「音終弾」(ねおわのたま)
乾いた銃弾は
又一つ音を
終わらせた
虚空に目を遣り
吐く息の白さに
寒を感じる
赤に染まる地と
倒れる人間を見て
呟く
駄目だ
今日も
去る事が出来なかつた
この退屈に
崩れ去る世界から
去りたいなら
去れば良いだろう
自らのこめかみに
銃口を向けて
其れで終わり
この世界から
去れるぞ
其れが駄目なんだ
もう一人の自分が
拒むから
我は汝
惨憺たる者なり
汝は我
弱き者による
壊を望まず
強き者にて
壊を望みたり
音に終わりを
告げし者が
涙を流す
御前では無かつた
第拾壱部
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』