旅鼠の厭世詩

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1:レミング◆yc:2019/09/13(金) 12:00

思い付いたときに詩を書いていきます。

詩ではなく短文に思えることもあると思いますが、
本人は詩のつもりで書いております。

乱入は可ですが、感想を添えて頂けると幸いです。
また、こちらからの感想はあまり期待しないでください。
何分、自分の意見を述べるのが苦手なもので。

20:レミング◆yc:2019/10/02(水) 19:34

愉快な
デスペレヱト•パレヱド

壊れた
メリィゴォランドが
独り寂しく
駆けて征きます

その昔、
右倣えで
思考停止の人々を

メリィゴォランドに
喩えた方が
ありましたっけ

面白味に欠けますが
きっとそれはそれで
良かったんです

ずっと集団で
生きてきた
淡水魚が

いきなり匂いも
深さも違う大海に
放り出されて

生きてゆける訳が
ありませんからねぇ

何の話かって?
貴方々のお話ですよ

愉快な
デスペレヱト•パレヱド

汚れたマリオネットが
奇術師に手を引かれ
転げてゆきます

マリオネットは
もとは少女でした

少女はずっと
教育的な教育を
受けてきました

「育ちの悪い作者の本は
 読んではいけません

 頭の悪い
 絡繰り遊戯など
 してはいけません
 
 算盤をしなさい
 バレヱをしなさい
 勉強をしなさい

 大人の言うことを
 聞いていなさい」

或る日
“大人”は死んで
操り糸はぷつりと
切れて仕舞いました

そこを奇術師に買われ
憐れ小道具と
なったのでした

愉快な
デスペレヱト•パレヱド

貴方も世間から
弾かれたのですね?

えぇ
私共は常に
団員を募集しています

いつでも誰でも
歓迎しますとも

貴方は…
自ら壊れたり
しないで下さいね

愉快な
デスペレヱト•パレヱド

人手不足が
唯一の悩みです……

21:レミング◆yc:2019/10/03(木) 00:51

書き忘れましたが、デスペレートとは
絶望的、自暴自棄などの意味があり、
詩としては「絶望したモノたちの行進」というイメージで書きました。

祭りの華やかなパレードとして認識しているのは
自暴自棄な団員たちでしょうか、
彼らを一番よく知っている団長でしょうか、
思わず魅入る観客なのでしょうか、
全てを傍観する読み手でしょうか。

人生はアップで見れば悲劇だが
ルーズで見れば喜劇である。
とは、よく言ったものです。

その考えも又、愉快ですね。 

22:レミング◆yc:2019/10/04(金) 02:59

くるくる
かくかく

夜の小さな劇場で
貴方と私は
踊り続ける

二人っきりの
幸福のワルツ

私は貴方に
微笑むけれど
貴方は笑い返して
くれないの

だって、ねぇ

貴方のお顔に
肉は無いんだもの

此処は私の作った
幸せのナイトメア

永遠の夜のなか
貴方とワルツを
踊り続ける

くるくる
かたかた

ヒールと骨が
床を叩く音

私の腰を
抱き止める腕

ぽっかり空いた
虚ろなおめめ

あぁ、愛おしい

後悔なんて
していないわ

貴方は最期
とっても素敵に
笑っていたもの

きっと貴方も
幸せよね?

くるくる
かくかく

観客なんて
いらないわ

貴方のことを
見つめるのは
私一人で充分だもの

照明なんて
いらないわ

窓から入る月の光が
私たちを照らして
くれるもの

くるくる
かたかた

くるくる
かくかく

貴方は私の
オートマタ

私だけの
愛のお人形

私たちを繋ぐのは
真っ赤な真っ赤な
運命の糸

この夜が明けることは
永遠に無い

二人っきりの
孤独なワルツ

23:レミング◆yc:2019/10/07(月) 10:23

薬は
飲み過ぎると
毒になると
いうだろう?

だから
毒を少しだけ
飲ませれば

薬になると
思ったんだ

24:レミング◆yc:2019/10/08(火) 09:05

嗚呼、
“あれ”が
今年も届く

箱いっぱいに
詰められた

まるで
宝石のような
赤い果実

見ている分には
良いけれど

いざ
食べようとすると

たちまち
目玉に姿を変えて
仕舞うので

自然に
腐るのを
待つしかない

送り主が
分からないから
返品もできない

今年も
“あれ”が届く

25:レミング◆yc:2019/10/09(水) 04:31

あんまり視線が
熱いから
僕の瞳はとろりと
溶けてしまった

仕方がないので
義眼屋に行く
ことにした

主人はまず
手前に置いた
ケースを指した

「これは今一番人気の
 商品で御座います

 冬の渚のような
 透き通った銀色で

 嘘の吐くのが
 上手くなります」

「それはどういった
 種族の目玉ですか」

「これは人狼の目玉です」

次に右側の
ケースを指した

「これは如何でしょう

 真夏の
 空の天井のような
 深い青色で

 博識を得ることが
 できます」

「それはどういった…」

「これは精霊の目玉です」

次に頭上の
鳥籠の中のケースを
指した

「これなんて上物ですよ

 朝日の輝きを
 閉じ込めたような
 煌びやかな金色で

 本当の善と悪が
 分かるように
 なります」

「それは…」

「これは
 天使の目玉です」

ふと
カウンターの隅に
隠れている
ケースを指してみた

「そこの黒いのは
 どうなんですか」

「あぁそれは…
 やめておいた方が
 良いでしょう

 損得でしか
 物事を
 見られなくなる

 人間の目玉ですから」

26:レミング◆yc:2019/10/10(木) 14:15

出した覚えのない
風鈴が
鳴っている

気になって
音の出処を
探ってみると

庭先に埋めた
髑髏が
笑っている
だけだった

27:レミング◆yc:2019/10/10(木) 14:40

ストックが無くなってきたので、
ここからは短編が多くなると思います

28:レミング◆yc:2019/10/11(金) 07:38

誰も頼んでいないし
誰も運んでいないのに

誰にも
気付かれないまま

もう何年も
店の隅の席にある

ブルーベリーソーダ

29:レミング◆yc:2019/10/12(土) 07:54

3-Aの教室の壁に
悪質な悪戯が
あったらしい

野次馬に混ざって
見てみると

何やら
小さな紙切れが
壁いっぱいに
貼り付けてある

近付いてよく見ると
それは

先日自殺した生徒の
名前が書いてある
クレヨンのラベルだった

30:レミング◆yc:2019/10/13(日) 20:36

台風が
来るというので
コロッケを
揚げている

もうすでに
窓を大粒の雨が
叩いており 

時々
雷が落ちる音が
聞こえる

そして
つい先程
気付いたのだが

鍋の油が
ぱちんと
弾けるたびに

がっしゃあんと
雷が落ちている

このままだと
油の温度が
上がり過ぎて
しまうので

早く決めなくては
いけない

鍋にコロッケを
入れるか
否か

31:レミング◆yc:2019/10/14(月) 09:19

恋人に殺される
夢を見た

妙に生々しく
現実味が
あったので

念のため
包丁を持って
会いに
行くことにした

両手で包丁を持ち
玄関のドアを
開けるとそこには

同じく包丁を
握りしめ
驚愕の表情を
浮かべる
恋人がいた

32:レミング◆yc:2019/10/15(火) 15:35

寝る前に必ず
飲んでいる
錠剤が

或るときから
一日二錠ずつ
増えていることに
気が付いた

33:レミング◆yc:2019/10/17(木) 14:04

貴族が一人
或る絵画の前に
立ちました

貴族は
「素晴らしい画だ」
と呟き去りました

学者が一人
同じ絵画の前に
立ちました

学者は
「なんて奇妙な画だ」
と呟き去りました

画家が一人
同じ絵画の前に
立ちました

画家は
「これは大変価値のある画だ」
と言い去りました

僕も
同じ絵画の前に
立ちました

それは真っ白なままの
ただの四角い
キャンパスでした

34:アビス◆wc:2019/10/17(木) 23:33

やあ 頑張っているね
其の調子だよ。

短編だろうが、長編だろうが
思い付いたなら
どんどん書いていけば良いさ
これだ!と閃いたのなら
文でも単語でもメモはした方が良い
でないと忘れて仕舞って
二度と思い出せない…
なんて事もあるからね。

因みに私は何時も自作の詩を綴った
ノートを持ち歩いているよ。
アイデアが『何時』『何処に』
落ちているかが判らないからね。

P.S
大丈夫、貴方は出来ている。

長文、済まなかったね。

35:レミング◆yc:2019/10/18(金) 21:11

貴方はいつも、私が一番欲しい言葉をかけてくれますね。
長文だからこそ伝わることもありますよ。
特にアビスさんの文章は、言い知れぬ重みがありますから。

手帳は常に持ち歩いています。
職場にいるときや遠乗りの際は勿論のこと、
寝床についてから目覚めの瞬間までも、
言葉は気まぐれに湧いてきますからね。

作風はまだ安定しませんが、
脳内に湧く言葉たちが尽きるまでは、書き続けようと思います。

36:レミング◆yc:2019/10/20(日) 20:27

もう十年も
抱いて眠っている
テディベア

三歳の誕生日に
お父さんに
買ってもらった
可愛い子

そのテディベアは今
「私の躰を返して!」
と私の腕の中で
叫び続けている

37:レミング◆yc:2019/10/22(火) 21:00

土を払って次の場所へ

掲げた羅針盤に
針は無い

けれども
確かな足取りで
昏い闇の中を
進んでゆく

どこへ行くべきかは
僕の細胞がちゃんと
覚えているから

ひび割れの隙間を
埋めるため

奪われたものを
取り戻すため

この先僕を
待っているのは

希望か
絶望か

今はまだ分からないけれど
希望であれば良いと願う

この世に
運命なんてものが
あるとするなら

僕がこうして抗うことも
決められていたのだろうか

今更引き返すなんて
できないんだよな

問いかけてみても
羅針盤から返事は
返ってこない

38:レミング◆yc:2019/10/24(木) 16:28

煌々と輝く月を
独り眺めては
ため息を溢す

嗚呼、浮世の月は
こんなにも
明るい

これでは
降り注ぐ星たちが
見えないわ___

39:レミング◆yc:2019/10/26(土) 17:45

切った豆腐のように
ずらりと並ぶ
白い建物

大きな大きな
その空間はいっそ
精緻な
ジオラマにも思える

買い物から帰り
子供の手を引きながら
何処までも続く
窓と窓の間を
歩いていた

レースのカーテンが
引いてある窓

アイドルのポスターが
張ってある窓

黒い遮光カーテンで
念入りに目隠しした窓

我が家の窓には
妻がドラマでも
見ているのか
泣き笑いの女優の顔が
大きく反射していた

鍵を開け家の中に入ると
妻から

アンテナの調子が悪く
テレビが
点かくなってしまった
旨を知らされた

カーテンは
ぴっちりと
閉まっていた

40:レミング◆yc:2019/10/28(月) 22:32

私たちが何と言っても
無駄ですよ

あの子は…
いえ
あの子“たち”は

見えないものしか
信じませんので

41:レミング◆yc:2019/10/29(火) 20:40

恋人と別れた日
悲哀と憎悪の色が
部屋を
染め上げていた

君が笑っている
写真全ての
両目に画鋲が
刺さっている

無人の
部屋の中は
鉄錆の匂いで
一杯だった

42:レミング◆yc:2019/10/31(木) 22:07

今日の日は
楽しい嬉しい
アングロ・サクソンの
聖なる日!

チョコレート
キャンディ
タルトにクッキー

色んなお菓子を
用意していて?

僕が気に入りそうな
カラフルなお菓子を!

煉瓦の壁から覘いてる
君は何処のどなたかな?

いけないなァ
君みたいな子は
近くのお家に
“お知らせ”して回るものだよ

あぁ
お菓子が欲しいのかい

それなら
僕のとっておき

カボチャのパイを
ひと切れあげよう

受け取ったなら
早くお行き
半透明の子

さぁて僕は
次のお家に行かなくちゃ

それではさよなら
Happy Halloween!

43:レミング◆yc:2019/11/02(土) 00:51

水たまりを踏んだ

まだ灰色の残る
空が砕けた

ひんやり湿った空気は
いつも通り
少しだけ甘い匂いがした

大きな大きな水たまり
その中心に立つ僕は

空の全て
青で満たしたくなった

分厚い雲を見ると
心がざわつくのは何故?

虹が架からないと
酷く焦燥するのは何故?

骨の折れた傘を見ると
頭が痛むのは何故?

屋根から落ちる
青い蒼い雫が
僕の指先に止まった

それは全部
晴れない空が憎いだけ

44:レミング◆yc:2019/11/03(日) 07:43

《アウトサイダー》


何度寝て起きようと
彩度の低い世界

これから色が付くことも
きっとないだろうから
ゴミに囲まれて
ゴミのように生きている

ひとの環から外れて
もう二度と
入れないでいた

ひとの生き方なんて
見当も付かないから

澱んだ空気を
吸っては吐くのを
繰り返していた

こんなおぞましい
劣等感も疎外感も
僕が“部外者”だからだ

意味も無く
視線を床に這わせれば
堆く積み重なったゴミ袋が
目に入った

そしてその横で
いつのものか分からない
飲みかけの炭酸飲料が
倒れている

部屋の隅で
存在を忘れられ
炭酸が抜けている
それと僕はよく似ていた

蓋が弾け
腐った中身が吹き出す日は
そう遠くないのかも知れない

ゴミだらけの部屋で
薄く嗤った

45:レミング◆yc:2019/11/05(火) 07:19

君は気付いて
いるのだろうか

黒は
どんな色をも濁すが

その黒を
濁すことのできる
唯一の色は

どんな色にも
染まってしまえる
白色だということ

46:レミング◆yc:2019/11/06(水) 10:49

悲しいだとか
辛いだとか
そんなもの

感じることも
無くなっていた

口に出すなんて
考えても
みなかった

ずっとずっと昔から
心の奥底に
隠れていたようで

あることにも
気付かぬ儘
存在さえも
忘れていった

決壊した感情に
流され潰され動かされ

私はもう
私が分からなくなった



私じゃあ
なかったのかもしれない

47:レミング◆yc:2019/11/07(木) 08:35

ふと本から
顔を上げると

てるてる坊主が
断頭台を
組み立てていた

48:レミング◆yc:2019/11/08(金) 08:14

沈殿した過去と
虚しさの上澄み

煙る怠惰
欠落した自我

表裏一体
希と絶望

49:レミング◆yc:2019/11/10(日) 12:07

その人は

幼児のように
無邪気で

兵士のように
冷徹で

賢者のように
博識で

黒幕のように
暗躍家で

帽子屋のように
狂気的で

囚人のように
罪深くて

天使のように
潔白で

神様のように
完璧な人

50:レミング◆yc:2019/11/11(月) 18:12

呪に交わって
赤になれ

愛より出でて
青ざめよ

私が黒だと?
……白々しい

51:レミング◆yc:2019/11/12(火) 20:25

「もし一日私を好きに
できるとしたら、
貴方はどうする?」

……どうしたの、急に。

それは今と
何が違うのさ?

でも、そうだね
君を一日も好きにできるなら……

どろどろに
ぐちゃぐちゃに

甘やかしてあげるよ。

俺がどれだけ君を
大切に思っているのか
分かってもらえるまで

君の
手足をきつく縛って
唇に熱く触れて
脳を優しく犯して
肌に柔く爪を立てて

心に赤い
傷跡をつけて。

そんな試すような
質問なんて
できなくなるように。

期待してるの?
可愛いね。

……そんなに
物欲しげな顔されたら
無視できないよ。

して欲しい?
なら

今から実行してあげようか。

52:レミング◆yc:2019/11/13(水) 22:01

愛を歌うだけ
なんて
つまらない

どうせなら
憎しみも
嫉妬も
殺意も
混ぜて

恋の歌にして
しまいましょう

愛憎折々
悲喜交々

道端の石ころより
珍しくも何ともない

ありふれた
使い古しの
ラブソングに

53:レミング◆yc:2019/11/16(土) 19:36

僕には死んだときの
記憶がある

何故か
分からないけれど

奇妙に鮮烈に
生々しいほどに
覚えているのだ

地面に
吸い込まれてゆく
体温と

不規則に
痙攣する指先

体中の血液が抜けて
骨に張り付く肌

見開いたまま
ひんやりと
かさついてゆく瞳

暑いのも寒いのも
分からなくなる

嗚呼、僕は
死んだのだなという
まるで他人事のような実感

たまに
生きているのか
死んでいるのか

忘れてしまいそうなほど
はっきりと思い出す

もしや僕は
死人だったのか?

54:レミング◆yc:2019/11/19(火) 06:13



時計の針が
ぐるぐる回る

55:レミング◆yc:2019/11/19(火) 06:44

寝ても悪夢
起きても悪夢

終わらない

夢から覚める

呼びかける
声が聞こえる

探しても
探しても
見つからない

嗤い歌う声
明かりのない部屋

隠している

夢から覚める

障子が開いている
だれかが覘いている

翳った視界に
目が見える

星がよく見える
月が隠れていた

夢から覚める

終わらないことに
気が付いていた

飽くまで続く
ずっと続く

逃げたい
逃げたい
助けて

池を覘く
捕まる

夢から覚める

泣いている
だれかが
後ろで

後ろで
だれかが
嗤っている

笑っていた

夢から覚める

56:レミング◆yc:2019/11/22(金) 03:18

【1】

僕は
貴方のためなら
何でもするよ

貴方が笑って
いられるように

殴って
奪って
呪って

邪魔なやつ?
殺しちゃおうか

僕は
貴方になら
何をされてもいいよ

貴方の傍に
いられるように

殴られても
奪われても
呪われても

邪魔になったら
殺してもいいよ

僕の全ては
どうなったっていい

どんなに
辛くても
苦しくても
痛くても
耐えられる

僕には貴方しか
いないから

貴方が幸せでいて
くれるなら
それでいい

そのために
僕は

57:レミング◆yc:2019/11/24(日) 03:34

それなのに
ねぇ

どうして
そんなに悲そうな
顔をするの?

どうして
泣きながら
僕を抱きしめるの?

分かんないよ

嫌だよ
貴方のそんな顔
見たくない

辛いのも
苦しいのも
痛いのも
僕だけで良いよ

お願いだから
もう泣かないでよ

どうしたら
泣き止んでくれる?

どうしたら
また笑ってくれる?

どうすれば

貴方がそんなに
悲しいならば

僕は今まで
貴方のために
何をしてきたの?

……分かんないよ

58:レミング◆yc:2019/11/24(日) 03:50

空に光る
キャンディチップ

赤色ちかちか
青色ぴかぴか
白色しゃらしゃら
金色きらきら

空のスイーツ
キャンディチップ

甘いの
酸っぱいの
塩っぱいの
苦いの

星降る空の
キャンディチップ

笑顔が咲けば
涙が零れれば
吐息を漏らせば
言の葉紡げば

いつか見た夢
キャンディチップ

59:詠み人知らず hoge:2019/11/27(水) 04:49

時計の音が聞こえる

ticktack
ticktack

秒針は折った
長針も折った

それなのに

ずっと続く音
終わらない音

ticktack
ticktack

時の流れは
滞らない
止まらない

いつまで続く?
いつまでも続く

誰かが時間なんてものを
創ってしまった
ときからずっと

ticktack
ticktack

どこまで行っても
着いてくる

いつまで経っても
終わらない

時は止まらない

ticktack
ticktack

60:レミング◆yc:2019/11/27(水) 04:51

おっと……
済みません、名前を入れるのを忘れてしまいました。
>>59 は私です。

61:レミング◆yc:2019/11/27(水) 06:34

夜の幻想に
沈み込む

今日の夢は
幸福だった

白砂糖の
レイピアと
塩キャラメルの
鎖帷子

ぱっと咲いた
血飛沫は
甘いミルクの
香り付き

昨日の夢は
愉快だった

金剛石の一角獣
遊んでいたら
瞳が欠けた

仕方ないので
黒曜石を
双眸にした
黒い瞳の一角獣

一昨日の夢は
追懐的

脚を怪我した針鼠
哀れに思った
月の娘は

傷口をよく洗い
月の軟膏を
塗ってやった

泡沫の楽園から
目を覚ます

どうか
ここにいて
明日の在処

62:レミング◆yc:2019/12/02(月) 03:19

誰も教えて
くれないから
何も知らない

誰も理解って
くれないから
何も言えない

ずっと何も
聞こえない

きっといつか
声も忘れて
しまうのだ

だから僕の心は
こんなにも静かで

もうすぐ鼓動さえ
鳴り止むのだろう

63:レミング◆yc:2019/12/05(木) 01:58

化け物に逢った

其奴は俺より
頭三つ分も大きくて
赤黒くぬらぬら濡れていた

化け物は俺を見て言った

「旨そうな人の子だ
 頭からばりばり
 喰らってやろう」

俺が
「何故喰らう?」
と問うと

「喰らわねば生きて行けぬ故
 御前達人間も鳥や牛を
 殺して喰らうだろう」
と答えた

確かにそうだ
俺も今朝方
魚を焼いて食べたのだった

しかし
俺はまだ死にたくない

そこで俺は
「お前が俺たちと同じように
 殺し喰らうのだとしたら
 俺たちと同じ礼儀に倣らわねば
 ならないだろう」
と言った

化け物は
「礼儀とは何だ」
と問うので

俺は
「手を合わせ頭を下げて
 頂きますと言うのだ」
と教えてやった

すると化け物は
手を合わせ頭を下げて
頂きますと言おうとし……

その前に俺が其奴の首を斬った
化け物は動かなくなった

俺はその死骸を喰らうことも無く
蹴って谷から突き落とした

化け物は知らなかったのだ
人間が生きものを殺めるのは
腹を満たすときのみではないと

64:レミング◆yc:2019/12/05(木) 09:49

ギロギロと
血走る大きな目

ずっと昔に見ていた
景色を写し続けている

もう夜は
やって来ない

貴方は生きられない

65:レミング◆yc:2019/12/06(金) 10:06

今年も君は
来てくれなかった

嫌だな
もう一年待ち惚けだなんて

去年一昨年
よりもずっと前から
待っていたのに

やっと会えると思ったのに

「ここまでくるのも
 ただじゃないんだよ」
本心を誤魔化して独り呟く

幾つもの“再会”が
通り過ぎる中
独りぼっちで
待っていてあげる

君の好きな薄荷味の
ドロップスを舐めながら

66:レミング◆yc:2019/12/08(日) 07:50

貴方はいつでもそうだ

自分だけが
好きしていられれば

自分だけが
楽しければ

そんなのは
周りを誤魔化す為の
嘘で

自分だけが
報われなければ

自分だけが
絶対悪であれば

またそんなことを
考えているんでしょう

貴方は悪役になんて
向いてない

でも
それを分かった上で
貴方は偽悪を演じている

どうして?

後味の良い終わり方が
必ずしも正解だとは
限らない

虚しさの中死ぬ運命
だとしても

大切な人の死に嘆き
絶望するとしても

どれだけ多くのものを
失ったとしても

作者が手を止めれば
それが“お終い”なのに

いえ
だからこそ
貴方は自己犠牲を
選ぶのでしょうね

どうか
誰よりも優しくて
誰よりも不器用で
誰よりも誠実な貴方が

いつかどこかで
救われますように

67:レミング◆yc:2019/12/11(水) 05:33

かつて此処にあったもの
かつて此処に集ったもの
かつて此処に記したもの

過ぎ去った日々は
もう戻らない
貴方はそれに何を求める?

彷徨ったあとの路か?
共に歩んだ仲間か?
いつも歌った詩か?

はたまた
それら全ての記憶か

時が経って
形を亡くしていたものたちは
貴方の中に残っているか?

かつて此処にあった野原は
貴方が通る路となった

かつて此処に集った独りたちは
仲間を見つけ集団となった

かつて此処に置いた白紙には
文字を記して詩にした

過ぎ去った日々は
もう戻らない

一度紡がれた物語は
空白には戻らない

貴方は確かに此処に居たのだ

68:レミング◆yc:2019/12/12(木) 03:56

僕はまだ大丈夫だって
ペンを取って
机に向き合って

きっとそれから
動けはしない

一文字だって
書けやしない

フラッシュバック
ペンを折る音

肺が重くて息ができない
手が固まって動かせない

フラッシュバック
冷えた指先

もう何もできない

69:レミング◆yc:2019/12/14(土) 06:27

「恋の火傷に気をつけな、Baby?」

そう言って、いつも貴方は
ウィンクをするの

なんて格好良いの
私の王子様!

キザだとか
寒いだとか

そんなことを言う人も
いるけれど
気にしなくても良いの

だって貴方は世界一
格好良いんですもの!

えぇもちろん、
格好付けだっていうのは
分かっているわ

だって貴方はとても純粋な人

でも嘘を吐くのが上手いから
いつも自分を隠してしまうの

貴方の本当の心が理解るのは
貴方だけ

そんなミステリアスな
ところも素敵!

ただでさえ格好良い貴方が
格好付けたら、
どうなると思う?

それはつまり

すごくすごく
格好良いってこと!

70:詠み人知らず:2019/12/14(土) 14:55

71:レミング◆yc:2019/12/14(土) 16:21

>>70
キリ番、取られてしまいましたか。

一文字だけの詩ですか、新しくて良いですね。
「あ」というのは在であり空であり、Aでもありますね。実は「あ」はこの世の全ての始まりを表す一文字なのかもしれません。たった一文字は無限の可能性を秘めた詩でもありそうですね。

72:レミング◆yc:2019/12/17(火) 08:23

曇り空に浮かぶは
電球のような月

白く透明で
直ぐにでも消えて
しまいそうなほど薄い

水面に映れば
揺らいで散った

朝の月は憂鬱だ

73:レミング◆yc:2019/12/18(水) 03:55

真っ赤っかな
足元の花火
飛んでひゅうひゅう
散ってぱらぱら

腐肉みたいな腕
皮肉な取り柄
掴んでぎゅうぎゅう
押してびゅるびゅる

ちっちゃなおくすり
喉から指先
水をぐるぐる
頭でじゅわじゅわ

うふふ、ふふふ

74:レミング◆yc:2019/12/19(木) 16:34

まことにざんねんですが あなたのじんせいは しっぱいしました

75:レミング◆yc:2019/12/22(日) 20:03

愛だけで
世界が満たされれば
良いのにね

みんな幸せに
なっちゃえば
良いのにね

これから先ずっと
誰も死ななければ
良いのにね

全人類が
私だったら
良いのにね

76:四月うさぎ◆w6:2019/12/22(日) 21:03

素敵な詩だね。
ぼくも書いてみていいかな?

77:レミング◆yc:2019/12/23(月) 08:05

>>76
どうぞお好きに書いていってください。
私が立てたスレッドですが、私一人では埋まらない気がしてきたところです。
ふわふわした言葉の羅列は思い浮かぶのですが、どうにも詩の形にならなくて…。

それとお名前、とても可愛らしいですね。

78:レミング◆yc:2019/12/23(月) 08:14

嫌なことが
ありました

育てていた花が全て
枯れてしまいました

嫌なことが
ありました

好きな人には
好きな人が
いるそうです

嫌なことが
ありました

欲しい本が
売り切れていました

嫌なことが
ありました

友達が減って
しまいました

嫌なことが
ありました

嫌いな人が
幸せそうでした

嫌なことが
ありました

傘を盗られて
しまいました

嫌なことが
ありました

好きだった人の
好きな人は
私の嫌いな人でした

良いことが
ありました

好きだった人は
恋人を亡くしました

79:レミング◆yc:2019/12/24(火) 01:44

瓦礫に轢かれる
白花は
風と雨を
憎んでいた

80:四月うさぎ◆w6:2019/12/27(金) 02:45

血溜まりを踏みながら
虚しいなって笑った

小さな虫がそれに止まって
赤に溺れて沈んでいく
一匹の生物の死が
新たな死を生んだ

ありふれたものだった
ただ、
今ぼくが作ったものだった

ぼくにはそれが
とてもくだらないように思えて
虫の脚が見えなくなれば
血溜まりの主への興味も失せた

思い出せることなんて
ほとんどないけれど
そのどれもが灰色で

貴方への気持ちも
そんなもんだったよ

さようなら、最愛だった人

81:四月うさぎ◆w6:2019/12/27(金) 02:52

うーん?やっぱりぼくが書くと文章っぽくなってしまうな。
あなたの詩も文章に近くて、なんだか親近感を覚えてしまったんだ。
物語を読んでいるようでとても引き込まれる、素敵な詩だと思ったよ。

それと名前…可愛いかな?ありがとう。

82:レミング◆yc:2019/12/31(火) 02:37

>>81
お返事が遅くなってしまってすみません。
無機質で虚ろ、そこに仄暗い美しさが宿った、まさに“厭世”な詩ですね。

文章的になってしまうことで悩んでいるのは私だけでは無いのですね。少し安心しました。
どんな形であっても、誰かが心を込めて描いたものなら、詩足り得るのではないでしょうか。

上から目線になってしまいましたが、貴方は貴方の書きたいものを書いてください。
それでは、良いお年を。

83:レミング◆yc:2020/01/01(水) 05:17

馬鹿みたいだ

勝手に作った
年なんて区切りを
大事に守って

丁度ぴったりに
何かをするのが
当然だと思ってる

国とかいう区切りで
微妙にずれているのに

時計がなければ
意味もないのに

それでも“年”によって
全てが動いているのを
誰も疑問に思わない

なんて馬鹿馬鹿しい

まぁ
それはそうとして
新年おめでとう

84:レミング◆yc:2020/01/04(土) 04:30

【初夢】

鍵穴に指を差し込めば
絡繰人形が踊り出す

糸車が廻り
緞帳も降り始める

舌切り歌姫が絶叫
熱狂

暗転

闇に揺らめく
白い焔に
吹きかける息
マッチ箱を置く

汽笛が鳴れば
鴎が墜ちる

愛逢い遭い哀

毒蛾の群れが
疎ましい

疾患
爛れた翅は戻らない

85:レミング◆yc:2020/01/05(日) 05:44

体の芯から
冷えてしまいそうな朝

アイスキャンディをかじる
少女に見つめられている

私の吐く息は
こんなにも白いのに
彼女の口元からは
水色の雫が滴っていた

「暑いね」

妙に感情の篭っていない声で
少女が言った

そんなわけがない

雪も降らない
空が伽藍堂なこんな朝は
底冷えするほど寒い

少女は何も言わずに
ただ私を見て
外れ棒を咥えて
笑っていた

86:レミング◆yc:2020/01/07(火) 01:02

どこか遠いところで
僕を呼ぶ声が聞こえる

それはあまりにか細くて
蝶が羽ばたくみたいな
軽く美しい声だった

振り向こうにも
どこから聞こえるか
分からない

呼び返そうにも
僕はその声が誰のものか
分からない

お願い
もっと近付いて
君の名前を教えて

どうか
呼ぶのを辞めないで
そのまま声を聞かせていて

僕が君に呼びかけるまで
僕が君のもとに辿り着くまで
僕が君を思い出すまで

87:レミング◆yc:2020/01/09(木) 05:11

「杏の甘い匂いがする」

ふと立ち止まって
君が言った

ジャムにしたら
美味しいでしょうね

辺りを見回し笑む君は
この間僕が言った言葉を
覚えているだろうか

いや
覚えていない方が良いな

君を無駄に
怖がらせたくない

君はいつ気付くだろうか

こんな時期に
杏は実らないことに

こんな場所で
鼻がきくはずもないことに

君が“それ”を
見つけてしまわぬように
落ち葉を蹴って“それ”を隠した

【人の屍体は杏の匂いがする】

88:レミング◆yc:2020/01/10(金) 05:08

溢れる涙で文でも書いたら
少しは気分も
晴れるだろうか

苦しくて
虚しくて
みっともない

このどうしようもない
気持ちのまま
誰にも気付かれず
消えていけたら

ぼくじゃないぼくを
消すことができたら

愉快でも呑気でもない
こんなぼくを
誰かが
許してくれるだろうか

希望も期待も未来でさえも
今のぼくには残っていない

全てを突き放してきたぼくは
誰に縋れば良いんだろう

ぼくを愛せないぼくに
救いはあるだろうか

屈折した感情の上澄みだけが
ぼくの最後の砦なんだ

89:レミング◆yc:2020/01/11(土) 08:03

薄いレースのカーテンを引けば
この町が無数の目に
監視されていると気がつくはずだ

90:レミング◆yc:2020/01/16(木) 04:55

黒くなっていく
罪を犯した僕の手が
指先から

暗くなっていく
何度も死顔を見た僕の目が
端から

白くなっていく
無垢だったときの僕の記憶が
古いものから

知らなくなっていく
昔の僕が
消しているから

ちょっと怒ってみようかな

どうすれば良かったんだよ

ってさ

真っ黒で小さな塊になった僕は
何もできなくなった
分からなくなった
僕じゃなくなった

91:レミング◆yc:2020/01/17(金) 09:01

どろどろどろと泥

泥水啜って
生きてきたけど
結局報われは
しなかったな

どろどろどろと泥

手足を取られて
動けやしない
このままずっと
沈んでくだけ

どろどろどろと泥

重くて冷たい
悪意が蝕む
もがくのももう
やめてしまおう

どろどろどろと泥

諦めた
どうせ最初から
助かる見込みなんて
なかったんだよ

92:レミング◆yc:2020/01/20(月) 02:46

風にさらされ雨に打たれて
白骨はふわふわ
夢を見ています

ここから見えるのはもう
青緑色の葉っぱだけに
なってしまった

人の声は遥か遠く
僕の耳には届きゃしない

あとどれだけ
僕は僕でいられるのだろう

乾いて腐って風化して
中身はもう
スッカラカンになった

潤んだ朝の水滴が
僕の顔を
涙のように伝うんだ

生身であれば
知ることのなかった感触だ

ずっとこの景色を
見ていたいな
ずっとこの感覚を
味わっていたいな

願わくば魂が擦り減るまで
どうか清らかな体のままで

願わくば飽きるまで
どうか白骨のままで

93:レミング◆yc:2020/01/20(月) 02:59

手元から逃げた包丁が
硝子テーブルの上に落ちる

その刃には
小さな肉片と鮮血が
べっとりと付いていた

取り返しのつかないことを
してしまった

私は罪人だ
きっともう手遅れだ
これじゃあ地獄行きは
免れないじゃないか

死体はどうしようか
どうにもならないか

掃除はどうしようか
どうにもならないか

喉元から赤を
まるで他人事のように眺めながら
そんなことを考えていた

94:レミング◆yc:2020/01/20(月) 03:01

>>93

誤字。喉元から(吹き出す)赤を です

95:レミング◆yc:2020/01/20(月) 03:02

>>94

誤字じゃない脱字です。
こんなところまで間違えるとは情け無い…。

96:レミング◆yc:2020/01/20(月) 03:16

あの人は私のことを
見てはくれない

たとえ
天地がひっくり返っても
蛙が喋るようになったとしても

私が死んでも
あの人が死んでも

どうしたって
あの人の視界には入れない
どうしたって
あの人の心には入れない

それならば

いっそ
あの人の目の前で
死んでみてはどうだろうか?

言葉にしてみて寒気がした

我ながら
なんて恐ろしく
魅力的な考えだろう

97:レミング◆yc:2020/01/22(水) 02:00

蕗の薹が咲いている

薄緑色の葉と花は
かわいい小さな
ドレスに見える

ほんのり苦い春の味

これを着るのは
どんな娘だろう

雪はまだ残っていて
白いかけらが
固まっている

もうすぐ冬が溶ける

98:レミング◆yc:2020/01/22(水) 02:03

>>97
【ふきのはなさく】

99:レミング◆yc:2020/01/25(土) 05:20

あの時の痕が消えないんだ

こんなに赤黒く見せつけて
風が撫ぜるだけで酷く痛む

今すぐにでも忘れたいのに
一瞬後には忘れていたいのに

触れるたびに思い出す
痛むたびに思い出す
苦しそうなあの人の顔を
きっとこの痕は一生残る

忘れられない記憶と共に
忘れてしまいたい私と共に

100:レミング◆yc:2020/01/25(土) 05:22

…もう幾十も無い。
本当に、もう終わってしまうのですね。
もっと貴方の詩に沈んでいたかった。

101:レミング◆yc:2020/01/28(火) 01:12

素晴らしい詩の集まりでした。
でも、この終わりはきっと、通過点に過ぎないのでしょうね。

私はいつまでも待っております。
又、会うときまで。

102:レミング◆yc:2020/01/28(火) 06:17

【見ている】

私は貴方を見てる
貴方の目を見つめてる

貴方の一挙一動が
愛おしくて
貴方の仕草を
一つとして
見逃さないように

ずっと見てる

103:レミング◆yc:2020/01/28(火) 06:21

【見られている】

僕は君に見られている
どこかをじっと見られている

君を見つめ返そうと思っても
君の目を見ようとしても
僕が視線を向けると
君は外方を向いて
しまうじゃないか

そろそろ見ても良いかい?

104:レミング◆yc:2020/01/28(火) 08:34

【さわみずこおりつめる】

雪が降っていた

雪が降って
そのうち雨になって
霙になった

まるで
シロップに溶けかけの
かき氷みたいに半透明

掴んで潰してみると
しゃらしゅらしゃらと
冷たいきれいな音が鳴る

沢にも分厚く氷が張って
稲光りが走ったみたいな
白い筋が四方八方伸びていた

ばきりと踏んで
破ってやろうか…

靴に水が入るから
辞めておこうか…

105:レミング◆yc:2020/01/30(木) 04:03

貴方はそれに
気づいてしまった

貴方はそれを
見てしまった

貴方はそれから
逃げてしまった

貴方はそれに
気づかれてしまった

貴方はそれに
見られてしまった

貴方はそれから
逃げられなくなってしまった

106:レミング◆yc:2020/01/30(木) 04:35

君は本当はどこにいるの
本当にいるの

ときどき分からなくなるんだ
目の前にいる君は
実は僕の作った夢幻で
本当はいないような気がして

口元に手をやったら
呼吸していないかもしれない

心臓に耳を当てたら
鼓動していないかもしれない

君に触れたらその手は
すり抜けてしまうかもしれない

この夜が明けたら
君はもう
どこにもいないかもしれない

それが
怖くてたまらない

キスをしよう
君が呼吸しているのを
確かめるため

抱き締め合おう
君の心臓が動いているのを
確かめるため

触れ合っていよう
君が存在するのを
確かめるため

夜も起きていよう
君が隣にいるのを
確かめるため

ずっとこのまま
醒めない夢に浸ったまま

永遠に君を生かすように
永遠に僕をころすように

107:レミング◆yc:2020/02/02(日) 06:00

【にわとりはじめてとやにつく】

鶏が卵を生む

ごろりと転がるそれは
まん丸では無い

子供の時分に
聞いたことがある
何故鶏の卵は
まん丸では無いのかと

間違って転がっても
お母さんのところに
戻れるようによ


母親は言った

いつまで転がり続けても
親から離れられることは
無いのだと

冗談では無い

私はどうしたって
逃れられないのか

卵を生み続けるか
肉になるか

私は母親と同じ運命を
辿るのか

次は私が母親になるのか

昔は憧れた白い羽毛が
今は憎くて仕方がない

108:レミング◆yc:2020/02/05(水) 04:38

【はるかぜこおりをとく】

東から吹くぬるい風が
頬を撫ぜる

少しずつ氷がとけ
大地を覆う白が
極彩色に染まるのだろう

積もるばかりの雪は
さらさらと
樹木華に吸われるのだろう

ああ
春が始まる

109:レミング◆yc:2020/02/05(水) 04:44

愛されたいと思っていたら
こんなことには
なっていないよ

僕は別に
愛されなくて良かった
嫌われる方が本望さ

あの子は頑固で
嫌いな奴がいない限り
意見を曲げようとも
しないじゃないか

じゃあ
本当はどうしたかったのか
って?

あの子に何かを
愛してやって
欲しかっただけさ

110:深河春淵◆wc:2020/02/05(水) 12:17

百を超える詩を書けましたね
おめでとう。
本当はもう少し早く御祝いを
したかったのですが、
遅くなって仕舞いました。

深河春淵と云う名は前々から
決めていた名なのです

とある文豪の旧居に置いてある
感想ノートにもそう書き残して
きましたもので

111:レミング◆yc:2020/02/10(月) 02:14

【うぐいすなく】

けきょけきょ
けきょけきょ

嗚呼
まだ上手く鳴けない

ほーっと伸ばして
けきょと続ける

たったそれだけのことなのに
何故か酷く難しい

今年はぼくが一番手
だから
一等張り切っているんだ

けきょけきょ
ほきょ
ほきょけきょ

あと少し
もうちょっと

ほーっほけきょ

あ、鳴けた

112:詠み人知らず:2020/02/18(火) 02:39

【うおこおりをいずる】

暗く冷たい薄氷を
抜け出したいと
一匹の魚が泳いでゆく

背びれを
ザラザラ削りながら
穴だらけの水面付近を
一心不乱に進んでいく

あと少しで
暖かい空に顔を出せる

あの白色に明るいところが
自分の目指していた空だ

そう心を躍らせて
疾く疾くひれを動かす

魚は知らない

薄い薄い氷のふちは
もっともっと鋭利である
ということ

すぱっと切れておろされて
あとには魚の半身だけが
氷の上で冷えていた

113:レミング◆yc:2020/02/21(金) 04:08

【つちのしょううるおいおこる】

しとしとと
さめざめと

雨は乙女の涙ように
ただただ土に落ちてゆく

土砂降ることなく
途切れることなく
大地を目がける

哀しき雫は土に落ちる
土が湿って黒くなる

土はそのうち虫の子を
育てる柔らかな寝床となる

水が空へ還っても
乙女はまだ泣き続ける

空の乙女は救われない
健気に優しく泣き続ける

114:レミング◆yc:2020/02/21(金) 04:25

隠している
潜めている

誰にも
見つけられたくないと

騙している
欺いている

誰にも
知られたくないと

笑っている
黙っている

誰にも
気付かれたくないと

分かっている
分かっていた

誰にも
信用されていないと

115:レミング◆yc:2020/02/22(土) 03:29

深夜の憂鬱
寝惚け眼で蛇口を捻る

グラスがやけに冷たくて
水分に浮腫んだ指先が
冷えて白くなっていく

切れかけの蛍光灯が
無機質に見下ろしていた

深夜の頭痛
眠気も何処かに
消えていた

年季の入ったソファに
投げ出す四肢
冷気が手足に絡み付く

ブランケットを
引き寄せて
テレビをつける

カラーバーと
劈く機械音
補色が混じり合い
目を逸らしつつ消した

深夜の現
珍しいことなど
何にも無い……

116:レミング◆yc:2020/02/27(木) 03:13

【かすみはじめてたなびく】

嗚呼ほらお前さん
見てごらんなさい

あの蒼黒い山は
美しい霞が纏わりついて
輪郭がぼやけて
見えるでしょう

私はあの中に
幽霊がいる気がして
ならないのです

ええ
笑うでしょう
きっと貴方も笑うでしょう

けれど考えてみてください

霞というのは近くに行くと
目には見えなくなるのです

極々小さな水滴と塵が
空中に漂っている
だけなのです

目の前にあるのに見えない
けれど確かにそこにある
そんなのまるきり
幽霊じゃあないですか

遠くから見らば白い雲
近くで見らば目に映らぬ

そんな霞の幻想の中
幽霊がいないと
どうして言えましょう

117:レミング◆yc:2020/02/29(土) 04:14

どんな物事にも
いつかは終わりというのがくる

幾度となく聞いた言葉
幾度となく唱えた言葉

それでも
いざ目の前に叩きつけられると
嫌でも思い知ることになる

心のどこかで
永遠を信じていた
心のどこかで
無限を夢見ていた

忘れられないのだ
人が
居場所が
思い出が

きっといつまでも
私の心を揺さぶるから

次はどうするべきか
終わったあとは何が残るのか
今はまだ考えたくない

もう少しだけ
呆然と感傷に浸ったままで

118:レミング◆yc:2020/03/02(月) 06:03

【そうもくめばえいずる】

未だ冷たく
固い地面から
黄緑色の芽が
顔を出した

とても小さく
名前すらわからない
雑草だった

けれどもこれは
冬を耐えた
長く凍える時を
過ごしたのだ

春に萌ゆ緑色たちは
ただそれだけで
価値がある

厳しい冬を
乗り越えたのは

それは
誇るべき偉業なのだ

119:レミング◆yc:2020/03/07(土) 08:40

【すごもりむしとをひらく】

ぼりぼり
長く伸びた爪で
頬を引っ掻く

爪を指との間に
皮膚片や頭垢が
詰まっている

ずっと前から
決めていた日が
来てしまった

黴の匂いのする
毛布を蹴り上げ
陽に照らされ昇る埃を
ぼんやりと見ている

薄暗いこの角部屋に
最初に入ったのは
いつだったか

最後に出たのは
いつだったか

昼間でも暗いこの部屋で
汚い毛布に包まっている
自分はまるで
来ない春を待つ芋虫だ

そんな醜い芋虫の蛹に
もう何度目の春が
巡ってきてしまった

いい加減
目覚めなくてはいけない

これ以上
惰眠を貪る
気にもならない

ふらつく足を
引き摺りながら
寝床から這い出る芋虫

異臭のするゴミ袋を
掻き分けて

ネジの外れた
ドアノブを握ってみる

少し回すと
がたがた鳴って
胃を握り潰されるような
緊張が走った

一度出たら
もう蛹には戻れない

暗く惨めな蛹には
戻れない

この先鳥に
食い殺されるとしても

この先太陽に
焼き尽くされるとしても

それでも

錆び付いて
耳障りな音と共に

蛹の殻は破られた


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