【東方】「始霊伝」

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1:語り手◆3.:2020/06/24(水) 20:39

幻想郷の守護者『博麗霊夢』
これはそんな彼女が博麗の巫女となり、数多の異変を解決する以前に、始めて訪れた邪悪な妖との戦いの物語。

>>1 世界観と注意
>>2 異変キャラについて

367:最後の戦い◆gI:2020/10/27(火) 05:06

くそぉっ・・・・・!!!!!

グォッ・・・・・!

(追撃を受けるわけにはいかない一心で口から血を吐きながらも、必死に追撃をギリギリでかわすと、再び妖力を光弾に変えて今度は連続で発射し始める・・・・・

しかし、威力やスピードが先ほどとは違い、明らかに落ち始めているのが目に見える形でもわかるようになり始めていて・・・・・)

368:力への渇望◆3.:2020/10/27(火) 12:27

犲狼
「どうしたァ?随分と鈍いじゃねぇ……か!!」

犲狼は蔵蜜の放った弾幕が正面から当たり、防壁が更に削れて行くものの、あまり妖力や霊力のコントロール能力が無いからか、その変化に気付いておらず、そのまま蔵蜜の前にまで迫り、そのまま叩き落とそうと右腕を振り上げる……

369:最後の戦い◆gI:2020/10/28(水) 06:05

・・・っ・・・・・!!!!!________

【回想、数ヶ月前・・・・・】

げほっ・・・・・!げほっ・・・・・!

(森の奥・・・・・吐血混じりの咳をしながら、歩みを進める・・・・・

少ししてから、立ち止まると「ついて来てるのはわかってる・・・・・いい加減、こそこそするのはやめたらどうだ?橙、藍・・・・・」と言い・・・・・)

370:力への渇望◆3.:2020/10/28(水) 08:06


「……なんだ、気付いていましたか。」

両腕を袖の中には隠すようにして腕を組ながら自信と橙にかけていた気配と姿、音の三つを消す隠密行動術式を解除した藍が姿を現すと、その藍の後ろで藍の尻尾で隠れるように後にいた橙が顔を覗かせている。

371:最後の戦い◆gI:2020/10/28(水) 21:42

私だってそれぐらいは気づく・・・・・

(そう言うと、袖で口元の血をぐしっと拭き取り、そのまま振り向いて「で、何の用だ・・・・・?何も用がなくてついてきた、というわけではないだろう・・・・・?まぁ、この先に用がある、というなら私の早とちりなだけだが・・・・・」と、二人が自分をつけてきた理由を聞こうとするも、この先に用があるのであれば自分がただ勘違いしていただけだと思って上記を言い)

372:力への渇望◆3.:2020/10/28(水) 23:37


「いや、私達の要件は蔵蜜殿に関係しているものだよ。
……紫様から伝言を預かっている。
『その状態を改善する策はこの幻想郷内にも存在しない』
だそうだ……」

藍は自分のかけた隠密術式に対して、彼の持ち前の嗅覚を活かして自分達の存在を察知できたのだろうと理解をすると、彼の血を吐く様子を前々から知っていた紫が様々な策を講したものの、彼の体調を回復させる手段は見付からなかったと教える……

残酷な現実だが、嘘をつき、何時までも煙に巻き続け、下手に希望を抱かないようにした方が良いと思い、紫が伝えたのだろう……だが、良い報せを持ってくる事が出来なかった事、みすみす彼が衰弱していく様を見ていることしか出来ない自分達の現状に悔しさと苛立ちさえ感じている藍は少し俯く……

373:最後の戦い◆gI:2020/10/29(木) 06:00

紫は知っているのか!?一生懸命隠し続けてきたつもりでいたが・・・・・

(寧ろ、紫側が知っていたということを知らなかった自分の方が無知であり、紫の方が隠し事上手だと思い知らされる・・・・・

「そうか・・・・・あの不老不死の医者のところへ行けば、何とかなるとは思っていたんだがな・・・・・げほっ・・・・・!?」

言葉の後に咳き込むと、再び口から大量の血を吐き両手で口を押さえてしゃがみ込む・・・・・)

【あ、ちなみに八雲一家側のロル内で「彼」になっていますが、蔵蜜は女性ですW】

374:九尾と化猫◆3.:2020/10/29(木) 12:03


「紫様は貴女の生命力が日に日に弱まっている事を知ると、スキマを通じてその原因を探っていました……これまで監視をしていた事を許してほしい。」

藍は袖の中で両腕を組みながら頭を下げ、これまで監視していた事、勝手に動いていた事に対して主である紫の代わりに謝罪する……
そして再び血を吐く彼女の姿を見て、心配そうに声をかけようとする橙の頭を優しく撫でる。
それはまるで、最早自分達には彼女を治す方法が無いと言うことを優しく教えるよう……

375:最後の戦い◆gI:2020/10/30(金) 06:18

・・・・・いや、いいんだ・・・・・長い付き合いであるが故に伝えるのが辛くて、最初に隠そうとしたのは私なんだ・・・・・文句は言えないさ・・・・・

(そう言うと「不老不死の医者が言うには、抗体を打つ度に病原菌が対応して変化する、とか言っていた・・・・・現状では打つ手はないが、何とかするとも言ってくれたんだがな・・・・・正直、諦めてるよ・・・・・」と言う・・・・・

森の中、舞い落ちる木の葉は蔵蜜のじわじわと減り続ける散りゆく命を表しているようにも見える・・・・・)

376:九尾と化猫◆3.:2020/10/30(金) 12:19


「元来、我々妖はそもそもの体構造が違う。心臓も、血液も、脳も全ては存在に付与したものに過ぎない。だから病も毒も効果は無い筈なんだ。例えそれが元獣や人であろうと同じだ。我々にとって心臓や脳の代わりを成しているのが魂であり精神だ。故に我ら妖は肉体よりも精神が重要なものとなっている。」

妖怪とはそもそも、一部の例外を除いて、既存の生命体のように心臓や脳が生命活動の維持に不可欠なものではなく、脳や心臓を始めから持っていない者さえ存在しているぐらいだ。妖怪の天敵は怨霊、これがその理由ともなっている。



「……にも関わらず、貴女の体には病のような異常が見られた……この時点で紫様はただの病や毒によるものではないと気付いていました。おそらく、竹林の医師もそれを知っていたのだろう……」

肉体的な要因よりも精神的な要因が中核を成す妖にとって、病や毒など大した害にはならない筈であるにも関わらず、蔵蜜を蝕んでいる事から、精神や魂に影響を成している事が容易に想像が出きる。
紫も永琳も、彼女がただの病ではなく、"呪い"に準ずる影響を受けているのだと知った事で、手の施しようが無くなってしまっていた……

紫が幾ら外の世界の医療技術を試そうとしても、永琳が幾ら薬を作り出そうと、精神を蝕むものを除くことは出来ない……紫の能力で病と彼女を切り離す事も可能かもしれないが、そうなれば蝕まれた精神は永遠に欠落してしまうだろう……

377:最後の戦い◆gI:2020/10/30(金) 14:16

・・・・・私は情けないな、無理なものは無理、それを理解出来ずにただただ医者に頼んで紫には隠そうとして・・・・・

(そう言うと、顔を上げて二人を見ながら「・・・・・あの医者が言うには、幸いこれは他者に伝染することはないそうだ・・・・・」と言い、藍と橙を抱きしめながら・・・・・

「・・・・・すまない、少しの間、こうさせてくれ・・・・・」

と言った・・・・・

その声は、今にも消えてしまいそうなほど小さく、震えていた・・・・・)

378:九尾と化猫◆3.:2020/10/30(金) 17:32


「……私は構わないよ……」

藍は今にも消え入りそうな彼女を抱き止めたまま、彼女がこのまま消えてしまわないように優しく言葉を返す。例え伝染する病であったとしても藍は迷わずこうしただろう。
自分はどうしたら良いのかわからない橙はとりあえず藍と蔵蜜の二人を小柄なりに抱き付く。

紫は昔から多くの友や仲間、志を同じくした同胞がいた……
だが、一人、また一人と理解者と呼べるべき友を失って来た……
主の紫はまた一人、親しい友を失うのかと思うと、藍の中で更に悲痛な思いが強くなっていく……

379:最後の戦い◆gI:2020/10/31(土) 05:47

ありがとう・・・・・本当に・・・・・すまない・・・・・

(受け入れてくれる藍と橙の二人に感謝を述べながら、力がこもっているかもわからないような腕力で抱きしめる・・・・・

腕力が低下しているのではなく、声が弱々しいのと同様、込めるに込められないのだろう・・・・・

すると少しして、腕がだらんと下がり、蔵蜜の息も少し乱れ始め、呼吸が不規則になっている・・・・・)

380:九尾と化猫◆3.:2020/10/31(土) 07:56


「…………!?
どうしました?大丈夫ですか?」

藍は抗えぬ運命を前に無力を感じる中、抱き締めていた蔵蜜から力が抜け、呼吸が不規則になり始めると急いで彼女の様子を、体調を伺う。

381:最後の戦い◆gI:2020/11/01(日) 06:04

・・・・・あ、あぁ・・・・・大丈夫・・・・・だ・・・・・最近はよくあることなんだ・・・・・

(そう言うと「紫の前とかだと必死になって隠していたんだがな・・・・・今じゃやっと隠すことさえ叶わない・・・・・」そう言うと、二人に「・・・・・私がいつの間にか何日も姿を現さなくなったら、その時はもう私はいないと思ってくれ・・・・・」と、最期の時を一人で迎えるつもりであることを明かして・・・・・)

382:九尾と化猫◆3.:2020/11/01(日) 06:24


「よくある……?それってまさか……」


「………………わかりました。」

橙も蔵蜜に残された時間が少ないのだと言うことを悟ると、それを言葉にしようとするものの、それを藍が寸前で口許に手を当てて首を左右に振って制止させると、悲しそうな、寂しそうな目をしたまま静かに彼の望みを承諾する……

383:最後の戦い◆gI:2020/11/01(日) 11:39

ありがとう・・・・・

(正直、こんなことを言うのは心が痛むが、自分の最期を見て誰かが悲しむのであれば、まだ一人で逝く方がマシだと考えていた・・・・・)

_________

ゴォッ・・・・・!

・・・・・

(豺狼の容赦ない邪悪な一撃が、蔵蜜の体中の骨にヒビを入れ、そのまま地面へと叩きつける・・・・・

蔵蜜の、せめてこんな自分でも力になれればという想いが、いとも簡単に踏みにじられる・・・・・)

384:九尾と化猫◆3.:2020/11/01(日) 12:18

犲狼
「グハハハハハッ!!!やはり俺様が一番強い!力のある奴が一番正しい!力の無い奴や弱い奴は悪だ!!」

犲狼はその巨大な腕を幾度と無く振るい、残された時間の少ない蔵蜜の体へ無慈悲な一撃を幾度と無く繰り返していく……
二人とも元は同じく犬であったにも関わらず、蔵蜜は守り、助ける事を選び、犲狼は奪い、脅かす事を選んだ……その結果がこれであると言うのならば、この世界には最早人間が思い描く救いの神と呼ぶべき存在などもういないのかもしれない……

385:最後の戦い◆gI:2020/11/01(日) 14:08

《・・・・・》

(蔵蜜は、心の中でですら、もう無言になっていた・・・・・が、ここで決心をする・・・・・)

《・・・・・じゃあな、紫・・・・・》

グォオッ・・・・・!

ガァアアアアァアアアアァァァァアアアァアアアアアァァアアッッッッッ!!!!!

ドッ!!!!!

(蔵蜜は残った力と命の全てを振り絞り、全身が銀と黒の毛で覆われた巨大な犬の化物へと変貌を遂げる・・・・・

しかし、理性は保てているのか、変貌を遂げると、迷いなく豺狼を睨みつけながらうなり声を上げ、そのまま飛びかかって豺狼の体のあちこちを食いちぎろうとする・・・・・)

386:九尾と化猫◆3.:2020/11/01(日) 15:34

犲狼
「………!!?」

犲狼は勝ちを確信していた。
彼女の体格、感じられる妖気、耐久力から攻撃力の全てから考えても、もはや策を練らなくとも力押しだけでも充分に勝てると……
だからこそ、巨大な犬のように変化した蔵蜜への反応が大きく遅れ、不意を突かれるようにして蔵蜜の飛び掛かりを受け、犲狼の体には幾度と無く蔵蜜の噛撃を受け、犲狼を守る防御が大きく削れ、犲狼が歴代の巫女達から奪った霊力が消耗されて行く……


犲狼
「こ……の野郎……!!!」

だが、犲狼もまた、一筋縄では行かない……
犲狼を守るバリアが削れ、犲狼の力が大きく削れて行ったものの、犲狼が身体中から生えた無数の赤黒い棘を伸ばして蔵蜜の体を突き刺し、更に犲狼の妖力から生み出した毒によって彼女の命を削ろうとする。

387:最後の戦い◆gI:2020/11/01(日) 17:11

ガアアァアアッ・・・!!!!!ガアァァァアアアアアアァアアアアアアアァァァアアアァアアッ・・・・・!!!!!

(豺狼の無慈悲な棘が、蔵蜜の全てを貪り始める・・・・・

棘が突き刺さった部分は血が滲み出ながら赤紫色に変色し腐ってゆく・・・・・

が、状況とは対照的に、棘によって自由に身動きもできないばかりか、動けば動くほど棘が更に突き刺さるのは明白であるのに、蔵蜜は再び豺狼に噛みつこうと棘を振り切ろうとしながら暴れる・・・・・

彼女の面影は、もはや誰かの為に尽くすという性格の部分しか残っていないほど、見るも無残に変わり果ててしまっている・・・・・)

388:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/01(日) 17:43

犲狼
「グハハハハハッ!馬鹿め!足掻けば足掻くほどにお前がダメージを受けるだけだ!そんな状態では攻撃どころか回避も防御も出来ねぇぞ!!そのまま犬死にしろやァ!!!」

犲狼は吠えるように蔵蜜が暴れれば暴れる程に犲狼が突き刺した無数の棘が体に食い込み、傷口が広がり、体力の消耗と共にダメージを蓄積をさせているものの、自身を守る霊力で形成された防御が大きく削られている事に気付くと、もし己のダメージを省みずにこのまま攻撃を続けられた場合、自分が滅ぼされると言う鬼気迫るものを感じ、それを振り払うべく巨大な口を開けて今度は犲狼から蔵蜜の喉元に噛み付いて食い千切ろうとする。

389:最後の戦い◆gI:2020/11/02(月) 06:19

グルルルルルァァァアアアアアアアアッ・・・・・!!!!!

(喉元に噛み付かれ、血を吹き出しながら聞くに耐えない声を上げる・・・・・

死というものが、まさに今見える形で目前に迫っているような、地獄絵図とも言える状況であると同時に、蔵蜜の抵抗も徐々に弱まってゆく・・・・・)

390:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/02(月) 07:27

犲狼
「(グハハハハハッ!やはり馬鹿だな、奴の体には俺様の伸ばした棘が刺さり、更に喉元を噛み付かれている以上、下手に暴れれば暴れるほどに傷が悪化していく!それに対して俺様は防壁が削られるだけで損傷を抑えられるだろう。これまで俺様が苦労して集めてきた巫女や妖怪の力が無くなっていくのは痛いが……奴らを喰らって力を回復させればいいだけの話だ!!!)」

犲狼にはまだ余裕があった……
どれだけ蔵蜜に噛み付かれようと、爪で切り付けられようと、自身を守るフォースシールドの強度を前に、そのいずれの攻撃もシールドを削るだけで致命傷になることは無いと言うことから、犲狼には焦りが見られず、対照的に死へと落ちて行く蔵蜜の様子を見て喜んでさえいる……

だが、蔵蜜の奮闘により、魔理沙によってあと二回は大技が放てるだけの力が回復している霊夢であれば犲狼の守りを打ち砕ける程に防御が衰えている事に犲狼は気付いていない。

391:最後の戦い◆gI:2020/11/02(月) 19:12

グル・・・・・ルルルゥ・・・・・ガァアアアァアアァァァァアア・・・・・!

(徐々に抵抗力が弱まっていき、そして、とうとう動かなくなる・・・・・

棘が刺さった部分は未だに痛々しく、腐食がどんどん進んでいて、首からは血が流れ出続けている・・・・・

あれだけの抵抗も虚しく、最後なんてあっけないものなのかもしれない・・・・・)

392:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/02(月) 21:16

犲狼
「ふん、手こずらせやがって!だがこれであとはボロボロになった博麗の巫女だけだな!」

蔵蜜はそのまま顎と頚の力を用いて蔵蜜の体を押し退けて立ち上がろうとしながら、目線を霊夢を探すべく周囲へと動かし、彼女の姿を探し出そうとする。
もはや蔵蜜に対する警戒や注意は薄れ、次の敵対者である霊夢への警戒を行い始めている。

393:最後の戦い◆gI:2020/11/03(火) 06:00

・・・・・

(豺狼がその場から動き出そうとする前、まだ近くにいて攻撃がしやすい状況、蔵蜜は豺狼へと再び視線を向けると「お前の負けだよ」と言わんばかりの目つきで思いっきり起き上がり・・・・・)

ガルルルアアアアァァァアアアアアアアァァアアアァアアアアアアアアアァァァアァアアァァッ!!!!!

ズッ・・・・・!!!!!

(蔵蜜は残った力の、本能に絞りカスほどにしか残っていない力を使って、豺狼に思いっきり飛びかかりそのまま豺狼のシールドを全て削る勢いで噛み付き、棘の毒によってもうほぼ腐っている両腕の内片腕を豺狼の心臓付近へと突っ込んで体に風穴をあける・・・・・

もはや火事場の馬鹿力とも言えるような、どこにこんな力が残っていたのかと言わんばかりの強い力で蔵蜜が死んだと勝手に思い込み油断した豺狼へと攻撃を続ける・・・・・)

394:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/03(火) 06:39

犲狼
「!!?」

犲狼
「ちッ!まだ生きていやがったか!!!」

犲狼は先程の霊夢との戦いの時に執拗に心臓を狙う霊夢に警戒してフォースシールドの多くを胸部に集中させていた。
そのため、蔵蜜の攻撃によってフォースシールドの多くが薄れ、削られたものの、特に防御を集中させていた胸部にはまだ高い防御力を有していたため、霊夢と同じように蔵蜜による心臓を狙った一撃も意図せずして防ぎきる事に成功する。

これにより、胸部に集中させていたフォースシールドも大きく削り取られ、犲狼の守りがより薄れるものの、その代償として犲狼は反撃として右腕に奪った霊力を集中させ、威力を増大させた一撃を彼女の頭目掛けて振り下ろす。

その威力は集落を壊滅させたあの途方もない破壊力を秘めたものとほぼ同等の威力が込められている……

395:最後の戦い◆gI:2020/11/03(火) 18:22

・・・・・!!!!!

_____________

幻想郷の住人となる前、蔵蜜は行く宛もない野良犬だった・・・・・

毎日毎日、その日一日を生き抜くのがやっとの日々・・・・・

蔵蜜自身、人間によって親や兄弟を殺され、一匹生き残った・・・・・いや、生き残ってしまった宿命か、人間を強く恨む怨念を背負って生きていた・・・・・

396:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/03(火) 18:37

《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォッ》

耳をつんざくような、大気と大地を震わすような壮絶な轟音と共に犲狼が振り下ろした右腕が回避も防御も行えていない蔵蜜の頭に直撃し、辺りの地面には無数の亀裂が生じ、その凄まじい破壊力を物語る……

犲狼もまた、霊夢との戦闘時にもあったように、蔵蜜と同じ名も無い野犬の一匹であり、外の世界にて、他ならぬ人間の手によって捨てられ、親兄弟を殺され、激しい怨念と憎悪が渦巻く中でこう悟った……

"弱い奴は何も守れない、強くなければ何も得られない、何かを守ることも、自分の命すら守れない。"

"この世はどこも弱肉強食だ、どれだけ綺麗言を並べようと、弱い奴は屑だ、強くなければ意味がない"

"俺様が誰よりも強くなって弱肉強食の世界を支配してやればいい、そこで俺様の親兄弟を殺した人間を絶滅させ、この俺様の考えが正しかったのだと証明する"

"そのためには誰がどれだけ苦しもうと、息絶えようと関係無い、弱いのが悪いのだ、強さだけが正義だ、強さこそが真理だ。"

こうして強さに執着し、破壊と殺戮を求める犲狼(ケダモノ)が生まれてしまった……

397:最後の戦い◆gI:2020/11/04(水) 06:08

グチャッ・・・・・

・・・・・

《お前は、私と同じだ・・・・・あの時の私と・・・・・

人間を恨み、ただただいつか力を持って復讐してやるということだけを目標にして生きていた、あの時の私と同じだ・・・・・》

(豺狼の一撃が直撃し、右目が抉られ宙を舞い、脳の一部は弾け飛んでゆく・・・・・

蔵蜜は今度こそ本当に動かなくなった体が地面へと倒れゆく中、実際はあっという間の時間だが、倒れゆく蔵蜜自身は走馬灯が見えるほどに長く感じた・・・・・

そして蔵蜜は、今目の前にいる豺狼を、かつての自分と重ねて見る・・・・・)

398:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/04(水) 19:06

犲狼
「しぶとい奴だったが、頭を潰されて生きられる奴なんざいねぇ、これで完全に終わったな!!」

仕留めたと思いきや、立ち上がって反撃をしてきた事には驚いた……
そのせいで自身を守る防御の大半が失われた。
だが、能力の結集である鉄壁に近い防御壁が失われようと、もはや残る敵対者は霊夢だけであり、その霊夢もボロボロだ、もはや自分が負ける事はないと考えると、霊夢の方向に向かって歩き始める。

399:最後の戦い◆gI:2020/11/04(水) 23:17

・・・・・ぅ・・・・・ぁ・・・・・

ガシッ・・・・・

(辛うじてまだ生きている蔵蜜は、生きている内にできるだけ豺狼を食い止めようと、豺狼の足を掴む・・・・・

もう力は残っていない・・・・・豺狼が言う、所謂「弱い奴」の部類になった蔵蜜は、それでも強い相手に反旗を翻す・・・・・

借り物の力で戦う卑怯者の豺狼と、最後まで自身の力で戦い、死が近くてもまだ仲間の為に抗う蔵蜜・・・・・

似たような人生を歩んできた二人の決定的な違いはここだろう・・・・・)

400:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/04(水) 23:33

犲狼
「……!!?」
《ゾワッ》

犲狼は蔵蜜の残骸は後で喰らえば良いと考えており、一歩、また一歩と霊夢に向けて近付く中、頭の大半が消し飛ばされていながらも、自分の足を掴んで引き留めようとする蔵蜜の姿を見て、本来ならばとうに事切れている筈のダメージを受けながらも自分を止めようとしている彼女に恐怖さえ感じるようになる。


犲狼
「なんだ…なんなんだお前は!?何故まだ生きている!?」

激しく動揺しながらも、自分の脚を掴む蔵蜜目掛けて、残った魔力を自分の尾に集中させ、まるで刃のように変えると、そのまま彼女の腕に目掛けて振り下ろし、腕ごと切断して引き剥がそうとする……

401:最後の戦い◆gI:2020/11/05(木) 18:20

ぐ・・・・・が・・・・・

ガシッ・・・・・

(腕を切断されれば、もう片方の手で掴む・・・・・

死の寸前であるはずなのに、どこまでも抗おうとする執念深さは狂気の域に達しているのかもしれない・・・・・

意地でも霊夢のもとへは行かせないつもりらしい・・・・・)

402:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/05(木) 21:48

犲狼
「ちッ!往生際が悪いぞ!!さっさとくたばりやがれ!!!」

犲狼は得たいの知れない恐怖を感じたまま、今度は刃のように変えた尾ではなく、彼女の方へ振り返り(霊夢には背を向ける形となる)、右腕を大きく挙げ、今度は二度と邪魔が出来ないようにその体を跡形もなく消し飛ばそうと右腕に妖力を集束させ始める。

だが、これによって霊夢が反撃を……魔理沙の授けたポーションによって回復し、残された大技を放つための最大のチャンスが出来る……

403:最後の戦い◆gI:2020/11/06(金) 05:44

・・・・・

(霊夢は回復し意識を取り戻すと、すぐ様状況を理解する・・・・・

蔵蜜に気を取られ、豺狼がこちらに気づいていないということは、今この時こそ、全てを終わらせるべき最大のチャンスであると・・・・・

霊夢は気付かれないようにゆっくりと立ち上がる・・・・・)

があ・・・・・ぁ・・・・・

(蔵蜜は回復した霊夢がゆっくりと立ち上がるのを見て、もう少し自分へと気を引かせようと左腕に噛み付く・・・・・)

404:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/06(金) 17:26

犲狼
「目障りだ、消えろ!!!」

犲狼は振り上げ、妖力を集中させていた右腕を勢い良く振り下ろし、その圧倒的な妖力の塊を叩き付ける事で既に瀕死に追い詰められていた蔵蜜に対して過剰なまでに強大な威力を持った一撃を繰り出し、バラバラに消し飛ばそうとする……これを受けてしまえばもはや原型すら留めることは困難であると思われる……

405:最後の戦い◆gI:2020/11/07(土) 02:04

その時・・・・・

消えるのはアンタでしょ・・・・・?

ゴオオォォォオオオオオオ・・・・・!

(お祓い棒、大幤を持った霊夢は、次は仕留めるという勢いで全力の一撃を豺狼の背後から豺狼の心臓部辺りへと放ち、豺狼の体を、今まで守られていた体をその一撃によって貫いて外側からも内部からも焼き尽くす勢いで豺狼の体へ大ダメージを与える・・・・・

豺狼が蔵蜜へ気を取られていたこともあり、防御しようにも防御へ回れる隙すら与えない、正に豺狼との因縁に終止符を打つ、最後の一撃・・・・・)

406:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/07(土) 07:49

犲狼
「!!?
ぐ……おォォォォォォォ……!?」

勝敗は喫した、もはやこの場には瀕死の巫女と犬神しかいない。
どれだけ反撃を仕掛けようと、この状態であればまともな反撃は出来ないだろう。
そんな考えの下で油断し、更に眼下の蔵蜜一人に意識を集中させていた事もあり、背後にいる霊夢の攻撃に気付けずに攻撃が直撃すると、犲狼は青白い炎に包まれて大ダメージを受ける。

407:最後の戦い◆gI:2020/11/07(土) 19:57

もう終わりよ、その底無しの強欲と共に焼き尽くされなさい・・・・・

(青白い炎に包まれゆく豺狼の目の前には、散々見下し、今まで何人も食らってきた博麗の巫女・・・・・

己の力の足しとしてしか見ていなかった博麗の巫女の力に全身を焼き尽くされるという、何とも皮肉な状況が豺狼を襲う・・・・・

豺狼がもがけばもがくほど、炎をより一層強まり豺狼の全身を包んでゆく・・・・・)

408:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/07(土) 20:12

犲狼
「く……そ……!!!」

犲狼
「こんなところで……消えてやるものか……!!どうせ……お前も俺様を他の奴らと同じ弱者だと、ただの犬コロだと思っているだろう!?俺様は強い!!俺様はこんなところで敗れ消える事はない!!」

青白い炎に包まれ、体が霊夢の放った霊力を受けて浄化されつつある中でも、自身の能力を用いてこれまで取り込んだ命を消費する事でダメージや損傷を回復し、蘇生と回復によって青白い炎を相殺しつつ、憎悪と執念に燃える目で霊夢を見る……


犲狼
「お前らのように……俺様を見下し、馬鹿にする者が居なくなるまで……俺様は死なん!!!」

犲狼は右腕を大きく振り上げ、それを横に薙ぎ払うようにして振るう事で地を割る衝撃波を放ち、霊夢を弾き飛ばそうとする……
妖怪の核は精神であり、その精神が……犲狼の場合は復讐と憎悪によって歪んだ弱肉強食の理念が犲狼の力の源となっており、霊夢もまた自分を馬鹿にしている、取るに足らない弱者なのだと見下しているのだと感じ、それが犲狼の生を支えている……

犲狼は強さだけを望み、強さ以外に何も持っていない。
蔵蜜のように誰かを守るために振るうことが出来ず、改心する機会にさえ恵まれず、修羅の世界を歩むしか無かった犲狼のもたらす暴力を前に霊夢は何を思うのか……

409:最後の戦い◆gI:2020/11/07(土) 21:30

力を奪い続けて、他人のふんどしで相撲をとってきたアンタ自身が見下されるようなことをしているんでしょう・・・・・?どんな理由があれどアンタみたいに他人の命を弄んで己の力の足しになるか否かしか考えられないような屑は、正直死すらも生ぬるいと私は思うわ・・・・・

(弱さが仇となって力を求めるまではまだわかる、問題はその先、己の力の足しになるか否かでしか他人を見れない上に命を弄び続けるなんて言語道断だと、死でさえもまだ生ぬるいと霊夢は言い放つ・・・・・

結局はその力も、自分が弱いと一番分かっているからこそ他者から奪い続けてきた力なのに、あたかも自分の力のように言っているのが納得出来ない・・・・・)

410:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/07(土) 21:37

犲狼
「ふん、強くなればそんな事は関係無い……!!強さこそが正義!強さこそが真理!強さだけが……絶対だ!!!」
《バキバキバキバキバキバキバキ……》

犲狼は霊夢の言葉を聞いてもその思念が揺らがない。
否定されると言うことは予めわかっていた。否定や拒絶されるだけで犲狼は止まれるほど楽な世界に生きてきてはいない。
犲狼は自らの強者だけが全てを得られると言う理念の下、これまで取り込んだ命達を純然たる身体能力に変え、更に溢れ出す妖力と霊力によってこれまでよりも更に強固なフォースシールドを纏い始め、死にかけていた犲狼は完全に勢いを取り戻すと、その勢いのまま、完全に青白い炎を消し去ってしまう……

そして……犲狼は次第に筋骨隆々な体へと変化し、踏み込んだだけでも地面が砕けるほどのパワーとスピードを獲得し、そのまま霊夢の体を殴り飛ばそうと飛び掛かる……

411:最後の戦い◆gI:2020/11/08(日) 06:29

なっ・・・・・!?

(あの炎に包まれて、もう回復なんて絶望的な状況にまで追い込んだはず・・・・・

気を抜いていたわけではないものの、流石にこれは予想外と言わんばかりの表情をしながら、突然の事態に咄嗟に対処して間一髪のところで豺狼の猛攻を避ける・・・・・

が、フォースシールドも強固になり、豺狼は怒りと力に身を任せる形でより一層凶悪になってしまった・・・・・)

412:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/08(日) 12:16

犲狼
「もうテメェらに勝ち目はねぇ……後の事なんざ知ったことか!!失った霊力や妖力はまた奪えばいい!!俺様は誰よりも強い!俺様はもうただの犬コロじゃねぇ!!!」

霊夢に向けて繰り出した拳が凄まじい轟音をたてて地を揺るがし、辺りの地面を砕き、余波だけでも吹き飛ばす程の尋常ならざる破壊力を発揮する……
犲狼の信念の核となっている弱肉強食の理論に対して何らかの反論をするか、その考えを理解するかなどを行い、その激情を抑え込む事が出来れば、犲狼を弱体化させられるかもしれないが、下手を打てば、後先について考えなくなった犲狼による壮絶な暴虐の嵐に呑み込まれてしまうことになってしまうだろう……

413:最後の戦い◆gI:2020/11/08(日) 13:40

・・・・・力に執着するのは、弱者の証拠なのがわからないのかしらね・・・・・

ドォオッ!!!!!

(霊夢は全身にできる限り霊力を集中させて纏い、そのまま豺狼の放った攻撃の余波の中を泳ぐようにして豺狼へと急接近する・・・・・

こうなったら自分の体がどんなに傷つこうが体の一部が抉られようが、力と力のぶつけ合い、でも出来る限り周りへの被害は押さえつつ豺狼を食い止めるしかない・・・・)

414:匿名さん:2020/11/08(日) 13:51

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415:匿名さん:2020/11/08(日) 13:52

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416:匿名さん:2020/11/08(日) 13:52

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417:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/08(日) 15:47

犲狼
「人間ごときが……!この俺様の力に対抗できるとでも思ったか!!!」

犲狼は再び拳を突き出す。
それも、今度は霊夢が避けられないように狙い済ました上の殴打。
犲狼の放った一撃に対してまともに受けてしまえば人間の体では魔術を用いたとしても再生や回復が困難なまでのダメージを受けてしまうだろう……

418:最後の戦い◆gI:2020/11/09(月) 06:06

がっ・・・・・!?

(霊夢は再び避けようとするも、今度は完全に避け切ることは出来ずに右腕に受けてしまう・・・・・

戦闘を行う上で腕を負傷するということは、それすなわちこの先の戦いにおいて不利になるということを表す・・・・・

さっきの青白い炎に包んだ時から一転して、再び追い込まれる・・・・・)

419:貪欲な餓狼◆3.:2020/11/09(月) 12:21

犲狼
「既に瀕死のお前に何が出来る!!体力も霊力も突きかけの状態で倒せるほど俺様は弱くはない!!!俺様こそが"最強"だ!!!」

右腕に犲狼の爪が当たった事で腕がまるごと切り裂かれた霊夢に視界が不明瞭になり、立っていることすら困難になるほどの凄まじい激痛が走る……
更に、犲狼の爪によって付けられた傷は深く、骨をも裂いている程であり、自然に止血する事は出来ずないため、適切かつ迅速な対応を行わなければ、例え犲狼の攻撃を全て避けきったとしても、ものの数分で失血死してしまうだろう……



【記憶の断片】

妖犬
「おい、コイツ知能も力も無いくせに狼妖になったらしいぞ」

妖犬
「偶然弱っていた博麗の巫女を喰ったんだとよ、運のいいやつめ!」

妖犬
「エサもろくに取れないノロマのくせに生意気な、妖獣の恥晒しが!」

妖犬
「お前の居場所なんか無いんだよ!!」

幻想郷に訪れ、犲狼と共に妖獣となった妖犬達であったものの、博麗の巫女を喰らった事で力のある妖になった犲狼に対する妬みや僻みから、犲狼は群れから追われ、独り生きることを強いられた……
強い力と引き換えに友を、仲間を失った……


犲狼
「……俺はまだまだ強くならないといけない。誰もが認めるぐらいに強い奴に……最強の妖獣に……!!」

仲間などいらない、友などいらない、絆などいらない。俺様が手に入れるべきは"強さ"それだけだ。
お前らとは力を求める強さが違う、信念の強さが違う。漠然とした大義のみを盲目的に正義とするお前らに俺様が負けることはない。

俺様は強くなる……いや、強くならなければいけない!!こんなところで立ち止まっている気などさらさら無い!!
例え何をどれだけ犠牲にしようと、最強の存在になれればそれでいい。力こそが……強さこそが全てだ!!!

もはや引き返すことなど出来ない。
最強の妖となって自分を弱者とした人間、自分を蔑み追放した同族達を、獣と見下す妖怪を……その全てに復讐するまで犲狼は止まれない……

420:死闘、最終局面◆gI:2020/11/09(月) 18:46

あぁぁああああああぁああああぁああぁぁぁあぁぁぁぁあぁあああぁっ!!!!!

(意識を保っていられるのもやっと・・・・・いや、そのやっとも駄目かもしれないほどの激痛・・・・・

負傷した右腕を、反射的に左腕で押さえて目を見開きながらしゃがみ込む・・・・・

左掌を見てみると、右腕から出た血で染まっていた・・・・・

死というものが迫っている証拠が、確かに目の前に、掌にあった・・・・・)

421:終わりへの分岐点◆3.:2020/11/09(月) 19:45

犲狼
「無様だなァ!卑しく地を這う走狗が!!そのまま潰れていけ!!!」

犲狼はその巨大な腕を振るい、霊夢に対してトドメを刺そうとする……
犲狼の弱点や弱さは既に公になっている。その強さの源である思念の源泉についても直感の鋭い霊夢であれば既に把握できているだろう……
活路があるとすれば、そこを突くしかない……

或いは……このまま犲狼に殺害され、受け継がれてきた想いが絶え、終わり無き闇によって世界が閉ざされ、死と絶望が支配する永遠に続く夜闇の世界となってしまうか………


【選択の時まで……残り"4"】

422:動き出す深淵◆gI:2020/11/10(火) 06:01

・・・・・ッ_________

(豺狼の動きがゆっくりに見える・・・・・が、それは霊夢自身が豺狼を超えるスピードを得た、というわけではなく、死を感じた瞬間は見える光景がゆっくりに見えるというものであり、霊夢が有利になったというわけでもなければ、寧ろ今正に死が直前にまで迫っている状況である・・・・・

霊夢の脳内では様々な思考が交差する・・・・・

人間である以上、自分が立ち向かえるのはここまでなのか、幻想郷の為に役に立つことがほとんどできなかった、など霊夢は絶望に呑まれそうになっていた・・・・・)

423:無慈悲なる決着◆3.:2020/11/10(火) 07:50

《ドゴオォォォォォォォォォォォォッ》

犲狼の振り下ろした爪が激突すると二人のいる森から離れた場所からも目視出来る程の土埃と爆発が巻き起こり、その凄まじい破壊力を物語る……
全てのチャンスを失った霊夢を待ち受けるのは絶望に満ちた死か、起死回生の策による生存か……


【残り"3"】

424:死闘、最終局面◆gI:2020/11/11(水) 05:29

・・・・・なん・・・・・で・・・・・?

(爆煙が晴れると、辺りの木々は薙ぎ倒され、殺風景な景色へと変貌を遂げる・・・・・

が、霊夢は辛うじて無事であり、そして声を震わせる・・・・・)

・・・・・

(霊夢を守ったのは、蔵蜜だった・・・・・

蔵蜜は最後に何としてでもここで博麗の巫女の血を絶やすわけにはいかないと正真正銘最後の力を振り絞り霊夢を守った・・・・・

蔵蜜の背中は骨や内蔵が剥き出しの状態になり、蔵蜜は息絶えた・・・・・)

425:無慈悲なる決着◆3.:2020/11/11(水) 10:51

犲狼
「ちッ!どこまでもしぶとい奴だったな!!だが、しぶといだけじゃあ、何も残せねぇし、何も守れやしない!!それを示しただけだったなァ!!」

犲狼は蔵蜜が半ばゾンビのようになりながらも、まだ動けた事に驚きくものの、結局は力の弱い者では何も何も残せない、何も守れないのだと非常な言葉を告げる……
犲狼の言う弱肉強食こそが世界の真理であり、力の無い者は泣き寝入りし、搾取され、蹂躙されるしか無いのだろうか……

【残り"2"】

426:死闘、最終局面◆gI:2020/11/12(木) 02:46

・・・・・アンタ、本当に馬鹿ね・・・・・今現に私は・・・・・あんたの「最大の敵」である博麗の巫女は・・・・・こうして守られたのよ・・・・・もう本来は動かないはずの体を必至に動かして・・・・・アンタみたいな他人の力を奪って命を弄ぶことしかできないような何もかもが弱っちい犬を倒すことも出来ない私みたいな役たたずを守って・・・・・それが弱い・・・・・?

(霊夢は切り裂かれた腕を押さえながらゆっくりと立ち上がると・・・・・

「ふざけるな、このクソ犬が・・・・・」

と、豺狼を睨みつける・・・・・

その眼はまるで夜叉のように・・・・・)

427:無慈悲なる決着◆3.:2020/11/12(木) 08:05

犲狼
「"最大の敵"だぁ?何を言っていやがる?博麗の巫女なんぞ所詮はこの俺様の餌でしかねぇ!!それに命を弄ぶだぁ?テメェら人間は肉を喰わねぇのか?野菜を喰わねぇのか?魚を喰わねぇのか?お前ら人間は平気で他の動植物を虐げ、居場所を奪い、ペットや家畜としてその自由さえ奪う。」

犲狼は霊夢と対峙したまま、人間の業について語る。
犲狼の考えはより直接的になれど、それは人間がもたらす独善的な活動から成る、人間を頂点とした生態系、歪な弱肉強食と共生関係について話す。

犲狼
「弱い奴は強い奴の糧でしかない、これはテメェらが教えたことだぜ!!!」
《ゴオッ》

犲狼は霊夢の言葉に正面から反発すると、再度地を蹴ってその巨大な腕を振り上げ、何時出血死してもおかしくない霊夢に向かって飛び掛かる……

428:死闘、最終局面◆gI:2020/11/13(金) 06:18

ゴガッ・・・・・

(豺狼の無慈悲な襲撃は地面にヒビを入れ、人間が受ければ一溜りもないような恐ろしい威力を発揮する・・・・・

そして、もしこの一撃を霊夢が受けていれば、たとえ博麗の巫女だとしてもその体はいとも簡単にバラバラに切り裂かれていてしまってもおかしくはないのだが・・・・・)

429:無慈悲なる決着◆3.:2020/11/14(土) 01:30

犲狼
「ふん、所詮はそれが人間の限界だ。力のみを求めて生き続け、弱肉強食のみを正義として突き進んで来たこの俺様に、たかだか人間の、それも小娘一匹が勝てるわけが無いだろうが!!」

犲狼は自らが力のみを求めて生きて来た、それ以外の全てを切り捨てて百年もの時を突き進んできた自分に人間の霊夢が勝てるわけがないだろうと言い放つと、土埃が舞い上がる中、霊夢のいた場所から拳を引き抜いて、その場を立ち去ろうとする……

430:動き出す深淵◆gI:2020/11/14(土) 06:20

・・・・・捕った

ガッ・・・・・!!!!!

(豺狼がここで土埃が晴れてからちゃんと確認すればよかったものの、自身の絶対的な力を信じて疑わなかったからなのか、豺狼が背を向けたと同時に豺狼の頭部へ何かが激突し、焼けるような激痛が豺狼の全身に走る・・・・・

そしてその痛みが走る直前に聞こえたのは、間違いなくあの巫女の声・・・・・)

431:無慈悲なる決着◆3.:2020/11/14(土) 11:22

犲狼
「ふん、まだわからねぇのかァ?この俺様は常に全身に力の鎧を纏っている。人間ごときの攻撃でどうこう出来るもんじゃねぇよ!!!」

犲狼の後頭部に向けられた一撃は犲狼を守り、先程犲狼の弱肉強食の理念に対して何も応えることが出来なかったため、蔵蜜がその命を削って破壊したものよりも数段強化されたフォースシールドを身に纏っており、容易く防がれてしまう……

そして、当初からずっと展開していた犲狼の唯一にして最強の防御策であるこのフォースシールドを知らずに不意討ちを仕掛けて来る霊夢を見て、所詮は弱い人間、背後からの奇襲や不意討ちに頼らなければまともに反撃すら出来ないのだと少しの失望を抱きながら、右腕を振るい、霊夢の体を引き裂こうとする………

432:賢者と巫女◆3.:2020/11/14(土) 11:28

【スキマ空間】


「………当代の巫女は何をしているの……?」

紫は漸く此方で同時進行で行っていた事柄を済ませ、作ることが出来た時間を用いて霊夢と犲狼の戦いを見る……

だが、紫はここで一つ疑問を抱く。
何故、不意討ちをしているのだろうか、何故宝具を使わないのだろうか、何故能力を使わないのだろうか、何故明らかに身体能力で勝る相手に対して素手での戦闘を持ちかけているのか。

やはり、この巫女でも……この霊夢でも幻想郷を守れるだけの実力が……機転が……能力が無いのだと言わざるを得なくなってしまう……

どうやら、早速この完成した策の一つを試してみる機会が来たようだ。
自身の背後に立ち、何も言わずに静かに犲狼と霊夢の戦いを見ている紅白の巫女を見て、そう考える。

433:最後の戦い◆gI:2020/11/14(土) 20:48

ビンゴ・・・・・

ゴォッ!!!!!

(紫が策の一つを試そうとしたその時、霊夢は豺狼が再び自分へ攻撃を仕掛けてきた瞬間、豺狼の腕が目の前に迫ったその瞬間にさっきのように宝具を使って再び豺狼へと強力な一撃を放つ・・・・・

どうやら豺狼が絶対的な力に自信を持って至近距離で攻撃してくるのを待っていたらしく、霊夢はビンゴと呟く・・・・・)

434:妖狼の悪意と賢者の策謀◆3.:2020/11/14(土) 21:34

犲狼
「………!!ふん、そんな棒切れごときでこの俺様を倒せるとでも思ったか!!!」
《ゴオッ》

霊夢の振るった宝具、大幣を見ると、後方へと飛び退くことで寸前で回避をする事で避けるものの、これまでどの攻撃も正面から防いでいたにも関わらず、わざわざ避けた事から、防御することが困難、或いは直撃すると何らかの不味い状況になるのだと思われる。

加えて、犲狼は近接攻撃をするのではなく、右腕を霊夢に向けてその掌から強力な妖力の塊をエネルギー波として解き放ち、距離を取りながら反撃を行おうとする。

435:最後の戦い◆gI:2020/11/14(土) 22:20

ヒュォッ・・・・・!

いい加減に気づきなさい、アンタは他人の力にしがみついて自分が強くなったと思い込んでいるだけのただの薄汚い化け物・・・・・強さと傲慢は違うということすらもわからない奴に、強さを語る資格も、力を手に入れる資格もない・・・・・

(霊夢はエネルギー波の攻撃を高く飛んで避けると、豺狼を見下しながら上記を言う・・・・・

自分の力に絶対的な自信があり、自分を最強と信じて疑わない豺狼が持つ過去が過去だからこそ、一番力に自信がある分豺狼のコンプレックスを的確に突く・・・・・)

436:犲狼◆3.:2020/11/14(土) 23:18

犲狼
「黙れ!俺様は強くなれるのなら誰であろうと潰す!強い奴しか価値など無いのだからな!!」

犲狼の放ったエネルギー波を避けた事で、霊夢の居た場所で大爆発が巻き起こる……爆炎に照らされるようにして犲狼を見下ろすように上昇し、力の執着について突く霊夢の言葉を聞いて、自分は強くなれるのなら誰であろうと襲うと応える……

その言葉の中には、強さしか見えておらず、それ以外の他者を守る心や、自分以外の誰かの為に力を振るえる真の強さを持った蔵蜜については見えていないことがわかる。



犲狼
「直ぐに叩き潰してや……
……………!!?」

犲狼もまた、霊夢に続いて飛び上がろうとした矢先、犲狼の体に激痛が走る……それは蔵蜜が生前に犲狼との戦いのなかで与えたダメージの蓄積であり、それが急激な覚醒の負荷と共に犲狼に重くのし掛かり、犲狼の動きが一時的に封じられる。

チャンスは今しかない、霊夢が残った渾身の力を大幣に込めて振るえば犲狼を打ち倒すことも出来るだろう!

437:最後の戦い◆gI:2020/11/15(日) 06:42

これで終わりよ・・・・・バカ犬が・・・・・!!!!!

ゴォォッ・・・・・!!!!!

グォッ!!!!!

(動きが一時的であれ封じられたこの瞬間、全てを終わらせるには今しかないと霊夢は動きが止まっている豺狼へ猛スピードで近づくと、至近距離から大弊を使って三度目の正直と言わんばかりに再び強力な一撃を・・・・・残った力の全てを宿した正真正銘全身全霊、全力の最後の一撃を放つ・・・・・

満足に動く事も出来なければ、蔵蜜との戦いで全身にダメージが蓄積された状態ならば、この一撃は更に豺狼へとダメージを与えることだろう・・・・・)

438:犲狼◆3.:2020/11/15(日) 11:49

犲狼
「!!?」

霊夢が振り下ろした全身全霊の力が込められた大幣は犲狼の体を頭から体を両断するようにして犲狼の巨体を、フォースシールドをもまとめて切り裂き、真っ二つになった犲狼の体は地面に倒れる。


犲狼
「く……そ……!!何故だ!?何故この俺様が負ける!?俺様の方が力があった筈だ!!!」

犲狼は体が両断され、塵となって肉体が消え始めても尚、その敗北が認められず、霊夢に対して何故自分が倒されているのか、何故自分が負けるのかを怒鳴るようにして問う……

439:最後の戦い◆gI:2020/11/15(日) 12:29

結局最後の最後までそんな簡単なこともわからないなんて、可哀想ね・・・・・

(真っ二つになった豺狼を哀れむように見下しながら上記を言うと、そのまま「己の弱さを一番理解しているが故に力に執着し、強い力が全て、力が弱いものは生きる価値が無い、そんな考え方しかできない奴が本当の強さなんて得られるわけないでしょう・・・・・?アンタの理論で言うならば、アンタはとっくの昔、力を手に入れる前に殺されているはずじゃない・・・・・結局アンタのそんな浅はかな考えは、アンタの言う「弱いもの」の考え方なのよ・・・・・」と言う・・・・・

霊夢は守りたいモノがあるから力を求める、豺狼は力が全て、弱いものは消し去る為に力を求める・・・・・

真の力の差というものは、ここなのだろう・・・・・)

440:犲狼◆3.:2020/11/15(日) 14:22

犲狼
「……なら……俺はどうすればよかったんだ!!弱い奴は何も残せない、何も出来ない!!俺は……俺様は……強者になって俺を馬鹿にした奴らを……俺の親兄弟を虫けらのように潰した人間共を殲滅しないといけなかった!!それが……それこそが俺様の全てだった……!!!」

両断され、地に倒れた犲狼の両手首と足首、尻尾や身体中に生えていた棘が消える中、歯軋りをしながら、自分の強さを求めた理由を、その信念を語り、自分はどうすれば良かったのかと、強い怒りがこもった左目で霊夢を睨む……

441:最後の戦い◆gI:2020/11/15(日) 14:45

・・・・・

(霊夢の心境は複雑だった・・・・・

豺狼もまた、悲惨な過去を持っているが故に、人間へ復讐したいという気持ちが芽生えるのもわからなくはない・・・・・自分だってもし家族がいて全員が殺されたら、我を忘れて復讐の鬼と化すかもしれない・・・・・

この問いに必要なのは、誰もが納得するような正しい答えではなく、豺狼が納得する答え・・・・・

それが正しいかはわからないし、霊夢もその答えが何なのかは断言するには難しい・・・・・)

442:犲狼◆3.:2020/11/15(日) 15:02

犲狼
「強さだけが正しい!強ければ……弱い奴らをねじ伏せてどんな事だって正義に出来る……!俺様はそれになりたかった……!!!」

犲狼の体の手首や尻尾等の末端部分が塵となると、今度は両手足が消滅し始め、両断された内、霊夢によって右目を潰された右半身はその大半が消える中、犲狼は呪いのようにその無念を語り続ける。

人間への復讐とそれを行うための強さへの渇望のみが犲狼の活動源となっていた……何が正しいのか、それは誰にもわからない。だが、霊夢の望む正義や理想はどのようなものであるのだろうか……

443:終幕◆gI:2020/11/15(日) 16:09

それじゃあアンタがまだただの犬だった頃、ただの犬からすれば強い奴らになる人間に家族を滅ぼされた時・・・・・アンタが言う強さこそが全てで正義であるならば、 アンタの親兄弟を葬った人間の行いも正義になるわね・・・・・?

(豺狼の言葉を聞き、霊夢は導き出した一つの答えを提示する・・・・・

生き物それぞれに正義があり、その正義は時に誰かの悪になる、正しい正義なんてものは、存在しないのかもしれない・・・・・

消えゆく豺狼に提示するに相応しい答えなのか、霊夢にはわからない・・・・・)

444:犲狼◆3.:2020/11/15(日) 16:26

犲狼
「そうだ、俺様はそれを人間共から教わった……だから今度は俺様自身が更に強くなって奴らを根絶やしにしようと思ったまでだ……!!」

両手足と切断された右半身が跡形もなく消滅するものの、自分はそうやってかつて弱かった時に全てを奪われ、今の弱肉強食の思考に目覚めた事で犲狼は自分が強くなって復讐を成し、それを正義であると示そうとしていたのだと応える。

445:終幕◆gI:2020/11/15(日) 17:33

・・・・・正しい正義なんてものはわからないけど、少なくとも力と復讐心に取り憑かれたアンタは、正義なんかじゃない・・・・・

(霊夢はここで言わなければ豺狼は誤った認識のまま逝ってしまうと思ったからか、豺狼が完全に消滅してしまう前に、豺狼の考え方を正しい正義とは何なのかはわからない霊夢は、少なくともそんなものは正義とは言えないと、豺狼の今までを全否定する・・・・・

親兄弟、全てを奪われた哀しみはわかるものの、それを理由に他者の命を弄んでいいということには決してならない・・・・・)

446:犲狼◆3.:2020/11/15(日) 18:08

犲狼
「だったら……俺はどうすればよかったんだ!!?大人しく屠られていろとでも言いたいのか!?」

遂に消滅は犲狼の胴体にまで及び始め、下腹部が消滅していくものの、犲狼はその強い執念だけで消滅を送らせ、少しでも多くの言葉を霊夢に向け、その考えを否定しようとしている……

447:終幕◆gI:2020/11/16(月) 06:22

・・・・・

(消滅してゆく豺狼を見て、答えを見つけ出そうとするも、豺狼も豺狼でかなり頑固な部分があり、納得するような答えが見つからない・・・・・

こればかりは、豺狼にもわからない以上、他人の霊夢も答えに困る・・・・・)

448:犲狼◆3.:2020/11/16(月) 07:59

犲狼
「くそ……!!俺様は……こんな……こんな自分の正義すらも無い奴に負けるのか……!?ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょ……う……!!!」
《ザアァァァァァァァァァァ……》

犲狼の問いに対して霊夢は何の応えも……いや、何の正義や信念も示さなかった……示したのは拒絶と否定のみ……それが犲狼にとって激しい苛立ちと無念となり、完全に全身が消滅していく中でも恨みの言葉を呟きながら消えていく……

449:終幕◆gI:2020/11/16(月) 18:34

・・・・・もう遅いけど、強いて言うならば、復讐心は仇となる・・・・・長い年月をかけてやっとわかったでしょ?その身をもって・・・・・

(復讐心は何も生み出さない・・・・・己の仇となってやがて返ってくる・・・・・

それを豺狼はその身をもって経験することとなった、長い年月をかけて復讐心を原動力に多くの命を奪ってきた孤独な妖怪の哀れな最後は、復讐心の果てに破滅という答えに辿りついたのだ・・・・・)

450:妖怪の賢者◆3.:2020/11/16(月) 19:20


「……おめでとう。貴方は無事に犲狼を打ち倒すことが出来た……これで誰かも文句無しに巫女としての適正がある事が証明されたわね?」

塵となって消えていく犲狼に対して言葉を返した霊夢の前に、スキマが開かれ、その奥から嬉しそうに微笑んだ紫が拍手をしながらゆっくりと歩いてくる……

451:終幕◆gI:2020/11/17(火) 06:02

・・・・・おかげでボロッボロよ・・・・・身体的にも、精神的にも・・・・・

(フラフラしながら、紫に上記を述べる・・・・・

正直、なんで今現在もこうして立っていられるかが自分でも不思議で仕方が無い・・・・・

豺狼との戦いでは力だけではなく、精神も削られた気がする・・・・・)

452:妖怪の賢者◆3.:2020/11/17(火) 18:55


「妖との戦いは心身を共に消費する、始めての戦いでありながらあれだけ渡り合えたのだから上々よ。」

紫は開かれたスキマを跨いで地上に降り立つと、心身共に大きく削られた霊夢を見て、霊夢が独力ではなく、魔理沙や蔵蜜の協力があってようやく犲狼を打ち倒せたのだが、それを言及する様子はなく、ただ微笑みを浮かべたままそう告げる。

453:終幕◆gI:2020/11/18(水) 04:38

・・・・・違うでしょ!?アンタが今するべきことは私を褒め称えることでも、妖怪との戦いは心身ともに疲労困憊することを説明することじゃない!!!!!この戦いで命を落とした者がいるんだから手を合わせるくらいしなさいよ!!!!!

(霊夢は紫の態度が気に入らなかった・・・・・

この戦いは勝ち負けがどうとかの問題ではない、家族を失い、元々力は無かったものの妖怪に成り果てた豺狼、そして蔵蜜・・・・・

同じ境遇なのに真逆とも言える道を歩んだ二人、この決定的な違いがあるとしたら何なのかはハッキリとはわからないが、豺狼のような妖怪が今後生まれないことを祈るしかないこともあるが、今は紫が蔵蜜の遺体の前で手を合わせるのが最優先だと激昂する・・・・・)

454:妖怪の賢者◆3.:2020/11/18(水) 12:25


「……彼女の事は残念だったわ……彼女とは昔から共に同じ志を持った……"親友"だった。けれど、争いの絶えないこの世界で一つの理想を追求すればこうなるのは自明の理。」

紫は最早肉片のようになってしまった蔵蜜を見て、少しの沈黙の後に霊夢の言葉に対して、何時かはこうなると言うことはわかっていたと応える。その声は少し弱まってはいるものの、涙が流れることは無かった……



「………ありがとう、貴方の事は忘れないわ……」

もはや原型すら留めていない蔵蜜を見て、確かに彼女であると確信し、目を閉じて感謝の言葉を呟く……

親しい者との別れを馴れたいだなんて思った事は一度も無かったのだが、こうして友を失うことに対する抵抗や後悔すら薄れて行っている事が自分でもわかる……
だが、これも全てはより良き幻想郷のため……

455:終幕◆gI:2020/11/18(水) 21:05

・・・・・

(蔵蜜の残骸が、豺狼との激闘を物語っている・・・・・

正直、元々そこまでの力もないが、病気で弱ってゆく中豺狼をあそこまで攻撃できたのは、火事場の馬鹿力にも似た、必死の抵抗だったのかもしれない・・・・・)

456:妖怪の賢者◆3.:2020/11/18(水) 21:13


「……"無限の幻想世界"でまた会いましょう……」

紫は蔵蜜の亡骸を見て、彼女の死は無駄にはしない。
永劫普遍の幻想世界……完全なる幻想郷の最終到達点、そこに至った時にまた会おうと、その真意が伺い知れない言葉を呟くと、霊夢へと振り返り、一言だけ言葉を口にする。



「帰りましょうか、私達の神社へ……」

紫が通って来た異様な紫色の空間に無数の目玉がギョロギョロとせわしなく周囲を見渡しているスキマ空間から、博麗神社へと切り替わる。
死闘が終わりを迎えた……だが、この事が後世に語られる事はない……

紫によって失われた過去の一つとなる……

457:終幕◆gI:2020/11/18(水) 22:39

・・・・・

バタン・・・・・

(戦いの疲れとダメージもあり、神社へ着くなり倒れて眠りにつく・・・・・

巫女になって初めての戦いにしては、なかなかかなりヘビーな戦いではあったものの、これで幻想郷を守ってゆく者としての自覚は持てたはずだ・・・・・)

458:妖怪の賢者◆3.:2020/11/18(水) 23:05


「お疲れ様、博麗のみ……いえ、霊夢。」

紫は神社に付くなり布団も敷かずに畳の上に倒れ込んだ霊夢を見て、何も言わずに右手を霊夢に向けて差し出して霊夢が受けたダメージや外傷を治癒しながら、左手で優しく彼女の頭を撫でてお疲れ様と労う。

始めての戦いの中で、これまでの人生の中でも味わった事がないであろう緊張や怒り、悲しみと様々な感情が起こっただろう……幻想郷に巣食う悪の因子が一つ除かれたものの、その代償として尊い命が奪われた……

これから博麗の巫女として活動していれば今回のような事が何度も起こってしまうだろう……だが、今は、今だけは彼女が休めるよう、敢えて役職ではなく、彼女の名前を呼ぶ。

459:終幕◆gI:2020/11/18(水) 23:58

・・・・・

(霊夢はどこか安心したような表情で、紫が治癒してゆく中、眠りについている・・・・・

初めての戦いにして博麗の巫女の因縁の敵を倒さなければならないというのをいきなり任され、戦い方に関してもまだ未熟な彼女からすれば、正に疲労困憊という戦いだった・・・・・)

460:妖怪の賢者◆3.:2020/11/20(金) 18:38

【二日後】


魔理沙
「おーい、霊夢ー!」

犲狼との死闘から二日の時が流れた。
今でこそ恒例になっているものの、当時はまだ霊夢について知っている者は極僅かであり、宴会が開かれることも無かった。
青空が広がり、平穏な空気に満ちた博麗神社に底抜けに明るい魔理沙の声が響く。

461:戻った平穏◆gI:2020/11/20(金) 20:25

んん〜・・・・・?

(霊夢は昼寝をしていたらしく、魔理沙の声が聞こえれば目をこすりながらゆっくりと体を起こす・・・・・

また妖怪が現れたのだろうかと思いながら、豺狼の時のようにかなり苦戦するような妖怪がまた相手だったら嫌だなぁと内心思いながら・・・・・)

462:穏やかな時◆3.:2020/11/21(土) 00:14

魔理沙
「噂で聞いたぞ?あの百年の間、人里を脅かしていた妖獣の頭目をぶっ倒したんだってな?おかげで激レアのポーションが全部無くなっちまったが、倒せたんならいい!」

魔理沙は箒に乗って境内に降り立つと、箒から降り、右手で器用にクルクルと箒を回して持ち直すと、一度犲狼に敗れ、二回目の霊夢と共に戦った時も途中から戦力外になって撤収したものの、あの犲狼を倒せたのであればそれで満足だと言う。



魔理沙
「あれ?そういやあの犬みたいな神様は此処には居ないんだな?」

ふと、辺りの様子を見て、戦線離脱した自分と入れ替わるようにして犲狼と交戦した蔵蜜の姿が無いことに対して少し不思議そうに問いかけてみる。

463:戻った平穏◆gI:2020/11/21(土) 18:47

・・・・・戦死したわ、私を庇ってね・・・・・

(魔理沙が蔵蜜に関して聞いてくると、霊夢は自分を庇って戦死したということを明かす・・・・・

庇ってもらった結果、今こうして生きていられるというのもまた事実ではあるものの、霊夢本人からすれば、とても複雑な心境であるというのもまた事実・・・・・)

464:穏やかな時◆3.:2020/11/21(土) 20:38

魔理沙
「………!!?」

魔理沙
「そう…だったのか……
悪いな……嫌なことを思い出させて……」

特に深い意味もなく聞いてみたのだが、まさかあの助っ人が殺害されてしまったとは思わず、蔵蜜が戦死したと知り、左手で目元を隠すように帽子で持つと、静かに謝る。

465:戻った平穏◆gI:2020/11/21(土) 21:38

・・・・・知らなかったんでしょ?仕方ないわ・・・・・

(そう言うと「・・・・・正直、あの豺狼相手に手負いの状態であそこまで立ち向かえた彼女は、私よりも戦いに貢献したと思っているわ・・・・・正義感においても、精神力においても、とてもじゃないけど適わない・・・・・」と、話したりすることは殆どなかったものの、それでもどれほどその正義感が大きかったのかを理解していて・・・・・)

466:穏やかな時◆3.:2020/11/21(土) 21:49

魔理沙
「……………………。」

返す言葉も無い。
自分は戦いの途中、二度も犲狼から逃げた。
村の集落で霊夢と共に戦った時は集落を守れず、逃げた犲狼を追って森の中で戦うも、蓄えた魔法道具の大半が破壊され、それどころか逆に犲狼に魔力を奪われ、リベンジとして霊夢と共に挑んだ戦いにおいても、頼みの綱であったポーションを全て使いきり、何も戦いに貢献できなかった……

その自分が自らの死をも覚悟して戦った犲狼や、死闘の末に犲狼を打ち倒した霊夢について何を言えるのだろうか……


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