幻想郷の守護者『博麗霊夢』
これはそんな彼女が博麗の巫女となり、数多の異変を解決する以前に、始めて訪れた邪悪な妖との戦いの物語。
>>1 世界観と注意
>>2 異変キャラについて
犲狼
「ガハハハハッ!違うなァ、鬱陶しい奴らがいたら普通叩き潰すだろ?」
黒白の魔女
「ああ、その通りだな、それじゃあとっとと退場してくれるとありがたい……な!!」
犲狼の放った強烈な一撃に対し、魔理沙は上空へ飛ぶことで逃れつつ、左手で自分の右手首を掴み、無数の黄色の光弾を放ち、牽制として犲狼に攻撃を加えることで犲狼を守るフォースシールドを少しでも削ろうと反撃し始める。
・・・・・アンタ、そのまま攻撃を続けられる・・・・・?
(霊夢は何か策を思いついたのか、相手にそのまま攻撃は続けられるかと聞く・・・・・
しかし相手も豺狼に一度負けた状態、ポーションの効き目にも限界がある、このまま攻撃を続けることは力の消耗に繋がる・・・・・
だが、それをわかった上の策であるのもまた事実・・・・・)
魔理沙
「……!お前も何か策があるのか?いいぞ、その策に乗ってやるよ!」
魔理沙は大技を一つ放つための力を全て光弾に変えて放ち、更にわざと犲狼の足元に光弾を当てて爆破させ、足場を崩すと同時に土誇りで犲狼視界と動きを制限させていく。
犲狼はその間、苛立ちのこもった唸り声をあげるが、視界も足場も悪い状況では自慢のパワーも精度が落ち、放たれた魔力波も簡単に避けれらるものになっている。
これは賭けよ・・・・・失敗する確率も大きい、けどアイツが今まで卑怯な手を使ってきたように、こちら側も卑怯な手を使わせてもらうわ・・・・・
グォオッ!!!!!
(霊夢は霊力を集中させ、それを魔理沙が放っているように光弾に変えて豺狼がいると思われる場所めがけて、多くではなく、数こそ少ないものの連続で撃ち始めるが、これだと効果があったとしても勝ち目は無いのは目に見えている・・・・・
一体何をするつもりなのだろうか・・・・・)
犲狼
「ガアァァァァァッ!!邪魔だァ!!!」
犲狼は魔理沙が巻き上げた土埃を切り裂くようにして右腕を勢い良く振るいながら、激情に任せて怒鳴り声をあげて残る土埃をまとめて吹き飛ばす。
犲狼
「ククク、この俺様にそんなチンケな技が通用するかぁ!!!」
《ゴオッ》
そんな中、霊夢の放った質を重視した光弾が犲狼に次々と着弾していくものの、多少揺らいでいるとは言え、犲狼を守るフォースシールドは依然として強固であり、これだけではまともなダメージにはなっていない。
【雑単の方でもちょくちょく文を投稿していると言うwww】
引っかかったわね!!!!!
ドォオオッ!!!!!
(霊夢はこの時を待っていたと言わんばかりに、豺狼が土埃をまとめて消し飛ばしてくれたおかげで、豺狼の正確な位置がわかるようになり、霊夢は特大の霊力弾を豺狼が今光弾に気を取られている隙を狙って、咄嗟に防御に回ることは難しいであろう背後から豺狼の体を貫く勢いで放つ・・・・・)
【すみません!すぐ行きます!】
犲狼
「………!!?」
黒白の魔女
「やったか!?」
魔理沙が巻き上げていた土埃によって二人の位置を把握できずに犲狼もまた攻撃の精度が下がっていた中、土埃を払った瞬間に背後に回り込んだ霊夢の放った光弾が炸裂すると凄まじい轟音と衝撃、そして青白い電撃が辺りを走り回る。
その様子を見た魔理沙は遂に倒したのかと思い、電撃による閃光で犲狼の姿は見えないものの、倒せたのかと言う。
気を抜かないで!奴はこの程度じゃ簡単にはくたばらない・・・・・!奴は隙を突いてくる・・・・・!
(霊夢は豺狼この程度で倒せるとは限らないことを考え、相手に気を抜かないようにと忠告をする・・・・・
一瞬でも気を抜けば、豺狼はその瞬間を突いて攻撃してくる・・・・・
もし今、どちらか一人が欠ければ勝機は無くなる・・・・・)
犲狼
「ハハハッ!そう言うことだ!!」
魔理沙
「!?
……くッ!!」
完全に不意を突いて霊夢の妖怪に対して絶大な効果を持った霊力の塊が直撃したことで倒したかと思いきや、今の犲狼が纏っているのは魔力や妖力だけでなく、本来ならば妖の天敵である筈の霊力も込められていた。
そのため、霊夢の一撃も大幅にその威力を軽減されてしまっており、青白い電撃を突き破るようにして現れた犲狼が箒にのって上空を飛ぶ魔理沙に向かって飛び掛かる。
辛くも魔理沙は小技を放つための力を全て防御壁の展開に回すことで防ぐことに成功するが、即席の防御では強度が低く、無数の亀裂が生じてしまう……
この卑怯者!!!!!アンタの狙いはこの私でしょうが!!!!!
(そう言うと、今度は霊夢の方から豺狼めがけて飛び掛ってくる・・・・・
霊夢の長所であり、短所でもある、誰かが危機にさらされるとカッとなって考えるよりも先に勝手に体が動いてしまうのが、吉と出るか凶と出るか・・・・・)
犲狼
「ククク、馬鹿め!まんまと来やがって!このまま始末してや……」
魔理沙
「させるか……よ!!!」
犲狼は先程の里郊外の集落を襲った時に霊夢の性格については大方知っていた。だからこそ、敢えて魔理沙を狙っており、それに釣られて此方に向かって来る霊夢を見て、回避困難な速度で魔力と霊力、妖力を混合させた破壊エネルギーの塊をぶつけようとする……
だが、それに気付いた魔理沙は即座に防御魔法陣を拘束魔法に切り替え、渾身の力を込めて犲狼の動きを止め、霊夢が攻撃するためのチャンスを作ろうとする。
感謝するわ・・・・・!できる限りそのまま頼むわよ・・・・・!
(霊夢は必死に豺狼の動きを止めてくれる魔理沙に上記を叫ぶと、そのまま豺狼の心臓部めがけてさっき豺狼に背後から不意打ちを仕掛けたのと同じように、光弾を放つ・・・・・
ポーションによる回復の限界も近い、早急にこの戦いには終止符を打たなければ、未来はない・・・・・)
犲狼
「ぐ……おォォォ……!!」
魔理沙
「今だ!畳み掛けろ!!!」
霊夢の放った光弾が犲狼に激突すると、身に纏ったフォースシールドによってその威力を軽減されているもののの、彼の巨体を弾き飛ばし、その体勢を崩すことに成功すると、魔理沙はその隙を見逃さずに両手に魔力を宿して反撃の準備を整えながら霊夢にも畳み掛けるように言う。
わかったわ・・・・・!!!!!
(光弾を心臓部へと、真近で更に力を込めて放つ・・・・・
豺狼が防御や抵抗はできないほどにスピードと威力を増した光弾が、豺狼の胸へと激突し、そのまま押し上げるようにして体を貫こうとする・・・・・)
犲狼
「ぐ……おォ……!!餌ごとき……が……調子に乗るな……よ……!!」
犲狼は霊夢の放つ光弾が直撃し、みるみる内にフォースシールドが削られていく中、魔理沙の拘束魔法がかかっているにも関わらず、強引に腕を動かし、胸部を貫こうとしている霊夢の頭を掴んで握り潰そうとする。
更に、残ったフォースシールドの大半を胸部に集めているため、その硬度は非常に高くなっており、これが犲狼が反撃するための時間稼ぎに使われている。
っ・・・!!!!!ぁぁあああああぁああああああああぁぁぁあああぁあああぁぁぁぁ・・・・・!!!!!
(頭を掴まれ、いつグチャグチャに握り潰されてもおかしくはない状況になり、霊夢は聞くに耐えない悲惨な叫び声を上げる・・・・・
博麗の巫女と言えど人間、という覆ることは無い種族という壁が、霊夢を苦しめる・・・・・
今ここでやられるわけにはいかない、しかし抵抗すらまともにできない、にっちもさっちといかない絶望的な状況とはまさにこのことか・・・・・)
魔理沙
「………ッ!!」
犲狼に頭を掴まれ、握り潰されようとしているのを見るが、これで拘束魔法を解いてしまえばその瞬間に二人とも切り刻まれしまうだろう事が推測できたため、魔理沙は霊夢を助けには向かえない……
霊夢の光弾は依然としてフォースシールドが集中されている腹部には届いておらず、逆に犲狼は更に力を込めてギリギリと万力のようにして霊夢の頭を握り潰そうとする……
あ・・・・・ぁ・・・・・
(視界がぼやけ、意識が遠のき始める・・・・・
ここまでしてもまだ勝てないというのか・・・・・ここで諦めるわけにはいかないのはわかっているが、もう手足に力が入らない・・・・・
痛みも段々感じなくなってきた・・・・・)
【数刻前…】
紫
「………蔵蜜、そこにいるかしら?」
犲狼との死闘が始まる前、丁度霊夢が犲狼を退治するためにスキマを通ってから直ぐに紫は死地へ赴く霊夢の後ろ姿を見ながらスキマを閉じた時、紫は視線を動かさないまま、蔵蜜がまだいるかどうかを問いかける。
あぁ、いるが・・・・・
(そう言うと、蔵蜜は紫の前に姿を現す・・・・・
そして「あの巫女、私が思うに、先代にどんどん近づいていってる気がする・・・・・」と、蔵蜜には霊夢と先代巫女の姿が重なって見え始める・・・・・
これは、蔵蜜なりの忠告だ、紫はこのまま霊夢が死んでしまってもいいのかどうかという忠告だ・・・・・)
紫
「……貴方はまだ知らないとは思うのだけれど、初代の巫女と瓜二つの姿もしているわ。先代の巫女と初代の巫女、この二つの性質を兼ね備えているのかもしれないわね。」
紫は記憶の奥底に眠る初代と、かつての吸血鬼異変の時に命を落とした先代の巫女の二つに似ているのだと静かに語る……
確かに彼の言うとおり、現代の巫女はその才能だけじゃない……かつての博麗の巫女の才の化身なのかもしれない、ならば彼女が生まれた理由、存在する理由はもしや………
紫
「だからこそ、こうして目をかけたくなるのかしら……ね?」
紫は右手の指先に部分的に妖怪でも持てるように紫の妖力が纏われたお祓い棒をスキマから取り出すと、それを手に懐かしげに眺め、かつてこれを手に数多の妖怪を屠った初代の巫女の姿を想起しながら呟く。
だったらもっと気にかけたらどうだ?あのままじゃあいつ、本当に早死にするぞ・・・・・?
(紫はそこまで似ていると思っていながら、気にもとめないようにただただ見守るようにしている辺り、言っていることとやっていることが矛盾しているように感じる・・・・・
このままじゃ霊夢も同じように早死にする運命を辿るという嫌な予感がする・・・・・)
紫
「……ここまで言えば私が何を考えているのか……わかるでしょう?」
紫は微かに微笑みながら霊夢に助け船を出すことを求めている蔵蜜に対して、お祓い棒を手にしたまま自分が何を考えているのかもうわかっただろうと問いかける。
・・・・・やれやれ、付き合いが長いっていうのも考えものだな・・・・・
(言葉を交わさずとも、大体のことがわかるほどに付き合いが長いのも、時と場合には考えものだと蔵蜜は呟く・・・・・
そして「お前はいつの間にか、昔と変わってしまったな・・・・・博麗の巫女は、いつの世代でも大体共通して似通った部分があるというのに・・・・・」と、紫と旧知の仲であるからか呟いて)
紫
「あら、言葉が無くとも通じ合えるだなんて素敵なことだとは思わない?それに、私は変わってなんていないわ、今も昔も幻想郷の存続を何よりも重視している事に変わりは無いのだから……」
紫は相も変わらずに微笑んだまま、今も昔も幻想郷の存続を何よりも重視していると言う根幹部分に変わりは無いと答えると、紫が持っていたお祓い棒をゆっくりと蔵蜜に向けて差し出す。
妖怪が触れても大丈夫なように紫がお祓い棒の持ち手に一時的に妖力を纏わせておくことで妖怪でも手に出きるようにしてある。
紫
「あのまま戦えば今の巫女はこれまでの巫女と同じように喰われてしまうでしょうね……だからこそ、貴方には彼女"達"を助けに行って欲しいの。」
紫が蔵蜜に頼みたいこと……それは霊夢達の補助であり、犲狼討伐のための手助けだ。
紫の言葉の中には、霊夢の他にも共に戦うであろう者(魔理沙)の姿も含まれており、更に霊夢達の力だけでは犲狼を倒す事が困難である事もわかっている。
ならば……蔵蜜が霊夢達に助力し、博麗の巫女の宝具の一つであるこのお祓い棒(大幤)を渡すことで、新たなる攻撃手段……それも紫が見て犲狼に対して最も効果を発揮するであろうと先々まで見据えている。
・・・・・どうやら、私も間違ってたみたいだな・・・・・お前は確かに変わっていないよ、何一つとしてな・・・・・
(そう言うと、蔵蜜はお祓い棒を受け取り、そして「にしても、私にわざわざ行かせるぐらいなら、最初からあの巫女に渡しておけばいいものを・・・・・お前はそういうところも変わらないんだな・・・・・」と、このお祓い棒を最初から渡しておけば、豺狼との戦いは霊夢達がもう少し有利になっていたのではないかとも思えてくる・・・・・)
紫
「ええ、宜しく頼むわ。貴方の力が必ず必要になるでしょうから……」
紫は指先を右手の横を横へゆっくりと振ると、まるで空間を引き裂いているかのように空中にスキマが開かれ、蔵蜜も犲狼の元へ行けるようにする。
本当ならば自分が助けに向かいたいのだが、犲狼は先述の通り、良くも悪くも幻想郷維持のためのシステムの一つのようになっているため、不用意に自分が手を出せば逆に幻想郷の寿命を削ることになってしまうのだとわかっている。
紫
「それは御札や針と違ってテストをしていないものだったから、使える確証が無かったのよ。現にこれまでの巫女の中でもこれを使える者は三人しか居なかったのだから……」
この大幤はあくまでも保険のようなもの、万が一にも霊夢が使えなかった場合の切り札のようなものだ。例え自分の読みが外れ、大幤の力を満足に使えなかった時でも蔵蜜の保護の下でなら練習も行えるだろうと考え、蔵蜜に託している。
・・・・・そうか・・・・・わかった・・・・・
(紫の・・・・・いや、お互いをよく知った旧知の親友の言葉を聞けば、わかったと呟き、スキマが開かれ外へ繋がっている出口まで歩を進め、紫に背を向ける・・・・・
そして「・・・・・なぁ、紫・・・・・」と、今正に戦地へ赴くという時に、今度はこちらから口を開いて、背を向けたまま何かを言おうとする・・・・・)
紫
「あら、どうしたのかしら?」
これで犲狼を打ち倒す事が出来る筈だ、そう考えながら蔵蜜を見送る中、犲狼と霊夢達のいる場所へ繋がる開かれたスキマの中に入って行く直前で足を止め、こちらに何かを話そうとしている蔵蜜の言葉を聞いてどうしたのかと聞いてみる。
・・・・・その・・・・・あぁ、何だか長い付き合いであるお前にこれを言うのが、ちょっと恥ずかしいし気が引けるな・・・・・
(そう言うと「・・・・・もし、私が死んだら・・・・・骨を拾ってもらいたい・・・・・いや、もしかしたら骨なんて一欠片も、粉塵すら残らないかもしれない・・・・・でもお願いだ、もし私が死んだ時は・・・・・私のことを、忘れないでもらいたいんだ・・・・・私は、誰かに忘れ去られて、本当に死んでしまうのが怖いんだよ・・・・・紫・・・・・」と、背を向けたまま、少しだけ顔を紫の方に振り返るようにして、縁起でもないことを言い・・・・・)
紫
「………?
ええ、わかったわ……
先代の霊夢に似た事を言うのね……?」
犲狼の実力についてはまだ未知数ではあるものの、その元々のスペックから彼ほどの実力者であればさほど危険を伴わずに勝てるだろうと考えていることもあり、その言葉の真意について知らずに不思議そうに首を傾げながらも忘れないで欲しいと言うその言葉を受け入れる……
私もまた、どこか似通った部分があるのかもしれないな・・・・・
(上記を述べると、そのまま蔵蜜はスキマから外へ出る・・・・・
紫は言葉の真意を理解していないようだったが、寧ろ蔵蜜自身からすれば察してもらわない方が救いがあるのかもしれない・・・・・
スキマから出る際の蔵蜜の背中は、先代巫女と非常によく似ていた・・・・・)
犲狼
「ハハハハッ!弱い奴は犬コロのように惨めに絶える。お前もその弱者だったようだなァ!!」
紫は蔵蜜を無言で見送る中、開かれたスキマの先では犲狼が霊夢の頭を握り潰そうとする手に力を加え続け、意識さえも朦朧としている霊夢にトドメを刺そうとしている……
弱っちい犬っコロはお前だろう?
(霊夢が今正にトドメを刺されようとしている中、突如として豺狼の聞き覚えのない声が聞こえてくる・・・・・
しかも短い言葉の中には豺狼をとことん見下している感情が詰まっており、挑発や煽りというよりかは、思ったことをそのまま豺狼に吐き出した感じであり・・・・・)
犲狼
「(新手……か、この魔女のせいで動きが鈍くなっているが、先にこの巫女を握り潰してから対応するか)」
犲狼
「グハハハハッ!群れるところが尚更犬コロらしいなァ!!」
犲狼は声が聞こえた次の瞬間、即座に周囲を警戒しながら、その狡猾な頭脳によってまだ姿も見えず、声からしてもまだ距離がある新手に備えるよりも前に、迅速に霊夢を握り潰してから対応しようと考え、そのまま霊夢の頭を掴む手の力を更に込め、一気に頭蓋骨を握り潰そうとする。
博麗の巫女を優先するか・・・・・そうかそうかそうだよなぁ!!!!!雑魚下等妖怪の犬っコロからすれば、こんなに弱っていても博麗の巫女は怖いもんなぁ!!!!!
(このままでは渡すに渡せない・・・・・それに、攻撃を仕掛けるなら不意打ちの方が効くだろう・・・・・そう思った蔵蜜は、霊夢から自身へと対象を移させるべく、罵詈雑言を浴びせ始める・・・・・
どんなに力があろうと、借り物の力・・・・・所詮下等妖怪は下等妖怪、博麗の巫女がこんなに弱っていても優先して排除しようとするのは、結局は怖いからそうするのだろうと言い)
犲狼
「テメェ……!!
……って、その手には乗らねぇぜ?俺を挑発させてこの巫女から注意を逸らさせようって魂胆だろう?いきなり煽り始めた事からわかるぞ。」
犲狼は生まれつき力の強い妖怪だった訳じゃない。
元々は人間の買う犬の一匹に過ぎなかった。だが、そんな彼が人間に捨てられ、他の兄弟や母のように惨めに命尽きること無く、地獄のような環境を生き残る事が出来たのは、小動物のような警戒心の高さがあったからこそだ。
犲狼は始めて聞く声の主が罵倒し、挑発し始めた事を冷静に考察し、現状と照らし合わせた結果、霊夢から注意を逸らして救出しようとしているのだと見抜く……
これで彼が姿を見せて不意打ちをしていれば、そのまま隙を突くようにして霊夢を助けられたのだが、そのチャンスも無くなってしまう……
魔理沙
「こうなったら一か八かだ……!
誰だか知らないが、後は頼んだぞ!!!」
《ドゴオォォォォォォォォォォォッ》
霊夢の頭蓋骨に亀裂が生じる寸前、これまで犲狼の動きを拘束魔法で鈍らせていた魔理沙が蔵蜜に希望を託すと、手元に箒を引き寄せ、残った大技一回分の力を全てを込めて犲狼の腹部に向けて叩き付ける。
すると、犲狼の体が大きく弾き飛ばされ、霊夢もまた解放される。
だが、その代償として魔理沙は全ての魔力を使いきり、戦線離脱を余儀なくされてしまう。
・・・っ・・・・・!感謝するぞ・・・・・!!!!!
(戦線離脱を余儀なくされた魔理沙に聞こえているかどうかはともかく、感謝の言葉を述べると蔵蜜は開放された霊夢が地面へ落ちて叩きつけられる前に瞬時に飛んでいってキャッチする・・・・・
「博麗の巫女!!聞こえるか!?助けに来たぞ・・・・・!!!」と、必死に声をかける・・・・・)
・・・・・ぅ・・・・・うぐ・・・・・ぁ・・・・・
(最悪の事態は免れたものの、霊夢はやっと声を出せる程度にまで弱っていた・・・・・
あの巨体、あの力で頭部を握り潰されそうになっていたのだから、何ら不思議ではない・・・・・
豺狼の凶悪さを改めて認識する・・・・・)
犲狼
「どこまでも……どこまでも足掻くか、人間!!!」
魔理沙の全魔力が宿り、金色の彗星のように放たれた箒が激突した事で犲狼を守るフォースシールドの一部、魔理沙から奪った魔力が大きく消耗されており、その防壁の硬度が著しく低下しながら、弾き飛ばされた犲狼が立ち上がり、憎悪と怒りを込めた眼光で霊夢達を睨み付ける……
くそっ・・・!もう起き上がってきやがった・・・・・!
(豺狼が立ち上がると、蔵蜜は焦りを見せ始める・・・・・
魔理沙は霊夢救出のために力を使い戦線離脱、霊夢は豺狼に掴まれていたことで既に瀕死の状態・・・・・
この状況で有利なのは豺狼のみと言ってもおかしくはない状況になっている・・・・・)
犲狼
「邪魔するってんなら誰だろうと容赦しねぇ……テメェら全員犬死にだァ!!」
犲狼もまた、魔力の大半を失ってしまったものの、まだ犲狼自身の妖力と博麗の巫女候補達から奪った霊力が残っている事に加えて、戦力的にも自分の優位性がまだある事を知っているため、蔵蜜の登場に対してもさほど動揺はしておらず、獣の瞬発力を活かして蔵蜜目掛けて飛び掛かり、その実力や能力を測ろうとする。
犬だけにか!?随分洒落たことを言うじゃないか!!!!!
ドォッ・・・・・!!!!!
(自分へ飛びかかってきた豺狼の腕へめがけてまずは全力の打撃を入れる・・・・・
何としてでもここで少しは豺狼へダメージを与えなければならない・・・・・
だが、自分の力で少しでも食い止めができるかどうか、という不安も混在していた・・・・・)
犲狼
「グワハハハハッ!そんな細い腕でこの俺様の一撃が止められるかよ!!」
犲狼はその明らかに人間のサイズを超えた巨体を活かした圧倒的な体重と筋力を乗せた右腕の一撃が蔵蜜の繰り出した拳と激突する。
犲狼を守る三つの力の内の一つである魔力が大きく削れているため、犲狼の腕を通じて少なからず犲狼にもダメージが及んではいるものの、選局を左右する程のものでは無いようで、続けて犲狼は左腕を横に凪払うようにして振るい、追撃を仕掛けようとする。
幸いにも犲狼は魔力が大きく削られ、その防御力が落ちている事にはまだ気付いていないのか、補充する様子も見られない。
弱い犬程よく吠えるじゃあないか!!!!!試してみるかゴルァアアアアッ!!!!!
(豺狼の追撃を先読みし、そのまま避けると頭上へ高く飛び自分の妖力を光弾へと変化させて豺狼の脳天めがけて放つ・・・・・
この戦いで・・・・・博麗の巫女が戦う前で、少しでも豺狼の力を大幅に削ることが出来れば・・・・・
その気持ちでいっぱいだった・・・・・)
犲狼
「グワハハハッ!!その様子、まさに負け犬の遠吠えって奴だな!!」
頭上へ飛び上がり、放たれた反撃の光弾が犲狼の頭部に直撃すると、更に犲狼を守る妖力と霊力の防壁が削れ、僅かにだがダメージが通る。
だが、犲狼もまたただで防御を削られるのではなく、反撃として犲狼もまた飛び上がり、右腕を振り下ろす事で地上へ叩き落とそうと迫る。
くっ・・・・・!?
ブォッ・・・・・!!!!!
(本当にギリギリ、間一髪のところでなんとか避ける・・・・・
腕を振り下ろされた際の風力で飛ばされそうになるものの、なんとか持ちこたえてみせるが・・・・・)
ごぶっ・・・・・!?
ビチャッ・・・・・
(突然、蔵蜜は口を手で押さえて咳き込む・・・・・
すると、蔵蜜の口から真っ赤な鮮血が出てきては地面へと落ち、血痕を作る・・・・・
しかし、豺狼の攻撃は当たっておらず、風力でこうなったとも考えづらい・・・・・)
《ギュオッ》
血を吐く蔵蜜に対し、犲狼が空振りしたものの、腕を振り下ろした勢いを活かして空中で前転するようにして鞭のように長大な尻尾を振り下ろして地上へ叩き落とすための追撃を仕掛けようとする。
くそぉっ・・・・・!!!!!
グォッ・・・・・!
(追撃を受けるわけにはいかない一心で口から血を吐きながらも、必死に追撃をギリギリでかわすと、再び妖力を光弾に変えて今度は連続で発射し始める・・・・・
しかし、威力やスピードが先ほどとは違い、明らかに落ち始めているのが目に見える形でもわかるようになり始めていて・・・・・)
犲狼
「どうしたァ?随分と鈍いじゃねぇ……か!!」
犲狼は蔵蜜の放った弾幕が正面から当たり、防壁が更に削れて行くものの、あまり妖力や霊力のコントロール能力が無いからか、その変化に気付いておらず、そのまま蔵蜜の前にまで迫り、そのまま叩き落とそうと右腕を振り上げる……
・・・っ・・・・・!!!!!________
【回想、数ヶ月前・・・・・】
げほっ・・・・・!げほっ・・・・・!
(森の奥・・・・・吐血混じりの咳をしながら、歩みを進める・・・・・
少ししてから、立ち止まると「ついて来てるのはわかってる・・・・・いい加減、こそこそするのはやめたらどうだ?橙、藍・・・・・」と言い・・・・・)
藍
「……なんだ、気付いていましたか。」
両腕を袖の中には隠すようにして腕を組ながら自信と橙にかけていた気配と姿、音の三つを消す隠密行動術式を解除した藍が姿を現すと、その藍の後ろで藍の尻尾で隠れるように後にいた橙が顔を覗かせている。
私だってそれぐらいは気づく・・・・・
(そう言うと、袖で口元の血をぐしっと拭き取り、そのまま振り向いて「で、何の用だ・・・・・?何も用がなくてついてきた、というわけではないだろう・・・・・?まぁ、この先に用がある、というなら私の早とちりなだけだが・・・・・」と、二人が自分をつけてきた理由を聞こうとするも、この先に用があるのであれば自分がただ勘違いしていただけだと思って上記を言い)
藍
「いや、私達の要件は蔵蜜殿に関係しているものだよ。
……紫様から伝言を預かっている。
『その状態を改善する策はこの幻想郷内にも存在しない』
だそうだ……」
藍は自分のかけた隠密術式に対して、彼の持ち前の嗅覚を活かして自分達の存在を察知できたのだろうと理解をすると、彼の血を吐く様子を前々から知っていた紫が様々な策を講したものの、彼の体調を回復させる手段は見付からなかったと教える……
残酷な現実だが、嘘をつき、何時までも煙に巻き続け、下手に希望を抱かないようにした方が良いと思い、紫が伝えたのだろう……だが、良い報せを持ってくる事が出来なかった事、みすみす彼が衰弱していく様を見ていることしか出来ない自分達の現状に悔しさと苛立ちさえ感じている藍は少し俯く……
紫は知っているのか!?一生懸命隠し続けてきたつもりでいたが・・・・・
(寧ろ、紫側が知っていたということを知らなかった自分の方が無知であり、紫の方が隠し事上手だと思い知らされる・・・・・
「そうか・・・・・あの不老不死の医者のところへ行けば、何とかなるとは思っていたんだがな・・・・・げほっ・・・・・!?」
言葉の後に咳き込むと、再び口から大量の血を吐き両手で口を押さえてしゃがみ込む・・・・・)
【あ、ちなみに八雲一家側のロル内で「彼」になっていますが、蔵蜜は女性ですW】
藍
「紫様は貴女の生命力が日に日に弱まっている事を知ると、スキマを通じてその原因を探っていました……これまで監視をしていた事を許してほしい。」
藍は袖の中で両腕を組みながら頭を下げ、これまで監視していた事、勝手に動いていた事に対して主である紫の代わりに謝罪する……
そして再び血を吐く彼女の姿を見て、心配そうに声をかけようとする橙の頭を優しく撫でる。
それはまるで、最早自分達には彼女を治す方法が無いと言うことを優しく教えるよう……
・・・・・いや、いいんだ・・・・・長い付き合いであるが故に伝えるのが辛くて、最初に隠そうとしたのは私なんだ・・・・・文句は言えないさ・・・・・
(そう言うと「不老不死の医者が言うには、抗体を打つ度に病原菌が対応して変化する、とか言っていた・・・・・現状では打つ手はないが、何とかするとも言ってくれたんだがな・・・・・正直、諦めてるよ・・・・・」と言う・・・・・
森の中、舞い落ちる木の葉は蔵蜜のじわじわと減り続ける散りゆく命を表しているようにも見える・・・・・)
藍
「元来、我々妖はそもそもの体構造が違う。心臓も、血液も、脳も全ては存在に付与したものに過ぎない。だから病も毒も効果は無い筈なんだ。例えそれが元獣や人であろうと同じだ。我々にとって心臓や脳の代わりを成しているのが魂であり精神だ。故に我ら妖は肉体よりも精神が重要なものとなっている。」
妖怪とはそもそも、一部の例外を除いて、既存の生命体のように心臓や脳が生命活動の維持に不可欠なものではなく、脳や心臓を始めから持っていない者さえ存在しているぐらいだ。妖怪の天敵は怨霊、これがその理由ともなっている。
藍
「……にも関わらず、貴女の体には病のような異常が見られた……この時点で紫様はただの病や毒によるものではないと気付いていました。おそらく、竹林の医師もそれを知っていたのだろう……」
肉体的な要因よりも精神的な要因が中核を成す妖にとって、病や毒など大した害にはならない筈であるにも関わらず、蔵蜜を蝕んでいる事から、精神や魂に影響を成している事が容易に想像が出きる。
紫も永琳も、彼女がただの病ではなく、"呪い"に準ずる影響を受けているのだと知った事で、手の施しようが無くなってしまっていた……
紫が幾ら外の世界の医療技術を試そうとしても、永琳が幾ら薬を作り出そうと、精神を蝕むものを除くことは出来ない……紫の能力で病と彼女を切り離す事も可能かもしれないが、そうなれば蝕まれた精神は永遠に欠落してしまうだろう……
・・・・・私は情けないな、無理なものは無理、それを理解出来ずにただただ医者に頼んで紫には隠そうとして・・・・・
(そう言うと、顔を上げて二人を見ながら「・・・・・あの医者が言うには、幸いこれは他者に伝染することはないそうだ・・・・・」と言い、藍と橙を抱きしめながら・・・・・
「・・・・・すまない、少しの間、こうさせてくれ・・・・・」
と言った・・・・・
その声は、今にも消えてしまいそうなほど小さく、震えていた・・・・・)
藍
「……私は構わないよ……」
藍は今にも消え入りそうな彼女を抱き止めたまま、彼女がこのまま消えてしまわないように優しく言葉を返す。例え伝染する病であったとしても藍は迷わずこうしただろう。
自分はどうしたら良いのかわからない橙はとりあえず藍と蔵蜜の二人を小柄なりに抱き付く。
紫は昔から多くの友や仲間、志を同じくした同胞がいた……
だが、一人、また一人と理解者と呼べるべき友を失って来た……
主の紫はまた一人、親しい友を失うのかと思うと、藍の中で更に悲痛な思いが強くなっていく……
ありがとう・・・・・本当に・・・・・すまない・・・・・
(受け入れてくれる藍と橙の二人に感謝を述べながら、力がこもっているかもわからないような腕力で抱きしめる・・・・・
腕力が低下しているのではなく、声が弱々しいのと同様、込めるに込められないのだろう・・・・・
すると少しして、腕がだらんと下がり、蔵蜜の息も少し乱れ始め、呼吸が不規則になっている・・・・・)
藍
「…………!?
どうしました?大丈夫ですか?」
藍は抗えぬ運命を前に無力を感じる中、抱き締めていた蔵蜜から力が抜け、呼吸が不規則になり始めると急いで彼女の様子を、体調を伺う。
・・・・・あ、あぁ・・・・・大丈夫・・・・・だ・・・・・最近はよくあることなんだ・・・・・
(そう言うと「紫の前とかだと必死になって隠していたんだがな・・・・・今じゃやっと隠すことさえ叶わない・・・・・」そう言うと、二人に「・・・・・私がいつの間にか何日も姿を現さなくなったら、その時はもう私はいないと思ってくれ・・・・・」と、最期の時を一人で迎えるつもりであることを明かして・・・・・)
橙
「よくある……?それってまさか……」
藍
「………………わかりました。」
橙も蔵蜜に残された時間が少ないのだと言うことを悟ると、それを言葉にしようとするものの、それを藍が寸前で口許に手を当てて首を左右に振って制止させると、悲しそうな、寂しそうな目をしたまま静かに彼の望みを承諾する……
ありがとう・・・・・
(正直、こんなことを言うのは心が痛むが、自分の最期を見て誰かが悲しむのであれば、まだ一人で逝く方がマシだと考えていた・・・・・)
_________
ゴォッ・・・・・!
・・・・・
(豺狼の容赦ない邪悪な一撃が、蔵蜜の体中の骨にヒビを入れ、そのまま地面へと叩きつける・・・・・
蔵蜜の、せめてこんな自分でも力になれればという想いが、いとも簡単に踏みにじられる・・・・・)
犲狼
「グハハハハハッ!!!やはり俺様が一番強い!力のある奴が一番正しい!力の無い奴や弱い奴は悪だ!!」
犲狼はその巨大な腕を幾度と無く振るい、残された時間の少ない蔵蜜の体へ無慈悲な一撃を幾度と無く繰り返していく……
二人とも元は同じく犬であったにも関わらず、蔵蜜は守り、助ける事を選び、犲狼は奪い、脅かす事を選んだ……その結果がこれであると言うのならば、この世界には最早人間が思い描く救いの神と呼ぶべき存在などもういないのかもしれない……
《・・・・・》
(蔵蜜は、心の中でですら、もう無言になっていた・・・・・が、ここで決心をする・・・・・)
《・・・・・じゃあな、紫・・・・・》
グォオッ・・・・・!
ガァアアアアァアアアアァァァァアアアァアアアアアァァアアッッッッッ!!!!!
ドッ!!!!!
(蔵蜜は残った力と命の全てを振り絞り、全身が銀と黒の毛で覆われた巨大な犬の化物へと変貌を遂げる・・・・・
しかし、理性は保てているのか、変貌を遂げると、迷いなく豺狼を睨みつけながらうなり声を上げ、そのまま飛びかかって豺狼の体のあちこちを食いちぎろうとする・・・・・)
犲狼
「………!!?」
犲狼は勝ちを確信していた。
彼女の体格、感じられる妖気、耐久力から攻撃力の全てから考えても、もはや策を練らなくとも力押しだけでも充分に勝てると……
だからこそ、巨大な犬のように変化した蔵蜜への反応が大きく遅れ、不意を突かれるようにして蔵蜜の飛び掛かりを受け、犲狼の体には幾度と無く蔵蜜の噛撃を受け、犲狼を守る防御が大きく削れ、犲狼が歴代の巫女達から奪った霊力が消耗されて行く……
犲狼
「こ……の野郎……!!!」
だが、犲狼もまた、一筋縄では行かない……
犲狼を守るバリアが削れ、犲狼の力が大きく削れて行ったものの、犲狼が身体中から生えた無数の赤黒い棘を伸ばして蔵蜜の体を突き刺し、更に犲狼の妖力から生み出した毒によって彼女の命を削ろうとする。
ガアアァアアッ・・・!!!!!ガアァァァアアアアアアァアアアアアアアァァァアアアァアアッ・・・・・!!!!!
(豺狼の無慈悲な棘が、蔵蜜の全てを貪り始める・・・・・
棘が突き刺さった部分は血が滲み出ながら赤紫色に変色し腐ってゆく・・・・・
が、状況とは対照的に、棘によって自由に身動きもできないばかりか、動けば動くほど棘が更に突き刺さるのは明白であるのに、蔵蜜は再び豺狼に噛みつこうと棘を振り切ろうとしながら暴れる・・・・・
彼女の面影は、もはや誰かの為に尽くすという性格の部分しか残っていないほど、見るも無残に変わり果ててしまっている・・・・・)
犲狼
「グハハハハハッ!馬鹿め!足掻けば足掻くほどにお前がダメージを受けるだけだ!そんな状態では攻撃どころか回避も防御も出来ねぇぞ!!そのまま犬死にしろやァ!!!」
犲狼は吠えるように蔵蜜が暴れれば暴れる程に犲狼が突き刺した無数の棘が体に食い込み、傷口が広がり、体力の消耗と共にダメージを蓄積をさせているものの、自身を守る霊力で形成された防御が大きく削られている事に気付くと、もし己のダメージを省みずにこのまま攻撃を続けられた場合、自分が滅ぼされると言う鬼気迫るものを感じ、それを振り払うべく巨大な口を開けて今度は犲狼から蔵蜜の喉元に噛み付いて食い千切ろうとする。
グルルルルルァァァアアアアアアアアッ・・・・・!!!!!
(喉元に噛み付かれ、血を吹き出しながら聞くに耐えない声を上げる・・・・・
死というものが、まさに今見える形で目前に迫っているような、地獄絵図とも言える状況であると同時に、蔵蜜の抵抗も徐々に弱まってゆく・・・・・)
犲狼
「(グハハハハハッ!やはり馬鹿だな、奴の体には俺様の伸ばした棘が刺さり、更に喉元を噛み付かれている以上、下手に暴れれば暴れるほどに傷が悪化していく!それに対して俺様は防壁が削られるだけで損傷を抑えられるだろう。これまで俺様が苦労して集めてきた巫女や妖怪の力が無くなっていくのは痛いが……奴らを喰らって力を回復させればいいだけの話だ!!!)」
犲狼にはまだ余裕があった……
どれだけ蔵蜜に噛み付かれようと、爪で切り付けられようと、自身を守るフォースシールドの強度を前に、そのいずれの攻撃もシールドを削るだけで致命傷になることは無いと言うことから、犲狼には焦りが見られず、対照的に死へと落ちて行く蔵蜜の様子を見て喜んでさえいる……
だが、蔵蜜の奮闘により、魔理沙によってあと二回は大技が放てるだけの力が回復している霊夢であれば犲狼の守りを打ち砕ける程に防御が衰えている事に犲狼は気付いていない。
グル・・・・・ルルルゥ・・・・・ガァアアアァアアァァァァアア・・・・・!
(徐々に抵抗力が弱まっていき、そして、とうとう動かなくなる・・・・・
棘が刺さった部分は未だに痛々しく、腐食がどんどん進んでいて、首からは血が流れ出続けている・・・・・
あれだけの抵抗も虚しく、最後なんてあっけないものなのかもしれない・・・・・)
犲狼
「ふん、手こずらせやがって!だがこれであとはボロボロになった博麗の巫女だけだな!」
蔵蜜はそのまま顎と頚の力を用いて蔵蜜の体を押し退けて立ち上がろうとしながら、目線を霊夢を探すべく周囲へと動かし、彼女の姿を探し出そうとする。
もはや蔵蜜に対する警戒や注意は薄れ、次の敵対者である霊夢への警戒を行い始めている。
・・・・・
(豺狼がその場から動き出そうとする前、まだ近くにいて攻撃がしやすい状況、蔵蜜は豺狼へと再び視線を向けると「お前の負けだよ」と言わんばかりの目つきで思いっきり起き上がり・・・・・)
ガルルルアアアアァァァアアアアアアアァァアアアァアアアアアアアアアァァァアァアアァァッ!!!!!
ズッ・・・・・!!!!!
(蔵蜜は残った力の、本能に絞りカスほどにしか残っていない力を使って、豺狼に思いっきり飛びかかりそのまま豺狼のシールドを全て削る勢いで噛み付き、棘の毒によってもうほぼ腐っている両腕の内片腕を豺狼の心臓付近へと突っ込んで体に風穴をあける・・・・・
もはや火事場の馬鹿力とも言えるような、どこにこんな力が残っていたのかと言わんばかりの強い力で蔵蜜が死んだと勝手に思い込み油断した豺狼へと攻撃を続ける・・・・・)
犲狼
「!!?」
犲狼
「ちッ!まだ生きていやがったか!!!」
犲狼は先程の霊夢との戦いの時に執拗に心臓を狙う霊夢に警戒してフォースシールドの多くを胸部に集中させていた。
そのため、蔵蜜の攻撃によってフォースシールドの多くが薄れ、削られたものの、特に防御を集中させていた胸部にはまだ高い防御力を有していたため、霊夢と同じように蔵蜜による心臓を狙った一撃も意図せずして防ぎきる事に成功する。
これにより、胸部に集中させていたフォースシールドも大きく削り取られ、犲狼の守りがより薄れるものの、その代償として犲狼は反撃として右腕に奪った霊力を集中させ、威力を増大させた一撃を彼女の頭目掛けて振り下ろす。
その威力は集落を壊滅させたあの途方もない破壊力を秘めたものとほぼ同等の威力が込められている……
・・・・・!!!!!
_____________
幻想郷の住人となる前、蔵蜜は行く宛もない野良犬だった・・・・・
毎日毎日、その日一日を生き抜くのがやっとの日々・・・・・
蔵蜜自身、人間によって親や兄弟を殺され、一匹生き残った・・・・・いや、生き残ってしまった宿命か、人間を強く恨む怨念を背負って生きていた・・・・・
《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォッ》
耳をつんざくような、大気と大地を震わすような壮絶な轟音と共に犲狼が振り下ろした右腕が回避も防御も行えていない蔵蜜の頭に直撃し、辺りの地面には無数の亀裂が生じ、その凄まじい破壊力を物語る……
犲狼もまた、霊夢との戦闘時にもあったように、蔵蜜と同じ名も無い野犬の一匹であり、外の世界にて、他ならぬ人間の手によって捨てられ、親兄弟を殺され、激しい怨念と憎悪が渦巻く中でこう悟った……
"弱い奴は何も守れない、強くなければ何も得られない、何かを守ることも、自分の命すら守れない。"
"この世はどこも弱肉強食だ、どれだけ綺麗言を並べようと、弱い奴は屑だ、強くなければ意味がない"
"俺様が誰よりも強くなって弱肉強食の世界を支配してやればいい、そこで俺様の親兄弟を殺した人間を絶滅させ、この俺様の考えが正しかったのだと証明する"
"そのためには誰がどれだけ苦しもうと、息絶えようと関係無い、弱いのが悪いのだ、強さだけが正義だ、強さこそが真理だ。"
こうして強さに執着し、破壊と殺戮を求める犲狼(ケダモノ)が生まれてしまった……
グチャッ・・・・・
・・・・・
《お前は、私と同じだ・・・・・あの時の私と・・・・・
人間を恨み、ただただいつか力を持って復讐してやるということだけを目標にして生きていた、あの時の私と同じだ・・・・・》
(豺狼の一撃が直撃し、右目が抉られ宙を舞い、脳の一部は弾け飛んでゆく・・・・・
蔵蜜は今度こそ本当に動かなくなった体が地面へと倒れゆく中、実際はあっという間の時間だが、倒れゆく蔵蜜自身は走馬灯が見えるほどに長く感じた・・・・・
そして蔵蜜は、今目の前にいる豺狼を、かつての自分と重ねて見る・・・・・)
犲狼
「しぶとい奴だったが、頭を潰されて生きられる奴なんざいねぇ、これで完全に終わったな!!」
仕留めたと思いきや、立ち上がって反撃をしてきた事には驚いた……
そのせいで自身を守る防御の大半が失われた。
だが、能力の結集である鉄壁に近い防御壁が失われようと、もはや残る敵対者は霊夢だけであり、その霊夢もボロボロだ、もはや自分が負ける事はないと考えると、霊夢の方向に向かって歩き始める。
・・・・・ぅ・・・・・ぁ・・・・・
ガシッ・・・・・
(辛うじてまだ生きている蔵蜜は、生きている内にできるだけ豺狼を食い止めようと、豺狼の足を掴む・・・・・
もう力は残っていない・・・・・豺狼が言う、所謂「弱い奴」の部類になった蔵蜜は、それでも強い相手に反旗を翻す・・・・・
借り物の力で戦う卑怯者の豺狼と、最後まで自身の力で戦い、死が近くてもまだ仲間の為に抗う蔵蜜・・・・・
似たような人生を歩んできた二人の決定的な違いはここだろう・・・・・)
犲狼
「……!!?」
《ゾワッ》
犲狼は蔵蜜の残骸は後で喰らえば良いと考えており、一歩、また一歩と霊夢に向けて近付く中、頭の大半が消し飛ばされていながらも、自分の足を掴んで引き留めようとする蔵蜜の姿を見て、本来ならばとうに事切れている筈のダメージを受けながらも自分を止めようとしている彼女に恐怖さえ感じるようになる。
犲狼
「なんだ…なんなんだお前は!?何故まだ生きている!?」
激しく動揺しながらも、自分の脚を掴む蔵蜜目掛けて、残った魔力を自分の尾に集中させ、まるで刃のように変えると、そのまま彼女の腕に目掛けて振り下ろし、腕ごと切断して引き剥がそうとする……
ぐ・・・・・が・・・・・
ガシッ・・・・・
(腕を切断されれば、もう片方の手で掴む・・・・・
死の寸前であるはずなのに、どこまでも抗おうとする執念深さは狂気の域に達しているのかもしれない・・・・・
意地でも霊夢のもとへは行かせないつもりらしい・・・・・)
犲狼
「ちッ!往生際が悪いぞ!!さっさとくたばりやがれ!!!」
犲狼は得たいの知れない恐怖を感じたまま、今度は刃のように変えた尾ではなく、彼女の方へ振り返り(霊夢には背を向ける形となる)、右腕を大きく挙げ、今度は二度と邪魔が出来ないようにその体を跡形もなく消し飛ばそうと右腕に妖力を集束させ始める。
だが、これによって霊夢が反撃を……魔理沙の授けたポーションによって回復し、残された大技を放つための最大のチャンスが出来る……
・・・・・
(霊夢は回復し意識を取り戻すと、すぐ様状況を理解する・・・・・
蔵蜜に気を取られ、豺狼がこちらに気づいていないということは、今この時こそ、全てを終わらせるべき最大のチャンスであると・・・・・
霊夢は気付かれないようにゆっくりと立ち上がる・・・・・)
があ・・・・・ぁ・・・・・
(蔵蜜は回復した霊夢がゆっくりと立ち上がるのを見て、もう少し自分へと気を引かせようと左腕に噛み付く・・・・・)
犲狼
「目障りだ、消えろ!!!」
犲狼は振り上げ、妖力を集中させていた右腕を勢い良く振り下ろし、その圧倒的な妖力の塊を叩き付ける事で既に瀕死に追い詰められていた蔵蜜に対して過剰なまでに強大な威力を持った一撃を繰り出し、バラバラに消し飛ばそうとする……これを受けてしまえばもはや原型すら留めることは困難であると思われる……
その時・・・・・
消えるのはアンタでしょ・・・・・?
ゴオオォォォオオオオオオ・・・・・!
(お祓い棒、大幤を持った霊夢は、次は仕留めるという勢いで全力の一撃を豺狼の背後から豺狼の心臓部辺りへと放ち、豺狼の体を、今まで守られていた体をその一撃によって貫いて外側からも内部からも焼き尽くす勢いで豺狼の体へ大ダメージを与える・・・・・
豺狼が蔵蜜へ気を取られていたこともあり、防御しようにも防御へ回れる隙すら与えない、正に豺狼との因縁に終止符を打つ、最後の一撃・・・・・)
犲狼
「!!?
ぐ……おォォォォォォォ……!?」
勝敗は喫した、もはやこの場には瀕死の巫女と犬神しかいない。
どれだけ反撃を仕掛けようと、この状態であればまともな反撃は出来ないだろう。
そんな考えの下で油断し、更に眼下の蔵蜜一人に意識を集中させていた事もあり、背後にいる霊夢の攻撃に気付けずに攻撃が直撃すると、犲狼は青白い炎に包まれて大ダメージを受ける。
もう終わりよ、その底無しの強欲と共に焼き尽くされなさい・・・・・
(青白い炎に包まれゆく豺狼の目の前には、散々見下し、今まで何人も食らってきた博麗の巫女・・・・・
己の力の足しとしてしか見ていなかった博麗の巫女の力に全身を焼き尽くされるという、何とも皮肉な状況が豺狼を襲う・・・・・
豺狼がもがけばもがくほど、炎をより一層強まり豺狼の全身を包んでゆく・・・・・)
犲狼
「く……そ……!!!」
犲狼
「こんなところで……消えてやるものか……!!どうせ……お前も俺様を他の奴らと同じ弱者だと、ただの犬コロだと思っているだろう!?俺様は強い!!俺様はこんなところで敗れ消える事はない!!」
青白い炎に包まれ、体が霊夢の放った霊力を受けて浄化されつつある中でも、自身の能力を用いてこれまで取り込んだ命を消費する事でダメージや損傷を回復し、蘇生と回復によって青白い炎を相殺しつつ、憎悪と執念に燃える目で霊夢を見る……
犲狼
「お前らのように……俺様を見下し、馬鹿にする者が居なくなるまで……俺様は死なん!!!」
犲狼は右腕を大きく振り上げ、それを横に薙ぎ払うようにして振るう事で地を割る衝撃波を放ち、霊夢を弾き飛ばそうとする……
妖怪の核は精神であり、その精神が……犲狼の場合は復讐と憎悪によって歪んだ弱肉強食の理念が犲狼の力の源となっており、霊夢もまた自分を馬鹿にしている、取るに足らない弱者なのだと見下しているのだと感じ、それが犲狼の生を支えている……
犲狼は強さだけを望み、強さ以外に何も持っていない。
蔵蜜のように誰かを守るために振るうことが出来ず、改心する機会にさえ恵まれず、修羅の世界を歩むしか無かった犲狼のもたらす暴力を前に霊夢は何を思うのか……
力を奪い続けて、他人のふんどしで相撲をとってきたアンタ自身が見下されるようなことをしているんでしょう・・・・・?どんな理由があれどアンタみたいに他人の命を弄んで己の力の足しになるか否かしか考えられないような屑は、正直死すらも生ぬるいと私は思うわ・・・・・
(弱さが仇となって力を求めるまではまだわかる、問題はその先、己の力の足しになるか否かでしか他人を見れない上に命を弄び続けるなんて言語道断だと、死でさえもまだ生ぬるいと霊夢は言い放つ・・・・・
結局はその力も、自分が弱いと一番分かっているからこそ他者から奪い続けてきた力なのに、あたかも自分の力のように言っているのが納得出来ない・・・・・)
犲狼
「ふん、強くなればそんな事は関係無い……!!強さこそが正義!強さこそが真理!強さだけが……絶対だ!!!」
《バキバキバキバキバキバキバキ……》
犲狼は霊夢の言葉を聞いてもその思念が揺らがない。
否定されると言うことは予めわかっていた。否定や拒絶されるだけで犲狼は止まれるほど楽な世界に生きてきてはいない。
犲狼は自らの強者だけが全てを得られると言う理念の下、これまで取り込んだ命達を純然たる身体能力に変え、更に溢れ出す妖力と霊力によってこれまでよりも更に強固なフォースシールドを纏い始め、死にかけていた犲狼は完全に勢いを取り戻すと、その勢いのまま、完全に青白い炎を消し去ってしまう……
そして……犲狼は次第に筋骨隆々な体へと変化し、踏み込んだだけでも地面が砕けるほどのパワーとスピードを獲得し、そのまま霊夢の体を殴り飛ばそうと飛び掛かる……
なっ・・・・・!?
(あの炎に包まれて、もう回復なんて絶望的な状況にまで追い込んだはず・・・・・
気を抜いていたわけではないものの、流石にこれは予想外と言わんばかりの表情をしながら、突然の事態に咄嗟に対処して間一髪のところで豺狼の猛攻を避ける・・・・・
が、フォースシールドも強固になり、豺狼は怒りと力に身を任せる形でより一層凶悪になってしまった・・・・・)
犲狼
「もうテメェらに勝ち目はねぇ……後の事なんざ知ったことか!!失った霊力や妖力はまた奪えばいい!!俺様は誰よりも強い!俺様はもうただの犬コロじゃねぇ!!!」
霊夢に向けて繰り出した拳が凄まじい轟音をたてて地を揺るがし、辺りの地面を砕き、余波だけでも吹き飛ばす程の尋常ならざる破壊力を発揮する……
犲狼の信念の核となっている弱肉強食の理論に対して何らかの反論をするか、その考えを理解するかなどを行い、その激情を抑え込む事が出来れば、犲狼を弱体化させられるかもしれないが、下手を打てば、後先について考えなくなった犲狼による壮絶な暴虐の嵐に呑み込まれてしまうことになってしまうだろう……
・・・・・力に執着するのは、弱者の証拠なのがわからないのかしらね・・・・・
ドォオッ!!!!!
(霊夢は全身にできる限り霊力を集中させて纏い、そのまま豺狼の放った攻撃の余波の中を泳ぐようにして豺狼へと急接近する・・・・・
こうなったら自分の体がどんなに傷つこうが体の一部が抉られようが、力と力のぶつけ合い、でも出来る限り周りへの被害は押さえつつ豺狼を食い止めるしかない・・・・)
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犲狼
「人間ごときが……!この俺様の力に対抗できるとでも思ったか!!!」
犲狼は再び拳を突き出す。
それも、今度は霊夢が避けられないように狙い済ました上の殴打。
犲狼の放った一撃に対してまともに受けてしまえば人間の体では魔術を用いたとしても再生や回復が困難なまでのダメージを受けてしまうだろう……
がっ・・・・・!?
(霊夢は再び避けようとするも、今度は完全に避け切ることは出来ずに右腕に受けてしまう・・・・・
戦闘を行う上で腕を負傷するということは、それすなわちこの先の戦いにおいて不利になるということを表す・・・・・
さっきの青白い炎に包んだ時から一転して、再び追い込まれる・・・・・)
犲狼
「既に瀕死のお前に何が出来る!!体力も霊力も突きかけの状態で倒せるほど俺様は弱くはない!!!俺様こそが"最強"だ!!!」
右腕に犲狼の爪が当たった事で腕がまるごと切り裂かれた霊夢に視界が不明瞭になり、立っていることすら困難になるほどの凄まじい激痛が走る……
更に、犲狼の爪によって付けられた傷は深く、骨をも裂いている程であり、自然に止血する事は出来ずないため、適切かつ迅速な対応を行わなければ、例え犲狼の攻撃を全て避けきったとしても、ものの数分で失血死してしまうだろう……
【記憶の断片】
妖犬
「おい、コイツ知能も力も無いくせに狼妖になったらしいぞ」
妖犬
「偶然弱っていた博麗の巫女を喰ったんだとよ、運のいいやつめ!」
妖犬
「エサもろくに取れないノロマのくせに生意気な、妖獣の恥晒しが!」
妖犬
「お前の居場所なんか無いんだよ!!」
幻想郷に訪れ、犲狼と共に妖獣となった妖犬達であったものの、博麗の巫女を喰らった事で力のある妖になった犲狼に対する妬みや僻みから、犲狼は群れから追われ、独り生きることを強いられた……
強い力と引き換えに友を、仲間を失った……
犲狼
「……俺はまだまだ強くならないといけない。誰もが認めるぐらいに強い奴に……最強の妖獣に……!!」
仲間などいらない、友などいらない、絆などいらない。俺様が手に入れるべきは"強さ"それだけだ。
お前らとは力を求める強さが違う、信念の強さが違う。漠然とした大義のみを盲目的に正義とするお前らに俺様が負けることはない。
俺様は強くなる……いや、強くならなければいけない!!こんなところで立ち止まっている気などさらさら無い!!
例え何をどれだけ犠牲にしようと、最強の存在になれればそれでいい。力こそが……強さこそが全てだ!!!
もはや引き返すことなど出来ない。
最強の妖となって自分を弱者とした人間、自分を蔑み追放した同族達を、獣と見下す妖怪を……その全てに復讐するまで犲狼は止まれない……