暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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566:凪海◆L6:2016/05/11(水) 20:56 ID:ySs

>>559

 海は刀をおろした。

海「なんて、ごめんね。殺せんせー。カエデに心臓やられて、ただでさえ弱ってるのに」
殺「……海さん、君は……」
海「如月って名前、知ってる?」

 その名前に、僕らはハッとした。
 この名前を知らない人は、この日本にはたぶんいない。
 僕らが小学1年生の頃、とある町で同じく小学1年生の女の子がでかけたまま行方不明になったという事件が起こった。最後に目撃されたといわれている場所には、大量の血痕があったと言われている……。
 その事件は日本じゅうを震撼させた。僕ら小学生は親同伴の登下校がしばらく続いたほど……。

海「本郷っていう苗字はね、私が殺し屋になってから自分で考えた苗字なんだ。如月が……、私の本当の苗字」
速「ちょっ!」

 速水さんが驚いて声をあげた。
 僕らは慌てて視線をそらそうとした。

海「そらすな、バカ。ここからが本題なんだから……」

 そらすなって言われても……。
 海は、制服を脱ごうとしていた。
 誰だってそらすって!
 そう、抗議をしようとして、僕らは声を詰まらせた。
 海は、ブレザーを脱いで、ズボンをたくしあげた。
 
海「これ、『死神』なら、見覚えあるでしょ?」

 海の体は、無数の切り傷で刻まれていた……。
 
☆(海side)

8年前、夏休み

 あー、宿題終わらない……。
 さんすーとかわかんない。どーして52−38が14になるの……。
 あとはどくしょかんそーぶんと……。
 わたしの家は、ひいおじいちゃんのときから、からくり箱という物を作るしょくぎょーをしているんだ。かけたピースをはめて、それをパズルのようにかちゃかちゃ動かすと、箱になって、開くんだ。
 ママのじっかは、けんどーをやっていて、わたしは今、その帰りだった。
 正面から、帽子をかぶった優しそーなおにーさんとすれちがった。
 すれちがった瞬間、背中に寒気が走った。
 そう、寒気、だった。

海「あ……」

 血が、でた。
 それも、今まで見たこともないくらい、大量に……。

海「たす、けて……」

 わたしは、手を、精一杯、のばした。
 すれちがったおにーさんは、信じられないような顔をしながら、手に、ナイフを持っていた。
 血が、たくさんついた、ナイフ……。
 意識は、そこで途絶えた。

病院

ロ「大丈夫か」
海「だ、れ?」
ロ「わたしは、ロヴロだ。殺し屋をしている」

 ころし、や?
 目覚めたそこは、くすりのにおいばかりして、なんか、きもちわるかった。
 わたしは、さんそマスクをつけられていた。
 体じゅうを見回すと、無数の、傷……。

海「わたし、刺された。やさしそーな、おにーさんに刺された……」
ロ「この日本で今、街中を歩いている殺し屋がいる。『死神』と呼ばれている、殺し屋だ」
海「……そいつが、こんなことしたの?」
ロ「おそらく、そう思われる……。奴は神出鬼没だ。気づいたら、そこにいる。そして、誰も知らない」

 そのとき、幼い私の心を支配したのは、憎しみだった。
 こんな体にしたあいつを、心の底から殺したいと思ったのだ。

海「ねぇ、殺し屋って誰にでもなれる?」
ロ「……つらい仕事だぞ」
海「いい、構わない。あいつを、殺せるんだったら、つらくても、苦しくても!」



海「私は、私を殺そうとした『死神』が憎くて、殺し屋になったんだ……」


凪海 (ノ>_<)ノ ≡dice5:2016/05/11(水) 21:28 ID:ySs [返信]

>>566、「傷の時間」にするね!


凪海:2016/05/11(水) 22:14 ID:ySs [返信]


海「女の子にとってさ、体に傷がつくことがどれだけ辛いことか。別にこの学校に来たとき、女子の制服でも良かったんだ……。でもさ、こんな傷じゃん? 隠すためには男子の制服を着るしかなかった……」

海は、ぽろぽろ涙を流していた。
僕は眉をひそめた。
海は、殺せんせーの胸ぐらをつかんで、思い切り引き寄せた!

海「なんで、あのとき。私を殺さなかったの? あのとき、あんたが私を殺してたら、こんな、辛い思いはしなくて済んだ! ねぇ、どうしてよっ‼」

殺せんせーは、相変わらず読めない表情で、黙り続けていた……。

海「答えて、くれないんだね……」
殺「……怖かったんです」

!?

殺せんせーがゆっくりと語る真実に、海は驚きの表情を浮かべた。
そう言うということは、殺せんせーはかつて死神で、海を傷つけたことを認めることになる!

殺「あの、すれ違った瞬間……。言いようもない恐怖に襲われました……。まるで、虎に後ろから食い殺されるような、恐怖……。そして、思わず……」

虎に後ろから食い殺されるような、恐怖……。
それの名前を、殺せんせーは。そして僕らは知っている。

おそらく、殺気だ……。

海「殺したんだね……? 如月海を……。いや、違うか。結局のところ、如月海を殺したのは、私自身だ。あのとき、あんたを憎く思わなければ、私は本郷海にはならなかった。あんなことには、ならなかったんだから……」

海は、崩れ落ちた。

渚「海っ!」
海「近づくなっ!」

その声に驚いて、僕は思わず立ち止まった。

海「……私が殺し屋になって2年くらいしてから、私は世間から『死神もどき』と言われ、恐れられるようになった。私が標的としたのは、全て。殺し屋だった……。殺し屋が憎いから、殺し屋をこの世界から消そうと思った。ただ、それだけ……。でも、私は決して『死神』にはなれなかった」

その言葉は、かつて海が言っていた言葉だ。
『死神』には、なれなかった。

海「『死神もどき』の殺し方はね、第三者に殺しを実行させることだった。例えば、私が殺せんせーを殺したいとする。でも、それはあえて自分ではやらない。何気ない風を装って標的に近づき、それと同時に、私はその標的と仲のいい人を見つけ、その仲のいい人に暗示をかけ、標的を殺させる。それが、『死神もどき』の殺し方だった。『死神』は自分で手を下すけれど、『死神もどき』は自分ではなく、他人にやらせた。そういう、残酷な殺し屋だったんだ。私は……」

海は、うずくまって言った。

海「そしてある日、事件は起こったんだ……」


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