「カズマ.....?」
信じられないといった、口調でクロノは声を発した。
カズマは、ゆっくりと体を起こした。
それから少しだけ微笑んだ。そのライトグレーの瞳は涙できらきらと輝いていた。
「やっぱクロノ、お前.....
ほんっと馬鹿だな 」
.....【クロノ】。
自分を呼ぶその声を、何度も脳内で反芻しながら、おもいっきりカズマに抱きつく。
タイヨウも同時に、飛び込んで行ったようだ。
だから、折角起き上がったカズマは、またベッドへと戻ってしまう。
「カズマっ!.....お前、死んだのかと.....」
「勝手に死なすなよ」
こつん、とクロノのうずまきの髪の部分をねらって小突いてくる。
「退院したらっ!また3人で、激辛カレー食べに行きましょう!」
「いーぜ。何皿でも食ってやる。」
涙をカズマの服の上にぼろぼろこぼすタイヨウには、優しく頭を撫でてやる。
静かだった空間は一瞬にして、騒がしくなる。
からり、急にうるさくなった病室に、新たな人物が姿を現す。
「まーくん.....」
整った顔を、かちりと固まらせてカズミは呆然と呟く。
「兄さん」
今までなんと無く恥ずかしくて言えなかった言葉は、案外すらりとでてきた。
「.....っ!まーくんっ!!」
「うおっ!」
言わずもかな、カズミがカズマに抱きついたのである。
「帰ってきてくれてよかった.....。」
兄からの素直な言葉に、顔を赤らめながら
「.....ばか、離れろっつの.....」
などと言った、カズマ瞳から一粒涙が溢れたのを、クロノは見逃さなかった。
「よっし!」
目元を袖で、ぬぐったカズマは、勢いよく体を起こした。
それから、机上にあったデッキをつかんで、
ずっと決められていたかのように、
そんな運命にあったとでもいうように、
「ファイトしようぜっ!」
なんて、満面の笑みでデッキをつき出した。
そんな幸せな病室を見守るかのように、部屋の角に置かれた紫のアネモネが、きらりと光った。
【紫のアネモネ】
花言葉.....あなたを信じて待つ。
【紫のアネモネ】
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ヴァンガに沼ってください(呪い)