

ちょっと、心配。
思ったこと言っちゃったけど、矢本くん嫌味言われたようにしか聞こえてないよね。
わたしの言い方からして。

「大丈夫。…ところで、これからの明スイ活動どうする?」

「また今度、8月に夜店あるよな。明スイで出してみないか?」

坂宮が言い、隅木田くんもいいと言ってくれた。
もちろん、わたしも。
屋台出せるなんて、夢みたい。
初めての、本当の報酬だ!

「やってみるか」

うん!
矢本くんも、真実をしっかりして、受け止める。
それがわたしの由来だよね。
出来たら、帰ってきてほしいけど。
ねっ!

             (つづく)

143:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 11:29

あとがき
               絵菜

こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元モンブランの絵菜です。
ついに5巻!
ここまでこれて嬉しいです。
夏休みに入った真美ちゃん。
矢本くんに言ってしまい、いなくなってしまい、ショックを受ける。
そんな中の明スイ活動。
わたしも、ドキドキしっぱなしです!

皆さん、梅雨ですがいかがですか?
雨で、外に出られないので、ぜひ明スイを楽しんでいただけたら嬉しいと思います!
自信をなくしていた中、コメントしてくださった玲葉さん!
ありがとうございました。

昨日、期末テストが終わりました!
あまり出来なかったと思うので、また頑張っていきます!
と、ここで雑談は終わりにして。

次回の6巻は、矢本くんが帰ってくるのか、帰ってこないのか!
これは言えませんが、屋台を出しますよ!
新しい新キャラクターも出ます!
では次回会いましょう。

144:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 19:03

『ここは明確スイーツ研究部!6』

登場人物

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

145:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 19:34

1.お出掛け
暑い日射しがキツい夏の朝。
おばあちゃんが庭の花のお手入れをしていた。
花、喜んでるだろうな〜。
おばあちゃんのお手入れは優しく、気持ちいいと思う。
こんな暑い日も負けないだろう。

「今日から8月、皆さんも頑張っていきましょう。では、また明日!」

アナウンサーの七井さんが手を振り、朝のニュースが終わった。
わたし、七井アナウンサー、ファンなんだよね。
食レポも上手いし、声高いし。

わたしは、多田本真美。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
ただいま夏休み真っ只中。
夏休みは、部活があるのもある。
わたしの部活はないけど、明確スイーツ研究部っていう、スイーツを作ってプレゼントする組織はやってるよ。

七井アナウンサー、かっこいいな。
髪の毛をいつもアレンジしていて、化粧も濃すぎない。
美貌っていうのだよ。

「真美、今日は晴奈ちゃんと遊ぶんだよな。気を付けて行ってこいよ」

「うん。久しぶりにふたりで遊ぶの。いつも一緒にいるヒマは旅行中、ユリは家族でプールだって」

パパは、今日も仕事で忙しい。
ママも、妊娠中で入院してるからいないんだ。
おばあちゃんと出掛けることはあるんだけど、パパとママも一緒に行きたいけど…夏休み中は無理そうかな。

「今日は何をして遊ぶんだ?」

「今日はねぇ。ふたりで昼ごはんを作ってみるの。ハルの家で。で、一緒に隣の町のショッピングモール行くの」

「迷惑かけないようにしろよ。…ショッピングモールか。ママと赤ちゃんとパパとおばあちゃんと真美で行きたいな」

うん!
そこのショッピングモールは、他の県からも来る人がいて人気。
オソロイの物を買ったり、プリクラ撮ったりするんだ!

「じゃあ、そろそろ行ってくるね。行ってきます!」

スニーカーを履き、お気に入りのカチューシャをして、自転車に飛び乗って家を飛び出した。

146:絵菜◆8Q:2017/06/24(土) 21:16

2.オムライス作り
ハルの家まで行き、ドアフォンを押す。ハルっていうのは、緑川晴奈。
わたしの幼なじみ。
わたしがヒマーーー矢本陽茉理とケンカしたときも、味方でいてくれた。

「あ、真美ちゃん?ちょっと待ってくれる?」

わぁ、ハルのお母さんの声だ〜。
ハルのお母さんは、新聞を配達する仕事についている。
どうして知っているかと言えば、ママも昔そこで働いていたから。

「マミ!入って入って!」

ハルがドアを開けてくれて、ハルの家に入る。
久しぶりに来たな。
6年生になって来てないから…。
何ヵ月ぶりだろ。

「おじゃましま〜す」

ハルの匂いだ。
何となくだけど、花園の匂いがして、すごくいい匂いがするんだ。

「マミ、荷物そこ置いて。今日作るのは、オムライスだよね」

「うん!」

そう。
今日のメニューはオムライス。
ふんわり卵を使って、ケチャップのチャーハンに乗っかった卵…。
美味しくできるかなっ?

「じゃあ、作ってみるか」

時計を見上げると、11時を回ったところだった。
1時間あれば出来るはずだし。

「エプロンして。早く作ろ〜!」

そうだね!
オムライス早く食べて、ショッピングモールへ早く行きましょ〜!

147:絵菜◆8Q:2017/06/25(日) 08:09

3.憧れのスマホ
「真美ぃ、やってぇ。できなぁい」

ハルったら〜!
玉ねぎを刻んでいたら、ボロボロと涙で崩れたハル。
プッ!
顔がおかしくて笑っちゃった!

「ちょっとぉ!何がおかしいのよぉ」

「なんでもないなんでもない。やるから、ハルは休んでていいよ」

「ホント?ありがとう!」

ハル、本気で休む気か…。
「いいや、いいよ。わたしも何か…」って言わないのかい!
まあ、いいけどね。
ハルの家でやらせていただいてるんだもの。

「ねえ、真美。ちょっとお姉ちゃん呼んでもいい?」

「いいよ!…久しぶりだなぁ。すっごく楽しみ!」

ハルのお姉ちゃんーーー緑川愛奈ちゃん。公立の紅北中学校1年生。
紅北中学校は、わたしが小学校も中学校も受験しなかったら通うところ。
つまり、地区の中学校。
愛奈ちゃんは、受験しなかったみたいだから、紅北中学校にいるんだ。

「お姉ちゃ〜ん!」

2階へ向かって、ハルが声をかける。
すると、スマホを握った愛奈ちゃんが来た。

「愛奈ちゃん久しぶり!わぁ、スマホカッコいい〜!」

「真美ちゃん!お久しぶり〜。スマホねぇ、春休みに買ったの〜」

スマホの裏側は、デコストーンでデコしてある。
まさに、中学生女子。って感じ。
可愛いな〜。
わたしもスマホ欲しい〜。
私立彦宮学園ーーーわたしが受験した学校で、小学校、中学校、高校とあるんだ。
そこでは、スマホの利用はOK。
授業以外は学校で使ってもいいんだ。
ヒマは持ってるけど、わたし、ハル、ユリは持っていない。
だから、ヒマに憧れるんだ〜。

「真美ちゃん、バイバイ。わたし、朝練今からだから。じゃね」

「バイバ〜イ!」

スマホ、ママに頼んでみよっと。

148:絵菜◆8Q:2017/06/25(日) 08:21

4.デビュー!
「いっただっきま〜すっ!」

ハルと声を合わせて手を合わせ、オムライスへスプーンをのばす。
とろけるようなふわふわ卵。
ケチャップがよく聞いたチャーハン。

「ん〜!美味しい。卵、さすがだね!ハルのお母さん、ありがとうございました!」

「いえいえ」

ハルのお母さんは、ニコリと笑って、2階へ上がっていった。
もう、ホンットうまい!
また今度、ママに作ってあげよっと。

「マミマミ!これ美味しいねぇ!」

「うんうん!早く食べて、ショッピングモール行こっ!」

「いくいく!」

スプーンを握りしめて、オムライスにスプーンをガツガツ入れるのでした。

ふぅ。
お、大きい…。

「ここがショッピングモールかぁ。お姉ちゃんも来てたよぉ」

へぇ。
大きな入口に立ち尽くしていて、め、迷惑かもっ!

「とりあえずハル、入ろっ!」

うんうん。
そうだよそうだよ!
ハルも大きくうなずいて、『ショッピングモールin友達と』デビューした。

149:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 15:37

5.しょっちちゃん
ハルと、まずは文房具屋を見た。
ペンや鉛筆、ハサミ、キャップに消しゴムまで…。
たくさんの種類があるけど。

「マミ、あの子だよ!この前、わたしが通ってるギター教室の子!」

ハルが指差した方には、楽しそうにワイワイしている女の子達がいた。
ハルは、ギターを習っている。
ちなみに、英語も。
ハルの将来の夢が看護師だから、英語を勉強してるんだって。
ギターは、ハルのお母さんの勧めって聞いたけど。

「お〜い、しょっち!」

ハルが声をかけると、女の子達が振り向いた。
その中でも、ひときわ目立つ女の子が近寄ってきた。

「ああ〜!はるるんじゃ〜ん。となりの子と来たの?」

「うん!この子、マミってゆーの」

ハル、何となく人柄変わったっ?
女の子は、小さな紙を渡してくれた。

「ハロー!マイネームイズ、沼野…潮河ちよみ〜!よろしく!」

潮河ちよみちゃんは、名刺みたいなのを配っていたみたい。
名前、潮河ちよみデェス!。
年齢、11歳小6ダヨっ!
ヨロピクピク〜!
と書いてあった。

「初めまして。多田本真美です。ハルの幼なじみです」

ちよみちゃんは、「潮河の『し』ちよみの『ちよ』で『しょっち』って呼ばれてんの!よろね、じゃ」

しょっちちゃんは、手を振りながら友達の輪に戻っていった。

「マミ、せっかくだし、このショッピングモール限定の友情お守り買ってかない?」

「いいね。このピンクの友情お守りにしよっかな〜」

「わたしは、好きなオレンジで!じゃあ、さっさと会計済ませて遊ぼ!」

ちょっと思ってた以上に高かったけどね、わたし達の友情、そんなに安いものじゃないよ!
っていうか、買えないよっ!

150:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 17:21

6.彦宮道の夜店
結局、友情お守りに加えて、ボールペン、コンパクトな、小さなハサミも買った。

「オソロイで学校行くの楽しみだね!わたし、明日からある部活も頑張れるかも!」

ハルは、バドミントン部。
わたしは、あこちゃんとのことがあって、バドミントン部をやめた。
つまり、元バドミントン部なんだ。
今は、華道部ーーー花を活ける部活だよ!華道部は、夏休みに部活がないって理由で入ったんだけど、楽しいんだ!

「マミが活けてくれた花、キッチンに飾ってあったけど見た?」

「え、あったっけ?」

わたしが、一番始めに生けた花、スミレとバラの、タイトルは『犬と猫』。
ハルにあげたんだぁ。

「せっかく飾ったのにぃ」

「ごめぇん」

「ん、いいよいいよ!分かりにくいとこに、正式に言えば隠したんだもん」

なら、分かるわけないでしょ!?
文房具屋の前でおしゃべりしていたことに気付いて、ちょっと後ずさりしながら休憩スペースへ移動した。

「こんなに大きい声が出てると思ってなかったよっ!」

ハルが言い、一番近い休憩スペースに腰をおろす。
自動販売機でカルピスを買い、飲みながらまたおしゃべりを続ける。

「ねえねえ!再来週さ、彦宮道で夜店あるでしょ?それ、わたしとマミ、ヒマ、ユリで行かない?」

「いいね!みんなで浴衣来たらどうかな?」

「浴衣っ!いいね〜!」

彦宮道とは、わたしたちが通っている彦宮学園を囲う道のこと。
毎年1回ずつ行われるのだ。

「4人で夜店、楽しみ〜!あ、あそこに浴衣のお店あるよ!ちょっと見に行ってみよ!」

カルピスをカバンに入れて、カチューシャをし直して。
ハルと一緒に浴衣屋へ走った。

151:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 17:36

7.女の子
「真美ちゃん、ファンの子がちょっと減ったみたいだねえ。明スイ」

おばあちゃんがインターネットを開きながらつぶやいた。
ファンの子、減っちゃったんだ。
わたし、坂宮、隅木田くん、矢本くんで活動している、明確スイーツ研究部は、解散するところだった。
でも、何とか食い止めたものの、矢本くんが抜けかけている。
何とかして止めなくてはならないのに、わたしは怒ってしまった。
…反省してるんだけど。
矢本くん、インターネットでブログ書いてるらしくて、それで明スイのこと書いてるらしいんだよね。
それで、矢本くんのファンがいなくなっちゃったのかな。

「真美ちゃんのファンもいるでしょ?すごいじゃないの」

そう。
明スイメンバーのわたしも、目立ちたくないのに、気付いたら目立ってた。
ちょっと慣れてきたけど。

「真美ちゃん、そう言えば、菜和から電話があったのよ」

ママからっ?
菜和とは、ママのこと。
妊婦さんだから、入院してるんだ。

「電話かけるね」

病院に電話して、看護師さんに要件を伝えて、ママに代わってもらう。

「もしもし」

「もしもしっ!真美だよ!マフィン、夢花見すみれさん、何て言ってた?」

夢花見すみれさんーーークラスメイト、夢花見京香ちゃんの祖母。
ママとベッドが隣なんだ。
この前マフィンをあげたときも、夢花見すみれさんと食べるって言ってて。

「喜んでたわよ。でも、一昨日退院したの。クラスメイトの京香ちゃんに、おめでとうって言ってあげたら?」

そうだね。
京ちゃんこと京香ちゃんは、同じ華道部だし、部活の時に言おっと。

「何の用だったの?」

「ああ。赤ちゃんの性別が分かったのよ。女の子だった」

女の子!
じゃあ、借りては返し、借りては返しを繰り返していた男の子の名前の本は返そう。
女の子の本を中心に、また借り直してみるか。

「お母さんから聞いたわ。真美ちゃんが、赤ちゃんのこと考えてくれてるって。ありがとう」

「うんん。妹が出来るんだもの」

ママは笑って、就寝時間ということで電話を切った。

152:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 18:18

8.ばあばの喫茶店
翌日。
カーテンを開けると、久しぶりの雨だった。
バドミントン部は、中部も外部もあるから、ハル、大丈夫かなぁ?
さっと着替えて、トートバッグに、女の子、男の子の本を入れる。
そして、カッパを着て、自転車に飛び乗った。
今日だけはおばあちゃんも用事があるし、パパは仕事で帰ってこられなかったから、ひとりだった。
そのまま図書館へ向かう。
元から、トートバッグにはサイフを入れてあるため、図書館のカードはしっかり入っている。

「お願いします。あと、女の子の名前の本、もう一度借りるのでいいですか?」

係りの人のOKをいただいて、女の子の名前のコーナーへ行く。
実は昨日、ママとの電話が終わると、隅木田くんから電話がかかってきた。
今日、朝8時30分から明スイ活動とのことだった。
それまでに、図書館、朝食を済ませなければならない。
朝食は、家ではなく、パパのお母さんの方が経営している喫茶店だ。
図書館のとなりに位置するので、鍵を持っていて、母屋で喫茶で出すものをもらうのだ。
こっちのおばあちゃんは、ばあばと呼ぶの。
本をさっと選び、借り、喫茶店へ自転車を走らせた。
何となく、大雨が涙に感じて、ママのことが頭をよぎった。
赤ちゃんの性別が分かったってことはだよ?
相当大きくなったってことでしょ?
ママの体調が悪化するのが比例したらどうしよう!
母屋のドアを開けると、ばあばとじいじはいなかった。
もう仕事をしているのだろう。

「ばあば〜」

「真美ちゃんかい?」

ばあばの声が聞こえる方へ進む。
久しぶりに会ったな〜。

「ばあば!久しぶり!」

「久しぶりだねぇ。もうこんなに大きくなって。ここにトーストがあるからお食べ」

ダイニングの机に乗っているトーストは、こんがり焼けていて、マーガリンが溶けかかっている。
ん〜、美味しそう!

「いっただっきます!」

喫茶店に広がるトーストの匂いに混じって、わたしの大きな声も響いた。

153:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 18:39

9.どうするか
「じゃあね、ばあば」

ばあばの喫茶店を出て、ちょっと遠いけど、坂宮の家まで雨の中走る。
車がどんどん走っていくけど、自転車でゆっくり進んでいて、疲れる。
目の前で車が走ってるからかな。

 ピンポーン
ドアフォンを押して、坂宮の家におじゃまする。

「おじゃまします」

坂宮の家に来るのは、これで2回目。
まだ、隅木田くんは来ていないらしく、坂宮の家の客間へ通してくれた。
坂宮の家はマンションなんだけど、客間付きなんてすごいよね。
ちょっとすると隅木田くんも来て、相変わらず矢本くんは来ずに始まる。

「僕的に、彦宮道祭りにしたらと思うんだ。どう?」

彦宮道祭り…!
ハルと約束した日でもある…。
ど、どうしよう。

「で、お店の名前だけど、明確スイーツ研究部。そのままでいいと思う」

うん。
それに関してはいいと思う。
それで集まってくれるかもしれないしね。

「それから、メニューはこれから考えるとして。彦宮道祭り、店名に意見等ある人」

わたしは、手を挙げざるを得なかったんだ。
だって、先に約束したのはハルだし、彦宮道祭りって聞いてなかったし。
隅木田くんに指名されて、立つ。

「彦宮道祭りは、幼なじみの緑川晴奈って子、矢本くんの妹の、矢本陽茉理って子、その子と一緒にいた、利等万由里歌って子と、夜店に行かないかって話してて」

先に明スイで屋台出すって決めてたのに、怒られるに決まってる。
勝手に決めつけてたけど、ふたりとも怒らずにいいよって言ってくれた。
う、嬉しい。
こんなことになるとは、思ってなかったから。

「そこの屋台が無理だと、隣町の屋台しかないかな。でも、遠いんだよな。どうする?屋台出す?」

「すみません。わたしのせいでこんなことになってしまって」

隅木田くんは、首を横に振り、また対策案を考えてくれている。
わたしも考えないと。

「出すのは決まりだよ。絶対出すぞ」

坂宮、意志強い、偉いっ!
でも…どうすればいいの〜?

154:絵菜◆8Q:2017/07/01(土) 19:12

10.一緒に
「…ああああ!!」

これだ、これだ〜!
やっと見つけたぞ〜!
解決案、わたしが見つけたぁ!

「どうしたの?真美ちゃん」

「思い付きました。これですよ!わたしと行く、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんも一緒に屋台出すのはどうですか?」

隅木田くんと坂宮は、はあっ!っと、喜んだ顔をしたけど、またがっかりしな顔になった。
え?
どうして?
何か、不備でもあるかな?

「真美ちゃん、迷惑かかっちゃうし。無理だよ」

「いいえ。晴奈ちゃんは、料理が好きですし、陽茉理ちゃんは、食レポが上手いんですよ!味見なら持ってこいですから。由里歌ちゃんは、ずっと料理部入ってたんですよ?いいじゃないですか!」

ちょっと語尾を強調して言う。
すると、坂宮の目には活気が戻ってきたんだ。

「真美、ナイスアイデア!」

隅木田くんも賛成らしく、拍手してくれた。
わぁ〜、良かった〜!
でも、問題はこの先。
ハル達がOKしてくれるかどうか。というところ。
OKしてくれなかったら無意味だし。
でも…隅木田くんの言う通り迷惑だったら…。
いやいや、きっといいって言ってくれる…かな。
お願いします、いいって言って…ください!

155:まい◆8Q:2017/07/01(土) 20:28

絵菜→まいに変えました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.メニューとは
そのあと、一緒にハル、ヒマ、ユリに電話をかけて聞いていった。
たまたま、ヒマの電話番号を明スイメンバーであるわたしたちが知っていて、そこでユリの電話番号を聞いたと言うわけ。

「そう。うん、ん。ありがとう、じゃあ、夏休み明けね、うん」

最後の、ユリとの電話を切る。
最高の会話だったよ!
ユリ、テニスの試合で優勝したんだってね!
すっご〜い!
さっすがユリ!

「で、利等万さんどう?」

「OKでしたっ!」

満面の笑みで言うと、ふたりともすごく喜んでくれた。
良かった〜!
ハルの意見で、わたしを含めて女の子4人は、浴衣を着てやることになったんだ。
それには賛成してくれたわけで。
楽しくなりそうだな〜。

「じゃあ、メニュー決めよっか。僕の意見は、怪盗日本が来たときの合わせたのみたいにすること」

あああ。
怪盗日本ーーー怪盗日本(ジャパン)は、彦宮学園の名物の時計だ。
彦宮時計と言う。
これの時、避難してたんだけど、どうしようもなく騒がしくて。
どうにかして食べ物の補給ということで、明スイメンバーで作ったんだ。
マドレーヌとムースを合わせてマドレムースにしたりとか。
美味しかったな、あれ。
今回は、シュークリームとカップケーキを合わせてシューカップみたいなの作ってみたいなぁ。

「どう?」

「い、いいと思います!」

手を挙げながら言い、坂宮の方を見ると、坂宮もニヤッっと笑ってOKサインを出す。
よ〜し!
この前より進化した美味しいスイーツ作るんだから!
絶対売り切れまで持ち込むぞ!
坂宮は、ノートを取り出して、ペンに『彦宮道祭り』と書く。
隅木田くんに回して、____+____=_______と書いていた。
シュークリーム+カップケーキ=シューカップ!
あ!
わたしが作ったマフィン、これはそのままで売りたいな〜!
いや。
売るんじゃなくて、買ってくれたらおまけにしよう。
我ながらいいアイデアだ!
挙手して当てられると、シューカップの話、マフィンの話をして、にっこり笑ってうなずいた。

156:まい◆8Q:2017/07/01(土) 20:41

12.虹を探して
トートバッグの中に、ちょっと濡れてるカッパの袋、寄り道して100円ショップで買ったノート。
そして、女の子の名前の本がたくさん入っている。
虹が綺麗。
小さい時に考えたっけ。
そいえば、こんなことあったような、ないような…。

ママが虹を作ってくれる。
シャワーから虹が出てる〜!
幼なじみであるはるなちゃんと虹を見て喜んだ。
すると、本物の虹が空高くを架かっているのが見えた。

「まぁみちゃん。虹、追いかけよぉ」

「いいよ、はるなちゃん!虹の上に上ってダンス踊ろう!」

そう言って、ママが車で運転してくれて虹を追いかけた。
でも、先が分からなかった。って。

あのとき、どうして虹を探したんだろう。
…産まれてくる赤ちゃんに、虹を探そうとしてたら聞いてみよ!
きっと、同じこと考える…はず!

自転車を停めて、カッパも干して、家のドアを開ける。
まだ誰もいない。
鍵を内からかけて、部屋へ入る。
わたし、何か大きな忘れ物してる気がするんだよね。
普通に、夏休みを満喫中。
満喫中ーーー遊び中ーーー遊びーーー。
。。。、、、…。。。…!!!

「ぎょえーーーーーーーーーー!」

き、近所迷惑だっ!
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイッ!
何となく、明スイのことが頭にいっぱいでぇ!

「宿題やるの忘れてた〜!」

157:まい◆8Q:2017/07/02(日) 09:21

13.名付け親
プリント終わりっ!
ふ〜!
算数って、やっぱり時間かかるぅ〜!
ヒマが羨ましいな、本当。

「ただいま〜」

あっ、おばあちゃんだ!
再来週の彦宮道祭りのこと、話さないと。
一階へ降りると、おばあちゃんのとなりにママもいた。

「えええっ?ママっ!?」

ママはにっこり笑って、わたしを抱きしめてくれた。
もちろん、優しく。
いつもよりも。
赤ちゃんがつぶれちゃうものね。

「久しぶりかしら。真美ちゃん、いつも赤ちゃんのこと考えてくれてありがとう」

「うんん。名前のことくらいしか考えてないけど」

ママはクスクス笑って、おばあちゃんと、わたしと。
リビングに入って、ゆっくり話すことにした。

「赤ちゃんの名付け親は、真美ちゃんかしらねえ」

この子の名付け親がっ!
わたしになるの?

「菜和、里尾家の伝統を守りなさい。真美ちゃん、里尾家はね、名前を書いた紙を草舟に乗せて、一番速くゴールに着いた名前に決まるのよ。真美ちゃんが子供を産むときも守ってね。これを続けていくのよ。その家族、祖母祖父が参加するの」

へえ。
ってことは、わたしもぉっ!
おばあちゃんの方を向くと、にっこり笑ってうなずいた。
わたしの名前が採用されるかもっ?

「わたしは、七海ちゃんだよ」

おばあちゃんが言う。
七海ちゃんかあ。
かわいい名前だなあ。
由来は、誰にでも優しく、広い心を持ってほしいから。だそうだ。

「ママは、特に決めてないわ」

ふうん。
わたしもぉ、決めてないけど。
かわいい名前がぁ、いいかなぁ。

158:まい◆8Q:2017/07/02(日) 09:50

14.みんなで作ってみる
「初めましてかな。僕は隅木田優斗。よろしくね」

「俺は知ってるだろ」

何よ、坂宮。
改めて自己紹介したらいいのに。
今日は、屋台に出すものを作ってみるんだ。
ハル、ヒマ、ユリも一緒に。

「初めまして。わたしは緑川晴奈っていいます。よろしくお願いします」

「こんにちは。お兄ちゃんがお世話になってたと思います。矢本陽茉理です。よろしくお願いします」

「初めまして、こんにちは。利等万由里歌です」

みんなが自己紹介し終わり、みんながみんなの名前を覚えると、役割分担をすることになった。

「まず、味が重要なシューカップは、僕と矢本さんね」

ああ、食レポのヒマか。
で、次は何?

「カップケーキを、おまけで作るのは、真美ちゃんひとりで。この間作ったのをアレンジしてみて」

はい!
ひとりで作るのは寂しいけど、みんながいるし…いいよねっ!
あとの、ハル、ユリ、坂宮は?

「で、利等万さんは、一番難しいクレースをお願い」

クレース?
後から隅木田くんに聞いてみた結果、クレース=クレープ+ムースだそうだ。そこに補助で、わたしが入ると。
そういうことね。

「で、緑川さんと坂宮で、チュロス。作ってみて」

まだまだ、これでメニューは全部じゃない。
ここは、ヒマの家。
広いキッチンーーーヒマの階を使わせていただいている。

「じゃあ開始っ!」

隅木田くんの号令で、みんなが手を動かし始める。
今日は、8時集合にしたんだけど、終わる予定は6時。
遅い…。

「ユリ、頑張って作るよ!」

「うん!クレープの生地は、部活で習ったから、アレンジ方法とか考えたり作ったりしてて。助けがいるなら、わたし手伝うから!」

ありがとう!
そういう目でうなずき、アレンジ方法を考える。
ハルと坂宮も、仲良くヒマのスマホを見ながらチュロスの作り方を調べている。
よーし!
作ってみるぞ!

159:まい◆8Q:2017/07/02(日) 10:15

15.妙な気持ち
よーし!
この前マフィンを作ったときは、そのままで作った。
でも今回は、板チョコを小さくして、それをそのまま焼く。
ちょっと溶けて、そこをデコレーションチョコレートで可愛くしたら!
きっと人気になる…かな!

「陽茉理ちゃん、ナイス!これでいこうか」

隅木田くんの声が聞こえた。
さっきまで矢本さんって呼んでたのに、陽茉理ちゃんって呼ばれてた。
…何、わたし!
何て呼ぼうが関係ないでしょ!?
うんうん。
そうよそうよ。

「どうしたの真美。ヒマの方ばっかり見て。どうかした?」

ユリ、するどい!
ちょっと見てただけなのにぃ。
ユリは、ニヤッっと笑う。
って!
恋愛とかって想像してるでしょ!
違う違う、全然違うーっ!
もーう!
ユリったらーっ!
ちょっと笑みを混ぜてユリをにらむと、ユリは凶悪の苦笑いをしていた。

「よし!」

そう言って、一応この前作ったのと同じように作っていく。
あ、生地は、ストロベリー味も準備したんだ!
チョコレート味も!
この3種類を作る予定だよっ!

「晴奈、スマホ取って」

坂宮はハルのこと呼び捨てかあ。
別に、坂宮は何とも思わないけど。
名前でハルが呼ばれてても、ふうん。そうですか。って感じ。
これって、何っ?

160:まい◆8Q:2017/07/02(日) 10:30

16.エスカレートする気持ち
「ユリ、ちょっといい?」

ストロベリーの生地、チョコレートの生地が同時に出来たので、ユリに手伝ってもらう。
ヒマのキッチンに、この前とは違うマフィンの匂いが香りたつ。

「いい匂い。さすが真美ちゃん」

「い、いえいえ」

隅木田くんが言ってくれると、何となくポッっと顔が赤くなった?
ちょっと、今のどういうこと?

「マミ、体調悪い?顔が赤いよ」

ユリっ!
お願い、ウソって言って〜!
「いえいえ、大丈夫です」って、言えないんだけどーっ!

「真美ちゃん大丈夫?陽茉理ちゃん、どこか、休めるところある?」

「はい。わたしのお部屋で良ければ」

うわーっ!
わたしが体調悪いってことで話しちゃってるーっ!
違うって言わなきゃなのに言えないよーっ!
どうしてどうして!

「僕が付き添うよ。陽茉理ちゃんは、シュークリームが焼けるのを待ってていいから。真美ちゃん、行こ」

「隅木田さん。わたしが付き添いますから。わたしのお部屋、やっぱりわたしがいないのに入るのは…」

「そうだね」

隅木田さん呼び!?
先輩じゃない〜!?
わたし、どうかしちゃってるよ!

「ヒマ、わたし、大丈夫〜!」

「いやいや、休んで」

「いいいいいいい、いいですぅ!」

あああーっっっ!
もう、どういうことなのっ?

161:まい◆8Q:2017/07/02(日) 19:58

17.恋っ!?
ヒマは、ちょっとため息をついて、隅木田くんと一緒にまた作り始めた。
羨ましいよ〜!
やっぱりわたし、変?
どうしてそんなこと思うの?
え〜?
どうしてなの〜?

「マミ、ちょっと」

ユリに呼ばれて、キッチンの隅に移動する。
何となくだけど、ユリはニマリと笑っている。
ちょっと、何か仕組んだ!?

「マミさぁ、隅木田先輩のこと好きなの?やっぱり」

「はぁぁん!?」

ヤバイ、大きな声出ちゃった!
あわてて口を押さえて、ユリの方を向き直す。
だって、どうして、何でっ?

「すっごく、隅木田先輩の方見てるから。それに、恥ずかしそうに顔を赤らめて」

「…えええ!?」

「わたし、応援してるからっ!」

ちょっ、ユリっ!
わたしはねえ、隅木田くんが好きじゃないの!
…いやいや、好きだよ。
友達とし、て…ね?
…。
本当にそうだよ、ね?

「真美ちゃん、ちょっとそこにあるノート取ってくれる?」

隅木田くんのことを考えていると、隅木田くんが話しかけてきて驚いた。
ノ、ノート持ってきてってっ?

「はい、今行きます」

隅木田くんのノートには、『明スイノート 隅木田優斗』と書いてある。
ちょっと触っただけなのに、幸せ。
何となく嬉しい。

「マミ、ファイト!」

そうだね!
もしかしたら、恋か、、、な!

「うん!」

隅木田くんのノートを手に、隅木田くんのところへ行く。
ちょっとずつ、隅木田くんに近づいていってるっ!
鼓動がぁっ!
 ドクドクドクドクドクドク!

「はいぃぃ!ど、どおぞぉぉぅっ!」

「ありがとう、真美ちゃん」

隅木田くんがにっこり笑うと、わたしの心にハートの矢が刺さった。

162:まい◆8Q:2017/07/02(日) 20:38

18.ヒマもっ?
「じゃあ、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんありがとう。さようなら」

みんな、名前でちゃん付けっ!
ちょっとヤキモチかな。

「あ、由里歌ちゃん、ひとりでクレープ、どうもありがとう」

「いえいえ。気を付けてお帰りください」

そう。
わたしたちは、残って女子会しながら夜ご飯をいただく。
そして、ヒマの家の車で帰らせていただくというシステム。

「隅木田くんっ!坂宮、バイバイ!」

わたしが思いきって言ってみると、隅木田くんは笑って手を振ってくれた。
ん〜!
カッコいい〜!
勉強も出来て、かっこよくて、優しくて紳士っ!
完璧じゃないの!
ふたりが帰ると、キッチンを片付け、掃除し、となりのヒマの部屋での女子会だ。

「さあ!ハル、マミ、ユリ!恋バナしよう!恋バナ恋バナっ!」

す、隅木田くんのこと話さなきゃいけないのかなっ?
いやいやいやいや、いやです〜!

「まずは、ハルの好きな人から!」

ヒマの司会で、みんなの視線がハルへ集まる。
ハルは、戸惑いつつも、前かがみにして、小さな声で言った。

「ふ、じ、も、と、せ、ん、せ、い」

ふ、藤本先生〜!
それは、学年主任の40代の先生。
ま、まあ、優しいし、か、カッコいいのかなあ?

「何かさぁ、笑顔がかわいくってさ、英語習ってるから、英語どんどん発言出来るでしょ?当てるときがかっこいくって!」

ハル、乙女だぁ。
わたしは、隅木田くんの時も乙女にならないと思うけど、ハルが乙女になるときは見たことない。

「じゃあヒマは誰なのよっ!」

「えへへ、わたしはねえ…。隅木田さん!」

ええ…!
隅木田くんなのっ!?

163:まい◆8Q:2017/07/02(日) 20:54

19.ユリは
「さっきぃ、優しく教えてくれたし、一目惚れしちゃったぁ。でも、彼女がいるんだって」

か、彼女いるの!?
聞いたことなかった!

「ちょっと残念だったけど、あきらめずに隅木田さんを好きでいるよ!」

ヒマも、恋したんだ。
わたしは、今日恋って気付いたのに。
ヒマは素早いな〜。

「マミは誰なの?」

ヒマに聞かれて、一瞬戸惑った。
この環境で、いないなんて言えない。
でも、隅木田くんとも言えない。

「マミ〜?聞いてるぅ?」

「き、聞いてるよ、聞いてるよ!」

「隅木田先輩」

えっ?
ユリ、今言った?
ちょっと、本当に言ったの?

「マミの好きな人は、隅木田先輩。ヒマと一緒だよ」

「ユリ…、どうして言ったの…!」

ちょっと声が震えながら聞いてみる。
すると、ユリはサラッっと言う。

「聞かれてたから、質問に代わりに答えてあげたの。そうでしょ?」

…。
ヒマは、黙ってジッっとしている。
ハルとわたしは、冷や汗を流しながらユリを見る。

「で、隅木田先輩が好きなんだって」

うん…。
そうだけどね。
ユリって、こんなにはっきり言う子だったっけ?
まあ…いいや。

「そういうユリの…好きな人は…誰…なの…?」

「被ってごめんなさい。隅木田先輩。わたしが…隅木田先輩の彼女」

はあっ?

164:まい◆8Q:2017/07/02(日) 21:21

20.失恋か
ハル以外が、隅木田先輩なの?
そんな…!
それに、ユリは彼女だなんて。
ずっとお芝居してたのかな?
会ったときとか。
…はぁ。

「わたし、失恋。もうあきらめよっ!ユリを応援するよ」

ヒマっ!
あきらめるのっ?
可愛くて、優しくて、おっとりしていて、控えめなユリこと利等万由里歌。
はっきりしているところもあって、一途で、秀才なヒマこと矢本陽茉理。
それに、国語が得意で、明スイに入っている普通なマミこと多田本真美。
隅木田くんは、わたしのことは選ばないから、失恋かな。
恋って分かった瞬間に。

「もう…恋バナやめよう。うーん?そうだ!中学校の話は?」

気の利くハルは、話を変えてくれた。
すると、ユリもヒマもわたしも!
顔が急に変わった。

「わたし、彦宮に残ることにしたの」

ユリが言い、ヒマも口を開ける。
良かった。
ちょっとは雰囲気が和らいだ。

「わたし、私立慶美音学園希望。双子の香音とふたりで行こって約束しているから」

ヒマ、私立慶美音学園なんだ!
彦宮学園は、そこそこ偏差値は高いし、ヒマは秀才だからだから行けるだろう。
わたしは…無理かも…。

「わたしは、彦宮に残ることにした」

ハルも残るんだ。
はぁ〜。
ママたちと…相談するか。

165:まい◆8Q:2017/07/02(日) 21:48

訂正
ハルが恋している藤本先生→副学年主任でした。すみません。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
21.ふたつの中学校
その夜、おばあちゃんにこの前話せなかった夜店のこと。
中学校のことを話した。

「そうだねえ。菜和にも相談してみるといいよ。でも、おばあちゃんも考えないとねえ」

うーん。
夜店のことはともかくとして、中学校だよねー。
中学校を決めるのは、10月の初めだからねぇ。
もう決まってる子、いるし。

「夜店は、いいよ。頑張っておいで。中学校のことは、おばあちゃんよく分からないけど、彦宮学園に残ってもいいし、受験し直してもいいし。そのことは、真美ちゃんがどうしたいか。じゃないの?」

わたしがどうしたいか?
別にどうしても…。
そろそろ、それくらいのことはわたしだけでも決められるようにならないとだよね。
頼ってばかりはよくない。
受験するかしないかくらいは、決めないとだよね。
彦宮に残るか、他へ行くか。

「お金かかるかもだけど、受験したいかな」

「うん。そう言うのが大事よ。もしかしたらだけど…パンフレットってこれかしら?」

それは、担任の先生にもらったパンフレットだった。
おばあちゃん、どうして!?

「菜和のクローゼットを整理してたら見つけたんだよ」

パンフレットを開いて、偏差値、学校の制服、部活、費用を見る。
偏差値は、今のよりちょっと上を見ていく。
最後まで見て引っ掛かるのは、ふたつある。
ひとつ目は、私立青山野学園。
偏差値はまあまあ、制服が可愛くて、華道部もある。
費用はそこそこ高いかな。
ふたつ目は、私立降羽田女学院。
女子高で、偏差値、制服は完璧!
交通費がちょっと…。
それで、部活はまあまあ。
費用も同じようにかかりまくるっ!

「何々?私立青山野学園、私立降羽田女学院ねえ。どちらでもいいと思うわ。菜和に相談してみたら?」

うん!
このどちらかにしようかな!

166:まい◆8Q:2017/07/03(月) 16:45

22.青山野に決まり!
「今日は夜店の日ねぇ。おばあちゃんも、行きたいけどねえ」

おばあちゃんは、ひとりで夜店に行きにくいそうだ。
おじいちゃんが亡くなったから、ふたりでも行けないし。
実家の方に友達はいるけれど、ここから遠いし。
若い子ばかりで行きにくいって。
ママは、症状が悪化しちゃったみたいだし、パパも出張でイタリアへ…。

「菜和に電話して、中学校のこと相談してごらん。きっといいこと言ってくれるから」

おばあちゃんが言うと、ほぼ同時に電話機がなる。
 プルルルルプルルルル
おばあちゃんが手に取ると、ピッっと音を鳴らした。
ちょっと話してから、電話機はわたしの手の中へ!?

「菜和からよ」

マ、ママから電話!?
あわてて電話機を持ち直して、耳に当てる。
何も聞こえない。
…。
すると、何かを落とした音が聞こえたんだ。

「ママっ?」

「はぁい。今、ちょっと、ガラスのコップを落としてしまったの」

「そう…」

ちょっとの間、看護師さん(?)とのやりとりがかすかに聞こえ、ママの声がそのまま耳に入ってきた。

「ごめんなさいね。お母さんから、真美ちゃんが中学校のことを考えてるって電話が来て…」

おばあちゃん…。
そんなことしてくれたのね。
嬉しいよっ!
どうもありがとうっ!

「それで、私立を受験したいらしいわね。ママ、応援するから、自信持って受けなさい。ただし!軽い気持ちで受けないように」

うん。
それは承知ですっ!
本気で受けて、本気で取り組んで、行きたいんだっ!

「明確ゼミも、クラスを増やすこと。いいわね?」

「もちろん」

「ん。私立青山野学園と、私立降羽田女学院ね。ママのおすすめは、青山野よ。男の子と接する機会が減ると、後々大変なことになるんだから」

へ〜、そうなんだ。
やっぱり、ママに相談してよかった!よーし!
青山野に決定だぁ〜!

「私立青山野学園に受験してもいいですか!」

「頑張りなさい。明確ゼミは、月曜日と金曜日と土曜日だけだけど、火曜日と水曜日プラスコース、木曜日と日曜日プラスコースのどちらかを選びなさい。どちらにするの?」

「火曜日と水曜日プラスコース」

「うん。明確ゼミに連絡しておくわ。じゃあ、診察あるから。ありがとね。バイバイ」

うん、バイバイ!
電話が切れると、なぜかやる気で満ち溢れてきた。
わたしなら出来る。
青山野に受かる!
そういう勢いで、部屋へと階段をかけ上がった。

167:まい◆8Q:2017/07/03(月) 16:56

23.夜店を楽しもう!
「由里歌ちゃん、クレープ急いで!」

「真美、会計頼む!」

「ハル、そこのチョコレートソース取って!」

「ヒマ、悪いけどカップケーキ渡してくれる?」

隅木田くんとユリが書いてくれた、一際目立つ屋台。
彦宮道は、いつもよりにぎやか。
わたしの浴衣は、花火。
ハルは、金魚。
ヒマは、ハートマーク。
ユリは、スイカ。
みんなの浴衣もかわいい!

「はいはい、これこれ!」

「ありがとうございます!隅木田先輩!またのご来店、お待ちしておりますのでっ!」

ユリ、気合い入ってる〜!
ハルも、さっき藤本先生を見つけて、目がハートになってるし。
お客様は、予想通り行列。
お金は100000くらいはたまってる。
すっごーい!

「女の子たち、休憩してきていいよ!お買い物楽しんできて」

隅木田くんが言って、わたし、ヒマ、ハル、ユリの順番で屋台を出る。

「もう、4人では無理かもだし、目一杯遊んでくよぉっ!」

ハルが言って、一番隅からぜ〜んぶ見ていった。
かき氷でひんやり!
うーん、冷たい〜!
金魚すくいで1匹ゲット!
おばあちゃんと飼おっと〜!
隅木田くんと坂宮におみやげで焼きそばを!
買って、戻ったり、行ったり。
40分くらい歩いて、また隅木田くんたちとバトンタッチ!
さ〜あ、どんどんやってくよ!
笑顔とお金の報酬に、明スイに参加してくれたハルたちとも、みんなで目を見合わせて笑った。

             (つづく)

168:まい◆8Q:2017/07/03(月) 17:07

あとがき
               まい

こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元絵菜、まいです!
今回の6巻、いかがでしたか?
ちょっと、ドキドキシーン多かったではないですか?
作者でありながらも、恋愛が混じってきて面白いですね!
皆さん夜店は始まってますか?
わたしの地域は始まってますよ!
友達と行けるかなあ?
皆さんも、夜店のことなど、明スイに関連することありましたら送ってくださいね!
早目に送信させていただきます!

わたしは、最近恋が発展していてニヤケが止まらない日々です。
皆さんは恋してますか?
この作品を見て分かった方もいらっしゃるかもしれません。
気付いたら恋をしていることに。
意識してると、していないけど、ふとした瞬間、心が好きオーラ出してますよ(きっと)!
恋についても、ぜひぜひ送ってくださいな!

次回の7巻の予告です!
やっと新キャラが出ます。
矢本くんは、引っ越してないけど、本当の決断とは一体!?
あと、矢本くんの隣にいるのは誰なのよ、あれっ!
次回は、彦宮体育祭で波乱の予感!
では、次回会いましょう!


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