きみのための物語

葉っぱ天国 > 変人・中二病 > スレ一覧 1- 101- 201-キーワード▼下へ
1:◆RI:2020/11/01(日) 20:49

自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください

正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ

220:◆Qc:2022/08/04(木) 02:34

>>219
『妖幻の月族-2』


「······三国志?······まあ一般教養の範疇なら」
「なら流石に黄巾は知ってるか。······さて、なぞなぞだ。私は『張月』。何か気付くことは?」
張、という字を机になぞってまで強調する彼女であった。向かい合う徊月はしばらく悩んでいたようだったが、改めて張月の格好を眺めてようやく思い至る。
「張······って、黄巾の首謀者の苗字も同じ······何かやっただろ」
「ご明察。······って程でもないがまあいいさ。つまりだな······まあ何というか······儒家思想を道教思想、というか単純な欲望で破壊するのは楽しかったよ」
「··················うわぁ」
ようやく察した徊月である。
「それにしても弟達も凄かったが張角は凄い奴だったな。本当に幻術とか妖術使いこなしてるし······率いた物にもう少し頭があれば天下狙えただろうに」
「会ったのか······頭、というと?」
そう言われると色々と聞いてみたい徊月。しかし相手を優先し、最低限の相槌に留めていた。
「やっぱり賊だからか頭脳は弱いな。首領は悪くないが下が悪すぎる······お陰で簡単に取り入ることが出来た。父親の忘れ形見とか何とか言ってな」
「······で、そこで何を······?」
「幻術とか妖術とかを習った」
「は?え、陰謀とかは?」
「期待してたのか?」
純粋な興味だけで動いている人間とは恐ろしいものである。張月は確かに時代の証人にはなったようだが······時代は動かさなかったようである。

「······で、結局は?」
「どうもこうも。本拠地陥落したから雷雨に乗じて逃げてやった」
「その雷雨は······ってそれはともかく。······それだけじゃなさそうだな」
「ああ。五斗米道は知ってるか?」
「何となく。今でも続いているらしいから嫌でも耳に入る······ってまさかここでも何かやったのか······?」
一、二回で慣れる、ということはない。暫くはこのままの驚きが続くであろう。
「いや。ある役人に賄賂を払って取り入った辺りで漢中が落ちた。······まあ別にその後もついて行っても良かったんだが」
徊月は頭を抱えるのと同時に、畏怖に似た感情を覚えた。
幻や妖の術に精通するとなると、時間が無限に近い月族の身でも苦労は多い。ましてやそのような異能を持っていないのであれば。
ともかく、彼はその後の話は聞き飛ばした。道教発展に一枚噛んだとか、一時期日本に渡って陰陽道を学んだとか、その辺の話は脳が受け付けなかったのである。
「······とりあえずこれからはしばらく月でのんびりしようと思うよ。この時代でも今まで学んできた術が機能するか試してみたいんだ」
「······まぁ、気取られないようにな」
結局徊月はそれしか言えなかった。ただ、唯一彼が冷静だったのは、起こった事を命月に報告することを忘れなかった事である。
このお陰で、張月の特異性は、月中に有名となるのであった。

221:◆Qc hoge:2022/09/29(木) 01:03

『無題』



今日も今日とて怠惰な生活を送っている女性、御伽華。教職をすごい早さで解雇されたのが原因ではあるが、何故解雇されたかについてはわからない。
手元には数年は遊んで暮らせる程の退職金だけが残っている。そして生憎、華は遊んで暮らすような性格をしていない。
···そこにあるのは、虚無。色も形も何もない虚無である。

「···先生?」
そんな彼女にも、辛うじて交流はあった。
「···石鎚さ······篝ちゃん。ノックくらいしてよ」
「事前に手紙送っておいた方が良かったですかね······?」
「いや···寝かけてたからむしろよかった。おかげで目が覚めたよ」
虚空から前触れなく現れた少女が、華の意識を急速に鮮明にさせていく。冗談が通じなかった所はご愛嬌である。
······彼女の名前は石鎚篝。未だに華を『先生』と呼んでいることからも、その親愛······尊敬の情がわかる。
「······で、今日は何しに?」
「···特に用事はないですが······家に一人になったので······」
躊躇はするものの、ここに来た理由を包み隠さず言う篝。特に何もないのに来るというあたり、完全に慣れている。
「そっか。···最近どう?」
「ぼちぼち······ですね。あ、そういえばこれ······この問題分からないんですけど······」
「ぼちぼちかぁ······それで質問?嬉しいなぁ。······これはこうやってこうすれば······」
座りながらテーブルにノートを置く篝と、そのノートを見て解答例を赤ペンで書いていく華。······何となく距離が近い感じがする。
「この式が共通してるでしょ?これを文字に置き換えてコンパクトにして、因数分解した後に文字を元の式に戻せば簡単で確実だよ。時間はかかるかもしれないけどね」
「なるほど······こんな感じに······ありがとうございます」
篝はそう言った後も、そのままその場所を動かない。会話はなかった。

「······そういえば、最近冴月ちゃん達はどうしてる?」
先に空気に耐えきれなくなったのは華の方だった。大人の威厳などあったものではない。
「どうって······最近来てないんですか?」
「来てないね。······まあ、こんなになってる私に会いに来てくれる人なんて······よっぽどの物好きだよ」
「······」
華が教鞭を取っていたのは1年程度である。しかも、転任ならともかく······謎の解雇によって教員生命が中断されたのだ。ただでさえそのような文化が薄いのに、生徒が会いに来よう筈もない。
······篝と、先程話題に上った冴月を除いては。
「······篝ちゃん、無理に会いに来なくてもいいからね······?」
華はのんびりと言った。そこまで軽い調子で言える事柄ではないのは重々承知している。しかし彼女はこの生活でかなりネガティブになっていた。······少なくとも篝にとっては、今にも消えてしまいそうに見えたに違いない。
「······いえ。私は来たいから来てるんです。話をしたいから手紙を送ったり会いに来てるんです。一緒にいたいから······」
「······」
そこまで言って口を噤んだ篝に対して、華の反応はというと······赤面していた。
「······そこまで言われると、嬉しいを通り越して······恥ずかしくなってくるんだけど」
「······っ」

直後、華に負けず劣らず顔を赤くした篝は、すぐに手紙に自分を添付させ帰っていった。
······後には、僅かにかき混ぜられた空気と、珍しく頭を抱える華が残されていた。

222:◆cE hoge:2023/07/14(金) 21:40


「魔女」

 おとなは、みんな嘘ばっか。うそつき、みんな嘘つき、だからもう
 「だれも、しんじない。あおい、いがい、もうだれも」
 頭から血を流す妹を抱きしめながら、そっと頬を寄せる。誰も助けが来ない業火の中、片割れを背中に抱え割れた硝子の破片に映った自分を踏みつけた。

 訓練終わり、汗を拭い湯浴みを済ませたあとお茶を啜りながらにこにこと周りを見渡す。ここも随分と人が増えたものだ。子どもから大人まで、昔は二人だけだった訓練も今では大勢ですることも多くなった。随分と日が長くなった。そんなことを考えて目を瞑る。今日は朝から嫌にあの日のことを思い出す。

 昔から、私たちは一族に疎まれていた。一つは、双子で産まれたからという理由。二つは、二人が揃うといつも妖達が寄ってくるから。三つは、二人とも女であったから。
 父は私たちに目を向けず義務だけ果たすようにといい姿を現さない。母は、忌み子達を産んだから、そんな理由で安倍の権威を失墜しようとする者たちに私刑を下された。
 そんな中、味方となってくれる大人が一人だけいた。棗、彼はそう名乗り、なにか困ったことがあれば私たちに手を貸し、その変わりに私たちが妖達を退治した。人見知りで気が弱い葵も彼には心を許していた、それは私も同じだった。
 夏の暑い日だった。今日は朝から家が騒がしく、陽炎が燃えていた。二人で手を繋いで書物庫に籠っていると、突然父が現れ私たちの両手を力強く引っ張り外へと連れ出した。それを私たちをようやく見てくれた、必要としてくれたと勘違いし、二人ではしゃいでいると突然頬を叩かれる。
「なにを浮かれている。同じ顔で気味が悪い。この騒動を片付けろ。命を落としても」
 そういい、父は去っていった。なにを彼に期待していたのだろう。涙を堪えながら、二人で現れた敵を倒して、倒して、倒して、倒して、どれくらいたっただろうか。お互い体力も、霊力も限界を尽きた。六歳の二人が闘ったところで、鷹が知れている。そんな余計な考えが頭によぎった時だった。
 今までよりも大きい妖が現れた。
 幼い私たちはそれが今回の騒動の原因だなんて気付きもしなかった。葵の方をみて油断をしていた、その時だった。

「おねえちゃん!!!」

「…っ、あお、い?、あお…っ!」

 敵の攻撃を庇った妹が頭から大量の血を流し倒れていた。う、そ…うそ、死んじゃいや、嫌だ。

「あれ、まだ生きてたの?てっきり死んだかと」
「なつめさん、あおい、あおいが!」
「分かってるよ、死にそうなんでしょ。でもね、こっちも精一杯なんだ、強く生きなよ、じゃないとこの世界では生き残れないんだからさ、利用されて終わりだよ」
「…え、あ…いっ、いや、いやいやいやいやいやいやぁぁぁぁ!」
 そこからのことは覚えていない、気付いたらあの妖はこの手で潰していたらしい。周りには大量の瓦礫とボロボロになった刀があった。周りは業火に焼かれており、妹の息も弱まっていた。

 強くなければ、意味がない。
 弱いものは、淘汰される。

 その考えは良くも悪くも私たちを変えた。
 後から確認したが、棗はそもそも私たちをよく思っていなかったらしい。そして彼はあの騒動で命を落とした。笑える話だ。もしかしたら私が手にかけたのしれないが、記憶にないのだからなんとも言えない。
 妖達が寄り付く体質も、あの後術式と性格ごと入れ換えたあの日以来収まった。
 

223:◆cE hoge:2023/07/14(金) 21:41

「そんなことも、つい最近のことのように思えましたのに…。それにしてもなにも言わずに背後に立つなんて、御前でなければ許されませんわ」
 思い出した苦い感情にぐっと蓋をして、いつものように優しく笑顔を携える。これもあの後身に付いた生き残りの術だ。
「なにもせずとも、流れるものなのだから許しておくれ」
 思考を覗かれるのは慣れないが、そういうものだから仕方ない。どうせその他の情報に流される。
「ふふ、今師範や御前に向けている信頼は本当です。ですから心配せずとも…これで、裏切られたら、それこそ半狂乱の魔女にでもなるやもしれませんけれど」
「そんなことは起こり得ないはずだ、そのように目を配ってるのだから」
「私も、そうならないことを強く望みますわ」
 そっと視線を下げた先の湯呑みに映った自分の顔はあの日は違い、少しの笑みを携えていた。
 

224:名を捨てし者 hoge :2024/08/03(土) 05:15

とある狂信者の独白

 嗚呼、私はなんと罪深いのか。この世でもっとも高貴でやんごとないお方に恋をしてしまった。貴女に近づく、いいえ、側にいるためにはなんだっていたしましょう。この想いが決して報われなくとも。

 初めてあったとき、貴女はたしか10歳に近いお年頃でした。その完成されたお姿と言ったらなんと筆をしたためるのが正解か。すらりと伸びた手足にまだ肩くらいの髪、そして全てを見透かすかのような黄金色の瞳。鈴をならすような声。そしてまだ幼い妹君を思いやるお心。その全てに心を奪われ、私はこのお方に出会うために生まれてきたに違いないそう思っていました。ある出来事があるまでは、このお方も私に出会うために生まれてきたに違いないと烏滸がましい勘違いをしていたのです。

 貴女と出会い春が7回回ったとき、冬になっても決して枯れることなく咲き続ける神櫻の下、貴女は初めて友達と呼べる存在に出会われました。名はセラフ、アイドル兼ヒーローだそうです。争い事が嫌いな貴女はヒーローと呼べる方々との交流を持ち始めました。その頃からでしょうか。妹君の交流や初恋が始まり、貴女は安堵を浮かべる表情、そうして死ぬ時に備えた動きをし始めたのは。その時、私は恥も知らず貴女を救うため医者になろうと決心したのです。貴女のためなら何も辛くはありませんでした。

 そうしてまた6回春が巡ったある日、親友の膝の上で貴女は息を引き取りました。その後の瞳孔確認は私がしたのですから間違いありません。悲しみよりも先にこれからどすればという不安にかられました。妹君はまだ12歳、私が彼女を…あわよくば貴女の変わりをなどと思っていたのです。

「茜、先ほど言った通りもう姉はいない、それでも私についてきて欲しい」

 貴女の妹君は私の目をまっすぐ見ながらそう伝えました。あぁ、この小さい女の子に私のこの濁った感情は全てばれていたのか。私は何て烏滸がましい生き物なのか。そうして貴女に似てる彼女に強く引かれてしまうのも。頷きつつ心の中にはどす黒い感情が渦巻いてしました。貴女も、貴女も…私の手の届かない所にいて、一番になれぬのならせめて二番手にそう努力しました。妹君の番様には気付かれ、手を出さないのならと見逃していただけました。

 そうして私は、夫と出会い子どもをこさえ幸せな生涯を送ってきました。あぁ、最後に…

「しづ、きさま、らんさま…どうかこの私をその目でみとどけて…くださいまし」

 その黄金色の目に移ることが何よりも私の幸せだったのです。

225:百合:2025/03/04(火) 07:26

何かの花びらが舞う季節。とある国のとある大学のキャンパスを、人と植物と道路と建物が1:3:2:4くらいの割合で埋め尽くしている。そんな中、まばらな人の群れの中を見渡して、迷彩帽子を被った男に目を付けた白衣の女がいた。

「ねえキミ!」
「あん?」

日頃の行いが良いのか悪いのか。……スコーピオンは美人に声を掛けられた。それもとびっきりの問題児、とされる女性に。『とびっきり』の後に続く言葉を美人に変えても通用するが、それで問題の部分は薄まらない。

「……タランテラ……だよな?毒物の研究をしてるって噂の……」
「そうそう!……私ってそんなに有名だったんだ〜」
「知らない奴は居ないと思うんだが。特に……」

ここで口を噤む。……この女性、タランテラは毒物のスペシャリスト。『毒』という一点だけで高校も大学も飛び級し、今はこの大学で教授と生徒の二足の草鞋を敢行している……一般生徒たるスコーピオンから見れば半分上の立場に立つ人間であった。下手な事を言えば毒殺か社会的な死か。そういう訳であった。
歳は同じな筈なのに。着る白衣や表情から漂う一種の威厳やら自信やらで目が眩むほどである。こんな真っ昼間から迷彩の帽子を被る、控えめに言って変人であったスコーピオンとは変人の度合いと突き抜け方とベクトルが違う。

「特に?」
「いやそれはどうでもいい。んでそのエリート様が俺に何の用で?デートのお誘いとかですかね?」

この軽口は誤魔化しや冗談の他に『拒絶』の意味があった。スコーピオンは元々人との関わりを苦に思うタイプの人間ではない。それでも初対面、そして向こうから話しかけてきた相手をデートに誘うほどの社交性は持ち合わせてもいない。では何故その事を口に出すか。答えは話や関係の飛躍によって相手との距離を生む為であった。
しかしタランテラは一瞬動きを止めただけでまた活性化する。効果はほとんどないな、とスコーピオンは直感した。しかも事態は彼の予想を超えてくる。

「でデート!?……まあある意味そう言えるかな?」
「……うん?」
「えーっとねぇ……あ、ちょっと呼びづらいからキミのことピオくんって呼んでもいい?」
「まあ別に構わないが……」

どうやら相手の飛躍について行くしかないのはスコーピオンの方らしかった。タランテラはそんな彼に新たな呼び名を授けた後はもう元の調子を回復している。しかし『デート』を意識してしまったのか若干声が上ずっている。もしや男性経験はないのか?とスコーピオンは特に他意なく考えた。

「ええと、ピオくんって狙撃得意でしょ」
「……どこでそれを」

若干ぼんやりしていた彼に強烈な衝撃が加わった。……狙撃。普通に生きていたら知識はともかく積極的には触れないような言葉。タランテラは普通ではないものの、果たして彼女が有する叡智の樹の根は狙撃という水源に到達しているのだろうか。
そして、スコーピオンの樹は実を言うと大学2年生たる現時点でその水源に深く根を下ろしてしまっていた。そして突然の事であったのでそれを否定できない。

「ふふん。情報収集の賜物だよー。……で、本当?」
「ここでする話じゃないよな。場所を変えないか?」
「いいよー。折角だし色々と話してみたかったんだ〜」
「……」

ペースを崩されるスコーピオンであった。そもそも狙撃、とは。狩猟なら嗜んでいる。そして主なスタイルは狙撃である。これはほとんどの職業猟師や趣味猟師にも言える事であろう。……よって彼に特別できる程の事は無い。
これは誤解を解かないといけないな、と彼は考えた。いや、実の所……誤解ではなさそうな部分もあるのだが、まずタランテラの提案を聞いてからの話である。
────彼はまだ知らない。この軽薄な考えが、今後10年以上に渡って続く運命の始まりであった事を。

226:◆eM:2025/03/04(火) 07:27

>>225
酉ミス

227:◆Qc hoge:2025/03/04(火) 07:31

>>225
どこかで使った名前をそのままにしてしまっていました
自分です


新着レス 全部 <<前100 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新