「白銀問答」
雪降る白空に
目を遣り
其の視線を
地へと移せば
いるみねいしよんが
ちかちか光る
拡声器からは
冬に因む音楽が
飽くる程に
耳に来た
街歩く人々見やば
互いの温もり求むる
男と女が
ちらほらと
人は聞くだろう
こんな時期に
人間観察なぞ
面白いのかと
外に出楽しむのは
如何かと
私は答えよう
面白いさ
ほら御覧よ
彼処で
ぎやんぎやん
云いあう
男と女を
まるで
犬の様だろう
くつくつと
私は口元
隠して目を細め笑う
其れに私には
寒で冷えた手を
暖める者等
居やしない
独り者の
身 故に
外に出
楽しむ勇等
ありやしない
臆病者さ
どうせ
行つたつて
何も無い
ならば
暖かい部屋に
引篭つて
蛞蝓と
なつた方が良い
そう思わないかね
と 私は人に
質を投げ返す
そして青鯖缶を
開けて
一つ口へと放つた
第拾壱部
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』