貴女に沈丁花を

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1:水色瞳◆hJgorQc:2020/05/14(木) 21:11

>見切り発車の小説<
>わずかな百合<
>表現能力の欠如<
>失踪しないようにがんばる<
>感想だけなら乱入どうぞ<



私より皆、儚い。
儚いから、美しい。
人って、そういうもの。
なら、私はーー、人じゃないね。

私はいつから存在していたんだろう。
老いもせず、死にもしない、存在。
あの人を見送ったのは、大体20億年前だったかな。
ーーーー最後の、人。

本当に、儚いね。
ああ、
良いな。

また、愛に触れられたらな。
なんて。私より長生きする人は、居ないのに。



少女は誰も居ない広野を歩く。
誰も居ない大陸を走る。
誰も居ない地球を眺める。
誰も居ない、この星系を。

そのまま、何年も、何年も。

228:◆Ec/.87s:2023/11/20(月) 20:08

そしてまたしばらく経った。とは言っても、今度は数分程度で済んだ。リリーが無心で索敵魔法の投影図を眺めていると、入口の扉が開いたのである。······入ってきたのは誰だろうか。先程言われていたシルバーベル達だろうか?それとも単純に負傷者だろうか?
どちらでもなかった。長くも短くもない金髪を若干乱しながら入ってきたのは、リリーが敬愛する······どころか、文字通り愛する者、エインだった。


「!!······あ、どこかお怪我を······?」
「怪我じゃない。嫌な予感がしたから戻ってみたけれど······杞憂でよかった」
エインの無傷伝説は未だに継続中である。そうでなくとも、彼が怪我をしたかもしれないという思考は一瞬リリーを慄かせた。
「そう、······ですか。嫌な予感というのは······?」
「······」
エインはそれには答えずに、一瞬階段の方を睨んだ後、
「リリー、これから僕はしばらくこの辺りを巡回する。強い魔力を持つ人、もしくは魔力を消している人が来たら注意してくれ」
「······はい。でも何故?」
理由は聞くが、特に反論はしない。リリーは勇者パーティー時代の経験を思い返す。その性格故かエインは多くを語らなかったが、危機察知・回避能力の高さは勇者だという事を抜きにしてもリーダーを任せるのには十分だったのだ。
「遠くから、善の魔素の持ち主が近付いてきている。それも······僕によく似た性質の」
「······それってまさか、この代の勇者なのでは······」
「僕もそう思う。でも不可解なのは、魔力がやけに弱い事なんだ。仲間も一人しかいないらしい。······リリー、君の聖女の力はどの程度行使できる?」
「え?えーと······」
エインが身を乗り出してきた。よく真顔でこういうことをする、とリリーは考えるふりをして視線を逸らし、そして数秒した後、思い出したふりをして目線を戻す。その間エインの真摯な目は全く動かなかった。
「元の4割ほど。最大限頑張っても、蘇生魔法が限界です」
「悪の魔素を上書きするには足りないか······仕方ない。何かあったらすぐに呼んでくれ」
エインは返答を待たずに出ていこうとした。······そこで、リリーは思わず立ち上がり、ドアノブに手を掛けたエインの服の裾をきゅっと掴む。
「······リリー?」
「あの、······もうちょっと、ゆっくりしていきませんか、"あなた"」
「······」
「あ、······ご迷惑でしたら別に、っ!?」
リップ音が響く。本人達にしかわからない程小さい音だったが、その意味は大きかった。
「······いいよ。何かあるまで、ここでのんびりする事にしようか」
悪戯少年のような表情を浮かべつつ、エインはそう言う。
そして留まることを決めた彼が最初に行った事は、へたり込んでしまったリリーを助け起こすことであった。

229:◆Ec/.87s:2023/11/21(火) 01:24

>>227の地の文の『恐らくアレクとサロメの事であろう』は『恐らくアレクとペレアの事であろう』の誤りです。申し訳ありません。

230:◆Ec/.87s:2023/11/21(火) 08:24

一方その頃。
「あぁキリがねぇ!どこから湧いてくるんだこいつら!」
「大元から叩く必要がありそうだな」
盗賊のブロウと盾使いのアルスト。軽装と重装、速度と防御。これはこれで能力的にはなかなか相性のいいペアである。しかしそんな彼らは質では他の追随を許さないものの、所詮は二人である。ネアのような範囲攻撃の手段も乏しいため、圧倒的な数を誇る機械兵が相手では戦線を維持するのがやっとであった。むしろその面では、地の利があるレジスタンス解放区の兵士達の方が優秀である。
「とはいえ色気がないのは如何ともし難い所だよな······」
「······」
ブロウの呟きを丁重に無視しつつ、アルストは盾でひとまず最後の機械兵を潰す。
「来援感謝します······危ないところでした······」
「良いってことよ」
一人の兵士がそこにやってきて二人に深々と頭を下げた。······ともすれば、そのままの勢いでのめって倒れそうな程に疲労の色が濃い。休息すらまともに取れていないのだろう。
「······」
感謝の声に快く応えたものの、ふとブロウは押し黙ってしまった。間接的にではあるが、イリスが眠ってしまったのは彼が原因と言っても過言ではない。彼女の指導力と戦闘力でここまで保ってきたレジスタンスである。一時的にしてもその核が失われたとなると、影響は小さなものに留まらないのではないか?────そう考えたからで。
しかし目の前の兵士はそんな事を気にする視野も余裕も欠けていた。
「ええと······アルストさんはここに留まって頂けると。ブロウさんは王都中心部に繋がる抜け道の監視を」
「抜け道?」
「抜け道、というか······反攻作戦の際の通路でしょうかね。我々がここに入る時もそこを使ったものです······」
何だか要らない事まで語られている。この際過去の話が未来に役立つ保証は薄いので心の片隅にでも仕舞っておいて、ブロウは具体的な持ち場を聞き、足早にそこを後にした。




ブロウが言われた通りの場所までやって来ると、そこはやや広めの路地裏であった。砲撃でも受けたのだろうか、いやむしろ受けていないとおかしいのだが、崩れかかった建物や散らばる瓦礫がこの区域を陰の方向に彩っている。
ここには数人の兵士が詰めていた。彼らから会釈を受けつつ、ブロウはひとまず近くの石に腰掛け、疲れた足腰を癒しつつ軽い索敵魔法を起動する。······そう、軽い索敵の筈であった。
索敵範囲に何か奇妙な存在が映り、それが少しづつ近付いてくる事を理解するまでは。

【ちょっとあとがき】
●『魔素』とは?
魔力の素材、略して魔素。善・悪・中庸に分かれている。人族は生まれる際にその比率が決定されるのだが、特定の比率になると魔王・勇者・聖女など特殊な役割を持たされる(それぞれ数百年毎にしか生まれないようになっている)。

231:◆Ec/.87s:2023/12/31(日) 00:11

【???】【phase11】>>206

その時だった。
「······えーいっ!!!」
状況に見合わないほど元気な掛け声と共に、大聖堂の壁が一部吹き飛んだ。すわ突破されたか、とネムは一瞬固まったものの、その隙間から入ってくる少女達を見て軽く息を吐いた。
「······貴女達は······」
「ギリギリ間に合ったみたいでよかった。私はシルバーベル」
シルバーベル。······彼女を先頭にして、数人のベルシリーズが大聖堂の中に入ってきた。その色合いは十人十色である。文字通り十人いるかは不明だが、ともかく下手したら目に染みるほどの色彩の豊かさであった。
「はーい、ゴールドベルだよ。空けた穴は今塞ぐから待っててね」
最後尾で入ってきたゴールドベルが、金で空いた穴を塞ぐ。それだけでほとんど元通りになった。

「······その首元の鈴······聞いた事があります。神の遣いだとか······」
状況をどうにか呑み込もうと、色とりどりの少女達を見回しながらネムは呟く。
「神の遣いって言うと大袈裟だけど······まぁそんなものかな。それより!私達はただこの大聖堂を救いに来た訳じゃない。宝玉あるでしょ?」
シルバーベルの早口に、周囲のシスターのみならず他のベルシリーズも目を瞠った。
「ありますね。······もしかして、」
「うん。危なそうだから回収しに来た」
ネムは若干の期待を込めて問い掛ける。それに応じるのは冷淡なレッドベルであった。
「あぁ······ええどうぞ、こちらに!」
ネム自ら大聖堂の奥へと駆け出して行く。その姿をブラックベルや他2人が慌てて追いかける。


······後に残された面々が口を開かぬうちに、再び轟音が大聖堂の残ったガラスを震わせる。
「また来た······!援護、頼めますか?」
一人のシスターが背筋を伸ばし、レッドベルに問い掛ける。
「宝玉を回収できるまでは。ところで······ここ、人少なくないですか?」
「そうでしょう。シスターもモンクも関わらず王国中に駆り出されていますので」
もはや言うことはない、とばかりに彼女は魔法陣を展開し、そこから光線を撃ち出した。そしてまさにガラスを破って飛び込まんとした機械兵の胸元に寸分違わず命中させた。被害者はというと、撃たれた鳥のように墜落していった。
「······!」
戦いはまだ始まったばかりである。それを証明するように、数多の機械兵が大聖堂を取り囲む。それを見てレッドベルも、拾った棒を力強く握り締めた。

232:夏希 だっさ:2024/02/06(火) 18:16

痛い


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