眠り姫にキスを 【 緋色の欠片 / 拓珠 】
(やめろ……珠紀! 俺なんかのために――命を捨てようとするな!)
必死に叫ぶ声は、言葉には出ない。
重なる唇を介して、珠紀から何かが流れ込んでくる。そう、それは彼女の命そのものだった。
彼女は、自分の体の中に眠る封印の力を自らの命とともに拓磨に注ぎ込み、封印するつもりらしい。だが、拓磨にはそんなことを考える暇はなかった。
――愛してる。
キスをされる前、彼女の口から囁かれた愛の言葉。その言葉は、自分の中に眠るもうひとりの自分を呼び覚まさせた。
そして、そのもうひとりの自分も彼女が深い永久の眠りに落ちてしまうのが嫌だった。
(やめろ、珠紀……! やめてくれ!)
しかし、拓磨の声が届くことはなく、珠紀の体からは少しずつ力が抜けていく。
そして、珠紀が崩れ落ちたとき、それを拓磨が支えた。
変化した腕は元に戻り、角も顔も元に戻る。彼女の望んだ通り、力は拓磨の中で封印された。
「何やってんだ……馬鹿っ!」
抱き抱えた体から熱が少しずつ引いていく。そのなくなっていく温度に恐怖を感じる。
珠紀が死んでしまう。自分を支え、そして愛してくれた珠紀が死んでしまう。そんなこと、拓磨が耐え切れずはずがなかった。
「死ぬな、珠紀っ!」
今度は、自分から珠紀の唇に己の唇を重ねる。そして、彼女から注ぎ込まれた力を半分、彼女の中へ注いでいく。同時、彼女の体温が戻ってくるのを感じた。
顔を離し、数十分経ち、ゆっくりと、珠紀の瞳が開いていく。
「たく……ま?」
状況に追いつけていないのか、少し呆然とした声で拓磨を呼んだ。それすら、愛しくてその体をぎゅ、と抱きしめる。
「死のうとするな、馬鹿……っ」
震える声で告げれば、腕の中の珠紀は何も言わずに頷いた。
――王子様のキスは、眠り姫を呼び起こす。どうか、自分の目の前から消えていなくならないでくれ。
‐‐‐‐‐‐
……どうしよう、拓珠ばかり思いつく。本命は真弘先輩なのに() それは全て、拓珠が素敵すぎるからだ!←←
いっそのこと、緋色の欠片専用のスレ作ろうかな…。うん、そうしよ、
一度、拓磨へ命を注ぎ込み死と生の間を彷徨う珠紀ちゃん。その間、拓磨は何を思ってたんだろうという思いつきから生まれた作品、
拓磨……かっこよすぎるでしょ←←
【緋色の欠片】
▽拓磨×珠紀
・赤い糸のその先は、/ ・貴方に会いたくてたまらない / >>5-6
・眠り姫にキスを / >>7
▽真弘×夢主
・夏の夜 / >>8
・七夕の夜に / >>44