>>583
《ガッ》
不殺を信条とするfirstの理念や、発電室に入るまでの隙を捨ててまで蟲鴉に向けて撃ち込んだパチンコ玉だったものの、部屋を埋め尽くすような巨体である上に、不規則に蠢いている巨大蜈蚣の体に阻まれ、撃ち出されたパチンコ玉は最初と同様に重厚な外骨格に激突し、砕け散ってしまう。
巨大蜈蚣
『ギイィィィィィィィ…!!!』
更に悪い事に、術者である蟲鴉へ攻撃したと言うことを察知した巨大蜈蚣は攻撃を放った中川に狙いを定め、通常の蜈蚣には無い、無数の剣のような牙がズラリと環状に並んだ口と、建物を容易く倒壊させる強靭な顎を持って中川を呑み込み、噛み砕こうと襲い掛かる……
桜空「得体の知れねぇ音がする・・・・・こっちか・・・・・!」
(桜空は戦いの音が段々と近づいてくるのを感じると、急いで戦場へと向かう・・・・・
そして、巨大な蜈蚣の姿が見えると、あまりにも衝撃的かつ気持ちの悪い光景に、思わず足が止まってしまう・・・・・
が、中川の危機に気がつくと、一か八か自分を能力で蜈蚣の顔まで移動させ、ドゴッとパンチをおみまいする・・・・・
どうやら、ここなら能力は使えるようだと知ると、桜空はこの怪物をどう倒すか頭をフル回転させ始める・・・・・)
>>586
「っと、いっけねえ! また大将にどやされるとこだったぜ」
はっと我に返り、自省する。不殺を掲げるFirstにおいてこんな行為はご法度だ。
隆次は思想面であの氷華と通ずる部分もあり、度々殺人を犯しかけては桜空に大目玉を食らっている。
「お叱りから助けてくれてありがとよ、デカブツ」
皮肉混じりの感謝を述べ、再び逃走に戻る。
(けど、ホントにいいのか大将? ああいう奴まで助けるなんてのは、信念じゃなくて無節操だぜ)
胸中に靄(もや)を残しながらも、動きに淀みはない。
目の前の空間に、斜め向きのジャンプ台を形成。先程以上に大型で強力なものだ。そして迷うことなくドロップキックの要領で踏み込み、飛び上がった。
発電室までの距離が一瞬で縮んでいく。
攻撃を一切考慮せず撤退だけに注力したからこそ出来たことだ。
(この状況、存外悪くないかもしれないな……少なくとも、今は旦那達が攻められる心配はない)
まだ隆次は、桜空本人が近くにいることに気付いていない……