誰かを救うためには誰かが犠牲にならなければいけない―――
感想◎ 荒らし× なりすまし×
「……」
「どうしたんですか?早くしないと見失ってしまいます…!」
動こうとしないキョウを私は急かした。
「…なんでだよ?」
「なんでだよって…。シュンスケさんの様子がおかしいんです!!ヨリタさんが心配です!!」
私は長ったらしく説明している時間などないと思い、簡潔にそう言った。
「いいんだよ。あんな御節介なやつなんて放っておいて」
どうやらキョウもヨリタのことをあまり良く思っていないらしい。
「でも……」
「あんな厳ついおっさんが男子高校生に負けるかよ。いいんだって。僕たちがしないといけないことは探索だよ」
「確かに……」
私たちは鍵の探索を再開した。
でも、本当に放っておいて良かったのだろうか。…少し心配だ。
……シュンスケが何もしなければいいのだが。
私たちは無言のまま鍵の探索を2時間ほど続けた。時計がないので、正確には何時間なのか分からないのだが。
「見つからないですね」
「…うん」
私が悪いのか、彼がわるいのか、会話は全くと言っていいほど続かない。
「ねえ…」
唐突にキョウが話しかけてきた。
「はい?」
「…そろそろ急ピッチで鍵、探索しない??」
「はい????」
『急ピッチ』は死語なのではないか?というツッコミは抑えて、私は
「なんでですか?」
と聞く。
「前にさ、24時間も他人と拘束されたまま過ごすなんて絶対無理。最大でも5時間ぐらいじゃない?って言ったよね?
もうとっくに5時間すぎてるよ!かれこれ10時間は拘束されてるんじゃない…!?」
10時間は言いすぎだと思うが、確かに5時間以上は拘束されていると思う。
キョウの言うとおり急ピッチ(笑)で進めたほうがいいのかもしれない。
探索の途中、フウのダミー人形を引きずるツグミさんを見かけた。
ツグミ一人で探索しているため、手錠も足の拘束もまだ解けていないようだ。
「大丈夫ですか…?」
「え、えぇ大丈夫よ…。コトさんや、モモカさんたちの方がよっぽど辛いはず…」
ツグミは無理やりぎこちない笑顔を浮かべた。
「そうですか…」
私はそうとしか言えなかった。
「えぇ、だから私のことは構わないで、あなたたちも鍵を早く見つけなさい。キョウさん、ナギさんのこと頼みますよ?」
「分かってるって…」
キョウが小さくそう言うと、ツグミは少し微笑んで、その場をあとにした。
ツグミさんも早く鍵を見つけれるといいな…。
探索を再開する。
黙々と探索をしていると私はいろいろ考え込んでしまう。
家族のこと、学校の友達のこと、本当に脱出出来るのかどうか…本当は脱出口なんてないのではないか?そもそも何故くまたちは私たちを夢に閉じ込めたんだ?本当にランダムだったのか?何故、何故…私なんだ?
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
なんで私だけこんな思いをしなければいけないだ…!?普通に…普通に暮らしたかっただけなのに…!
しんどい。もう誰かが死ぬのを見たくない。もう、こんな思いをするのなら…私は…
―――――死にたい。
私は突然、ふらっとして冷たい床に倒れこんだ。
「…おい!ナギ!…な……ど、うし……な………………」
誰かが呼びかけている声がする。次第に意識は遠のいていき、だんだんとその声は聞こえなくなっていく。
…私、死んじゃうのかな。『死にたい』なんて思ったけど、やっぱり死ぬのは怖いよ…。
みんな…ごめんね。
私の意識は完全に途絶えてしまった。
ここは…私の部屋?
何故私は今、自分の部屋にいるんだ…?だって私は今、デスゲームをさせられてるじゃないか。
私の目の前には見間違えるはずのない、見慣れた薄暗い自室が広がっていた。
―――ガチャッ
不意に扉の開く音がして、誰かが入ってくる。
誰だろう?と私は薄暗い部屋の中、目を凝らした。
え、私?
入ってきたのは『私』だった。
私はここにいるのに…。一体誰なんだ。
『私』はベッドの近くの棚の上にある小さな瓶を手に取り、錠剤を手のひらに数え切れないほど出した。
ちょっと待って!私この続き見たくない!!やめて!やめてよ『私』!!
「ねえ待って!やめて!!それを飲んだらダメ!!」
私は『私』の手を掴もうとしたがスッと私の体が透けて、『私』を触ることが出来ない。
何これ!?私が幽霊みたいじゃない!!
私はどうすることも出来ないの!?私は必死に止める方法を考えた。しかし、間に合わず………。
『私』は手のひらに出した、数え切れないほどの錠剤を一気に口に放り込んでしまった。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
やめて、やめて!!思い出したくない!『私』、寝ないで!!お願い!!
そうじゃないと私……
――――死んでしまうの
しかし、私の願いは届かず、『私』は寝てしまった。
私は怒りなのか、悔しさなのか、悲しさなのか分からないが、負の感情を抱き、私の飲んだ錠剤…いや、『錠剤』呼ばわりをして、現実逃避をするのはやめよう。
…睡眠薬の入っていた小さな瓶を割った。
>>54訂正。
改行されていて変になっていました。
<訂正>
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「ナギー?ご飯よナギー?」
一階から母の声がする。しかし、致死量の睡眠薬を飲んだ『私』は寝ているままだ。
「ナギー?どうしたのよ?下りてきなさいよ」
パタパタと音がする。母がスリッパで階段をあがってきているようだ。
私はどうすることなく、呆然と『私』を見ていた。『私』は死んでいるように眠っていた。死んでいないといいのだが…。
―――コンコン
母が私の部屋の目の前まで来たようだ。
「ナギ…?いるの?入るわよ」
ガチャ。
母は部屋に入ってくると、寝ている『私』を見て、少し呆れたようにため息をついた。
「ナーギ、起きなさい、ご飯よ」
母は『私』の体を揺さぶる。しかし、『私』はビクともしない。
「ナギ?ナギ??ナギ!!??」
何度呼びかけても起きない『私』に母は違和感を感じだようだ。
「どうしたの!!!???眠いの!?起きてよ!!!!」
母は激しく『私』を揺さぶる。しかし、『私』はビクともしない。
「……ナギ…ナギ…私、どうしよう、どうしよう……!!」
『私』を揺さぶるのを止め、母は棚の上の固定電話に手を伸ばした。
「…?なにこれ」
母は固定電話の隣にあった、小さな瓶に気がついた。中身はもうほぼない。
「す、睡眠薬!?ナギはこれを飲んだの…!?でも、なんで……」
母は泣きながら、固定電話を手にとり「110」を震える手で押した。
「なんでって…なんでって……あの男、お父さんのせいだよ!!アイツさえ…アイツさえいなければ私はお母さんと弟と、楽しく…幸せに暮らせるんだよ!!」
私は母は聞こえるはずはがないのに思わずそう母に言った。
母は電話を終えると、『私』の手を握って、祈っているようだった。
しばらくすると、救急車が来て、『私』は運ばれていった。
私は騒然とした光景を呆然と見ているだけだった。
私は誰もいなくなった自室でさっきまで『私』のいたベッドに倒れこんだ。
私は自分がデスゲームに巻き込まれる前の自分の『記憶』を思い出す。
私はいつもは真っ先に宿題をする派なのだが今日は真っ先にベッドに倒れこむ。
倒れこんだ瞬間、一気に眠気は襲ってきた。
意識がぼんやりとしていき、私は寝た。
私は覚えていないのだが、さっきの光景が正しければ、あの眠気は睡眠薬による眠気だ。
あの光景は正しいのだろう…。私は父の日々の暴力に耐え切られなくなっていた。父は飲酒をすると、自暴自棄になり、私に手を出してきた。もちろん私だけではなく、弟や母にも手を出していたのだが、私にはよりいっそう酷い暴力や、罵声を浴びせていた。
なんで私ばかりなのだろう。
弟や母が助かることは嬉しいが、私は暴力を振られるたびにそう思った。そして、もう一つ―――――――
楽になりたい、と。
その日の朝、私はまた暴力を振られた。罵声はもう、痛くないからまだ耐えられるのだが、暴力は何度やられても痛い。その日はいつもより酷かった。会社でいやなことでもあったのだろうか。父は私の腹部を何度も何度も蹴った。母の温かい朝食を食べた後だった。私は気持ち悪くなったが、学校を休めば、父……いや、アイツと家で過ごさなくてはいけなくなるので、私は心配する母を無視して学校に行った。学校では友人に傷を心配されたが、無理に笑ってごまかした。ちゃんと笑えていたのだろうか。
私はもう耐えられなかった。
あのとき、私は強く自殺願望を持ったことを覚えている。それで、致死量の睡眠薬を飲んだのだろう。
今は致死量の睡眠薬を飲んだことを後悔している。なんで、あんなやつのために命を捨てようとしたのだろうと、命を賭けたデスゲームを通してそう思った。みんな必死に生きようとしているんだ。あんなことで死のうとした私が馬鹿らしくなった。
私はまだ死んでいるとは限らない。夢から脱出すれば、私は目を覚ますかもしれない。
――――絶対みんなで脱出しよう
私は改めて決意した。
こんにちは、猫又と申します。
脱出 〜デスゲーム〜、読ませていただきました。
読んでみての感想ですが、
色んな背景設定があって、よく設定を考えられた作品だなと感じました。
次々とキャラクター達の謎が明かされ、これからもっと面白くなるのかな、という期待もあります。
ですが。肝心の本編がゆるすぎてキャラが立っていないかなと個人的に思いました。
脱出を目標とする文学、いわゆるクローズドサークルは難解な課題と、それにぶつかったキャラ達の個性とリアクションによるハラハラ感が重要です。
ただこの作品ではその課題があっさりクリアされすぎて、キャラクターが立つ場所が無く、少し面白みに欠ける。というのが私の個人的な感想です。
もう少し、各キャラの特徴が生かせる課題を考えてみて下さい。
例えば主人公。「みんなで協力してここを出よう」という意思を持つ主人公ならば、
周囲が疑心暗鬼に駆られていたほうが好都合です。
主人公を見るなり、黒幕だと言う人間や
誰かを消そうとしている人間。
全く協力せず、檀独行動する人間。
知り合い同士でグループを作っている女子などなど……。
こういうキャラクターを出して主人公の前に問題を作り
(一体主人公はどうやって説得するのだろう)というドキドキを作り出すことも一つだと思います。
とかく、各キャラの背景や設定が生かせるような課題(問題)を作り、
存分に読者にそれをアピールし常にハラハラした展開を書いていく、それがクローズドサークルの書き方の基本です。
ちかさんの文章は決して伝わらないレベルのモノではありません。だからこそ惜しいと感じます。
もう一段、少しそういった『キャラを生かす舞台作り』を意識して書けば、さらに良い作品になるかと思います。
あくまで私の意見ですが、何か参考になれば嬉しいです。それでは〜
>>58
細かいアドバイスをありがとうございます!!
自分でも少しキャラが成り立っていないかな、と悩んでいたので参考にさせていただきます!
「……きぜつ…だけ……だいじょう…だよ」
誰もいなくなった自室からどこからともなく聞き覚えのある少年の声がぼんやりと聞こえた。
「ど、どうしよう。ナギちゃん大丈夫かな…」
今度ははっきりと聞き覚えのある少女の声が聞こえた。私のことを心配しているようだ。
「あ、意識が少し戻ったみたいだよ」
少年がそう言った瞬間、どこからともなく強い光が射した。私は思わず目を瞑る。
「…ナギちゃん?」
うっすら目を開けると、コトが心配そうな表情で私を見つめていた。
「よかった!!体調は大丈夫?」
コトはそう言うと、ペットボトルの水を渡してくれた。
「うん。ありがとう」
私はペットボトルを受け取ると、水を一口だけ飲み、
「私…倒れてた?」
と簡潔に聞いた。
「うん。モモカちゃんと隣の部屋で休憩してたら急に人の倒れる音がしたから、急いでここに来て見たらナギちゃんが倒れてたよ。キョウくんに事情を聞いても、探索してたら急に倒れたってことしか分からなかったの。やっぱり体調が悪かったの?大丈夫?」
「ちょっと、動きすぎたのかな。疲れちゃってて…」
私はあの『夢』は言わないことにした。
「な、ナギさん…何でも言ってください…あの、私でよければ…なんでも聞きますので」
モモカは小さな声だったが、私の目を見てそう言った。
「モモカちゃん、ありがとうね!でも、私大丈夫だから心配しないで!」
私が、笑顔を向けると人見知りのモモカはぎこちない笑顔を返してくれた。
「あ、あの…!キョウさんもありがとうございます!それと、迷惑をかけてしまって…」
私はずっと座り込んで黙っていたキョウに声をかけた。
「あのさぁ、疲れたならちゃんと言ってよ。倒れられたら迷惑なんだよ…」
「す、すみません…」
私は不機嫌そうなキョウにとっさに謝った。
「まぁまぁ、ナギちゃん。そう落ち込まないで!キョウくんはツンデレなんだよ〜」
コトは笑いながらそう言って、少し、場の雰囲気を和ませた。
「…は?僕がつ、ツンデレ?」
「ナギちゃん、キョウくんに襲われたらすぐに私を呼んでね!助けてあげる!じゃあ私たちは探索の邪魔になっちゃいけないし、もう行くね!ナギちゃんお大事に!」
「は?は?いやいや、ちょっと待ってよ!!」
コトは呼び止めるキョウを無視して部屋を出て行った。
<人物まとめパート1(訂正版)>
【仲間】
・桜木 凪(サクラギ ナギ)
年齢:14歳 学年:中二 部活:陸上部 ペア:チヤ 交替後:キョウ
外見:身長は152a 体重は41kg セミロングの髪型 目が大きく可愛らしい顔立ち
備考:主人公
・福積 千夜(フクズミ チヤ)
年齢:16歳 学年:高一 部活:帰宅部 ペア:ナギ 交替後:ユウ
外見:身長は165a 体重は48kg 黒髪でストレートな髪型 中性的な顔立ち 細身な体型
・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 明るい子
・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ 交替後:モモカ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 明るい子
・依田 信二(ヨリタ シンジ)
年齢:32歳 ペア:ツグミ 交替後:シュンスケ
外見:身長は183a 体重は78kg 髪型は短髪 はっきりとした顔立ち 筋肉質
備考:まとめ役
・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
年齢:17歳 学年:高二 部活:パソコン部 ペア:コト 交替後:ヨリタ
外見:身長は174a 体重は58kg 髪型は前髪が目にかかっている 暗い雰囲気
備考:協力する気はない
<人物まとめパート2(訂正版)>
・美川 京(ミカワ キョウ)
年齢:21歳 学年:大学生 ペア:モモカ 交替後:ナギ
外見:身長は168a 体重は52kg 顔は整っているが性格はよくないと思われる
・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
年齢:13歳 学年:中一 部活:文芸部 ペア:キョウ 交替後:コト
外見:身長は148a 体重は38kg ロングヘア 可愛らしい顔立ち
備考:コミュ障
・明石 亜実(アカイシ ツグミ)
年齢:28歳 ペア:ヨリタ 交替後:フウ(ダミー人形)
外見:身長は161a 体重は50kg 黒髪を後ろで束ねている 凜としている
備考:ヨリタと同じ会社に勤めている
・神埼 優(カンザキ ユウ)
年齢:21歳 大学生 ペア:フウ 交替後:チヤ
外見:身長は171a 体重は57kg ふわっとした茶髪の癖毛 名前通り優しそうな印象
・綾瀬 楓(アヤセ フウ)
年齢:17歳 学年:高二 ペア:ユウ 交替後:――
外見:身長は156a 体重は44kg 生まれつきの薄い茶髪のセミロング 儚い印象
「あ、あの…探索……手伝い、ましょうか?」
声のした方を見ると、モモカが遠慮がちに立っていた。
「あ、ありがとう!ってあれ?拘束は全部解けたんだ?」
「はい…」
モモカの手首と足首を見ると、既に拘束はなくなっていた。
「でもいいの?せっかく頑張って自分たちの鍵は見つけたのに、私たちのも手伝ってもらって…」
「は、はい。あの…み、みんなに迷惑をかけてしまったと思うので…」
モモカは私に背を向けて、近くにあった本棚を探り始めた。
「全然迷惑じゃないからね!手伝ってくれて本当にありがとう」
モモカは一瞬ビクッっとすると私の方を少しだけ見て「いえ…」と言った。
三人で探すと速かった。一時間ほどで3部屋を探索することができた。
しかし、一向に鍵は見つからない…。
「鍵って全員分あるのかな…」
調理室を探索しているとき、ポツリとキョウがそう言った。
「流石にあると思います…!だってサブ命令ですもん、きっとありますよ…」
私はそう言いながらも、少し不安に思った。
鍵が全員分あったとしても、時間内に見つけられるだろうか…。
この施設はとてつもなく広い。終わりがないように感じる。それに、制限時間も残り少ないだろう。
「とにかく、制限時間内に精一杯探しましょう!きっとあるはずですよ!!」
時計がないから今が何時なのかも残り時間も分からない。しかし、残り時間が十分にないことは分かっている。
私たちは緊張でピリピリとした空気の中、無言で手早く探索した。
「残り時間1時間だよ」
突然どこからともなくクマの声が部屋全体に響いた。
そして続けて言う。
「精々足掻いてね」
―――残り一時間
その言葉が私たちを不安に…そしてパニックにさせた。
「ねぇ!クマ!!一時間なんて無理だよ!!!許してよ!ねぇ!!!私たち何も悪いことしてないじゃない!!!」
「悪いこと……ねぇ―――」
突然クマが私たちの前に現れた。
少し怒っているように感じられた。私はいつもと違う雰囲気のクマに後ずさる。
「最初にキミたちがここに閉じ込められたのはランダムだって言ったのは嘘だ」
「じゃあ何でなの!?私たちが何かしたって言うの!!??」
「うん」
クマは当たり前だとでも言うように頷いた。
「キミたちは償いきれない罪を犯している。キミたちに罰を与えるために夢に閉じ込めたんだよ。
そして、罪の重さを理解してもらうためにね。
そうだねぇ―――――
自分たちの犯した罪、このゲームの真相を暴いてごらん。
暴けたらここを出してあげてもいいよ」
「暴かないと脱出できないの…?」
「いいや、出来るよ。前にも言ったとおりメイン命令を三回下して生き残っていた者の勝ち。
でも、考えてみて。ただただゲームをクリアして、何も分からずに脱出する。罪も分からずにのうのうと生きるのと、真相を暴いて脱出する。そして自分の罪を理解して償いながら生きるのとどっちがいいんだい?
後者の方が断然いいだろう?」
確かにそう言われると前者の方ではもやもやする。
ここまで読ませていただきました。
感想onアドバイスをご希望なので、分けて書きますね。
感想
正直な感想としては、続きが気になります。一つひとつ命令をクリアしていくごとに、キャラの秘密が分かる所が癖になると言いますか…読みごたえがありますね。
描写もちゃんとしていて、かなり読みやすかったです。
アドバイス
今のままでも十分面白いですが、>>58さんもおっしゃっているようになりますが、キャラの性格を生かしてクリアしていく…となると、さらに読み手に次はどうなるんだろう、と思わせることができると思います。
とても面白い作品ありがとうございます!これからも更新頑張ってくださいね!
>>65
感想onアドバイスありがとうございます😎💖
キャラの性格を生かせるよう練っていきたいと思います!
そう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます!!
<人物まとめパート3>
【敵】
・クマ(悪魔たち)
夢の中にみんなを閉じ込めた悪役。
外見:右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみ。目はボタン
・その他の情報
まだ姿は現していないが、ナギは黒幕がいると予想している(参照>>31)
※【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】を作っていると思われる。
※【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】
1.参加者に直接危害をくわえてはならない。
2.食事は与えなければならない。
3.参加者の体調管理はしなけなばならない。
4.参加者に触れてはならない。
「わ、分かった!このゲームの真相暴いてみせる」
私がそう言うとクマは満足そうに頷いた。
「うんうん。その意気だよ。自分たちの罪をちゃーんと理解しなよ」
クマはそう言うと私たちの前から姿を消した。
「罪、かぁ……」
私は犯罪を犯したことなどない。私は父からDVを受けている。むしろ被害者なのだ。
「今は考えても仕方ない。速く鍵を探そうよ。死んだら何も分からないままなんだからさ」
キョウの言葉にモモカも小さく頷いていた。
「そうですね。今さらですが、三人もいるのですし手分けして探しませんか?その方が効率がいいと思います」
「そうだね。じゃあ僕は女神の像の辺りに行ってくるよ」
キョウは早足で部屋を出て行った。
「わ、私は書物庫に……」
「分かった!私は食堂に行ってみるね」
私とモモカも部屋をあとにした。
私は早足で食堂を目指した。
施設が広くて相変わらず場所が曖昧だ。確かメイン部屋の近くだっけな。
私は曖昧な記憶を辿ってなんとか食堂に辿り着くことができた。
ここまで来るのにそこまで時間はかかってないはずだ。数分ぐらいだろうか。
私は一番最初に目についたたくさんのテーブルから探索することにした。
ミスりました…!!
なんで拘束されてるのにナギとキョウは別行動ができてしまっているのか…💦
訂正したの後に出します!
>>68の訂正
「わ、分かった!このゲームの真相暴いてみせる」
私がそう言うとクマは満足そうに頷いた。
「うんうん。その意気だよ。自分たちの罪をちゃーんと理解しなよ」
クマはそう言うと私たちの前から姿を消した。
「罪、かぁ……」
私は犯罪を犯したことなどない。私は父からDVを受けている。むしろ被害者なのだ。
「今は考えても仕方ない。速く鍵を探そうよ。死んだら何も分からないままなんだからさ」
キョウの言葉にモモカも小さく頷いていた。
「そうですね。今さらですが、手分けして探しませんか?その方が効率がいいと思います」
「そうだね。じゃあ僕らは どこに行く?やっぱ近いトコだよね」
「そうですねぇ……。ここから近いですし、食堂とかはどうですか?」
確か食堂はここから近いはずだ。メイン部屋の近くだっけな…。
「食堂って近いしいいんじゃない?モモカさんはどこへ?」
「わ、私は書物庫に……」
モモカはそう言うと早足で部屋をあとにした。
「私たちも行きましょう」
私たちは急いで部屋を出ると、食堂を目指した。
施設が広くて相変わらず場所が曖昧だ。
私は曖昧な記憶を辿ってなんとか食堂に辿り着くことができた。
ここまで来るのにそこまで時間はかかってないはずだ。数分ぐらいだろうか。
私は一番最初に目についたたくさんのテーブルから探索することにした。
テーブルの上を一つ一つ丁寧にそして、素早く調べる。
テーブルに備え付けられている椅子の座面からテーブルクロスの下までくまなく探す。
この作業を数十回ほど繰り返して全ての机を調べきった。
しかしどこにも鍵は見当たらない。
疲れた。もう時間がないんだ。探したって無駄なんだ。
そんな考えが一瞬頭によぎったが、すぐにキョウの方へ振り払って
「ここにはないですね…。隣の部屋に行きましょう」
と声をかけて気を紛らわした。
「うん」
といつも通りの無愛想で冷静な返事を聞くと、私は部屋をすぐに出て、隣の部屋へ小走りで向かった。
ほとんどの部屋のドアには部屋名を書いたプレートが掛けられているのだが、この部屋にはプレートが掛けられていなかった。
「何の部屋でしょうね…?」
そう言いながら私は少し古びた鉄の扉を引く。
…ギイィ
「うわぁ、真っ暗だね」
キョウが電気のスイッチを押すと、部屋は薄暗く照らされた。
「ひっ!!」
私が思わず小さく声をあげる。
室内にはたくさんのぬいぐるみがあり、ぬいぐるみたちが照明で不気味に照らされた。
「大丈夫だって。はやく探そう」
キョウはドアの前でつっ立っていた私の横をすり抜けると、部屋の中に入った。
「ちょっとビックリしただけですよ…」
私はそう言ったが、内心この部屋を探索するのは気が引けた。
「はぁ…何びびってんの。僕がぬいぐるみを探るから、ナギさんは棚を探索しなよ」
キョウは不気味に照らし出されたぬいぐるみを無造作に掴むと、テーブルの上にあったカッターでぬいぐるみの腹を引き裂いた。
「ちょ、ちょっと…そんなことしてもいいんですか…?」
何かバチが当たるような気がした。
「いいでしょ。もし、ぬいぐるみの中に鍵があったらどうすんの?ぬいぐるみを切り開かないと鍵取り出せないじゃん」
「そうですね…」
腹を引き裂かれたぬいぐるみが恨めしそうな顔で私を見ているような気がした。気味が悪い。
しかし、ここで手間取っている場合ではないので私はキョウに言われたとおり、棚を探索することにした。
私は最初に目に付いた棚の隅の方に置いてある、両手で抱えるほどの大きな箱を棚から取り出して床に置いた。
私は手についたホコリを払って蓋に手をかける。
…変なモノが入っていないといいなぁ。
私は恐る恐ると蓋を持ち上げた。
アドバイスがあったら宜しくお願いします!
74:めろるん◆g:2019/09/08(日) 19:34
―――!?
「と、時計…!?」
箱の中にはアンティークのような時計が入っていた。
かなり、ホコリを被っていて古いようだが、針は動いているようだ。
「え!時計!?」
キョウが時計を覗き込む。
「時間が正確かどうかは分かりませんが、動いていますね…」
11:35をさしていた針が11:36へと変わった。
「時計は見つかったけど残り時間が分からないね」
「そうですよね…」
クマは制限時間は一日、つまり24時間だと言っていたが、スタートした時間が分からなければ
残り時間は分からない。
「キリのいい時間は0:00だよね…」
キョウがポツリと呟いた。
「そ、それじゃあ残り時間は30分もないじゃないですか…!!」
「キリのいい時間を言っただけだよ。でも確実に残り一時間もないんだからさ、制限時間が0:00では
ないとしても急がないと死ぬよ」
キョウが他人事のように淡々とそう言った。
――鍵が見つからなければ、自分が死ぬというのに。
「キョウさんは…死ぬのが怖くないんですか?」
その疑問が自然と口に出た。
すぐに「あっ」と思い、私は「なんでもないです!」と言って無理矢理に笑顔を浮かべる。
「……いよ」
キョウが小さな声で呟いたような気がした。
「な、なんですか?」
「怖くないよ」
次ははっきりとした声でそう言った。
<人物像>
・桜木 凪(サクラギ ナギ)
協調性のある心優しい女の子。
・福積 千夜(フクズミ チヤ)
中性的で弱々しい印象。メイン命令1で性格が…?
・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
場を明るくするのが得意な気遣いができる女の子。
・依田 信二(ヨリタ シンジ)
場のまとめ役。しっかりしていて頼れる人。
・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
協力する気がない。周りに無関心。
・美川 京(ミカワ キョウ)
協力はするが、どこか冷たい印象。
・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
人見知り。自分なりにみんなの役に立とうと頑張る。
・明石 亜実(アカイシ ツグミ)
凜とした女性。面倒見がいい。
・神埼 優(カンザキ ユウ)
優しそうな印象。常に笑顔。
・綾瀬 楓(アヤセ フウ)
儚い印象。最期までみんなを想った、思いやりがある。
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*
リア友に、「キョウとシュンスケの違いが分からない」とアドバイス?
をもらったので全員の人物像を簡単に書きました~!
まぁこんな感じです~!笑
「でも、まだタヒねない」
「どうして…?」
私はキョウの意味ありげな言い方に、思わず尋ねる。
「僕が生きていて、ナギさんが生きていたらいずれ分かる」
私はこれ以上尋ねてはいけない雰囲気を感じて黙る。
微妙な居づらい空気が流れていた。
「最期まで頑張るんだよ。死にたくないだろう?」
突然、明るい調子で流れ出したクマの放送が沈黙を破った。
クマは放送を続ける…。
「残り10分だからね〜」
そう言われた瞬間、はっ、と時計を見る。
時計は11:50を指していた。
10分後、と言うことは……。
「12:00まで…!!??」
キリいい時間…。
やっぱりキョウの予想は当たっていたんだ!
こう考えている間にも時間が削られていることに恐怖を感じる。
―――まるで私の寿命が削られているようで。
「焦っちゃだめ、焦っちゃだめ、焦っちゃだめ」
私はそう自分に言い聞かせる。
自分では丁寧に探しているつもりなのだが、自然と手が速く動く。
「ぬいぐるみには鍵なかった…」
キョウの足元にはズタボロになったぬいぐるみがいくつも落ちていた。
「う、うそ…。どうします?隣の部屋に移動しますか?」
私は探す手を止めることなく、早口で聞く。
「いや、移動する時間が無駄」
「そうですね、ここに鍵があることを願って探しましょう」
私は一つ棚を探しおえると、すぐに隣の棚に移った。
何かのホルマリン漬けがあったが、それに驚いている暇なんてない。
「なにそれ…気持ち悪いね」
キョウはホルマリン漬けのビンを持ち上げた。
「はい、なんなんでしょうね」
私はホルマリン漬けを気にしている場合ではないと思い、そちらを見ずに作業品しながら返事をした。
「割ってみようか」
「な、なんでですか!?」
私は思わず手を止めて、キョウの方に振り返った。
「鍵が入ってるかも」
キョウはビンを持った手を振り上げると、床にビンを叩きつけた。
床に濁った液体が広がる。
「きゃあ!!」
私は声をあげて後ずさりをする。
キョウは構わず、床に広がったものを見ていた。
「あっ」
キョウは何かを見つけると、一瞬躊躇ったあと、液体の中に指を入れて何かを拾い上げた。
「なんですか?それ…」
「お前、たちは…誰を……こ、ろした?って書いてる」
キョウは私にヨレヨレになった紙のようなものを差し出してきた。
それには薄くなり、液体でにじんだ文字で【お前たちは誰を殺した?】と書いていた。
>>77
あ~!ミスりました…
「そちらを見ずに作業品しながら返事をした。」
ではなく。
「そちらを見ずに作業をしながら返事をした。」
です! すみません汗
テストが近くて時間ないので、番外編書きます…。
<番外編>
本当は俺はデスゲームの真相に薄々気づいてる。
確信はない。
でもそうじゃないのかなって……。
みんなも本当は気づいてるんだろ。
自分の罪ぐらいさ。
本当にみんな脱出したいの?
現実の何がいいの。
みんな逃げ出そうとしてたくせに。
―――本当は死にたいんだろ。
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*
この番外編が誰目線なのか、本編が進むに連れて分かるかもしれません。
「何か、心当たりある?」
キョウがヨレヨレな紙を私に見せながら聞く。
「な、ないです!!一体何なんでしょうか…」
【お前たちは誰を殺した?】
これは私たちに向けて書いた言葉なのだろうか。
【お前たち】は一体誰なのか……。
考えても謎は深まるばかりだ。
「さぁ、そろそろ時間だよ〜」
突然、いつものように何処からともなくクマの陽気な声が聞こえてきた。
―――そろそろ時間!?
私は一瞬頭の中が真っ白になったが、すぐに我を取り戻して時計で時間を確認しようとする。
しかし、その前にクマは、
「カウントダウン、スタート!」
と今から楽しいことでも始まるのかと疑うような声色でそう言った。
「この時計がずれてるだけかもしれないけど、残り一分もない…」
キョウは時計を見てそう小さく呟いた。
「うそ…!!??」
私はすぐ近くにあった棚を急いで探り始めた。
もう、既に探索をしたような気もするがそんなこと関係ない。
「ナギさん…!キョウさん…!」
そう声がし、勢いよくドアが開いた。
モモカだ。
「モモカちゃん…!見つかったの!!??」
批評を依頼されたと云うコトで、僭越ながら批評をさせて頂きたいと思うッス!
先ず良いトコロから、
最初に小説を読んだ第一印象は「 シナリオ管理が上手だな 」と云うコトッス!物語の起承転結、まとめ方等が丁寧なので読者が置き去りにされるコトなく読み進めるコトが出来て、迷走感も全体的に少な目に抑えられていると思うッス!
次にッスけどキャラクターの作り込みが細かく、キャラクターの背景事情や過去を素早く把握するので愛着が湧き易いッス!どのキャラも様々な思考や思惑で動いているのが文章内で説明されている為に読んでいて飽きるコトなく思う存分キャラクターに感情移入出来るッス!
次に改善点ですが、
テンポが緩めの作品なので、デスゲーム特有の「 臨場感 」や「 疑心暗鬼 」を感じ辛く打ち消している様に感じられて、正直なトコロ「 飽きも来る 」って話になっていると思うッス。
「 読むのが止まらない! 」と読者に感じさせる様な文章を書きたいならば
この作品で描かれる「 デスゲーム 」はどちらかと云えばサイコポップ的な悪趣味さに浸るコトを重視したモノだと思うので、それなら寧ろテンポは早めの方が雰囲気に合っていると思うッス。
拙いアドバイスッスけど参考になったら幸いッス、それではドロンッ!させて頂くッス!
>>81
アドバイス感謝です😎💖
ねるほど…!テンポ早めだったら中身が薄くなって、面白くなくなるのでは?っと思って
緩めにしていたので、自分では気づくことができませんでした、本当にありがとうございます!!
「ご、ごめんなさい…見つからなかった、です……」
モモカは申し訳無さそうに目を伏せた。
「モモカちゃん…協力してくれて本当にありがとう!」
「でも、ナギさんたちは……」
モモカは今にも泣き出しそうな表情で私を見る。
そんなモモカに私は、
「私たちは大丈夫だから!」
と根拠なく大丈夫だと言いきり、モモカを優しく撫でた。
しかし、モモカも小さな子供ではない。
私たちが決して「大丈夫」ではないことは分かっているようだった。
「じゅー!きゅー!は〜っち!」
クマのカウントダウンがスタートしたようだ。
小さな子どもが鬼ごっこをしているような陽気なカウントダウンが始まる。
その陽気さが余計に不気味さを放っている。
――――諦めよう
そんな考えが頭に浮かんだ。
どうせ数秒しかない。足掻いても無駄だ。
私はつっ立ったままクマのカウントダウンを呆然と聞いていた。
「さ〜んっ!にぃーい!いっち!」
…私、死ぬんだ。
「ぜろーーー!!」
クマの声が部屋全体に大きく響いた。
****
「カウントダウン、スタート!」
部屋中にクマの明るい声が響く。
ついにか。
私は不思議と怖くなかった。
…あと、数秒後に私は死ぬのかもしれないのに。
みんなは鍵、見つけられたのかな。
見つけられてないの、私のチームだけだといいな。
――だって……私、一人だけのチームだから。
私は拘束の解けていない手足の先にいるフウのダミー人形を見た。
それは、生きていた頃の本物の彼女と、姿形が全くもって一緒で、少し不気味だった。
「じゅー!きゅー!は〜っち!」
再びクマの楽しそうな声が聞こえる。
私は探索をしようともせず、ただ呆然とフウのダミー人形を見つめていた。
――また、助けられなくて、ごめんね。
私はフウのダミー人形の頭を撫でた。
……冷たい。
「さ〜んっ!にぃーい!いっち!」
みんな、元気でね。
そして、クマが私に最期の言葉を告げる。
「ぜろーーー!!」
クマの声が部屋全体に大きく響いた。
****
……あれ?
私、生きてる?
つい先程、クマの『ぜろーーー!!』と言う放送を間違いなく聞いた。
「サブ命令で二組も失格となっちゃ困るなぁ…」
戸惑う私にクマがそう困ったように呟く声が聞こえた。
二組…?私たちの他にも一組、命令に従えなかったチームがあるの?
私、助かるの?
「そうだ!!」
クマが何かを思いついたようだ。楽しそうな声だ。
何か嫌なことが起きる予感がする…。
「助けてあげるよ。おれ、優しいからね〜!」
嫌な予感に反して、クマはそんなことを言い始めた。
「命令に従えたイイ子ちゃんたちもメイン部屋に来て。ルール説明をするから!」
ルール説明?一体クマは何をするつもりなんだ…?
突然、強い眠気が襲ってきた。
私は眠気に抵抗することが出来ず、床に倒れこむ。
冷たい床の感触が皮膚に伝わってきた。
そういえば、一日ぐらい寝てないな…。
私はそんなどうでもいいことを考えながら、深い眠りについた。
「おはよう」
決して大きな声ではなかったが、よく響くクマの声に私は深い眠りから目を覚ました。
私は辺りを見渡す。
どうやらメイン部屋に連れてこられたようだ。
他のみんなも起きたばかりのようで、状況を把握するために辺りを見渡している。
「よし、みんな起きたようだね。みんなに報告することがある……」
クマはそう言うと、ワザとらしく溜め息をついて続ける。
「命令に従えなかった悪い子が三人もいるんだ。残念だなぁ…。おれ、失望しちゃったよ」
クマはそう言って、私、キョウ、そして――ツグミを見た。
「サブ命令で三人も脱落されちゃうと面白くないんだよねえ…。そこでさ、おれから提案!どちらか一組助けてあげるよ!」
そして「はい、鍵!」とクマは私たちの方へ一つ、鍵を投げた。
鍵がチャリン、と音を立てて床に落ちる。私はその鍵を無言で見つめることしか出来なかった。
「どっちが使うかは、みんなで決めてね。話し合い、騙しあい、暴力。なんでもアリだよ。
そうだねえ…制限時間が必要だよね。う〜ん、制限時間は10分にするよ。制限時間内に決めれないと全滅だよ。時間を有意義に使ってね!」
クマはそう言うと、いつも通りどこかへ消えてしまった。
「取り合えず、話し合いで決めるのが一番だよな…」
そう言ってヨリタは鍵を拾い上げる。
「ヨリタさん、その鍵…
――こちらに、ください」
そう誰かが言った、次の瞬間、ヨリタの手から鍵は奪われたのだった。
「何故そんなことをするんだ…
――ツグミ」
ヨリタは鍵を持ったツグミに疑いの目を向けた。
「みんなで話し合って、どちらのグループが使うか決めよう。な?
だから、ツグミ…。その鍵はこちらに渡すんだ」
ヨリタはそう言って、ツグミの持っている鍵に手を伸ばす。
しかしツグミは、
「あなたには渡せません」
と言うと鍵を勢いよく放り投げた。
数秒経って、チャリン!と私の足元で音がする。
ツグミは私とキョウの方へ鍵を投げたのだった。
「ツグミ…さん?」
私は状況が飲み込めず、ただ、ツグミを見つめることしか出来なかった。
「話し合いをする必要はないわ。
どうせ結果は決まってる…分かってるの。時間の無駄だわ。
……ナギさん、キョウさん。あなたたちが使いなさい」
「結果は、決まっている…?どういうことだ?
ナギとキョウに渡してしまえばツグミは…」
「よく、考えてみてください」
ツグミがそう言ってヨリタを遮る。
「ナギさんとキョウさんが鍵を使えば、二人が助かる…。
でも、私が使っても助かるのは私一人だけ。私のペアは…もう、いないの」
ツグミはどこか寂しげな声でそう言って、ダミー人形の頭を優しく撫でた。
「た、確かにそうだ。そうだけど、それじゃツグミが死んでしまうじゃないか…」
「ヨリタさん…」
ツグミがそう言って、駆け寄る。
「あなたは出会った頃から強い人でした。あなたなら、私なんかいなくても大丈夫」
ツグミは母親のように優しくて、穏やかな声色でそう言った。
こんな状況だったが、私もなんだか安心できた。
「ツグミ…上司命令だ。
――絶対デスゲームから脱出しろ」
ヨリタのその言葉にツグミは「冷静なヨリタさんらしくないですね」と微笑む。
「ごめんなさい。それは、できないです。
ヨリタさん…。こんな我が儘で、上司の命令も聞けない私の最期のお願い、聞いてもらえますか?」
「ああ…」
ヨリタの短い返事を聞くと、ツグミは満足そうに話し始めた。
「私はもう若い子たちを犠牲にしてまで生きたくないんです。
だから、ここで終らさせてください。
そして、みなさんを宜しくお願いします。絶対、もう犠牲者は増やしてはダメよ」
そして、ツグミは私たちの方へすぐに向き直ると、
「さあ、その鍵を使って!ヨリタさんに止められる前にね!」
と悪戯っぽい笑みを浮かべたのだった。
~かっこいい自己紹介をさせてみたかった~
『命令に従えなかったらどうなるの……?』
【桜木 凪(サクラギ ナギ)】
14歳/陸上部/私/152a/41kg/セミロングの髪型/目が大きく可愛らしい顔立ち
ペア…チヤ⇒キョウ
『……この服装気になる?』
【福積 千夜(フクズミ チヤ)】
16歳/帰宅部/僕/165a/48kg/黒髪でストレートな髪型/中性的な顔立ち/細身な体型
ペア…ナギ⇒ユウ
『私、皆さんのこと信用してみます!』
【宇都宮 琴(ウツノミヤ コト)】
15歳/吹奏楽部/私/155a/43kg/髪型二つ結び/童顔/明るい子
ペア…シュンスケ⇒モモカ
ツグミにそう言われたものの、私は鍵に手を伸ばせないでいると、
「ツグミさん、ごめん」
と言う声と共に床に落ちていた鍵はキョウの手へと移った。
「キョウさん!!本当に…使うんですか?」
私は思わずキョウにそう問いかけた。
「ナギさん…キミは死にたい?死にたくないでしょ?
僕はまだ死にたくない…というか、タヒねない」
私だって、死にたくないに決まっている。
でも、私たちが鍵を使えばきっとツグミは……。
そう考えると、私ははっきりと答えることができず、
「それは……」
と言葉に詰まってしまった。
「誰かを犠牲にしたくない。みんなで脱出したい。だなんて、甘いこと考えないで。
どちらかが絶対に死ななきゃいけないんだよ。
ツグミさんもああ言っていることだし……」
キョウは冷たく、突き放すような言い方でそう言ったが、最後の方は言葉を濁しているようだった。
彼もまだ、鍵を使うことに躊躇いがあるようだ。
「そうよ。キョウさんの言うとおり…」
いつの間にか、隣で話を聞いていたツグミは鍵を手に取ると、無理やり私たちの手首を拘束していた手錠の鍵穴に鍵を突っ込んだ。
「ツグミさん…!!??」
私は驚きの声をあげたが、ツグミは私には目もくれず、手を止めなかった。
ツグミが無理やり、鍵を持った手を右に回す…。
――カチャリ
部屋中に鍵の開く、聞き心地のいい音が響いた。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
しかし、私たちの手首を拘束していた手錠が消えていくのを見て、ツグミが鍵を解除したことを理解した。
「これでよかったの…」
ツグミは私たちを見て、微笑んでいたが、目には涙が浮かんでいた。
「ツグミさん……ごめんなさい…」
言いたいことはたくさんあった…のだと思う。
しかし、言葉に表せず、出てきたのは謝罪の言葉だけだった。
「さぁ、鍵を使ったみたいだね」
静かな空間にクマの声が響き渡る。
「鍵を使えず、命令に従えなかった愚か者のツグミ…失格だ」
クマがそう言うと、ツグミの手首にはめられた輪が、どんどんと小さくなっていった。
ツグミの手首をギリギリと締め付ける。
ツグミは苦痛に綺麗な顔を歪める。
「大丈夫か!!」
そんなツグミを見て、ヨリタがすぐに駆け寄り、ツグミの手を優しく握った。
「ヨリタさん…みんなを、よろ…しく、ね」
ツグミはヨリタを見て、無理やり笑顔を作った。
しかし、次の瞬間、耐え切れない苦痛に顔を歪めた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
悲鳴に近い声でそう叫ぶとツグミは床に横倒れになる。
ツグミの手首は既に血だらけで、今にも手首が切れ落ちそうだ。
床がどんどん赤く染まっていく。
私は見ていられなくなって、目を瞑る。
「キャアアアアアアアアアアアア!!」
耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
それから、しばらくして音は何一つ聞こえなくなった。
ツグミは……。
私は恐る恐る目を開けた。
そこには変わり果てたツグミの姿があった。
手のないツグミの横には切れた落ちた手と真っ赤な血溜まりが広がっていた。
「ツグミ!ツグミ!お願いだ…返事をしてくれ!!」
ヨリタは必死にツグミに呼びかけ、揺さぶるが、ツグミはピクリとも動かない。
ヨリタの服の袖口が、真っ赤な血でみるみると染まっていく。
「まだ…今なら間に合うかも…!」
そうコトが呟き、ツグミのもとへ駆け寄り、呼吸を確認する。
「ど、どう…?」
私は恐る恐る結果を聞く。
「もしかしたら」と小さな希望を持って…。
「………」
コトは私に悲しげな表情を向けると、無言のまま力なく首を横に振った。
私の小さな希望は一瞬にして砕け散った。
――これが現実なのだ。
「いや、いや…やめて!ああああああああああああ!!」
モモカは怯えた声でそう叫ぶと、膝から崩れ落ちた。
『誰かモモカを頼む』
…いつもならヨリタがそう声をかけてくれる。
そして、誰かが寄り添ってくれる。
しかし、今は誰ひとり、ひとのことを気にかけている余裕なんてなかった。
次は自分が死ぬかもしれない、という恐怖と、仲間が死んだ悲しみに誰も動くことが出来なかった。
この先、私たちはどうなるのか…。
不安はどんどんと膨らんでいく。
「はぁ……」
私は溜め息をついて、自分の部屋の隅に追いやられているベッドに座る。
あれから、どうやって自分の部屋まで戻ってきたのかはあまり覚えていない。
確か、あの場所にいるのが苦痛で、一刻も早く離れたくて、ここに来たのだと思う。
「ごめん…ごめん、ごめんなさい…」
私は気がつくと何かに謝っていた。
…救えなかったツグミへの謝罪?犠牲になったフウへの謝罪?
勝手に涙が溢れ出す。
――コンコン
不意にノックの音が聞こえる。
私は服の裾で乱暴に涙を拭うと「はい」と返事をする。
誰だろう?クマかな?
ガチャ、と静かな音を立ててドアが開く。
「ごめん、一人だと寂しくて…」
そこには少し微笑んだコトが申し訳無さそうに立っていた。
「ううん、全然。私も一人だと色々考えちゃうから…。
どうぞ、どうぞ。入って」
「ありがとう」
私とコトは狭いベッドに腰を下ろすと、しばらくの間話していた。
学校のこと、テレビのこと、オシャレのこと、趣味…そして恋愛のことも。
私とコトの住んでいる街は遠いようで、私の知らないことも、たくさん教えてくれた。
ここに来てから、こんなに楽しく話したのは初めてだった。
時間を忘れてしまうようだった。
「ごめん、ついつい話しすぎちゃったね。私、そろそろ戻ろうかな」
コトがそう言うと、私は急に寂しくなって、
「私は全然大丈夫。むしろ、ここに居ない?」
とコトを引きとめる。
「いいの?じゃあ、ここにいようかな〜。一人だと寂しいしね!」
コトは嬉しそうにそう言った。
この夢から脱出した後も、こうして仲良く出来たらいいな。
一人で寝ても狭いような、小さなベッドに二人で寝転がる。
とても窮屈で寝づらいが、窮屈なおかげでコトのぬくもりが伝わってきて安心することができた。
「おやすみ、ナギちゃん」
そう言って、コトが電気を消す。
ただえさえ、薄暗かった部屋は真っ暗になった。
「うん、おやすみ…」
一人になると色々と考え込んでしまうから、できるだけ早く眠りに着きたかったが、全くと言っていいほど
眠くなかった。
しかし、辺りが真っ暗になり視界が奪われると自然と眠たくなっていくのだった。
そして、私は完全に眠ってしまった。
――ピヨロロロロ、ピヨロロ
何か音が聞こえる。
…鳥の鳴き声?なんで、鳥がいるんだ?
私は不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。
どこからか差し込んでくる眩い光に私は思わず顔をしかめる。
少し光に目が慣れると、この光は小さな窓につけられたカーテンの隙間から漏れ出ているものだということが
分かった。
なんなんだ、この光は。まるで、日光のようじゃないか。
しかし、ここは夢の中。
鳥がいるわけがないし、ましてや太陽が存在するわけがない。
私はこの状況を飲み込めないでいると、
「どう?びっくりした?
キミたちが住んでいる世界に似せてみたよ。少しでも気軽に、ここにいられるようにね」
といつの間にやら私の目の前にいたクマが説明した。
…そんな配慮をしてくれるのならば、脱出させてほしい。
私はそんなことを思いながらも「すごいね」と思ってもないことを口にする。
「絶対思ってないだろ」などと、クマに言われると思いきや、意外にも「でしょでしょ!」と嬉しそうな反
応を返した。
「あっ、そうそう。コトはもうメイン部屋に集合してるよ。キミも早く来てね」
クマにそう言われて、私は一緒に寝ていたはずのコトがいないことに気づく。
「う、うん」
私の返事を聞くと、すぐにクマは部屋から出ていった。
<お知らせ>
違う場所で「脱出 〜デスゲーム〜」の訂正版を書き始めました。
始めから読もうと思う方や、ちゃんとしたものが読みたいと思う方などは下のリンク先の方をお読み下さい。
URL↓
http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=5572
訂正版の方でも、もちろん、感想やアドバイス◎です。
宜しくお願いいたします。
私がメイン部屋へ行くと既に、私以外揃っていた。
しかし、ヨリタの隣にツグミはいない…。
「よしよし。全員集まったみたいだね。
じゃあ、今日もゲームを――」
不自然にクマの言葉は途切れた。
クマの横には怒ったような表情をしたコトが立っていた。
「な、なんだい。突き飛ばすんじゃないよ!」
クマは継ぎはぎの体を無理やり動かすようにして、ヨロっと立ち上がった。
「もう満足でしょ!!ツグミさんとフウさんを殺しておいて、一体何がしたいの!
私たちが何をしたって言うの…!?」
「そうか…『あのこと』はナギとキョウにしか言っていなかったね」
「『あのこと』って…?」
コトがそう聞き返すとクマは「みんな聞いてくれ」と言うように、私たちを見渡した。
「キミたちは償いきれない罪を犯している。キミたちに罰を与えるために夢に閉じ込めたんだよ。
そして、罪の重さを理解してもらうためにね」
「罪」というワードに皆、何か言いたげにしたが、クマは間髪を入れることなく続ける。
「自分たちの犯した罪、このゲームの真相を暴くことが出来たら脱出させてあげる。
暴かなくても脱出はできるよ。もちろん、最初に言ったとおり、メイン命令を三回下して生き残っていた者の
勝ち」
クマがそう説明し終わると、最後に私とキョウに問いかけた言葉を再び口にする。
「…キミたちは何も分からずに脱出する。罪も分からずにのうのうと生きるのと、真相を暴いて脱出する。そして自分の罪を理解して償いながら生きるのとどっちがいいんだい?」
「……後者」
少し間があり、チヤがそう答えた。
他の皆は黙ったままだ。目を瞑って考え込んでいる者や、俯いている者もいた。
罪について考えているのだろうか…。
「そうだよね、前者の方ではもやもやするんじゃないかなぁ?
暴くことが出来たら全員で答えを決めて、おれに言いに来てね。期待してるよ。
…じゃあ、ゲームに移っていいかな?」
いつもなら、みんな黙り込み、それをクマは肯定とみてルール説明を始める。
しかし、
「待てよ!おかしいだろ!」
とシュンスケが声をあげたのだ。
私たちはシュンスケの方へ振り向くと、シュンスケの次の言葉を待つ。
「お前、嘘ついてんだろ」
シュンスケはそう言って、クマを鋭く睨み付けた。
クマは「何のことやら」と小さい肩をすくめた。
「どういうことなのか説明してくれないか?」
先程まで黙って、自分の中に閉じこもっていたヨリタがいつもの調子で、そうシュンスケに問いかけた。
彼は強い人なんだな、と私は改めて感心させられた。
「俺らに「罪」なんてないんだよ!」
「どうして?」
チヤがシュンスケに恐る恐るといった様子で説明を求めた。
「だって「罪」って自分で分かってるものなんじゃないのか?
なんで俺たちは自分の「罪」が分からないんだよ!!」
確かに、殺人犯は自分の犯した「罪」が人を殺したことだと分かっている。
窃盗犯は自分の犯した「罪」が人の物を盗んだことだと分かる。
でも、私たちの「罪」が何なのか全く分からない。
「少なくとも、そこの二人は「罪」が何なのか分かってるんじゃないかなぁ?」
クマはそう言うと、キョウを見た。キョウは表情を変えず、クマを見返した。
そして、クマはゆっくりと顔を動かすとユウの方へ顔を向けた。ユウは一瞬、ぎょっとした目になったが、す
ぐにクマから目を背けた。
「何か知ってるのか!?教えてくれ」
ヨリタがすかさず二人にそう聞く。
「な、何も知らないですよ!こいつが勝手に言ってるだけです!」
そう言ってユウはクマを指した。
しかし、クマはユウに反論することなく「教えなよ」とキョウに話すように促した。
「…これかなって思ってるものはあるんだけど、根拠がないから言えない」
キョウはそう言ったものの、私は「罪」が何なのか全く分からない。
「これかなって思ってるもの」とは一体何なのだろう。
「それって何なんですか?気になります…間違っててもいいから言ってみてくださいよ」
コトも私と同じことを思っていたようで、キョウにそう尋ねた。
「じゃあ…えっと――」
とキョウが「罪」を言おうとした瞬間、ユウはポンっとキョウの肩に手を置いて、
「キョウさん。みんなが混乱するかもしれないから止めておきましょう」
とキョウが話すのを遮った。
私にはユウが「言うな」とでも言っているように感じられた。
ヨリタやチヤも少し疑い掛かった目でユウを見ていた。
「そっかそっか、まだ根拠がなかったんだね。ごめんごめん。まぁいずれ分かると思うよ。
それで、他に何か言いたいことある?」
クマはそう言うと私たちを見渡した。
「何も解決できてねぇよ。結局のところ、なんで俺たちは自分の「罪」が分からないのか分かってないじゃねぇか。お前、教える気ねぇだろ。つーか、ヒントぐらいくれよ」
シュンスケがあまりにもまともなことを言うので、失礼なことに私は少し驚いた。
「ヒント?たくさんあげてるじゃないか」
クマは不思議そうな顔で私たちを見た。
ヒントなんてもらったっけ…?
「あ、もしかして…」
そう言ってコトが私を見つめる。
私は一瞬、何のことなのか分からなかったが、少し前にコト拾い、私に見せてくれた紙を思い出し、私はコトを見つめ返し「うん」と頷いた。
私が頷いたのを見るとコトは胸ポケットを探り始めた。
「みんな、これなんだけど…」
そう言ってコトは紙をひろげた。
前と変わらず、しっかりとした大きな文字で【ここに連れてこられたのは偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?】と書いてあった。
「その紙はいつ拾ったんだ?」
ヨリタは紙を見ながらコトにそう聞いた。
「えーっと……メイン命令1が終ったぐらいのときだと思います。自分の部屋に行ったらドアの前に紙が落ちてました」
「そうか…ていうことは俺たちがまだ、連れてこられたのはランダムだと思っていたその時から『ランダムじゃない』と伝えようとしていたんだな…。
他にヒント持ってる人はいるか?」
ヨリタにそう問われ私はサブ命令1で鍵を探していたときに見つけた紙を思い出した。
「キョウさん、キョウさん、あの紙持っていますか?」
私は何となく大きな声で言ってはいけないような気がして小声で尋ねた。
「あの紙?……ああ、あれね。持ってるよ」
「あの紙、見せるんですか…?あの紙の内容を見たら、きっとみんな混乱してしまう…」
私は紙に書かれた内容を思い出す。
確か【お前たちは誰を殺した?】と書かれていたはずだ。
あの時は私たちに向けて書いたヒントだとは知らず、誰に向けて書いたのか、【お前たち】は一体誰なのかとは分からなかった。しかし、これが私たちに向けてのヒントなのだとすると【お前たち】はここにいる【私たち】だ。つまり、私たちが【人を殺した】ということになるのだ。
「見せたほうがいいと思うよ」
キョウがあっさりとそう答えた。
「なんでですか?あの内容、覚えてますか…?」
「覚えてる。【お前たちは誰を殺した?】でしょ?
確かに、これは僕たちが人を殺したって言っているようなものだけど、これは僕たちを混乱させる罠なのかもしれない。信じすぎないほうがいいよ」
罠…。
確かに、このヒントは敵側からのものだ。嘘の情報だってある。でも、私はこのヒントは放っておいてはいけないような気がした。しかし、私は
「そうですね…。人殺しをしていたとすれば、そんな凶悪な犯罪、自分自身も覚えてるはずですよね。私たち、覚えていないのですから…」
キョウにそう言いながら、自分に「私たちは人殺しなんてしていない」と言い聞かせた。
「それじゃあ、みんなに見せましょうか」
そう言って、もやもやとした気持ちを取り合えず押し込んだ。
私の言葉にキョウは小さく頷いた。それから、ズボンのポケットから小さく折りたたまれた薄汚れた白い紙を取り出し、
「ヒント」
と素っ気なく言い、皆の前に紙を突き出した。
「あ、その紙はサブ命令1で鍵を探していたときに見つけました」
私がすぐさま、そうフォローした。
私の言葉にヨリタは「そうか」と言うと紙を覗き込んだ。
「なんだこれ…」
ヨリタは紙を見ると、顔をしかめ、そう声を漏らした。
その反応に、皆は「なにが書かれているのだろう」と、紙の周りに集まっていき、紙の周りには人だかりができた。
私はこの紙の内容に書かれていることを読んで、皆がどのような反応をするのかドキドキしていた。
やはり、最初に「この紙に書かれていることは罠かもしれない」と言っておくべきだっただろうか。
「えぇ!?どういうこと!!」
「僕たちが人殺しをしたって言いたいの…?」
「な、なんで…ころした、なんで……」
紙を見た皆は口々にそう言った。
私はそんな皆を落ち着かせようとして、
「あ、あの、みんな。この紙に書いてることは罠かもしれないから…お、落ちついて」
と言ったが、逆効果だった。
「ふざけんなよ!!罠なのかよ!?罠だったらブチころすぞ!!」
「罠」と言う言葉がシュンスケを逆立ててしまった。
シュンスケはクマの首元を掴み、小さなクマの体をひょいと持ち上げた。
私たちはシュンスケの行動を止めなかった。
いつもなら、ヨリタが止めていただろうが、今はクマの回答が訊きたかった。
ついに>>100レス超えることができました~!
アドバイス、感想など、本当にありがとうございます!
最近、更新が遅いですが、まだまだ続けていきたいと思っていますので、これからも宜しくお願いします💖
訂正版( http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=5572 )
の方も更新していきたいと思っているので、宜しくお願いします~