『よかったら、僕と付き合ってください』。その言葉を聞き、私は───何も思わなかった。
ただただ無心で、考え事に耽っていた。
この告白を受けたら、私はどうなるのだろう?かなりの確率で奏とは絶交してしまうだろう。だって、奏の想い人を私が奪ってしまったのだから。でも、私は少しくらい、幸せになれるかもしれない。
この告白を断ったら、私はどうなるのだろう?多分黒瀬君が失恋したことに悲しみ、奏の告白は失敗に終わるかもしれない。
一体私は、どうしたらいいの?ねぇ、誰か教えてよ。ねぇ、ねぇってば。
心の中に強く訴えかけても、解決策どころか返事すら来やしない。せめて、せめて何かを切り捨てられるほどの強靭な精神があれば。……あれば、私はどっちを選ぶのだろうか?
「黒瀬君は、自分の幸せか親友の気持ち、どちらを優先しますか?」
告白への返事より先に私の口から出た言葉は、それだった。告白してくれた相手に、受けるか受けないかを知らず知らずのうちに決めさせる、最低で最悪の、逃げの一手。
「自分の幸せか、親友の気持ち……それは、僕には決められない。僕なら、両方得る道を探し出す。どれくらい時間がかかろうと」
「両方、得る道……」
黒瀬君の言葉に、私は言葉を失った。現実では絶対にありえない、選択肢。私にはその選択肢に行く道すら、昨日の出来事で消え去った。
だって、その道を行くには、私が悠馬と付き合って。さらに奏が黒瀬君と付き合うという選択肢。そこに黒瀬君や悠馬の気持ちも合わされば、この選択肢が実現するなんて、それこそ天文学的確率だよ……。
そんなことを考えていると、開け放たれていた窓から、一陣の風が入ってきた。外を見ると、まるで私の心情を表しているかのように、曇天の空模様だった。
私は、どうしたらよいのだろうか……。
黒瀬編
>>24「自分の幸せか、親友の気持ち……それは、僕には決められない。僕なら、両方得る道を探し出す。どれくらい時間がかかろうと」
黒瀬君・・最初は良いやつだったじゃないか・・
>>459「だって僕、迷子だもん☆彡」