rk 【エンジュ×シンデレラ】
>>102の続き
「………またぁ?」
シンデレラは、手紙…だった、
びりっびりに破かれた紙きれを
踏みながら、うんざりといった表情でため息をつきました。
「これでもう78通。」
ここのところ毎日、目が覚めると枕元に置かれている手紙。
家族も、使用人も、不信人物は
いなかったと言う。
寝ずの番をつけても捕らえられない。
なのに、手紙だけは枕元に必ず置かれているのです。
「今日のは特に強烈だったわね…」
『もう目が覚めたのかな?僕の愛しいお姫様。
君の愛らしい瞳や、そよ風のように柔らかい声、どんな素晴らしい陶器にだって負けない白い肌。今日も本当に美しいね。
君に会えない一瞬を、何十年にも何百年にも感じるよ。
君が他の男と話していると考えると、全身の毛穴から血を噴き出して死んでしまいそうになる。
僕の全ては君の物だ。髪も皮膚も爪も内蔵も眼球も、当然心の全ても。
愛している、どうか僕だけのお姫様になってくれないかな?』
シンデレラは、最後まで目を通し、すぐにそれをビリビリに破いた。
「僕だけのものになれも何も、宛名も無いし…返事すら書けないわ。」
勿論、宛名があったら彼女は手紙を突き返しに行くでしょうけど。
そこまで考えたところで、シンデレラは、ふわりと頬を撫でる柔らかい感触に気がつきました。
それが『人間の指』であることに気がつき、ぶわりと鳥肌がたちました。
『それは、僕の物になる気があるって事でいいのかな?』
こんな状況だというのに、うっかり胸がときめいてしまうような甘い声。
恐る恐る、声のする方を向くと…
『やっと会えたね、お姫様。』
天使のような笑顔の、魔王がそこにいました。
rk 【エンジュ×シンデレラ】
>>103の続き。楽しい。
「………お引き取り下さい。」
美しい。
手紙の送り主の容姿は、それしか口に出来ない程に、美しかった。
(魔王くんも凄く綺麗な顔してるんだけど……何だろう。別格?)
世の中には時折、絶対的な美というものが存在する。
あれに比べてとか、個人的にはとか、そんな相対評価での審美を超越した、誰の目にも明らかなそれ。
あれくらい普通だよ、などと強がろうものなら却って薄ら寒くなってしまうほどの、絶対的な美。
(この人は、そういう類だ…)
圧倒的な容姿を持つ彼に、その場で固まってしまうシンデレラ。
そんな彼女を見て、嬉しそうに笑みを深め、言葉を続けた。
「はじめまして、シンデレラ。
僕の名前はエンジュ、気軽にエディでいいよ。
一応、魔王として闇の存在達を統治してる。どうぞよろしくね。」
言葉に邪気がなかったため、
ついシンデレラも返してしまいます。
「は、じめまして?
この男爵家の養女の、アヤです。
どうかシンデレラと呼んで下さい。」
「分かった。よろしくね、シンデレラ。」
「は、い。エディ…?」
握手をして、にこりと見つめ合…
「っっって、そうじゃないっ!!貴方が手紙の送り主!?私のこと愛してるってどういう事なの!?ていうか、魔王って!!エディが魔王なら、魔王くんは何なのよ!?」
わず、シンデレラはパニックになって、エディに質問を浴びせました。
「あ、あはは…落ち着いてよ。1つずつ、ちゃんと答えるからさ」