(>>16 回答ありがとうございます。あと二人ほどキャラの案があるので、一応それまでに留めておきます)
(かおりさんが投稿した場面が、仮の処刑宣言の翌日だと仮定して書きました。不都合などがあればスルーお願いします)
「どうかしましたか? 神狩会計。会長の演説中に余所見とは珍しいですね」
「いえ、なんでもないわ。ちょっと心配ごとがあっただけだから」
自分の隣に立っていた、同じく生徒会役員の安部野に声をかけられる。彼の問いに対して、美紀は本心を誤魔化す形で答えた。
――璃々愛は確かに得体の知れない不安分子だ。しかし他でもない百合子自身が彼女を肯定しているのなら、少なくとも璃々愛は百合子、及び自分の障害ではないのだろう。それより、問題は……。
「ところで神狩会計。今回の『昇格』に伴って一つ提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
「提案? 何かしら」
美紀がその話を聞き入れる姿勢を見せると、安部野はゆるりと口元を緩めながら言葉を続けた。
「今回の処刑対象は、自ら生徒会長に手を出した無謀者でした。無謀というのは時に恐ろしいもの。こちらにも読めない方法で、反逆を企ててくる可能性もあります」
「確かにね。でも、だからこそ今回の『昇格』でしょう? E組に堕ちた生徒は、この学園では無力も同じよ」
「無力だからこそ、ですよ。失うものがなくなれば、リスクを恐れる必要もない。恐れがなければ、過激な手段でも躊躇いなく実行するかもしれません。そんな危険人物を放置するわけにはいかないでしょう」
「……つまり、今回の処刑対象には監視をつけたいということ?」
「理解が早くて助かります。それに自分で言うのもなんですが、僕の観察力は人並みよりは高い。彼女たちに不穏な動きがあれば、それを理由に処刑を先導……あるいは煽動することも出来るでしょう」
いかがでしょうか? と最後に締め括って、安部野は自分の提案を述べ終わった。
確かに彼の意見は一理ある。それを踏まえた上で念には念を入れ、という理由での監視なのだろう。美紀はそう思案する。
「……なるほど、悪くないアイデアね。でもそれを通すには、会長の承認が必要になるから即答はできないわよ」
「勿論、承知しております。ですので生徒会長のお時間が空き次第、この案の是非を判断して頂きたい所存です」
「安部野くんの考えは分かったわ。一応今の話は、会長に伝えておくわね」
「ありがとうございます」
保留の返事を受け取り、うやうやしく頭を下げる安部野。その顔が下がっている間、美紀は彼の仕草を訝しげな目で見ていた。
安部野椎哉。彼は今年度の新学期から、白羽学園に転入してきた生徒だ。三年生とはいえ、新参者の彼が生徒会役員の座に就けたのは、優秀な学力と、学園への強い貢献心を認められたからという話だが。
執事のようだと揶揄されるほど、柔らかい物腰と周囲への綿密な配慮。その一挙一動があまりにも丁寧すぎて、逆に胡散臭さを覚えるのだ。従順という分厚い皮で、それとは真逆の性質を覆い隠しているような。
「おや、そろそろ始まるようですよ。正式な処刑宣言が」
百合子が立っているステージに安部野が目線を向ける。同時に美紀も、演説台に立つ彼女をじっと見つめた。
――板橋麻衣。松葉晃。結城璃々愛。安部野椎哉。誰が敵に回ろうと同じこと。親愛なる百合子に仇成す者は例外なく、全員破滅を辿らせるまでだ。
全校生徒の前、凛とした佇まいで直立する百合子の姿に、美紀は改めて自らの決意を固め直すのであった。
(>>18 名前書く場所間違えたああああorz)
(白野恵理さんの視点お借りしました。麻衣さんと晃くんが相談している一方その頃のような感じです)
長らく努力し続けてきた成果が実ったのだろう。今回の集会を以て、白野恵理は最底辺のE組から晴れてD組へと昇格できた。全体で見ればまだまだ下の方だが、勉学のプレッシャーからは幾分か解放され、心にも今までより余裕が出来るだろう。
「初めまして、白野さん! D組へようこそ!」
「これからは私たちと一緒に頑張ろうね!」
「う、うん……」
余裕が出来る。と恵理は思っていた。しかしあの集会以降、彼女の心はずっと晴れない。
恵理と入れ替わるようにしてE組に降格した、二年生の板橋麻衣と松葉晃。自分(ともう一人)の昇格が二人を贄にして行われたのだと思うと、素直に喜ぶことはできないのだ。それに今だって、目の前の新しいクラスメイトは朗らかに話しかけてくるが、少し目を逸らせば麻衣と晃の侮辱話を嘲笑いながら繰り広げている生徒が見える。
果たして自分は、こんな生徒たちと上手くやっていけるのだろうか? 恵理が溜め息を吐きそうになったとき、教室の外がやけに騒がしいことに気づいた。
「どうしたの?」
「あー、二年の人が廊下で倒れたみたい」
「大分しんどそうだけど、この人って確か……」
D組前の廊下を見ると、確かに小柄な男子生徒が床に転がるようにして倒れ付していた。だが、周囲の生徒たちは彼を遠巻きに見るばかりで、誰一人として彼に手を差し伸べる様子はない。通常なら誰かしらが彼を介抱するなり、保健室に連れて行くなどするはずなのだが。
「お前保険医員だろ? 早く連れて行けよ」
「はあ? 嫌だよ。確かにあいつは処刑対象じゃなかったけどさ……」
「分かるー。『広報部』の奴らとは関わり合いになりたくないし」
うずくまって呻いている男子生徒には声もかけず、生徒たちはひそひそと介抱の面倒を押し付け合う。周囲の話に耳を傾けると、どうやら彼は「広報部」と処刑関連で過去に何かがあったらしいことが聞き取れた。
この学園において、自らの評判は生命線と同義である。例え些細な行為でも、それが学園全体――もっと言えば生徒会長の意向にそぐわなければ、たちまち白い目を向けられてしまうだろう。
……しかし、それでも。
「あ、あの! 大丈夫ですか?」
彼が敬遠される所以こそ恵理は知らないが、それでも病人が利己的な都合で放置される光景は気分が悪い。
自分の評価を犠牲にする覚悟を決めると、恵理は思い切って二年男子生徒に声をかけた。
(長文になりすぎるため、男子生徒の詳細などは次回くらいの投稿で書こうと思います。それまでに挟みたい交流などがあればどうぞ)