太陽は地平線へと消え、地球をぐるりと周り、そしてまた退屈な平日を連れて昇ってくる。
珍しく理科準備室の扉を開けても遥がいない。大体遥は私より先に来て遅く帰るから、教室で一人きりなんて滅多にないことだった。
どっちにしても、もうじき遥も来るはず。重たいカバンは机に置き、晴れなのにあまり日光の当たらない窓辺に寄りかかる。校舎の造りのせいで朝は太陽の光が東の教室棟で遮られ、何にも邪魔されずにのんびりとした青空を眺めることができた。
ヘッドフォンを耳にあてがい、シャッフルで曲を選ぶ――あまり雰囲気の出ない曲が出た。メランコリック。ラブソングなんてと最初はあまり気に食わなかった筈なのだけど……不思議と耳に残っている曲。
「遅いな、遥……」
昨日まで元気だったんだし、急に倒れるってことはないと思うけど……そもそもそれなら先生もっと早く来るよね。いや、あの先生のことだ、私は後回しになるかも――
「ううん、ネガティヴはやめよう」
サビに入る前で、私はヘッドフォンを外して首元にかけた。
遥のやつ、私が先に来てるって知ったらどんな顔をするだろう。いっそ写真にでも撮ってみようか。案外「あ、貴音おはよ〜」なんて普通の挨拶をするかもしれないけど。
「なんかちょっと素直になったのかな」
この気持ちがなんなのか、私は昨日の時点で気付いてしまった。ヘッドフォンをしていたら、あいつの足音に気付けない。足音が扉の向こうまで近づいてきて、その姿が見えるまで……その時間がないと、心の準備ができそうになかった。
メランコリックはラスサビへ。
微かに、前方から足音が聞こえてきた。先生ではない、なんとなく音の重さであいつだとわかった。頬を叩いて少し意地悪な笑顔を作ってみる。あいつが扉を開けたら、なんて言ってやろうか。
足音は徐々に近づいてくる。あいつの姿が見えるその前に、聞こえないように小さく呟いてみた。
『――遥、大好き』
>>285
>>290
>>303
>>311
>>326
結構長くなったwww
遥貴でメランコリック、完結です!
感想ください!()