『生意気な弟×姉』
わたしには弟がいる。
といっても、血の繋がりはない。
彼はわたしがまだ幼い頃、お父さんに連れられてこの屋敷へやってきた。言葉を紡ぐことさえままならない小さな小さな男の子。それに愛着を覚えるのに時間などかからなっただろう。
いい姉であるように。常に弟の先を行って導いてあげられるように。毎日努力してきたつもりだった。けれどわたしは気づかなかったのだ。──弟の狡猾さに。
『アーノルドとオリビア』
『お母さん、できました!』
『あら、満点! すごいわねえ』
満面の笑み、赤い丸だけの答案。
もう慣れた作り物の表情。それに気づきもしない母親の後ろに、姉≠ェいる。
ここからだとよく見えるんだよ。
『……』
ああ、『俺に嫉妬してるんだな』って。
なんであの子ばかり褒められるの、わたしだって頑張ってるのに、でもそんなこと言えない、だってわたしは姉さんなんだから。
……っていうさ、そういう声がいやってくらい聞こえてくる。
そうだよね、オリビア。
本当の子じゃない♂エばかり可愛がられてちゃしかたないよね。
「オリビア」
「……なによ」
「嫉妬してる?」
そう悪戯に聞いてみれば、オリビアのつり目がちな瞳が動揺で見開かれた。
「……ばっかじゃないの」
見開いたあと、すぐに細めた双眸には淡い涙が浮かんでいる。
──ああ、ほんとうに。
俺に嫉妬してしまうくらい、泣いてしまうくらい、自分を責めてしまうくらい、オリビアって馬鹿だな。
「大丈夫だよ」
泣いている彼女≠フ手をするりと取った。
「可哀想にね、無能だと誰にも見向きされなくて」
でもさ、
「俺だけがオリビアを見てやるから安心しなよ」
そういうところが、心の底から好きだって。
……気づいてる?
(>>2->>3の兄弟。こういうのが性癖すぎる)