>>277続き
・・・
「そうだよ、でも恨めしく言わないで欲しいな。あのまま放置したら、鬼が無理矢理転ばせに来るよ」
「例えば?」
「無人のトラックがいきなり突っ込んで来たり、鉄骨が上から落ちてきたりだね」
そう言ってユナルも紅茶を飲んだ
現在のユナルの声音は、普段の暖かな声音とは違い恐ろしく冷気を帯びている
ケイやアーテル以外の人なら驚きを隠せないだろう
しかし、ケイはこう考えていた
たぶん、これがこの人の本来の姿なのだろうと
自分の作戦を実行するが為に、本当に信頼できる者以外を慈悲もなく捨てる
結構、冷酷なのかもしれない
「そういえば、ユナルさんに聞きたいことがありますが」
「ん?なんだい?」
「鬼について何か知っていますよね?絶対に」
この時、ユナルはケイの瞳を見た
怪盗レッドの仕事モードの時と瞳だ
力強くも独特の冷たさを持つ声音
なんとなくユナルは親近感が湧いた
彼も自分と同じように二面性があるんだと
「うーん、そうだね…あの鬼は…幽霊と言ったほうがわかりやすいかな?」
少し悲しそうな顔をしながら言葉を続けた
・・・
ケイがいう鬼は、黒い肌を持った人間のことだよね?
何度もいうけど、アイツは幽霊だよ
先に僕とアイツの関係だけいうね
因縁関係、以上
この関係について、詳しくとか受けつけないから
なんとなくケイは勘づいていると思うけど僕と同類の生き物
つまり、【カミサマ】
いや、アイツの場合はある意味【神様】のほうが正しいかもしれないんだけどさ
アイツは、昔に大切な存在があった
確かケイも夢の中で男口調な少女の声が聞こえたよね?
その少女がアイツにとっての大切な存在であり
アイツがこの世にさまよう原因を作った子だよ
ちなみに、その子は火事で親と一緒に死んじゃったんだ
ちょうど目の前にいたアイツは、助けることなんて出来なくて
悔しくて辛くて悲しくて、それをぶつける場所なんてないから苦しかったんだろう
でも本当のあの子は、親に愛されなかった子
そして貪欲に愛に飢えた子
あの火事は、親を自分のものにするためだった
幼い子供だからこそ、純粋な気持ちで残酷なことをしたんだろうね
もちろんアイツは、そんなことに気がつくはずがなく
あの子を別の形で生き返らせようとしている
そして、完全な"舞台"を作る気でいる
かつて皆が望んだ飽きることのない"日常"とその続きをね
でも、そんな過去に囚われるなんて馬鹿馬鹿しいと思わないかい?
今、戻ったて意味がないのに
いや、本当に意味なんてないんだよ
あ、ごめん熱弁したね
まぁ、そんな感じだと思って
今回の事もだけど、アイツは悪気なんてない
いや、わかってないんだよ
アイツは、過去に止まったまま成長してしまったんだから
じゃぁ、僕はもうそろそろ帰るよ
ケイ、後は頼んだよ
・・・
ケイ目線
嫌というほど見慣れた場所
もう日が傾いてオレンジの日射しが差し込んでいる
目の前にいるのは鬼と転んでしまった人達
ユナルさんの姿を探したけどいなかった
なんとなくわかる
これが、最後なんだって
どうにかこの直線距離を縮めないと
ーだるまさんがころんだ
足に鋭い激痛を走る
暫くすると生暖かい液体が流れてくるのを感じた
本当は、念の為見て応急処置を取りたいけど
鬼が見ているから、そんなことは出来ず堪えるのが精一杯だ
ーだるまさんがころんだ
僕は全速力で走り抜けた
痛みなんて感じている暇なんてない
ただ、目の前にいる皆を助けたかった
それに、これ以上続ける訳にはいかない
だからといって、呼ばれたら即ゲームオーバーに決まっている
ーだるまさんが…
ついに鬼の背中に触れた
皆が目を覚ましす
一斉に折り返せ!
アスカが俺の足を労って肩を貸してくれたけど断った
アスカが捕まってしまうと困るんだ
ー止まれ!!
ピタリと止まった
体はいうことを聞かずに、動いてはくれない
鬼は、数字を数えながらまっすぐと僕に近づいてくる
あ、そういえば前も思った
この人は誰かと顔が似ている
その事がやっとわかった
この人は……
僕の目の前でピタリと止まった鬼はそんな事を塞ぐかのように言った
ー日が暮れるからもう帰ろう
>>275->>278超面白い。色んなキャラがいるけど、その中のキャラに俺のキャラがいると思うと、なんというか、新品のものを買ってもらえたときのように、新しい本を買ってもらえた感が凄いこみ上げてくる。面白い。
ちなみに、話は本当に終わりで続きはない
補足だけしとく
鬼は、【カミサマ】である少女を弱愛している
今回の事件は、【カミサマ】のお遊び
アーテルの名前が呼ばれる時に■■■となっているのはアーテルの本名で読んでいるため
というか■←の記号はネタバレ防止にちかい
おまけ 後日談
・・・
「なぁ、ニック!聞きたいことがあるけどいいか?」
日本の新聞紙から顔を上げるとリュナが目の前にいた
ちょうど、眠ったまま起きない事件が解決されたという記事を見ている時に
最近、織戸恭也が目を覚ますがなかったが今朝解決されたのだ
どういう原理なのかさっぱりわからない事件
新手の組織が…と思い、新聞から情報収集したとたんである
「リュナ、今は情報収集で忙しいんです。後から聞いて下さい」
「それで、"だるまさんがころんだ"ってどういう遊びなんだ?」
「って、貴方ぜんぜん話聞いてませんよね?」
なんやかんやでニックの言う事を聞くリュナが無視してまで質問を投げかけるのは少し珍しいことである
同時に、こういう時のリュナは質問に答えるまで何度も繰り返し聞いてくるので、渋々答えるしかないのだ
まぁ、一応場所を考えて質問しているらしいので半分問題ないが
「"だるまさんがころんだ"というのは日本の遊びです」
「ちなみに、ルールは?」
「詳しくは知らないが、鬼が後ろ向いて何かを言っている間に近づき、前を向いたら銅像のように止まる。動いたら鬼の元に行く感じだった気が」
すると、リュナは目をパチクリした
表情からして予想と違ったみたいだ
しばらく考える仕草をすると、またニックに質問を投げかける
「えーと、ナイフとか投げて無理矢理転ばせるというルールってあるのか?」
「なんで子供の遊びが危なかっしいものになるのですか?」
「え?じゃ、じゃぁ、呼んだ人の魂を抜く的な事とかしないの?」
「いや、しないに決まっているでしょ!まったく、何処ぞのデスゲームなんですか?それ」
マジかよ…
リュナが小さく呟いた
しかしそんな小言はニックの耳にはハッキリと聞きとれている
彼女は、だるまさんがころんだを何と勘違いしているのだろうか?
なぜ、命をかけるサバイバルゲームと化としているのか?
新聞から情報収集するニックは、その2つの疑問が浮かんでしまい気になってしまう
「いやー…俺の家の"主"がオニとなってだるまさんがころんだをしていたからさ、そう言うゲームなのかなー…って」
「あぁ、つまり、その主がデスゲームしていたのか…。リュナ、その主とやらは何か病んでるのか?今ならオススメの精神科を探してやるが」
「せーしんか?よく分からねぇよけど、ありがとな!その…オススメのせーしんかについて主に行っておくぜ!!」
ふと、ドアからノックする音が聞こえた
リュナはいつも通り消えて、ニックは何事もなかったかのように新聞の続きを読む
すると、織戸恭也が入ってきた
どうやら、報告にきたらしい
「すいません、急遽休んでしまいまして」
「いや、今回の事は事件にも発展していることだから気にすることではない。ただ、一つ質問があるのだが」
「なんでしょうか?」
「…なにか夢を見たか?」
「夢?…最近見たものでは……だるまさんがころんだという夢だった気が」
「すまない、いきなり変な質問をしてしまい」
「あ…いえ…?」
恭也は、何か考えるような感じで出ていった
もうリュナは、姿をあらわしている
「ニック!それで、オススメのせーしんかは見つかったか?」
「残念ながら、オススメの精神科は見つからなかったです」
「そっか〜…」
「まぁ、精神科とかで済む問題じゃなさそうですし」
「ん?どゆこと?」
「そういうことなんです」
「いや、マジでどういうことなの!?」