>303 の続きー!
章末問題をすべて解き終わる(ほとんど遥の手助けでできたようなものだけど)頃には、太陽が1日で一番鮮やかな時間になっていた。遥は目を細めながら、今日はそろそろ終わろうか、と切り出した。西日が眩しかったんだろう。勉強とはいえ遥と2人きりの世界に浸っていた私からしたら、正直恨めしかった。
「疲れたぁ〜!」
「お疲れ様。凄いじゃん、なんか解いてる時も楽しそうだったし」
「げっ」
気づかれてる⁉
「1日でそんなに数学が好きになっちゃうなんて凄いよ!」
気づかれてなかった。
なんだか嬉しいようなモヤっとするような、いつまで経ってもこの感覚は慣れない。
「ま、まあ……遥が教えてくれたから」
本当か嘘か曖昧な言葉で返すと、遥はさっきとは違う目の細め方をして「ありがとう」と言った。
遥の後に続いて階段を下り、玄関の扉を開け、昼間よりもだいぶ減った蝉の声の中に踏み出した瞬間――この想いが現状維持では済まされないと私は気づいて、長いこと隠すうちに溜まった言葉のあれこれが声帯を震わせた。
聞いたこともない声が出た。上ずっていて、尖ってなくて、まるで全然知らない女の子、みたいな。
「貴音、どうしたの?」
……好き。
「えっと、その」
――好き。
「遥……」
――好き。
「……勉強、教えてくれてありがとね」
―― 。
「なんか今日の貴音、素直だね」
素直じゃないよ……。
たった2文字を、幼稚園生だって知っている2文字を伝えることが、どうして私はできないんだろう。ほんの一瞬の為の勇気にだって、小さくなって塞ぎこんでいる。そんな私を置いて、遥は自転車に跨った。
「じゃあ明日、学校でね!」
大袈裟に手を振って、遥は電線の向こうの夕焼けへと走りだした。エンドロールのように、街中に日暮れを合図するメロディが響き渡る。
遥の姿が見えなくなるまで、私は心憂いパンザマストの波に呑まれていた。
最後の章を載せる前に安価のテスト!
これでいけるかな……?
>>285
>>290
>>303
>>311
>>326
結構長くなったwww
遥貴でメランコリック、完結です!
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