題名に特に意味はないですはい(☞^o^) ☞
純粋な恋愛小説を書きたいです
レッツラゴー
レス100
おめでと🥳
ありがと😘
103:タピオカパン(先輩):2019/08/12(月) 16:05
陽side☆*
今日の朝は、何かが違った。
いつもと変わらないような朝だけど、なんか変だ。
なんか…
無性に胸がザワザワする。
部屋を出ようとすると、スマホが震えた。
見ると、和田からのLINEだった。
『おい三橋……』
ん?
なんか暗くね?
【どうしたお前】
そして次に送られてきたメッセージは、
『南島、
引っ越すらしい。』
ウソだろ。
ウソだよな…?
だって………お前は嘘つきだしからかい上手だし冗談よく言うし
緩莓が引っ越すっていうのも、
きっと
すると、スマホが震えた。
「…ゆるめ」
迷わず電話に出る。
「…もしもし」
かすれた声でそう言うと、
『みっちゃん……わたしね』
緩莓の声は涙声だった。
「うん。………聞いた。…和田から」
『…ヒック……明日の夜に…この家を出るから…』
明日。
「…好きだよ、緩莓。」
『私もっ…大好き…大好きだよ』
「ありがとう。」
『またね…』
そこで通話は終了した。
気づいたら頬が濡れていた。
神様…………
緩莓がこの先、笑顔であふれる生活を送れますように……
お願いします。
あの、この赤い糸を読んでくれてる方にお聞きしたいんですが、赤い糸の登場人物の中でいちばん好きなキャラを教えていただきたいです。
えっと理由はそのキャラをなるべく多めに登場させたいから?です
よろしくお願いします🙏🙇
めっちゃ面白かった❗これからも更新頑張って!
緩莓ちゃんが好き‼
女子だけど惚れるw
>>106 わあああありがとおおお!!!😭✨うん!頑張るね!緩莓に一票!とゆーことで本人から一言👉「若桜ちゃんありがとう!これからもよろしくね!大好き!」
108:タピオカパン(先輩):2019/08/15(木) 12:07
「今まで本当にありがとうございました。私はみんなと過ごした日々を忘れません……」
そこまで言うと緩莓は両手で顔を覆った。
「……緩莓…」
結菜が涙目で緩莓の背中をさすった。
「…っ…私、みんなのこと大好き…こんな楽しいクラスで…
私は本当に幸せでした」
そう言って緩莓は微笑んだ。
その笑顔は、今まで見た笑顔の中でいちばん素敵だった。
「…ありがとう…っ…」
緩莓は綺麗な涙を流した。
女子はほとんど涙目で、男子は曇った顔をしていた。
そりゃあそうだよな…
緩莓は結構クラスのムードメーカーだったし、誰にでも分け隔てなく優しく接するから、いろんな人に好かれてるし…
緩莓がいなくなるなんて思ってもなかったから。
「南島は、今夜家を出発するらしい。」
担任の赤坂先生が口を開いた。
その言葉は、水を打ったように静かな教室に響き渡った。
*
小6のとき。
休み時間、俺は普通に校庭で友達と一緒にサッカーをしていた。
たまたまボールが体育館倉庫の裏に転がっていってしまい、俺が取りに行くと、
華奢な体つきをした緩莓と、ゴツくてデカイ体つきをした春樹がいた。
『ゆるちゃん?春樹?』
そう呟いたが、その声は二人の耳には届かないようだった。
もう一度呼びかけようと息を吸うと、
『おれ、南島のこと好き。付き合お』
今、なんて…?
『つ、付き合うなんて…』
ドンッ
『っ!?』
春樹は壁ドンをした。
『なんで?おれのこと嫌いなん?』
大きい春樹の手が、小さな緩莓の顎をつうっと撫でた。
『や…』
春樹が緩莓に顔を近づけた瞬間、俺の中で何かが噴火した。
『なにやってんの?』
なるべく普通を装って、転がっていたボールを拾いながらあっけらかんと言った。
『…陽』
『みっつー…』
『ゆるちゃんになにしてんの?』
目線を春樹の手に移すと、春樹は緩莓から手を離した。
『お前、なんで南島のことちゃん付けしてんの?ダサっ』
その時は結構ショックだったけど、今思うとあれは負け犬の遠吠えのようなものだったのかなと思う。
『みっつー…』
『…さ、もうすぐ休み時間終わるから教室戻ろっか。
南島さん。』
その時の緩莓の悲しそうな表情は、今でも鮮明に覚えている。
和田くん面白い
110:タピオカパン(先輩):2019/08/15(木) 12:10>>109 おー後輩!ありがとう🙏✨和田から一言👉「おっマジかよ!!嬉しすぎて目からファンタ出るわ。あんがとん♥」
111:後輩◆:2019/08/15(木) 12:12 >>110
ww
こんにちは!!とても面白いです!
緩苺ちゃんも良いし、みっつーも良いよなあ、、
でもやっぱ緩苺ちゃん!です!
>>112 わあああありがとうございます🙏✨めっちゃうれしいです😭✨緩莓ですね!分かりました!緩莓から一言👉「愛華ちゃん!私を選んでくれてありがとう!だいすき!」
114:愛華@ゆっかー◆QI:2019/08/16(金) 08:59 >>113
わー!!可愛いです!可愛いですよ〜
わー、かわいー!
>>114 wwありがとうございます!!
116:タピオカパン(先輩):2019/08/16(金) 13:15
「ねえ、みっちゃん…今日、一緒に帰れる?」
帰りのHRが終わると、緩莓が話しかけてきた。
今日は全部活がオフの日。
「うん。いいよ、一緒に帰ろっか」
そう言うと、緩莓は微笑んだ。
*
「ねえ…みっちゃん」
ふと、緩莓が口を開いた。
「私……引っ越すんだよね…東京に……遠そうで遠くないでしょ?」
緩莓はそう言って俯いた。
「みっちゃん……私のこと忘れないでね」
「忘れるわけ、ないじゃん」
忘れられるわけないよ…
緩莓みたいな、心が美しい人…忘れられないよ……
「俺……緩莓に謝らないといけないことがある」
「謝らないといけないことって?」
「…俺みたいな人間が、緩莓のこと好きになってごめん」
自分でも、何を言っているのかが分からなくなってしまった。
「──なんで?」
顔をあげると、緩莓は悲しそうな顔をしていた。
「なんでそんなこと言うの?そんなこと言われたら、悲しいよ……だって……
みっちゃんはこの世界に一人しかいない存在なんだから」
俺は息を呑んだ。
緩莓は大きな瞳から透明な涙をぽろぽろと流した。
「みっちゃんは……三橋陽は」
いきなり名前を呼ばれ、ドクンと胸が高鳴った。
「いつまでも、私にとって光だから…っ…」
オレンジ色の温かい光が、俺たちを優しく照らした。
おもしろいです!
頑張ってください(^^)
>>117 わーありがとうございます🙏✨めちゃうれしいです😭!頑張りますね!
119:タピオカパン(先輩):2019/08/17(土) 22:16えーと…今のところ緩莓が結構人気だから緩莓side増やそっかな。
120:後輩◆:2019/08/18(日) 00:10どこの話?(場所)
121:タピオカパン(先輩):2019/08/18(日) 09:12>>120 神奈川!
122:リコピン◆AQ:2019/08/19(月) 20:52あと他に好きなキャラいる人いますかー?(?)
123:リコピン◆AQ:2019/08/20(火) 08:34
緩莓がいない教室は、とんでもなく寂しかった。
・・
みんな普通に過ごしている…いや、過ごせているふりをしている。
緩莓と仲がよかった結菜は自分の席に頬杖をつきながら座ったまま動かないし、緩莓の事が好きなしえるくんは暗い顔をしている。
そして、俺は───……
ぼーっと、空を見つめていた。
どこまでも青く、雲一つない広い空。
ああ、この空をたどって緩莓のところに行けたらいいのに。
俺は、今とんでもなく後悔している。
最後に手を繋いでおけばよかった。
最後に緩莓のことを抱きしめておけばよかった。
最後に“大好き”の一言くらい言えばよかった。
なぜ緩莓を泣かせてしまったんだ。
もちろん俺は、緩莓の怒った顔も泣いた顔も微笑んだ顔も照れている顔も、びっくりしている顔だって全部愛おしく、大好きだ。
でも、俺がいちばん見たかったのは、
いちばん好きなのは、
緩莓の眩しいくらいの笑顔だったのに。
* ❁ 緩莓side ❁ *
「南島さん、呼ばれたら入ってきてね」
新しい担任の、小林綾音先生に、そう声をかけられ、はい、と頷く。
これから、新たな学校生活が始まる。
みっちゃんは、今どうしているだろうか。
いつものように明るい笑顔で笑い合っているだろうか。
それとも───
私が居なくなったことを、少しでも寂しく思ってくれているだろうか。
そうだったら嬉しいな。
「南島さん、どうぞ」
「あ、はい」
私は高鳴る鼓動を抑えられないまま、教室へと足を踏み入れた。
緊張して、思わず俯きがちになってしまった。
「じゃあ、南島さん自己紹介お願いします」
小林先生はニコニコしながら視線を向けてきた。
安心させようとしてくれているのが伝わってきた。
「はじめまして。南島緩莓です。…えと、よろしくお願いします」
ペコリと会釈をすると、拍手がおきてほっとした。
言うことが見つからなくて、短く終わってしまった。
つまんないやつ、と思われていないだろうか。
髪の毛を耳にかけながら教室を見回す。
綺麗だな、と思う。
新しめの学校なんだろうか。
「南島さんの席はあそこよ。北島くんの隣。」
先生が一人の男子を指差した。
いかにも明るそうな、日焼けした肌が特徴的な男の子だった。
そこの席まで歩いて腰掛けると同時に、チャイムがなった。
多分、朝のHRの終わりのチャイム。
ほっとして背負っていたリュックを机に置くと、私に視線が集まっていることに気がついた。
意味もなくぎこちなく笑みを浮かべると、たくさんの人たちが私のもとへ集まってきた。
緩苺ちゃん転校先大丈夫かな…ってなりますね!頑張って下さい!
126:リコピン◆AQ:2019/08/20(火) 13:36>>125 どうでしょう、心配ですねw((ありがとうございます!頑張ります✨
127:一騎◆:2019/08/20(火) 21:23 >>123
(泣)
>>127 あらあら。😁
129:リコピン◆z.:2019/08/21(水) 18:58
「ねえねえ、モデルとかやってるの!?」
「名前可愛いね!」
「超可愛いね!」
「どこからきたのー?」
押し寄せる人たちの質問攻めを受け、「えっと」と応えるしかなかった。
すると、
「お前ら、がっつきすぎだろw」
と、右から声がした。
その声の主は、北島くんだった。
「だって〜こんな可愛い子見たことないんだもーん」
そう口を尖らせて答えたのは、どこか結菜に似ている、明るそうな子だった。
「ねね、ゆるめちゃん、だよね漢字どーやって書くのー?」
その子は視線を北島くんから私へと移した。
「あ、はい。そうです。えっと漢字は…」
慌てて筆箱を取り出すと、その子は軽く噴き出した。
なんで笑っているのか分からなくて目を瞬かせていると、
「だって、同い年なのに敬語なんだもん、なんか後輩みたいだね」
その子はクククッと笑いを洩らしながらそう言った。
「あ、そだ。私横尾沙耶香!よろしくねゆるめちゃん!」
「あ、はい…うん。よろしくね」
そう微笑みかけると、沙耶香ちゃんは私の顔をじーっと凝視してきた。
「な、なんかついてる?」
「うん。ついてる。白い透き通ってる肌に大きな目と小さい鼻と綺麗な口がついてるよ」
私が口を開く前に、沙耶香ちゃんは言葉を続けた。
「もうほんとまじで可愛い顔してるね。モデルみたい。まじ可愛い」
そんなに率直に言われると恥ずかしくて照れてしまう。
少し顔を伏せていると、「やっほー」と、北島くんが顔を覗き込んできた。
突然だったので、思わずわっと声をあげてしまった。
「南島さんって、驚くとき『きゃっ』じゃなくて『わっ』って言うんだ。なんかかわいー」
!?
か、かわいい…
男子にそんなこと言われたことがないから、固まってしまった。
「えー、じゃあ私も『わっ』って言えばかわいいって言ってくれる?」
沙耶香ちゃんがニヤニヤしながら北島くんの肩に手を乗せた。
「お前はむり」
「えーなんで!?差別!ひどいー」
沙耶香ちゃんの反応が面白くて、思わず笑ってしまった。
「あ…笑ったあ!」
沙耶香ちゃんがそう言うと、さっき散ったみんなが再び集まってきた。
「笑顔かっわいい!!」
「これが天使か〜」
「女子なのに惚れた」
「もーみんな、いくらゆるめちゃんが可愛いからって好意丸出しすぎーw」
沙耶香ちゃんが私に抱きつきながらそう言った。
「てゆーか、めっちゃ髪綺麗!さらっさら」
沙耶香ちゃんが私の髪をときながら言った。
「ホントだっ…!!私ロングの子好みっ…!」
みつあみをした大きな瞳の、私と同じくらいの背の女の子が震えながら言った。
「ゆるめちゃん。このみつあみは究極の髪フェチだから気をつけたほうがいいよ」
沙耶香ちゃんがそう言うと、みつあみの子は口を尖らせた。
さっきの沙耶香ちゃんと似ている。
「沙耶香ひどいよー!ちゃんと名前紹介してくれればいいのにー!」
すると、みつあみの子はこっちに向き直って、照れたように笑った。
「えっと…神谷栞菜です…あの…あなたの髪すっごい綺麗で…お友達になりましょうっ!!」
理由が面白くて、また笑ってしまった。
「うん。お友達になろう。南島緩莓です。よろしくね」
「はわわわ南島さん…!!」
『南島さん』
その響きを聞くと、いつもあの時のみっちゃんを思い出す。
「普通に名前でいいよ。よろしくね栞菜ちゃん」
「名前を呼んでもらえるなんて光栄です…!!」
栞菜ちゃん、面白い子だな。
「やば、もーすぐ授業始まんじゃん!じゃーねゆるめちゃん!」
沙耶香ちゃんと栞菜ちゃんに手を振られ、私も手を振り返す。
席に腰かけると、右から視線を感じた。
「やっほー」
「北島くん」
「…隼、って呼んでよ」
下の名前、隼くんって言うんだ。
「しゅ…隼くん」
「よくできました」
そう言うと、北島くんはにかっと笑った。
私も笑い返す。
何気なく窓の外を見ると、青い青い大空が広がっていた。
雲一つない、真っ青な大空。
まるでみっちゃんの心のように。
この大空をたどって、みっちゃんの所に行きたいなあ……。
涙が滲んできたのがバレないように、ずっと窓の方へ顔を向けていた。
☆ * 陽side * ☆
「えー…今日は大事なお知らせがある。みんな座れ」
赤坂先生が、いつもより早めにHRを始めた。
言われるがままにみんなが座る。
っていうか、座っている人がほとんどだった。
「転校生を紹介する」
それを聞いた途端に、思い出した。
茉莉、帰ってくるんだ。
もしかして、とドアの方に目を向けていると、そのもしかしては当たった。
少し俯きがちに入ってきたその人物は、やっぱり茉莉だった。
「桐野…茉莉です…よろしくお願いします」
今回は長くいるのかな、と思ったが、中3なので結局は別れることになるのかと思った。
少しタレ目がちなその瞳は、どこか曇っていた。
茉莉の席は、ぽっかりと空いた緩莓の席になった。
できればそのまま残していてほしかった。
緩莓がここにいたという証拠をとっておいておきたかった。
でも、俺のそんな密かな願いは叶うこともなく、赤坂先生の大きな声に紛れて消えていった。
緩莓は、今頃どうしているだろうか。
まあ多分、緩莓のことだから、すぐに好かれて馴染んでいると思うけど。
そんなことを考えていたら、
「…陽くん」
と、小さな声がした。
多分この声は、いや、囁きは俺にしか聞こえなかっただろう。
振り返ると、前より大人っぽくなった茉莉の姿があった。
「私のこと…覚えてる?」
あああ、切ないぃ…
続きが気になります!頑張ってください!
愛華さんいつもありがとうございますううう🙏😭✨頑張ります✨😭
134:紅蓮◆jk:2019/08/23(金) 10:14 ゆるめちゃぁぁん! 切ないよね.....
みっつーと茉莉ちゃんもきになります
みっつーと茉莉はどうしようねぇw
136:若美小説◆YQ:2019/08/23(金) 14:12 こんにちは!
感想
文も分かりやすく、読みやすかったです。
それだけではなく、ストーリーがすごいいいです!面白いです!(ファンで興奮中)
アドバイス
最近の投稿は、緩莓ちゃんが転校してしまった、ということで使われてないのですが。
たまーに絵文字が入っているときがあるので、そこだけ直すと、さらに小説っぽくなると思います!
これからも応援しています!頑張ってくださいね!
すみません、訂正。
絵文字が入っているときがあるので、そこだけ直すと
↓
絵文字が入っているときがあるので、絵文字をなくすと
ごめんなさぁい‼
ありがとうございます…!!!🙏✨😭ありがとうございますううう!!たしかに、絵文字入ってるときあります!すんごく参考になりました!ありがとうございます🙏
139:若美小説◆YQ:2019/08/23(金) 16:18いえいえ!何かありがとうございます!
140:リコピン◆z.:2019/08/23(金) 18:16いや、こっちのセリフです!アドバイスありがとうございました!
141:若美小説◆YQ:2019/08/23(金) 18:33いえ、頑張ってくださいね!(終わらない?系ですね。それでは〜)
142:リコピン◆z.:2019/08/23(金) 20:27はい!ありがとうございます!まだ続きますよ〜頑張りまーす
143:リコピン◆z.:2019/08/24(土) 18:54
「…覚えてる…よ」
本当はずっと気になっていたなんて言えない。
悟られないために、なるべくよそよそしく答えた。
「よかった」
茉莉はふわりと笑った。
まるで、あの頃のように。
「みっつー」
と、明るい声がした。
「やっほー。あのさ、聞きたいことあんだけどー」
結菜が近づいてくると、茉莉はふっといなくなった。
そのことに少し違和感を覚えると、結菜に「おい、小僧!」と背中をばしんと叩かれた。
「いてーな、おい」
そう言うと、結菜が笑い出した。
「えちょ、何?」
「なんかさー、前もこんな流れあったよね〜。私がの背中叩いてみっつーがいてーなおいって言ってさ〜」
結菜は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「お前、久しぶりに笑ったんじゃね?」
「──え?久しぶりにって…」
自分でも言いたくなかったが…
「──緩莓がいなくなってから、こんな大声で笑うことなかっただろ」
そう言うと、結菜は案の定顔を曇らせた。
「まあ、そうだけど…。…あ〜あ、なんでよりにもよって緩莓が引っ越しちゃったんだろーね……」
結菜ははあとため息をついた。
「井ノ原みたいなクソ野郎が引っ越せばいいのに」
「…だね」
「二人してひどいヨねえひどいヨ」
俺たちの声が聞こえたらしい井ノ原は硬直しながらそういった。
「緩莓…あっちでもモテるだろーなー」
そう言ってから、結菜はニヤリと笑った。
「とられちゃうかもね♪」
「お前そーゆーこというな」
「すんませーん」
❁ * 緩莓side * ❁
「思ったんだけどさ〜、俺たちって似てね?」
お昼。
お弁当を食べている最中。
ここの学校は机を動かさずに食べるスタイルらしい。
それを疑問に思っていたら、北島くんに話しかけられた。
似てる…かな?
「…どこらへんが?」
そう訊ねると、北島くんはにかっと笑った。
「苗字」
「…?」
意味が分からなくて首を傾げていると、北島くんはノートをシャーペンを取り出した。
「ほら」
北島くんは何か書いて見せてきた。
『北島』『南島』
「“北”と“南”ってこと?」
「そう!あったり〜」
気づかなかった、北島くんって面白い気がする。
ちょっと和田に似てる気もするけど…w
でも、にかっと笑うとことか、みっちゃんに似てる気もするなあ……
和田とみっちゃんを混ぜた感じ?
……いや、カオスだわ……
展開これで大丈夫かな(・。・;w
146:リコピン◆z.:2019/08/26(月) 08:28
「ねーねーゆるめちゃん!今度の林間学校さ、一緒の班にしようよ!」
お昼休み。
自分の席に座ってみっちゃんの事を考えていると、沙耶香ちゃんが元気よく駆け寄ってきた。
──やっぱり、結菜と重なってしまう。
「…?ゆるめちゃん?」
首を傾げている沙耶香ちゃん。
「あっ、ごめん。なんでもない。えーとなんだっけ。林間…学校?」
沙耶香ちゃんが言っていた林間学校。
多分、みっちゃんたちの学校でもあるだろうなあ………
…
一緒に、思い出作りたかったな…
きっと私が引っ越していなくて、あの教室にいたら、きっとみっちゃんは一緒の班になろうって。
太陽みたいな、笑顔で………
視界が滲んだ。
ダメだ。泣いちゃダメだ。
私はみっちゃんから笑顔と愛を貰ったんだから。
みっちゃんにとって、私が笑顔でいることが一番の恩返しだから。
泣いたりしたら、だめだって………
「ゆ、ゆるめちゃん……どうし…」
「……ううん、大丈夫。…目薬。目薬さしたの。あー、かゆかった」
無茶な言い訳…。
しかも、私は今、とんでもなく下手な笑顔を浮かべていると思う。
目に涙を浮かべながら、苦笑いのような笑みを浮かべている気がする。
とりあえず、私は涙を拭った。
そーいえば、リコピンさん活動休止するっていってましたよね…?つぶやきスレで見かけたんですけど。
ってことは赤い糸はもう更新されないんですか!?
>>147
赤い糸はなるべく更新するって言ってた。
* ☆ 陽side ☆ *
「ねぇねぇ、昨日緩莓からLINE来たんだけど〜、もう友達できたって!」
翌日の朝、結菜が嬉しそうに報告してきた。
「へー。さすが緩莓」
素直に感心してると、結菜がニヤリと笑った。
なんかその笑い方多くね?w
「女子の友達じゃなくて男子かもよ?」
「いやありえんって」
「えーでも知ってるでしょ〜?緩莓がモテることぐらい」
「まあ…」
「じゃ、ありえーるでしょ!!」
「…」
「アタックしなよ!ww」
「…お前洗剤好きなの?」
「ちっげーよ!w」
すると、和田が教室に入ってきた。
「よお」
「おう」
「そだ、和田!和田ってなんか告られたんでしょ?w」
結菜が半笑いで言った。
「草生やすなしwそうだよ俺は告られたんだ!いいだろーははー」
和田はよくボディービルダーがとるポーズをした。
いやなんでそのポーズ?
「なんだっけ〜塾の子だっけ?」
「ふふん!その通り」
「で、断ったの?」
「……いや、断るっていうか…」
和田がしどろもどろになった。
「え、なになにOKしたの!?」
思わず訊ねると、和田はこう言ったのだ。
「好きって言うだけが告白じゃねーだろ?」
…
ゴリラのくせになにかっこいいセリフいってんだゴラ…
「え?なに違うの?好きって言われたんじゃないの?あ、月が綺麗ですねとか?」
結菜が首を傾げると、
「………『あのね、告白したいことがあるんだけど……
服に値札ついてるよ…』…って言われましたとさ。めでたしめでたs「「ぶははははは!!!!!」」
「え何?半額シール!?www」
「ちげーよ」
「『ゴリラ専用』ってかいてある値札?www」
「お前らうぜえ…w」
* ❁ 緩莓side ❁ *
「そっか…ゆるめちゃんって、彼氏さんがいるんだ…」
帰り道、沙耶香ちゃんにみっちゃんの事を話した。
「うん……付き合ってるっていうか…両思い?なんだけど」
「じゃあ、両思いではあるけど付き合ってはないってことだね」
沙耶香ちゃんって察しがいいなあ…
「うん、そう」
「なるほど〜。あっ、そうだ、ちょっと話変わるんだけど〜」
「うん。」
「北島のこと狙ってる女子ってけっこーいるから、気をつけたほうがいいよ」
北島くん…
あの明るい笑顔が思い浮かぶ。
「そうなんだ」
「あいつゆるめちゃんのこと好きだよー」
…
「え??」
「だってさー、女子嫌いなあの北島があんなにゆるめちゃんに優しくするなんて」
「そうかな…」
沙耶香ちゃんとも普通に喋ってた気がしたけど…
「絶対そうだよ!だって普通にかわいいーって言ってたし」
『南島さんって、驚くとき「きゃっ」じゃなくて「わっ」って言うんだ。なんかかわいー』
あれは冗談だよ…
「…沙耶香ちゃんは?好きな人いるの?」
ふと思いついて聞いてみると、
「さあ、どうかなあ」
と、へらりと笑った。
* ☆ 陽side ☆ *
今日は、朝起きると、雨が降っていた。
雨の日になると、必ず思い出してしまう。
中1のとき──
その日は、雨が降っていた。
強くも弱くもない、普通の雨。
その日はサッカー部がオフで、俺は帰ろうと昇降口を出た。
そこで、俺は傘を持ってきてないことにに気づいた。
朝は降っていなかったから、まさか雨が降るなんて思ってなかったから。
どうしよう、と昇降口の雨よけの下で立ち尽くしていると、
『どうしたの?』
と、澄んだ声が聞こえてきたのだ。
『み、南島…さん』
『…傘、ないの?』
『あ……』
傘を忘れたことを打ち明けるのがなぜか妙に恥ずかしくて、言葉を濁した。
『さては図星だな?』
緩莓はいたずらっぽく笑った。
いつもとはまた違う表情にドキッとする。
『あ…うん』
そう答えると、緩莓は頬をほころばせた。
『傘を忘れた罪として、私と相合い傘の刑に処す』
『へ…』
びっくりして緩莓の顔を見ると、少し照れたように笑っていた。
『さ、帰ろう』
そう言って緩莓は俺の手をひいてさした傘の中に入れた。
突然触れられたことと、あまりの近さに鼓動が速くなる。
緩莓の隣にこんなに至近距離でいられるなんてことを喜んでいる半面、誰かに目撃されたらどうしようという不安もあった。
しばらく二人で一つの傘で帰っていると、後ろから『みーっちゃったみーちゃった!!』というでかい声が聞こえてきた。
驚いて二人して振り向くと、そこには和田がいた。
『なにお前ら相合い傘してんだよ〜え〜?』
和田がニヤニヤしながら指差してきた。
『んだよ〜』
と言いながら緩莓を見ると、恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にして俯いていた。
そんな緩莓を見て、思わず俺まで赤くなってきた。
『お前ら……覚えとけよおおおーー!!!』
と、和田はなぜかそう叫んで走っていった。
緩莓はまだ俯いている。
『ほら、南島さん、笑って』
優しく声をかけると、緩莓は顔をあげ、いつもどおりの可愛い笑顔を咲かせた。
すると、なんと雨が徐々に弱まり、日差しが出てきたのだ。
『南島さん……』
まさか晴れるなんて思ってなくて、びっくりしてしながら緩莓を見ると、なんだか寂しそうな顔で空を見上げていた。
『相合い傘、もっとしたかったな』
そう言って、微笑んだ緩莓は、優しい光に照らされて、すごく綺麗だったのを、今でも鮮明に覚えている。
そんなことを思い出しながら、家を出た。
雨が傘に当たって音をたてる。
しばらく傘からつたたり落ちる雫を見つめながら歩いていると、前に見覚えのある姿をとらえた。
新原さんだ。(>>69、>>70参照)
どうしよう、声をかけたほうがいいだろうか。
でもそこまでしなくても…
そう考えてるうちに、足音で気づかれてしまったようで、新原さんが振り返った。
目が合うと、新原さんは途端に笑顔になった。
「陽先輩!!」
新原さんは笑顔で駆け寄ってきた。
「新原さん、おはよ」
「おはようございます!!いやぁ、まさか朝から先輩と会えるなんて思ってませんでした」
「いっつもこの道通るの?」
そう訊ねると、
「いや、いつもは別の道使ってるんですけど、今日はなんとなくこっちで行ってみようかなって」
「へー。そうなんだ」
「陽先輩はいつもこの道なんですか?」
「うん」
「じゃあ、これからこっちの道で行こうかな」
新原さんは楽しそうに笑った。
「あ……ところで先輩、彼女さんいるんですか?」
彼女、という響きを聞いて、緩莓の顔が思い浮かぶ。
いや、でも俺達はそういう関係じゃないし……
両思いなだけで…。
「…いないよ」
そう答えると、新原さんは目を丸くした。
「えっ…先輩、いないんですか」
新原さんが足を止めた。
「?…新原さん?」
不思議に思って足を止めると、新原さんはなにか決意したような顔でこっちを見つめた。
「私、陽先輩のことが好きです!付き合ってください!」
考えるよりも先に、口が動いた。
「ごめんね。俺ずっと前から好きな人がいるんだ。気持ちはすごい嬉しいよ。ありがとね」
そう言うと、新原さんはなぜか納得したような顔をした。
「…実は、なんとなく気づいてました。陽先輩は好きな人がいるって」
「え……」
「頑張ってください。応援してます!」
新原さんは、振られたのにも関わらず、明るい笑顔を浮かべてそういった。
すごく強い子だ。
そういえばいつの間にか三橋が結菜のこと呼ぶとき『榊原』→『結菜』になってた&結菜の緩莓の呼び方が『ゆる』→『緩莓』に変わってたけどそのまま続けます🙏
154:リコピン◆z.:2019/08/31(土) 10:01 * ❁ 緩莓side ❁ *
「じゃあ今日は、今度の林間学校のグループなどを決めたいと思いまーす」
先生がそう言うと、途端に教室が騒がしくなった。
「あー、はいはい静かに!くじ引きで決めるわよ」
「「え〜!?」」
「なにかご不満?」
先生がそう訊ねると、北島くんが手をあげた。
「中学校生活最後のせっかくの林間学校なんで、仲いい人と一緒になりたいです!だから自由がいいです!」
さんせーい、という意見が多くあがり、先生は「しょうがないわねぇ」と言った。
「じゃ、怪我はしないでくださいね」
みんなが一斉に立ち上がり、仲がいい人のもとへ突っ走る。
これ、ぼーっとしてたら取り残されるかも……
焦りが生まれ、ちらりと沙耶香ちゃんの方を見ると、彼女は人気者なのでたくさんの女子に囲まれていた。
…っていうかこれって何人班なのかな?
「南島さーん」
唐突にそう呼ばれて振り返ると、北島くんが手招きしていた。
北島くんの周りには複数の男女がおり、少し緊張する。
「南島さんさ、俺らのグループ入んなよ」
視線を感じて、目を向けると、一人のツリ目がちの女の子がこっちを睨んでいるような気がした。
「…でも…」
「はい、決定ね!!」
北島くんは眩しいほどの明るい笑顔を浮かべた。
「あっ、そだ!お前ら南島さんに自己紹介して!」
北島くんが思いついたようにそう言うと、ツリ目の女の子は顔をしかめた。
「い、いいよそんな」
慌てて言うと、北島くんはキョトンとした。
「だって、名前とか知らないと話すとき大変だろ?」
ごもっとも。
けど…
「俺小室直樹!みんなからは『小室』って呼ばれるから、南島さんもそう呼んでいいよ!」
北島くんと同じく日焼けした肌が特徴的な男の子。
「…うん。よろしくね」
「只中航!よろしく!」
大きな目の明るそうな男の子が握手をしてきた。
いきなり触れられてびっくりしたけど、これは航くんなりの挨拶なのだろうと納得した。
「私は望月遥っていいます。よろしくね」
ふんわりと笑った子は、会釈をしてくれた。
「よろしくね」
会釈を返すと、遥ちゃんはツリ目の女の子に声をかけた。
すると、その子は不満そうにこっちを見た。
背筋がひやりとした。
「…宮園小春。」
「おい宮園。よろしくぐらい言えよ」
小室くんがそう言うと、小春ちゃんは大きなため息をついて、「よろ」と言った。
「…うん。よろしくね」
小春ちゃん怖いなあ……
休み時間。
机の傷をぼーっと見つめながら座っていると、ぽんと肩を叩かれた。
びっくりして振り返ると、航くんが満面の笑みで立っていた。
「わ、航くん…どうしたの?」
「南島さんどうしたの?」
二人とも同時にそういった。
「え、私はなんもないけど」
「いや〜、なんか寂しそうだなと思って」
航くんは私と同じくらいの背のため、なぜか話しやすい気がする。
…なんとなくだけど。
「…まあ、寂しくないことはないけど」
「え!?冗談のつもりだったんだけど」
いや冗談かいな。
「なになに?何が寂しいの?」
「…友達と、離れちゃったこととか」
「わかるわかる」
「ん?」
「へ?」
「…なんでわかるのw」
「勘!!」
なんか航くんって子供みたいw
「ふーん…」
何気なく窓の外を見ると、カラスが飛んでいた。
「わーっ!!カラスゥ!!」ドテン
航くんはカラスを見るなり尻もちをついた。
「どうしたの…」
「俺さぁ、昔カラスに襲われて!」
航くんは手の甲の傷を見せてきた。
「あらまぁ」
「痛そうでしょ〜、だけど痛くないの、すげーよな」
「うん、すごいすごい」
「わースズメだ〜〜かわいい!!」
次はスズメを見るなり笑顔で窓に近寄った。
「わっカラス!!」
ギャーーーーと言いながらこっちに向かって走ってきた。
ゴンッ
航くんのおでこと私のおでこが衝突した。
「いっ……」
痛さに思わずしゃがみ込む。
「わーーーっ!?ごめんね⁉」
航くんがすぐさましゃがみこんで私のおでこをさすった。
「いたいのいたいの飛べ!!」
「え……飛んでいけじゃないの?」
思わず突っ込むと、航くんは「飛んでった??」と聞いてきた。
聞こえてない…ww
「うん…まあ、ちょっと痛いけど」
「俺石頭だからさ〜」
航くんがははっと笑った。
あまりの顔の近さに耐えきれなくて、
「顔……」
「え?なんかついてる??」
「もういいや」
冗談で立ち上がると、航くんが慌てたように「え、ごめんね!!」と言ってきたので、思わず笑みがこぼれた。
「俺らもう友達だな!」
「うん、そうだね」
そう答えると、航くんは太陽みたいな笑顔で私の頭をぽんぽんと撫でた。
「──え」
「友達記念」
にっと笑った彼の笑顔に、少し胸が高鳴ったのは、
きっと気のせい。
☆ * 陽side * ☆
「緩莓、友達できた?」
そう打った文章を削除する。
だめだ。
緩莓が引っ越していってから未だに電話やLINEもしてない。
このことを結菜に言ったら怒られたけど。
『はあ!?何もたもたしてんのよ!忘れられちゃうかもよー?』
『いや、忘れはしないだろうけどさ』
『そうやって自分を安心させちゃダメ。もっと自分に厳しくならないと』
自分に厳しく…か。
「緩莓、新しい学校どう?もう馴染めた?」
まあ、緩莓がいなくなってから一週間くらいたっちゃったけど。
そう打った文章を送る。
すると、何分かたってから返事が返ってきた。
『うん!優しい人たちばっかで楽しいよ!みっちゃんは和田たちと楽しくやってる?』
可愛らしいスタンプとともに送られてきた文章を目にすると、緩莓の優しい笑顔が浮かんできた。
まるで目の前で喋っているかのように、緩莓の声が頭の中でこだまする。
「へぇ〜。よかったね!和田ゴリラたちと上手くやってるよwwあ、あとさ、今から電話してもいい?」
久しぶりに緩莓の声が聞きたかったのだ。
『いいよ!』
と返事が返ってきた。
俺は震える指で通話ボタンを押した。
『もしもし?』
「あ……」
久しぶりに聞く優しい声に、涙が出そうになる。
それをぐっとこらえる。
「緩莓…久しぶり」
『久しぶり〜!私もみっちゃんに電話しようか迷ってたんだけど……』
語尾がだんだん小さくなる。
これは照れているときの緩莓の癖だ。
頬を赤らめながら恥ずかしそうに下を向く緩莓の姿が思い浮かんでくる。
「俺も。声聞きたいな〜喋りたいなって思ってたけど、なんか勇気でなくて」
『愛と勇気だけが友達さ〜♪』
「いきなり歌い出すからびっくりしたw」
俺が笑うと、緩莓も笑い出した。
「そうだ。緩莓は新しい友達できた?」
『うん。できたよ。』
「よかったじゃん」
『…みっちゃん』
「ん?」
いきなり緩莓の声音が変わった。
『私にもし、男の子の友達ができたら、どう思う?』
唐突にそんなことを訊かれ、すぐには答えられなかった。
「いや、別に俺に気使わなくていいよ。俺に女友達がいるのと同じだよ。例えば結菜とかさ」
『……そう?』
「うん!」
『そっか。そうだよね…
みっちゃん……』
「ん?なに?」
『月が綺麗だね。』
そこで電話は切れた。
* ❁ 緩莓side ❁ *
ふあぁ……
あー眠い…
重たい瞼を開けながら、カーテンをあける。
眩しい光が薄暗い部屋に差し込んできた。
あぁ、一日の始まりだな、と思う。
そこでふと、思い出した。
…そういえば、桐野茉莉ちゃんは、もうみっちゃんたちのとこに来たのかなあ……
まあ、もう来てるだろう…。
やっぱり、寂しいや。
*
朝ごはんを食べ、歯磨きをして、学校に行く準備をする。
家を出るまで、まだ時間が15分くらい残っていた。
ふぅ…と息をつきながら部屋に置いてある鏡を見る。
『緩莓はほんとかわいいよ!だから絶対友達できる!私が保証するぜい』
ここに引っ越してきてから、友達ができるか不安で結菜にLINEで相談したら返ってきた言葉だ。
『可愛い』……か…
私は鏡を見る機会はあまりない。
まあ、朝の身だしなみを整えたりとかはするけど…
基本的に学校のトイレとかでは見ない。
この前、沙耶香ちゃんと一緒にトイレに行ったとき、驚かれた。
「鏡見なくていいの!?…まーそっか。直すとこなんてないし」
私は女子力が足りないのかな、とか思ったし……
すると、ある出来事を思い出した。
中1のとき。
『──なあなあ、このクラスで一番女子力高い人って誰だと思う?』
そんな男子の会話が、聞こえてきたのだ。
そこは放課後の教室で、男子が数人いた。
私は忘れ物を取りにきた。
そして、その話し声が耳に入ってきてしまった。
これ──…今入ってったら確実にKYだよね…
私は足を止め、どうすることもできなくて男子たちの死角に立ちすくんだ。
『ん〜……俺は緩莓がいちばん女子力高いと思うー』
いきなり名前を呼ばれ、びっくりして思わず肩が震えてしまった。
『やっぱ言うと思ったーw』
『お前さ、緩莓のこと好きなんだろ?』
『は!?』
『否定しないってことは、図星じゃん』
『告れば?』
去ろっかな……
『ってゆーかさ、俺ら長話しすぎじゃねって話ww』
『それ』
『帰りますか』
男子たちがこっちへ向かってくる気配がして、どこに隠れよう、という焦りが生まれてきた。
だけど、もう遅かった。
とりあえず顔をそむけていると、
視界が塞がれた。
え?
『だーれだ☆』
あ…びっくりした
目隠しされて暴力されんのかと…←
『え……と、三宅くん?』
『ぴんぽーん☆』
視界が開いた。
『…聞こえてた?』
多分、さっきの会話のことだろう。
『ご、ごめん』
『いいよ、謝んなくて。忘れ物?』
『あ、うん』
『緩莓って抜けてるとこあっておもろいよね〜w女子力めっちゃ高いのに。じゃー!』
『女子力』という言葉を聞くと、大体思い出してしまう。
頭の中でこの出来事が再生されるのだ。
その時、私は少しだけ三宅くんにちょっとした好意を抱いていたから、こんなに印象に残っているのだろう。
まあ、今も三宅くんとLINEするときあるけど。
私って女子力高い雰囲気らしい。三宅くんによると。←
「ゆるめちゃーん!おはよ!」
教室に入ると、沙耶香ちゃんが元気よく駆け寄って抱きついてきた。
「おはよー」
「ねーね〜、スカウトとかされないの?」
「されないよw」
「えー!?絶対されるよ!こんなに可愛いんだもん」
沙耶香ちゃんが私のほっぺを触りながら言った。
最初触られたときはびっくりしたけど、今はもうすっかり慣れた。
彼女はスキンシップが好きなのだ。
「うぇーいみんなおは!」
そう元気よく教室に入ってきたのは、航くんだった。
どうやったらあんなに満面の笑みでみんなに挨拶できるんだろう…。
「おー航おはよ」
「おっは〜」
「おは!!」
みんなが航くんに声をかける。
「おっは」
沙耶香ちゃんも航くんにそう言った。
すると、航くんと目が合った。
航くんはにっと笑い、席についた。
航くんに笑いかけられた瞬間、胸が高鳴った。
──嘘でしょ?
いや、そんなわけないじゃん……
航くんに恋するなんて、そんなこと……
『友達記念』
その時の航くんの笑顔が蘇る。
やっぱり…………
私──────
航くんに恋しちゃったのかな。
いつも見てます、!!
すごく面白いです…!!
航くんかわいいです笑
これからもがんばってください!
>>159 ありがとうございます!!!😭✨🙇♥
すごく面白いだなんて、照れますw 航かわいいらしい()航から一言👉「ありがとーーー!!俺ってかわいいの!?」…はいw
頑張ります!!💪✌
緩莓を航とくっつけようか迷ってるんですが…
どう思いますか?()
>>161
俺は反対
>>162 意見ありがと!🙏✨かんしゃ
164:若桜☆郁里◆ME:2019/09/01(日) 19:06 >>161
私は緩莓ちゃんと陽くんのペアが好きだから反対かな
>>164 わかった!意見ありがと〜🙏💕
166:樹音@新一 ◆6Y:2019/09/01(日) 19:41 凄く凄く面白い!
期待しています、これからの展開が楽しみ!
>>166 そんなああ!!ありがとうございます😭✨頑張りますね!!💪
168:樹音@新一 ◆6Y:2019/09/01(日) 19:43 >>167
はい、期待していますね。
あのぉ…違ったらアレなんですけど
タピオカパンちゃんですか?
何かそれっぽいな、って
>>168 うん!!そそ!名前変えたんだ〜
170:樹音@新一 ◆6Y:2019/09/01(日) 20:30やっぱりね!これから仲良くしよね!
171:リコピン◆z.:2019/09/02(月) 06:57うん!あんがと〜👼♥
172:リコピン◆z.:2019/09/02(月) 07:31 * ☆ 陽side ☆ *
「陽くんって…好きな子いるの?」
たまたま帰り道茉莉と一緒になり、そう訊ねられた。
「うん。まあ…」
少し照れくさくて、そう答えると、茉莉は微笑んだ。
その反応は…別に俺のことが好きってわけじゃないのか。
でも、茉莉は眉を下げながら、寂しそうに笑った。
「そうなんだ。…応援するね」
「おう」
それから、沈黙が訪れる。
「そうだ。茉莉は前の学校で好きな人とかいたの?」
「ん〜…まあ、一応いたけど、付き合いたいとかそういう感じじゃないの。ただ、憧れ程度の」
「ふーん」
「…陽くんって、スマホ持ってる?」
「うん」
「そうなんだ…ねぇ、よかったらさ、連絡先…「陽せんぱ〜い!!」
後ろから元気な声が聞こえてきた。
振り向くと、新原さんが駆け寄ってきた。
隣の茉莉は、戸惑ったような顔をしている。
「あ……新原さん」
「陽先輩、一緒に帰りましょうよ!」
「え……」
茉莉がそう洩らした。
新原さんは俺のことしか見ていない。
茉莉は顔を伏せた。
「わ…私、先に帰るね」
茉莉が方向を変えて歩き出そうとした。
「茉莉も一緒でいいなら一緒に帰るけど」
茉莉のことを控えめに指差しながら、新原さんに話しかける。
茉莉は目を見開いた。
新原さんは怪訝な顔をした。
この前告白されて、振ったとき、『応援します』って言われて、いい子だなとか思ったけど。
「じゃあ、そうしましょう!」
新原さんはニッコリと笑った。
*
それから、3人で帰ることになった。
「陽先輩の好きな人って、どんな人ですか?」
新原さんが早速話しかけてきた。
おしゃべりな子だなあ、と思いつつ、緩莓の性格を思い浮かべる。
『傘を忘れた罪として、私と相合い傘の刑に処す』
あの日から、俺は緩莓に心を鷲掴みにされた。
次々に、緩莓との思い出が脳内で踊る。
「陽先輩?」
あまりにも長く考えすぎていたせいか、新原さんが訊ねて来た。
「ん〜…一言では言い表せないなあ…強いて言うなら、
憎めない人、かな」
緩莓は、本当に憎めない。
緩莓が、本当に涙もろいのを、俺は知っている。
だけど、緩莓は人前で涙を見せない。
『心配なんてかけられないもん』
そう、緩莓は優しいんだ。
「憎めない、人…ですか」
「うん。本当に大切な人だよ。一緒にいたら、自然と心が浄化されるっていうか…自然に惹かれていくんだよね」
「そうか…陽くんには、そんな大切な人がいたんだね…」
突然茉莉がそう言った。
「私もその子に会いたいな」
「同じクラスですか??」
「うん。こないだまではね」
「え?」
「引っ越しちゃったんだ」
いつ会えるか分からないけど、俺はまた会えることを信じてる。
『みっちゃん、笑って!』
その言葉に、俺は何度助けられただろうか。
* ❁ 緩莓side ❁ *
「ねぇねぇ、ゆるめちゃんの好きな人ってどんな人?」
休み時間、沙耶香ちゃんに突然訊ねられた。
「ど、どんな人って…」
「例えば、優しい〜とか明るい〜とか」
どっちも当てはまるけど。
「ん〜…すごい、優しいよ。思いやりがあって、ほんと…」
一言では言い表せなかった。
「ホントに優しいんだね、伝わった」
沙耶香ちゃんは微笑んだ。
「うん。…すごい、大切な人なの」
『大切な人』としっかり口に出してしまった。
自分で言ったのに顔が赤くなってしまった。
「も〜、こっちまで照れちゃうじゃん!」
沙耶香ちゃんは私の肩を揺さぶった。
そこで、ふと思いついた。
「…沙耶香ちゃんは、好きな人いないの?」
「えー?また?」
「前も聞いたっけ」
「うん。」
「いるんでしょ?」
「まあ、いるけど…」
沙耶香ちゃんは照れくさそうに頬を赤らめた。
「同じクラス?」
「うん。」
「どんな性格?」
「アホで馬鹿でドジで、子供っぽくて天然で無邪気」
子供っぽい…
「それってもしかして、わたるく「今日のお弁当、一緒に食べようよ!ねっ」
「え、うん」
航くんが好きなんだ…。
北島くんと喋っている航くんをちらりと横目で見る。
いつ見ても、彼は笑っている。
いつも笑顔だ。
私もよく、『緩莓っていつもニコニコしてるよね』と言われることがある。
でもそれは、表面上の私であって、ただ愛想をよくしているだけ。
みんなに見せている笑顔は、本物ではない。
でも、本当に楽しいとき───
みっちゃんと喋っるときや、結菜とか和田とかとわいわいやってるときは、自然に頬が緩む。
それが本当の私だ。
そうやって表面を取り繕っている私とは真逆で、航くんはいつも心から笑っている。
『よく笑う人は、よく泣く人。』
そんな言葉が浮かんできた。
航くんは、よく笑っているけど、もしかしたら裏で涙を流しているかもしれない。
私もよく、誰もいないところで泣く。
もしかしたら、航くんと私は根が似てるのかも…
「私と航、幼稚園の頃からずっと一緒なの。クラスは、一回別れたけど」
「一回だけ?」
「そ。すごいよね、ほんと」
沙耶香ちゃんは嬉しそうに笑った。
その笑顔は、心から航くんのことが好きだと物語っていた。
明るくて優しい沙耶香ちゃんと、無邪気で天然な航くんは、すごくお似合いな気がする。
私はやっぱり、誰よりもみっちゃんが好き。
───ずっとずっと、側にいれると思ってたのになあ……。
きっとこれは、
神様のいたずらだ。
*
「じゃーね〜」
帰り際、沙耶香ちゃんに手を振って、別れた。
建物がいっぱいあるなあ……
さすが都会、とつぶやく。
今はそこまでひと気が無かった。
意味もなく手を観察していると、
ガシッ
いきなり後ろから手を掴まれた。
「──え」
驚いて振り向いたときには、もう路地裏へと追いやられていた。
目の前には、私より一つか二つくらい年上っぽい男の人がいた。
「…あ、の」
恐怖で言葉が出なかった。
心臓がバクバクと暴れている。
「俺と付き合え」
男の人は低い声でそう言った。
「…い、やです…すみませ…」
ドンッ!!
「あ゛?」
冷たい声で怒鳴られ、肩が震える。
目にはいつの間にか涙が滲んでいた。
「ごめ…ごめんなさい」
手で涙を拭おうとしたけど、両腕を掴まれているので、頬を伝って落ちた。
「なに泣いてんだよ…煽ってんのかゴラ!!」
ぼやけた視界で男の人を見上げる。
うわあ…不良だ…
こんな状況に遭っているというのに、私の頭に浮かぶのはそんなのんきなことばかり。
金髪にピアス、そして鋭い目つき。
なんで?
なんでよりにもよって私がこんな目に遭わないといけないの?
神様は私で遊びすぎだ。
「…お前、高校生か」
突然話しかけられ、ビクリとしてしまった。
「…いえ、中学生です…」
「いいか?今からてめぇは俺の女だ。」
不良男は不敵な笑みを浮かべた。
「は…」
そんな間抜けな声を洩らしたと同時に、
ガコン
という音がした。
驚いてそっちへ目を向けると、そこには見覚えのある人物がいた。
「わ、たるくん…?」
かすれた声でそう呼ぶと、航くんはびっくりしてこっちを見た。
「わ、南島さん!飲み物飲むー?」
天然な航くんは男に気づかず、今自動販売機で買ったジュースを差し出してきた。
「んだテメ、知り合いか」
不良男が口を開くと、航くんは目を見開いた。
──と思いきや。
「南島さん、行くよ」
と、私の手を掴んで走り出した。
不良男は隙をつかれ、なにか叫んでいた。
その路地裏からしばらく離れたところまで走ると、航くんは止まった。
いきなり止まったので、勢い余って航くんの背中にぶつかってしまった。
「航くん…」
ようやく口を開くと、航くんは振り向いた。
「なんか、南島さんの後ろ歩いてて、前見たらいつの間にかいなくなってて、もしかしてっと思ったら予想当たった」
「助けに来てくれたの…?」
そう訊ねると、航くんは答えるかわりに私の頭を撫でた。
「怖かったでしょ、もっと早く助けに行ってればよかったね、ゴメンね」
「助けてくれて、ありがとう」
私は航くんの手を握った。
あああ、緩苺ちゃんと陽くんくっつけて欲しい、、!
どこかで再会するとか…勝手に言ってごめん!
ていうか、私、前タピオカパンの時にタメでいいよねって話した希ガス…
>>175 よし、みつゆるくっつけよう((全然!!コメもらえるのすごい嬉しいからありがたい🙏✨ だよね!wこれからもよろしくね✌
177:リコピン◆z.:2019/09/03(火) 07:28
家に帰ってから、深く息をついた。
ため息じゃない。
なんか、色んなことがありすぎて…
「おかえり」
突然お母さんが出てきて、思わず玄関でコケそうになった。
「た、ただいま…あれ?仕事は…」
いつもはもっと遅く帰ってくるから、なんでこんな時間にいるんだろ。
「いつも緩莓に遊雨と繪恋のお世話してもらってるから。いつもありがとね。たまには休んで」
お母さんはそう言ってニコッと笑った。
「うん…ありがとう」
私は最近、お母さんと話すことが少なくなってきていた。
私が中学生になってから、お母さんも働くようになって…
「そうだ。今日里香ちゃんから電話あって〜」
『里香ちゃん』というのは、みっちゃんのお母さんの名前。
仲がいいから、下の名前で呼んでるらしい。
「今度の日曜日、一緒に食事行かないかって」
「そうなんだ。楽しんできてね」
素直にそう言うと、お母さんは目を瞬かせた。
「何言ってるの、緩莓も行くのよ」
「──え?」
意味が理解できなくて、そう訊ねた。
「里香ちゃんと、陽くんと、緩莓と私。あ、どっちもお父さんは仕事で来れないから。遊雨と繪恋はベビーシッター頼んどく」
早口でまくしたてるお母さんに、私は目を丸くするしかなかった。
「緩莓、陽くんと会いたいでしょ?」
「…うん。
会いたい……!!」
みっちゃんに会える。
私の頭はそのことでいっぱいになった。
早く日曜日になってほしいな〜…
「ええええ!!良かったじゃん!」
翌日、日曜日にみっちゃんと会えることを沙耶香ちゃんに報告した。
沙耶香ちゃんは私の背中をバシバシ叩きながら自分のことのように興奮している。
握力25kgらしい…
うん、痛い。w
「そうだよね!痛いよねゴメンね!」
心の中でつぶやいたつもりが、口に出ていたらしい。
否定することができなくて苦笑いしていると、雷がゴロゴロといってきた。
そういえば、みっちゃんは私より雷を怖がってたなあ……
女子よりも怖がっているみっちゃんの姿が面白くて、みんなで笑っていたのを覚えている。
「うわあ、滝じゃん!」
航くんの声でハッと我にかえった。
窓の外を見ると、雨がザーザーと降っていた。
え……
傘持ってきてない……
すると、髪が触られる感覚がした。
「ちょっとじっとしてて!可愛くしてあげる」
沙耶香ちゃんがそう言ったので、大人しく雨を見つめていた。
「はい、できた!」
数分後、沙耶香ちゃんの明るい声がした。
はい、と鏡を渡され、見てみると、みつあみにしてあった。
「わ、すごい……」
さすが沙耶香ちゃん、と心の中でつぶやく。
私は体育のときや料理をしたりするときにしか髪を結かないから、みつあみ姿の自分は新鮮だった。
「すげえ!似合ってるね!」
航くんが無邪気にそういった。
似合ってる、と言われて嬉しくなった。
だんだん分かってきたけど、多分航くんは誰にでもこんな感じに接するのだろう。
思ったことをぽんと口に出すような、素直な性格なのだ。
「あ、ありがとう
私も、素直になりたいな…。
帰るときにも、まだ雨はやんでいなくて、コンクリートの地面を容赦なく打ちつけていた。
どうしよう…
やむまで待つ?
でもなあ……
遊雨と繪恋のお世話もあるし、早く行かないと。
そう思って、昇降口を出ようとすると、
「え!?風邪ひくよ!」
と後ろから大きな声が聞こえてきた。
「航くん」
航くんは慌てて靴を履き替え、傘立てから自分の傘を取って、私に差し出してきた。
「え…」
「女のコは風邪ひきやすいんだから、この土砂降りの中びしょびしょになりながら帰ったらダメだよ」
案外、しっかりしてるんだね。
と、失礼なことを口に出してしまいそうになって、慌てて口をつぐむ。
「じゃ!」
航くんは私に傘を預け、自分は何もささないで帰ろうとした。
「え…っちょっと待って」
「ん?」
思わず航くんの手を掴んでしまい、恥ずかしくなってぱっと離した。
「私だけ得するなんて…航くんに申し訳ない」
「じゃあ、相合い傘して帰る?」
あまりにもあっさりと言ったのでびっくりしてコケそうになった。←
「どーする?」
航くんが首をかしげて訊いて来る。
「それか、雨がやむように願うか」
え?w
航くんは空に向かって手を合わせていた。
天然だなあ…
「南島さんも願ってみてよ」
と言われたので、渋々手を合わせて目をつむる。
多分航くんは心の中で「晴れろや」って念じてるだろうけど、私は目をつむりながらみっちゃんの笑顔を思い浮かべていた。
太陽みたいに明るい、眩しい笑顔。
いけ、みっちゃんパワー!!←
「お?ちょっと弱まってきた!?」
という航くんの声で目を開けると、さっきよりはずいぶんとましになってきていた。
「よし!行くぞ!」
「え?」
「雨の世界へレッツラゴー!」
航くんは私の手をひいて走り出した。
水たまりも気にせずに雨の中を駆け抜ける。
てゆーか……
「…傘、さしたほうがいいんじゃない?」
「あ!!ナイスアイディ〜ア!」
無駄にネイティブでウケる。
私が傘をさして、航くんが濡れないように大きく傾けると、航くんは「風邪ひくよ!」とこっちに傾けてきた。
「いいよ、大丈夫だし」
とまた航くんへ傾ける。
「風邪ひいたらどうなるかわかってる!?マスクだよ!?マ・ス・ク!おれマスクやだ!嫌い!!」
自由な航くんのことだから、締め付けられるようでマスクは苦手なようだ。
「べつにいいよ」
「女のコは健康第一」
「男の子もでしょ」
「ダメ」
「ノーセンキュー」
傘をお互いに傾けるという謎のやり取りが続き、そのまま走り続けていると、
「…あ!みずたまーり!」
と航くんがいきなり叫んだ。
「え?」
時すでに遅し。
ばちゃん
大きな水たまりを二人で踏んでしまい、水が大きくはねた。
「「わーお」」
ハモったのが面白くて、ついふきだしてしまった。
「じゃーね〜」
航くんと別れる頃には、もう雨はやんでいた。
「うん!じゃね〜!」
航くんは満面の笑みでブンブンと手を振ってきた。
私も自然と笑顔になり、手を振り返す。
そして、航くんの姿が見えなくなり、もうすぐ家に着く、
というとき。
「うっわ」
と、後ろから冷たい声が聞こえてきた。
え……
これは、私に向けて言ってるの……?
おそるおそる振り向くと、そこには見覚えのある、ツリ目の女の子が腕組みをして立っていた。
「こ、はるちゃん」
そう言うと、小春ちゃんは眉をくっとあげた。
「は?気安く名前で呼ばないでくれる?」
「ごめんなさい」
慌てて謝ると、小春ちゃんは続けて口を開いた。
「何?さっきの。」
「え…」
「なんで航とあんたが一緒に帰ってたわけ?しかも相合い傘なんてして」
見られてたんだ、と鼓動が速くなった。
「あの…あれは…」
「ボソボソ言ってんじゃねーよ。マジでムカつく。目障り。
なに航を自分のものにしようとしてんの?ばっかじゃないの!?」
小春ちゃんがヒステリックに叫んだ。
サッと血の気がひいた。
私は航くんに近づいてはだめだった。
私は航くんに優しくされてはだめだった。
だけど……
私は、航くんと仲良くしたらだめなの?
航くんと喋っているのは素直に楽しいし、自由になれるし、心が明るくなる。
それなのに──
「航はあんたみたいな奴とは似合わない。もう、今後一切航と関わらないで。関わったとしたらあ……
その髪の毛ちょん切ってあげる」
小春ちゃんはニッコリと笑った。
『緩莓の髪の毛綺麗だね!』
みっちゃん。
私は、どうしたらいいと思う……?
「航はね、みんなの航なの。だから航を奪おうとする奴は──」
「わたるわたるうるさいよ!奪うって何?みんなの航って?そんなの誰が決めたの?
そうやって航くんを束縛したら、ダメだよ」
「束縛なんてしてないし!」
「してるよ!」
「あーはいはいそうですか。」
「航くんが好きなんだったら、自由にさせてあげなよ」
私は彼女にそう告げ、くるりと家の方向へと向かって歩き出した。
仲良くしちゃだめなんて、逆に航くんが可哀想だよ。
そんなの、鳥かごに入れられて自由に飛べない鳥と同じじゃないかな。
あーあ、
あーあ。
雨によって洗われた空は、異様なほど透き通っていて、すごく羨ましかった。
そんな空を見ていたら、風にふかれてどっか飛んでいけないかな、なんて馬鹿なこと考えてしまう。
神様は、次はどんな出来事を私に与えるんだろう。
それは私にとっていいことなのか、悪いことなのか……
さあ、どっちだろう。
夜。
ずっと悩んでいた。
私は航くんと仲良くしてはいけないんだ。
仲良くしたら……
考えただけでも背筋がゾクッとする。
小春ちゃん怖い……
航くんに関わる人全員にああやって言ってるのかな?
いや……そんなわけないか。
私だけ…か。
そう考えたら、胸がきゅっとなった。
目元が熱くなる。
「私、……情けないなあ…」
みっちゃんだったらどうするだろう。
この私を見たら、どうするだろう。
『俺が側にいるから』
きっと、そう言ってくれる。
私の大好きなあの笑顔で、そう言ってくれるはず。
でも……
神様はそれを、許してはくれなかった。
いつもでもみっちゃんに甘えてちゃ駄目、とでも言うように。
いつか自立しないといけない。
こんなのでくじけてたらダメだ。
『はあ?何そいつ。ぶっ飛ばす』
結菜だったら、きっとこう言ってくれる。
『笑え笑え笑え!俺様にかかればそんなやつひとひねりだ』
和田だったら、きっとこう。
みんなに会いたい。
みんなと喋りたい。
どんなくだらないことでもいい。
どんなしょうもないことでもいいから、笑い合いたい。
こんなに悲しむなら、もっとみんなとふれあっておけばよかった。
だって、未来なんて分からないんだもん。
普通だと思っていた毎日が、こんなにかけがえのないものだったなんて。
みんなの笑顔が、こんなにも愛おしくなるなんて。
人生は楽しいことばかりではない。
神様はきっと、そのことを教えてくれたのだ。
切ない…緩莓ちゃん頑張れ‼
そして更新頑張れ‼
頑張る💪✨若っちも更新頑張って😘
184:若桜☆郁里◆ME:2019/09/04(水) 21:30ありがと!
185:リコピン◆z.:2019/09/05(木) 07:15
「ゆるめちゃーん!おはよ〜」
朝教室に入ると、いつも元気に迎えてくれる沙耶香ちゃん。
沙耶香ちゃんの明るさは私の心の支えであった。
「おはよう。あっ、そうだ。昨日のさ……」
ドラマの話をしようとすると、
「さーやーか」
と、聞き覚えのある声が、沙耶香ちゃんを呼んだ。
小春ちゃんだ。
小春ちゃんは笑っていたが、目は笑っていなくて、
まるで、冷たい氷のような視線で、沙耶香ちゃんを貫いていた。
「言ったよね?」
え……?
隣の沙耶香ちゃんは、下唇を噛んでいた。
え、
なにがあったの?
小春ちゃんは沙耶香ちゃんの手をひいて教室を出ていった。
え、え?
なにが?
一人呆然と立ち尽くしていると、いきなり視界に航くんが入ってきた。
びっくりしてコケそうになる。
私は昔からコケやすいのだ。
「びっ…くりしたあ」
「沙耶香、どこ行ったんだろね?」
それは航くんも疑問に思っているらしかった。
絶対なんかある。
「いざ、出陣〜〜!」
航くんが拳を突き出して教室を出ていこうとしたので、慌てて止めた。
「え?出陣反対?」
とすっとんきょうな声をあげる航くんに笑ってしまう。
すると、肩をぽんぽんと叩かれた。
「あっ、はい」
振り返ると、メガネをかけた、前髪の長めの男の子がいた。
顔は真っ赤だ。
「大丈夫?熱?」
そう訊ねると、その子はもっと顔を赤くした。
照れてる…のかな?
「えっと、あ…あの」
焦りながら喋る男の子。
「焦んなくて大丈夫だよ。ゆっくりでいいから話してごらん」
私より背が小さいから、思わず年下に接するように接してしまった。
やっちまったぜ。←
「あなたが好きです!僕と付き合ってください!!」
…え。
まさかの、告白!?
し、しかも……
結構人いる中で!?
なんかの罰ゲームだったりして。
いや、あり得るかもだけど。
「え、えーっと……」
答えに困る…。
ごめん、私にはみっちゃんっていう人が……!!
ていうか、視線が痛い。
ここで断ったら、この子は絶対に馬鹿にされたりする。
そんなのあんまりだ。
「ちょっと来てくれる?」
私は男の子に小さくて招きをして、教室を出た。
航くんが、女子みたいに「きゃ、きゃ〜!」と言ってたのがツボってしまい、笑いをこらえるのに必死だった。
そして人があまりいないところで足を止めた。
「……ゴメンね。」
口を開くと、男の子は、悲しい顔になった。
「誰よりも、好きな人がいるの。だから──
ゴメンね」
思わず男の子の頭を撫でそうになって、慌てて引っ込めた。
「好きって言ってくれたの、嬉しかったよ。ありがとうね」
微笑みかけると、男の子は口元を緩ませ、ニッコリと笑った。
教室に戻ると、まだ沙耶香ちゃんと小春ちゃんの姿見当たらなかった。
おかしい。
教室をキョロキョロと見回していると、視線が集まっていることに気がついた。
多分、さっきの告白の結末がどうなったのか気になっているんだろう。
すると、キーンコーンカーンキーン……とチャイムが鳴り響いた。
え、もうHR始まっちゃう…
「先生横尾さんと宮園さんが教室出ていったきり戻ってこないんですけど…」
慌てて先生に言うと、「自習です!」と言って教室を出ていってしまった。
「えーなになに?自習?」
「ヒャッホウ!」
「どしたんだろーね」
みんながざわついている中、一人だけ、窓の外を眺めている人物がいた。
髪の長い、綺麗な目をした女の子。
───あれ?
「聖奈?」
私は、あの女の子を確かに知っている。
鶴城聖奈。
『鶴城聖奈。よろしく』
そんな質素な自己紹介をしたのは──
あの女の子だった。
中1の時に転校してきて、すぐ引っ越して行っちゃったのだ。
まさかこんな形で再会するなんて。
自習だというのに、みんなは立って喋っているから、私もいいだろう。
ゆっくりと聖奈に近づく。
「聖奈」
私は優しく、声をかけた。
聖奈は振り向き、次の瞬間目を見開いた。
「覚えて…る?」
覚えててほしいな。
だって、
あなたは───
「なんだ。私のこと忘れたのかと思ってたよ」
聖奈の声だ。
私は聖奈の声が好きだ。
落ち着く声。
「ごめんね。気づくの遅くて」
謝ると、聖奈はふっと笑った。
「いーよ、全然。」
ああ、聖奈だ。
やっぱり聖奈だ。
私の、命の恩人の。
「よかった。死んでなくて」
「や、やめてよ」
慌ててそう言うと、聖奈は頬杖をついて微笑んだ。
「緩莓。久しぶり」
なぜかその微笑みを見た瞬間、目頭が熱くなった。
「え…ちょ、なに泣いてんの」
聖奈は、私の命を救ってくれたのだ。
私は、中1の時、ちょっとした嫌がらせを受けていた。
ホントにちょっとしたことで、上履きを隠されたりとか教科書に落書きされてたりとか、小さなことだったんだけど…。
それが、いつの間にか大きくなっていって。
机の中に、『伝えたいことがあるので体育館の裏へ来てください』っていう手紙が入ってて、言われたとおり行ったら、暴力を振るわれて───
全部全部女子からの嫌がらせ。
私はそれを『いじめ』とは思わないようにした。
思いたくなかったのだ。
自分がいじめられているなんてそんなこと自覚したくなくて、現実逃避してた。
『大丈夫だ。こんなのただの小さな嫌がらせ』
って自分に言い聞かせて……
だけどある日──
『お前三橋のこと好きなの?wwwマジでありえんわ〜ただの幼馴染みなだけなのに』
一人の女子に、言われた言葉。
私はそれを否定できなかった。
だって、合ってるから。
私はみっちゃんのことが好きだから。
否定できなかった。
『お前、マジで調子乗ってんじゃねーよ。三橋と幼馴染みだからってなに勝手に彼女気取りしてんの?』
ダメだ。
それだけはダメだ。
私のせいでみっちゃんもなにか言われてしまうかもしれない。
それだけは嫌だ。
きっと、私はこれからもこの“嫌がらせ”を受け続けることになる。
私が、今ここで死んでも、
命を絶ったとしても。
誰にも迷惑はかからない気がする。
だって、私が生きてたらダメでしょう。
私が生き続けたせいで、周りの人に迷惑がかかるなんて絶対に嫌だ。
一人残された屋上で、私は決心をした。
屋上の鉄格子に震える手をかけ、柵を乗り越える。
足が震えていた。
今私が立っているところは、私の足のサイズの幅しかなかった。
あと、一歩で、終わり。
あと、一歩で───
足を踏み出そうとした瞬間、足音が聞こえてきて、次に手を掴まれる感覚がした。
「何してんだよ馬鹿!!」
そう叫んだその女の子は、汗だくで、目が赤くて、髪の毛もグシャグシャになっていた。
「え…」
「今すぐ戻って」
「でも」
「戻れ!!」
なんとか鉄格子を乗り越えると、足の力が抜けた。
「何?自殺?いじめで?」
「…」
「お前をいじめてたやつが幸せにしてる姿を、天国から眺めても悔しくないのか?自分は死んでて、そいつは生きてるって、悔しいだろ!!なあ!!」
聖奈は私の肩を揺さぶった。
「こんなこと言うの、自分でも嫌っていうか……嫌だけど、いつかいいことがある。生きててよかったって思える瞬間ってくるから。」
その言葉をかけられた瞬間、こらえていた涙が溢れ出した。
生きててよかったって、思える瞬間。
その言葉は、私の心に深く突き刺さった。
死んでよかったなんて、そんなこと思うはずないのに。
私は本当に馬鹿だった。
その時死んでいたら、私はみっちゃんに想いを伝えられていなかった。
聖奈は、本当に私の命の恩人だ。
土曜日。
私は沙耶香ちゃんと遊ぶ約束をした。
映画を見に行くのだ。
待ち合わせ場所の公園で待っていると、
「わっ!!」
といきなり背中を軽く押された。
「!?」
私は本当にびっくりしてコケそうになる。
「びっっっくりしたあああ!!」
そう言うと、沙耶香ちゃんはにひっと笑った。
「そんなんだから深瀬に告られるんだよ〜」
「ふかせ…?」
「あれだよ、眼鏡のチビ。」
「ああ…でも、なんで知って…」
「噂だよ〜、でも断ったんでしょ?」
「う…ん」
噂って恐ろしや。
「あっそうだ!LINE交換しよーよ」
「うん!」
LINE交換をすると、沙耶香ちゃんはこう言った。
「そだ。うちのクラスのグループあるから、招待しとくね」
なぜか心臓がドクンと高鳴った。
クラスのグループ…てことは、小春ちゃんも入ってるのかな…
なんて言われるのか怖い……
「うん。ありがと」
まあ、入ってないよりは入っていたほうが便利だと思うし。
「さ、行こう」
沙耶香ちゃんが歩き出した。
横に並ぶと、改めて沙耶香ちゃんのスタイルの良さが分かった。
背は私より少し高くて、足が長い。
ショートパンツを履いてるから、足の長さが目立つ。
「…沙耶香ちゃんって、スタイルいいね」
そうつぶやくと、沙耶香ちゃんは少し不満そうな顔をした。
「何言ってんの、ゆるめちゃんの方がめっちゃいいじゃん〜」
「いやまたご冗談を〜」
他愛のない話をしていると、沙耶香ちゃんは足を止めた。
「沙耶香ちゃん?」
沙耶香ちゃんの目線の先には、見覚えのある人物がいた。
航くん?
と───
小春ちゃん…?
沙耶香ちゃんに手をひかれ、木陰に隠れて二人の様子を見る。
二人は一緒にベンチに座っているようだった。
まさか、付き合って……
「私ね、ずっとずっと好きな人がいるの。」
小春ちゃんの声が聞こえた。
「へぇ〜!いつから?」
それに対して明るく返す航くん。
航くんは気づかないだろう。
小春ちゃんが自分のことを好きだなんて。
「小5のときから。ホントに話してると楽しくて…」
「それはいいね〜、俺も実は好きな人いるんだよね」
え…!
いるの!?
誰とでも仲いいけど、まさかあの航くんが恋してるなんて…!!
意外!!初耳!!驚愕!!
隣の沙耶香ちゃんも目を丸くしていた。
「…いるの?」
小春ちゃんも初耳のようだ。
「うん。実はこれ誰にも話したことないんだけど〜、特別に話すね!」
航くんはすごいな。
誰にでもあの明るい態度で接する。
怒ることとかなさそう。
「その子は、別の学校なんだけどね。」
「……そうなの」
小春ちゃんは小さくつぶやいた。
多分、告白しようとしていたんだろう。
なのに、こんな形で片思いが確定してしまった。
それは誰でもショックだなあ…
「すごくすごく優しい子で。だけどだめなことはだめってちゃんと言う子で。よく叱られてたよ」
航くんはくひひっと笑った。
本当に嬉しそうだ。
私もそう。
みっちゃんのこと考えるだけで笑みがこぼれちゃうし、誰かにみっちゃんのこと話すだけで嬉しくなる。
私にはこんなに大切な人がいるんだ、って実感して。
「しっかり者でさあ…笑顔が可愛くて…たまに意地悪で…
とにかく、俺はもうあの子しか好きにならないって決めてるんだ。」
あの子しか好きにならない。
それは、どういう──
「な…なんで?別にいいじゃん、他の人を好きになったって…だって、それじゃあ…」
小春ちゃんは少し感情的になった。
「いいんだ。俺はあの子のことが世界でいちばん好きだから。」
航くんのその言葉は、本当に純粋にその子のことを想っているということがすごく伝わってきた。
世界でいちばん好き、かあ……
なかなか言えないよ。
航くんはホントにすごい人だ。
「……航、好きな人。いたんだね」
沙耶香ちゃんはくるりと踵を返してまた歩き出した。
「…多分だけど、私分かるよ。航の好きな人。小学校が一緒でねー」
…
沙耶香ちゃんは笑った。
でも、無理をしている。
泣きたいくらいショックだろうに。
私はよく涙を我慢するから、泣きそうな人の表情はよく分かる。
「…無理、しなくていいんだよ」
優しく声をかけると、沙耶香ちゃんは俯けていた顔をあげた。
その瞳は涙目で、私の顔を見た瞬間沙耶香ちゃんは涙をぽろぽろと流した。
「…ほんとは知ってたの、私…航にどれくらい大切な人がいるか、知ってたの。けど…
好きになっちゃってさあ……」
沙耶香ちゃんの背中を優しく撫でる。
私も、前にみっちゃんが日奈ちゃんのことを好きという噂を聞いたとき、泣いた。
悔しかった。
だけど、みっちゃんは優しくしてくれるし、噂が本当か嘘か分かんなくなっちゃって。
まあ、好きになってくれるように頑張ろうって思って。
「…こんなんじゃ、映画大号泣だよ……」
沙耶香ちゃんは笑った。
「どうする?」
私は、そう訊ねた。
「え?何が?」
「今日は映画やめて、話さない?」
「え…っどういうこと」
「私…もっと沙耶香ちゃんのこと知りたいから」
沙耶香ちゃんの手を握ると、沙耶香ちゃんはふふっと笑った。
「私も。ゆるめちゃんのこといっぱい知りたい」
よかった。
否定されるかと思った……笑
「みっちゃんは…私の幼馴染みで…面白くて、優しくて、素直で…昔っから仲が良くて。」
さっき待ち合わせていた場所へ戻りながら、私は話し始めた。
「昔は、『ゆるちゃん』って呼ばれてたんだけど。ある日を境に、『南島さん』って呼ばれるようになったの」
「えっちょっと待って何そのゆるちゃんって呼び方。かわよ…」
「どこに興奮してんの笑…んー、まあ、いきなり苗字で呼ばれたときはびっくりしたけどね…」
『南島さん』
いきなりそう呼ばれたのだ。
私が春樹に告白されたとき、みっちゃんが来て…
春樹はみっちゃんに何か言っていた。
私には聞こえなかったけど……
「…なんか、すごいショックだった。距離ができちゃったっていうのかな…」
「…電話してみれば?」
沙耶香ちゃんが唐突にそう言った。
目をぱちくりさせていると、沙耶香ちゃんはにやりと笑った。
「その、みっちゃんって人と話してるときのゆるめちゃんがどんな感じなのか気になる」
沙耶香ちゃんって、Sなのかな?()
でも、話したいから、否定できなかった。
スマホを取り出して通話ボタンを押す。
心臓が高鳴り始めた。
隣には沙耶香ちゃん。
そして、3コール目くらいでコールが途切れ、通話が繋がった。
『もしもし緩莓?』
みっちゃんの声だ。
私の大好きな、安心する声。
「うん…!急にかけちゃってごめんね」
沙耶香ちゃんは小さく「きゃ〜」と言った。
いや興奮しすぎw
『全然!俺もかけようか迷ってた。』
「そうなんだ。明日は久しぶりに会うね!楽しみ」
『…え⁉』
「?」
『え、なにそれ!?帰ってくんの!?え!?』
みっちゃんはめちゃくちゃ嬉しそうに言った。
「もしかして言われてない?明日私のお母さんとみっちゃんママと私とみっちゃんでご飯食べるって」
『なーにーそーれ』
隣で沙耶香ちゃんがふきだした。
私も笑いをこらえる。
『てゆーか言えよあのクソばばあ…心の準備できねーよ』
「ダメだよあんな優しくて美人なお母さんクソばばあ呼ばわりしちゃ。」
『ギャーすんまそん緩莓ちゃん』
「めっ!だよめっ!」
『めっキター!!』
…ww
沙耶香ちゃんは声を殺して爆笑していた。
もうだめだ〜。
みっちゃんと話してると自然ににやけちゃう。
変人だ…←
「と、とにかく、明日はよろしくね!」
『おう!よろしくな!また明日』
「じゃーね!」
『ばいちゃも〜☆』
ブチッ
アッ切っちゃった…w
「めっちゃ面白いじゃん、みっちゃんさん何者?ww」
みっちゃんさん。
ツボったーーーwww
あー、やっぱりみっちゃんと話すと元気もらえるわ。
やっぱ好きだなあ。
みっちゃんさん。()
全然コメントしてなかった、ごめんね!
これからもよろしくね!!
あと、私の要望聞いてくれてありがとう、!
緩苺ちゃんと同じでみっちゃんさんツボった…笑
愛華ちゃーん!ううん!全然だいじょぶだよ😘
みっちゃんさんw
これからもよろしくね👼♥
>>191はめっちゃ笑ったwみっちゃんさんw
面白いし、続きが気になる‼
>>194 まじか!!ww嬉しい!w コメありがとね👼♥いつも元気もらえるよ😘 みっちゃんさんw
196:リコピン◆z.:2019/09/08(日) 07:34 「航はね、みんなに平等に接するの。本当に明るく優しく」
沙耶香ちゃんが話し始めた。
「だから、人気者でさ」
確かに、航くんは人気だ。
朝彼が元気よく挨拶をすると、必ずみんな返してるし。
「航と喋ってると居心地いいし、めっちゃ楽しくて。中1の時からクラス一緒なんだけど〜、男子の中でいちばん話すのって航なんだよね」
「そうなんだ…すごいね」
「まあ、知ってるだろうけど、あいつバリバリの天然でw」
「うん、知ってるw」
「去年なんか、穴空いてるバケツに水くんだりさ〜、『永遠に水たまらないんだけどどゆこと!?』とか言っててw」
その姿が想像できて、笑えてしまう。
「ほんと、人騒がせなやつでさあ」
その言葉には愛情がこもっていた。
「でも……
振られちゃったわ」
沙耶香ちゃんはあははっと笑った。
きっと沙耶香ちゃんは強いから、もう泣かないだろう。
「まあ、予感はしてたんだよね。小学校の頃から千夏のことめっちゃ大事?にしてたし。あ、千夏ってゆーのは航の幼馴染みね」
その子が、航くんの“世界でいちばん好きな人”……
「めっちゃ可愛くてさ。何が可愛いって、顔もそうだけど、やっぱいちばんは性格だね〜」
「どんな子なの?」
「んー、なんだろ。時に厳しく、時に優しくって感じ…かな。しっかりしてるんだけど、どっか抜けてて。航が好きになる理由、分かるし」
でも、と沙耶香ちゃんは言葉を続けた。
「航が千夏に想いを伝えられないまま、引っ越して行っちゃったんだよね…」
きゅっと胸が締め付けられた。
「千夏が引っ越していってから、航は別人みたいに暗くなったし、『千夏のとこ行きてえ』って嘆いてたし。千夏依存症かって」
ふー…と沙耶香ちゃんは息をついた。
「……千夏が、羨ましかったよ」
その横顔は、すごく寂しそうだった。
「航があんなに想い寄せてんのに、全然気づいてなかったし。内心嫉妬してた」
沙耶香ちゃんは髪の毛をかきあげた。
「あいつ、千夏がいなくなってから1週間くらいはずっとちなつちなつ言ってたよ」
「よっぽど好きなんだね」
「うん。らしいよ。
あ〜あ。私も航と幼馴染みだったら、好きになってもらえたのかなあ…?」
『幼馴染みだからってなに彼女気取りしてんだよ』
…
「…いいこと…ばっかじゃ、ないかな」
「え…そうなの」
私はゆっくりと頷いた。
『幼馴染みだからって』
“幼馴染み”を理由に理不尽な悪口も言われたし。
いいことばっかじゃない。
「よいしょっと」
沙耶香ちゃんは立ち上がった。
「明日、みっちゃんさんと会うんでしょ?身体休めといた方がいいよ☆あ、あともう一つ
元気になるおまじないください」
「え!?」
「おねが〜い」
「わ、分かったよ……えと…
明日元気にな〜ぁれ…」
「元気1000倍さやパンマン!!」
「カオスw」
「もうまじ最高!!神!!天使!!あ、あとあと〜、『めっ!』もお願いしていいすか〜」
「それは無理ゼッタイ」
「ダメ?ちぇ〜」
すると、沙耶香ちゃんはゴソゴソとかばんを探った。
「ゆるめちゃん!笑って!!」
「え?あ、うん」
唐突にそんなことを言われて慌てながらも笑った。
カシャ
「私これ待ち受けにするわ。んで毎日拝む」
「え、ちょ、やめて!?」
恥ずかしくて焦げそう。
「わー、焦げパンマンだ」
そして沙耶香ちゃんの言動謎パンマン。w
☆ * 陽side * ☆
今日はまちに待った日曜日!!
緩莓と会える日曜日!
ヒャッホウ☆
「今日何時に家出んの!?」
気になって気になって仕方がなかったから、お母さんに聞いた。
「もー、ゆるちゃんと会えるからって、興奮し過ぎよ」
「ギクッ!!」
「効果音口に出すなw」
いきなり明が現れてツッコまれた。
「お昼から一緒に出かけるから。あ、明は?どうする?」
お母さんが明に訊ねると、
「おれは遊雨と繪恋の面倒見たいから家で留守番してる!」
「嘘つけ。ほんとはゲーム目当てのくせに」
「ギクッ!!」
「効果音を口に出すな!w」
「はいはい、分かったから。ゲームやっていいから、その代わり遊雨と繪恋のお世話もよろしくね」
お母さんがそう言うと、明は目を見開いた。
「まーじか☆いやっっっほおう!!」
明はバク転でもしそうな勢いで飛び跳ねた。
「兄ちゃんざまーみろ!」
「言ったな〜!スーパーウルトラキーック!!」
「うわ、兄ちゃん中二病乙」
「は!?」
ていうかなんで『乙』とか知ってんだよ!()
「もう、陽ったら。そんなんだったららゆるちゃんに嫌われちゃうわよ」
「ノーン」
「はいふざけない!」
軽く頭を叩かれた。
「いて」
「あー!ババチョップ発動!ババチョップ発動〜〜!」
明の発言にツボって笑ってしまった。
明と爆笑していると、
「明と陽、ゲーム禁止」
「「ノーン!!」」
我が家の朝は騒がしいw
『えええ⁉緩莓と会うの!?ズルすぎ!』
緩莓と会うことを結菜に伝えると、電話がかかってきた。
「そ。緩莓と会うの。いいだろ〜」
自分でもありえないくらい興奮している。
本人を目の前にしたらどれほど興奮してしまうだろう。
…いや、落ち着け俺。←
『ずるいずるいズルい!!はあ…まあ、楽しんできな!緩莓に私が寂しがってるって伝えといて!んじゃばいびー』
「りょ!あざま!」
電話を切ると、視線を感じた。
振り返ると、明がドアの隙間から覗いていた。
「…今のって、ゆるちゃん?違うよね?声違ったもん、どなた?」
なんで『どなた』なんw
「あー…クラスメイト。うん」
「怪しい」
「なにがやねん」
「怪しい…」
と言いながら明はドアを閉めた。
いや、謎い謎い謎い謎((
「陽〜、もうそろそろ出るから準備してね」
お母さんの声が聞こえた。
「はーい」
まあ、準備万端ダケド。
でも、心の準備がっ……!!()
「そうだ。行き際にさ、ゆるちゃんになんか買ってってあげたら?私も繭ちゃん(緩莓のママ)に買ってくからさ♪」
語尾に音符をつけるな!←
「んー…まあ確かにいいかもね」
緩莓の喜ぶとこ見たいし。
「とゆーことで、待ち合わせ時間よりも早めにるるぽーと行こう」(るるぽーとは、あれですあれ。((
「ラジャ」
「ゆるちゃん繭ちゃんにプレゼントフォーユー♪」
【速報】お母さん壊れた。w
「じゃ、行ってきまーす明、家のことよろしくね!」
「了解でござる」
「じゃーな。ゲームやりすぎ駄目だぞ」
「オメェもな!!」
明っていつからこんなに生意気になったっけ…()
「遊雨と繪恋のお世話もよろしくね」
「いってらっちゃいでちゅ☆」←多分遊雨たちのマネ。ぜんっぜん似てねえ。((
「遊雨と繪恋に謝れw」
「ごめんなちゃいでちゅ☆」
「きもい!w」
「ひどいでちゅ☆」
「はいはいもう行くよ!」
お母さんがババチョップ発動した。
「いってらっぴー☆」
明に見送られ、家を出た。
みっちゃんさん視点面白いww
200:リコピン◆z.:2019/09/08(日) 19:22 >>199 そう?wwありがと👼
「ねえ、これ!!ゆるちゃんに、合いそうじゃない!?」
今日のお母さんはやけにテンションが高い。()
るるぽーとについてからというもの、待ち合わせまでまだまだ時間があるので、二人でプレゼントを探す。
「てゆーかゆるちゃんなら何でも似合うわよね〜絶対!」
それは言えてる。←
「ゆるちゃんって何が好きなんだっけ?」
…
え、待って知らない……
いや、食べ物とかなら分かるけど。
まあゆるちゃんはおしゃれだから服とか好きっぽい…
だがしかーし!!
男の俺がThe・女子って感じの店に入るのはキツイ……
「ちょっとトイレ行ってくるからそこらへんぶらぶらしてて〜」
お母さんはいなくなった。
そして誰もいなくなっt((嘘ですゴメンナサイ
プレゼント…
プレゼント選びってなかなか難しい。
何を渡せば喜ぶ?
指輪?
いや早まるな俺。()
「いらっしゃいませー」
いきなり声が聞こえて心臓がバウンドした。←
そういえば俺雑貨屋見てたんだわ。
店を出ようとすると、あるものが目についた。
ネックレス……
早いかな?
AやMなどのイニシャルがチャームポイントらしい。
Y……
『私さあ、「するめ」って言われるのコンプレックスなんだよね』
口を尖らせながらそう言った緩莓がとんでもなく可愛かったのを覚えてる。
『みっ…みみみ、みっちゃん……』
顔を赤くして目を泳がせながら言う緩莓。
『ん?どした?』
『ズボンの…チャ、チャック、あいてるよ………』
チャック?
『おわーーーー!!??』
社会の窓があいていた。
でも、ストレートに言うところが緩莓らしくて、今でもよく覚えている。
あー、懐かしいわ……
そんなことを思い出していると、ぽんぽんと肩を叩かれた。
振りむこうとすると、ほっぺを指でつつかれた。(あれです、あれ)
「やーいひっかかったー」
お母さんが笑った。
自分で言うのもだけど、俺のお母さんは若い。
よくみんなに言われる。
緩莓のお母さんも若い。
すごく美人で、緩莓に似ている。
俺のお母さんと緩莓のお母さんだったら、緩莓のお母さんの方が大人っぽいけど。
俺のお母さんはなんというか……
自由すぎる。うん
ごくたまに、お母さんといるところを、『彼女?』と聞かれることもあった。
全力で否定しといたけど。()
「どう?なんかいいのあった?」
「これどうかなって」
さっきのネックレスを指差す。
「でも高いわよ、これ。買えるの?」
値段を見ると、2000円近くしていた。
…
まんぼう☆
「まあ、どれほどゆるちゃんのことを愛してるのか分かんないけど、2000円じゃ足りないわよね〜」
図星どすえ。((
いやお金なんかでは表せない。
ぜんっぜん足りねえ!!←
「まあとにかく、お腹空いたからなんか食べよ」
子供かよ。
てゆーか朝何を食べてきたんすか?雑草?()
「タピオカ!!どう?」
制服着せたらJKだわ。
うん。普通にJKだわ((
「いいんじゃない?」
「つめたーい!!」
「じゃ、温かいの頼めば」
「ひどーい!!」
なんなのこれ←