平穏な日常、当たり前の毎日の中には、見えない悪夢が隠れている・・・・・
その悪夢がどんなに小さな些細なものであったとしても、気づいたならば決して見逃すことは許されない・・・・・
平穏を崩されたくないのであれば・・・・・
妖怪兎?
「……どれだけ足掻いても無駄ですわ。」
注射針が咲夜の首筋に当たり、少しずつ咲夜の肌に針が刺さって行く……
周囲には異様な静寂のみが広がっており、助けが来る様子はない……それもその筈で、青娥ほど狡猾になると、鈴仙が里へ薬売りに行き、てゐが竹林で新しいトラップ作成に向かい、永琳が診療を行う等の周囲の者達が助けに来れないような状況になるのを見計らい襲撃をしかける程の悪辣さを持っている。
更に抵抗したせいで咲夜の腹部に開けられた謎の侵入者から付けられた腹部の大穴の傷が開き始めてしまう……外へ通じる扉は閉まっており、扉の向こうにまでは咲夜の唸り声のような悲鳴は聞こえないだろう……
助けが来る可能性があるとすれば、輝夜か妖怪兎かのどちらかだが……妖怪兎が駆け付けたとしても、この眼前にいる妖怪兎の皮を被った得体の知れぬ人物を倒すことは出来ないだろう……
【永遠亭 入口】
妹紅
「おーい、誰かいるかー?」
幻想郷に取り返しのつかないダメージを与えるために暗躍し、妖怪兎の体を乗っ取った青娥による咲夜への襲撃が行われている頃、約束通り炭を売った金で大量に購入した人参の入った袋を担ぎながら永遠亭に訪れた妹紅が永遠亭の入口前で誰か人(妖)は居ないかと声をかける。
・・・・・ぅ・・・・・っ・・・・・
(徐々に咲夜の腕の力が弱まってゆく・・・・・
咲夜の今の抵抗も、言うなれば火事場の馬鹿力に近いものだったのかもしれない・・・・・
そのまま咲夜の腕は力なく落ちる・・・・・
意識を失う寸前、わずかに誰かの声が聞こえた・・・・・
朦朧とする意識の中だったため誰の声なのかは判断出来なかったものの、その誰かが気づいてくれることに賭けるしかない・・・・・)
妖怪兎?
「大丈夫、死にはしないわ。
その代わり目覚めることも出来ないけれどね?」
青娥は咲夜の抵抗を振り切って彼女の首筋に注射針を突き刺すと、その注射器の中に混入させていたモノ……青娥の呪術から生み出された昏睡薬とでも言うべきモノが入れてある……その効能は二つ……
一つは咲夜の意識が青娥の許可が無い限りは戻らないと言う口封じとしての役割。
もう一つは青娥の意思一つで何時でも咲夜の心臓を止めて死亡させるのと言う脅迫や人質として用いるための効能がある。
咲夜が意識を失う事を確認すると、妖怪兎は口の中から一本の簪を取り出し、それを床に向けて軽く振るうことで穴を開け、そこから永遠亭外へ脱出していく……
妹紅
「うーん……誰もいないのか?」
探している妖怪兎も、普段は永遠亭にいる
面倒になら無いように永琳が里で診療しているタイミングを見計らって届けに来たのだが、誰の姿も見えなかったため、亭内に入り、誰かいないかと探し始める。
既に青娥の脱出や侵入する時に開けた穴は塞がっており、青娥が入り込んだ痕跡を見つけ出すことは困難だろう……
・・・・・
(基本的に普通なら妖怪兎の一人や二人くらいは来客に反応して出てきてもいいくらいだが、怖いくらいの静寂が妹紅を襲う・・・・・
嵐の前の静けさという言葉があるが、今の永遠亭がまさにそれに当てはまるほどに、何かの前触れのような不気味な静かさが辺り一帯に漂う・・・・・)
妹紅
「……この感覚は……まさか………!」
妹紅が一目散に永遠亭内を駆け出し、チルノや妖怪兎に攻撃した謎の侵入者からの攻撃があったのかと思い、誰か生存者はいないかと、玄関近くの部屋に人参の入った袋を置いて亭内を走り出し、近場の部屋から部屋の戸を開けて生存者を探し始める。
・・・・・
(誰一人として永遠亭で見つかることがない中、戸を開けていくと咲夜が治療を受けている部屋に妹紅は辿り着く・・・・・
しかし、咲夜はまだ意識が戻っていないのか、目を閉じて横たわっている・・・・・
それが意識が戻った後に、意図的に意識を遮断された状態だと気づくのは難しいだろう・・・・・)
妹紅
「くそ……ッ!やられた……」
《ガンッ》
咲夜が眠っているのを見ると、彼女の元まで駆け付け、彼女の首筋に右手を添えると、辛うじて脈はあるものの、抵抗した跡があり、悪意ある何者かの手によって意図的に意識を奪われたことがわかる……
自分が来るのが遅かったからこれだけの侵入を許してしまった……輝夜の事はまるで気にしていないものの、妖怪兎の姿が見えなかった事から彼女達も襲われたと考えることが出来る……
妹紅
「どうして紅魔館のメイドがいるのかは知らないが……このタイミングは偶然じゃないな……」
チルノや妖怪兎が竹林で襲われてから月日が経っていない中、こうして永遠亭へ直接攻撃をされた事から、おそらく何らかの方法でこの竹林の迷路を抜けて永遠亭に辿り着いた例の襲撃者の仕業であると断定する。
カーッ!カァーッ!
バサバサバサッ・・・・・!
(これから起きる不吉なことを告げるかのように、永遠亭の近くをカラスが飛び交う・・・・・
抵抗した跡に気づいてもらえた分、状況は最悪なものの咲夜の抵抗は無意味ではなかった・・・・・
しかし、この状況を打破するのは今はまだ不可能でもある・・・・・)
妹紅
「……ちッ!輝夜の奴は何をしてんだ……!!」
咲夜が死んだようにして意識を奪われている事から、これだけの事をされながら、一応は永遠亭のトップである輝夜は何をしているのかと思い、輝夜の部屋に向かって走り出し始める。
輝夜「んん〜・・・・・?あら、妹紅じゃない、何しに来たの?」
(輝夜は妹紅がいつの間にか永遠亭に来ていることに気づけば、今の事の重大さに気づいていないのか、おっとりとした感じで妹紅に話しかける・・・・・
これだけのことが起きていながら普通に過ごしている辺り、危機感が欠如しているのだろうか・・・・・)
妹紅
「…………………。」
《ダッ》
《ゴオッ》
妹紅は輝夜の顔を見るや否や、言葉を交わす訳でなく、直ぐ様床を蹴って飛び上がり、空中で身を捩り、右足に炎を宿して問答無用に顔を蹴り飛ばそうと迫る。
ちょっ・・・・!?いきなり何するのよ!?竹林ならともかく、ここは永遠亭よ!?場所をわきまえなさいよ場所を!
(輝夜はいきなり蹴りかかってきた妹紅に対して、いつものように戦うのならば竹林ならまだしも、永遠亭でまで戦い始めてしまっては収拾がつかなくなる・・・・・
それに、ここは命を救う場所であり、そんな場所で戦おうなど言語道断・・・・・)
《ドゴオォォォォォォォッ》
妹紅
「お前は……此所の異変に気付いているのか?」
妹紅は輝夜に向けて炎を纏った蹴りを放ち、蹴りが当たると同時に細胞や妖力そのものを焼き尽くす炎を爆発させ、輝夜にダメージを与えようとする。
威力や規模を集中しているため周囲への被害を抑えた一撃となっているため、床や壁に燃え広がることは無いものの、蓬莱人である輝夜にとっては直ぐに再生可能な程度のダメージにしかならないだろう。
輝夜「異変・・・・・?何のことよ?最近運ばれてきた患者が住んでいた屋敷が侵入者の被害にあったって言うのなら知ってるけど?」
ジジジ・・・・・
(皮膚が少々焼けるものの、妹紅も、そして輝夜も、今はそんなことはどうでもいい・・・・・
妹紅からすれば、こんな時にのんびりと過ごしている輝夜が許せないのだろうが、対する輝夜は永遠亭内で起きている異変に気づいていないのか、妹紅がついにおかしくなったのでは程度にしか考えていない・・・・・)
妹紅
「……そうか、なら妖怪兎達はどこにいるんだ?
竹林の医者や、鈴仙ちゃん達は里に出向いているみたいだが、それ以外の妖怪兎の姿が見えないな。」
蹴りを繰り出す体勢から、再び空中で体勢を変えて床に降り立つと、両手をモンペのポケットに入れながら、敢えて咲夜の異変についてではなく、妖怪兎の姿が見えないことを伝え、異変には気付いているのかと問いかける。
輝夜「妖怪兎・・・・・?そういえばいないわね・・・・・」
(妹紅に言われてみれば、確かに妖怪兎が見当たらないということに気がつく・・・・・
しかし、誰かが連れ去ったりしたと考えるのも少々無理がある気もする・・・・・
輝夜は「永琳についていったか、出かけているかしているんじゃない?」と言葉を返す・・・・・)
妹紅
「……なら、屋敷から運ばれてきた患者が意識不明の状態になっていて、明確に何者かからの攻撃の痕跡がある事には気付いているか?」
妖怪兎達は元々はてゐの仲間だったものの、永遠亭に住む事と引き換えに永琳と輝夜に仕えるようになった……だから永琳か輝夜からの要請があれば里にも出掛けるだろ。
だが、里でそれだけの規模の病気が蔓延したり、死傷者が出た等と言う話があれば一応は里の守護や人間の保護をしている自分の耳にも入ってくるのだが、今回はそれが無かった。
普段ならば永遠亭の従者である妖怪兎が必ず居る筈であり、全く居ないと言うことはこれまでに一度も無かった……そのため明らかな違和感を覚えつつ、本題である咲夜が襲撃されて意識不明になっている事を伝える。
輝夜「だーかーらー、その状態で危険だから運ばれてきたんでしょ?アンタ頭大丈夫?」
(妹紅の言っていることをわかってはいるが、それが数日前に運ばれてきた時のことだと思っている・・・・・
一応、数日前に運ばれてきた時と情報的には合致してしまうため、そう思うのも無理はないのだが、これらの発言から輝夜は今の異変には気づいていないと思われる・・・・・)
妹紅
「あー、もう説明するのがめんどくさい!
こうなったら力で白黒ハッキリつけてやる!!」
時折詩的な言葉を言うことはあるものの、元々あまり口が上手い訳でも、説明が上手い訳でもないため、非常事態でありながら上手く説明できないもどかしさを感じつつ、手っ取り早く戦って勝つことで強引に説得しようと考える。
妹紅は自身の霊力から炎を生み出し、その火力や燃やす対象を輝夜とそれに付随する力や事象に限定して建物が燃えないように気をつけつつ、両手足に炎を纏わせ、体を斜めにして身構えて臨戦態勢に入る。
このように、何時もささないな事から壮絶な死闘に発展してしまっている。
輝夜「しっつこいわね!!!!!なんだって言うのよ!!!!!」
(いくら妹紅が建物への被害は及ばないようにしているとはいえ、流石に自宅での戦いは抵抗があるのか、言いたいことがあるならハッキリ言えと言わんばかりに言葉をぶつける・・・・・
よく見ると、輝夜の髪はところどころ跳ねていて、寝ていたことで出来た寝癖であることがわかる・・・・・)
妹紅
「うるさい!そもそもお前がちゃんとしていないからこんな事になったんだ!!」
所々髪が跳ねているため、髪をセットする間もないほどに寝起きである事はわかるものの、妹紅もまた焦りや不安、怒りと色々な感情が混ざりあっていて頭に血が登ってしまったため、その激情に任せた言動になってしまう。
妹紅は鳥の鉤爪を模した炎爪を右手に纏って輝夜目掛けて振るい、五つの爪型の炎弾を打ち出し、輝夜の体を引き裂こうとする。
がしっ・・・・・
輝夜「言ってくれるわね・・・・・寝ていただけなのにここまで言われると、本当に目が覚めるわ・・・・・」
ぐぐぐっ・・・・・
(輝夜は、妹紅の右腕を掴んで睨みつけながらへし折ろうとする・・・・・
ただ寝ていただけで、わけもわからずにいきなり罵声を浴びせられ、挙句の果てにはお前がちゃんとしていないからこうなったと更にわけのわからないことを言われ、輝夜も頭に血が昇り始める・・・・・)
妹紅
「………!!」
妹紅の放った炎爪が輝夜の皮膚や筋肉を切り裂き、裂傷部から炎が燃え移り、内外から焼き始めるものの、輝夜が距離を詰め、妹紅の腕を掴み、力を込めると妹紅の右腕が音を立てて折れる。
一枚天井を持ち上げ、投げつける程の腕力を誇り、それをスペルカードにする程の輝夜に対して元々はただの人間だった妹紅は単純な筋力では勝てないとわかっている。だからこそ、炎と言う再生を阻害する力の習得に特化する事になった。
そこで妹紅は折れた右腕の代わりに左脚に爆炎を纏わせて輝夜に向けて蹴り出し、直撃した際に爆発を引き起こすことで例え蹴りを防がれようと、必ずダメージを与えられるような攻撃にしている。
ボォンッ・・・・・!
・・・・・っ・・・・・いい加減にしなさいよ?妹紅・・・・・
ベキベキベキバキッ・・・・・!
ブチッ・・・・・
(輝夜は、いい加減に白と言葉に出し、そして同時に表情にも出しながら、蹴りを受けて爆発に巻き込まれるも、怯むことなくそのまま妹紅の左脚を掴んだまま離さずに、皮が剥がれ筋肉がむき出しの状態の右腕に力を込め、妹紅の左脚の骨を砕きながらそのまま今度は左脚を半分ほど引きちぎる・・・・・)
【「リザレクション」】
《ドゴオォォォォォォォォォォォォッ》
妹紅は輝夜に右腕と左脚を掴まれ、その持ち前の怪力から引き千切られると、更なる追撃を受ける前に自分で自分の舌を噛み切って自害すると、妹紅の中に蓄積されていた全ての炎が爆発を巻き起こし、輝夜の体を丸ごと焼き尽くそうとする。
ほぼ零距離からの自爆であるため、回避は困難である上に、輝夜を焼くことに特化した炎であるため、月の民の強靭な肉体であってもこれだけの至近距離から受けてしまえば防御は意味を成さないだろう……
ボォッ・・・・・!!!!!
ドサッ・・・・・
・・・・・
(流石にここまでの攻撃を回避することも防御することも、真正面から対応することもできなかったため、断末魔すらあげる間もなくそのまま全身を物凄い勢いで焼かれながら床に倒れる・・・・・
見るも無惨な焼死体だけが残る・・・・・)
妹紅
「………そもそも……こんな時間まで何で寝てんだよッ!!」
妹紅は自爆した場所から20m後方で肉体を再構築しながら、輝夜に対してそもそも何でこんな時間まで寝ているのかと怒鳴る。蓬莱人である妹紅や永琳、そして輝夜は死と言う概念が存在しておらず、たった今のように細胞一個、血液一滴も残らずに焼失したとしても、直ぐに肉体を再構築する事が出来るため、妹紅は今のような自爆技や、自分への反動や代償の大きい技を平然と繰り出す事で圧倒的な火力を誇る技の実現を可能としている。
とはいえ、完全に怒りの矛先が迷子になってしまっており、今は輝夜の昼過ぎにも関わらず寝ていた様子に向けられてしまっている。
輝夜「・・・・・私がいつ寝てようと私な勝手でしょうが・・・・・」
(輝夜も同じく体を構築しながら、自分がいつ、どのタイミングで寝てようがそれは自分の勝手だろうと反論する・・・・・
いきなり喧嘩を売ってきた挙句、わけのわからないことばかり言ってくる妹紅に「まだやるつもり・・・・・?何なら本気でボコボコにしてやってもいいわよ・・・・・?」と言い)
妹紅
「上等だ、今日こそどっちの方が強いのかを証明してやるよ輝夜ッ!!」
《バサッ》
そもそもの原因となった完全に咲夜が意識不明の状態になっていることを忘れ、輝夜を仕留めるその一念だけを抱き、背中から不死鳥のような炎翼を広げ、それに伴って両手足にも霊力によって生じた炎……霊炎を纏わせて対峙する。
まだ他の人物が相手なら理性的に落ち着くことが出来るのだが、元々は輝夜に惚れた父が死亡した事から積み重なった過去の執念や恨みが完全には抜けきっていないからなのか、一度火が付いてしまえば燃え尽きるまで戦おうとしてしまう。
妹紅は背中から広げた炎翼を羽ばたかせて羽根を模した無数の炎弾を撃ち出して再度攻撃しようとする。
輝夜「これだから低脳の小娘は困るわ・・・・・カッとなると何も見えなくなるのね・・・・・?」
(輝夜は再生し終わると、やれやれと言わんばかりに妹紅は一度本気で怒ると何も見えなくなってただただ怒りに身を任せることだけに専念してしまうから厄介だと挑発する・・・・・
妹紅が本気なのに対し、輝夜はわけのわからないままいきなり戦いに持っていかれたため、早く終わらせたい気持ちでいっぱいなのが表情で伝わってくる・・・・・)
妹紅
「無駄に長く生きただけの箱入り娘が生意気に人を語るだなんてお笑いだな!!」
【虚人「ウー」】
妹紅は怒りに任せて右腕を勢いよく輝夜目掛けて振るう。
すると、妹紅の腕の一振に伴い、三本の巨大な地を走る斬撃が放たれ、輝夜の体を切り裂いて一時的にでも動きを止め、更なる追撃を繰り出すための隙を作ろうとする。
輝夜「なんとでも言ってちょうだいな?」
(輝夜は怒りに身を任せた状態の妹紅が、我を忘れて襲いかかってくるということを誰よりも一番よく知っている・・・・・
だからこそ、こういう時の対処法も誰よりも知っている・・・・・
我を忘れた相手の攻撃を避けることなど、たやすいことなのだ・・・・・
輝夜は攻撃を避けると、距離を詰めてゆく・・・・・)
妹紅
「ああ!なんとでも言ってやる!
いつか妖怪兎達にも愛想をつかされるかもな!!」
妹紅は激情に身を任せてはいるものの、素の頭の回転の速さを活かして戦っており、三本の地を走る斬撃によって輝夜が左右のどちらかへ避けることを見越して左右に向けて青い文字が書かれた"身体封じ"の御札を投げ付け、回避した先で御札の力によって輝夜の動きを封じようとする。
・・・・・っ、死ぬことなんてできないから今更アンタの攻撃をむやみやたらに受ける気も避ける気もないけれど、私が悪くないってわかったら、覚悟しておきなさいよ・・・・・?
(自分は唯気持ちよく眠っていただけなのに、それを因縁相手から、しかもいきなり喧嘩をふっかけられる形で戦闘開始に発展したため、いつものように竹林で戦うならばまだしも、場所すら移さずに問答無用で襲いかかってこられるほどのことをした覚えはそもそもないと思いながら、動きを封じられた輝夜は覚えておけと言い放つ・・・・・)
妹紅
「悪くないだと?そうやってまた逃げるのか?」
妹紅は最初に咲夜が何者かによって意識を奪われていた事と、竹林で何者かから襲撃を受けた事、そして今の妖怪兎の行方がわからないと言う明らかな異変に危機感を覚え、最初は輝夜にも状況を伝えて対策を取るように言おうとしていたのだが
輝夜のあまりにもマイペースな様子や、積もり積もった過去の因縁が妹紅を戦いへ駆り立ててしまい、今に至ってしまっている……本来ならばしなくてもいい、協力する事が出来たのだが、二人の性格や、二人の因縁がその邪魔をしている。
妹紅は先程のスペルカードの効果がまだ残っている事を活かして、御札によって動きを封じ込められた輝夜目掛けて今度は回避がより困難になるように横へ薙ぎ払うようにして三本に重なる斬撃を放つ。
輝夜「がっ・・・・・!?」
(輝夜は動きを封じられていることから、妹紅の斬撃をもろに受けてしまい、目を見開いて苦痛に表情を歪める・・・・・
しかし、すぐにやるならやれと言わんばかりの表情を浮かべる・・・・・
ただ寝ていただけで悪者扱いされるのも、こうやって一方的にやられるのも、妹紅がまだまだ未熟なただの小娘だと逆に思い知らせる為に無抵抗な状態に入っているようにも思える・・・・・)
妹紅
「過去の罪からは逃げられない。
生きると言うことは罪を背負うこと、長く生きれば生きるだけ罪を背負う。私もお前も、とんだ大罪人である事に変わりはない……」
妹紅は今度は両手に炎を纏わせ、それを交差させるようにして輝夜目掛けて振るい、輝夜の左右から地を走る斬撃を放ち、月の民である輝夜の体をもバラバラに切り裂けるほどの威力の双撃を放つ。
ビシャァアッ・・・・・!
ボトッ・・・・・ボトッ・・・・・
(切り裂かれ、バラバラになった輝夜の体の残骸が床に音を立てて落ちる・・・・・
血しぶきが飛び散り、辺り一面真っ赤な鮮血の海と化す・・・・・
ここまでくると、完全に妹紅の勝利である・・・・・)
妹紅
「……だが、私はその罪からは逃げるつもりはない。生きることが罪なら私はその罪と向き合って生きてやる。お前はどうだ?月のお姫様。」
輝夜の体をバラバラに切り裂くと、ちょうどスペルカードの効果が切れ、妹紅の両手から炎が消えると、両足にはまだ炎を纏ったまま、両手をポケットに入れてバラバラになった輝夜に対してそう言葉を投げ掛ける。
自分達のような完全な不死の存在にとって決着も勝利も訪れない。例えこの世が滅び去ろうと、虚無の中で自分達は戦い続ける事になるだろう。死と言う概念すら消えた自分達には永遠に勝利も敗北も訪れない……
輝夜「・・・・・言っておくけど、アンタの話は今のこの状況においてかなり論点がズレてるんじゃなくって・・・・・?」
(妖怪兎が見当たらないことや、何かしらの異変が起きているというこの状況で、妹紅の問いかけは状況とはかなり食い違っているようにも聞こえてくる・・・・・
今大事なのは自身の罪と向きあうことかどうかよりも、何が起きているのか、ということだ・・・・・)
妹紅
「話の着眼点は少し逸れたが、根本的なところは何も変わってはいないさ。」
妹紅の言う罪からは逃げずにいると言う発言はかなり遠回しにはなってしまってはいるものの、宿敵である輝夜のいる永遠亭内で起こった異常事態を知らせ、その解決のために過去の自分達の罪を認めた上でそれらを克服して協力する意思もあると言うことを示してはいたのだが、口下手故にか、素直にそれを伝えることが出来ず、話が拗れ、戦い続けることになってしまう。
輝夜が再生し、喋れるようになると、少し飛び上がり、背中から生えた炎翼を羽ばたかせ、まだ再生中の相手に向けて炎を纏った蹴りを繰り出して追撃しようとする。
輝夜「・・・・・果たしてこうやって私をいたぶり続けることで、問題は解決するのかしら・・・・・?」
(間髪入れずに自分を攻撃してくる妹紅に対して、こうやって攻撃し続けてくる時間があるのなら、今起きているであろう出来事を一時停戦して解決に導くことの方がまずは先だろうと輝夜は思う・・・・・
そして「もし私がアンタの立場だったら、戦いには持ち込まないわ」と言葉を返す・・・・・)
妹紅
「ふん、生憎だが説得で分かり合えるのなら何百年も殺し合いなんかしてないだろ?それに安心しな、お前の体力が尽きて私の勝ちが確定したら地に伏したお前へ皮肉を込めてじっくり説明してやるよ……!!」
妹紅は両手に纏わせていた炎を消した変わりにポケットから無数の御札を指と指の間に挟んだ状態で取り出し、両手を自分の顔の前で交差させながら、取り敢えずは輝夜を打ち倒してから皮肉を込めて説明してやると応える。
口下手な自分には、状況を誤認し、危機意識の無い相手に説明出来るだけの話術は無い。それが出来るのなら何百年もこうして二人で不毛な戦いをしてはいない。
最初の口振りから、普段ならば何羽かは必ず亭内にいる筈の妖怪兎の姿が消えている事にも違和感を抱いておらず、説明の余地が無いと言うことから妹紅は両手に構えた御札を輝夜に向けて投げ付ける。
その御札にはスペルカードルールではまず使うことが出来ない強力な霊撃が込められており、触れただけでその箇所を吹き飛ばすことが出来る程の威力が込められている。言うなれば対輝夜用に妹紅が作った威力特化の御札となっている。
輝夜「・・・・・それはありがたいわね・・・・・」
(輝夜はどこまでも妹紅を馬鹿にするかのように、それはありがたいと言葉を返す・・・・・
再生使用にも間髪入れずに攻撃してくるためか、再生が追いつかずにむ抵抗の状態でいることしかできない・・・・・
その分、竹林で戦う時は思う存分地獄を味わわせてやろうと決める・・・・・)
妹紅
「結局……私達はこうしている事しか出来ないって事だ……!!」
妹紅が輝夜に向けて投げつけた御札が輝夜の体に当たると、当たった箇所の輝夜の体が次々と弾け飛び、消滅させられて行く中、結局のところ自分達はこうして永遠に戦い合う宿命にしか無いのだと言う。
輝夜「・・・・・本当に・・・・・哀れ・・・・・」
(自分達は永遠の時を生きることが出来ても、こうしてただただ争うことしか出来ないのだということを悲観してか、自分も含めて不老不死という存在の愚かさと哀れさを言葉に出す・・・・・
言い切る前に、消滅する・・・・・)
妹紅
「それにしても、お前は何で能力を使わないんだ?
まさかまだ私を馬鹿にしているつもりか?」
蓬莱人は肉体を失った時、任意の場所から再度肉体を構築することが出来るため、奇襲に備えて右手に御札を新たに三枚構えつつ、周囲への警戒を行いつつ、先ほどからまったく能力を使わずにいる輝夜へ注意し続ける。
輝夜「今ここで私まで戦いだしたら、今するべきことを誰がするのよ・・・・・?」
(今するべきことは、妹紅のいうことが表情からして本当だとわかっているため、妖怪兎たちを探すことや、咲夜についてのことだとわかっている・・・・・
長い付き合いだと、言っていることが本当か嘘かもわかってしまうから困る・・・・・)
妹紅
「ここまでやられていながら、まだ私を馬鹿にするのか?
やっぱり今ここでハッキリ白黒付けてやるよ……!!」
【不死「火の鳥-鳳翼天翔-」】
輝夜が能力を使わずにいる理由である"今するべき事"について、これまでの小馬鹿にする発言の延長として、"自分を相手にしても能力を使うまでもない"と言うように捉えてしまい、激情に任せて右手に炎の塊を発生させ、そこから巨大な不死鳥を模した炎鳥を形成させ始める。
長い付き合いとは言え、燃え盛る炎のように、一度火が付いてしまうと、歯止めが効きにくくなってしまうため、第三者の介入が無ければ妹紅が冷静さを取り戻すのは難しいと思われる。
輝夜「・・・・・勘弁してもらいたいわねぇ・・・・・」
(今の状況ならば、本当はこうやって戦っている場合ではないということを妹紅も心のどこかでわかっているはずだが、こうやって今も続く戦いの元になった因縁が、緊急時になって邪魔をする・・・・・
輝夜は、苦笑いしながら勘弁してもらいたいと言う・・・・・)
妹紅
「焼け散れ……!!」
妹紅は形成した巨大な炎鳥を輝夜に向けて放つ……
すると、その炎鳥自体に意思があるかのように輝夜を見据えると、翼を大きく広げて通路の幅の半分を埋める程の面積を有したまま輝夜に向かって迫る。
ゴォッ・・・!!!!!
輝夜「・・・・・」
(輝夜の体は一瞬で焼き尽くされ、ボロボロと炭化した体の一部が床に落ち始める・・・・・
不老不死ということを活かして敢えて今は妹紅の気が済むまで攻撃を受け続ける、という手段もありなのかもしれないが、なるべく妹紅を説得して事の収束に向かわなければならない・・・・・)
妹紅
「おいおい、少しは抵抗しろよ?
何時ものお前らしくないじゃないか。」
輝夜の体を焼き尽くした不死鳥はその体積が10cm程にまで小さくなるものの、妹紅の元へと戻り、妹紅の右手の人差し指の上に乗ると、何の抵抗もしなくなった輝夜に対して軽く愚痴を言う。
輝夜「・・・・・アンタ、今やるべき事が本当にわかっていないの?今やるべき事は本当にこんなことなの?違うでしょ?今がアンタの言う通りの緊急事態なんだったら、そっちを解決するのが優先じゃないの?」
(抵抗しろと言う妹紅に対して、輝夜は今やるべきことは戦いじゃないと言う・・・・・
しかも、妹紅から今の状況を聞いたのに、妹紅から物事の解決とは遠い方向へと持っていってしまっている・・・・・
だからこそ、輝夜は反論する・・・・・)
妹紅
「今さら何を言っているんだ?
私が一番最初に説明しただろうが……!!!」
自分の指先に止まった不死鳥へ自分の霊力を流すことで雀よりも一回り小さい程度になっていた不死鳥が再度2m以上にまで巨大化し、指に止まった不死鳥を輝夜に向けて放る事で再度輝夜を骨まで焼き尽くそうとする。
輝夜「まぁ落ち着きなさいな・・・・・」
(そう言うと、輝夜は妹紅の攻撃を避けて「今ここでこうやって戦っていたって埒が明かないわ、こんなことしてる間にも刻一刻と過ぎていくだけで解決には至らないのよ?ならば、一時休戦して協力するのがベストだとは思わないかしら?アンタと協力するのは死ぬほど嫌だけど・・・・・」と、不老不死なのに死ぬほど嫌だという皮肉じみた言い回しで言葉を返す・・・・・)
妹紅
「私は落ち着いているさ、落ち着いて……お前を消し去ろうとしているだけだ……!!」
妹紅の放った不死鳥は言うなれば炎の塊のようなものであり、直接触れずとも、至近距離に近付くだけでも対象を焦がす事が出来る。その性質から直撃しなくとも、輝夜の髪と肌の一部を焦がしてダメージを与える中、妹紅は右手を振るって赤色の御札と青色の御札の二つを投げ付けて追撃しようとする。
兎に角先ずは相手の体力を削りきる。
一度燃え上がった戦意と闘争心は尽きることがなく、一切相手の話を聞くつもりはなく、戦い続けることを決める。
ガシッ・・・・
永琳「そこまでよ・・・・・」
(丁度帰ってきた永琳が、妹紅の腕を掴んでそこまでだと止める・・・・・
どんな理由があろうと、ここは命を救う場所だ・・・・・
そんな場所で殺し合いなど言語道断、永琳は妹紅と輝夜を睨みつける・・・・・)
妹紅
「………漸く話がわかりそうな奴が来たな。」
腕を掴んだ相手、永琳の姿を見るとそう一言だけ呟き、自らの舌を噛み切って自害し、自身の体を炎の塊に変えて二人10m程離れた場所で再度肉体を再構築し始める。
先程避けられた後、背後から輝夜へ奇襲する隙を伺っていた不死鳥や、輝夜に向けて投げられた赤青の御札もまた、妹紅の手元へと戻り、継戦の意思は無いと言うことを示す。
永琳「話がわかりそうな奴が来たな。じゃないわよ!何やってるのよ二人して!!!!!」
(いつものように竹林で繰り返し繰り返し戦うならばまだしも、よりにもよって患者もいるこの永遠亭内で戦うだなんてとんでもないことだ・・・・・
永琳は輝夜と妹紅の二人を叱責する・・・・・)
妹紅
「……別に?私は妖怪兎に礼をするために来ただけだ。」
背中から生やしていた炎翼や、両足に纏わせていた炎を消しながら手元に戻した不死鳥を霧散させて御札をモンペに貼り付けると、両手を頭の後ろで組みながら永琳に対して自分は妖怪兎に礼をするために来ただけだと応える。
永琳「それはここへ来た理由でしょうが!なんでここで戦っているのかって聞いてるのよ!」
(なぜここで戦っているのかを叱責したところ、ここへ来た理由を言い出したため、永琳は改めて理由を聞いているのではなく、どうして永遠亭の中で戦っているのかということについて問いただす・・・・・)
妹紅
「あー……そう……だなー……
まあ、成り行きってやつかな?」
何とか応えるべきかわからずに目を泳がせながら少し返答について考えた後、上手い返しが思い付かずに取り敢えず成り行きで戦う事になったと言う。
【虹龍洞 最深部】
美鈴
「う……ぅ………ぅ…………」
《メキメキメキメキメキ……》
青娥
「素晴らしいわ、与えれば与えるだけ強くなる……!」
虹龍洞の最深部では大量の龍珠を喰らい続けた事で身体中に赤い鱗が形成され、頭からは歪な四本の角が生え、両手足の爪が伸び、鉄のような硬度になっており、肉体にまで多大な影響を与えてしまっている……
無数の呪いの刻印が肩や背中、手の甲に浮かび上がる中、苦しそうに呻きながら四つん這いになり、その体からは酸素が存在しない虹龍洞の最深部を埋め尽くす程の強大かつ莫大な気と力が放たれており、その力は既に青娥を超え始めている。
永琳「成り行きで建物内で戦われちゃたまったもんじゃないわ!!!!!ここには患者だっているのよ!?頭おかしいんじゃないの!?」
(妹紅や輝夜からすれば、どんなに戦っても死ぬことはないため平気かもしれないが、場所をわきまえろと怒りを顕にする・・・・・
永琳じゃなくても怒るとは思うが・・・・・
そして、永琳も二人のことを叱るだけであることから、今起きている異変に気づいていない可能性が大きい・・・・・)
妹紅
「患者……?
……そういや、それを伝えるようと思っていたところだったんだ。」
苦笑いしながら、月の民としては珍しく人間らしい感情を表現している永琳を見ながら、迷いの竹林の中……永遠亭内で起こっている異常事態について話すために居たのだと言うことを思い出す。
永琳「・・・・・まさか、患者を巻き込んだんじゃないでしょうね・・・・・?」
(妹紅の言葉を聞けば、まさか患者を巻き込んだりはしていないよなと目も表情も本格的に威圧的になり、もし巻き込んだりしようものなら不老不死だろうと関係なく〇されるんじゃないかと思えるほどの鬼の形相を浮かべる・・・・・
そして「さっさと話しなさい・・・・・」と、ただ一言だけ告げる・・・・・)
妹紅
「心外だな、私がそんな事をするように見えるか?
それより、妖怪兎達の姿が見えないんだが、何か知っているか?」
かつて蓬莱人となる際に命の恩人である岩笠を殺害してしまい、1300年程の時の中でその罪悪感や後悔を拭うために何百年もの間、妖怪退治をして人々を救うこともしていた。
だからこそ、他者の命の重さも、自分の命の軽さも知っている。
輝夜との決闘の時も周囲を巻き込まないように細心の注意を払い続けてきた事から、永琳の言葉を聞いて少し不服に思いながらも、妖怪兎達姿が見えないことについて何か知っているかと問いかけ、本題に入ろうとする。
永琳「それもそうね・・・・・でも、そもそも巻き込まないように配慮する以前に、戦うなら外でやってもらいたいわ・・・・・」
(どんなに周りへの配慮をしているにしても、いつもの殺し合いをするならここでやるのではなく普段のように竹林でやってもらいたいと言葉を返す・・・・・
そして、妖怪兎達について聞けば「そういえばいないわね・・・・・まったく、患者を任せられると思って出かけたのにどこへ行ったんだか・・・・・」と、永琳も妖怪兎たちがどこへ行ってしまったのかは知らないことが判明する・・・・・)
妹紅
「……やっぱりか。
あの紅魔館のメイドがここに運ばれてきたと思うが、そいつが何者かの手で意識を奪われている。妖怪兎達の消失にも無関係ではないだろうな。」
少し時間が経って脳内での整理が進んだからか、輝夜に話したものよりも簡潔に永琳へ伝え、永遠亭内で起きている異常事態について説明する。
永琳「は・・・・・?」
(咲夜の意識が何者かの手で意図的に奪われていることと妖怪兎たちがいなくなっているということ、あまりにも起きていることが多すぎて理解が追いつかない・・・・・
運ばれてきた時からずっと咲夜は意識不明だったが、一度意識を取り戻した後に奪われているということなら、一体誰が・・・・・)
妹紅
「……あー、もう!察しが悪いなぁ!
ようするにこの竹林や永遠亭が何者かの攻撃を受けているって事だよ!!」
妹紅は頭をクシャクシャと掻きながら、自分の伝えたいことが伝わっていないと言う事への苛立ちを怒声にして二人にぶつける。
永琳「・・・・・私は患者の方を見る、二人はあの子達を探してきて・・・・・」
(事の重大さはよくわかった、自分は咲夜の方を何とかするかは、輝夜と妹紅の二人は妖怪兎達を探してきてもらいたいと頼み込む・・・・・
どうやら、自分の思っていた以上に、事態は一刻を争うことのようだ・・・・・)
妹紅
「……ああ、わかった。」
妖怪兎達の捜索をして欲しいと言われると、元からそのつもりでもあっまため、特に反発や異見をせずにわかったとだけ応え、そのまま永遠亭の出入口に向かって歩き始める。
輝夜「ちょ、ちょっと待ちなさいよ妹紅・・・・・!」
ダッ・・・・・!
(出入り口に向かって歩き始める妹紅を追い、輝夜も出入り口へ向かって駆け足で歩き始める・・・・・
咲夜の方は永琳に任せるとしても、妖怪兎たちがどこで何をしているのか、誰が連れ去ったのかをわからない現状、むやみやたらに探したところで見つかるのか疑問に思う・・・・・)
妹紅
「おそらく、今回の騒動を起こした奴と、氷精達を襲った奴は同一人物だ。どうやってこの永遠亭にまで忍び込めたのかは知らないが、放っておけば確実に第二第三の被害が出るな……」
自分が直接襲われた訳でも、青娥と実際に対峙した事がないためか、青娥の暗躍には気付いておらず、一連の騒動は全て一つの存在に帰結するだろうと言うことを推測しながら、追い掛けて来る輝夜に背を向けたまま呟く。
一瞬、輝夜に化けて侵入したのかもしれないとも考えたが、先程の戦闘で、蓬莱の人としての生命力と再生力を確認することが出来た。肉片一つ残さずに燃えきっても、離れた場所で魂を中心に再生すると言う再生をする事が出来るのは蓬莱の人だけであり、再生力に長けた吸血鬼でさえ、跡形もなく焼かれてしまえば絶命してしまう。
となると……もし、何者かが変装している可能性があるとすればそれは……普段とは違い、明確に感情を見せ、機転の回りが遅かった永琳なのかもしれないと考え付く。
妹紅
「………悪いが、少しためさせてもらう………ぞ!!」
妹紅はふと、立ち止まり、地を蹴って少し宙に浮かぶと、そのまま体を勢いよくバク転するようにして回し、その遠心力を活かしたら蹴りに炎を乗せ、永琳目掛けて完全な不意打ちの形で攻撃を放ってみる。
これが直撃すればその再生方法や再生速度から推測することが出来るし、蓬莱の人と言う防御や回避を必要としない存在が敢えて防御や回避を取ればその行動そのものが不自然なものとして考えることが出来る。
【博麗神社 境内】
霊夢
「………はぁ……また厄介な事が起こりそうな予感がする……」
妹紅が永遠亭を訪れるよりも少し前、青娥が妖怪兎の体内に寄生して入り込み、咲夜の意識を奪い、仮死状態にしている頃、神社の縁側に座って一人お茶を飲んでいた霊夢は異変が起こる前に感じられる嫌な感覚を覚える。
厄介事や面倒事は幻想郷では日常茶飯事なのだが、今回は普段の異変と違い、弾幕ごっこはおろか、スペルカードルールや、命名決闘法にさえ準拠しないアウトローな存在が現れたと言うことを察知している……これまでの経験上、この予感が外れた事はない……
ボッ・・・・・!
ジュゥゥウ・・・・・
永琳「・・・・・さっきあれほど言ったのに、まだわからないのかしら・・・・・?」
(自分から事の重大さを説明しておきながら、頼まれた妖怪兎たちを探すことをせずにいきなり不意打ち攻撃を放ってきたこと、そしてやるなら外でやれと言ったのに対象こそ輝夜から自分へ変わっているものの、また始めたことから永琳は鬼の形相で振り向く・・・・・
直撃した部分は輝夜同様に再生し始めている・・・・・)
妹紅
「……ははは、なに。ちょっと確認をしただけだよ。
今回ばかりは非常事態だ、迷いの竹林は私の活動範囲内だし、人間の里も近い。些細なものであっても憂いの種は潰しておく……それは理解できるだろ?」
永琳が再生する様子を見て、完全に消滅させた訳ではないものの、その再生速度を見て、一旦は不安の解消をするものの、近くには輝夜もいるため、この二人を同時に相手取るのは幾ら死なないとはいえ、部が悪すぎる。
チルノへの襲撃の時にも姿を見せなかった事、誰も侵入者の姿を見ている者がおらず、執拗に姿を隠して行動している事から変身や変装の線を疑い、それを前提として考えており、輝夜とも一定の距離を維持し続けている。
惜しむべくは、妹紅が数分早く咲夜の元へ辿り着けていれば、幾ら変装や擬態が得意とは言えど、青娥の正体について見抜き、彼女の凶行も止められたかもしれないと言う……
永琳「・・・・・なるほど、そういうこと・・・・・」
(妹紅の行動の真意を理解すると、上記をボソッと呟く・・・・・
そして「もしかしたら、妖怪兎の誰かに化けている可能性もあるわ・・・・・もし見つけても、常に警戒していた方がいいかもね・・・・・」と、告げておく・・・・・)
妹紅
「一応、博麗の巫女にもこの事を伝えておくか。」
ここからどうなるかわからないため、妖怪はともかく、里の人間にまで被害が及ばないようにするため、幻想郷のルールを知らないと思われる来訪者に備えるよう、霊夢に警告するべく、先ずは博麗神社に向かって現状を伝えた上で、本格的な捜索を開始しようと考え、永琳の言う"妖怪兎"に化けている可能性もあると言うことを小耳に挟みながら神社へ向かって歩み始める。
【虹龍洞 最深部】
美鈴
「ぐぅぅぅぅ………う……あッ……ガハッ………!!」
青娥
「ふふふ……順調に力を蓄えている。もはや幻想郷の賢者でもコレを止めるのは容易なことでは無いでしょうね……それにしても……まさか貴女が協力してくれるだなんて意外でしたわ。」
肉体への多大な負担や、肉体の変異に伴う激痛により苦しみもがく美鈴の体を覆っていた鱗はその憎悪や殺意に呼応するようにして次第に黒く変色し始め、それに伴い美鈴の放つ気も邪悪なものへと歪んで行っている……
この時点で青娥の力をも凌駕しているのだが、それでも尚、美鈴は与えれば与えた分だけ際限無くその力を高めて行っており、それを見た青娥は思わず感激しながら後ろへ振り返る。
百々世
「気にすんな、龍珠はもう喰い飽きていたし、いい加減私も炭鉱に篭ってばかりなのも退屈に思っていたしな。お前に着いて行けば面白いもんを見せてくれるような気もするしな!」
振り返った青娥の視線の先には、金のツルハシとスコップを手にした鉛色に近い銀色長髪の髪をして、手足にリボンを幾つもの結んだ妖女が一人立っていた。彼女の名は"姫虫百々世"
古より生きる大百足の妖怪であり、その力は龍をも喰らうと言われているほどだ。
青娥が美鈴に与える龍珠……それらは全て、妖蟲の軍団を率いてこの炭坑の採掘を行っている百々世が用意したものであった。本来ならば外部の者が侵入した場合、盗掘者として排除する筈の彼女なのだが、青娥との交渉の結果、青娥との協力を締結させた……
青娥
「勿論、私に協力してくれた暁には退屈する事の無い世界の到来を約束するわ。」
青娥はもし、美鈴が完全に破壊と復讐の化身となった時や、あらゆる面で自分を凌駕する正真正銘の天才である神子と対決する事になった時に備えて、龍喰らいと呼ばれ、あの鬼の四天王にも匹敵する力を有した百々世をスカウトする事で、誰も寄り付かない隠れ家とした。
青娥の目論見は見事に成功し、妖怪の山の外部からはもちろん、虹龍洞も名目上封鎖状態にあり、山の妖怪達も近付こうとさえしない、完璧な隠れ家として機能しており、着実に青娥の策略が進んでいく……
時間の経過と共に……一歩一歩着実に青娥は力を付けて行っている……
輝夜「どうする?アンタは博麗の巫女に伝えて、私は妖怪兎たちを探すことにするの?それとも一緒に行動?」
(ここからは手分けしてそれぞれ霊夢に伝える役目と、妖怪兎を探す役目として別行動をするべきか、それとも一緒に行動をするのかを尋ねる・・・・・
輝夜からすれば、妹紅と行動を共にするのはあまり気が乗らない・・・・・
妹紅からしても、自分と一緒に行動するのは嫌だろう・・・・・)
妹紅
「そうだな、ここから別行動だ。」
何を拍子に意見が対立して再び不毛な戦いになるかわからないため、一緒に行動するのはリスクがあるため、ここからは別行動を取ると応える。
妹紅
「……しかし、皮肉なもんだな?永夜異変の時には肝試しだとか何だとか言って巫女や魔法使い、メイドを差し向けてきたが……ある意味、今回は立場が逆になったみたいだな。」
【虹龍洞 深層】
青娥と別れた百々世は手にした金色のツルハシで岩盤を砕き、金色のシャベルで砂利や瓦礫を掘り開け、迷路のような洞窟を作り、次々と龍珠を掘り出して行く。
何時の時代でも大蜈蚣は嫌われる。
何故なら、醜悪な姿と不快な毒を持ち、人間からも妖怪からも忌み嫌われ続け、妖怪になる前、ただの蜈蚣だった頃から害虫と呼ばれて何度も命の危険に晒され、人間達によって潰された仲間や兄弟姉妹の数は数えきれない。
長い年月の果てに力を得て妖怪となり、人間に近い姿になったものの、妖怪達には受け入れてもらえず、多数の手下(妖蟲)を率いても、心の中では何時も孤独があった。自分を理解しようとしてくれたのは一人だけ……
大蜈蚣は龍にも匹敵する強大な負の力を持つのだが、その源となっているのは、他者に受け入れられず、孤独なまま夜闇や地の底で生きることでその心に宿った深い孤独と憎悪だ。
正直に言うと、新しい刺激なんてものはどうだっていい。邪仙に味方をした本当の理由は、自分を散々蔑んできた者達に逆襲をするためだ。漸く舞い込んできたチャンスだ。市場の神にも、大天狗にも、管狐にも邪魔はさせない……!!
輝夜「今の内に言いたいだけ皮肉は言っておきなさい?今回の件が終わったらその舌引っこ抜きまくってやるわ」
(妹紅の言葉に対して、今の内に皮肉は言いたいだけ言っておくようにしなさいと忠告する・・・・・
どうやら、別行動をとることを選んだのは正解だったようだ・・・・・
こんな時に犬猿の仲な二人が一緒に行動しても、何も発展しないのは火を見るより明らかだ・・・・・)
妹紅
「それなら私はお前のその面の皮もろとも炎で何度でも焼いてやるよ!」
妹紅は舌を抜いてやると言う言葉を聞いて、地獄の処罰としての舌を抜くと言う事への皮肉として自分の炎で焼いてやると応え、背中から二枚の炎翼を生やして地を蹴り、そのまま博麗神社へ向かって飛んで行く……
輝夜「あらあら、恐ろしいこと・・・・・」
(そう言うと輝夜は「さて、あの子達を探さないとね・・・・・」と、真剣になる・・・・・
妹紅の態度が気に入らずに意地で認めなかったものの、自分が寝ている間に起きてしまった出来事であるのは変わりなく、責任を感じているのは言うまでもない・・・・・
こうして妖怪兎たちを探すことが今自分に出来る精一杯のことだということも自覚している・・・・・)
【博麗神社 境内】
妹紅
「……到着っと。」
霊夢
「……なに?見ての通り私は忙しいの。厄介事も面倒事も御断りよ。」
妹紅
「おいおい、それが博麗の巫女の言うことかよ……
もう気付いているんだろ?私がここに来ると言うことも、その理由も。
それに私が見るにそんなに忙しくないように見えるぞ。」
霊夢
「………うっさい。アンタらの近くで起きた問題ならアンタらで片付けなさいよ、博麗の巫女は便利屋じゃないの。何をしても死なないアンタらに解決できない問題なんてそうそうないでしょ?」
神社に到着した妹紅はさっそく縁側でお茶を飲んでいる霊夢を見て、異変解決に協力を求めるものの、今回はあまり乗り気じゃないようで、異変解決に対してかなり消極的な姿勢を見せている。
【一方その頃・・・・・】
輝夜「・・・・・にしても、どこへ行ったのかしらねぇ・・・・・」
(まずは妖怪兎たちなら自ら赴くであろう場所は結構探したものの、見つからない・・・・・
誰かに連れ去られた、というのを前提で探すにしても、幻想郷のどこに連れて行ったのか、そもそも幻想郷の中に留まっているのかすらも不明な現状、どこを探せばいいのやら、と言った感じである・・・・・)
典
「もしもし、そこのお姫様。
何かをお探しのようですね?」
いつの間にか姿を現した白い服に身を包み、金髪狐耳の少女が右手で狐のジェスチャーを作って"こーん"と言う擬音が聞こえてきそうな佇まいでニコニコと微笑みながら輝夜に声をかけてみる。
輝夜「・・・・・えぇ、ちょっとね・・・・・」
(突然現れた謎の人物に、何を探しているのかは言わずに、敢えてぼかした感じで言う・・・・・
もしかしたら、この人物が今回の件に関わっているかもしれない・・・・・
そんな疑いが脳裏をよぎる・・・・・)
典
「それなら私もお手伝い致しましょうか?
恥ずかしながら、私はこの竹林に迷い込んでしまいまして。
探し物が見付かった暁には竹林の出口まで案内して頂ければそれでけっこうですよ。」
妖狐と思われる狐女は狐のジェスチャーをしながら、輝夜の探し物への手助けをすると言う。
見た目からして、狐が妖獣になったからなのか、空を飛ぶことが出来ずに陸路で来て迷ってしまったのか、お礼として竹林の出口まで案内してくれればそれでいいと言う。
輝夜「まぁ、そういうことなら・・・・・」
(この竹林で迷ってしまう、ということは竹林の構造を知っている者でなければザラにあることだ・・・・・
そう思うと、相手は本当に迷ってしまって困っている異変とは無関係の人物と見てまず間違いないと思われる・・・・・
そういうことならと、相手の竹林からの脱出を協力することにする・・・・・)
典
「ありがとうございます♪
ちなみに、どのようなモノを探しているのでしょうか?」
両手を後ろ腰で組み、竹林からの脱出のための案内を引き受けてくれた輝夜へ感謝しながら、肝心の探しモノは何かと聞いてみる。
【紅魔館 通路】
妖精メイドA
「あーあ、メイド長がやられたせいで後片付けは全部私達がやらないといけなくなっただなんてとんだ厄日だわ……」
咲夜達が倒れた事で彼女らの血の掃除を自分達が行わざるを得ない状態になってしまった事に対して愚痴を呟いている妖精メイドと、彼女の仲間の妖精メイド二人が一緒に血痕を拭き取ったり、戦いの影響で壊されてしまった建物の瓦礫を片付けている。
妖精メイドB
「愚痴ったってしょうがないじゃん、我慢してやるよ。
……そう言えば、小悪魔さんの遺体ってどこに運ばれたんだっけ?」
嫌々ながら掃除をしていた妖精メイド達だったが、その内の一人が違和感を感じる……それは咲夜と一緒に氷柱で体を貫かれた小悪魔の遺体が何処にも無いと言うものだ……彼女のいた場所には大量の血痕が残ってはいるものの、その姿はまるで突然消滅したかのように忽然と消えてしまっている。
妖精メイドC
「あれ?そう言われてみれば不思議……メイド長が運ばれる時にはもう無かったような……?」
???
『……………クスッ。』
意図せずして核心に迫ろうとしていた妖精メイド達の背後に一つの影が現れ、小さく笑う………
《ザアァァァァァァァァァァァ……》
それから数秒後……小悪魔と同じように、三人の妖精メイド達の姿も消え、降り続ける雨の音だけが三人のいた通路の静寂を破って鳴り続けている……四人は果たして何処へ消えてしまったのか……それはまだ……誰も知るよしも無い……
輝夜「それがねぇ・・・・・妖怪兎っていうのを探しているのよ、兎と言っても、そのまんま兎の見た目ってわけじゃなくて、小さい女の子に兎の耳が生えているって感じね・・・・・しかも複数人いるのよ・・・・・」
(捜索する側が一人増えたところであまり変わらないだろうとは思いつつも、一応容姿の情報も含めて説明する・・・・・
しかもモノではなく者であるため、ずっとそこに留まるのではなく、今もリアルタイムで移動している可能性すらあり、どこを探せばいいのかもわからないということを示唆する・・・・・)
レミリア「貴女たちー、そろそろ休憩してお茶でも・・・・・は・・・・・?」
(くよくよしていても仕方が無い、咲夜が帰ってくるまでは妖精メイド達のこともしっかり守らなければと紅魔館の主人としての自覚を新たに持ち、結果的にではあるものの今回の一件でほんの少し成長したレミリアは、妖精メイドたちにお茶を淹れたのでここらで少し休憩でもどうかと呼びに向かうと、そこにはまるで突然姿を消してしまったかのように誰もいない・・・・・
霊夢は、唖然と立ち尽くしてただただ静寂の中に雨音だけが響きわたる通路を見つめる・・・・・)
典
「ふむふむ、だいたいの特徴はわかりました。
では、このまま別行動をして迷ってしまっては本末転倒ですので、貴方のと一緒に行動して探そうと思います。」
生き物を探すのは手間がかかるものの、この竹林から出られなければ意味はない。輝夜と一緒に行動しつつ、妖怪兎を探すことにしようと提案してみる。
妖精メイドD
「新しいモップと水を持ってきたよ……って、あれ?
三人ともいない?」
四人の妖精メイドで作業しており、その内の一人が新しいモップと水入りバケツを持って戻ってきたものの、三人の姿が消え、代わりに呆然としている主人しかいない事に困惑してしまう。
もっとも、妖精は気紛れで、仕事にすぐに飽きてどこかへ行ってしまうのは珍しくはなく、統括していたメイド長も美鈴もいなくなれば必然的に規則も緩くなってしまう事から、この妖精メイドもすぐにそう考え、呆れてしまう。
レミリア「・・・・・どうやら、貴女は難を逃れたようね・・・・・」
(まだ事態を理解出来ていない妖精メイドに対し、レミリアは難を逃れたようだと告げる・・・・・
そして「おかしいと思わない?この状況・・・・・」と、ほかの仲間達がどこかへ行ってしまっただけだと考えている妖精メイドに声をかける・・・・・)
妖精メイドD
「はぁ〜〜〜〜……
どうせ何時もの事ですよ、アイツら、いっつもサボりやがるんですよ。どーせ今回も同じですわよ。放っとけば沸いてきやがりますです。」
あまり慣れない敬語を使おうとしているからか、ちぐはぐな言葉になってしまっているものの、呆れた様子の妖精メイドは、三人の失踪についても、特に深く考えることはせず、サボって何処かに行っただけだと応える。
レミリア「・・・・・本当にそうだと思っているの・・・・・?ついこの前だってあんなことがあったんだから、少しは危機感を持ったらどうなの・・・・・?」
(レミリアは、咲夜と小悪魔が襲撃されたあの事件からまだそんなに経っていないのに、突然妖精メイドたちが消えてしまったことをいつものことだで片付けてしまう相手に対し、叱責する・・・・・)
妖精メイド
「………???」
何か不審な起きるのかと不思議そうに首を傾げる。
自然の化身であり、ある意味では蓬莱の人と同じように死が終わりや個の消滅を意味しない妖精としての性質からか、危機管理能力に欠けていて、先の事がわからず、レミリアの言葉の意味がわからずにいる。
レミリア「・・・・・妖精にこんなこと言っても無意味か・・・・・」
(レミリアは、妖精という種族の性質上、こんなことを言っても無意味かと呟く・・・・・
そして「言っておくけど、いくら妖精だからって、今回ばかりは気を抜かない方がいいわよ?」と、未だに正体がつかめない敵対者に警戒するように忠告する・・・・・)
妖精メイドD
「……?
わかりましたです。」
初期の三月精のように例え死亡してもまた生き返ればいい。
何か困った事があったら一回休み(死亡)すればいい。
そう言う死生観を持つ者が多く、悪戯の内容も相手の命を奪うようなものが多い妖精と言う種族的性質から命への危機配慮の低い妖精メイドはやはり不思議そうにしたまま、返事をする。
レミリア《・・・・・どうやら、全面戦争になりそうね・・・・・》
(得体の知れない敵側勢力・・・・・
いつ、どんなことをされるかわからないからか、相対すれば全面戦争に発展することもあるだろうということを、レミリアは覚悟する・・・・・)
【迷いの竹林】
典
「うーん、なかなか見付からないですね〜?」
妖兎を探す典と輝夜の二人はあれから小一時間も竹林の中を探し回っているものの、なかなか妖怪兎達の姿が見えず、典は思わずその見付からない事を口にする。
輝夜「あまり個人的なことにいつまでも他人を縛っていられないし、そろそろ出口を教えるわよ?」
(運悪く竹林に迷い込んでしまった相手を、いつまでも個人的なことに巻き込み続けるのも悪いと思い、輝夜はそろそろ出口を教えると言う・・・・・
それに輝夜も、そろそろ別の場所を探そうと思い始めていた・・・・・)
典
「よいのですか?
まだ誰も見つけられていませんよ?」
典としてはこのまま竹林から脱出してもいいのだが、輝夜の探す妖怪兎が一匹も見付かっていない事を気にしていないのかと問いかける。
【虹龍洞 最深部】
青娥
「フフフ……一旦はこれでいいでしょう。」
日の当たらぬ地下深く……限りなく地底世界に近い虹龍洞の最奥では大量の龍珠を喰らい続け、取り込み続けた結果、衣服や髪が黒に染まり、内包する莫大な闘気と魔力による影響からか、俯いたまま身体の変異に伴う激痛に耐え続けている美鈴を、元凶たる青娥とその協力者の百々世が見ている。
百々世
「いいのか?まだまだ龍珠は大量にあるし、もっと喰わせてからの方がいいんじゃないか?」
青娥
「一度に強化し過ぎて自壊のリスクを背負うよりも……確実にその力に馴染ませるべきだと私は考えているわ、それに……どれだけの力を持っているのか、どこまで強化する事が出来たのかを知っておきたい……」
青娥は不敵に微笑みながら、身体の強制的かつ抑えきれないレベルの変異を伴う程に強大な力を得た美鈴の今の実力がどのぐらいなのかを知るべく、次の策を打とうとしている。
百々世は更に強化してからの方が良いと考えているが、青娥にはまた別の狙いがある……
百々世
「へぇ?それじゃあ、早速俺が戦ってやるか!
俺以外にコイツのパワーに耐えられる奴はいないだろうしな!!」
青娥
「いえ、今ここで貴方達がぶつかって力を削り合うのは良くない……それに格好の披露先もある事だしね?」
青娥は再びその悪意の矛先を格好の披露先……"紅魔館"へ向ける……
青娥には善悪に対する拘りは無い。
自分のやりたい事が人道的、道徳的に避難されるものであっても、自分がやりたいと思えば躊躇い無くそれを行えるし、善となる行いも躊躇無く出来る。
今回の神に等しい力を持った仙人、"神仙"になると言う目的も、死神(地獄からの遣い)に命を狙われ続け、それを撃退するために鍛え続けなければならない日常に嫌気が差したからであり、明確に幻想郷を滅ぼしてやろうと言う意思はない。あるとすれば、自分の力を見て驚き、畏れる様子を見たいと言うぐらいのものか。
だが、それにより青娥の狙いや動きが読みにくくなるという厄介な点でもある……
輝夜「えぇ、探すにしてもあの子達だってずっと同じ場所にとどまるわけもないから、きっと別の場所にいるんだと思うわ、個人的な問題に付き合わせちゃって悪かったわね・・・・・」
(輝夜はそう言うと、相手の手を引き「この竹林は本当に仕組みを熟知しているのはごくわずかだから、私の手を離しちゃダメよ?また迷うことになるから・・・・・」と、相手を出口へと誘導し始める・・・・・
今正に、再び青娥の毒牙が別の場所に向けられそうになっているということも知らずに・・・・・)
典
「……わかりました、それもそうですね。
ならその言葉に甘えるとします。」
典は自分の手を引く輝夜を見て、少し黙り込んだ後、特に拒む理由も無いため大人しく手を引かれるがままに竹林から出ることを受け入れる。
輝夜「にしても貴女も運がよかったわねぇ、私と偶然会わなかったら抜け出せなくなっていたかもしれないわよ?」
(相手の手を引きながら、自分と遭遇できたことは運がよかったと語る・・・・・
この竹林は一度足を踏み入れてしまえば、仕組みを理解していない者じゃない限り、抜け出すことはほぼ不可能・・・・・
生半可な気持ちで足を踏み入れていい場所ではないのだ・・・・・)
典
「本当に助かりましたよ。
実は旧知の友と待ち合わせをしていたのですが、話し終わった後、戻ろうとした最中、迷ってしまいまして。」
典は輝夜に手を引かれるがまま、普段は迷いの竹林から離れた妖怪の山で大天狗の飯綱丸の部下として活動していたのだが、今回ばかりは"旧知の友"との話があったため、離れたこの竹林にまで訪れたのだと応える。
輝夜「貴女の友達も随分と悪い場所を選んだものね・・・・・」
(そう言うと「ん?でも待って?ってことは、貴方の友達もこの竹林にまだいる可能性があるってこと・・・・・?」と、相手の方を見て問いかける・・・・・
もしそうだとしたら、この竹林の中を探さなければならない・・・・・)
典
「うーん、彼女なら一応は空間移動が使えるので自力で脱出している可能性が高いですね。」
少し考えた後、自分の友人は空間移動が使えるため、いざとなれば自力で脱出する事が出来ると応えるが……
空間移動と言うのは言うなれば瞬間移動の上位互換とも言えるもので、瞬間移動よりも遠くへ瞬時に移動することが出来ると言う性質上、誰もが使えるようなものではなく、強大な力を持った一部の限られた者しか使えない筈
そんな強い力を持った存在が何故、竹林の中であまり大きな力も無いと思われる管狐と何の話をしていたのかは謎となっている……
《まさかとは思うけれど、一応念の為に聞いておいた方がよさそうね・・・・・》
輝夜「ねぇ、一つ聞きたいことがあるのだけれども、いいかしら・・・・・?」
(もしかしたら今回の一件に何か関係しているかもしれないと思えば、輝夜は一つ聞きたいことがあると口を開く・・・・・
こんな竹林で話すということは、恐らくは他人には聞かれたくない内容であろうということは想像がつく・・・・・
となれば、それがどんな話かによって、今回の一件は大きく進展する可能性がある・・・・・)
典
「はい、いいですよ。」
ニコニコと上機嫌に微笑みながら、輝夜からの質問に対しても応えようと言う姿勢が見えるのだが、話し合いの内容について応えるかどうかはわからない……
輝夜「貴女の友達、何を話すために貴女を竹林にまで呼び出したの?」
(迷宮の如く入り乱れた竹林にまでわざわざ呼び出して、話が終われば友達をそのまま置き去りにするあたり、何を考えているのかがまったくわからない・・・・・
輝夜の中で相手の友達に対する疑いが強まってゆく・・・・・)
典
「……それは"秘密"ですよ。」
典は自分の口許に指を当てて、子供に静かにするように伝えるようなジェスチャーをして、自分と友人の話しについて教えることは出来ないと伝える。
削除
733:始まりし終焉◆gI:2021/10/19(火) 20:56 輝夜「・・・・・そうね、ちょっと他人の話に踏み込みすぎたわ、ごめんなさいね?」
(未だに怪しいという疑いは晴れないものの、その友達とやらが今回の件に関わっているという確証もないことから、他人の話に足を踏み入れすぎたと感じる・・・・・
プライバシーというものを考えるべきだったか・・・・・)
典
「おや、随分と引くのが速いですね?
まあ、人(妖)には知られたくないことの一つや二つがあるのは当然の事ですからね、賢明な判断です。」
典は本当に語りたくない事なのか、それともただ誤魔化す事が目的で応えただけなのかわからない笑みを浮かべながら、追及しない輝夜の判断を賢明な判断だと褒める。
典
「そう言えば、出口まであとどのくらいかかりますか?」
輝夜「相手が話したくないと言っているのに無理に突き止める権利なんてないもの・・・・・」
(そう言うと、出口まで聞かれたので「そろそろ出口よ、今度その友達にあったら、もっと抜け出すのに簡単な場所を選ぶように言っておきなさいな」と、また今回のように迷わないように友達ならば予め言うべきことは言っておくようにと忠告する・・・・・)
典
「噂とは打って変わって優しいお方で安心しました。
そうですね、以降は気を付けます。」
輝夜の抱く疑念や疑惑とは裏腹に、典は終始ニコニコと微笑みながら、言われた通り次からは迷いの竹林では無い別の場所で話すようにすると応える。
【永遠亭前】
妹紅
「輝夜の奴、まだ帰って来ないのか……
いったい何処まで探しに行ったんだ?」
霊夢への報告を終えて永遠亭近くにまで戻ってきた妹紅であったものの、まだ輝夜が戻ってきていない事を知ると、永遠亭出入り口の小さな門の柱に背を預け、両腕を組ながら輝夜が戻ってくるのを待ち始める。
また、こうして待つ事にしたもう一つの理由があり、それは迷いの竹林で生まれ育った兎も多い事から、何か用事があれば日没までには永遠亭まで戻ってくる筈であり、これで戻ってこないようであれば本当に外部からの攻撃を受けたのだと確信を持てるからだ。
輝夜「・・・・・さて、いよいよ出口ね」
(そう言うと、とうとう出口までたどり着く・・・・・
そろそろ戻らないといけない時間帯でもあるからか、丁度相手を竹林から連れ出せてよかった、といったところか・・・・・
これといって収穫できたといるような情報の収穫もできなかったが・・・・・)
典
「うん、"ちょうどいいタイミング"ですね。」
竹林から脱出すると、スルリと輝夜の手から典の手が抜け、輝夜の前に輝く夜の月へ向かって少し飛びながら、"ちょうどいいタイミング"だと小さく呟くと、輝夜へ振り返り言葉を続ける。
典
「ここまで案内してくれたお礼に一つだけヒントをあげます。
災いの種は一つだけとは限りませんよ?」
典は夜の月を背に、ニコニコと変わらない微笑みを浮かべたまま、災いの種は一つだけではないと言うことを輝夜へ伝えると、二人の側面から風が吹き込み、その風がおさまった時にはもう典の姿は跡形もなく消えてしまう……
まるで狐に化かされたかのような不思議な感覚のみを残して、典は自分の素性や名前すらもまともに話すこと無くその痕跡を消す……
輝夜「・・・・・やっぱり聞き出しておくべきだったかしら・・・・・」
(意味深な言葉を残して消えた相手に、不信感がより一層強まる・・・・・
今回の一件との関わりがあるかどうかは断言こそできないが、何かしら知っている可能性が高いと見てもいいだろう・・・・・
今はとりあえず、まだ続くであろう厄災に向けて備えるしかできない・・・・・)