「王は故に である」
人はこの世から去るたら
何に先ずなると思う
王様になるんだよ
人から姿は
見えないから
好き放題
何処へだって
行き放題
この浮世を
楽しもう
あっはっはと
笑い乍
飛んで行く
君を空を
私は
見上げる
彼の者は
知らないのか
誤魔化しているのか
何処へだって
行けるのなら
想ひ人の処へも
行けるだろう
生前思いを
伝えられなかった
今度こそ
想ひ人よ
此方を
向いてくれ
そして
云わせてくれ
貴方を思ふ者は何時でも
貴方の傍に
いたと
其の声は
想ひ人に
届かない
なら姿も
見えないさ
大粒の
涙珠を流する
王様は
何とまぁ
孤独な
王様で
ありましょうか
好き放題
していても
想ひ人に
伝える事はもう
出来ないのですから
第拾部
『兎に思ひ 角も人』
>>85
『洗い髪のヴイナス』
>>87
『桜花の正腐虫』
>>88
『泥壺』
>>89
『大正明暗混々』
>>91
『惰する操人ノ形』
>>92
『嫉蛇妬犬』
>>116
『金満虚心』
>>117
『王は故に である』
>>118
『喜亡生叫』
>>119
『人形が遊ぶ』