「言葉届ど只卑下たる己」
私の綴る
言葉は魚である
逃げる魚を
針と云う
筆で釣り
たもと云う
紙にて捕らえる
さしずめ私は
太公望
私の綴る
言葉は虫でも或
逃げる虫を
蜜と云う
墨で誘い
籠と云う
本にて捕らえる
さしずめ私は
麦藁帽の
夏山駆ける
虫採り少年哉
否 私は只の
年を喰つた
人間の女
美しさも
可愛気すらも
存在しない
居ても居なくても
変わらない
其れが私である
第拾壱部
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』