「空の壺は何で満つるやら」
他に汚された私を
貴方は何処まで
消してくれるだろうか
見知らぬ者に
拐わかされ
私の秘所を姦されて
泣きじやいて帰つて来た私を
貴方は只黙つて
抱き締める
其の侭
貴方の匂いが
染み付いた寝の床へ
私は倒され
上に跨がり
貴方は囁く
何処を姦された
云つてみろ
云いたくない
私は拒んだ
云わなければ
消す事が
出来ないだろう
妖しく笑い
艷気を含んだ
声で云つた
震える手で
私は己の体に触れた
忘れさせてやる
消してやるさ
乃公の手で
だから泣くな
記憶の為だけに
啼いて良いのは
乃公の為だけだ
体が重なる
映る影も又重なる
消して欲しい
貴方の手で
記憶を
そして満たして
貴方の物で
何も無くなつた
私の空壺を
第拾壱部
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』