万里一空!

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1:まつり@ゆず◆Go @は全角:2018/06/25(月) 18:23


  

     青春を全力で!  

       >>2

2:まつり@ゆず◆Go @は全角:2018/06/25(月) 18:24

別サイトで投稿してる小説をこちらにも。
放置したらすみません。

3:まつり@結珠◆Go シュガステのティンパニ死亡:2018/07/06(金) 15:59

《ヒロ×ヒロ 〜新学期〜》

「そーいや、今年のクラス、えらい曲者くせもの揃いやねー」

東堂 遥飛(とうどうはるひ)の言葉に大きく頷くのは、戸塚 尋(とづかひろ)と五反田 郁(ごたんだいく)。 

六年四組となった三人は、手提げ袋を腕にぶら下げながら、のろのろと歩いていた。

「まー、尋は比呂ひろとまた同じクラスになれたんやし、嬉しいんやろーけどー」

「んなアホな。そんなこと思うとらんっちゅうねん!」

尋とハルヒがテンポ良く会話をする中、大人しいいくはゆる〜く言った。

「ハルヒはやっととおると同じクラスになれて、嬉しいんやもんな〜」

「いや、それこそ何でやねん」

それに間髪をいれず、全力でツッコむハルヒ。
それをチャンスと見た尋は、話題を変えようと試みた。

「それよか、午後再登校せなあかんやろ。邪魔くさいわぁ」

最上級生の仕事は、初日からある。
これから家で昼食をとったら、十三時から入学式の準備をしなければいけない。

「あー、それな。一度帰ってからまた学校とか、しんどっ」

「ハルヒが言ゆうたら、なぁんか説得力ないわぁ」

いつもダルそうに喋るハルヒに対して、いくは変わらずゆるゆるとツッコむ。
 
「ま、一年生は可愛いんとちゃう?世話する側になったら、好きになれるやろ」

尋が言うものの、いくはうーんと考え込む。

「まあ、そりゃあそうやろうけど…。わざわざ再登校するのはけったいな話やない?」

「まあなー、それ言ゆうたらアカンやろ。可愛い可愛い一年生のためやから、頑張りまひょ」

尋の語尾にすかさず反応するのは、ハルヒ。

「いや、そんなセンセーみたいなこと言わんといて。うちらが一年生を嫌ってるみたいやんけ」  

いくも、どこか抜けたように話す。
 
「そんな、昭和みたいなしゃべり方せんといて〜」
 
「昭和みたいなってなんやねん!昭和生まれの人に失礼やろ!」

尋は全力で訴えるも、すでにその場は次の話題に移っていた。

「ハルヒィ、とおるがおるよ〜」

「おおっ、透がそこを通る…ってなんでやねん!」

ノリが良いのは、生まれも育ちも大阪だからか。
それにしても、ここまで典型的な『関西弁でノリが良い女子』も珍しい気がする。

 「尋ぉ、比呂もおるよ〜?」

いくの、少し面白がるような声に、ハルヒも乗っかった。

「ヒロとヒロ、相変わらずややこしいわー。幼馴染みで名前一緒とか、やっぱり運命やろ」 

「いやいや、だからなんでやねん」

おろおろとツッコむ尋だが、先程までの威勢がない。
……いや、威勢など最初からなかったのか。

「運命の赤い糸ってやつよ。ヒューヒュー」

妙に棒読みで、ハルヒ。
もう反抗することを諦めたらしい尋は、ポカポカの春の陽気を味わおうと、二人の少し先を歩いた。

4:まつり@結珠◆Go シュガステのティンパニ死亡:2018/07/06(金) 16:02

「と〜お〜る!ひ〜ろ!あっ、はじめも〜!!」

そして相変わらず、緩い声でいくは呼び掛ける。
完璧に面白がられているようだ。

いくの声に、男子三人組はそろって振り返った。
 
尋の幼馴染み、春日部 比呂(かすかべひろ)。
ハルヒと何かありそう?な水谷 透(みずたにとおる)。
大して紹介する内容は無いが、この流れで行くといくに関係がありそうな及川(おいかわ)はじめ。

通学路、クラスが同じ六人は、自然と一緒に帰る流れとなった。

「なあなあ、再登校嫌やない?」

「とーる、ハルヒとどうなってんの?」

「なにもないっちゅうねん。尋と比呂は?」

「おい、今わざと話そらしたやろー」

……誰が何を言っているのか、分からない状態だ。

――しかし。皆が思い思いに会話を楽しんでいるから…これで良いのだ。
尋はそう結論付けて、会話に加わった。

「比呂〜、再登校一緒に行かへん?誰かと一緒やないとサボっちゃいそうやわー」  

「なんやねん、サボるなっちゅーの」

続きの言葉を笑顔で待つ尋に、比呂は自分の頭をクシャクシャと掻き回して言った。

「……十二時半には、お前ん家ち行くから。忘れずに待ってろよ」

「比呂こそ忘れんといてよ?待ってるわ〜っ!」

ポカポカの晴れた日差し。まだ、少し冷たい空気。桜の花びらが散る季節。

――その場にいた四人が、ニヤニヤしながら見ていたことに、二人のヒロは気づかない。


Happy end

5:まつり@結珠◆Go シュガステのティンパニ死亡:2018/07/06(金) 16:04

>>3-4の小説の元はこちらhttp://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=9&id=6361215

6:まつり@結珠◆Go 眼鏡外すとイケメンだよね:2018/07/14(土) 21:13

『あ き ら め』


――諦めた。

久山 結珠那(ひさやまゆずな)、中学一年生。
私は今日、久山さんと呼ばれた。


あ き ら め

そんなこと、良くあることだ。
知り合いのいない中学に進学した私は、尚更。

その度に、『同級生にさん付けされる趣味はない』と伝えていたけれど。

……なんで、東田が。
同じ委員会。隣の席。

知ってたさ。私は、みんなとは違う…そう、外側にいるのだと。
でも、気にせずに生きてきた。

知ってる。イタいヤツだよね。
でも……いい。気付いてても、気にせずに生活できるなんて、長所だよ。

そうだ。リレーのチーム一緒になって、長谷部くんに『ゆずな』って呼ばれたのも、嬉しかったなあ。

でも、東田にさん付けされるなんて…かなりのショックだった。
普段から、名前を呼ばれることなんて滅多にないのだけど。
だからこそ…ゆずなって呼ばれたときは、舞い上がっちゃってた。

そう。私はこのレベル。
こんな些細なことで喜べるなんて、幸せなんだよ…。


英語の先生、Mr.北條に『せっかく自分が持っているものを隠しちゃダメだ』と言われた。

ああ…私って進歩しないな。
小学校の頃と変わらないじゃん。

……少しは変われたかも、なんて思ってたのに…。

自分のダメさに、涙が出てきた。
些細なことで泣くなよ。
――弱虫。


だから、なんか吹っ切れたんだよなぁ。
私、久山さんで良いか…って。
呼ばれ方一つで、バカみたい。

もう、いいや。

小学校が一緒だった友達がいる。
中学で、毎日顔を合わせる人たちよりも、ずっと好き。

もう、いいや。

安易に好かれるよりも、嫌われてる方が楽だよね。

いいよ、もう――

中学校生活の希望を見失った。




あ き ら め

7:まつり@結珠◆Go 眼鏡外すとイケメンだよね:2018/07/14(土) 21:13

>>6の小説はこちら
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=11&id=6361215

8:まつり@結珠◆klVAly. トリップ被ったから変更 @低浮上気味?:2018/07/23(月) 11:46

『余り物でごめんね』


席替えをした。

班のメンバーは変えずに、席順、場所だけの移動。
一番前の真ん中の席が、私のお気に入り。
私たちの班は、誰かが一番前の真ん中の席になれる。

――私、そこがいい。

なんて…言えるはずもなく。

みんな、真ん中の前は嫌って言ってる。
私は?私の希望は?

私なんて、いらないもんね。
邪魔だよね。

班の中で、独りだけ輪の外にいる。
そのくらいは、気づいてた。

……でも、そんなの…気付かないフリしてたって同じだもん。
邪魔だなんて、勝手に思っていればいい。

こんなの、被害妄想だ。イタい奴。


五人班だから、誰かが他の班の人の隣になる。

友達の由美ちゃんが、『純玲(すみれ)ちゃんと伶々愛(れれあ)ちゃんが、ゆずちゃんを一人にするって話してたよ』って教えてくれた。

なによ、一人って。 
他の班の人でも、隣になる人がちゃんといる。
……だから、一人じゃないよ。

一人でいいの?大丈夫?って、由美ちゃんは言ってくれた。
……別に良いよ、って返した。

だって、五人班だもん。誰かが余ってしまうのは仕方がない。


……でもさ。

「一番前の真ん中、誰にするかじゃんけんね!」

四人が席を決めているなか、私は、独り突っ立っていた。
……前に、迷惑かけちゃったから。
私の希望なんて、言わない方がいい。

間違ってる。そんなの間違ってる。
知ってるけど、知ってるけど…!
知らないフリしてた方が、都合が良いの。

長谷部くんの、

「かわいそ」

って声が聞こえた。

私に対してじゃ、ないよね…?
学級委員に、かわいそうな人認定されるなんて。

「ゆずなちゃん、そこ。後ろ、理雄(りお)くんの隣」

伶々愛ちゃんの、決めつけるような声。
いや……完全なる決めつけ。
良いよ。良いんだよ。

――本当は、前が良かったけど…。


視界がぐにゃっと歪んだ。
下唇を嫌と言うほど噛み締めて、下を向き続けた。

「……ごめんね」

聞こえたかは分からない。
別に、聞こえてなくてもいい。

「余り物が隣で、ごめんね」


者ですらない。 

私はクラスの、


余 り 物 

9:まつり@結珠◆klVAly. トリップ被ったから変更 @低浮上気味?:2018/07/23(月) 11:46

>>8の小説の元です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=12&id=6361215

10:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

「あっ凛条さん、やっぱりペットに異動してくれないかな」

 世界から色が消えた。

 
 《ブル部魂!》


 凜条 千図(りんじょうちず)、ピカピカの中学一年生。

 私立H大学附属新倉(にいくら)中学校に、そこそこの倍率の受験を乗り越えて入学した。

 同じ小学校からこの中学校に進学した人はいない。
 少しばかり心細かったけれども、そんなことは杞憂に終わった。

 一年生を迎える会、略して一迎会いちげいかいでの部活動紹介で、心を奪われたから。

 アンサンブル部――

 ノリの良さそうな、意外なことに男の部長さんの説明。

「活動していくなかで、楽器の個性を知ることができる。なんだろう、友達?相棒?……とにかく、一生の相手になるはずです」

 そのときは…ああ、良くあるセリフだな、と思った。
 どの部活も、そういう綺麗なことを大袈裟に言って。

 ……でもそれは、三年生にとっては大切なメッセージ。
 それをより教えてくれたのは、その次の演奏だった。

 曲名なんて、演奏が始まった瞬間に忘れたよ。
 一つ一つが合わさって、まさに一音入魂!って感じで。
 少人数編成だからか、すごくまとまりがあった。

 いいなあ。この部活。
 カッコいい。わたしも、一生の相手…楽器と、出会えるかな。
 こんな演奏、できるかな――

11:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

 というのが入部の動機で。
 わたしはユーフォニアム――通称ユーフォを希望した。

 なんかカッコいいし、オシャレな雰囲気もある。
 音だって……個性を知れば、自由に奏でることができるだろう。

 しかし、もうすぐ三年生も引退、わたしたちは本格的な練習に入ろうかとしているときに、この台詞だ。

 ……そう。ユーフォニアムは、希望者が募集枠よりも一人多かった。
 その分、トランペット――ペットの人数が一人減って。
 良しとなったはずなんだけど…。

 もしかしたら移動を頼むかも、とは言われた。

 でも、なんでわたし?
 もう一人の一年生、乙(おと)ちゃんでも良かったよね?

 ……と思ったので、訊いてみた。
 その答えが、

「乙凪(おとな)さんは少しだけど経験しているし、自分の楽器を持っているから……」

 とのこと。

 …………なによ。
 結局は経験じゃないの。

 なんて思ってしまうのは自然なことで。

 だって、初心者も大丈夫、って言ってたよね?
 ……そりゃあ、自分の楽器を持っていたらそちらを優先するかも、とも言ってたけど。

 ――良いよね、金持ちは……。自分の楽器を、買ってもらえてさ。

 うちに、何十万も部活動につぎ込めるほどの金銭的な余裕はなく。
 ユーフォニアムは、学校のものを借りることにしていたのだ。

 ……と悪態を付きまくるわたしの横には、部長さん。

「あのさ、説明のときに希望していない楽器になるかも、って言ったよね?」

 ああ、怒られるんだ。
 部長に怒られるなんて。

 そう考え、どんな中傷的な言葉にも耐えて見せようと、キッと部長さんを見た。

 ……睨んでる?そんなの知らないよ。

 「まあね、最初は苦痛かもしれないよ。仮に、キミがペットを悪く思っていたりしたら、特に」

 ……図星だ。
 わたしが、ペットを…ダサいとか、なんか嫌だとか思っていたのは紛れもない事実。

 そんなこと、思ってちゃダメなのに…。

 そこで部長も、「まあ、そんなことを思っているなんて、無いと思うけど」と。

「でもね、少し演奏してごらん。必ずその楽器を愛せるから。……先輩も、同じような経験をしている」

 なによ、そんな…。
 それでも、嫌なものは嫌で

「でも…」

 と口を開いた。
 だけど…なぜだろうか。
 口が動かないや。

「お前、分かっているだろう?合奏は、一人でやるものじゃない。だからこそ、誰かが少し我慢する必要だってあるんだ」

 言葉だけを聴くと、凄くキツいように思える。
 でも、そんなこと、わたしは微塵も思わなかった。
 その声は、不思議なほど優しかったから。

「ペットを、愛せたら…」

 少し、世界が変わるかな。
 なんて、なぜか前向きにとらえることができる。

「……分かりました。やります」

 下唇を噛み締めた。

 

 アンサンブル部、凜条 千図。
 全力を尽くします!!

 これがわたしの、ブル部魂!

12:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:16

>>10-11の小説です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=10&id=6361215

13:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:36

「……………………これは、いったい……」

 どれくらい放置してたっけ?
 


 …………いやいやいやっ、この前夏休み入ったばっかりじゃん!?
 7月は毎日部活あったから、それに集中して宿題は出来なくてっ!!

 8月の前半は祖父母の家に行ってたから、お手伝いやら遊びやらで忙しかったしっ!!
 後半は部活も再開されたし! 出来なかったの仕方ないし!!

 
 ……だ、か、ら!!
 明明後日は始業式なのに、レポートなんにもやれてないのは仕方ないの! 不可抗力!
 
 …………一番の大物。社会科調べ学習。 
 自分で好きなテーマを決めて、調べる!
 レポートにまとめる!
 
 いけるいける〜、楽勝!
 ……本当に楽勝だったらとうの昔に終わらせているはずなんだけど。

「……やらないとなぁ……」

 時刻は真夜中の11時。
 大丈夫大丈夫!
 今まで、思いっっ切り徹夜して、スマホいじってたじゃん!
 
 さ〜てとっ。

「テーマ、何にしようかな……正直社会科で調べたいこととか無いし……」

 午後11時23分。
 私、莇 鈴(あざみ りん)対 社会科レポートの決戦が幕を開けた。

 

ピピピッ、ピピピッ、ピピピ…………(大文字)


 う〜ん、まだ頭が重くて眠いや。
 もう少しだけなら、大丈夫だよね…………

 ……と、枕元の置き時計を見た瞬間! 
 私は2度見した。マジで。

「さ、さ、さんじ…………!!」

 ……………………。

 『言葉が出ない』とか『目が点になる』とはこのこと。
 え、えーっと、確かベットに倒れ込んだのが朝の6時30分だから……。

 どんだけ寝てたんだーい!
 ……と脳内で突っ込みつつ、深く深く溜め息を付いた。
 明後日、始業式だぁ……英語のレポートとかもやってないなぁ……。

 よっこらしょ、と起き上がって、ふと昨日の戦場……学習机を見る。
 その下には、ごくありきたりな紙……レポート用紙が落ちていた。

 さて、出来はどうだろうか。

 鉛筆の黒一色で、乱雑に書かれた文字。
 全体的に、汚い。灰色で、適当にやった感満載のレポート。

 ……………………。

 ――夏休み明け、初っ端から評価Cコースじゃん。
 


 夏休み明け1発目の授業にて、レポートの発表があった。
 真面目にやった子と私との差は明確で。

 評価Cコースが、確定されましたとさ。



 …………ん?英語のレポートはどうなったかって?
 ――ご想像にお任せします。
 

14:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:37

途中、大文字とか書いてあるのは気にせずに……
>>13はこちらです
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=27&id=6361215

15:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:39

あ、題名載せ忘れた……(バカ)
『初っ端から評価Cコース』です!

16:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/09/22(土) 12:13

『私に勇気があったなら』


「ねえ、あの子ダサいよね」

「関わりにくいし、てか、関わりたくないしー」

「なんなんだろうね、あのウジウジした態度」



「 みさきもそう思うでしょ? 」



 私には、笑うことしか出来なかった。
 ただ曖昧に、否定も肯定もせず。

 なんとなく笑っていれば、否定したことにも、肯定したことにもならないから。

 ――そうやって正当化して。

 放課後、私はその子と話していた。

 クラスでは、みんなに合わせて、助けることもせず……へらへら笑っているだけなのに。

 そんな私を、怒ることもせず。
 笑顔を見せてくれた。
 普通に、“友達”として。

 本当に当たり障りのない、趣味のこととか、部活のこととか。

 ――クラスは、辛くないの?学校、嫌じゃないの?

 気になる。でも、訊かなかった。

 ――大丈夫?

 なんて、思うだけで言わなかった。
 ……違う。言えなかったんだ。怖くて。

 でも……こんな日がいつまでも続くだろうと思っていて。


「ありがとう」

 いつも通りの放課後、いつもの空き教室。
 ひととおり話し終えた私たちが、帰ろうとしているとき。

 なんだろう、なんでありがとう…?

 多少の違和感は覚えたものの、

「うん……じゃあね」

 と返しておいた。



 「紫村楓さんは、昨日、転校しました」

 その一言を聴いたときの、私の顔。
 本当に真っ青だったと思う。
 
 血の気が引くって、こんな感じなんだ……。
 
 自分が情けなかった。

 あの、ありがとうは……そういうこと?
 なんで、ありがとう……?

 表ではみんなと同じように笑って、裏では仲良く話して。
 そんな偽善者が感謝された。

 ……なんで?なんで?なんで?

 辛さに気付いていた。
 それなのに無視した私。

 本当に誰にも言わずに転校した、楓ちゃん。

 私が、一言発していたら…?
『やめよう』『一緒に組もう』『大丈夫?』言えていたら…?

 本当の友達なら、そんな酷いことしない。


 私 に 勇 気 が あ っ た な ら ――

17:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/09/22(土) 12:14

>>16です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=22&id=6361215

18:まつり^^ゆず◆klVAly. hoge:2018/11/03(土) 22:36

「絢利ちゃんって、なんで感情を殺.すことができるの?」

 えっ、と声をなんとなく発した、気がする。
 表情が、貼り付いた笑みが、ストンと抜けていくことがわかった。



 気付いたら、いつも口角を上げていた。 
 面白くもなんともない。不快なことを言われる。

 それでも、なぜか笑っていた気がする。
 笑うしか、無かったのか。


「 無愛想、もっと笑いなさい 」
「 顔、怖いよ〜 」
「 常に笑顔でいられたら素敵ですね 」


 ――――――ああもう、めんどくさいや。


 私は感情に蓋をできた。

 すごく面白い、笑いが止まらないようなことが起きた。
 でも、『大したこと無いよね』『面白くもなんともない……』そうやって心のどこかに蓋をして、スイッチを切って。

 すると、フッと何にも感じなくなる。表情も気持ちも、何もかもが抜け落ちた。

 これは、誰にでも出来ることなんだ。今までは、そう思っていたのに。
 そんなことは無いらしい、十三歳にして気付いた。

19:まつり^^ゆず◆klVAly. hoge:2018/11/03(土) 22:37

 ――正直、悔しくはない。
 音楽に勝ち負けを付ける方が納得行かない。
 合唱コンクールは、クラスの団結力等を高めるためのものであるから、勝敗なんておまけみたいなもの。

 私はそれに需要を感じない。
 最後までみんなで走りきったという事実があるんだから、それで良いよ。


 パートリーダーの言葉として、クラスに向けて発した。
 嘘偽りの無い私の気持ちだ。私の、気持ち。
 なのに――――――――――――




「なんで、感情に蓋をできるの?」

 再度純粋な笑みで問いかけてきた指揮者ちゃんは、自然に首をかしげた。
 ――なんで、だろうねぇ……

「んー、そう? なんでだろーね、分かんないや」

 とりあえず戻った表情で言ってみた。
 いつも通り、軽く、ゆるく……


 笑えって言っただろ。それは、それは――偽りを無理強いした、あなたたちの――――――――


 


「本当は、」

 掠れた声を発すると、目から汗が絞り出された。



 悔しかった、優勝したかった、そうしたら……届いたんだって、物理的に証明できるから。
 本当は、本当は…………『悔しいね、って、みんなと一緒に泣きたかった』

20:まつり^^ゆず◆klVAly.:2018/11/03(土) 22:41

>>18-19
さっき衝動一発書きしたのをなんとなく投下。
今までみたいに他サイトで上げてるヤツではないです。書き下ろし?になるのかな。



本当の気持ちを知ることって、怖くないですか?
『絢利ちゃんだから――』『どうせ、適当に笑ってるんだよね』『なんでも笑って受け流すんだから』
そんな言葉の描写を入れたかったと投下後に思った駄作者()

21:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

整理のために四年ほど前にここの友達向けに書いた短編を投下。その友達に寄せて書いた記憶がある。添削はしていないです


*

「そらー!部活行こう!」

 わたしの名前は山上 空良(やまがみそら)。
 秋の文化祭での演奏に向けて、吹奏楽部での活動を頑張っている。

「うん、行こう!」

 笑顔で返事をすると、結可(ゆか)ちゃんと二人で駆け出した。



「はい、ちょっと止めて……。山上さん、少し遅れてる。大変だろうけど、練習しておいてね。それとドラムの音をよく聴いて……」

「はい……」

 まただ。夏休みの自主練習を怠ったせいで、だんだんとその差が出てきている。

 どうしよう…せっかく、ソロを任せてもらえたのに。
 足を引っ張ることだけは、絶対にしたくないのに……!

 自業自得だ。


『ファイトーッ!』

『ファイトーッ!』

『多宮田 ファイトーッ』

『ファイトーッ!』


「あ…」

 大知の声だ。

 野球部の掛け声。 
 濁った音の合間に響く。

 沢山の、沢山の音の中。
 わたしは必ず聞き分けられる。

 大知の声を。


「好きだ……」

 ――わたしは、小さな頃からずっと……仁平 大知(にひらだいち)に恋してる。


 今日も聞こえてくる掛け声。
 ――頑張れるよ、大知。



「ねえねえ璃々ちゃーん、大知くんと付き合っているってホント?」

「えっ……」

 ……今は、2月。
 文化祭での演奏も大成功!……と喜んで、冬休みを満喫して。
 
 久しぶりの部活動、といったところだ。
 そんな……浮かれているときに、この一言。

 話題の中心にいるトランペットパートの美嶋 璃々(みしまりり)ちゃんは、凄く大人っぽくて可愛くて……わたしなんかとは比べ物にならないほど優秀な女の子。

「ん〜、まだ付き合ってないけど。バレンタインに告白しようと思ってるの!」

「うわー、頑張ってね!」

「璃々なら大丈夫だよ〜」

 女子みんなが励ましている中、わたしが言い出せたはずがない。

 “わたしも大知のことが好きなの”

 ……もう、嫌だよ。
 昔から大好きだったのに。
 ずっと、ずっと。

 璃々ちゃん、野球部の掛け声、いつも聴いてる?
 大知の声、わかる?


 ――璃々ちゃんより、わたしの方が、昔から……!!

 
 恋って、こんなにも儚く散っちゃうんだ。
 ……わたしって、こんな性格だったんだ。

♯♯

22:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

「はよーっす!」

 朝から声が大きいこと。なぁんて思いつつ。
 大知の心地良い声を聴いて、一日が始まる。

 ……失恋、したんだっけ、わたし。

 もう、なんで?
 諦められないの。大好きなの。
 
 トクトクと鳴っている心臓。
 それが、少し気持ち良くて……。


「そら?」

「えっ!?」


 大知……?
 なんで、どうしたの?

 大知は、璃々ちゃんのことが好きなんでしょ?
 こんな、なんとも思ってない女子に気安く話しかけない方がいいよ。

 ……違う。

 わたしが、嫌なの。期待しちゃうから。
 話しかけてもらえて、嬉しくて。
 もしかしたら……を考えちゃうから。

「お前、今日元気無くね?」

 ――なんで。

「どうして、分かるの……」

 あなたのせいよ

 もう、やだ……。


 諦められないじゃん。


 “大好き”
 
♯♯♯

「ムードメーカーのお前が静かじゃ調子狂うよ」

 そう言ってくれた彼の元へ、わたしは走る。

 ドキドキドキドキ。

 頭の中で、強く強く鳴っている。
 心臓が暴れてるや。

 だって……今日はバレンタインデー。
 璃々ちゃんが、告白した日。

 ……に、まさかわたしも告白するなんて…………。

 あなたは運動神経抜群で。
 いつもリレーのアンカーだよね。

 そのくせ、勉強もできちゃうの。
 悔しいけど、あなたが教えてくれると、数学のテストの点数が上がる。

 でも、少し幼くてやんちゃだよね。
 そこが、本当に昔から変わらない。


 ドクドクドクドクドク。

 全身が心臓になった。
 スー、ハー、スー、ハー。
 子供みたいに、思い切り深呼吸して。


「好きだよっ!!」


 ああ……言っちゃった、言っちゃった。

 もう、おしまいかな。
 “幼馴染み”でいれた、最後の瞬間。


「オレも好きだよ」


♯♯♯♯


 璃々ちゃんと付き合っているという噂は、全くの嘘だったこと。
 璃々ちゃんにチョコレートを差し出されたけど、断ったこと。

 そして……昔から、わたしのことが、その……す、すき、だったこと。

 ゆっくりと説明してくれて……。
 悩んだ日々の疲れからか、ヘナヘナと崩れ落ちてしまった。

 ……それを大知に支えられるものだから、もう心臓が持たなくて。
 
 ああ……

「良かった……」

 そう呟くと、

「もう一度言ってやろうか?」

 なんてキザなことを言うもんだから、言い返してやった。

「なっ…なによ、どうせ恥ずかしくて言えないくせに!」

 そしたら、なんて返されたと思う?


「大好き」 


 ……もう、心臓が持たないって。

「好き、とは言わなかったよな?」

 って……本当に、やられたよ。


 ……だから、わたしも仕返ししたの。


「わたしだって、大知に負けないくらい……」

 息を吸って、

「大知のことが……」

 思い切り、

「 好 き だ か ら …… ! 」

 

23:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:33

同時期に也か何かの世界観イメージで書いたもの。そこまで生々しくはないだろうけど流血表現があって人が死ぬ。

*

«ヒマワリの彼方»

「……お前、ヒマワリ……好きだろう。ほら」

 そう言ってわたしの胸にヒマワリの束を押しつけた彼は、力なく笑った。
 腹部から溢れる紅いものが、私の膝に触れる。
 それは生温いようで、冷たかった。
 
「オレ……お前を守れた、よな。本望、だ……」

 嫌だ。いかないで。逝かないで!!

「やっ、やだぁっ……いっちゃ、だめ、だよぉ……っ!」

 視界が一気に歪んだ。
 なんで、なんで…!

 お腹の中からせり上がってきたあつい物が、目からポロポロとこぼれ落ちる。

「いやっ、いやだ、ねぇ……」

 行かないで……!
 ぎゅっと握りしめた、手と手。
 わたしの手も、だんだんと紅く染まる。

 わたしに会えない世界なんて。
 あなたに会えない世界なんて。
 
 嫌だ、嫌だよ。

「そんなとこ、行ったってっ…!つまらない、から、お願い」

 一緒に生きよう……!

 あなたのいない世界なんて――

「……愛してる、アカリ。お願いだ――」

 生きろ。

 彼の口がそう動いた。
 声は……どうだろう、分からない。

 ねえ……なんで? 
 手、冷たいよ……。

「うっ、ううっ、う……」

 うわああああああああっ!

 嫌だ、いかないで、行かないで、逝かないで!!
 泣き叫んだ、なんて。

 泣いているのか、叫んでいるのか、どちらでもないのか。わたしには分からない。

「嫌だ、嫌だよ。あなたのいない世界なんて、いらない!」

 絶え間なくこぼれるしずく。
 あなたの静かな顔に落ちた。

「嫌だ、嫌だ!!わたしもいく!連れてって、お願い!!」

 彼の手から滑り落ちた白刃を、自分に向けた。
 それには、倒した相手のものであろう血液がべっとりと付いている。

 ――生きろよ。幸せになれ……

 あなたのいない世界で、幸せになるなんて。
 できない。できないよ。

 あなたがいない世界で、わたしが幸せになれるなんて……!

 
 強い風が吹く。

 ヒマワリの花弁が舞った。

 それは風にのって、遥か彼方へ姿を消す。

 
 ――このヒマワリは、あなただね。

 ―――生きようか―――



 生温い。けれど、だんだんと冷たくなって行く、わたしの膝元の紅。

 紅く咲いた華。
 彼は、儚く散ってしまった。

24:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:38

同時期の(以下略
この夢は実際に見ました。大分脚色しているけれども。今思うと夢日記みたいな感じでちょっと怖い

*

<愛された“人形”>

 夢を見た。

 隣のクラスで同じ部活、部活動では役職が同じという関係でそこそこ話す男子のKくんが、私の頭を撫でてくれる。

 そこには部活が同じみんながいた。
 それでも夢の中の私は、なんの恥じらいもなくて。

 柔らかな視線を満足に受け取って、口元の優しい微笑みをとらえて。
 時に優しくサラサラと、時に悪戯にクシャクシャと、撫でられていた。

 ――撫でられている私は、ずっと黙っていて。

 なんの恥じらいも見せず、抵抗もせず。
 ただ、おとなしく撫でられていた。

 夢の中の私は、きっとお人形のように可愛いのだろう。

 
 そこは、プールだった。
 入水する前、プールサイドに腰かけて。

 私の太くて毛深い脚は、夢の中ではどうなのか……それは、考えないことにした。

 ウエストもキュッと引き締まって、柔らかな身体なのかな……と、想像してみる。

 プールを挟んだ向こう側で、誰かが物を投げて寄越していた。
 それを受け取りに、皆が入水する。

 Kくんが先に受け取るため、水中に飛び込んだ。

 難なく、無難に受け取って出水しようとしている。
 
 私の番になった。
 スッと飛び込む。

 久しぶりの水中。
 今までは水泳を習っていて。
 水は友達、自由な空間。

 受け取ったなにかを、無理矢理沈めてみる。
 それを取りに潜水して、深いところを、人の間を縫って泳いだ。

 気持ちいい……どこまでも行けそうな、開放的な空間。
 縛られていたなにかをほどかれたような。


 しばらくして、プールの隅の方で休んでいると、Kくんがやって来た。
 優しく頭を撫でられる。

 ホッとして……黙って撫でられる、ワタシ。

 
 あ――
 
 
 私じゃ、無いな。
 
 見た目は私。意識も私。それでも、私じゃない。
 私はあんな子じゃない。

 Kくんに愛される度に別人となって行く。
 Kくんに愛される。そうして……私の個性は―――

 愛されているのは“人形”である。


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