それはあまりにも唐突に起こった出来事だった。
誰しもが普段と同じ日常を過ごし、明日も同様の日々を送るものであると思い、眠りについた……
だが、目を覚ましたのはごく一部の者だけだった。
里も、山も、森も……
人妖も、動物も、植物さえもが眠りについたまま目覚めることがなく、幻想郷全体を深く冥い静寂が支配していた……
これは明確な"異変"だ。
"それ"は深き夢の世界から現れる悪夢の支配者。
微睡みの中に漂う無垢な精神を貪り、安息を求める者達に恐怖を与えるおぞましき幻魔の軍勢『エファ・アルティス』
現世を救うために悪夢を支配する幻魔との戦いが幕を開ける……
>>2 時系列と注意
>>3 異変側の勢力
キラー・クラウン
「ケケケケッ!まだまだショーは始まったばかりさ…!」
無数のナイフ
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!』
キラーは無数に押し寄せる、ピエロの大群による刃物や銃弾を用いた攻撃の嵐の中、弾幕ごっこによって鍛えられた反射神経と勘によって避け、反撃として放つ光弾によってピエロ達が瞬く間に破壊されていくのを見て、劣勢に追い込まれつつあるにも関わらず楽しそうに笑い続けている。
ジャグリングしていた色とりどりのナイフを霊夢に向かって投げ付けると、それら全てに目玉と口が現れ、おぞましい笑い声を上げながら高速で回転し、霊夢に向かって追尾し切り裂こうとする。
ピエロ達による飽和攻撃も継続しているため、新たに追尾する生きたナイフが霊夢に襲い掛かると言ったように徐々に厄介なキラー・クラウンの力が牙を向いていく……
雑魚にしては結構健闘するじゃないの!
(霊夢は、数が増えることも先に考えて紙一重になってきてはいるがすべての攻撃を避け続ける・・・・・
そして、上空へ高く飛び弾幕の雨を降らせ始める・・・・・
民家を巻き込まないようにするのは大変ではあるが、それでも巻き込まないようにしながら弾幕の雨を降らし続け道化師達を一気に消しにかかる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
キラー・クラウンの投げた生きたナイフは
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
《ギュオォォォォォォォォォォォッ》
霊夢の上空から放った弾幕の雨によって飛行能力を持たないピエロの大群は一方的に撃ち抜かれ消滅していくものの、キラー・クラウンの投げた生きたナイフは十本中三本が撃ち落とされたものの、残った七本は執拗に霊夢に向かって飛び掛かり続ける。
更に追い討ちをかけるべく、キラー・クラウンは自分が乗っている巨頭に大きく口を開けさせ、その口内に魔力を集束させる事でこの辺り一帯をまとめて吹き飛ばせるほどの破壊力を持ったエネルギー波を解き放とうとし始め。
もし、これが放たれてしまえば例え霊夢が回避に間に合ってもこの近辺に住む全ての者がバラバラに吹き飛ばされ絶命させられてしまうだろう……
くっ・・・・・!次から次へと・・・・・!
(霊夢は、少しの間も与えないほどにすぐにまた更なる追撃を、それも今度は霊夢自身へではなく人里へ向けて放とうとしている・・・・・
戦いで自分がボコボコにされて傷つくのはまだぜんぜんいい・・・・・だが、里の住人達を巻き込むような、それも命に関わるようなこととあれば尚のこと食い止めなければならない・・・・・
霊夢は、キラー・クラウンへ向けて猛スピードで飛んでくる・・・・・)
キラー・クラウン
「おっ!勇敢だねぇ!でも残念!もうボクにも止められないよぉ?」
クラウンはケタケタと笑いながら迫ってくる霊夢を見て、集束させたエネルギー波を解き放とうとする。もし、ここで結界を使って集束されたエネルギー波を暴発させることが出来れば……
だが、もし結界が抑え込めずに破壊された場合、防御や避難する間も無く霊夢は消し飛ばされてしまうだろう……より安全な策や方法があるのならば別の手段を用いて対応する事も可能かもしれない。
なら私が止めるまでよ・・・・・!!!!!
(霊夢は迫ってくるナイフを利用してキラー・クラウンに突っ込んでそのままナイフをキラー・クラウンに当てるつもりだったが、このままでは間に合わないということを悟ると、結界を展開させようとする・・・・・
失敗すれば死、あるのみだが、やらなければやられることもまた確か・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
防ぐんだ?防げるんだぁ?だけどさぁ、そ・れ・もいつまで持つかなぁぁぁぁ?火力アーップ!だよ!!」
巨頭が解き放った強烈なエネルギー波が波動状に放たれ、霊夢の展開した結界と激突し、辺りに凄まじい轟音が巻き起こり、周囲の建物がカタカタと震え始める中、キラーはケタケタと大笑いをしながら巨頭をペシペシと叩いて更にエネルギー波の威力を上げ、その圧倒的な火力によって無理矢理押しきろうとする。
キラーは霊夢が周囲への被害を恐れて避けられないことを利用しての攻撃であり、こうしている間も追撃出来るように空中を浮遊させているナイフ達を霊夢の頭上から降り注がせる事で二方向から同時に攻撃を加えようとする。
このまま防戦一方でいれば確実に押し負けてしまうだろう……
くっ・・・・・!?
バッ・・・・・!
(霊夢は咄嗟に頭上の方にも結界を展開させる・・・・・
が、一つの攻撃を防ぎながら、もう一つの攻撃を防ぐのはかなり負担がかかる・・・・・
結界にも徐々に亀裂が入り始める・・・・・)
キラー・クラウン
「さあ、これで更に技を追加したらどうなるのかな?楽しみだなぁ!」
クラウンは右手を振り上げて自身の持つ魔力によって直径5mもの魔光弾を形成していく……この魔光弾は着弾すると広範囲に爆発が巻き起こるため、結界で防いだとしても爆発による影響で霊夢の周辺が丸ごと吹き飛んでしまう……
巨頭から放つエネルギー波、空を舞う生きたナイフ、それらを前にキラーは亀裂が入り始めた結界を見て勝利を確信し、このまま一気に圧倒的な手数で押し潰そうとしている……
【オリキャラで参加希望です。】
63:◆3.:2021/04/25(日) 05:37 【OKです!
世界観や物語を崩壊させるようなキャラにならないようにしてくださいね〜】
ぐっ・・・・・!
ゴォッ・・・・・!
(霊夢は、もうこうなったらと弾幕を形成して飛ばして相手の魔光弾を相殺しようとする・・・・・
恐らくキラー・クラウンそのものの戦闘力はさほど高くはないと思われるが、こうも立て続けに攻撃を繰り出されては、戦闘力の高い低いは関係なくなってくる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!
防御から攻撃に回るつもりかい?馬鹿だねぇ、それは悪手にしかならないよ!」
これまでは結界の展開に回していた力を反撃のための弾幕として使うようになれば当然、ただでさえ亀裂が生じていた結界ではエネルギー波と生きたナイフを防ぎきれなくなってしまう……
霊夢の放った弾幕が魔光弾を狙っているとわかると逆に迎え撃つように魔光弾を放ち、霊夢の弾幕によって幾らか勢いや威力が削れているものの、それでも今の霊夢の結界を破壊して消し飛ばすには充分すぎるほどの威力がある……
生きたナイフは霊夢が回避しようとしても即座に追撃できるように霊夢の側面や背後に回り込んでガリガリと結界を削り始め、正面から放たれたエネルギー波は言わずもがな。
何かしらの打開策が無ければ今ここで霊夢は絶命することになってしまうだろう……
「ん……ん……?」
よく食べに来る人里の団子屋前で、彼は片手に三色団子を持ちながら地面に突っ伏していた。
広場から離れているものの、彼の耳には度重なる騒音が届いており、彼は騒音と自身に対する違和感で目を覚ました。
肩まである長い銀髪を揺らしながら立ち上がり、緋色の目で辺りを見回せば、先程まで話していた団子屋のおばちゃんや、後ろを歩いていた買い物帰りの女性等々が、死んだ様に眠っていたのである。
明らかにオカシイ事が起こっているのを彼は瞬時に察知して、聞き慣れない弾幕の音を頼りに二人の居る広場へ向かった……
>>66
【キャラシの投稿もお願いします!
修正や書き換えのしやすさから、質問や相談、キャラシの投稿等はこちらに投稿して下さると幸いです!
http://ha10.net/test/write.cgi/yy/1595239279/l2】
《このままじゃやられる・・・・・っ・・・・・!やばい・・・・・っ!》
(力の高い低いではなく、つまりは戦い方が勝敗を分ける鍵となる・・・・・
今この状況において、人里が戦いの場となっていることも、キラー・クラウンからすれば霊夢が自由に戦えない制限を生むことに繋がるため、正に敵の狩場にはうってつけというところだろうか・・・・・
霊夢は、打開策が思い浮かばないまま、死を覚悟しそうになる・・・・・
博麗の巫女と言えどもここまで追い詰められれば、瞬時に何か反撃の方法を思いつくのは困難を極めるだろう・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!思ったよりも大したことは無かったね!!
しかし……どうしてイライザ様の術にかからなかったのかはわからなかった……ま、今となっちゃどうでもいい事だけどね!」
醜悪な巨頭
『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!』
キラーの放った魔光弾が炸裂し、凄まじい爆音と衝撃が辺り一帯を薙ぎ倒し、周辺の建物もろとも霊夢を吹き飛ばし、クレーターを形成する。
キラーは逃げ場も無く、完全に追い込まれた状態であった霊夢では最早助かることはないだろうと確信しており、巨頭と共に楽しそうに、だが悪意と狂気に満ちた笑い声をあげて嘲笑う……
・・・・・
(霊夢がいたはずの場所には、キラー・クラウンの攻撃によって形成された巨大なクレーターだけができており、霊夢の死体は確認することは出来ない・・・・・
跡形もなく消滅した、と考えるのが自然だろうか・・・・・)
キラー・クラウン
「さぁて、次の標的は………」
回避出来ないように生けるナイフを霊夢の側面や背後に移動させていたため、例え結界が破壊される寸前に逃れようとしたとしてもナイフの餌食になっているだろう。
死体の確認は出来ないが、里の一角を吹き飛ばすほどの威力を受けたとなればただの人間の耐久では生存は不可能だ。死体すら残らないのも無理はない。
悪夢を支配するイライザの術にかかっていなかった事には驚いたものの、さほど強力な技や力を見せてくる事も無かったため、所詮は運が良かっただけであり、他に術がかかっていない者もいないだろう。
となれば、後はこの里にいる不穏分子の抹殺を行うだけであると考え、生きたナイフを手元に回収して巨頭を元のテニスボールサイズにまで縮めて戦闘警戒を解く。
・・・・・
(里の一角が吹き飛ばされるほどの威力の攻撃だったため、死体を確認しないで警戒態勢を解くキラー・クラウンを祝福するかのように、月明かりが雲の隙間から差してくる・・・・・
辺り一帯はさっきまで霊夢との戦いがあったのが嘘かのように再び静まり返っている・・・・・)
キラー・クラウン戦闘警戒を解いた次の瞬間・・・・・
ゴォッ・・・・・!
(キラー・クラウンの頬を、何かが掠ってゆく・・・・・
そして、頬を掠った何かはそのまま空中で爆発を起こして消える・・・・・
見た目としては、さっきの霊夢の放った弾幕に似ている感じだ・・・・・)
キラー・クラウン
「…………!」
後方と側面からも攻撃を仕掛けた事で回避できない状況にしつつ、結界もろとも全て消し飛ばした事で勝利を確信していた中、背後から霊夢の放ったものに似た弾幕が頬を掠ると後ろを振り返る。
元々現世の生物ですらないキラーには血液は存在しないためか、仮面のような彼の顔の傷口からは血が流れず、仮面の下にある無数の目がギョロギョロと周囲を見渡して警戒し始める。
グォッ・・・・・!!!!!
(キラークラウンが周囲を警戒してもお構い無しに、弾幕は次々と放たれる・・・・・
それこそ、無数の目で周囲を見渡しながらでも防御が間に合わないほどのスピードで、次から次へとキラー・クラウンめがけて弾幕が放たれる・・・・・)
キラー・クラウン
「ぐぎぎ……まだしぶとく生きていたのか……!
だ・け・ど!何処にいるかはわかったよぉ!!」
【巨芸「笑う暴食頭」】
放たれた弾幕が次々とキラーの体に炸裂すると、現世に顕現するために作り出した実体には痛覚が存在しないため、痛みやダメージはそれほど無いものの、再生するためには時間も魔力も必要となる。
加えて実体が破壊されれば周囲に逃げ込むための悪夢の源が無ければ存在を維持で来なくなり消滅してしまう。
手にしたテニスボール程度の大きさの歪な頭を投げ付け、最初に見せたように空中で徐々に巨大化し、放たれた弾幕を貪り喰らいながら霊夢が居るであろう方向に向かわせる。
どこ見てんのよ・・・・・?
ドガッ・・・・・!
ゴッ・・・・・!
(霊夢はいつの間にかキラー・クラウンの背後に回っており、そしてそのまま強い蹴りを食らわせ、更にそのまま追撃として弾幕を再び放つ・・・・・
霊夢の声には、相手に対する怒りがこもっているのが感じられる・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
いつの間にか背後に回り込んだ霊夢の蹴りを受けて大きくよろめく。
体格的に霊夢とあまり身長の変わらないキラーは体重も軽く、防御技を持たないキラーは衝撃を受けると簡単に動いてしまう。
キラー・クラウン
「おかしいなぁ、どうやって生き残ったんだい?」
【刃芸「生けるナイフ」】
確かに逃げ場を奪った上で結界もろとも消した筈の霊夢がどうやって生き残ったのかについて問いかけると、振り向き様に右手を大きく振るい、その袖下から五本もの生きたナイフを投げ付け、切り裂こうとする。
アンタに説明する必要があるのかしら?
ガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンを睨みつけながら、蹴り上げて反撃したり、刃以外の部分を掴んでナイフ同士をぶつけさせたりして反撃に出始める・・・・・
ナイフが生きていたところでなんだとでも言いたげな表情で、じわじわと距離を詰めてゆく・・・・・)
キラー・クラウン
「…………なるほど、飛んで逃げた……と言う感じだね?
まあ、それなら対処法方は簡単だ!こっちにおいで!!」
キラーはケタケタと笑いながら、見た目や言動に反してそれなりに洞察力や判断力があるのか、即座に霊夢が飛んで逃げたのだと推察すると、先程投げた巨頭がキラーの頭上を飛び越えて戻ると、そのまま霊夢を喰らおうと飛び掛かる。
生けるナイフもろとも頭上から襲撃させることで回避先が頭上や地下ではなく、左右前後に限定した上でキラーは再度腰の後ろから十本以上のナイフを取り出してブーメランのようにして投げ放ち、これまた空中で目口を生やさせ、それぞれに明確な殺意と悪意を持たせてほぼ全方向から同時攻撃を仕掛けようとする。
武器を用いての攻撃・・・・・本当にワンパターンね・・・・・?
(霊夢は、すべての攻撃が自分へ到達する前に避けて、そのまま巨頭やナイフ達を誘導し始める・・・・・
霊夢自身も反撃手段が多いというわけではないが、キラー・クラウンがほとんどの攻撃を武器達に任さっきりなことから、やはりキラー・クラウン自身の戦闘力はそれほど高くはなく、武器の方に警戒力を高め始める・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
いやぁ、まさかここまで持ちこたえるだなんて"夢にも"思わなかったよ!つまらない肉塊の体しか持たないちっぽけな人間にしてはやるなぁ!!」
キラーは両手の指を同時に鳴らすと何も無い空間から八つの青や赤、黄、緑とこれまた色とりどりの小さなボールを取り出すとそれを用いて高速でジャグリングをし始め、余裕淡々と言った様子からか、それともこれも次の技の準備か、もしくはその両方からかは不明だが曲芸を続けていく。
霊夢の眼前には巨頭が何重にも重なった醜悪な牙と口を剥き出しにして霊夢を飲み込もうと迫り、その巨頭の横や上には十本もの生きたナイフが笑いながら回転して霊夢を切り裂こうとする。
気味が悪い連中ね・・・・・
ガッ・・・・・
(霊夢は試しに結界を展開して、巨頭やナイフ達を閉じ込めてみる・・・・・
これで少しは時間を稼げればと思っての行動だが、果たしてこれが吉と出るか、それとも凶と出るかはわからなければ、寧ろ不利になる可能性だってある・・・・・)
《ガガガガガガガガガガガガガガッ》
霊夢の展開した結界によって巨頭と生きたナイフが封じ込められる。
霊夢の展開する結界の強度はそれらの攻撃を完全に防ぐことが出来るようだが、結界内では巨頭や生きたナイフが滅茶苦茶に暴れまわり、ゲラゲラとけたたましく笑い続け、異様な光景となっている……
キラー・クラウン
「ほらほら、新しいものが見たいようだから今度はジャグリングも見せてあげるよ!」
《ドドドドドドドドドドドドドッ》
キラーはいつの間にか結界上空まで飛び上がっており、手にした十個のボールを一斉に霊夢目掛けて投げ付ける。地面に激突したボールは爆発を巻き起こし、爆発によって生じた岩がまるで弾丸のように飛び交い、上からは爆発するボール、下からはその爆発によって巻き上げられた塵や岩、石が霊夢を挟撃しようとする。
くっ・・・・・!視界が・・・・・
(巻き上げられる塵によって視界を遮られた状態で上下から繰り出される猛攻撃に、霊夢は紙一重で避けることでなんとかギリギリで対応している・・・・・
しかし、視界が遮られている以上、攻撃がいつ直撃してもおかしくはない・・・・・)
《ヒュオッ》
土埃によって視界が遮られ、辛うじて上からの爆破玉と下からの破片を避ける霊夢に向かって一本のナイフが迫る。先程放たれた生きたナイフ達は未だに巨頭と共に結界内で暴れまわっているため、キラーが新たに取り出して放ったものだ。
吸血鬼のような高い再生力も、妖怪のような生命力も無い、あくまでも人間である霊夢に対して刃物で一度傷を付ければその時点で継戦能力はほぼ失われる。何の事はない、ナイフ一発を当てればキラーの勝ちは決まるため、キラーは積極的にそれを狙っている。
ズブッ・・・・・
ゴポッ・・・・・
え・・・・・?
(霊夢は爆破と破片の挟み撃ちを避けることに専念するあまり、ナイフに気づくのが遅れ、右胸に刺さりそのまま吐血して宙高くから地上へと落ちてゆく・・・・・
所詮霊夢も一人の人間、妖怪や妖精とは違う・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!これは当たったかな?
今度は変に逃げられないように完全に仕留めてあげるよ!」
キラーは右手にジャグリングボールを持つと、今度はそのボールに爆発ではなく人体の貫通が出来るように魔力を込めつつ、霊夢の腹部目掛けて投げ付ける事でナイフが刺さった霊夢の体を貫き、確実に仕留めようとする。
・・・・・
ドォッ・・・・・!
(霊夢は落ちてゆく中、何とか必死に抵抗しようと力を振り絞って弾幕を放つ・・・・・
しかし、ダメージを負った状態でできる反撃など、たかが知れてる・・・・・
そして、まだ反撃できるほどの力が残っていたことに、自分でも驚いていた・・・・・)
キラー・クラウン
「無理はしない方がいいよぉ?」
キラーの投げつけた貫通性に特化したボールが霊夢の放った光弾を次々と貫いて行くものの、霊夢の目の前で磨耗しきって消滅するが、弾幕を突き破って迫るボールに気が取られているであろう隙を付いて右手に持った短剣のように巨大なナイフを振るい、霊夢の喉を切り裂いて即座に絶命させようとする。
キラーは気遣うような言葉を口にしているものの、彼の中に霊夢への慈悲や慈愛などは毛頭無く、悪意しか含まれていない……
ぐっ・・・・・!
ビシャッ・・・・・!
(霊夢は、喉を切られないように咄嗟に腕でガードするが、腕でガードすれば当然喉の代わりに腕を切りつけられ、出血する・・・・・
が、霊夢はこれを逆にチャンスだと受け取り、切りつけられた腕を思いっきり振るい、敢えて血を出すことで相手の目に飛び散らせて血で目潰しをしようとする・・・・・
そして、至近距離まで相手の方から迫ってきてくれたことで、相手に思いっきり蹴りを食らわそうとする・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
キラーの無数の目が蠢く仮面の下へ霊夢の血による目潰しを受けると痛覚は無くとも視界が一時的に失われ、キラーが追撃として振るったナイフによる心臓への刺突が空振りに終わり、逆に霊夢が反撃出来るチャンスが生じる。
っ・・・・・!
ドガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンが目を潰されたことで、反撃をするチャンスが生まれた瞬間を見逃さなかった・・・・・
そのまま霊夢はキラー・クラウンの体を蹴り、そのまま地面へ落として更に弾幕による追撃をそのまま行おうとする・・・・・
自分の血まで利用したからには、これが吉と出てもらいたいところではあるが、果たして・・・・・)
キラー・クラウン
「そうかぁ……そうかぁ!ボクはここで終わりかァ!
ケタケタケタケタケタ!!!」
霊夢によって地面へ叩き付けられたところへ、霊夢の放った集中弾幕を受ける。するとキラーの体に無数の亀裂が生じていき、限界を迎えて実体が砕け、終焉が近付いて来るのを感じ取るものの、キラーは憎しみや後悔と言った本来の生命体が潰えるときに見せるような感情は一切見せず、高笑いしながら砕け散り、跡形もなく消滅していく……
はぁ・・・・・はぁ・・・・・随分、あっさり終わったわね・・・・・
(とりあえずは一旦解決、といったところだろうか・・・・・
だが、あの不気味な道化師の言葉からして、今回の大元が今もどこかで暗躍しているはず・・・・・
なるべく早く再び戦闘をできるように少しでも回復しておかなければならない・・・・・)
《ザアァァァァァァァァァ…》
術者であるキラーの消滅に伴い、結界内に隔離していた巨頭や生きたナイフ達もキラーと同じように実体を失い、塵となり消えていく……
ナイフが刺さり、出血すると言う手傷を受けてしまったものの、幻想郷に襲来してきた刺客を排除することができた。
キラーの目論見や背後に控えているであろう組織に対する警戒を怠ってはいけないものの、一時的に脅威が取り除かれたと言ってもいいだろう。
予想外の苦戦を強いられはしたものの、勝利した……筈だった。
???
「あら、随分と手こずったみたいね?
"私の術"が効かなかった事や"博麗の血筋"と言っていたから警戒していたのだけれど……過大評価が過ぎたみたいね?」
《ゾワッ》
霊夢の背後から声が聞こえてくる……
先程までは誰も居なかった筈の場所に涌き出るようにして現れたその声の主は今倒したキラーすら比較にならないレベルの強大な力を有しており、その姿を見ずとも肌にビリビリと伝わる強力なオーラと、身体中に冷や汗が出る程のおぞましい雰囲気を伴っている……
・・・・・
(思わぬ出来事に、鳥肌が立つ・・・・・
しかし、キラー・クラウンの言葉と、突如として現れた謎の人物の言葉を聞く限り、今背後にいる人物こそ正しく、この騒動の黒幕にして総大将・・・・・)
・・・・・アンタが、イライザ・・・・・?
(霊夢は振り返ることなく、背を向けたまま上記を述べる・・・・・
流石に今やりあったところで、到底勝ち目はない・・・・・
まず間違いなく簡単に手にかけられてしまうのは目に見えている・・・・・)
イライザ
「ええ、その通り。私がこの幻想郷に昏睡術をかけて意識を奪い、その肉体を傀儡とした幻魔達の女王であり……貴方達にとっての"敵"よ?」
イライザは霊夢がこの里に着く前に操られたチルノと魔理沙との戦闘を繰り広げていた事まで知っているようで、クスクスと不敵な笑いを溢しながら自分を明確に霊夢や幻想郷にとっての敵であると応える……
イライザを倒せば幻想郷の住人達は目を覚ますだろう。
だが、それを実行するには絶望的なまでの力の差がある……
何時でも不意討ちをしかけられたと思われるものの、それをせずに敢えて霊夢の背後に姿を現し、言葉を交わしていることから、イライザは姿を現すと言うリスクを遥かに凌駕するほどの力があると言うことを暗に示している……
随分と厄介なことをしてくれるのね・・・・・あの不気味な道化師も、戦闘能力は低いくせして戦ったらこのザマよ・・・・・?
(回復が必要な時に敢えてタイミングを見計らって出てきたとも思えるイライザ・・・・・
あの道化師を部下に持つボスならば、それもまぁまぁ納得が行くが・・・・・
しかし、問題なのはこの状況・・・・・どう頑張ってもダメージを負っている今の霊夢に勝ち目はない・・・・・)
イライザ
「クスクス……彼は純粋な悪夢の化身でありながら現世に実体を持って現れる事が出来る稀有な存在だった……実体化した時に大きく力が失われてしまったようだけど、それでも今の幻想郷を制圧するには充分な戦力を持っていたわ。悪夢の中で戦っていればまず貴方に勝ち目は無かったのよ?」
キラー・クラウンを始めとする幻魔の大半が悪夢の世界でのみ充分な力を発揮することが出来る。逆に現世に体現できる者や現世に干渉することが出来る者はイライザを含めても十に満たない。
これがイライザが大軍団を送り込まなかった理由でもあり、雑兵では現世に出てくることすら出来ない。
故に優秀な手駒の一つを失った事に僅かばかりの憤りを感じているのか、万全の状態でならば敗れることも無かったと言う。
イライザ
「まあ、幾ら弱まっていたとは言え、たかが人間一匹に敗れるようならそこまでの奴だったって事になるのだけれどもね?」
霊夢に向かって一歩前へ歩き出す。
イライザの言葉通りであるのならば、今のイライザの放つ肌を打つ強烈なプレッシャーさえも本来のものよりも大きく劣化しているものであり、その本来の力は想像を絶するものとなっているだろう……
次の瞬間、イライザは霊夢の目の前に姿を現す。
イライザの双翼にある禍々しい眼が霊夢を嘲笑うように注視しており、彼女の死人のように白い肌、底無し沼のような深紫色の瞳が霊夢の魂すらも引き込み、呑み込もうとしているかのような感覚さえ感じられる。
イライザ
「さて、楽しいお喋りの時間は終わりにしましょうか?幸運な巫女さん?」
イライザは再び一歩、二歩と歩みを続けながら言葉を続ける……
イライザの言葉の一つ一つが感覚を、意識を鈍らせ、翼にある眼光は心の底にまで入り込んでくるような違和感を伴い、それらが合わさる事で魂すら引き寄せられるような感覚が強くなって来る。
ただの気のせいや比喩表現などではなく、実際に魂が根底からイライザへ引き抜かれようとしている。
・・・・・っ・・・・・!
(言葉にし難いこの威圧感・・・・・
動こうにも動けなくなるこの圧倒的かつ静かな殺意の塊・・・・・
万事休す、とは正にこのことか・・・・・)
イライザ
「さようなら、紅白の巫女さん?」
《ザザザザザザザザ…》
不敵な笑みを浮かべたまま言葉を介してイライザが魂にさえ干渉する力を強めようとした瞬間、霊夢の視界の歪みが大きくなり、次の瞬間、意識が失われ………
【???】
イライザによって魂を奪われたのだろうか?
辺りには幻想郷の様々な環境や地形が滅茶苦茶に融合したような異様な空間が広がっている。
霊夢のいる博麗神社の一部に魔理沙の魔法店が隣接して存在し、周囲を見渡すと霧の湖に紅魔館の時計塔が建ち、妖怪の山の一角に広大な太陽の畑が存在していたり、魔法の森と人間の里がグチャグチャに融合し、空は薄い桃色の空が広がり、不思議な空間が何処までも広がっている。
・・・・・何よ、これ・・・・・
(意識を失っている間に自分の予想を上回る何かが起きたとしか思えないような、理解が追いつかない不気味な光景を目にし、霊夢は何がなんだかわからなくなる・・・・・
そもそも、自分が今いるここが本当に幻想郷なのか、自分は今生きているのか死んでいるのか、それすらも疑わしくなってくる・・・・・)
夢の案内人
「お目覚めのようですね?
……いえ、この言い方は多少語弊がありますかね?」
霊夢の目の前に博麗神社にも現れたものと同じ桃色の大きなシャボン玉がフワフワと宙を漂いながら出現し、再び脳内に直接語りかけるように言葉をかける……これの正体は敵か、それとも味方か……
またアンタ・・・・・?
(理解が追いつかない状況で更に混乱してくる・・・・・
意識を失う少し前に霊夢はイライザの姿をイライザが自ら霊夢の前に現れたことで見てはいるものの、その後すぐに意識を失ってしまったのでどうも容姿に関しては記憶が曖昧なこともあり、今目の前に入るシャボン玉、そして直接語りかけてきている声の主がイライザなのではないかと疑いを持つ・・・・・)
夢の案内人
「また、とは心外ですね。
危うく"あの女"に消されてしまうところを助けてあげたと言うのに。」
混乱している霊夢に対して言葉を返す。
声の主はイライザに対して快く思っていないようにも聞こえる。
仮に声の主がイライザであった場合、わざわざ遠回しに声をかけたりせずとも、最初に神社に現れた時に神社ごと消し去った方が確実だった筈だった。にも関わらずこうして異世界へ引きずり込んだのには何かしらの狙いがあるのか……
そう・・・・・助けてくれたことには感謝するけど、そっちの正体がわからない以上、こっちだって完全に信用することはできないわ・・・・・
(助けてくれた、ということは敵ではなさそうだと判断するものの、素性も何もわからない相手にはさすがに完全に信用することは出来ないと言葉を返す・・・・・
そもそも今いるこの世界の光景からして、不審に思うのも無理はないだろう・・・・・)
夢の案内人
「……私の素性については"まだ"明かすことは出来ませんが、その代わりに貴女を取り巻く現状についてなら説明することは出来ますよ。
真偽のほどがわからなくとも、何かしらのヒントやきっかけにはなるかもしれませんよ?」
声の主は落ち着いた様子で霊夢に自分の正体についてはとある理由から話すことは出来ないものの、その代わりにこの空間が何なのか、何故此処に引き込まれたのか、イライザ達幻魔の目的や正体等、現在の状況について説明することなら出来ると応える。
それなら、一通り言える部分は全部吐いてもらいたいわ・・・・・この不気味な空間についても、ね・・・・・
(明かすことは出来ないが、情報を提供しようとしてくれる辺り、少なくとも敵ではない、と言ったところだろうか・・・・・
そして、それならば言えることならば全部吐いてもらおうと霊夢は考えて、現状についてと、幻想郷が朽ち果てたようなこの不気味な異空間は何なのかと問いかける・・・・・)
夢の案内人
「わかりました、お答えしましょう。」
声の主は穏やかな声で淡々と説明をし始める。
その声からは感情を読み取ることは出来ないものの、現状、何も危害を加えるような様子は見えず、感じられない。
夢の案内人
「まず……ここは"夢の世界"と呼ばれる空間です。
もっとも、現在は悪夢の化身である幻魔によって支配されてしまっていますが……」
ここが夢の世界である事と共に、キラー・クラウンも言っていた"幻魔"と言う単語の意味が判明する。幻魔は悪夢が形を成し、自我を持った存在であり、現実にすら影響を及ぼす程の影響力を持っている……
なるほど・・・・・現実じゃあないってことね、ちょっと安心したわ・・・・・
(相手の言葉を聞けば、今いるこの空間及びこの光景は現実のものではなく、夢の空間における幻想郷であるということを知り、夢であっても幻想郷がここまで滅茶苦茶にされているのは解せないものの、現実じゃない分少なくともまだホッとした部分はある・・・・・
そして「で、その幻魔ってのはどこにいるの?叩きのめしてやるわ」と怒りを顕にし)
夢の案内人
「話が早くて助かります。
ですが、奴らは恐ろしく狡猾かつ非情な存在です。
本来ならば悪夢を喰らい、彼らを抑え込む筈の貘達ですら手に負えないほどの力を持った幻魔を前に無策で乗り込むのは危険過ぎる……」
声の主は幻魔の実力を知っているのと、先程のイライザの"悪夢の中では幻魔は本来の力を出せる"と言う言葉からこの先にはあのキラー・クラウンをも容易く凌駕する様々な悪夢の化身達が立ちはだかる事になる……
夢の案内人
「ですが……何も手がない訳でもありません。」
そこに声の主は幻魔が圧倒的優勢にある現状を打破する策を一つ考えているのか、強大な力を持った幻魔にも対抗しうる考えがあるのだと言う。
それじゃあ、その手っていうのを早いとこ教えてもらおうかしら?このまま得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのはごめんだからね・・・・・
(正夢という言葉もあるくらいだからか、霊夢は早く手を打たなけれはこの悪夢の世界が現実になるのではないだろうかという不安が脳裏を過ぎり、この状況を打破する方法を聞き出そうとする・・・・・
得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのは、冗談ではない・・・・・)
夢の案内人
「はい、私が場所を指定しますので、そこへ幻魔達の女王『イライザ・インサーニア』を呼び寄せて下さい。」
夢の案内人
「そうして下されば後は私がイライザをこの夢の世界から永劫に追放します。幻魔は夢の世界から核ごと追い出されてしまえばそのまま消滅します。イライザさえ葬ることが出来れば統率者を失った幻魔は壊滅し、その多くも消滅します。」
声の主は例え高等幻魔を全て倒せるだけの実力が霊夢にあったとしても、イライザ本体との戦闘になればその力の差から対抗することが出来ずに容易に滅ぼされてしまうと考えているのか、イライザを所定の位置にまで誘き寄せ、誘き寄せたところを夢の世界から完全に追放し、消滅させることだけがイライザを葬る策だと言う。
人間で例えるのならば酸素に満ちた地上からいきなり真空の宇宙へ放り出されるようなものであり、キラー・クラウンのように事前に現世へ現れるための実体(人間で言う宇宙服)を用意する暇すら与えなければそのままイライザを滅ぼすことが出来るだろう。
とは簡単に言うけれど、相手側が呼ばれてそう簡単にぬけぬけとやって来るものなの?
(夢の案内人が言うように、簡単に呼び寄せることはできるのかどうかが不安でもある・・・・・
イライザも馬鹿ではないだろう、呼び寄せることが出来たとしても警戒してあちらの方から寧ろ攻撃を何かしら仕掛けてくるであろう可能性も考えられる・・・・・)
夢の案内人
「呼んだところで大人しく着いてくることは無いでしょうね……」
夢の案内人
「ですが、貴方がイライザの前に辿り着いた後、撤退するようにして移動すれば確実に追いかけて来るでしょう。」
夢の案内人はイライザの力を前に負けを悟って退却するように見せることで、弱者をいたぶり、ジワジワと弱らせる事を好む卑劣なイライザの性格を逆手に取って誘き出すことが出来るだろうと言う。
これが成功すればイライザは確実に滅びるだろう。
だが、そこに辿り着くためにはキラー・クラウンのような高等幻魔が立ち塞がり、辿り着けたとしても上手く逃げる事が出来なければ霊夢の死……そして幻想郷の崩壊は確定的なものとなってしまうだろう……
追いかけられている間に勘づかれたらどうするの?
(ついさっきイライザと遭遇した時に感じた得体の知れなさは紛れもなく本物だった・・・・・
夢の案内人の言うようにおびき寄せることに成功して途中まで上手くいったとして、もし途中で勘づかれたらその時にはどういう手を打つつもりなのか、今の内に考えておかなければならない・・・・・)
夢の案内人
「気付かせないように死力を尽くして、逃げ、戦うしかありません。
あの女の性格から貴方を一瞬で消し去るような事はしないでしょうから……」
この作戦が成功するかどうかは霊夢の回避能力、そしてイライザの陰惨な性格の二つに賭けるしか無い……もし、霊夢が回避しきれなければ……もしイライザの気分や興味、感心が霊夢に向かわなくなれば……もし誘導に失敗してしまえば……
夢の案内人
「ですが、もし……この策が見抜かれた場合……貴方達は確実に終わる……」
言わずもがな、全ては破滅し、終わりを迎えてしまうだろう…
広大な幻想郷の中でイライザの術から唯一逃れることが出来た最後の希望たる霊夢が消されてしまった場合、もはや誰もイライザに対抗することが出来なくなる……全ての希望は霊夢一人にかかっている。
上手くいくかどうかなんて気にしている余裕はない、とにかくやるしかないってわけね・・・・・
(こうなったらもうなにがなんでもやるっきゃないと悟り、霊夢は覚悟を決める・・・・・
やれば自分の命が尽きるかもしれないが、やらなければ幻想郷がイライザの手に落ちる・・・・・
自分の命を危惧している場合ではない・・・・・)
夢の案内人
「貴方ならそう言ってくれると信じていました。
本当なら私ももっと手助けをしたいのですが……
残り私に出来るのは貴方をなるべくイライザの近くへ飛ばすことだけです。」
声の主は霊夢に対してもっと支援を行いたいと言う考えはあるものの、引きずり出さない限りイライザに手出しできない理由があるようで、霊夢の覚悟を決めた応え聞くと、少し安心しているように聞こえる……
私がやらなきゃ誰がやるって言うのよ・・・・・
(なんとしてでもイライザ討伐を成功させなければならない・・・・・
今のこの空間の幻想郷は、擬似現実だ・・・・・
霊夢がこの作戦を成功させなければ、この悪夢は悪夢ではなく、現実のものとなる・・・・・)
夢の案内人
「では私が貴方をイライザの懐まで移動させます。
そこが私の力が及ぶ最大限可能な悪夢の世界誘導地点でもあります。
どうか……御武運を………」
霊夢の目の前で浮いていた桃色のシャボン玉が膨らみ始め、何倍にも大きくなるとそのまま霊夢の体を包み込み、幻魔が犇めく悪夢と恐怖の世界……夢に干渉する種族でなければ入ることすら叶わない悪夢の世界の深層へと誘って行く……
【→悪夢の世界/深層】
《オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……》
霊夢の体を包み込んでいたシャボン玉が徐々に力を失い消滅する事で霊夢の眼前に広がるのは空が緑、紫、赤と様々な色へと変化する不気味な空が何処までも広がり、静寂に包まれ、寂れた博麗神社のような空間となっておる。
辺りを見渡すと、悪夢の博麗神社の正面側……つまり、博麗神社から見て外の世界に位置する辺りに、無数の廃館や朽ちた病院、寂れた学校やらが無秩序に融合する事で歪ながらも巨大な要塞が形成されている。
その異形の要塞からは無数の悪意ある魔力が蠢いており、要塞の中枢からは途方もない悪意と魔力が感じられる……この力の正体こそがイライザの本体なのだろう。
夢の案内人
「…………向かったようですね。
では、私も準備する事にしますか。
もっとも……"彼女達"が素直に協力してくれると言う根拠はありませんが……」
霊夢をイライザが支配する悪夢の深層、幻魔の世界へと送り込んで直ぐに霊夢の前には頑なに姿を現すことが無かった声の主が桃色のシャボン玉があった場所に現れる。
彼女は白黒の衣装に身を包み、青髪青瞳、眠たげな瞳をしながら、その手には悪夢の破片である桃色のスライムのようなモノを手にしている。その名は"ドレミー・スイート"幻魔と同じく夢を支配する存在であるものの、悪夢から生まれ、悪夢を支配し、新たなる悪夢を増殖させ続ける幻魔達とは対照的に人妖達の精神を蝕む悪夢を喰らい、幻魔から人々の安眠を守る獏だ。
霊夢がイライザを誘き寄せるまでの間に"彼女達"の元へと移動し、その助力を乞い、イライザもろとも幻魔達を一掃しなければならないのだが……その説得も恐らくは一筋縄では行かないだろう。霊夢がその命を賭けて幻魔達の巣窟からイライザを引きずり出す以上、こちらもまた命を賭けよう。
全てはイライザを討ち滅ぼすために。
・・・・・歪で不気味な場所ね、本当に悪趣味・・・・・
(イライザの拠点の前まで移動させられると、その異様な光景から歪で不気味で悪趣味だと述べる・・・・・
しかし、イライザの凶悪さはこんなものでは済まないだろうと思いながら、霊夢は要塞へ向けて一歩踏み出す・・・・・
中に入るまでに何か罠がないとも限らない、慎重に進まなければならない・・・・・)
《キャアアアアアアアアアアアアアッ》
霊夢が要塞に向かって歩み始めたところ、要塞の至るところから様々な悲鳴が聞こえ始める……その数は一つや二つではない……それも、ただの悲鳴ではなく、断末魔の叫びのようなものが幾つも木霊して聞こえて来る……様々な者達の恐怖が形を成した悪夢の要塞である以上、どれだけおぞましいものが潜んでいてもおかしくはないだろう。
要塞の入口と思われる、何故か開け放たれ、所々に返り血が付着し、ボロボロになった布切れがカーテンのようひはためき、扉の奥、カーテンの向こうには暗闇が広がっており、その暗闇の奥から何百もの視線が感じられる……
・・・・・気が狂いそうだわ・・・・・
(この悲鳴や視線がイライザの敢えて作り出した演出なのか、それとも今本当に起きていることなのか、わからなくなってくる・・・・・
今正に誰かが襲われて断末魔の悲鳴を上げていたとしてもおかしくはないほど狂気に満ちた世界であるため、悲鳴がイライザによる演出であろうとなかろうと、生々しく聞こえてくる・・・・・)
【悪夢の要塞/第一階層】
幸いにも要塞への侵入を阻まれることはなく、要塞内部への侵入に成功する。要塞の最下層部分、つまり第一フロアは床、天井、壁の全てが錆び付いた鉄板のようなもので構成され、窓が一つも存在せず、証明もまともに無い
また、通路の両側には無数の鉄製の扉が並んでいるものの、部屋の内容を説明するプレートには
「Δωμάτιο βασανιστηρίων(拷問部屋)」
「Αίθουσα επεξεργασίας πτώματος(死体処理室)」
「Αίθουσα εκτέλεσης(処刑部屋)」
等、恐ろしい単語の部屋しか存在せず、通常の建造物にあるような応接室や食堂、居間等は一切存在せず、ひたすらに他者を苦しめ、虐げ、命を奪うことのみを求め、存在の大半をそれらに頼っている幻魔らしいものとなっている。
鉄と血の濃密な臭いが充満しており、通路の奥の暗闇からは絶え間無く悲鳴や断末魔、唸り声が聴こえて来る。現世にいる生命体や知的存在とは根本から異なる者達である事が伝わってくる。
・・・・・まるで刑務所・・・・・いや、それ以上ね・・・・・
(悪夢の中の現実というのは、まさしく悪夢と呼ぶに相応しい世界だ・・・・・
捕まれば二度と安息は訪れないであろう恐怖と拷問の詰め合わせ・・・・・
悪夢という言葉を具現化した建物が、この要塞なのだろう・・・・・)
《ガチャッ》
霊夢が通り過ぎた部屋の扉が開け放たれ、その中から巨大な口しか顔に無い者、目が五つある者、右腕がチェーンソーになっている者等、人型をしながらも、顔のパーツが欠如していたり、関節を無視して動いている等、異様な姿をした者達が鉈やナイフを持って霊夢を追いかけ始める。
その異形達は共通して返り血に染まっており、その目や感じられる雰囲気は明確な悪意と殺意に満ちている……
・・・・・っ!
(いくら博麗の巫女と言えども、こんな不気味な場所でこんな異様な見た目の敵に追いかけられては、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
霊夢は猛スピードで要塞内を走りながら、弾幕でなんとかしようと応戦し始める・・・・・
人間、本当に怖い時は声なんて出ないとはよく言うが、まさか身をもって体験することになるとは・・・・・)
《ヒュオッ》
悪夢の拷問官達はそのおぞましい見た目とは裏腹に、耐久性そのものはさほど高くはなく、キラー・クラウンが生み出した道化師軍団とそれほど代わり無く、容易に撃破する事が可能であり、霊夢の放つ光弾が数発当たるとそれだけで塵となって消えていく。
だが、再現無く現れる大量の拷問官達による波状攻撃から逃れるべく要塞内を駆け抜ける霊夢であったものの、通路の曲がり角で待ち伏せしていた頭部の存在しない拷問官が手にした無数の棘が付いた棍棒を霊夢目掛けて振るい、打ち倒そうとする。
きもっち悪いのよアンタ達・・・・・!!!!!
ドドドドドドドドドッ・・・・・!!!!!
(霊夢は四方八方へとめがけて弾幕を撃ち放ち、拷問官たちを消滅させにかかる・・・・・
耐久力が高くないのがせめてもの救いか・・・・・
しかし、気持ち悪さでは圧倒される・・・・・)
《ズオォォォォォォォォォォ…》
通路の角から不意打ちを仕掛けようとした拷問官、通路から追いかけてくる異形の拷問官達を全方位に向けて撃ち出された弾幕を受け、次々と塵となって崩れ去って行くが、その後ろから押し寄せる拷問官が直ぐに新たな波となって霊夢に迫る。
そんな中、無数の拷問官に追いかけられた霊夢が一際開けた広間に到着すると、異形の群れが広間の入口で突然動きを止める。それは単に脅威が去ったのではなく、寧ろその反対、彼らを遥かに凌ぐ脅威が支配する場所であることを示している……
その証拠に、広間の中央にある巨大な断頭台から強烈な悪意と殺意が混ざり合った異様な魔力が感じられる。この魔力はキラー・クラウンと同等かそれ以上の魔力となっており、殺意の点で言えばあのイライザにも比肩するほど……
・・・・・あの化け物たちが計画的に私をここへ誘導したのか、それともただの偶然かはわからないけれど、いずれにせよ私は「飛んで火に入る夏の虫」ってわけね・・・・・
(イライザと対峙する前に、早くもイライザとは別の可能性がある何者かの脅威を感じる・・・・・
あの化け物立ちに自分をここまで計画的に誘導することが出来るほどの知能があるかどうかまではハッキリとはわからないが、いずれにしても今自分は窮地という名の鳥籠に囚われた・・・・・)
悪夢の処刑者
『グゥゥゥゥゥゥ……』
断頭台の裏からは顔を隠すように深く黒い頭巾を被った身長3m以上はある見上げるような大男が地響きのような唸り声をあげながら現れる。
全身には無数の血管が浮かび上がり、両手で持てる歪な血染めの斧のようなものを手にしており、頭巾には血で文字が描かれていると言う異様な風貌をした大男であり、明らかに対話が通用しないと言うことがわかる……
・・・・・話し合い・・・・・は通用しなそうね・・・・・
(イライザと対峙する前にこんな巨大な化け物をなんとかしなければいけないという現実が、霊夢に襲いかかる・・・・・
さすがは悪夢の要塞、と言ったところか・・・・・
しかし、不思議と負ける気もしない・・・・・)
悪夢の処刑者
『グォォォォォォ!!!』
《ゴオッ》
悪夢の処刑者と霊夢の間には親子以上の体格差があり、一見するとどう足掻いても勝ち目など無さそうに見える……だが、幻魔達は何も守れない、救おうとさえしない。ただの破壊衝動と殺戮衝動のままに生きるだけの怪物だ。幻想郷の未来を、運命をかけて挑む霊夢とは体格差以上に覚悟や決意に大きな差がある。
悪夢の処刑者は手にした歪な斧を右手だけで持ち、そのまま大きく振り上げ、地鳴りが生じるほどの足音をたてながら霊夢に向けて迫り、手にした斧を振り下ろすことで霊夢の体を切り裂こうとする。
line.me/ti/g2/bokaH6F0kT18R7RNJq_s-A
139:博麗の巫女◆gI:2021/05/30(日) 12:15 あまり私を見くびらないことね・・・・・?
ドガガガガガガガガガガガッ!!!!!
(霊夢は悪夢の処刑者が斧を振り上げると同時に、瞬時に飛んで攻撃を避けるとそのまま上空から弾幕の雨と言わんばかりの猛攻撃を立て続けに放ち始める・・・・・
この攻撃が効くかどうかは別として、これで少しでも動きを鈍らせることが出来ればまだいい方である・・・・・)
《グオッ》
悪夢の処刑者の体に霊夢が放つ弾幕が着弾し、ダメージを受けていくものの、その巨体故かかなりのタフさと頑丈さを持つ事から決定打にはならないようで、霊夢の弾幕を受けながらも弾幕の中を突っ切るようにして飛び上がり、手にした斧を振るって反撃しようとする。
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始めふ)
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始める・・・・・
しかも今度は、顔面に集中的に放ち始める・・・・・)
【途中送信すみません!】
《ドゴオォォォォォォォォォォッ》
悪夢の処刑者が勢い良く斧を振るうが、霊夢が避けた事で空振りするとそのまま続けて攻撃しようとするものの、距離を詰めすぎたせいか、霊夢の放った至近距離からの弾幕を避けられずに顔面部分に直撃し、彼の被っている黒い頭巾がところどころ破れる。
破れた頭巾の切れ目の下には無数の血走った目玉と赤黒い管のような小さい触手が腐肉に群がる蛆のように大量に見え、相手の素顔はかなりおぞましいものである事が見える……
隠したい気持ちもわかる顔ね、本当に不気味・・・・・
ダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢は顔の頭巾が敗れたのを見て、やはりある程度は効いているようだと確信すれば、そのまま弾幕攻撃を顔面、及び今度は足元にも放ち始め、相手を転倒させようとする・・・・・
今の自分は攻撃手段は一応弾幕のみに留めているが、悪夢の処刑者に関しては斧を振るうだけしか攻撃手段がないようにも見える・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲギャギャギャギャギャッ!!!』
霊夢の弾幕を顔と脚に受けた悪夢の処刑者は被っていた頭巾が完全に無くなり、バランスを崩して地面に倒れ込み、手にしていた斧を手放し、前のめりに倒れた状態になるものの、悪夢の処刑者の脇腹から百足の脚のようなものが生え、斧を手放した代わりに両手が鋭い鉤爪を生やし、黒い手袋を内側から貫く……
悪夢の処刑者は無数の目玉と触手が蠢く中で大きく裂けた口を持ち、不快な笑い声をあげ始め、そのまま霊夢に向かってこれまで以上のスピードで飛びかかり、霊夢の体を引き裂こうとする……
・・・っ!?
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は猛スピードで突進してきた悪夢の処刑者に向かって弾幕を放ちながら同時に宙高く飛行して応戦する・・・・・
もっと動きがのろいものかとばかり思っていたが、巨体の割りには見合わずに早いその動きとその異様な見た目に、霊夢は顔をしかめている・・・・・
人間である霊夢からすれば見た目も動きもパワーアップした巨大なゴキブリと戦っているようなものだ・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャッギャッギャッ!!!』
複数の血走った目、百足のように這い回る姿、無数の蛆が顔に群がっているような生理的な嫌悪感、骨や筋肉すら存在しいような針金のよに細く鋭い爪というように、人間が気持ち悪いと判断する様々な要素を取り込んだ見るもおぞましい姿となった処刑者は宙へ逃れた霊夢に向かって追撃すべく飛び掛かる。
だが、この場所は室内であり、どれだけ高く飛ぼうともその高度には限界がある……霊夢の放った弾幕によって体の一部が消し飛ぶものの、消し飛んだ箇所には先程まで霊夢を追いかけ回していた異形の処刑者の手足や頭が生え、攻撃する程に変異を繰り返すようになっている。
決定打に欠けた状態では絶望的な消耗戦を強いられ、肝心のイライザの元へ辿り着く事すら出来なくなってしまうだろう……だが、幸いにもこの広間には攻撃に使えそうな"物"がある。これが飾りで無ければ、致命的なダメージを与えられる可能性は高い。
・・・あーっもう!!!!!こうなったら手当り次第よ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(近くにあった不気味な甲冑が持っていた剣を掴めば、そのまま霊夢は剣を振り上げてこれで何とかなるならと悪夢の処刑者の体を突き刺したり、切り刻んだりし始める・・・・・
しかし、剣がそこそこ重いことや、剣なんて使い慣れていないことも相まって動きが鈍くなっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギィィィィィィィ!!!』
精神への干渉や攻撃、実体の無いものへの攻撃は幻魔の専売特許的な面があり、霊夢が拾って振るう幻魔の剣が処刑者の体に当たると、処刑者自身にもダメージが通る。血液が存在しないため流血はしないものの、斬り傷が再生されずに残る。
だが、剣の硬度は処刑者と比べると脆く、一度振るっただけで折れてしまい、連続的な使用は不可能であり、これもまた決定打に欠ける……
処刑者は今度は口を大きく開き、四重の牙を剥き出しにして霊夢の体を喰い千切ろうと再度飛び掛かる。だが、この広間には火力や威力においては最適と思われる"物"が存在している。そこへ上手く誘導し、作動させる事が出来れば処刑者を撃破することが出来るかもしれない。
こうなったらっ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(霊夢は元々は悪夢の処刑者の持ち物だった斧に目をつけ、これを使って悪夢の処刑者に反撃をしようとする・・・・・
しかし、形の歪さが明らかに人間用の作りではなく、悪夢の処刑者用に作られている武器と言っても過言ではないような形だからか、どうも振り上げづらい・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャアァァァァァァァァッ!!?』
元々は悪夢の処刑者の持ち物だったものの、悪夢の処刑者から奪い取り、霊夢が振るった斧が本来の持ち主である処刑者の頭に直撃すると、処刑者の頭が切り落とされ、床に落ち、落ちた頭部が寄生を発しながら塵になって消滅していく……
だが、頭を失った悪夢の処刑者が再度頭部を生やそうと力を集中させ始める。今の一撃で本来の対象である人間の精神体よりも遥かに強固な悪夢の処刑者の頭を切り裂いた事で斧はかなりの消耗を受けてしまっており、あと三回も振れば破壊されてしまうだろう。