「喜亡生叫」
(ヨロコビナキハ イケシモノサケビ)
骨はだけた
白手で招く
おいで おいで
此方へと
目玉片方
落ちた顔で
ぎょろりと見つめる
其の先は
三味線
弾き語る
坊主様
うとりと
聞き魅いられて
次々仲間が
浄土か
地獄へ
葦原中つ國を
去る者達への
慰め歌
坊主様は
今日も
弾き語る
亡者仲間に
誘われ今日も
弾き語り
坊主様の元へ
行って来ます
今日は何やら
仲間が怒りだ
何故だろか
坊主様が
弾き語る
三味の線音
あの頃の魅力は
何処へと行った
あの音を聞いて
私も漸く
逝けるかと
浄土か
地獄へ
役に立たぬ
坊主はいらぬ
雑音奏でる
坊主の耳を
引き千切れ
女の事ばかり考える
生臭坊主の
脳味噌を
掻き摺り出して
代わりに
石を詰めようか
今はもう
我等を浄する
歌は無い
代わりに
我等が
歌うだけ
生者よおいで
此方へと
共に歌おう
喜と叫に分けて
第拾部
『兎に思ひ 角も人』
>>85
『洗い髪のヴイナス』
>>87
『桜花の正腐虫』
>>88
『泥壺』
>>89
『大正明暗混々』
>>91
『惰する操人ノ形』
>>92
『嫉蛇妬犬』
>>116
『金満虚心』
>>117
『王は故に である』
>>118
『喜亡生叫』
>>119
『人形が遊ぶ』