桜花爛漫 【 ぬらりひょんの孫 / リクオ×夢主 】
浮世絵町には、最も古いとされる桜の木がある。
春になればそれは見事な桜を咲かせる。
しかし、ある時からその桜の木に関するおかしな噂が流れ始めた――。
「春じゃないのに桜が咲く?」
「そうなんだよ。昼は葉が生い茂る普通の木。だが、夜になると、綺麗な桜が咲いているらしいんだ」
パソコンの画面を見ながら、清十字怪奇探偵団団長、清継はそう告げる。聞いたこともない噂に、氷麗とリクオは顔を見合わせた。
「僕はこれが、妖怪の仕業ではないかと踏んでいるんだが……奴良くん、知っているかい?」
「僕が知る範囲では……奴良組にそんな妖怪いたかなー? 氷麗は知ってる?」
「いいえ。私も初めてお聞きました」
リクオも、またつららも首を横に振る。
「でも、桜が咲くだけなら何の被害もないんじゃ……」
「実は、その桜は人を酔わせるらしいんだ」
人を、酔わせる?
その場に集まる団員全員が、清継の言葉を復唱する。
「そう。その桜を眺めていたら、頭がぼーっとし始めて……。気づいたら朝になっていて、自分の姿を見下ろすと――」
「見下ろすと……?」
「何故か上半身裸だったり、顔に変な落書きをされてたりしてるんだ」
「……はぁ!?」
清継が真顔で告げた言葉に、全員が素っ頓狂な声を上げる。
「それが、つまり……“桜が人を酔わせる”ってこと?」
「そうだ。なんとも不思議だろう」
人の命に関わることでもない、それはただの妖怪の悪戯なのでは。全員の心の声が一致する。
「でも、この町にそんな古い桜の木があったこと自体初耳だよねー」
「ねー」
巻と鳥居が顔を見合わせて声を上げる。確かに、リクオもそんな桜があったことは初耳だ。
「若、どうします?」
「おじいちゃんなら知ってるかなぁ……」
リクオが唸り、考えた末、名前を出したのは――リクオの祖父、ぬらりひょんだった。
「……ってことなんだけど、おじいちゃん、何か知ってる?」
「はて、そんな妖怪おったかのぉー」
予想外れの答えに、リクオは目を見張る。ぬらりひょんは純血の妖怪。長い年月を生きていたため、特にこの町について知らないものはないとリクオは考えていたのだが。その祖父は知らないのならば、ほかに知っていそうな妖怪はいないだろう。
「リクオや。その妖怪は人に危害を加えるわけではないのじゃろう。ならば放っておけ」
ぬらりひょんは、そう告げた。だが、リクオはその妖怪が気になって仕方が無かった。
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急に始まって急に終わるぬら孫夢です。長編にしようとしたけど、いい感じに続きが思いつかなかった没ネタ。
前回の真弘×珠紀中編は、内容が思いつかないので暫く放置。思いついたら上げていきます、
【ぬらりひょんの孫】(今のところ、リクオ×夢主のみ、)
・君と共に、/ >>11-18
・新月の夜の訪問者 / ・タイトル未定(夢主姉設定) / >>22-24
・桜花爛漫 / >>29-30 ※未完
【うたの☆プリンス様っ♪】
・魔法の手 / ( 翔×春歌 )>>41、>>43 ※未完
・近くて遠いその関係 / ( 翔×夢主 )>>26