一緒ならば 【 ぬらりひょんの孫 / リクオ×夢主 】
宴の夜。騒がしい妖怪たちの声を背に、私と、そしてリクオは縁側で座っていた。
何も言葉は交わさない。でも、とても穏やかな時間。
つぼみになり始めたしだれ桜を見る。
「変わらないね、ここは」
ここに住む者たちは血が繋がっているわけではない。でも本当の家族のようで。すごく暖かい。普通の家庭で、親からの愛情を受けて育ってきた私でも、ここの温もりは羨ましい。
「……ずっと、ここの暖かさに触れていたいな」
ぽつりとつぶやいた。それができたらどんなにいいだろう。
ふと、左手にぬくもりが宿る。目を向ければ、赤色の全てのもの魅了する瞳と合う。
「――じゃあ、来るかい?」
「え?」
「俺の嫁として。奴良組に」
時が止まる。
賑やかな妖怪たちの声も聞こえなくなる。
「え、ちょ……質の悪い冗談?」
「そんなわけねぇ。俺はお前に心底惚れてんだ」
リクオの手が腰に周り、私を引き寄せる。酒のかすかな甘い香りで酔いそうになるほど、顔が近い。
「私……人間だよ? きっと、奴良組のお偉いさんに反対されるよ」
「なら、俺がねじ伏せてやる。俺は、奴良組3代目総大将だからな」
口角を上げて、自信有りげに言われてしまえばもう何も言えない。だって、今までの人生で彼がその自信に応えないことはなかったのだから。
「俺と一緒になれ」
もう、言葉はいらない。自然とまぶたが降りて視界が暗闇になる。唇にかすかな温もりが宿った。
胸が幸せでいっぱいになる。
(生きよう。この人とともに。壁があってもきっと一緒なら乗り越えられる)
私もリクオの背中に手を回す、その想いに応えようと唇を重ねる。
2人の世界で、しだれ桜だけが私たちを見つめていた。
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シリーズもの。続きます
【ぬらりひょんの孫】(今のところ、リクオ×夢主のみ、)
・君と共に、/ >>11-18
・新月の夜の訪問者 / ・タイトル未定(夢主姉設定) / >>22-24
・桜花爛漫 / >>29-30 ※未完
【うたの☆プリンス様っ♪】
・魔法の手 / ( 翔×春歌 )>>41、>>43 ※未完
・近くて遠いその関係 / ( 翔×夢主 )>>26