「虫の苗床」
暗い深い
森の中
動かなくなつた体を
虫達が食べに来る
きいきい鳴いて
もそもそ体を
這つて上る
体がこそばゆい
開いた
口に
巣作つて
肉をぶちり
餌にして
蟲育て哉
月を臨む
母蝿は
腐肉に仔を
産み落とす
蛆等は
じゆるじゆる
顔の中
他の虫達も
ぞろぞろ
体の中
気持ちが悪い
筈なのに
気分は何故だか
子を育む
母の様だ
愛おしい
人間ではない
かといつて
屍でもない
今の自分は
虫の苗床だ
そう思える
第拾壱部
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』