カルとマヤの異世界記録

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1:なかやっち:2020/03/26(木) 12:56

小説として書いてしまっていたのでこちらに移しました💦

563:多々良:2020/06/21(日) 18:57

カルセナがいるお菓子コーナーへ足を進め、そっとカルセナに話しかける。
魔耶「....カルセナ?」
カルセナ「えっ、うわっ!!な、何だ魔耶か....」
魔耶「どうしたの?やけに不注意だったけど」
カルセナ「あー......悪魔の事について考えてた」
魔耶「そう言う事か....何か思い付いた?」
カルセナ「うーん....悪いけど、何にも....」
魔耶「そっか....まぁ、着実に探し当てていこっか。それより、お菓子どーしよっかな〜」
カルセナ「.....?」
魔耶「.....ん、だからどうしたのよ」
カルセナ「いや.....何にも思い付かなかった事に対しての反応薄いなぁって思って....」
魔耶「ネガティブに考えちゃったらマイナスになっちゃうからね....あんまり深く考え込まない様にしてるの」
カルセナ「なるほどね〜....」

564:なかやっち:2020/06/21(日) 20:04

魔耶「…さーて、そんなことよりキャラメル探ししなきゃ!前はなかったからね…」
カルセナの前に並んだお菓子を覗きこみ、目当ての物はないかとキョロキョロする。
カルセナ「…そうだね。私もチョコ欲しい」
魔耶「チョコねぇ…君も私と同じくらいの甘党だな〜」
カルセナ「魔耶の場合キャラメル党でしょ?」
魔耶「ひっくるめて甘党でいいの!甘いのは大体好きだし!」


カルセナ「…大分お菓子買っちゃったね…」
買い物を終えて宿に帰っている途中、カルセナがボソリと呟いた。カルセナの言葉を聞いて、魔耶は右手に持っている袋に視線を移す。
魔耶「そうかな?…まぁ、買いだめってやつだよ」

565:多々良:2020/06/21(日) 21:53

カルセナ「そうか〜?一杯お金使っちゃうと、今度の........」
流れ出て来るかの様に発していた言葉を詰まらせる。
魔耶「ん?今度の....何さ」
カルセナ「あっ、いや、今度のご飯買えなくなっちゃうよ〜って言うね.....」
魔耶「ふぅ〜ん.....まぁそうだねぇ」
少し何かを誤魔化したかの様な話し方だったが、魔耶は特別気にしない事にした。
カルセナ「うん、そうだよ.....」

少々の間をおいて、空を見上げる。ラメを散りばめたかの様な点々とした星の間に、小さな半月が顔を覗かせていた。どこからか、夜行性の動物であろう声がする。風に乗って、良い匂いが漂って来る。辺りは本格的な夜に向けて静まろうとしていた。
魔耶「.....はぁ。私達、どのくらいこの世界に居るんだろうね」
カルセナ「さぁ....?でも、あの日から結構経ったよね」
魔耶「あの日?.....あぁ、あの日ね」
カルセナ「そうそう、私達が出会った日」
魔耶「何だか昔に感じちゃうなぁ.....魔族にとってはちょっとの時間、に該当するのに」
カルセナ「色々あったからね.....今だって、問題解決し終わってないしさ」

566:なかやっち hoge:2020/06/21(日) 22:44

魔耶「そうだね……まぁ、すぐ解決するよ、きっと。この世界で安定した暮らしを送れるようになれば、日々の流れも早く感じるようになるよね」
カルセナ「……」
魔耶「…カルセナ?」
カルセナの口数が少なくなったように感じ、後ろを振り向く。魔耶の視界に入った彼女は帽子で顔を隠していて、表情が分からなかった。その状態のまま、彼女が言葉を発する。
カルセナ「…魔耶…なんて言ったらいいか分かんないけど…私、今すごく不安なんだよ…」
魔耶「…不安…?」
カルセナ「うん。…もしだけど、魔耶がいなくなっちゃったらって…なんか…考えちゃって…」
魔耶「…」
カルセナ「魔耶が一番不安なのはわかってるけどさ…もっと私にできることがあったらいいのに…って、いつも考えちゃって…魔耶の支えになるようなものとか、あったらいいのに…って…」
魔耶「………なにいってんの」
カルセナに言われて、自然とそれに反応した言葉が口から出た。魔耶はその言葉を止めようとはせず、そのまま喋り続ける。
魔耶「カルセナにできることなんてたくさんあるし、たくさんしてもらってる。それに、支えになるようなもの…なんて、もうあるよ」
カルセナ「……もうある…?どこに…」
魔耶「私を支えてくれてるのは…カルセナだよ」
カルセナ「え…?わ、私…?」
魔耶「うん。君」
魔耶はカルセナを指差すと、にこりと笑いかけた。
魔耶「私も不安なんてない…って言ったら、嘘になる。本当は不安でいっぱいで、今すぐ泣きたいくらい。そんな私がさ、なんで笑顔をつくれるか分かる?」
カルセナ「……わかんない…」
魔耶「…君がいるからだよ。君との思い出があるから頑張れるし、君がいるから笑顔でいようと思える。カルセナがいてくれるだけで、十分なんだよ、私にとっては」

567:多々良:2020/06/22(月) 22:53

カルセナ「.....魔耶....」
並べられた言葉は、体を悪魔に犯されているとは思えない様な温かさを感じた。
カルセナ「......ありがと」
魔耶「そっちがお礼言ってどうするのよ。むしろこっちが言いたいくらい。ありがとう....ってね」
カルセナ「うん.....」
俯いた顔を大きく上げて、魔耶を見る。
カルセナ「...私、頑張るよ!この世界にいる間、魔耶と沢山の思い出を作れるように!!」
魔耶「そうだね、一緒に頑張ろ。....さ、もうお腹の減りが限界だよ、早く帰ろう!」
そう言って、魔耶が宿に向かって駆け出した。
カルセナ「あっ!待ってよー!!」


魔耶「.......ふぅ、良い運動をした」
カルセナ「もう今日の依頼で運動し終わってるのよね....はぁ、はぁ...」
魔耶「んじゃあ手洗って、それぞれのご飯食べよっか」

568:なかやっち:2020/06/23(火) 22:39

カルセナ「はーい。…あ、魔耶は何買ったの?」
魔耶「ん?…あぁ、おにぎりだよ。そばなかった〜」
そばが見当たらなかったことを思いだし、ため息をつく。
カルセナ「あらら…それは…ドンマイ」
魔耶「うーむ…まぁしょうがないっちゃあしょうがないよね。別の世界なんだし」
カルセナ「それもそうか…」


二人とも手を洗い終わり、テーブルに向かい合わせになる形で座った。二人の前にはそれぞれの選んだ美味しそうな晩ごはんが並んでいる。
カルセナ「あー、お腹すいた〜」
魔耶「そうだねぇ…んじゃ、早速食べましょうか。手を合わせて〜…」
カル魔耶「「いただきまーす!」」

569:多々良:2020/06/24(水) 22:25

魔耶がおにぎりに食いつき、カルセナはパスタを啜る。
魔耶「うん.....美味いわ。疲れた体に染み渡る」
カルセナ「だね〜.....美味しすぎて一瞬で食べ終わっちゃいそう」
魔耶「ちゃんと噛めよ〜」
カルセナ「私なりに味わってますよ....所でさ」
少し言い出しづらそうに話す。
魔耶「....ん、何?」
カルセナ「魔耶のタイムリミットって、あとどのくらいかな....」
能力を使ってしまった事などを考え、予測し直す。
魔耶「......あと2日弱くらいかな」
カルセナ「明日どこに行って情報収集する?図書館はもう探し尽くしたし.....」
魔耶「そうだなぁ.....うーんと.....」

570:なかやっち:2020/06/25(木) 16:58

魔耶「……聞き込み、とか…?」
唯一頭に思い浮かんだ案を発する。
カルセナ「あぁ、なるほど…でも誰に聞き込みするの?街の人が悪魔のことを知ってるなんて思えないよ」
魔耶「そうなんだよねぇ…情報を持ってそうで、まだ訪ねてない人いるかな?」
カルセナ「うーん…ニティさんにはもう聞いたし…幹部にはいろんな情報もらえたし…」
モグモグと晩ごはんを食べ進めながら、考え込む二人。
情報を持ってそうな人で、関わりのある人…誰かいただろうか…

…あの人ならば、どうであろう?
幹部達をまとめあげ、街の人をさらい、前に異変を起こしたあの人…
魔耶「…蓬さんは…?」
あの人は魔族と関わりがあるようだった。もしかしたら悪魔についてもなにか知ってるかもしれない…そう思った故の発言だった。

571:多々良:2020/06/26(金) 00:06

カルセナ「あぁー、確かにまだ聞いてなかったね」
魔耶「色んな事知ってそうだしさ....結構良いんじゃないかなって」
カルセナ「てことは、明日またあそこに行く感じ?」
魔耶「そうなるね....まぁまぁ遠い道のりだけど、それでも良い?」
カルセナ「うん、情報がありそうならばどこだってOK!」
魔耶「よし、それじゃあそうしよっか」

暫くして、食事に終符止を打つ二人の言葉が聞こえた。
魔耶カル「ごちそうさまー」
魔耶「美味しかったわ〜」
カルセナ「うむ、満足満足」
後始末をして、カルセナがソファにぐだっと座り込む。
魔耶「食後に寝ると牛になるんじゃなかったのかー?」
カルセナ「寝転んでないからセーフ」
魔耶「そう言うものなのかねぇ....」
カルセナ「うんうん。....今日のお風呂、魔耶さん先に入ります?それとも後が良い?」

572:なかやっち 短くてスマソ。:2020/06/26(金) 20:23

魔耶「あー…どっちでもいいけど…じゃ、先に入らせてもらおうかな。いい?」
カルセナ「いっすよ〜。ごゆっくり〜」
魔耶「ありがと。ササッと入ってきまーす」
カルセナ「うん……うん?」
『ごゆっくり』という言葉をかけたはずなのに『ササッと入ってくる』…という矛盾した言葉を受け取って変な反応をするカルセナ。そんな彼女の反応を横目に、魔耶はクスリと笑ってシャワールームに向かった。

573:多々良:2020/06/26(金) 23:19

そうして、シャワールームの扉の閉まる音がした。
カルセナ「.....ふぅ〜。どうしたものかねぇ....」
いかなるときも、ずっと魔耶の悪魔化について考えていたカルセナ。依頼を達成し終わった後だからか、どっと疲れが出てきた。
カルセナ「ぜんっぜん思い付かないなぁー.....だからと言って、ブラッカルに頼ったら何か怒られるからな....」
ソファから立ち上がり、自分のベッドに寝転ぶ。前に魔耶に言った警告を忘れているかのようだった。
帽子を脱ぎ、仰向けになった自分の顔の上にそっと乗せ、暗闇を作る。活動等をしているときの暗闇は恐ろしいが、考え事をしているときの暗闇はとても落ち着くものだ。
カルセナ「...........」
特に独り言も言わず、黙って考える。端から見たら、眠っている様にも見えるだろう。
カルセナ「(はぁ........早くこの事件を解決して、魔耶と温泉行きたいな......)」

574:なかやっち:2020/06/27(土) 12:51


『ザァアアア…』
魔耶「…はぁ〜…シャワー浴びてるだけで疲れまで流されちゃうよ…」
シャワーを浴びながら満足げに呟く魔耶。
温かいお湯が、泡と今日一日の疲れを流してくれているようでとても心地がよかった。
魔耶「…でも、やっぱりたまにはお湯に浸かりたいよね…この世界にきてからシャワーばっかだし…」
確かにシャワーも気持ちいい。だが、魔耶は前の世界ではお風呂に入ることが多かった。だからか、シャワーよりお湯に浸かるほうが好きなのだった。
魔耶「あーぁ、早く温泉行ってみたいな」
自分の今おかれている状況を解決することができたら…そしたら、カルセナと一緒に温泉に行くと決めたのだ。今は解決まであと一歩というところだが、きっと解決できると信じている。だから、温泉にもきっと行ける。
魔耶「…じゃあ、頑張るしかないよね」

575:なかやっち hoge:2020/06/27(土) 12:53

訂正…
魔耶「…じゃあ、頑張るしかないよね」

魔耶「…そのためには、頑張るしかないよね」

576:多々良:2020/06/27(土) 21:36


どのくらい経っただろうか。ゆっくりと体を起こしたかと思えば、近くの窓から外を眺める。
月には少し雲がかかっている様だったが、本来の輝きを失っていると言う事はなかった。
カルセナ「綺麗だなー......」
この世界で、あの月を眺める事が出来るのはあと何回くらいなのだろうか。
二人してずっとこの世界に居続ける訳にもいかない。お互い、それぞれの事情がある筈だ。しかし、仮に元の世界に帰る事が出来るようになったとしても、今のままではきっと離れられない。未練を残しすぎている。
今すぐに帰らないともう戻れない。そう言う状況に陥ったとしても、今は別れ方を知らない。きっと、何て言えば良いのか、分からず仕舞いになってしまうだろう。
そんな事が無い様に、二人で冒険をしている。思い出を未練として残すのではなく、一筋の輝きとして忘れない様にするために。この世界の、煌々と輝く月よりも輝かしい思い出をつくる為に。

カルセナ「.......あれ?流れ星かな.....?」
空の奥で、二筋の光が見えた。流れ星に祈ると願いが叶う。子供の頃に教えられた事を信じて、カルセナは強く祈った。
カルセナ「どんな壁だって、乗り越えられますように」

577:なかやっち:2020/06/27(土) 22:17


魔耶「ふぅ、すっきりしたぁ。カルセナ〜、あがったよ……って、なにしてんの?」
ドアの取っ手を回すと、カルセナが両手を組んで夜空を見上げている光景が目に入ってきた。
魔耶の質問が聞こえたのか、カルセナがゆっくりこちらを振り返る。
カルセナ「…あぁ、魔耶。空見てたら流れ星があってさ、願い事してたの」
魔耶「ほう…そういうことね。…なんてお願いしたの?」
カルセナ「…これからどんな困難の壁がきても、乗り越えられますように…ってね」
魔耶「はは、なるほどね。カルセナらしいよ」
困難を乗り越えられるように…か…
魔耶「…じゃあ、せっかくだし、私もお祈りしてみようかな」
そそくさとカルセナの隣に移動し、夜空を見上げる。
うっすら雲があるが、むしろそれが風情を感じさせてくれるようだった。絵のように綺麗な、素晴らしい星空であった。
カルセナ「いいね。流れ星がきたら、願い事を祈るんだよ」
魔耶「はーい」


魔耶「よし、お願い完了!」
カルセナ「うんうん。……ちなみに、魔耶はなにをお願いしたの?」
魔耶「……これからの生活が、楽しくて、かけがえのない大切なものになりますように…ってね」
魔耶は少し照れくさそうに笑い、そう言った。

578:多々良:2020/06/28(日) 19:29

カルセナ「あはは、それこそ魔耶っぽいよ〜。.....そんじゃ、私浴びてくるね」
魔耶「はーい、ごゆっくり〜」
着替えやタオルを持って魔耶の元から離れ、シャワールームへと向かった。

カルセナ「.......あ〜、良いお湯ですな」
頭の天辺からシャワーを浴びる。疲れがほぐれていくかの様で、とても気持ちが良かった。
カルセナ「.....そういや修行って、どんな事すんのかな」
依頼を受けている最中に、今の事件が無事に解決したら強くなる為に修行をしないか、と魔耶に誘われた。
カルセナ「アス姉(カルセナの姉)が修行だの特訓だの言って鉄棒振り回してたけど....あんな感じの事すんのか.....?」
何はともあれ、自身が強くなれればそれで良い。今はそう思っていた。

579:なかやっち:2020/06/28(日) 21:17


魔耶「…さーて、なにしよっかなー…」
カルセナがシャワーを浴びに行ってしまったため、魔耶は一人部屋の中で呟いた。
いつもなら能力を使って暇潰しでもするところだが、今は能力を使うことができない。つまり、今魔耶は暇をもて余しているのだ。
魔耶「能力が使えないとこんなに不便だなぁ…ほんと、なにしてよう?これじゃあくまさんをつくって遊ぶこともできないよ〜…」
暇を潰せるものはないかと、部屋をグルリと見渡してみる。だが、目にはいるのは、買ったものが乱雑に置かれたテーブルとベッドくらいだった。
魔耶「…おやつでも食べてましょうかね…」

580:なかやっち hoge:2020/06/28(日) 21:19

訂正
「能力が使えないとこんなに不便だなぁ」

「能力が使えないとこんなに不便なんだなぁ」
(最近ミスが多いぜてへぺろ)

581:多々良 更新遅くなった.....すまん。:2020/06/30(火) 21:17


カルセナ「......あ、また無意識に出ちゃった」
シャワーを浴びながら、自然と鼻唄を歌っていた。心地が良いと、ついついそうなってしまう。
カルセナ「....はぁ〜、今頃家族は何してんのかな....悪霊に取り憑かれたりしてないかね....」
日にちが経てば経つほど、元の世界に残っている家族の事が心配になってしまう。自分が居た頃は、ずっと家族の側で見守っていた。だから、いざ離れるとなるとやはり寂しさが胸に残る。
カルセナ「.........よっと」
蛇口を捻り、シャワーを止める。脱衣場に手を伸ばし、バスタオルを取って頭を拭き始めた。バサバサという音と共に、溜め息が混じって聞こえた。

582:なかやっち 大丈夫よ〜:2020/06/30(火) 23:01


魔耶「キャラメル美味し……ん、おかえりカルセナ〜」
小腹を満たすためにキャラメルを食べていると、ドアの影からカルセナの姿が現れた。風呂上がりだから、いつもよりも髪の毛がしんなりしてる。
カルセナ「うん…あ、おやつ食べてたのね」
魔耶「そうなのよ〜。能力使えないと暇潰しができなくて…普通の人って、こんなに暇な時間をもってるんだね」
カルセナ「なんか上から目線だな……まぁいいや。私にもなんかちょうだい」
魔耶「ん〜」
袋を漁り、カルセナのおやつと思われるチョコをヒョイと投げてよこした。
カルセナ「ちょ、ちょ…うおっと」
魔耶「ナイスキャッチ〜」
カルセナ「全く…人に投げるなって言いながら、魔耶だって投げてるじゃん…」
魔耶「あはは、ごめんごめん…」
悪戯っぽく笑いながら、カルセナに視線を向ける……と、魔耶の顔からいきなり笑顔が消えた。カルセナの目を見たせいであった。
魔耶「……カルセナ、勘違いだったら悪いんだけど…」
少々躊躇いがちに問いかけてみる。
カルセナ「……?なに?」
魔耶「なんか、いつもよりも悲しそうだね…?なにかあった?」

583:多々良:2020/07/01(水) 21:52

カルセナ「.......えっ」
魔耶にそう問われ、心の中で慌てて答えを探る。しかし、「答え」と言う言葉は上辺だけで、正しく言い表すのだとしたら「言い訳」に値するものだったかもしれない。
カルセナ「べ、別に何も......疲れたのかな....?」
魔耶「ふぅん.....まぁいっか」
何とか誤魔化せた。疲れが溜まっているのと言うのも事実だった為、嘘は吐いていない筈であった。もう少し髪を良く拭こうと、魔耶の横を通り過ぎてベッドに腰掛けた瞬間、再び魔耶の声が聞こえた。
魔耶「なんて、なる訳ないでしょ」
その言葉を聞き、瞬時に魔耶の方向へ振り向く。
魔耶「いつもの疲れてる顔じゃないよ。カルセナが良いなら、何かあったのなら、何でも話して」
カルセナ「.......そんなに重大な話でもないんだけどね.....ちょっと、家族の事を思い出して、恋しくなっちゃって....」
魔耶「....そう言う事だったのね」
カルセナ「うん......私なんて、もう皆からは見えないのに....何でこんな気持ちになっちゃうんだろ」
肩に掛けていたバスタオルを、両手でぎゅっと握りしめる。

584:なかやっち:2020/07/01(水) 23:20

魔耶「……それは、君が家族を愛していて、大切に思ってるから、だよ」
悲しそうな表情を浮かべたカルセナに、ポツリと言う。
魔耶「じゃなきゃ、そんなこと思わないもん。カルセナは、家族を心の中でずっと大切に思ってるんだよ」
カルセナ「…大切に…?」
魔耶「うん、そうだよ。………死んでも家族を思ってるなんて…優しいな、カルセナは。きっと家族もカルセナみたいな人に見守ってもらえてて、幸せだよ」
そう言ったあと、「私にはよくわかんないけどね」と付け足しておいた。
魔耶は生まれてすぐに親を亡くし、親の友人であった閻魔様達に育てられた。唯一血の繋がった家族も、魔耶を置いて居なくなってしまった。だから魔耶にはよくわからなかった。そう感じることのできるカルセナが少しだけ羨ましい…そう感じたのもあったかもしれない。
魔耶はカルセナに言葉を伝えたあと、自分の状況を思いだし、少しだけ寂しそうな顔をした。
魔耶「……ごめんね、私の問題なんかに付き合わせちゃって…そのせいで元の世界に帰るのが遅くなってるよね…。君は、大切な家族がいるんだもんね。家族のことを想うのは当たり前だよ」
カルセナは見守らなきゃいけない家族がいる。なのに、私にはそんな人いない。一人暮らしだし、友人や閻魔様にも毎日会うわけじゃない。だから、例え数年家を空けていたって、心配されることも心配することもない。
だから、私は、この世界でゆっくり過ごしてしまっていた。あわよくば、ずっとカルセナと一緒にいたいなんて…なんておこがましかったんだろう?カルセナには大事な家族がいるのに、自分の都合ばかり考えてた。もしかしたら、カルセナはずっと帰りたいと思っていて、私に無理矢理付き合わされる形になっていたのかも…
魔耶「…ほんと、ごめんね…」
今の私は、ただカルセナに謝ることしか出来なかった。

585:多々良:2020/07/03(金) 23:03

カルセナ「っ.......!」
痛かった。魔耶の、たった一言の謝罪が。今一番苦労しているのは魔耶なのに、謝らせてどうするのだろう。寂しさと申し訳無さで頭の中がぐらついた。
カルセナ「...謝らないでよ.......また魔耶と、離れたくなくなっちゃうじゃん......ッ!」
少し濁ったその言葉は、元の世界に戻りたい気持ちとまだ魔耶と一緒にいたい気持ちが混ざり、矛盾しているかの様に読み取れた。
魔耶「カルセナ.........」
顔はこちらを向いているが、カルセナの目には今にも溢れんばかりの涙が溜まっていた。
カルセナ「そんな顔しないでさ........もっといつもみたいに元気な魔耶で居てよ.....!....謝らないでよ.....ッ」
それ以上魔耶の顔をじっと見ている事が出来ず、俯いてしまった。目に溜まった涙が一粒、カルセナの手にポツッと落ちた。
魔耶にこんな顔、もう見せない様にしようとしていたのに。弱いメンタルは卒業しようと決めていたのに。いざ向き合うと、やっぱり難しかった。

586:なかやっち:2020/07/04(土) 17:51

魔耶「…カルセナ…」
泣かせるつもりはなかったのに…カルセナの涙なんて見たくないのに…自分の軽はずみな発言を恨んだ。カルセナを泣かせてしまったのは、自分の言葉なのだ。
カルセナは帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちの間で揺れているようで、辛そうな表情を浮かべながら涙をこぼしていた。そんなカルセナの顔を見て、魔耶も心が締め付けられたような感覚に陥った。
魔耶「そう、だよね…ごめん…いきなり変なこと言って…」
魔耶もカルセナから視線を外し、俯いた。
カルセナ「だから、謝らなくてもいいってば…魔耶には、いつもの魔耶でいてほしいの…!」
魔耶「……」
私は、いつもそんなに笑っていただろうか。自分だと分からないが、きっと、カルセナから見たら私はたくさん笑っていたのだろう。前の世界ではそんなに笑うこともなかったのに…
魔耶「…私はさ、カルセナが羨ましいよ。見守るべき…大切にするべき家族がいて。私には、そんな人いないから…。だから、勝手に、ずっとカルセナとこの世界で過ごしたい、なんて思ってて…カルセナには大切な家族がいるのにさ…」

587:多々良:2020/07/04(土) 21:21

カルセナ「.......魔耶だって....」
俯いたまま話そうとしたが一旦区切り、タオルで涙を拭う。そして、再び魔耶の方を向いた。
カルセナ「魔耶だって、元の世界での大切な人.....いるでしょ....?」
魔耶「....私は長い間一人で暮らしてたし、カルセナ程じゃ.....」
カルセナ「...........嘘」
魔耶「......?」
カルセナ「魔耶を育ててくれた閻魔様とか....お姉さんとか.........一緒に暮らしてなくたって、大切な人でしょ....?」
魔耶「......そう....だけど」
カルセナ「だったら.....立場はおんなじだよ.....それぞれ想ってる人がいるじゃん」
魔耶「.........うん」
俯かせていた顔を少しだけ上げる。
続けていた会話に間が空き、もう一度顔を落とそうとした。しかし、カルセナの言葉がそれを止めた。
カルセナ「......魔耶は今大変なのに...タイムリミットがもうすぐ迫ってるのに、こんな話にさせちゃった。....いつもの魔耶で居てって言ってる割に、私が出来てなかった.......私こそ、ごめんね」
先程と違った、はっきりとした口調で謝罪の言葉を述べる。魔耶を見る目は涙で多少腫れていたが、その顔は暗く落ち込んだものではなく、まるで大事な約束を守ろうとしている子供の様な、キリッとした顔だった。

588:なかやっち:2020/07/04(土) 22:27

魔耶「…ううん、大丈夫だよ。…これで、仲直り、だね」
ようやく魔耶もしっかりと顔をあげ、カルセナと二人で微笑み合った。
カルセナ「喧嘩してた訳じゃないけどね」
魔耶「はは、まぁそうなんだけどさ〜?」
魔耶の言葉に自然と笑みがこぼれ、二人で大きな声で笑った。暗闇が広がる街の中に、二人の少女達の暖かな笑い声が響く。
笑い合いながら、魔耶はこう考えた。「今は、元の世界に帰ることとかそんなことよりも、カルセナと一緒に笑っていられる…今を大切にしよう」…と。もしかしたら、元の世界に帰るのはすぐの未来かもしれない。遠い未来かもしれない。でも、どちらにしても別れはやってくるのだ。だから、今は別れを惜しむよりも今を楽しみたいな…

589:多々良:2020/07/05(日) 09:41

カルセナ「.....はぁ〜、ちょっとタオル置いて来るねー」
魔耶「うん、行ってらっしゃーい」
ベッドから立ち上がり、脱衣場の籠に濡れたタオルを置きに行く。
カルセナ「(....やっぱり、こうやって笑ってる方が楽しいに決まってるよね)」
そんな事を考えながら、魔耶のいる部屋へと戻る。
カルセナ「ただいまー」
魔耶「おかえりー」
カルセナ「うーん.....まだ眠くなるまで時間あるかな.....」
一秒刻みで針がカチコチと音を立てている、壁掛けの時計を見る。
魔耶「そうだね.....私も、もうちょっと起きてても良いかも」
カルセナ「何しよっかな.....何か調べる?それとも違う事する?」

590:なかやっち:2020/07/05(日) 10:42

魔耶「うーん…調べるっていっても、資料とかなにもないし…能力も使えないからカードゲームとかもできないし…」
改めて、能力が使えないことを不便だと感じる魔耶。早くこの問題を解決できれば能力も使えるのに…と、ため息をつく。
カルセナ「そうだよねぇ…じゃあなにしよう…」
魔耶「うーん…………雑談?」
散々悩んだわりに、普通の答えを出す魔耶。そんな魔耶の意見にカルセナも賛成する。
カルセナ「お、いいねぇ。お菓子食べながら雑談しよっか」
魔耶「うんうん。あ、カルセナにお菓子渡したよね?」
カルセナ「うん、貰ったよ〜」
魔耶「よしよし。んじゃ、どんなこと話そっか?」

591:多々良:2020/07/06(月) 20:40

カルセナ「う〜む......何がいっかねぇ」
話題を二人で考える。話すことがないのは少し困るが、良い意味で捉えれば、それはこれまで沢山話してきたという証にもなっているだろう。
魔耶「.....何か、美味しいお店とか....?」
カルセナ「お店.....あ、そう言えば、うちら北街でしかご飯食べたことなくない?」
魔耶「確かに、他の街のご飯食べたこと無いかもねー」
カルセナ「ここと他の街はご飯の種類違うのかなぁ?」
魔耶「もしかしたら、この街にはないご飯屋さんがあるかも....!?」
カルセナ「あったとしたら、是非とも食べてみたいなぁ〜。この世界のご飯めちゃくちゃ美味しいから」
魔耶「だよねー、元の世界のご飯だって勿論美味しかったけど、この世界のご飯も格別だったな」
カルセナ「お土産に持って帰りたいくらいだわ〜」
魔耶「何も持って帰れないかもよ〜?移動手段とか代償みたいなのによっては」
カルセナ「うーん、そうだったら残念だな.......」

592:なかやっち:2020/07/06(月) 23:10

魔耶「まぁ…もしそうだったら、ここでたくさん食べていけばいいんだよ〜。そして、その味を覚えて帰る」
カルセナ「なるほど…そういう策もあるね」
魔耶「うんうん。ここの世界の料理はほんとに美味しいから、今のうちにしっかり堪能しとかないと!」
もしこの世界にまだまだ色々な料理があるのであれば、元の世界に帰る前にしっかりと食べていきたい。でないと、あとで後悔してしまいそう。そのくらいここの料理は美味しいのだ。
カルセナ「そうだねぇ…。どうせだから、この世界の料理全部食べて帰ろっか」
魔耶「お、この世界でグルメ旅でもします?」
カルセナ「そんな感じのことしたいね〜。それなら、まずはこの街の料理を制覇しなきゃだ」
魔耶「じゃあ、制覇目指してがんばりましょうか!お金もコツコツ稼がなきゃね」

593:多々良:2020/07/07(火) 22:37

カルセナ「だね〜。いつかまた、昇格試験も受けたいね」
魔耶「お金稼ぐには報酬が高いやつやんないとだもんね....修行したりしたら、受けてみるのもありかもよ?」
カルセナ「あー、そう言えば修行とか言ってたな〜。私が続けられるかね.....」
魔耶「そんな根気ないか....?ま、内容によるか」
カルセナ「頑張りまーす.....強くなって帰ってやる〜」
魔耶「そうそう、その意気だ」


結構な時間話していたせいか、二人とも話の間に欠伸を挟む様になった。
魔耶「ふわぁ〜.....」
カルセナ「....そろそろ寝ます?」
魔耶「うん.....私はもう眠いな....」
カルセナ「んじゃあ、電気消しちゃいますか」

594:なかやっち:2020/07/07(火) 23:16

魔耶「ありがと〜。じゃ、おやすみ、カルセナ…」
カルセナ「うん、おやすみ…」
暗くなった部屋で目を閉じると、クエストの疲れからであろう、どっと眠気が押し寄せてきた。魔耶はその眠気に身を任せるまま、夢の中へと落ちていった。



魔耶「…ここに来るのも慣れてきたな…」
いつもの見慣れた空間。あたり一面真っ白で、壁と床の境界線も分からない部屋のような場所。そこにポツンと座っている、自分とよく似た姿の悪魔。自分と違うところは、黒くて長細い角が生えていること、羽が少し大きいこと、目が赤黒いこと、鎖に繋がれていることくらいだろうか。
悪魔耶「…いらっしゃい。君も、もう時間が少なくなってきたんじゃないかな?だってほら、鎖がこんなに少なくなったもん。前はこの倍以上はあったのにさ」
魔耶「…!そんなに減ってるの…?」
悪魔耶「うん。最初よりも全然少ないね」
魔耶「…もう時間が少ないみたいだね…」
悪魔耶「そーだねぇ。そろそろ、諦めてもいいんじゃない?なにか企んでるみたいだけどさ、どうせ無駄だと思うよ?」
思いがけない悪魔耶の言葉に驚き、信じられないという顔で彼女を見つめる。
魔耶「き、気づいてたの…?っていうか、そんなのやってみないと分からないじゃん‼」
悪魔耶「気づいてたっていうか…君の行動は大体伝わるからね〜。君が何処にいってどんなことをしたかくらいは把握してるよ。あと、そんなのやってみないと分からない、だっけ?そんなの分かるよ。だって、ただの人間や神が悪魔を倒せると思ってるの?たとえ私と同じくらい強くたって、あっちに殺意はない…私を弱らせようとするだけでしょ?そんなの全力じゃないじゃん。こっちは心おきなく全力でいけるのに」
魔耶「……ッ…」
悪魔耶「人を救おうとする覚悟と、私の本気。果たしてどちらが強いかな?」
そういって、悪魔耶は私と全く同じ笑顔で微笑んだ。

595:多々良:2020/07/08(水) 21:30



カルセナ「....おはよ」
影すら見えない程の真っ暗闇の中、カルセナは声を掛けた。相手はここの住人、ブラッカルだ。
ブラッカル「.....よぉ。....魔耶の様子はどうだ」
カルセナ「第一声が心配って、やっぱり魔耶の事好きなんじゃ〜ん」
ブラッカル「う、うるせぇな!!それよりどうだって聞いてんだろ!」
照れた様に顔を帽子の鍔で隠す。帽子には、以前魔耶から貰ったブローチが、光の差さない真っ暗闇の中で唯一の輝きを放っていた。
カルセナ「あぁ....大まかな変化は、目の色が変わった事くらいだと思う.....私達が気付いてないだけで、他にもあるのかもしれないけど」
ブラッカル「ふーん......タイムリミットってのは...何時だ」
カルセナ「......あと2日くらい....?」
ブラッカル「......本当か?....能力使っちまったりしたんだ、最初に魔耶に言われた日数だけで計算するもんじゃねーぜ」
カルセナ「て、ことは.......」
ブラッカル「.....もって1日半くらいだろうな」
カルセナ「そんなに....短いの....!?」
まるで余命を聞いたかの様な気分になり、一瞬目眩が生じる。悪魔化の日まで、本当に時間が無いのだ。
ブラッカル「いよいよ後はねぇぞ。明日には、どうするか決心しねぇと手遅れになるだろうな」

596:なかやっち:2020/07/08(水) 22:37


魔耶「…そんなの、人を救おうとする覚悟の方が強いに決まってんじゃん…!」
悪魔耶「…ふぅん?なんでそう思うの?」
魔耶「だって…人を傷つけるよりも、救おうとする覚悟をもつほうが難しいじゃん…!カルセナは、自分の危険を承知で私を助けようとしてくれてる…!そんなカルセナが、人を傷つけることしか考えてない君に負けるわけないよ!」
悪魔耶にはっきりと自分の考えを伝え、睨み付ける。
すると、悪魔耶は、魔耶がさっき言ったことなど意に介していないかのようににっこりと笑った。てっきり怒るか不機嫌になるかなんて考えていた魔耶は少々面食らった。
悪魔耶「…なんだ、そんなのただの精神論じゃん。なにかすごい作戦があるのかなんて期待しちゃったのに〜。どんなことを考えてるか、なんて関係ないよ?強さと結果、これが戦いにおいて全てでしょ。だから、強い私のほうが勝つ。これだけのことじゃない?」
魔耶「……!」
悪魔耶「君も半悪魔なんだからさ、そんな人間みたいな考え捨てなよ。人間特有の『愛』とか『絆』とか…そういうの聞くと、苛々するんだ。いざ自分が危険に晒されたら、そんな綺麗事言えないのにさ」
魔耶「……じゃあ、君とは分かりあえそうにないね…。私は、『愛』とか『絆』は本当に存在すると思ってる。確かにそれは綺麗事なのかもしれいけど…でも、私は、その綺麗事に何度も救われたんだよ!」
魔耶の言葉は本当だった。カルセナとの『絆』のお陰で私は今生きているし、カルセナのお陰で今の私でいられている。カルセナだけじゃない、閻魔様や、親友の満空…色んな人との『絆』で、私はここにいるのだから。だから、悪魔耶の考えは間違っている。
そう伝えると、悪魔耶は変わらぬ笑顔で微笑んだ。
悪魔耶「…そっか。じゃあ、私は早く外に出なきゃね。君のその価値観がどれだけくだらない戯れ言だったか、早く教えてあげたいよ。…んじゃ、もう時間だから、またね」
悪魔耶の変わらぬ笑顔…つまりそれは、悪魔耶の考えは変わっていない、私の言葉が全く届いていないということだと気づいた。同じ自分なのに、どうしてこんなに考え方が違うのだろう?…視界がぼやけていくなかで、そんなことを考えていた。

597:多々良:2020/07/09(木) 21:23


カルセナ「.....そっか....そうだよね...」
拳をぎゅっと握り締め、震えた声を出す。その声は泣いているのではなく、怯えていた。魔耶が悪魔になるのが怖くて、魔耶が戻ってこられなかったらどうしようと思ってしまって。
ブラッカル「.........」
暫く無言のブラッカルだったが、おもむろに立ち上がってカルセナと面を合わせる。
そして、目にも止まらぬ速さで右手をカルセナの頬に打ち付けた。

カルセナ「「 ......いったぁあッ!!!? 」」

数秒経って、やっと叩かれた事に気付く。
カルセナ「な.....何すんの!?」
ブラッカル「「 しっかりしろ!! 」」
カルセナ「.....え?」
ブラッカル「くよくよすんじゃねぇ!気を強く持て!!そんな心構えじゃ、魔耶を救える筈がねぇだろ!ったく、声を聞いて一瞬で分かったぜ」
カルセナ「.........」
叩かれて赤くなった頬をそっと手で覆う。まだ鮮明に、ピリピリとした痛みが残っていた。
ブラッカル「さっきのはお祓いだ。テメェの馬鹿みてぇな心の弱さのな」
背伸びをした後、再び地面に座り込んで大きな欠伸を見せた。
ブラッカル「あーあ、これでエネルギー使っちまった。もう寝る。体力温存する」
そうして、あっという間に眠りに着いてしまった。頭をだらしなく垂らして寝息を立てている。

カルセナ「.......ありがと」

598:なかやっち:2020/07/09(木) 23:16


魔耶「…ん…毎回、目覚めが悪いなぁ…」
さっきまで横たわっていた体を起こし、いつも見るあの夢(?)に対してため息をつく。あの夢は、悪魔耶は、毎回歯切れの悪いところでいなくなってしまうのだ。もっと言いたいことや聞きたいことがあったのに…
憂鬱な気分を抱えながらも、寝起きの体をグッと伸ばす。まだ外は暗く、朝には見えなかった。
魔耶(…時間で言うと、夜中の1時か2時くらいかな…?)
チラリと横に視線を移すと、カルセナがすぅすぅと寝息をたてながら気持ち良さそうに寝ていた。流石に今起こすのは悪いだろう。
魔耶「…しょうがない、一人で夜散歩といきますか…。考えたいこともいっぱいあるしね」
魔耶は今目覚めたばかりにも関わらず、眠気を感じていなかった。今は夜中だし、カルセナもまだ起きないだろう。少しくらい散歩に抜け出したって問題ない筈だ。
魔耶「…じゃ、いってきますか…」

599:多々良:2020/07/11(土) 06:12


カルセナ「........う..ん...」
ブラッカルと別れ、現実世界でゆっくりと目を開ける。まだ外は真っ暗な状態だった。
カルセナ「(あれ.....魔耶は......?)」
気付くと、隣で寝ていた筈の魔耶が見当たらなかった。
カルセナ「(......トイレかな...)」
一度目が覚めたとはいえ、時間帯で言えば深夜。もう一眠りしようと、カルセナは再び目を閉じた。

カルセナ「...また......?」
今日一度会ったのに、しかもあいつは寝ている筈なのに、また同じ空間に立っていた。少し遠くに見えるブラッカルは相変わらず寝ている様だ。
カルセナ「...来てもする事ないんだよな....」
この空間に来させられるには何か理由がある筈。と言うか、そうでないと意味がない。
カルセナ「......そう言えば、この空間って他にも何かあったりしないのかなぁ.........ちょっと歩いてみよ」
行けど行けど真っ暗闇が続く可能性が高いが、他にやる事も無いので取り敢えず探索してみる事にした。

600:なかやっち:2020/07/11(土) 13:04


魔耶「…あー…涼しい」
宿をそっと抜け出すと、涼しい夜風が頬に触れた。少し寒いくらいの風に触れ、寝起きの頭と体が冷やされた。
宿を離れ、考えごとをしながらブラブラと暗い街中を歩き始める。
魔耶「……はぁ…まったく、悪魔の私にも困ったものだよ…」
誰もいない道の真ん中で呟く魔耶。
魔耶「同じ私なのに…なんであんなに考え方が違うんだろ?私が人間に近いから…?それとも、悪魔特有の考え方なのかな?あれは…」
人間がよく言う『愛』『絆』が綺麗事だと、聞いてて苛々すると悪魔耶は言っていた。私はそうは思わない。『愛』や『絆』が綺麗事なのだったら…存在しないものだったら、私は今ここにいないはずだ。カルセナが私を何度も助けようとしてくれていたのだから。それを『愛』『絆』と言わないなら、なんと言えよう。
魔耶「…そういえば、悪魔って悪事を働いたり、人の不幸を見たりするのが好きだとか聞いたことあるなぁ…。じゃあ逆に、親切にしたりとか、人の幸福を見たりするのは嫌いなのかな」
それなら考え方が違うのにも納得がいく。同じ自分でも、悪魔耶は悪魔の本能的にそれが嫌いで、私は人間に近いからそれが好きなのかも…
魔耶「…ま、ただの憶測だから、あいつのことなんて知らないけどさ」

601:多々良:2020/07/12(日) 09:07


カルセナ「うーん.....」
いくら歩いても変わりの無い景色に、倦怠感が出てきてしまっていた。
カルセナ「本当に何にもないのかなー.....てかこれ移動してるよね?」
ブラッカルの姿が遠退き、見えなくなったので移動はしている筈だが....カルセナにとっては同じ所で足踏みをしているだけの様に感じた。

カルセナ「そろっと起きたくなってきたわ..........ん?」
足を動かしていると、ふと目線の先にあるものが見えた。星の様に仄かな光を放つ、白い点。興味をそそられ近付いてみると、その大きさは蜜柑1個分程度のものだった。動く事もなく、ただ空中で静止している。
カルセナ「何だろうこれ......」
少しばかり神秘的に感じた故の思い込みかもしれないが、その物体から何か引力の様なものを感じた。
好奇心のせいか自然とそれに手が伸びる。近付けば近付く程、引き寄せられる力は強くなっている様に思える。
カルセナ「.........うっ!!?」
指がその物体に触れそうになった瞬間、一瞬にして強い頭痛が走り、手を伸ばす事を止めさせた。
カルセナ「な....何なの....?触っちゃ駄目なのかな.....?」
触ろうとしていた物体は、変化なくそこに止まっている。
カルセナ「....この事、あいつは知ってるかな......」
この正体を知りたい。自分の中にあるもの位、把握しておきたい。そう思うと居ても立ってもいられなくなり、歩いて来た方向とは真逆、ブラッカルが居る方向へと走り出した。

カルセナ「(......そう言えば、あれ触ろうとしたとき...あいつの声が聞こえた気が.........いや、気のせいかな)」

602:なかやっち:2020/07/12(日) 10:07


魔耶「…お、そろそろ明るくなってきたかな?」
ぶらぶらしていたら、いつの間にか結構な時間が経っていたらしい。
道沿いにある民家が太陽の光によって照らされていく。ずっと暗い街中を歩いていた魔耶はつい目を覆った。
魔耶「…わぁ…」
覆った手を下に下げると、そこには神秘的な景色が広がっていた。
街は光と影がくっきりと映し出され、境界線ができていた。後ろに視線を向けると、川に流れている水が太陽の光を反射してキラキラと光っている。街中にある雑草でさえも、朝露を宝石のように輝かせている。
前と後ろの景色が一枚の絵のようで、魔耶は後ろにも目があればいいのにと思った。それくらい、この景色は美しかった。
魔耶「すごい…街の朝ってこんな感じなんだ…初めてみた…」
山に住んでいた魔耶は、街で寝泊まりすることなんてなかった。だから、街の朝の風景を見たことなんてなかった。
初めてみる人工物と自然が合わさった朝の景色に感動する。
魔耶「…いつもと同じ景色なのに、朝ってだけでこんなに違うんだ…不思議だな…」

603:多々良:2020/07/12(日) 18:13


カルセナ「「 起きてっ!! 」」
走っていた足を止め、暗闇の中で叫ぶ。
ブラッカル「......ん、何だよ.....こっちはまだ寝てたってのに....」
少し不満げに目を擦る。胡座をかいている足の上に肘を置き、片手で顎を支えるような体制になってカルセナを見つめる。
カルセナ「....ハァ、ハァ、ちょ...ちょっと待って.....」
ブラッカル「相変わらず体力ねぇな.....」
カルセナ「.......ふぅ、あの....ちょっと聞きたい事があって」
ブラッカル「聞きたい事だぁ?....ま、何でも良い。言ってみろ」
カルセナ「うん.....あのさ、さっきまでこの空間を探検してたんだけど....変なものがあって」
ブラッカル「.....変なもの?」
そのワードに反応したのかピクッと手を動かし、背筋を僅かに伸ばす。
カルセナ「そう、えっと.....仄かに光ってる球体?みたいな......このくらいの大きさの」
記憶に残っているその物体の大きさを手で表す。それと同時に、ブラッカルの目付きが変わった。
ブラッカル「......触ったりしたか?」
カルセナ「えーと...気になったから触ろうとしたんだけど、そのときはいきなり頭痛がして....結局触るの諦めちゃった」
そう言うと、ブラッカルは立ち上がってカルセナの目の前で言葉を放った。いつもより険しい目付きで、焦っている様にも見える。
ブラッカル「......次にそれを見っけても、絶対に触るな....関わるんじゃねぇ」
カルセナ「.......え?」

604:なかやっち 短い。:2020/07/12(日) 18:35


魔耶「…さーて、いい景色も見れたし、そろそろ帰りましょうかね〜。…カルセナ起きちゃったかな…」
朝の景色にしばらく見とれた後、自分が何も言わずに宿を抜け出したことを思い出し、回れ右をした。
もしカルセナがもう起きていたら、私がいないことを心配するかもしれない。あの人早起きだし…せめて書き置きでも残しておくべきだっただろうか?
そんなことを考えながら、明るくなった道をスタスタと歩く。
魔耶「…さすがにそんな早起きじゃないか?ま、お腹空いたし、どっちにしても早く帰った方が良さそうだね」

605:多々良:2020/07/13(月) 21:45


カルセナ「な、何で.....?もしかして、あれが何か知ってるの....?」
まるで元から知っていたかの様な注意に、そう問う。
ブラッカル「......いや....とにかく、変なもんには関わらねぇ方が身の為だ」
カルセナ「.....らしくない...」
ブラッカル「......あ?」
カルセナ「ほんとに知らなかったら、もっと興味を持つ筈でしょ?だって、私なんだから」
核心をついた疑問。それを聞いたブラッカルは小さく溜め息を吐いて目線を逸らしたが、そんな態度を取ってもなお否定し続けた。
ブラッカル「....知らねぇって」
カルセナ「嘘!!ぜーったい知ってるじゃん!何で今目線逸らしたんだよー!」
ブラッカル「たまたまだよ」
カルセナ「んじゃあ溜め息は?」
ブラッカル「お前が疑い深いからだ」
理屈を述べて話を逸らそうとするブラッカルに、カルセナの不満であり好奇心でもあるおかしな気持ちが高まっていった。
カルセナ「む〜.......んじゃあ、もっかい行って確かめて来る!」
ブラッカル「ちょ、ちょっと待て!さっき私が何て言ったか覚えてねぇのか!?」
謎の物体のある方向へと歩き出したカルセナの肩を慌てて掴んで止める。
カルセナ「だったら教えてよ!そしたら多分行かないから」
ブラッカル「!.......はぁ....分かったよ.....だが、取り敢えずお預けだ。もう外は朝だ、一旦起きた方が良い。私もまた寝る」
カルセナ「やっぱ知ってたんじゃんか......じゃあ、また後で」

606:なかやっち:2020/07/13(月) 22:20


魔耶「ただいま〜…」
ようやく宿に到着し、部屋のドアを開ける魔耶。
適当にぶらぶら歩いていたつもりだったが、思ってたよりもずっと遠くまで行ってしまっていたようで、帰るのに20分ほどかかってしまった。
魔耶「…カルセナ〜?起きてる…?」
心配を顔に浮かべながらそっと部屋を覗くと、布団に潜っている金髪の少女の姿が見えた。それを見てほっとする。
魔耶「よかった…まだ起きてなかった…もし起きてたら心配されちゃったからかもだからね、よかったよかった」
安心した表情で台所のテーブルに移動し、そっと腰かける。
魔耶「…とりあえず、カルセナが起きるまでまちましょうかね…牛乳でも飲んでよっと」

607:多々良:2020/07/15(水) 19:14


カルセナ「.........う」
ゆっくりと目を開けて近くの時計を確認する。窓から入る光を見て、早朝であることは間違いないと思った。
カルセナ「(....まだ6時半くらいか....)」
もう一度眠ろうかと、魔耶がいる筈のベッド側に寝返りをうつ。
カルセナ「(......あれ?魔耶いない....?そう言えば、昨日も..........って)」
ベッドの向こう側を見ると、キッチンに見慣れた人影があった。それは間違いなく、魔耶だった。
カルセナ「(いるじゃん.....)」
魔耶「....あ、カルセナおはよー」
明るい笑顔でカルセナに挨拶をする。
カルセナ「ん、おはよ〜.....朝早いね......」
魔耶「あー....何か目が覚めちゃってね」
カルセナ「そっか.....ん〜....よく寝た」
むくっと起き上がって背伸びをし、目を擦る。
カルセナ「魔耶はよく寝れた....?夜に起きてた....よね?多分...」

608:なかやっち:2020/07/15(水) 21:19

魔耶「え…?あ、バレてた?」
唐突に自分が起きてた事実を言い当てられ、どきりとしながらも照れ笑いを浮かべる。
カルセナ「夜にちょっとだけ目が覚めたんだけど、そのときに魔耶がいなかったからさ…。最初はトイレにでも行ってるのかと思ったけど、ずっと起きてたの?」
魔耶「…うん、そうだよ。なんか眠れる気がしなくて、ずっと外で散歩してたんだ〜」
ここで下手な嘘をつくよりも正直に言ったほうがいいだろうと判断した魔耶は、ありのままをカルセナに話した。
魔耶「普通なら外に行くときはカルセナに声掛けるけど、君が熟睡してたからさ。起こすのも悪いと思って、勝手に外に行っちゃった。…その件については反省シテマス」
牛乳を口元に持っていき、軽くうなだれる魔耶。
カルセナ「ふーん…まぁ、別にいいけどね。私寝てたし…ただ、今度から書き置きくらいは残しておいてね」
魔耶「はーい…」

609:多々良:2020/07/17(金) 21:08

カルセナ「私も何か食べるか飲むかしよっかな.....」
ベッドから降り、髪を少し整える。
魔耶「牛乳美味いぞー」
カルセナ「あんま飲まないからな〜」
冷蔵庫まで向かい、何を食べようかと考えていたとき、ある事を思い出した。

「明日には、どうするか決心しねぇと手遅れになるだろうな」

カルセナ「(そうだ.....)」
突き付けられた現実から逃れ、いつまでもこんなのほほんとした生活を送っている訳にはいかない。魔耶と、どうするか決めないといけないのだ。
カルセナ「........」
魔耶「....?どった?」
手を止めて呆然と立ち尽くしているカルセナに魔耶が声を掛けた。
カルセナ「....あ、あぁ...ちょっとね...」

610:なかやっち:2020/07/17(金) 22:18

魔耶「…?」
立ち尽くしたままのカルセナの様子を見て不信感を抱くが、起きたばかりでまだ意識がぼんやりしているのかもしれないな、と考え、そのときはあまり気にしなかった。…が、魔耶が声をかけたあとも、カルセナは考え事をしているかのような真剣そうな顔つきでその場にいる。流石の魔耶も異変に気づいた。
魔耶「…なによ?なにか言いたいことでもあるの?」
もう一度声をかけてみる。今度は曖昧に誤魔化されないよう、はっきりと言ってみた。
カルセナ「……あのさ、ちょっと…二人で決めたいことがあるのよ…話、聞いてくれる?」
魔耶「うん、もちろんいいよ。……んで、その内容は?」

611:多々良:2020/07/19(日) 10:19

カルセナ「...魔耶の悪魔化のことなんだけど......」
魔耶「......!!」
カルセナ「もう決めないと....手遅れになっちゃうって.....」
魔耶「......うん。私も、自覚してる...私の中の悪魔もそんなこと言ってた」
首から提げたペンダントをぎゅっと握る。
カルセナ「悪魔を封じ込める方法は分かったし、その準備も出来てる。後は戦うか何かして弱らせるだけ....あ....ねぇ、魔耶の悪魔ってどんな感じで出てくるの?」
もし、出てきたときに本体とは別々になるのであれば良いのだが...ブラッカルの様に、魔耶の意識を乗っ取って出てくるのなら、痛め付ける事は出来ないと考えた故の質問だった。

612:なかやっち:2020/07/19(日) 14:06

魔耶「…多分、私の意識だけが消えて、悪魔耶の意識が出てくるんだと思う。…君達と同じような感じかな」
悪魔耶の今までの言動を思いだしながら、カルセナに伝える。彼女は悲しそうな表情で「…そっか…」とため息混じりに言った。
カルセナ「…じゃあ、どうやって攻撃すればいいんだろ…もし魔耶の意識を取り返せたとしても、魔耶の体にダメージが残っちゃう…」
魔耶「……」
確かに、と思わず声を出しそうになる。魔耶はそんなこと全く考えていなかった。
意識が違っても、体は同じ。つまり、悪魔耶にダメージを与えれば、自分の体が傷つくのだ。悪魔を封印したら、その残ったダメージは自分にいくのだろう。
…それを踏まえ、私は一つ気になる点ができた。
魔耶「…そもそも、カルセナは悪魔(私)を攻撃出来るの…?」
カルセナ「………!」
いくら悪魔と言っても、魔耶は魔耶。容姿はほぼ同じなうえに、体は一つ。この世界でずっと同じ時を過ごしてきた自分を、カルセナは攻撃出来るのだろうか…そんな疑問を抱いた。

613:多々良:2020/07/19(日) 15:44

カルセナ「......多分出来ない.....魔耶に攻撃するなんて、私は考えたことないもん...」
魔耶「.....だよね」
カルセナ「.....あいつは分からないけど」
魔耶「.....あいつ?もしかして、ブラッカルのこと?」
カルセナ「う、うん.....」
魔耶「えっ、私を攻撃しようと考えた事があるってこと....??」
一瞬戸惑う魔耶を見て、語弊を生まない様に少し焦って説明する。
カルセナ「あ!!いやいやそうじゃなくて.....!あいつ結構無差別だから、そう言うの関係ないかなって.....だから、いざとなったら任せるつもりでいたんだ。今回ばかりは頼るの許してくれそうだし.....」
魔耶「そっか......それなら....」
カルセナ「...でも、本当にどうすれば良いのかな....魔耶を傷付けたくないし.....」

614:なかやっち:2020/07/19(日) 18:09

魔耶「…でも、他に弱らせる方法なんて思い付かないし…精神と体力どっちも疲弊させなきゃ、封印なんてできないよ…」
カルセナ「そしたら魔耶が…」
魔耶「…うん…これはしょうがないからね。このぐらいしなきゃ悪魔を封印するのは難しいってことなんだし。…勿論攻撃したカルセナを恨んだりなんてしないし、悪魔の回復力は凄いから…だから、大丈夫だよ」
封印に失敗すればどのみち私は消えてしまうのだ。だから、体の傷がどうこうなんて言ってられない。むしろ、悪魔相手に手加減してたらカルセナの身が危ないのだ。本気でやってもらわないと困る。
魔耶「…だからさ、傷つけたくないって気持ちは分かるけど…でも、これ以外の方法なんてないと思うからさ…私を救うためだと思って…ね?」
カルセナ「……」
カルセナがなにか反論しようと口を開くが、結局なにも言わずに俯いた。無理もない。もし私とカルセナが逆の立場だったら、私もカルセナを攻撃なんてできないだろう。

615:多々良:2020/07/19(日) 20:27

カルセナ「.........分かった。...魔耶を信じるよ」
決意を固め、今一度魔耶の顔を見る。カルセナをじっと見ている瞳の色は変わっていても、前持った意思は変わっていない様だった。
魔耶「ありがとう、カルセナ。心置き無くやっちゃって、そうして私の悪魔に...勝って」
カルセナ「....うん、約束する。絶対....絶対に、また冒険出来る様にしようね...!」
魔耶「....あはは、お別れの台詞みたい」
カルセナ「ごめんごめん、そんなつもりじゃ.....」
申し訳無く、照れ臭そうに頭を掻く。
魔耶「.....じゃあ、実行は今夜....もしかしたら、早くて逢魔が時ぐらいになるかな。そのときには場所移動しておいた方が良いね」
カルセナ「そうだね、戦える様なところ.....向こうの、離れた草原とかかな....」
初めて北街へ来るときに通過した、岩場や森の近い草原。そこならば誰の事も気にする事なく戦えるだろう。
魔耶「うん.....じゃあ、そこにしようか。取り敢えずカルセナ、着替えて来たら?」
カルセナ「ん....あぁ、そう言えばそうだった....んじゃそうする」

616:なかやっち:2020/07/19(日) 21:28



カルセナ「…んで、今日はなにするんだっけ?」
着替え終わったカルセナが、コーヒーを啜りながら尋ねてきた。
魔耶「えっと…あ、そうそう、蓬さんのところに行こうって計画だったよ」
昨晩の会話を思い出しながら答える。確か、悪魔の苦手なものを探るために蓬から情報を得られないか、という会話だったはず。
カルセナ「あー、そういえばそんなこと言ってたね。じゃあ、今日は蓬さんのところに訪問して…悪魔の苦手なものを突き止めるのか」
魔耶「そゆことそゆこと〜。……あっ、そうだ」
魔耶がなにかを思い出したように手を叩き、首を傾げているカルセナにペンダントを手渡した。
魔耶「下手したら今日悪魔になっちゃうかもだから…一応、念のため、カルセナがペンダント持ってて。念のため、ね」

617:多々良:2020/07/22(水) 19:46

カルセナ「ん、分かった....じゃあ預かっとくね」
ペンダントを受け取り、大事そうに胸ポケットに仕舞う。
魔耶「ありがと。....ふぅ」
大きく息を吐いて、椅子の背にもたれ掛かる。
カルセナ「....どーしたの、まさか緊張?」
魔耶「いや〜?.....緊張というか、安心...かな」
カルセナ「はぁ、安心.....緊張させるつもりはないけど、今の状況で安心出来るの....?」
コーヒーの入ったカップを両手で包み込むようにして魔耶に問う。
魔耶「逆に、凄い緊張が〜...ってなる状況でもあるのかな....?」
カルセナ「えー、私だったら結構そわそわしちゃうけどな....魔耶はどうしてそんなにリラックスしてられるの?」
魔耶「...カルセナの事を信用してるからって言うのが一番の理由。そりゃあ、全く緊張してないって訳ではないけど....でも、今は緊張感より安心感が勝ってるの」
カルセナ「へぇ〜.....お役に立ててるのか分からないけど、嬉しいわ」

618:なかやっち:2020/07/22(水) 21:07

魔耶「ふふっ、お役に立ててますよ〜。カルセナがいなかったらどうなっていたか…」
柔らかく微笑みながら飲みかけの牛乳に視線を落とす。そんな彼女の微笑みは、安心と信頼がまざったような感じがあった。
カルセナ「運命ってやつかねぇ…私も魔耶にいっぱい助けてもらってるから、むしろ私がその言葉を魔耶に言いたいよ」
魔耶「そっか。…ありがとね、カルセナ」
カルセナ「こちらこそ、ありがと〜」
二人の視線が合い、カルセナと魔耶の表情に微笑みが浮かぶ。

魔耶「…さて、そろそろ朝ごはんでも食べない?お腹空いちゃったよ」

619:多々良:2020/07/23(木) 08:51

カルセナ「うん、そーしよっか。戸棚とかに何かあったっけ?」
魔耶「どうだろう....前に買ったパンがあった気がする」
そう言って立ち上がり、キッチンの奥の戸棚をガサガサと漁る。
カルセナ「その戸棚パン多いな....」
魔耶「よく買い置きしてるからね....えーっと、食パンやらクリームパンやら、色々あるけど」
カルセナ「じゃあ今日は〜....トーストにでもしようかな」
魔耶「オッケー、ここのトースターに入れとくよ〜」
カルセナ「ありがとー。あ、4分でよろしく」
魔耶「りょうかーい」
トースターに食パンを入れ、タイマーをセットすると、ジリジリと焼き始める音が聞こえてきた。
カルセナ「魔耶は何にすんの?」
魔耶「ん〜.....どーしよっかな」

620:なかやっち:2020/07/23(木) 12:53

もう一度戸棚を覗きこむ。
しばらくパン達とにらめっこをしたあと、クリームパンを手に取った。
魔耶「ん、これにする〜」
カルセナ「…甘党だねぇ」
クリームパンを選んだ魔耶に、カルセナが一言呟く。そんなカルセナの一言に笑顔を返す魔耶。
魔耶「当ったり前よ〜。甘い物こそが私の力の源なんだから」
カルセナ「まぁ、分からなくもないけども…甘いものばっかとってると太るぞ〜」
魔耶「む、大丈夫だよ。能力使ってれば糖分も消費されるもん」
カルセナ「今は能力使えないじゃん」
魔耶「…あっ…ま、まぁ、一日二日くらい大丈夫大丈夫」
カルセナ「ほんとかねぇ…」
魔耶「本当だってば〜」

621:多々良:2020/07/23(木) 20:24

クリームパンを片手にカルセナがいるテーブルへと戻り、椅子に座る。
カルセナ「魔耶先食べちゃって。私もうちょっとかかるし」
魔耶「そう?じゃあ、お先にいただきまーす」
手を合わせた後、袋を開けてクリームパンを口に運ぶ。一口かぶり付くと、中からとろっとした濃厚なクリームが溢れ出し、一瞬で口の中がポップな甘さに包まれた。
魔耶「....わ〜、やっぱ甘いもの最高.....」
カルセナ「中々美味しそうに食べるねぇ」
魔耶「だって美味しいんだもん。牛乳牛乳〜....」
中身が減ったコップに牛乳を注ぎ足し、それをぐいっと飲む。
魔耶「....っはぁ〜...濃厚なクリームが通った甘い口の中をリフレッシュさせるかの様なすっきりとした牛乳....良いわぁ」
カルセナ「食レポみたいになってるけど.....」
魔耶「最高すぎてついつい....」
そんな調子で魔耶が食べ進めていると、キッチンから食パンを焼き終わった音が聞こえてきた。
魔耶「むむ、焼けた」
カルセナ「あー、魔耶見てたら更にお腹空いた〜....早く食べちゃおーっと」

622:なかやっち:2020/07/24(金) 19:21

カルセナがトーストを皿にのせると、香ばしいパンの焼けた匂いがふんわりと漂ってきた。
魔耶「美味しそうですね…」
カルセナ「魔耶にはクリームパンがあるじゃん」
魔耶「いや、まぁ、そうなんだけども…いいきつね色だなーって」
カルセナ「ああ、そーゆーことね。うん、いい感じに焼けたわ」
魔耶「流石だね〜。今日から君はパン焼き名人だ」
カルセナ「なんだその称号は…」
魔耶の言葉に呆れながらも、軽く微笑んでパンを口に運ぶ。
焼く前とは違うカリッとした食感と、甘くて香ばしいパンの香りが口に広がった。美味しいパンを味わい、自然とカルセナの表情に笑顔が広がる。
カルセナ「ん〜!美味しい‼」
魔耶「それは良かったわ〜」
カルセナ「ただ焼いただけなのに、なんでこんなに美味しいんだろ…パンを発明した人はきっと天才だな」
魔耶「はは、そんなにか…。…あ、バターとか付ける?確か冷蔵庫にあったと思うけど…」

623:多々良:2020/07/26(日) 18:34

カルセナ「あ、ほんと?んじゃ付けよっかな。取ってくるわ」
再び席を立ち、冷蔵庫を開ける。
カルセナ「うーんと.....あった!」
端っこにぽつんとバターの容器が置いてあった。パン屋で買い物をした際に買ったものだ。
カルセナ「お、何かジャムみたいなのもあるじゃん」
魔耶「それイチゴジャムだった筈....それも付けんの?」
カルセナ「一応持ってくわ」
そう言ってバターとジャムの2つを取り出し、席へ戻った。
カルセナ「ふぅ、何か席を立つこと多いような.....忙しいな」
魔耶「事前に準備しとけば良かったねぇ」
カルセナ「ま、良いでしょう」
食べかけのトーストにバターを塗り、その上から更にジャムをかける。
魔耶「わ、甘そう」
カルセナ「魔耶の大好きな甘々だぞ。再びいただきまーす」

624:なかやっち:2020/07/27(月) 20:34

バターとジャムで更に甘くなったトーストをパクリと食べる。
先程のほのかな甘みとはまた違う、人工的な甘さのジャムとバターが口のなかで溶け合う。あまりの美味しさに思わず目をつぶった。
カルセナ「ん〜、美味しい‼ジャムとかつけるだけでも全然違うね!」
魔耶「うんうん、ちょっとしたアレンジでも一味違うよね〜」
カルセナ「そうそう。パンになにかをつけるって革命的な考えを世に広めた人、誉め称えたい…」
魔耶「あー、分かるわ〜。パンにチョコとかクリームとか、本当に革命的な考えだよね」
カルセナ「分かってくれる?」
魔耶「分かってあげますとも〜」



カル魔耶「「ごちそうさま〜」」
パンについて語り合いながらも、美味しいパンを食べ終えた二人。テーブルの前で手を合わせ、完食の言葉を示した。

625:多々良:2020/07/29(水) 20:57

魔耶「さてと、色々済ませてから、蓬さんを訪ねる準備しますか」
カルセナ「おー」
それから洗い物をし、歯を磨いたり顔を洗ったりなどの身支度を素早く完了させた。

宿の外に出ると、燦々と輝く太陽が空に浮かんでいた。北街の人々も活動を始めているようだった。
魔耶「んー、今日も暑くなるかもね....」
カルセナ「干物化する前に行きましょ〜」
魔耶「干物て......ま、そうだね。早く行くか」
いつも通り軽快に地を蹴り、大空へと飛び上がる。上昇する際に顔に当たった風が涼しかった。
カルセナ「ふぅ〜....朝は気持ちが良いですなぁ」
魔耶「うんうん、昼間の上空は死ぬほど暑いからな〜」
カルセナ「....何か進展あるといいな、魔耶の悪魔についてのこと」
魔耶「何も収穫無しでも、聞きに行かなかったよりは良いと思うよ」
カルセナ「確かに....それはそうだ」

626:なかやっち:2020/07/29(水) 22:20

魔耶「ま、あの人のことだし、きっと何かしらの情報を得られるって」
カルセナ「うん、そうだよね…だといいけど…」
カルセナが少し不安そうな表情を浮かべたため、魔耶はカルセナを元気付けようと笑って言葉をかけた。
魔耶「カルセナが私より心配してどうすんの〜。ポジティブにいきましょ、ポジティブに」
カルセナ「…あ、ごめんごめん。そうだよね、ポジティブにいかなきゃ…!」
魔耶「うんうん。悲観するよりも、明るく前向きに考えた方がいいよ」
その後「どう考えたってその先の未来は変わらないんだから、どうせなら明るくいかなきゃね〜」と付けたし、カルセナの表情を伺う。さっきよりも明るくなったカルセナの表情を見てホッとした。
魔耶「…そういえば、私が話したのはクエストのとき以来だけど、最近ブラッカルとは話した?」

627:多々良:2020/08/01(土) 16:41

カルセナ「あぁ〜.....話したよ、昨日の夜」
魔耶「へぇ〜、どんな事話したりしてたの?」
カルセナ「どんな事?うーんと......」
腕を組んで昨日の会話を思い出す。
カルセナ「えっと.....話した内容では無いんだけど....」
昨日あった出来事を、全て魔耶に話してみた。

魔耶「.....謎の光る物体かぁ、何なんだろう?」
カルセナ「私も分からないわ.....今度話す〜みたいなことをあいつに言われたけど」
魔耶「もしかして、すごいものかもよ?」
カルセナ「まっさかー、私の中にすごいものがあるとは思えないな〜。面白かったら良いけど」
けらけらと軽く笑う。
魔耶「面白かったら良いのか.....」
カルセナ「魔耶こそ、昨日は悪魔と話した?」

628:なかやっち:2020/08/02(日) 09:35

魔耶「う〜ん…話したっちゃあ話したんだけど…どっちかというと、『自分達の意見を主張しあった』って感じかな…」
カルセナ「…?どういうこと?」
魔耶「実は…」
カルセナに、昨日の夜悪魔耶と話した内容を伝えた。

悪魔耶が絆や愛をくだらない綺麗事だと貶したこと、魔耶の言葉に全く耳を貸さなかったことまで話すと、カルセナはう〜んと顔を傾げた。
カルセナ「…一応悪魔耶も魔耶なんでしょ?なのに、そんなに考え方が違うものなのかな?」
魔耶「私もそこは疑問に思ってた。でも、悪魔耶は悪魔だから、そういう点に対しては人間の私とは考え方が合わないのかも…って思った。悪魔特有の考え方みたいなものかと…」
カルセナ「あぁ、なるほど…悪魔と人間では、根本的に考え方が違うのか…」
魔耶「多分ね。私が何を言っても耳を貸してくれなかったし、その考え方を変えることは難しそう」

629:多々良:2020/08/03(月) 07:53

カルセナ「そうか〜.....んじゃあ、説得は効かないってことか」
魔耶「多分そう言うことだね。蓬さんのとこで何か見つかると良いな〜」
カルセナ「だね、期待はしておこう」


それから暫く飛び続け、段々と見覚えのある建物がくっきりと見えてきた。
魔耶「....お、着いたんじゃない?」
カルセナ「あー、ほんとだー。長かった〜」
魔耶「今回はスッと入れるかな....流石に大丈夫だとは思うんだけど」
前回ここを訪れたとき、見張りに止められかけたのだ。そのときは幹部の1人で知り合いでもある、火憐柚季のお陰で入ることが出来たが....。
カルセナ「取り敢えず行ってみないと始まらないって言うし、行こうよ」
魔耶「うん、了解」

630:なかやっち:2020/08/03(月) 13:22

カルセナの言葉の同意し、そっと建物の近くに着地した。建物の入り口には以前と同じように二人の見張りが見える。
カルセナ「やっぱり見張りはいるよね…」
魔耶「そりゃそうだよね…どうしよ…普通に行って大丈夫かなぁ?」
前回はたまたま近くにいた柚季のおかげで中に入れてもらえたが、今回もそう都合よく柚季と出会えるとは思えない。見張りに入れてもらえればいいのだが…昔この建物で暴れたことがある二人を入れてくれるだろうか…
カルセナ「まぁ下手に変装なんかしたら怪しすぎるし、普通に行った方がいいでしょ」
魔耶「む、確かに…入れてもらえるものも入れてもらえなくなるか…」
カルセナ「うんうん。じゃ、行ってみましょう」


カル魔耶「あの、すみません…」
見張りA「ん?なんだ、ここはガキが来るところじゃ…」
以前と同様、見張りに追い返されそうになるかと覚悟したカルと魔耶だったが、二人を追い返そうと言葉を発した見張りをもう一人の見張りが止めた。
見張りB「お、おい待て。こいつら、あの二人だぞ」
見張りA「あの二人??」
見張りB「ほら、昨日柚季さんが言ってただろ?この二人は建物に入れてやれ、って…その二人じゃないか?」
見張りA「あぁ、そういえばそんなこと言われたな…確か、茶髪で青っぽい服を着たやつと、金髪で黄色と水色の帽子のやつ、だったか。……お前たち、特徴に合ってるな」
魔耶「あ、はい…えっと、魔耶とカルセナです。今日は蓬さ…会いたい人がいまして。入れてくれませんか?」
前回幹部の名前を言い当てたら逆に不審がられたため、名前は伏せ「会いたい人」、とだけ言った。
見張りA「ふーん…ま、幹部の言うことは絶対だ、通してやる」

631:多々良:2020/08/04(火) 19:30

魔耶カル「ありがとうございます」
見張りに軽く会釈をし、扉を開けて中に入る。
魔耶「....ふ〜、取り敢えず入れたー。このまま地下4階まで降りてって良いかな....?」
辺りをキョロキョロと見回す。しかし幹部たちの姿はなく、ただ変わらぬ内部の景色が広がっていただけだった。
カルセナ「知ってる人いなさそうだし、良いんじゃ........ん?」
魔耶「...?どうしたの?」
視線を向けている方向は、恐らく手下あろう人たちがせっせと働いているところ、その中の1人に向いていた。
カルセナ「あれー....あの人見たことあるなぁ.......あっ!!」
魔耶「まさか、こんなとこに知り合いが居たりとか?」
カルセナ「....そのまさかだね」

???「......あれ!?おーい!」
二人が視線を向けていた何者かがこちらに気付き、近寄って来た。
???「もしかして、前に私が新入りさんと勘違いした侵入者さん?」
カルセナ「あぁ....そうです....久し振りっちゃあ久し振りだね、8番さん」
彼女の正体は、前に二人が侵入した際、カルセナが話した事のある手下の1人だった。
8番「えへへ、まさかこんなとこで出会えるなんてね!あ、そーだ、名前聞いてなかったけど....」
カルセナ「あー、私の名前がカルセナで....んでこっちが...」
魔耶「魔耶でーす。初めまして」
8番「うん、よろしくね〜。....で、何しに来たの?また侵入しに...とか?」
カルセナ「違う違う、えーと....ちょっと上層部の人に用があるんだけど....」
魔耶「どうすれば良いかなって思って。そのまま降りてっても大丈夫かな?それとも何か...やらないといけないことあったりする?」

632:なかやっち:2020/08/04(火) 20:46

8番「んーん、特にやらなきゃいけないことはないから普通に行ってもいいと思う。あ、部屋に入る前にノックと自分の名前を言ってね」
カルセナ「そっか、それくらいなら楽でいいね。教えてくれてありがと」
8番「このくらいお安いご用ってものよ。あ、じゃあ私は仕事に戻るからまたね!暴れたりしちゃだめよ〜」
魔耶「分かってますよ〜…うん、またねー」
8番は魔耶達に忠告をすると、笑顔で手を降りながらもとの仕事場に戻っていった。

魔耶「…さて、いい情報をもらえたし、早速蓬さんに会いに行きましょう!」

633:多々良:2020/08/07(金) 09:25

カルセナ「おー!」
そうして、二人は少し広い階段を降りて行く事にした。

魔耶「えーと、地下4階.....」
カルセナ「ここが1階で、次が2階だから...もう少し先だね」
魔耶「て言うか、一番最後まで降りれば良いんじゃない?蓬さんがいるところ、最深部だし」
カルセナ「あ、そっか」

やがて、降りる階段が無くなり地下4階に到着した。
大きな扉の前に立ち、魔耶がノックをする。コンコンと硬い音が二人のいる空間に響いた。
魔耶「すみません...彩色魔耶です」
カルセナ「カルセナでーす....」
8番に言われた通り、名前を述べると聞き覚えのある声が返って来た。
???「どうぞ、お入りなさい」
二人で扉をぐっと押して中に入った。

634:なかやっち:2020/08/07(金) 20:10

???「…貴女達が、わざわざ何の用ですかね?」
重い扉の先には、仮面をつけた着物っぽい和服姿の女性が立っていた。その身長は魔耶より少し低いくらいだが、なめてかかってはいけない相手だということは二人ともよく分かっていた。
魔耶「…実は、お聞きしたいことがありまして…。お話、聞いてくれますか?蓬さん」
魔耶はそう言い、蓬をまっすぐ見た。前と変わらず威圧感のようなものは感じられず、表情も見えないので彼女の感情を読み取るのは難しかった。
蓬「…あなたは、私の大嫌いな魔族です。そんな魔族と一緒にいる元人間も同様です」
カルセナ「……っ…」
蓬「……ですが、貴女達に私が救われたことに変わりはありません。魔族は今も好いてはいませんが、貴女達は別とします。私が力になれるかは分かりませんが、話だけでも聞きましょう」
魔耶「…‼あ、ありがとうございます!」
蓬「立ち話もなんでしょう、どうぞお掛けなさい」
そう言って椅子を勧めてくれた蓬は、前よりも雰囲気が和らいでいるように感じられた。蓬の協力がえられ、魔耶とカルセナは二人でそっと微笑みあった。

635:多々良:2020/08/09(日) 21:56

蓬が勧めた椅子に腰掛ける。ずっと立ったり歩いたりしていた足腰に、僅かな安らぎをもたらしてくれた様に感じた。
蓬「....それで、どの様な用件でここへ?」
魔耶「あの、実は.....」


蓬「.....成る程。つまり、貴女の中にいる悪魔への対抗法を探している...と」
魔耶から詳しく話を聞いていた蓬は、その話から本題を察した。
魔耶「はい、そう言う事です。何か...知っている事はありませんか?どんな情報でも良いんです」
蓬「そうですね......私がまだ少し幼い頃に、集落で言い伝えられていた事があるのですが、どうでしょう」
カルセナ「是非お願いします」
蓬「...分かりました、ではお話ししましょう。悪魔にも有効なのかは認知していませんが、私の集落には魔族に対するいくつかの言い伝えがありました」
魔耶「そうなんですか....一体、どんな....?」

636:なかやっち:2020/08/09(日) 22:56

蓬「例えば、『魔族は夜活発に行動する』とか、『魔族は人間の子供を好物とする』とか。全てが全て本当というわけではないかも知れませんが…」
カルセナ「えっ…魔耶、人間食べるの…?」
魔耶「人間は食べないよ‼……多分、その集落で言われてる魔族は、私よりずっと悪魔の性格が色濃く反映されてるんじゃないかな…。いや、人間らしさが薄い、って言ったほうが正しいか」
魔族一口に言っても色々な種類がいる。ほとんど悪魔の姿をしたものもいれば、魔耶のように人間に近い姿のものもいる。性格も同様で、悪魔に近いものと人間に近いものと色々いる。だから蓬の言ったような魔族がいても可笑しくはないだろう。
魔耶「あ、遮ってごめんなさい。続けて」
蓬「…全てが本当というわけではないかも知れませんが、私の集落ではこのような言い伝えが数多く存在していました。…その中の一つに、『魔族は清らかな心や物を嫌う』というものがありました。そのため、集落では清めの塩、祈りを捧げるための祭壇などがよく使われていました」
カルセナ「…!清めの塩…」
蓬「はい。魔族は悪魔と類似する、穢れを好む種族。人を堕落させることを悦びとしてると言います。そのため、親切心や信仰心、清らかな物といったものを嫌うのだとか」
魔耶「…なるほど…」
あの悪魔は愛や絆が嫌いだといっていた。愛や絆、つまり清らかな物を嫌っているのだとしたら…塩は効果があるのかもしれない。

637:多々良:2020/08/10(月) 07:51

蓬「....さて、悪魔に対抗出来るものと言えばそのくらいですかね」
魔耶「嫌いなものとかも分かったし、参考になりました。ありがとうございます」
カルセナ「ありがとうございます。....あのー、さっき話していた清めの塩?みたいなやつって、どうすれば手に入るんですか...?」
素朴な質問をすると蓬は軽く顔を俯かせ、何かを考えているような様を見せた。が、直ぐに正面を向き話し始めた。
蓬「.....私の住んでいた集落には、小さいながらも大きな信仰が集まる神社がありました。魔除けの祭典を行う日にはそこの主である神主から塩を受け取っていましたが」
カルセナ「じゃあ、そこに行けば.....」
塩が貰える。そう言おうとしたとき、蓬が差し出した掌によって言葉が食い止められた。
蓬「......もう随分昔の話です。今そこに神社があり主が居るのかは分かりません」
魔耶「そんな....」
蓬「...しかし、神社が無くなろうとも神自体はそこへ居座り続ける事が多いです。...物には八百万の神が宿ってるなんて話、聞いたことがありませんか」
魔耶「あ....あります。小さい頃に....」
蓬「それは本当の事で、神が宿る器さえあれば本当は神社など必要がないのです。神が居ると言う事はつまり、信仰者が居る筈。その信仰者から何らかの情報は得られるかもしれません。....あわよくば、清めの塩を入手出来る可能性も」
カルセナ「なるほど....でも、信仰者がどこにいるかも分からないよね....」
魔耶と顔を見つめ合う。それを見た蓬が助言した。
蓬「信仰者、と言うのであれば参拝に来たりもする筈です。参拝するには朝が適していると言います。....まぁ、殆ど関係ないでしょう。但し、夕方以降になってしまえば話は別ですが」
魔耶「参拝者からって事か....あっ、肝心の場所ってどこですか...?」

638:なかやっち:2020/08/10(月) 09:24

蓬「ここから南東にありますが、だいぶ距離があります。今から行って、ギリギリ夕方になるかならないか、ってところですね」
カルセナ「…っ…そ、そんなに遠いの⁉そしたら、帰ってる途中に魔耶が…」
悪魔になってしまう可能性がある、と言いかけたが口をつぐむカルセナ。わざわざ皆まで言う必要はない、と理解したのだろう。
魔耶「…そうだね…それだけ遠ければ、帰りは夜中になるだろうね。……でも、もし帰ってる途中で悪魔になっちゃったとしても、戦う場所が変わるだけだよ。だからそこまで心配しなくても大丈夫じゃないかな…」
カルセナ「……そ、そっか…」
蓬「…私の持っていた情報は全て話しました。先程も言ったとおり、その集落はここからだいぶ距離があります。もし行くのであればお急ぎなさい」
魔耶「…はい。ありがとうございました。今から向かわせていただきます」
カルセナ「あ、ありがとうございました…!」
蓬から今すぐに出発しろ、と言われたような気がして、お礼を言いながら立ち上がる二人。それに応じて蓬も立ち上がった。
蓬「…また何かあったら、いつでもいらっしゃい。必ずしも力になれるとは限らないけれど、私の持っている情報は可能な限り教えます。…お気を付けて」
カルセナ「はい。…失礼しました」
魔耶「失礼しました」
蓬に背を向け、部屋から出たカルセナと魔耶。二人がいなくなった部屋で、蓬は一人、ポツリと呟いた。
蓬「…魔族に手を貸すようになるなんて、私も丸くなったようですね。…これも、あの二人に救われたお陰、でしょうか」

639:多々良:2020/08/11(火) 07:40


駆け足で階段を登って行き建物の外に出た二人は、早速南東へ向かって飛び立っていた。
魔耶「良い情報を貰えて良かった....後は運に頼るのみ、かな」
カルセナ「そうだね、私たちが到着したときに参拝者が居ると良いけど.....」
ちょこちょこ話しながら、風を切って進む。蓬と話していた間にも日は昇り、急ぎ足な二人に汗をかかせる位の暑さになっていた。
魔耶「暑い.....」
カルセナ「うん...ちょっと下降ながら飛ばない?」
魔耶「そうしよう。まだ距離があるっぽいしこんな高く飛んでたら焼け焦げちゃいそう......」
二人は今まで飛んでいた高さから30m程ゆっくりと下降し、少しでも暑さを和らげる行動を徹底しようと試みた。
カルセナ「魔耶、その上着暑そうだけど良いの?」
腕捲りをしながら上着を羽織っている魔耶に問い掛ける。
魔耶「私も丁度脱ごうかな...って思ってたとこ。まあ袖口広くて通気性良いから、まだ大丈夫かな」
カルセナ「ふーん、なら良いけど.....あーあ、氷の魔法とか使えたらな〜」
陽射しは二人の事なんか気にも留めず、燦々と降り注いでいる。午後の暑い時間帯を耐えれば少しは涼しくなるだろう....。そう考え、今は飛ぶことと熱中症対策に集中する事にした。

640:なかやっち:2020/08/11(火) 15:39


しばらく飛んでいると、魔耶は背中に悪寒のようなものを感じた。まるで恐ろしいものを目視してしまったかのようにゾクッという感覚が襲ってきて、思わず後ろを振り向いた。しかし、後ろには何もいない。それもそのはず、今は上空にいるのだ。誰かが追いかけてくることなど、あるはずがない。
カルセナ「…魔耶?どうかした?」
魔耶が急に後ろを向いたため、どうしたのかとカルセナが声をかける。
魔耶「…ううん、何でもない。なんか、一瞬だけだけど悪寒がして…気のせいだとは思うんだけど…」
カルセナ「悪寒…?熱でもあるんじゃない?」
魔耶「うーん、多分そういう感じじゃないと思うんだ。なんて言えばいいか分かんないけど、そういうのじゃない。なんか、怖いものを見ちゃったときみたいな…そんな感覚だった」
カルセナ「ふーん………あっ、もしかして…悪魔化の…⁉」
ハッとした表情で問いかけてくるカルセナ。しかし、私は彼女の言葉に首を振った。
魔耶「あー…ありえなくはないけど…でも、悪魔化が進んだのなら体の部位が痛くなるはずなんだよね。いつもはそういう感じだった」
カルセナ「えー…じゃあ、なんだっていうのさ?」
魔耶「だから、きっと気のせいだよ。それか、暑さで変になったのかも」
カルセナ「うーん、そうなのかな…」
まだ割り切れなそうなカルセナの表情に、大丈夫だよ、という笑顔を向けた。



悪魔耶「…なんか、やな感じがしたな…。神聖なパワーを感じた、って言えばいいかな?」
魔耶の意識の届かない深い意識の中で、ほとんど鎖が外れかけている悪魔耶が嫌そうな声を出した。
悪魔耶「全く、あの人はどこに行こうとしてるんだろ?無駄だって分からないかな〜」
はぁ…とため息をついた後、「それに…」と言葉を紡ぐ。
悪魔耶「…あの人はもう私と同じくらい悪魔に近くなってるんだから、神聖なところなんて毒みたいなものなのにさ〜。死にはしないけど、体調を崩したり弱ったりしちゃうじゃん。私の体でもあるんだから、勘弁してほしいよ」

641:多々良:2020/08/12(水) 19:20

カルセナ「まぁ、魔耶の大丈夫なら信用出来ない事もないけど....」
少々の心配を抱えながらも、魔耶の笑顔を見たカルセナはとにかく目的地へ向かう事を最優先にした。


それから二人はちょくちょく休憩しながら飛び続けた。木々が生い茂る山を越え、底が見えない程に真っ暗な渓谷を越え、気が付けば日がどんどんと西へ傾いていっている最中だった。
魔耶「時間帯で言ったらどのくらいかな....まだ5時にはなっていない気がするけど...」
カルセナ「この辺じゃないのかな〜....結構飛んだのに」
四方八方を見渡しながら注意深く空を飛んでいると、魔耶があるものに反応した。
魔耶「.....うん?」
カルセナ「ん?もしかして見つけた?」
魔耶「何かそれっぽい感じのものはあるけど.......ッ?」
見つけたものは、小さな祠の様なものだった。その周りにいくつかの小さな灯籠も見える。それを見つけると同時に一瞬、魔耶は再び強い悪寒を感じた。
カルセナ「....どうしたの?」
魔耶「また悪寒が.....何なんだろう...でも、止まった」
カルセナ「なら...良かった。....ちょっと行ってみる?」
魔耶「....うん、そうだね。行ってみよう」
もしかしたらあの祠が、自分たちが目指していた所かもしれない。そう思って、少し探索してみる事にした。

642:なかやっち:2020/08/12(水) 20:22

ずっと飛び続けていた足をようやく地面に着ける。スタッと着地して辺りを見回すと、祠から少し離れた場所に他の建物もいくつか見えた。
カルセナ「…祠じゃない建物もいくつか見えるね」
魔耶「あ、ほんとだ…なんか住居に見えない?」
カルセナ「うん、見える…ってことは、ここが蓬さんの言ってた集落、かな…?」
魔耶「どうだろう…とりあえず、祠のとこに行ってみよっか。なにか手がかりがあるかも」
カルセナ「りょーかい」


カルセナ「近くまできてみたけど…特に怪しいものはないね。ただの祠……って、大丈夫?魔耶」
魔耶「う、うん……なんか、祠の近くに来てから変な感じがあって…」
祠の前まで来た二人だったが、そこに来てから魔耶の調子が悪かった。
悪寒があり、祠を見るとまるで幽霊を見てしまったかのように恐ろしく感じ、それは祠に近づけば近づくほど強くなっているような気がした。
魔耶「なんか…祠が怖い、って感じてるのかも…」

643:多々良:2020/08/13(木) 20:29

カルセナ「怖い....?」
魔耶の様子をよく見ると、若干足が震えている様に見えた。こんな魔耶を見るのは初めてだった。
カルセナ「....良く分からないけど、あんまり無理しないで」
魔耶「うん、勿論.....それにしても....」
辺りをキョロキョロと見回す。祠の周りには自分たち以外の人がいる気配は無く、陽に照らされながらひっそりと静まり返っている。
魔耶「....誰も居ないね」
カルセナ「そうだね.....もうちょっと待ってみれば、もしかしたら参拝者か誰かが来るかも。....魔耶、まだ大丈夫そう?」
少し心配そうな顔をして魔耶の顔を覗き込む。
魔耶「あまり祠の近くに居なければ大丈夫....かな。待ってみよっか」
カルセナ「そっか....んじゃあ、もう少しあっち行こ」
そう言って祠と離れ、日陰になっている木の下を指差した。
魔耶「うん、ありがとう」
そうして二人は参拝者が祠目当てで来る事に期待し、大きな木の下で待つことにした。

644:なかやっち:2020/08/13(木) 21:34


魔耶「…カルセナは、祠に何か感じたりしないの?」
木陰で参拝者が来るのを待っている間、魔耶は祠の謎を突き止めようとカルセナに声をかけた。
カルセナ「う、うん…特に何も感じないよ」
魔耶「…そっか…」
カルセナから帰ってきた答えは『特に何も感じない』。では自分のこれはなんなのだろう。祠から少し離れたからなのか、さっきよりは恐ろしさを感じないが、まだ祠に視線を向けると悪寒が走る。
魔耶「なんなんだろ、これ……これも悪魔化の影響なのかな」
カルセナ「悪魔化が進んだせいで祠が怖い…ってこと?」
魔耶「もしかしたらね。それくらいしか思い当たるのなんてないし…」
そういうと、カルセナは少しだけ俯いて、何かを考えているような態度を見せた。
カルセナ「…悪魔化が進んで…祠に恐怖を感じる………悪魔は、神聖なものが嫌い………あっ、もしかして…」
魔耶「……?何か思い当たるの?」
カルセナ「うーん、あくまで予想なんだけど…悪魔は神聖なものが嫌いっていう仮説がたってるじゃない。もしそれが本当なら、悪魔化が進んできてる魔耶も神聖なものが無意識のうちに嫌いになってるんじゃないかなって。いや、嫌いっていうよりも、苦手とか恐ろしいとかの方が正しいか」

645:多々良:2020/08/14(金) 14:52

魔耶「.....そう言う事か」
カルセナ「でも、ほんとにそうかは分からないからね?」
魔耶「...いや、多分そうだと思う。そうでなければ、私が祠に恐怖を感じる意味が分からないし」
両方とも紅く染まってしまった目のうちの、右目を手でそっと押さえる。少しずつ夕陽に変わって行く陽の光を浴びている大地が、更に濃い橙色に見えた。
カルセナ「.....早く来ないかな、参拝者」
待っている暇があるのならば、少しでも解決策を探り出したい。そうは思っているのだが....。この場所では、何をどうすれば良いのか分からなかった。
小さく細い声で鳴く蜩の声が、不安定な心を締め付けてくるように感じた。二人の間では、暫くの無言が続いた。

気が付いたら蜩の声が止み、辺りは先程よりも薄暗くなっていた。
二人は疲労のあまり、無意識の内に木に寄り掛かってうたた寝をしてしまっていた。
魔耶「う...ん.......」
眠い目を擦り、辺りを確認する。当然祠の辺りも見た。すると、魔耶の目に人影らしき、動くものが映った。
魔耶「...あ、あれってもしかして....参拝者?カルセナ、起きて!」
カルセナ「ん〜.....あ、ごめん....」
魔耶「良いよ、私もうたた寝してたし....それよりもほら!誰か来たよ!」
カルセナ「....?あっ、ほんとだ!」

646:なかやっち:2020/08/14(金) 20:50

少し遠いことと辺りが薄暗いことも相まって、人影らしき影はぼんやりとしかその形が分からなかった。
カルセナ「参拝客なのかな?」
魔耶「分かんないけど…とりあえず行ってみよ!なにか情報もらえるかもしれないし…」
カルセナ「うん、わかった!」

軽く小走りして、人影の方へと歩みを進める。近づいていくうちに輪郭が少しずつはっきりとしてきて、人間らしきフォルムが確認できた。その人物はなかなか歩みが早かったので、魔耶とカルセナも急いで追いかける。
魔耶「はぁ、はぁ…あの、すみません…ここの参拝客の方ですか?」
カルセナ「ちょっとお聞きしたいことが…あるんですけど…」
魔耶とカルセナが若干距離をおいて話しかけると、前を歩いていた人物がこちらを振り返った。

647:多々良:2020/08/15(土) 22:42

???「....?どうかされましたか?」
振り返った人物は、50歳後半くらいの男性だった。竹製の大きな籠を背負っている。
魔耶「もしかして、その祠目当てでここへ?」
???「そうです。毎週この曜日に、祠まで来ているんです」
カルセナ「何で来てるんですか?」
???「ここには昔、小さな集落と神社がありまして。私の祖父、父は共にその神社の管理人だったんです」
魔耶「成る程....じゃあ、跡を継いでここを管理しに来てるって事ですか」
管理人「そう言う事です。....それで、本題の聞きたい事とは....?」
二人を見つめ、首を傾げる。
魔耶「あっ、そうだ....あの、ここの集落では魔族を嫌っていたと言う情報があったのですが....」
管理人「そうですね、結構な頻度で魔除けの儀式も行われていましたし」
魔耶「それならば、魔族に関する情報を何か持っていませんか?例えば、悪魔を払える方法とか....」

648:なかやっち:2020/08/15(土) 23:20

管理人「悪魔、ですか…」
ボソリと悪魔という単語を呟くと、顎に手をおいて考えるような仕草をとった。
管理人「…やはり、魔除けの塩が必要なのではないでしょうか…」
カルセナ「…蓬さんと同じ…そ、その魔除けの塩って、ここにありますか?もしあるなら、少し分けてもらいたいんですけど…」
魔除けの塩と聞き、少々切羽詰まった様子で尋ねるカルセナ。まぁ、無理もないだろう。もう日は落ちかかってるし、ここになかったらもう対処法はないのだから。魔耶も心の中で手を合わせる。神様、どうか……
管理人「…えぇ、まだ祠に少し残っていたはずです。もうすぐ新しい塩をつくらなければいけないと思っていたので、古いものはお譲りしますよ」
ハッと顔を上げて、二人で顔を見合わせる。二人とも満面の笑みで、少し泣きそうな表情になっていた。
管理人「では、着いてきてください。祠の中に塩が保存してあるので」
カルセナ「分かりました!ありがとうございます!いこう、ま………って、魔耶は祠に行けないのか」
魔耶「えっ……あ、あぁ、そうだったね…ごめん、私はここで待たせてもらってもいいかな?」
管理人「…??あなたはここで待つんですか?」
魔耶「はい、すみません……」
カルセナ「あ、あの…この子は体調が優れなくて…私一人で十分ですからっ!」
管理人「…そういうことなら、まぁ…分かりました。では、いきましょう」

649:多々良:2020/08/18(火) 07:32

管理人と祠へ向かう際、魔耶に掌を軽く向けて「ちょっと行ってくるね」とサインを出した。
魔耶「....行ってらっしゃい」
送り出す言葉を添え、魔耶も掌を向けてサインを返した。

管理人「....余談なのですが、何故魔除けの塩が必要なんですか?」
カルセナ「え?あ、えーっと......それは....」
管理人「あぁ、すみません。言いたくない内容ならば言わなくて大丈夫です。...物が物なので、恐らく魔族関係の事と思われますが」
カルセナ「あっ....まぁ、そんな感じです」
管理人「やはりそうでしたか。だったらきっと、ここの塩は役に立ちますよ」
そう言って祠の前に立つと、小さな鍵を外して戸を開けた。薄暗い祠の中には色褪せた包み紙が1つ入っていた。
管理人「よっと....こちらが魔除けの塩です。量はそこまで多くありませんが、魔族や悪魔を祓うのには十分でしょう。どうぞ、お受け取り下さい」
身を屈めてその包み紙を取り出し、カルセナへ手渡した。

650:なかやっち:2020/08/18(火) 10:09


魔耶「…よかった…これで、悪魔を迎え撃つ準備はできたよね…」
ホッと一息つき、悪魔への対処法を手に入れられて安心する魔耶。あとは悪魔を外に出して、カルセナに任せて……
魔耶「…なんか、カルセナを巻き込んじゃって悪いな…自分の問題なのに…」
カルセナに任せて、と考えたときに、胸にチクリと罪悪感が刺さった。
それもそのはず、これから魔耶はカルセナに戦いを強いらなければならないのだ。しかも、人間などとは比べものにならないほどの力を持つ、悪魔。負ければ魔耶とカルセナ、共に無事ではいられない。二人の命運…いや、下手したらこの世界の命運をカルセナ一人に任せなければいけない…
魔耶「………カルセナが悪魔に勝ったら、ちゃんとお礼を言わなきゃね………あ、帰ってきた」
ぼんやりと考え事をしておると、祠から出てきたカルセナの姿が見えた。包み紙のようなものを持っている…あれが魔除けの塩というやつだろうか。

651:多々良:2020/08/19(水) 19:34

カルセナ「(結構軽い.....折角貰ったものだし、無駄にしないようにしないとなぁ)」
魔除けの塩が入った包み紙を掌に乗せ、重さを確かめる為に手を上下する。
管理人「では、私はもう暫く祠に用事があるのでここで....」
カルセナ「あ、魔除けの塩、ありがとうございました!」
管理人「いえいえ、貴女方のご健闘をお祈りします」
胸の前で合掌をし、カルセナを見送った。
カルセナ「.....さて、この塩をどうやって使うんだっけ〜......あれ、待てよ...どうやって使うんだ....??」
効き目のありそうな魔除けの塩を貰ったは良いが、肝心の使い方がいまいち分かっていない事に気が付いた。
カルセナ「塩と言えば、アニメや漫画で悪霊退散!とか言って投げ付けるイメージだけど....魔耶に聞いてみよっと」
駆け足気味に魔耶のいる所へ戻る。その途中、ふと疑問を抱き走るのを止めた。
カルセナ「魔耶って、この塩を近くに持ってこられても大丈夫なのかな.....」
魔耶が嫌がってしまったら....そう思って躊躇していたが、結局本人に聞かないとどうしようもない。包み紙を開け塩が溢れないように用心しながら、今居る場所から大声で魔耶に問い掛けた。

カルセナ「「 魔耶ーーっ!この塩怖くないーーーっ? 」」

652:なかやっち:2020/08/19(水) 20:30

魔耶「…?…カルセナ、なにしてるんだろ」
祠から出てきたカルセナは、最初小走りでこちらに向かってきていたものの、いきなり立ち止まって手に持っている包みを開け始めた。
そして、中にあった小さな塩の山があらわになったかと思えば、大きな声でこちらに問いかけてきた。
カルセナ「「魔耶ーーっ!この塩怖くないーーーっ?」」
その言葉を聞き、カルセナが途中で立ち止まった理由が分かった。私が塩を嫌がるのではないかと考え、わざわざ遠くから聞いてくれたのだ。
魔耶「(…そう言われてみれば…祠は怖かったけど、塩はなにも感じないな…)」
祠は視線を合わせるだけでも恐怖を感じたのに、塩には特になにも感じなかった。もしかしたら触れなければ効果はないのかも…そう思い、カルセナに同じくらい大きな声で返事を返す。
魔耶「「多分大丈夫だよーーーっ‼」」
そう言うと、カルセナはホッとしたような顔でこちらに向かって再び走ってきた。

653:多々良:2020/08/20(木) 19:40

カルセナ「....ふぅ...良かった〜、もしかしたらこれも苦手かと思ってさ」
帽子の鍔を掴んで角度を調整し、魔耶の顔を見て微笑む。
魔耶「ありがと。多分、触らなければ大丈夫って感じかも」
カルセナ「そっかー....じゃあ、どうする...?また戻る?」
魔耶「....うん、そうだね。移動しよっか」
もう日が落ちかけている時間帯なようで、魔耶の悪魔化も容赦なく、刻一刻と近付いている。この場所で戦うなんていう事態を避ける為、二人は元来た道を戻る事にした。

昼間より気温が僅かに下がった空を飛びながらカルセナは、ふと、ある事を思い出した。
カルセナ「.....あ、そうだ」
魔耶「?」
カルセナ「この魔除けの塩って、どうやって使うと思う?」
魔耶「あー.....そう言えば、確かに....うーんと」

654:なかやっち:2020/08/20(木) 20:16

魔耶「…多分だけど、普通に投げつければいいんじゃない?今私が近くにいても効果ないっぽいし…きっと直接当てれば効くと思うから」
今の自分の状態を踏まえ、塩の使い方を考察する。
カルセナ「そっか、やっぱりそうだよね。ありがと」
魔耶「いえいえ。……って、カルセナ管理人さんに使い方聞かなかったの?」
魔耶がそう訪ねると、カルセナはばつの悪そうな顔で「すみません…」と謝ってきた。
魔耶「…まぁ、私も使い方なんて気にしてなかったし、別にいいけどさ。でももし私の推測があってなかったらどうしよ……」
カルセナ「きっと大丈夫だよ。アニメとか漫画とかでもそんな感じじゃん?それに、それ以外の方法なんて思い付かないし」
魔耶「…まぁそうね。ところで、塩を当てたら悪魔はどうなるんだろ?効果があるとは言われたけど…弱ったりするのかな?」

655:多々良:2020/08/21(金) 20:17

塩を投げ付けたときの反応を頭の中で想像する。
カルセナ「怯んだりとかしそうだけど....撃退まではいかないくらいだろうなー.....」
魔耶「んー....じゃあ、隙を突くしかないって事だね」
カルセナ「だねー。ちょっと緊張してきたな....」
日がかなり暮れても魔耶が悪魔化しない事に対し、もしかしたらこのままで居てくれるのではないかと期待してしまったりしていた。寧ろその方が嬉しいが....きっとそうはいかないのだろう。魔耶の体が確実に、悪魔に蝕まれていっていたからだ。そんな心境の中で唯一、魔耶の意識がまだ「魔耶」であることが幸いに思えた。
魔耶「.....カルセナ」
カルセナ「....ん?」
魔耶「....私の中の悪魔を、お願いね。...頑張って」
カルセナ「いきなりそんな事........うん、分かった...」
急な励ましに少し驚いたが、すぐに平静さを取り戻して返事をした。
カルセナ「....魔耶も、完全に悪魔に取り込まれないように頑張ってね」

656:なかやっち:2020/08/21(金) 20:59

魔耶「ふふっ、魔耶さんはそう簡単に悪魔になったりしないよ」
カルセナ「…そっか…」
もし悪魔が表に出てきたら自分はどうなるのかなんて分からなかったが、出来る限りの抵抗はしようと心に刻む魔耶。…そう簡単に体を渡してなるものか。
カルセナ「…今のところはなんともなさそう?」
魔耶「うん…まぁ祠が怖かったりはしたけど、特になんともないかな………ッ⁉」
カルセナ「⁉…ま、魔耶…‼」
なんともないから大丈夫、そう言おうとした正にその瞬間、魔耶は頭にズキッとした痛みを感じた。一瞬意識が朦朧として地面に落ちそうになったが、すぐに立て直す。
魔耶「…なんか…一瞬すごい頭痛が…」

657:多々良:2020/08/22(土) 21:51

カルセナ「....!!...一回降りよう、魔耶」
魔耶「う、うん....」
塩の入った包み紙をポケットに仕舞う。魔耶の身を案じ、近くにあった少し広い草原へ降下する事にした。急に起こった頭痛が、今最も二人にとって起こって欲しくない事が起きようとしている前兆に感じられたからだ。

魔耶は短い草が生い茂る地面に降り立つや否や、その場に座り込んでしまった。
カルセナ「魔耶....大丈夫?...じゃないよね.....」
魔耶「うーん....今はさっきよりも安定してるけどまた....定期的に来そう...かな....」
カルセナはどういった言葉を掛ければ良いか分からなかった。こんなにも不安と恐怖に襲われる事はそうそうない。さっきからずっと心が抉られるかのような感覚を味わっていた。しかし、誰よりも大変なのは魔耶の方だ。自分が弱気になってしまったらもうどうしようもない。出来るだけ顔に出さないよう、魔耶の前では強くいられるようにした。
カルセナ「魔耶.....頑張れ......」

658:なかやっち:2020/08/23(日) 14:18

魔耶「…うん……ッ…」
再び襲ってくる頭痛に、反射的に頭を押さえる魔耶。頭痛は一瞬痛くなっては何事もなかったかのようにフッと消えるのを繰り返しており、それが二人の不安を煽っていた。

魔耶「……カルセナ…」
カルセナ「ん…?な、なに…?」
魔耶は親友の名をつぶやくと、重い頭を上げて無理矢理カルセナと視線を合わせた。
魔耶「…相手は悪魔だから、人間とは全てにおいて根本的に違う。身体能力も、考え方も……だから、戦い方もきっと違う。卑怯な手を使ってくるかもしれない」
カルセナ「…うん…わかってる…」
魔耶「…だからね、無理だけはしてほしくないんだ。もし自分の身が危ないと思ったら、すぐに逃げてほしい。カルセナがそんな行動をとっても、私は、絶対…カルセナを恨んだりしないから」
カルセナ「…でも…!そんなことしたら魔耶が…‼」
魔耶「いやまぁ…そうなんだけどさ…何度も言ってるけど、私は自分なんかよりも、カルセナ達…みんなの方が大切だから。もしカルセナが自分を犠牲にして私を助けたとしても、カルセナがいない世界で私が暮らしていけるとは思えないし」
カルセナ「でも…そんなの私だって同じだよ…!それに、魔耶がいなくなっちゃったら…また一人になっちゃうじゃん…」
魔耶「……大丈夫、私がいなくても、ひまりやみお達がいるでしょ?」
カルセナが悲しそうに反論するのを見て、魔耶は軽く笑いながら言い返した。…が、まだ言いたい言葉が残っていたようで、魔耶は俯いて言葉を続ける。

魔耶「………ただ、これは独り言ね。ただの独り言。……できることなら、私もまだ生きていたい…もちろんカルセナと、みおと、ひまりと…みんなで。だから、できたらでいいから…本当に、できたらでいいから…」
そこまで言ってスゥと息を吸うと、言葉を吐き出すようにこう言った。
魔耶「…全員、救ってほしいの…!」
魔耶は、カルセナさえ無事なら自分は犠牲になってもいいと考えていた。もちろん嘘偽りのない本心である。…しかし、この後に及んで、魔耶は自分も生きていたいと思ってしまっているのも事実だった。矛盾しているというのもわかっている。大変な我儘だっていうのも分かってるけど…魔耶は、自分の心を隠し通す事など出来なかった。気づけば、自分の頬を温かい液体が伝っていた。もう、泣かないって決めてたのに…自分の弱い心を恨めしく思う。

659:多々良:2020/08/24(月) 21:14

カルセナ「......救うよ」
ポツリとそう呟く。
カルセナ「魔耶が...私たちが想っている人たち....皆みんな救うから.....!」
その言葉は端から聞けば、とても無責任な言葉だったかもしれない。勿論、悪魔に勝てる確信だってない。でも、皆を救う。その思いだけは濁りのない本物の想いだった。その証拠に、カルセナの眼には覚悟と勇気の光が灯っていた。
魔耶「...カルセナ.....」
カルセナ「.....今のは私の独り言、だからね」
僅かに顔を上げた魔耶と向き合う。
カルセナ「魔耶....魔耶が悪魔に変わっちゃったとしても、安心して。二人でこれまで、色んな事を乗り越えて来たんだもん。『私たち』で悪魔を倒そう!」
魔耶の濡れた顔に向かって柔らかく微笑む。そのときには、先程まで感じていた不安感や恐怖心は薄れていた。
魔耶「!......うん...ありがとう....ッ」
ボロボロと頬を伝う涙を手で拭いながらお礼を言う。
カルセナ「もう、お礼はこの事件が解決してから言ってよ〜」

660:なかやっち:2020/08/25(火) 20:25

魔耶「うん……よろしく頼んだよ、カルセナ…」
カルセナ「任せておいて!きっとみんな救ってみせるから…!」
カルセナの強く真っ直ぐな瞳を見て柔らかく微笑む。
わざわざ忠告する必要もなかったな…この人なら、きっとやってくれるだろう。直感的にそんな事を考えた。



痛みが出てから一時間は経っただろうか。
魔耶の頭痛は時間が経つごとに痛みを増し、いよいよ痛みが酷くなってきた。
魔耶「……はぁ、はぁ…」
カルセナ「…魔耶…大丈夫…?」
魔耶「ッ……そろそろ、キツイかな…気を抜いたら意識が飛んじゃいそう…」

661:多々良:2020/08/27(木) 21:26

カルセナ「...無理しないで....」
魔耶「う、うん......」
カルセナ「.....早く悪魔になっても、いいよ」
魔耶「....えっ?」
一瞬カルセナが何を言っているか、魔耶には分からなかった。悪魔に蝕まれてしまう事を、一番恐れていた筈なのに。
魔耶「それって...どういう....ッ」
カルセナ「....もう、あんまり魔耶に苦しんで欲しくないの。...私も戦う準備は出来てるし、このままずっと苦しんで、結局悪魔になっちゃうなんて辛いに決まってるし.....」
魔耶は、痛む頭を抱えながらカルセナの話をじっと聞いていた。定期的に歪む顔は、意識を悪魔に脅かされているかのような表情を見せていた。
カルセナ「...だから、安心して意識を飛ばしてもいいよ。それこそ、魔耶の判断によるけど....」

662:なかやっち:2020/08/28(金) 20:32

魔耶「……っ……」
カルセナから発せられた言葉を理解しようとするが、頭の痛みといきなりの発言に頭が回らなかった。
カルセナは自分の苦しむ顔が見たくないんだろう。たくさん苦しんで悪魔になるのなら、今悪魔になってしまえばあまり苦しまなくてすむから、と。そう言っている。…しかし、魔耶は怖かった。自分が悪魔になってしまったら、自分はどうなってしまうのだろう?カルセナはどうなってしまうのだろう?確かに今は苦しいが、ずっと耐え続ければ悪魔は自分に身体を乗っ取るのをやめてくれるのではないか……そんな考えが、魔耶の中にはあった。
…しかし、本当はわかっていた。どんなに耐えても悪魔になることは変わらないのだということを。そして、自分が身体を乗っ取られたら、あとはカルセナに任せるしかないのだと。…なら、そんな未来しかないのなら…

魔耶「……わかった…………あとは任せたよ、カル…私も、がんば…る…」

カルセナの言葉を受け入れ、意識の薄れゆくままに身を任せると、だんだんとまぶたが閉じていくのがわかった。思ったよりも限界は近かったようだ。
だんだんと視界が暗くなり、聴覚がシャットダウンされていく中、カルセナの言葉が聞こえた気がした。

カルセナ「うん…!一緒に、頑張ろう…!」


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