自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください
正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ
『悪夢の始まり』
ダンッッ
100万ドルの夜景だとか、世界でも有数の絶景だとか、そんな場所を見向きもせず、ただただ祈りながら、男は次の場所へと飛び込んだ
事は数十分前、長期任務を終わらせ、本部に連絡を入れようとした時だった
俺が通知を入れようと、隠密任務ということもあり電源を落としていたインカムをつけた時、焦りを隠せない部下の声が聞こえた
『─むら─さ─!…─叢雲さん!奥様との連絡がっ…!』
嫌な予感はしていた
そしてインカムから聞こえたその言葉を聞いて、弾かれるように俺は駆け出し、己がいたビルの窓を蹴破って、街に溺れるようにその身を『転移』させた
「っ、!!」
『転移』した先の壁を蹴り、焦りにふらつきながら自分の家の前の地面に足をつけた
己の『右手』を伸ばし、玄関の扉に触れる
嫌な予感が強まっている、どうか、どうか、どうか、どうか
ガチャンッッ
「っゆき!ぶじっ!!……か…、…」
まず目にはいったのは、いつも出迎えてくれた愛しい妻ではなく、数人の、武装をした人間
『な、─なぜ─!!しに─み…─!』
『はや─る─!』
何か言っている、でも、そんなもの、次に目に入ったものを見ては、聞こえなくなった
床に滴る血
床に散らばる、剥ぎ取られた爪
服を脱がされ、あらゆる所にむち打ち跡が残された拘束された体
おかしな方向に曲がっている指
血が染み込んだ髪
いつも笑みを浮かべていた、彼女の面影を残さないほどに傷だらけにされた顔
今はもう動かない肉塊
それが愛しい妻だと気がついた時には、もう己の理性は途切れていた
気がついたら、武装した奴らはもう人間とは言えない程に切り刻まれて、床は血がないところを探すのが困難な程に流れていた
「……ゆき」
そんなものは気にせず、ちゃぷ…と血の海を鳴らしながら彼女『だった』ものにふらりと近寄る
いつだって、名前を呼べば振り向いてくれた
「……ゆき」
いつだって、名前を呼べば微笑んでくれた
「…ゆ、き」
彼女の頬に触れた
生ぬるい、べたりとした血がつく
「…ゆき」
「ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき」
ふりむいてくれない
ほほえんでくれない
なんどよんでも
なんどよんでも、めをあけてくれない
「……………………………………………」
血
温かさが奪われていく
「…ゆ、き」
答えない
「………ゆき…」
いくら抱きしめても、名前を呼んでも、広い部屋に響く声は、自分の耳にしか届かない
いつも暖かかった雪の腕は、いつまでたっても、俺を抱き返してはくれなかった
あれから時間が経った
数時間前?数日?わからない
どうやらいつまでたっても連絡が入らない俺を探しに、GPSをつたって家を探しあてた同僚が、あの惨状をみて色々としてくれたらしい
雪を病院へ運ぼうとするけど、何を言っても反応しない俺を、ボスが気絶させたらしいから、詳しくはわからない
そして、医務室で目を覚ました俺にボスがつげた
どうやら、雪は妊娠していたらしい
名前も性別も分からないわが子、おれが長期任務の際に発覚したそうだ
最後まで、腹だけはと守っていたらしいが、その我が子は生まれる前に息絶えていた
雪を拷問した敵組織は、雪から俺の情報を引き出そうと、痛めつけたらしい
そのさいに、雪が放ったことばは次の言葉だけだったそうだ
『あなた、あしたはあめだそうですよ、かさをわすれないでくださいね』
そう笑って、彼女は息絶えたそうだ
全て遠き理想郷
https://i.imgur.com/DYcbi2T.jpg
上手やんhttps://youtu.be/jyqKyyqhVE4
10:◆rDg:2020/11/04(水) 19:24 『 萩色へと染められる少年 』
「 “暇”や“退屈”なんて言うのは簡単で、実際には現実から逃げているだけ 」
何度も何度も読み直して 台詞だけでなく全文を覚えてしまい今や全ページボロボロの本を、今日も瓦礫の山の上で読み続ける。黒髪黒目の何処にでも居る感じ...服もボロボロに破れているけど。
壊れた街並み。そこに捨てられて..食べる物も生ゴミ。親と呼べる存在は生きているかも知らず。友達と呼べる存在も居らず、孤独。....熱中出来る物は本の中の嘘だと分かっている世界。
だからもし...最初に誰か友達が出来るなら、そういう有り得ない存在が良かったんだ。憧れを持っていたんだ。
『 .....よいしょっと..あ〜...“こんばんは”って言うので良いのか? ....よう、人間 』
【 彼 】は突如背後から、胡座を掻きながら手を振り、まるで最初からそこにいたかのように現れた。腰まで伸びた赤の髪(何故か束ねてる)。光を放っている赤眼。黒いマントに....サラシとパーカーとジーパンって、何だか凄く奇妙な姿。人間離れしたような姿に...興味を持っちゃったのが多分人生の転機って物だったんだと思う。
「 ......えっ...と...だ、誰......?....ぼ、僕.......に何か......? 」
『 .......あ〜〜〜〜....んーと、なんて説明すりゃ良いんだろうな?...色々言わなきゃいけないんだけど.,まぁまずは名前からだな 』
『 俺はザレッド。ザレッド・イニール。......魔王..じゃねえや、魔人だよ、手の魔人。さっき魔王って言うのは....まぁ受け継ぎ期間つーか、代理つーか..言葉の綾つーかぁ...』
いきなり目の前でそんな事を言われて簡単に信じられるだろうか?普通の人なら信じられなかったかもしれない。....ただ恐怖は無かった。何となく良い人だと感じ取った。
『 .......ちょっと此処には用事で来たんだが........なんて言うか、寂しそうなお前見てるとちょっとなって思って.........ん〜〜〜...... 』
何か考えているように見える.....その時の僕は何を考えていたのか分からないけど、今でもとても賢い選択だったと思う。
立ち上がって....腰を曲げてお願いしたんだから。
「 .......ぼ、僕と友達になって下さい!!!! 」
『 ...ん?別に良いぞ? 』
簡単に受け答え。ただそれが嬉しくて....自然に涙が出てきた。夢みたいで、孤独から解放されると知って涙が止まらなかった。
その後すぐに彼は立ち上がって此方に向かって来ては....片手にハンカチを持ちながらもう片手を差し伸べて、少し恥ずかしい様な台詞を堂々と言ってくれた。
『 ......泣くなよ人間.....お前は俺が守ってやる、だから....お前も友達として俺と接してくれよ? 』
その後の事は詳しくは覚えてない、ただたくさん泣いて、たくさん話して、たくさん呆れて、たくさん笑った。友達っていう物を始めてしっかりと感じたんだ。
その後....彼の血を分けて貰った。最初は彼も驚いていたけど強くなりたいって言ったら少し悩んだ後に受け入れてくれた。血を注射一杯取り込んでしまえば、髪色はピンクに近い赤に、目も黄緑色へと染まって....身体から力っていう物を感じた。
暫くの間稽古もつけてくれた。彼の特技である狙撃も少しだけ出来るようになった。
ゴミの中から素材を集めて頑丈な箱を作ってくれた。色々と変形をして面白くて、自分にくれた、
悪戯もされて、彼は人間らしいんだとも思った...悪質なイタズラな為何回かは怒ったが。
色々な本も読ませてもらって...その後今更何故此処まで尽くしてくれるのかと気になり聞いてみた。
『 .......ん〜.....なんつーか見過ごせないつーか、未来ある若い芽をこんな所で枯れさせたくねーんだよな...まぁ俺の霊術の師からの教えでもあるんだけど、助けられる命は助けたいって奴が....俺も出来る限りそうしようかなって思ってんの .....ていうか、お前名前は? 」
「 .... 」
『 .....え、ないのか?う〜ん....じゃあ、お前も赤に近いんだし.........【 フロッソ・チェーロ 】 って言うのは....あ〜、どうだ? 』
「 ......【フロッソ・チェーロ 】 かぁ.......わ、分かったよ、レッド....有難う 」
『 どーいたしまして.....さ、まだ色々やんぞ?俺の腕でお前は強くて賢い...そんな人間に出来る様にするからな 』
彼は何度でも来てくれたしロッソの方から来る時は城に来いよ?...なんて言ったり、本当に良い人と何度も思った。たまに彼の変な所とか駄目な所...頭を使う戦略とか色々教えたりした。......それから百数年も経てば、自分の体はその頃よりかは成長したけど 老いるって感じが全くしなかった。....多分あの血のせいと考えるも全く後悔はしていない。.....たくさん本が読めたし。ただ僕のこの性格はどうにも....アイツ以外と話さなかったから治ってないけど。....そしてあの頃より出来る事が増えて、一人でも寂しいと思ったりする事が無くなった。壊れた街並みも直って行って人も戻り始めた。....僕は隠居生活みたいに、誰も使ってない廃墟で生活してるけどね。
そんな過去とかがあって、僕は“僕”になれた。
親友でありながら師匠である.....とある魔人のお陰で。
僕は今日も本を読む “賢い人”になる為に。
『愛しいという感情』
「あの…いきていらっしゃいますか?」
「……」
初めて彼女に出会った時は、自分を迎えに来た、天使だとおもった
「…聞いていらっしゃいますか?」
「…へいへい、きこえてますよ…というか、おじょーさん」
「はい、なんでしょうか」
「…………いや、なんでしょうかじゃなくて、あんた、こんな血塗れのどう見てもカタギじゃない人間に声かけるとかどうなの?見捨てときなさいよそこは…」
そう、天使に見えた、というのは自分の現状のせいでもあった
ボスから命じられた任務の帰り、突然数名の刺客に囲われた、返り討ちにはしてやったが、人数も人数、無傷という訳にも行かず、自分の血だか返り血だか分からないものを溢れさせながら、路地裏の壁にもたれかかって居たのだ
そんななか、急に声をかけられたら、天使の幻覚でも見たかと思ってしまうのはしかたがない、……と、思う
「いえ、私がここを通って声をかけなければ、明日の朝、ゴミ収集車に人形と間違えて回収されてしまっていましたよ」
「いやねーだろ」
冷静沈着な人間なのかと思えば、急に冗談だか分からないことを言い出す、なんなんだ
「可能性は0ではありません、ですが…カタギ、堅気ですか、なるほど、やはり血糊では無いのですね」
…あぁ、そういえば
「…血なんざ見んのはダメでしょ、ほら、さっさと帰んな」
あまりにも冷静なのでわすれていたが、彼女はどうやら一般人らしい、血糊でないとわかっては…
「はい、わかりました」
「お、結構物分り、っ!?」
グイッと腕を肩に回させられる、なに、何がしたいんだこの子は
「ちょっ、はァ!?なにやってんのお前さん!」
「?家に帰ります、安心してください、私は看護師ですので、医療には精通しています」
「そういう問題じゃねーでしょ!ほっとけっつってんの!!」
「いえ、先程も言いましたが、看護師ですので、ほうってはおけません、それにカタギでは無い、というふうに思いましたので、救急車もだめでしょう?」
この女、全く話を聞かねぇ!というか力強っ!?どうなってんの!?
「とにかく、早く手当をしましょう、さぁ、歩いてください」
「怪我人だってわかってます…?」
強引にも程がある、半ば無理やり引こずられながら、俺は彼女に連れていかれた
自分を助けてくれた彼女は『天宮 雪(アマミヤ ユキ)』と言うらしい
どうみても一般人でない俺の世話を焼きながら、彼女はそう教えてくれた
「…んで、雪さん?いつになったら退院できんですかねぇ」
「あと3週間はいけません」
「………あの、俺言いましたよねぇ?マフィア、マフィアなの俺、No.2、偉い人」
「骨にヒビも入っていますし、ところどころの切り傷、銃創も深いものがあります、許しません」
「…………………………」
彼女はかなり肝が据わってる人間らしい
俺を匿えば俺を狙う刺客に狙われるかもしれない、俺があんたをころすかもしれない、と色々と脅してみても、怪我が治るまでは死んでも退院させないとの一点張り、ここは彼女の家なのに退院というのもなんだが…彼女はずっとそう言って、甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれた
数週間も時が流れれば、名前で呼ぶ程度には、お互いを話せるようになった
「雪さん」
「はい、叢雲さん」
「骨のヒビは完治」
「はい、お疲れ様でした」
「体の傷も完治」
「はい、お疲れ様でした」
「…退院は」
「いけません」
外傷が完治したとて、彼女は退院許可を出してはくれなかった、黙っているはずなのだが、もしかしたら内臓がすこしまだ痛むことがバレているのか…?
観察眼が凄い
許可など貰えずとも、出ようと思えば出られるものを、そんなことを考えることも無く、俺は彼女のそばに居た
「……それにしても、雪さん」
「はい、なんでしょうか」
今日も今日とて退院を拒否されたあと、ずっと考えていた疑問を口に出した
「あんたさん、なぁんで俺をここに置いてられるわけ?看護師っても、自分の身の危険くらい察知できるでしょ」
俺が彼女の家に来てから、何度もこちらを狙われた、その度に返り討ちにはしていたが、今後どうなるかなど、聡明な彼女なら予想が着くだろう
「…俺が動けるようになったら、俺がいなくなったら、長期間俺を匿った雪さんは確実に狙われる、分かってるでしょ?雪さんなら」
それなのに何故、と問いかけた
心配…だったのだと思う、その時は気がついていなかったから
でも
「一目惚れをしましたので」
彼女の一言で、自分の中の考えは全て消えてしまっていた
「───は、ぃ?」
「あの日、あなたに一目惚れというものを致しましたので、私は私の初恋を守っただけです」
平然と、そう告げられた
一目惚れ?初恋?何を言っているんだ、想像もしていなかった言葉に、頭が回らない
「あなたを見殺しにして、私は私の初恋を殺したくありませんでした、……………初めての感情でしたから、私もそれが一目惚れだと言うことには、最近まで気が付きませんでしたが…」
ふいと、顔をそむけられ、そしてようやく気がついた
表情の変化が乏しい彼女の顔の代わりに、彼女のその耳は赤く紅く染まっていた
その時、己もようやく気がついた
彼女との時間の居心地の良さ、なるほどこれが…
「雪さん」
「………なんでしょうか、むらくもさ
声をかければゆっくりと振り向く彼女の唇にひとつ、リップ音を落す
「結婚しましょうか」
そう『愛しい』彼女に微笑めば、いつもの無表情はどこへやら、その可愛らしい耳と同じように、顔は赤く赤く染まっていき
彼女は、数秒たって、首を下に動かしてくれた
神様なんて本当にこの世にいるだろうか。もしいるとしたら神様ってやつはとんでもなく捻くれているし、救いなんて与える気はさらさらないんだ。あの夜からずっとその考えは変わらない。
優しい両親に、可愛い弟。人よりも少し裕福な家庭。でもその幸せは続かなかった。あの日もいつもと変わらない当たり障りのない毎日のはずだった。
「 だから、ついてこないでってばぁ!! 」
「周りの子も一人で街を歩いてるから大丈夫!近所を一周するだけだから」そう両親に訴え作って貰えた一人の時間。それを例え可愛い弟であろうと邪魔をされるのは嫌だった。それにあの子は賢い子だからきっと両親に聞いて私の後をつけてくるだろう。そう思い駄々を捏ねる弟を無視して家を出た。それまではいつもと変わらない毎日だった。街に出るといつもは人が少ない通りも賑わっていた。不思議に思い首を傾げつつもいつもと同じ道を歩いていた。あともう少しで家に着く。そう思い少し駆け足で家に近づくと先ほど路地で見かけた数人が家の中に入っていった。
「 ……もしかしてどろぼう? 」
もし、襲われても逃げるには得意だから大丈夫。ふぅと小さく息を吐き、怪しい男の人たちの後をそっと付ける。そっとバレないように慎重に…。
そこで見たのは弟やお母さんが苦痛に表情を歪めながら私の名前を叫ぶ姿、血塗れになって動かないお父さんの姿。壁や床に散らばる無数の赤____
目がいいことをここまで呪う日はもうないだろう。地獄絵図だった。どうして、どうして
……
「 …っ!!…ぁ……っ!!! 」
逃げ、なきゃ…、誰かに助けを呼べばきっと、まだみんな助かるはず……そう思ってただひたすら走った。ただ、ひたすらに。それでも、体力の限界が来てふっと後ろを振り返ると家がある場所から炎が立っていた。
「 ……はっ、あは、あははは、ぜんぶ私のせい……だねぇ 」
あの時弟と一緒に来ていれば……。みんなと一緒にいれば。そんな後悔が頭の中をぐるぐる回る。ふっと乾いた笑いを零しながらふらふらと歩いていると大きな影とぶつかった。その人はさっき家族を殺した人と同じ服を着ていた。沸いてくるのは怒りでも悲しみでもなく、諦めだった。
「 おじさんが、私をころすの……? 」
そう、問うとおじさんは数秒固まった後、おずおずと角張った手でそっと私の頭を撫で小声で尋ねる。
「 まだ、走れるか? 」
小さく頷くと、おじさんはそれを確認し雑に脇に抱えていた大きい外套を被せ手をつないで走り出す。突然の事に少し足がもつれるが私はなんとかおじさんについていった。
いつか、家族を殺した人達に復讐してやる。そんな想いを胸に秘めながら
『今でもあなたはアタシの光』
それはアタシが14歳の冬の日のこと。
その頃のアタシは光の無い暗闇を当てもなく彷徨うような惨憺たる日々を送っていた。
サイコキネシスという特異な力を持つが故に親に捨てられ、孤児院でも学校でも嫌われ者、常に誰かがアタシをいじめている、何時しかそれが当たり前になっていた。
そんなアタシの唯一の居場所、それは海沿いの道路脇に置かれた木のベンチ。この場所で沈む夕日を眺めている時間だけが唯一の癒し。
当時のアタシは孤児院の門限ギリギリまでここで海を見て過ごしていた、帰りたくなかった――否、誰とも関わりたくなかったのだ。
その日もクラスメイトのいじめから解放されると荷物をまとめ、いつものベンチに向かった。
するとそこには見知らぬ女性が居た、その人はいつものベンチに座って海を眺めていた、とても綺麗で凛々しくて優しそうな人だった。
「キミがルチアだね? 待ってたよ。私はセラフィーナ、マフィアの幹部をやっている者だ」
セラフィーナと名乗った彼女はマフィアの幹部と言っているがとてもそうは見えなかった。
「どうしてアタシを待っていたの?」
「うん、君と話がしたくてね」
まぁ座りたまえ、とでも言うかのようにセラフィーナがベンチの端を叩く、アタシは隣に座った、ほんのりと大人の女性の香りがした。
「……髪、ずいぶん傷んでるね。せっかく綺麗なプラチナブロンドなのにもったいない」
セラフィーナはアタシの髪を優しく撫でた、こんなことされたの何時ぶりだろう、確かなのは思い出せないほど昔ということだけ。
「君の事はいろいろと調べさせてもらった、もちろん君が超能力者だってことも知ってる。それにこんなかわいい娘が超能力者なんて最高じゃないか」
「あの、怖くないんですか、アタシのこと」
「マフィアにその質問は愚問だよ、ルチアちゃん。君より怖い人はたくさん居るからね」
セラフィーナは笑って答えた、沈む夕日より眩しい笑顔だった、アタシは初対面のセラフィーナにすっかり心を許していた。
それからアタシはセラフィーナとたくさん話をした、両親に捨てられたこと、学校でも孤児院でもいじめられていること、アタシを苦しめている超能力のこと。
その全てをセラフィーナは真剣に聞いてくれた、嬉しかった、涙が出るほど嬉しかった、この人と一緒にいたいと心から思えた、だから彼女の問いに対する答えは一つだけ。
「ルチアちゃん、私の養子になってくれる?」
「はいっ!」
アタシは涙を拭って今の自分にできる精一杯の笑顔で答えた。
『全ての犠牲の先に』
--とある時代、日本--
「……死んだ、か」
夕方、男が一人。その目の前には、炎に炙られている少年少女、だったものが三名。
……まだ焼け死んでから十秒と経っていないらしく、人の形は保っていた。
これから数時間。骨へと変わっていく様子まで見届けるのが彼の最後の仕事だ。
彼は、日本の村に悪魔がいる、と聞いた『教会』――組織――の命を受けてやって来たチームの一員だった。
そして『それ』を見つけた。
二人の少女、一人の少年。体は痣だらけだった。
幸福に見えた村の中では異分子――陰気なオーラを纏っていた。
とはいえ、そこですんなり捕らえられた訳ではない。
一人目はいくら縛ってもなぜか脱出される少女だった。
更には潜伏も得意なようで、最終的には村民全員を隔離する羽目になった。
二人目は特に抵抗らしい抵抗も見せない少女だった。
楽だった、が一人目と一緒にすると逃げられるのが煩わしかった。
三人目は、『訳がわからないほど強い』少年だった。
一度捕らえるのに犠牲が数十人単位で出た。更には途中から運悪く土砂崩れで増援が来ることができず、最後は奥の手を使う羽目になった。
その奥の手というのが、『教会』が定める悪魔に、副作用を付与するという方法である。
一人目には武器を向けると卒倒するという副作用を。
二人目には平衡感覚をほぼ無くすという副作用を。
三人目には付与できなかったが、片目と片肺と男性を潰して倒れた所を捕らえた。
――――犠牲者は百人を優に越える。
そして、男は空を仰いだ。
想像を遥かに超えていた、という体で。
火が消える。いつの間にか雨が降りだしていた。
骨を拾い、ごつっ、ごつっと音を立てて砕く。
容赦などない。『教会』で授かった能力も使って粉にする。
いつしか雨は激しく、雷雨に変わっていた。
白い、薄汚れた粉が流されてゆく。
雷が直ぐ近くに落ちた。鼓膜から優に血が出る。
それでも、男は動かない。雨が止むまで。
そうして真夜中、雨が止み、雲が晴れてゆく。
男は村に戻り、馬屋で寝についた。
その村を、地獄のような業火が包んでゆく。
差別の対象が消えて一触即発の空気が流れる村民、
幸福感すら覚えて眠る男、
全ての終わりのはずの火刑場、
それら全てを呑み込んで、
歴史の表舞台から抹消してゆく。
遠くの山からそれを眺める三人がいた。
不安そうに薙刀を弄ぶ少女、ふらつきながらも何とか立つ少女、苦しい息をする隻眼の少年。
「……どうしようか」「……決まってるでしょう」「……だな。……逃げるぞ。――それにしても、悪魔、か……」
今、彼らが何処に居るのかを知る者は、どこにもいない。
【私は『プロト・アイディール(にんぎょう)』】
人形に改造される前は、いつも笑っていた、貧しい暮らしではあったが、そんなの何も苦では無かった
ある日突然、周りのものが浮き始めた、『どうしてなのか』は分からない、怖くて、怖くて、怖くて、助けを求めた
お医者様が来た、お医者様は私を見て微笑んだ
ママとパパと何か話してる、…?なぁに、どうして、なんで私を連れていくの?…ちりょう…?ママとパパは来てくれないの?…にゅういん…?後で…?……うん、わかった
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
どうして、なんで、いたいよ、こわいよ、まま、ぱぱ
ひざをこわされた、あしくびをこわされた、あしのつけねをこわされた、ひじをこわされた、てくびをこわされた、かたをこわされた
いたいいたいいたいいたい
どうしていつまでたってもむかえにきてくれないの
どうしていつまでたってもでられないの
こわいよ、いたいよ
こわされたばしょになにかをうめこまれる
いたい
あいでぃーる?しらない、ぷろとたいぷ?しらない
わたしはうえんでい
私は人形なんかじゃない
「………ゆめ」
(疲れていたのか、酷く頭痛がする)
「…それにしても、いったい」
「今のは、『誰の』夢だったのでしょうか」
【 夜明けの流星 】
_____60年前 某国国家研究所 実験記録
1960『 人類革新種(エスパー)部門発足 』
1962『 国内に存在する革新種を拿捕 』
1965『 "超能力"の移し変えに成功 』
________________
1999 世紀末
『 世界初の"人工異能"開発 』
2002 人権問題に関する摘発が行われ
研究に関する資料も焼き捨てられた
_________2015年 3月 29日
俺が "朝焼け" になった日だ
>>19
見返した薄っぺらな資料を机に放り
ずっと世話になってる椅子へ今度は背を預ける
……傾く視線、見えるのは小さな金庫の錆びた扉__
___________
僕が物心付いた時から 親父は良い親父とは思えなかった
誰の生き方にも踏み込んで口出ししては煙たがれ
仕事帰りにはひとりで酒もよく飲んでいた
それに 夜な夜な死んだ母さんを泣きながら呼ぶのだから
僕は眠れない夜を何度も過ごした事もあった。
けど 良い親ではなくても酷い親でもなかった
飯は食わせてくれる 学費も払ってくれる 家事だって…
でも 僕の事に良いことも悪いことも口出しをしなかった
朝の挨拶だって欠けてもお互いに何も言えないほどだ
そんなだから 僕は親父を誰とも思えなかった
同じ家に住んでいても 血の繋がりを感じたことさえも…
>>20
僕が高校に通って暫く経ったある日 親父は重い病気に掛かった。
医者は 末期のガンだと言う 親父は病院に通わなかった
親父は自分で立ち上がれなくなり 僕はバイトをする事にした
___________
高校を中退してから数ヶ月 もう 録に親父は起きていない
何故か 僕は恨んでいるかもしれない親父を憎めなかった
血の繋がっていて 悪いこともされていない
それだけで 親父を憎めるもんかと 僕は1人決め付ける
_____________
高校を卒業したみんなが 思い思いの道を進むなか…
親父は 死んだ。 ……朝の よく晴れた日の事だった
>>21
親父の死を看取ったのは 勿論僕だった
誰とも思えなかった筈の親父が死んでしまったとき
何故か 何故か…涙が止まらなかった。…親父…
…そして 親父は…死ぬ前に こんなことを言った
『 お前の母さんは…"悪"に殺されたんだ 』
____________
親父が死んでから 俺は何とか学校に通い直した
皮肉なことに、金を使う奴が1人になってからは余裕もある
……今でも 親父の最後の言葉が胸の中で生きていた
働きづくめの辛い日々を産み出した"悪" が
親父との会話を奪って母さんの顔を見せなかった"悪"が
"悪が許せない"___その気持ちだけが俺の頼りになった
>>22
高校を無事卒業し 大学に入った
この時点で 俺にはある、人から見れば幼稚な目標が出来た
大学を 卒業し、試験にも受かり …俺は"悪"と
"悪"と戦える職業…即ち、警察に就職した。
忙しさに満ちた日々、だが心の中は誇らしさで一杯だった
顔も知らない母さんに…何より親父に顔向けが出来た
……親父 俺はやったよ…
___________
2015年 警察内でも名が知れた私の元に
とある手紙が届いた。…それはあの時の私にとって
人生最大の"転期"だったが
実際は 今も後悔する悪魔の誘いに他ならなかった
>>23
手紙の内容自体は同封してある資料以外
極めて簡素な物だった。…だが、記された
短い言葉は 私の心を充分に魅せる効力を秘めていた
『 悪 と戦える力を持ちませんか? 』
____________
心を魅せられつつも、当然私は悩んだ
何しろ全くの不明から届いた手紙に
こんな事が記されている、しかも同封された資料は……
結局、私は資料に記された場所へ赴くことに決めた
日々 強大になっている勢力…『グラン・ギニョール』。
…奴らが持つ不思議な力に 一般の警察では太刀打ちなど
到底出来なかった、"力"が必要だった、それも緊急に
>>24
_________忌まわしき思い出 思い出すのを拒否する___
__________
………結果 私は…"異能"を得た。…他に比べれば
弱小な物ではあったが、それは当時の私が求めた
力の基準を大きく上回るものだった。
それでも 最初はその扱いに苦労した
数ある欠点に対処できるまで何度も医者の世話になった…
復帰した私は"異能"と"経験"により
如何なる"悪"とも戦えるようになった。
強大な敵を 悪魔のような敵を 苦難を経ても
必ず私は打ち倒し、それと共に名声と地位は上がる…
______ある時_____
私は ______
子供を 殺してしまった。
>>25
………………
その日、私は『グラン・ギニョール』の構成員を追い詰め
遂に古いビルの一室で"悪"の1人の正体を暴いた……
フードの下から現れた顔は… 何と10代にも
ならないような子供だったのだ。…驚く間に
その子は"異能"を用いて私を殺そうとする
動揺から 私はその子を攻撃することが出来なかった
年端も無いような子供 まだ中学にも通わないような…
そうこう時間を食う内に 現場へ部下が到着した
異能を持たない一般の警察チームだ
子供は部下達にも激しい敵意を向け 異能により
殺傷を試みた! 砕けた椅子の破片が宙に浮かぶ…
動揺に震える手のまま 私は……
銃弾を 麻酔に変える事を忘れたまま
連帯していた銃の引き金を………
_____現場の収集に駆け回る警官達
呆然と立ち尽くす私の足元には…
『 助けて 』
そう言いながら…
間も無く息を引き取った 死体が転がっていた
>>26
______責任問題は当時の私が立てた功績でうやむやにされた
___だが___命の問題は___
_____それで 済むものなどでは無いのだ___
______________
( 回想が、終わり…資料を金庫に納め 固く扉を閉じる )
……あれから 胸の中で息づいていた"言葉"は濁った
…正義 それを振りかざした結果に、疑念以外のものはない
「 ………………なぁ、親父… 」
( 虚空を見上げ おれは腐る程言った言葉を
投げ掛ける… 此れからも、止まらないその言葉を )
"平和"… 見つからないな___
『知らない誰か』
生まれた頃から、すぐ近くにいた
兄妹というわけではなかった
幼なじみ
簡単に、可愛らしく言ってしまえば、自分たちの関係性はそう言われるもの
だけど、自分たちの家は、そんなに可愛らしいものではなかった
源ノ家、龍洞院家、どちらも昔から、名を栄えさせた一族
そこで生まれた自分達は、お互い、長男と長女で
両家のしきたりとして長子は許嫁として、契りを結ぶ
自分達は幼なじみであり、許嫁という、関係性を気づくことになった
「しおちゃん」
「らいくん」
2人だけの会話だった、2人だけの呼び方だった、幼なじみだからというのもあるが、両家が許嫁同士の仲を深めさせようと、よく合わされていたから、いつもふたりであそんでいた
この頃は、ただただ、何も知らない子供だったから、楽しくて楽しくて仕方がなかった
そして、頼が8つになった
7つまでは神の子、それまで子供は無垢なまま
もとより、頼には先祖返りの言があった
『源頼光』
とても有名な、源ノ家のご先祖様
それに加えて、その頼光の記憶を、頼は8つになった途端、全てを得ることとなった
「…らいくん?」
「………なぁに、しおちゃん」
頼が8つになってから、2人だけの会話に、何かが混じっていた
「…………」
(しらないひとが、らいくんのなかにいる)
幼い栞にも、それだけはわかった
そして、栞も8つになったとき、自分たちの生活は変わった
頼は『祓い』の修行を、栞は『巫』の修行を
時間が経つにつれ、頼には4人の弟達もでき、修行の時間に削られ、2人の会う機会は、少なくなっていた
息苦しい
当主として相応しく、嫁ぐ身として相応しく
躾と、修行と、生活
どれをとっても息苦しかった
家にいることが苦しくてたまらなかった
誰も信用出来ない、全てが嘘で、世辞で、自分たちを使い潰そうとしている
それでも
頼には弟達がいた/栞には何も無かった
時間が経った、ある日のこと
頼が、大怪我をして帰ってきた
治癒の力を持つ栞も、治療に呼ばれた
ほぼ、殺される寸前、一目でそうわかるほど、怪我は酷かった
祓いの仕事でも、こんなものは無かった
治療のために、つきっきりでそばにいた
そして、意識を失っていた頼が目を開いた
栞は喜んだ、久しぶりに感情を昂らせた
でも
「酒呑童子に会った、早く、殺さなければ」
頼が最初に言葉は、栞が何も知らない言葉だった
頼の顔で、姿で、声で
『中にいる誰か』が、そう言葉を吐いた
「……………」
(『誰が』、話してるんだろう)
額に乗せるための濡れたタオルが、ポチャンと、桶の水に水滴を落とした