平穏な日常、当たり前の毎日の中には、見えない悪夢が隠れている・・・・・
その悪夢がどんなに小さな些細なものであったとしても、気づいたならば決して見逃すことは許されない・・・・・
平穏を崩されたくないのであれば・・・・・
永琳「・・・・・なるほど、そういうこと・・・・・」
(妹紅の行動の真意を理解すると、上記をボソッと呟く・・・・・
そして「もしかしたら、妖怪兎の誰かに化けている可能性もあるわ・・・・・もし見つけても、常に警戒していた方がいいかもね・・・・・」と、告げておく・・・・・)
妹紅
「一応、博麗の巫女にもこの事を伝えておくか。」
ここからどうなるかわからないため、妖怪はともかく、里の人間にまで被害が及ばないようにするため、幻想郷のルールを知らないと思われる来訪者に備えるよう、霊夢に警告するべく、先ずは博麗神社に向かって現状を伝えた上で、本格的な捜索を開始しようと考え、永琳の言う"妖怪兎"に化けている可能性もあると言うことを小耳に挟みながら神社へ向かって歩み始める。
【虹龍洞 最深部】
美鈴
「ぐぅぅぅぅ………う……あッ……ガハッ………!!」
青娥
「ふふふ……順調に力を蓄えている。もはや幻想郷の賢者でもコレを止めるのは容易なことでは無いでしょうね……それにしても……まさか貴女が協力してくれるだなんて意外でしたわ。」
肉体への多大な負担や、肉体の変異に伴う激痛により苦しみもがく美鈴の体を覆っていた鱗はその憎悪や殺意に呼応するようにして次第に黒く変色し始め、それに伴い美鈴の放つ気も邪悪なものへと歪んで行っている……
この時点で青娥の力をも凌駕しているのだが、それでも尚、美鈴は与えれば与えた分だけ際限無くその力を高めて行っており、それを見た青娥は思わず感激しながら後ろへ振り返る。
百々世
「気にすんな、龍珠はもう喰い飽きていたし、いい加減私も炭鉱に篭ってばかりなのも退屈に思っていたしな。お前に着いて行けば面白いもんを見せてくれるような気もするしな!」
振り返った青娥の視線の先には、金のツルハシとスコップを手にした鉛色に近い銀色長髪の髪をして、手足にリボンを幾つもの結んだ妖女が一人立っていた。彼女の名は"姫虫百々世"
古より生きる大百足の妖怪であり、その力は龍をも喰らうと言われているほどだ。
青娥が美鈴に与える龍珠……それらは全て、妖蟲の軍団を率いてこの炭坑の採掘を行っている百々世が用意したものであった。本来ならば外部の者が侵入した場合、盗掘者として排除する筈の彼女なのだが、青娥との交渉の結果、青娥との協力を締結させた……
青娥
「勿論、私に協力してくれた暁には退屈する事の無い世界の到来を約束するわ。」
青娥はもし、美鈴が完全に破壊と復讐の化身となった時や、あらゆる面で自分を凌駕する正真正銘の天才である神子と対決する事になった時に備えて、龍喰らいと呼ばれ、あの鬼の四天王にも匹敵する力を有した百々世をスカウトする事で、誰も寄り付かない隠れ家とした。
青娥の目論見は見事に成功し、妖怪の山の外部からはもちろん、虹龍洞も名目上封鎖状態にあり、山の妖怪達も近付こうとさえしない、完璧な隠れ家として機能しており、着実に青娥の策略が進んでいく……
時間の経過と共に……一歩一歩着実に青娥は力を付けて行っている……
輝夜「どうする?アンタは博麗の巫女に伝えて、私は妖怪兎たちを探すことにするの?それとも一緒に行動?」
(ここからは手分けしてそれぞれ霊夢に伝える役目と、妖怪兎を探す役目として別行動をするべきか、それとも一緒に行動をするのかを尋ねる・・・・・
輝夜からすれば、妹紅と行動を共にするのはあまり気が乗らない・・・・・
妹紅からしても、自分と一緒に行動するのは嫌だろう・・・・・)
妹紅
「そうだな、ここから別行動だ。」
何を拍子に意見が対立して再び不毛な戦いになるかわからないため、一緒に行動するのはリスクがあるため、ここからは別行動を取ると応える。
妹紅
「……しかし、皮肉なもんだな?永夜異変の時には肝試しだとか何だとか言って巫女や魔法使い、メイドを差し向けてきたが……ある意味、今回は立場が逆になったみたいだな。」
【虹龍洞 深層】
青娥と別れた百々世は手にした金色のツルハシで岩盤を砕き、金色のシャベルで砂利や瓦礫を掘り開け、迷路のような洞窟を作り、次々と龍珠を掘り出して行く。
何時の時代でも大蜈蚣は嫌われる。
何故なら、醜悪な姿と不快な毒を持ち、人間からも妖怪からも忌み嫌われ続け、妖怪になる前、ただの蜈蚣だった頃から害虫と呼ばれて何度も命の危険に晒され、人間達によって潰された仲間や兄弟姉妹の数は数えきれない。
長い年月の果てに力を得て妖怪となり、人間に近い姿になったものの、妖怪達には受け入れてもらえず、多数の手下(妖蟲)を率いても、心の中では何時も孤独があった。自分を理解しようとしてくれたのは一人だけ……
大蜈蚣は龍にも匹敵する強大な負の力を持つのだが、その源となっているのは、他者に受け入れられず、孤独なまま夜闇や地の底で生きることでその心に宿った深い孤独と憎悪だ。
正直に言うと、新しい刺激なんてものはどうだっていい。邪仙に味方をした本当の理由は、自分を散々蔑んできた者達に逆襲をするためだ。漸く舞い込んできたチャンスだ。市場の神にも、大天狗にも、管狐にも邪魔はさせない……!!
輝夜「今の内に言いたいだけ皮肉は言っておきなさい?今回の件が終わったらその舌引っこ抜きまくってやるわ」
(妹紅の言葉に対して、今の内に皮肉は言いたいだけ言っておくようにしなさいと忠告する・・・・・
どうやら、別行動をとることを選んだのは正解だったようだ・・・・・
こんな時に犬猿の仲な二人が一緒に行動しても、何も発展しないのは火を見るより明らかだ・・・・・)
妹紅
「それなら私はお前のその面の皮もろとも炎で何度でも焼いてやるよ!」
妹紅は舌を抜いてやると言う言葉を聞いて、地獄の処罰としての舌を抜くと言う事への皮肉として自分の炎で焼いてやると応え、背中から二枚の炎翼を生やして地を蹴り、そのまま博麗神社へ向かって飛んで行く……
輝夜「あらあら、恐ろしいこと・・・・・」
(そう言うと輝夜は「さて、あの子達を探さないとね・・・・・」と、真剣になる・・・・・
妹紅の態度が気に入らずに意地で認めなかったものの、自分が寝ている間に起きてしまった出来事であるのは変わりなく、責任を感じているのは言うまでもない・・・・・
こうして妖怪兎たちを探すことが今自分に出来る精一杯のことだということも自覚している・・・・・)
【博麗神社 境内】
妹紅
「……到着っと。」
霊夢
「……なに?見ての通り私は忙しいの。厄介事も面倒事も御断りよ。」
妹紅
「おいおい、それが博麗の巫女の言うことかよ……
もう気付いているんだろ?私がここに来ると言うことも、その理由も。
それに私が見るにそんなに忙しくないように見えるぞ。」
霊夢
「………うっさい。アンタらの近くで起きた問題ならアンタらで片付けなさいよ、博麗の巫女は便利屋じゃないの。何をしても死なないアンタらに解決できない問題なんてそうそうないでしょ?」
神社に到着した妹紅はさっそく縁側でお茶を飲んでいる霊夢を見て、異変解決に協力を求めるものの、今回はあまり乗り気じゃないようで、異変解決に対してかなり消極的な姿勢を見せている。
【一方その頃・・・・・】
輝夜「・・・・・にしても、どこへ行ったのかしらねぇ・・・・・」
(まずは妖怪兎たちなら自ら赴くであろう場所は結構探したものの、見つからない・・・・・
誰かに連れ去られた、というのを前提で探すにしても、幻想郷のどこに連れて行ったのか、そもそも幻想郷の中に留まっているのかすらも不明な現状、どこを探せばいいのやら、と言った感じである・・・・・)
典
「もしもし、そこのお姫様。
何かをお探しのようですね?」
いつの間にか姿を現した白い服に身を包み、金髪狐耳の少女が右手で狐のジェスチャーを作って"こーん"と言う擬音が聞こえてきそうな佇まいでニコニコと微笑みながら輝夜に声をかけてみる。
輝夜「・・・・・えぇ、ちょっとね・・・・・」
(突然現れた謎の人物に、何を探しているのかは言わずに、敢えてぼかした感じで言う・・・・・
もしかしたら、この人物が今回の件に関わっているかもしれない・・・・・
そんな疑いが脳裏をよぎる・・・・・)
典
「それなら私もお手伝い致しましょうか?
恥ずかしながら、私はこの竹林に迷い込んでしまいまして。
探し物が見付かった暁には竹林の出口まで案内して頂ければそれでけっこうですよ。」
妖狐と思われる狐女は狐のジェスチャーをしながら、輝夜の探し物への手助けをすると言う。
見た目からして、狐が妖獣になったからなのか、空を飛ぶことが出来ずに陸路で来て迷ってしまったのか、お礼として竹林の出口まで案内してくれればそれでいいと言う。
輝夜「まぁ、そういうことなら・・・・・」
(この竹林で迷ってしまう、ということは竹林の構造を知っている者でなければザラにあることだ・・・・・
そう思うと、相手は本当に迷ってしまって困っている異変とは無関係の人物と見てまず間違いないと思われる・・・・・
そういうことならと、相手の竹林からの脱出を協力することにする・・・・・)
典
「ありがとうございます♪
ちなみに、どのようなモノを探しているのでしょうか?」
両手を後ろ腰で組み、竹林からの脱出のための案内を引き受けてくれた輝夜へ感謝しながら、肝心の探しモノは何かと聞いてみる。
【紅魔館 通路】
妖精メイドA
「あーあ、メイド長がやられたせいで後片付けは全部私達がやらないといけなくなっただなんてとんだ厄日だわ……」
咲夜達が倒れた事で彼女らの血の掃除を自分達が行わざるを得ない状態になってしまった事に対して愚痴を呟いている妖精メイドと、彼女の仲間の妖精メイド二人が一緒に血痕を拭き取ったり、戦いの影響で壊されてしまった建物の瓦礫を片付けている。
妖精メイドB
「愚痴ったってしょうがないじゃん、我慢してやるよ。
……そう言えば、小悪魔さんの遺体ってどこに運ばれたんだっけ?」
嫌々ながら掃除をしていた妖精メイド達だったが、その内の一人が違和感を感じる……それは咲夜と一緒に氷柱で体を貫かれた小悪魔の遺体が何処にも無いと言うものだ……彼女のいた場所には大量の血痕が残ってはいるものの、その姿はまるで突然消滅したかのように忽然と消えてしまっている。
妖精メイドC
「あれ?そう言われてみれば不思議……メイド長が運ばれる時にはもう無かったような……?」
???
『……………クスッ。』
意図せずして核心に迫ろうとしていた妖精メイド達の背後に一つの影が現れ、小さく笑う………
《ザアァァァァァァァァァァァ……》
それから数秒後……小悪魔と同じように、三人の妖精メイド達の姿も消え、降り続ける雨の音だけが三人のいた通路の静寂を破って鳴り続けている……四人は果たして何処へ消えてしまったのか……それはまだ……誰も知るよしも無い……
輝夜「それがねぇ・・・・・妖怪兎っていうのを探しているのよ、兎と言っても、そのまんま兎の見た目ってわけじゃなくて、小さい女の子に兎の耳が生えているって感じね・・・・・しかも複数人いるのよ・・・・・」
(捜索する側が一人増えたところであまり変わらないだろうとは思いつつも、一応容姿の情報も含めて説明する・・・・・
しかもモノではなく者であるため、ずっとそこに留まるのではなく、今もリアルタイムで移動している可能性すらあり、どこを探せばいいのかもわからないということを示唆する・・・・・)
レミリア「貴女たちー、そろそろ休憩してお茶でも・・・・・は・・・・・?」
(くよくよしていても仕方が無い、咲夜が帰ってくるまでは妖精メイド達のこともしっかり守らなければと紅魔館の主人としての自覚を新たに持ち、結果的にではあるものの今回の一件でほんの少し成長したレミリアは、妖精メイドたちにお茶を淹れたのでここらで少し休憩でもどうかと呼びに向かうと、そこにはまるで突然姿を消してしまったかのように誰もいない・・・・・
霊夢は、唖然と立ち尽くしてただただ静寂の中に雨音だけが響きわたる通路を見つめる・・・・・)
典
「ふむふむ、だいたいの特徴はわかりました。
では、このまま別行動をして迷ってしまっては本末転倒ですので、貴方のと一緒に行動して探そうと思います。」
生き物を探すのは手間がかかるものの、この竹林から出られなければ意味はない。輝夜と一緒に行動しつつ、妖怪兎を探すことにしようと提案してみる。
妖精メイドD
「新しいモップと水を持ってきたよ……って、あれ?
三人ともいない?」
四人の妖精メイドで作業しており、その内の一人が新しいモップと水入りバケツを持って戻ってきたものの、三人の姿が消え、代わりに呆然としている主人しかいない事に困惑してしまう。
もっとも、妖精は気紛れで、仕事にすぐに飽きてどこかへ行ってしまうのは珍しくはなく、統括していたメイド長も美鈴もいなくなれば必然的に規則も緩くなってしまう事から、この妖精メイドもすぐにそう考え、呆れてしまう。
レミリア「・・・・・どうやら、貴女は難を逃れたようね・・・・・」
(まだ事態を理解出来ていない妖精メイドに対し、レミリアは難を逃れたようだと告げる・・・・・
そして「おかしいと思わない?この状況・・・・・」と、ほかの仲間達がどこかへ行ってしまっただけだと考えている妖精メイドに声をかける・・・・・)
妖精メイドD
「はぁ〜〜〜〜……
どうせ何時もの事ですよ、アイツら、いっつもサボりやがるんですよ。どーせ今回も同じですわよ。放っとけば沸いてきやがりますです。」
あまり慣れない敬語を使おうとしているからか、ちぐはぐな言葉になってしまっているものの、呆れた様子の妖精メイドは、三人の失踪についても、特に深く考えることはせず、サボって何処かに行っただけだと応える。
レミリア「・・・・・本当にそうだと思っているの・・・・・?ついこの前だってあんなことがあったんだから、少しは危機感を持ったらどうなの・・・・・?」
(レミリアは、咲夜と小悪魔が襲撃されたあの事件からまだそんなに経っていないのに、突然妖精メイドたちが消えてしまったことをいつものことだで片付けてしまう相手に対し、叱責する・・・・・)
妖精メイド
「………???」
何か不審な起きるのかと不思議そうに首を傾げる。
自然の化身であり、ある意味では蓬莱の人と同じように死が終わりや個の消滅を意味しない妖精としての性質からか、危機管理能力に欠けていて、先の事がわからず、レミリアの言葉の意味がわからずにいる。
レミリア「・・・・・妖精にこんなこと言っても無意味か・・・・・」
(レミリアは、妖精という種族の性質上、こんなことを言っても無意味かと呟く・・・・・
そして「言っておくけど、いくら妖精だからって、今回ばかりは気を抜かない方がいいわよ?」と、未だに正体がつかめない敵対者に警戒するように忠告する・・・・・)
妖精メイドD
「……?
わかりましたです。」
初期の三月精のように例え死亡してもまた生き返ればいい。
何か困った事があったら一回休み(死亡)すればいい。
そう言う死生観を持つ者が多く、悪戯の内容も相手の命を奪うようなものが多い妖精と言う種族的性質から命への危機配慮の低い妖精メイドはやはり不思議そうにしたまま、返事をする。
レミリア《・・・・・どうやら、全面戦争になりそうね・・・・・》
(得体の知れない敵側勢力・・・・・
いつ、どんなことをされるかわからないからか、相対すれば全面戦争に発展することもあるだろうということを、レミリアは覚悟する・・・・・)
【迷いの竹林】
典
「うーん、なかなか見付からないですね〜?」
妖兎を探す典と輝夜の二人はあれから小一時間も竹林の中を探し回っているものの、なかなか妖怪兎達の姿が見えず、典は思わずその見付からない事を口にする。
輝夜「あまり個人的なことにいつまでも他人を縛っていられないし、そろそろ出口を教えるわよ?」
(運悪く竹林に迷い込んでしまった相手を、いつまでも個人的なことに巻き込み続けるのも悪いと思い、輝夜はそろそろ出口を教えると言う・・・・・
それに輝夜も、そろそろ別の場所を探そうと思い始めていた・・・・・)
典
「よいのですか?
まだ誰も見つけられていませんよ?」
典としてはこのまま竹林から脱出してもいいのだが、輝夜の探す妖怪兎が一匹も見付かっていない事を気にしていないのかと問いかける。
【虹龍洞 最深部】
青娥
「フフフ……一旦はこれでいいでしょう。」
日の当たらぬ地下深く……限りなく地底世界に近い虹龍洞の最奥では大量の龍珠を喰らい続け、取り込み続けた結果、衣服や髪が黒に染まり、内包する莫大な闘気と魔力による影響からか、俯いたまま身体の変異に伴う激痛に耐え続けている美鈴を、元凶たる青娥とその協力者の百々世が見ている。
百々世
「いいのか?まだまだ龍珠は大量にあるし、もっと喰わせてからの方がいいんじゃないか?」
青娥
「一度に強化し過ぎて自壊のリスクを背負うよりも……確実にその力に馴染ませるべきだと私は考えているわ、それに……どれだけの力を持っているのか、どこまで強化する事が出来たのかを知っておきたい……」
青娥は不敵に微笑みながら、身体の強制的かつ抑えきれないレベルの変異を伴う程に強大な力を得た美鈴の今の実力がどのぐらいなのかを知るべく、次の策を打とうとしている。
百々世は更に強化してからの方が良いと考えているが、青娥にはまた別の狙いがある……
百々世
「へぇ?それじゃあ、早速俺が戦ってやるか!
俺以外にコイツのパワーに耐えられる奴はいないだろうしな!!」
青娥
「いえ、今ここで貴方達がぶつかって力を削り合うのは良くない……それに格好の披露先もある事だしね?」
青娥は再びその悪意の矛先を格好の披露先……"紅魔館"へ向ける……
青娥には善悪に対する拘りは無い。
自分のやりたい事が人道的、道徳的に避難されるものであっても、自分がやりたいと思えば躊躇い無くそれを行えるし、善となる行いも躊躇無く出来る。
今回の神に等しい力を持った仙人、"神仙"になると言う目的も、死神(地獄からの遣い)に命を狙われ続け、それを撃退するために鍛え続けなければならない日常に嫌気が差したからであり、明確に幻想郷を滅ぼしてやろうと言う意思はない。あるとすれば、自分の力を見て驚き、畏れる様子を見たいと言うぐらいのものか。
だが、それにより青娥の狙いや動きが読みにくくなるという厄介な点でもある……
輝夜「えぇ、探すにしてもあの子達だってずっと同じ場所にとどまるわけもないから、きっと別の場所にいるんだと思うわ、個人的な問題に付き合わせちゃって悪かったわね・・・・・」
(輝夜はそう言うと、相手の手を引き「この竹林は本当に仕組みを熟知しているのはごくわずかだから、私の手を離しちゃダメよ?また迷うことになるから・・・・・」と、相手を出口へと誘導し始める・・・・・
今正に、再び青娥の毒牙が別の場所に向けられそうになっているということも知らずに・・・・・)
典
「……わかりました、それもそうですね。
ならその言葉に甘えるとします。」
典は自分の手を引く輝夜を見て、少し黙り込んだ後、特に拒む理由も無いため大人しく手を引かれるがままに竹林から出ることを受け入れる。
輝夜「にしても貴女も運がよかったわねぇ、私と偶然会わなかったら抜け出せなくなっていたかもしれないわよ?」
(相手の手を引きながら、自分と遭遇できたことは運がよかったと語る・・・・・
この竹林は一度足を踏み入れてしまえば、仕組みを理解していない者じゃない限り、抜け出すことはほぼ不可能・・・・・
生半可な気持ちで足を踏み入れていい場所ではないのだ・・・・・)
典
「本当に助かりましたよ。
実は旧知の友と待ち合わせをしていたのですが、話し終わった後、戻ろうとした最中、迷ってしまいまして。」
典は輝夜に手を引かれるがまま、普段は迷いの竹林から離れた妖怪の山で大天狗の飯綱丸の部下として活動していたのだが、今回ばかりは"旧知の友"との話があったため、離れたこの竹林にまで訪れたのだと応える。
輝夜「貴女の友達も随分と悪い場所を選んだものね・・・・・」
(そう言うと「ん?でも待って?ってことは、貴方の友達もこの竹林にまだいる可能性があるってこと・・・・・?」と、相手の方を見て問いかける・・・・・
もしそうだとしたら、この竹林の中を探さなければならない・・・・・)
典
「うーん、彼女なら一応は空間移動が使えるので自力で脱出している可能性が高いですね。」
少し考えた後、自分の友人は空間移動が使えるため、いざとなれば自力で脱出する事が出来ると応えるが……
空間移動と言うのは言うなれば瞬間移動の上位互換とも言えるもので、瞬間移動よりも遠くへ瞬時に移動することが出来ると言う性質上、誰もが使えるようなものではなく、強大な力を持った一部の限られた者しか使えない筈
そんな強い力を持った存在が何故、竹林の中であまり大きな力も無いと思われる管狐と何の話をしていたのかは謎となっている……
《まさかとは思うけれど、一応念の為に聞いておいた方がよさそうね・・・・・》
輝夜「ねぇ、一つ聞きたいことがあるのだけれども、いいかしら・・・・・?」
(もしかしたら今回の一件に何か関係しているかもしれないと思えば、輝夜は一つ聞きたいことがあると口を開く・・・・・
こんな竹林で話すということは、恐らくは他人には聞かれたくない内容であろうということは想像がつく・・・・・
となれば、それがどんな話かによって、今回の一件は大きく進展する可能性がある・・・・・)
典
「はい、いいですよ。」
ニコニコと上機嫌に微笑みながら、輝夜からの質問に対しても応えようと言う姿勢が見えるのだが、話し合いの内容について応えるかどうかはわからない……
輝夜「貴女の友達、何を話すために貴女を竹林にまで呼び出したの?」
(迷宮の如く入り乱れた竹林にまでわざわざ呼び出して、話が終われば友達をそのまま置き去りにするあたり、何を考えているのかがまったくわからない・・・・・
輝夜の中で相手の友達に対する疑いが強まってゆく・・・・・)
典
「……それは"秘密"ですよ。」
典は自分の口許に指を当てて、子供に静かにするように伝えるようなジェスチャーをして、自分と友人の話しについて教えることは出来ないと伝える。
削除
733:始まりし終焉◆gI:2021/10/19(火) 20:56 輝夜「・・・・・そうね、ちょっと他人の話に踏み込みすぎたわ、ごめんなさいね?」
(未だに怪しいという疑いは晴れないものの、その友達とやらが今回の件に関わっているという確証もないことから、他人の話に足を踏み入れすぎたと感じる・・・・・
プライバシーというものを考えるべきだったか・・・・・)
典
「おや、随分と引くのが速いですね?
まあ、人(妖)には知られたくないことの一つや二つがあるのは当然の事ですからね、賢明な判断です。」
典は本当に語りたくない事なのか、それともただ誤魔化す事が目的で応えただけなのかわからない笑みを浮かべながら、追及しない輝夜の判断を賢明な判断だと褒める。
典
「そう言えば、出口まであとどのくらいかかりますか?」
輝夜「相手が話したくないと言っているのに無理に突き止める権利なんてないもの・・・・・」
(そう言うと、出口まで聞かれたので「そろそろ出口よ、今度その友達にあったら、もっと抜け出すのに簡単な場所を選ぶように言っておきなさいな」と、また今回のように迷わないように友達ならば予め言うべきことは言っておくようにと忠告する・・・・・)
典
「噂とは打って変わって優しいお方で安心しました。
そうですね、以降は気を付けます。」
輝夜の抱く疑念や疑惑とは裏腹に、典は終始ニコニコと微笑みながら、言われた通り次からは迷いの竹林では無い別の場所で話すようにすると応える。
【永遠亭前】
妹紅
「輝夜の奴、まだ帰って来ないのか……
いったい何処まで探しに行ったんだ?」
霊夢への報告を終えて永遠亭近くにまで戻ってきた妹紅であったものの、まだ輝夜が戻ってきていない事を知ると、永遠亭出入り口の小さな門の柱に背を預け、両腕を組ながら輝夜が戻ってくるのを待ち始める。
また、こうして待つ事にしたもう一つの理由があり、それは迷いの竹林で生まれ育った兎も多い事から、何か用事があれば日没までには永遠亭まで戻ってくる筈であり、これで戻ってこないようであれば本当に外部からの攻撃を受けたのだと確信を持てるからだ。
輝夜「・・・・・さて、いよいよ出口ね」
(そう言うと、とうとう出口までたどり着く・・・・・
そろそろ戻らないといけない時間帯でもあるからか、丁度相手を竹林から連れ出せてよかった、といったところか・・・・・
これといって収穫できたといるような情報の収穫もできなかったが・・・・・)
典
「うん、"ちょうどいいタイミング"ですね。」
竹林から脱出すると、スルリと輝夜の手から典の手が抜け、輝夜の前に輝く夜の月へ向かって少し飛びながら、"ちょうどいいタイミング"だと小さく呟くと、輝夜へ振り返り言葉を続ける。
典
「ここまで案内してくれたお礼に一つだけヒントをあげます。
災いの種は一つだけとは限りませんよ?」
典は夜の月を背に、ニコニコと変わらない微笑みを浮かべたまま、災いの種は一つだけではないと言うことを輝夜へ伝えると、二人の側面から風が吹き込み、その風がおさまった時にはもう典の姿は跡形もなく消えてしまう……
まるで狐に化かされたかのような不思議な感覚のみを残して、典は自分の素性や名前すらもまともに話すこと無くその痕跡を消す……
輝夜「・・・・・やっぱり聞き出しておくべきだったかしら・・・・・」
(意味深な言葉を残して消えた相手に、不信感がより一層強まる・・・・・
今回の一件との関わりがあるかどうかは断言こそできないが、何かしら知っている可能性が高いと見てもいいだろう・・・・・
今はとりあえず、まだ続くであろう厄災に向けて備えるしかできない・・・・・)