こんにちは。前回のいじめ~女子の修羅場~が終わったので、新しく作りました。今回は虐めの加害者目線で書いていこうと思います。
ちなみに今までで書き上げた作品は
・オタク女が恋を知るまで…
・いじめ~学校という空間~
・いじめ~女子の修羅場~
です。是非見て欲しいです。
数学の授業中。私は梨奈に合図を送るように梨奈に向かってニヤリと笑う。
「先生、声が小さいです!それと、全然授業が分かりません!」
梨奈が先生に苦情を言い始めた。
あーあ、いい気味。受験間近で成績が落ちるなんて。なんて面白い。
「こ、このぐらいで聞こえますか?佐崎さん」
先生が梨奈に戸惑ったような声で問いかける。
あーあ、どいつもこいつも私が全て操っていると知らずに梨奈だけを疑っちゃって。馬鹿だなぁ。
「全っ然聞こえません!先公、もっとゆっくり、大きな声で!このブス教師!」
はっ、梨奈も随分とやってくれるではないか。
教師が怒りと羞恥で顔を赤くする。
「なっ……。使っていい言葉といけない言葉があります!佐崎さんの言動は、非常に失礼ですし立派な授業妨害です!」
その後の数学の授業は、梨奈と先生の言い争いで終わった。
こんな退屈な授業、推薦でもう受かってる私には関係ないんだよね。だから私が梨奈のようなろくに勉強が得意じゃない奴に授業妨害をさせるのは当たり前。
休み時間、私は梨奈の机に向かった。桜と澄恋、そして近くにいたクラスメイトも私によって来る。
「ブス子ー、さっきは授業妨害してくれてありがとー。お礼にいいことしてあげるー」
そうして私は梨奈の椅子を引き、梨奈は地面に転げ落ちた。その様子を見ているクラスメイト達が、一斉に笑う。
「ははっ、本気でやるとか馬鹿だねー。こんな受験間近な時に自分の成績を下げるようなことなんてして。でもあんたのおかげで暇潰しが出来たからさー、お礼にメンタルを鍛えてあげる」
私は梨奈のお腹を力強く蹴った。
「あんたみたいな馬鹿な奴には、こういった無様な姿がお似合いだよー」
梨奈とやりとりをしている間に、休み時間が残り二分程度になっていたので、私は机に戻った。
今日も帰りの会が終わり、退屈な学校生活が終わった。
……ったく、梨奈を苛めることしか楽しいことがないんだから。卒業まであと三ヶ月ぐらいしかないっていうのに。
私は退屈なので、暇潰しに梨奈と遊ぼうと思い、梨奈の机に向かった。そして、私は梨奈の社会の教科書をビリビリに破いた。
「あ、ごっめーん!ちょっと手が滑っちゃったー。でもこれじゃ受験間近なのにろくに社会の勉強が出来ないよねー。まぁ頑張ってねー」
梨奈はただただ呆然とこちらを見ている。その反応に私は苛立ったので、梨奈の髪をぐいっと引っ張った。
「あのさぁ、そうやって教科書や参考書を学校に持ってこられると、つい破きたくなるんだよねー。だからさ、明日は受験用の参考書とか持ってきてよー。………まぁ、今日の遊びはこれで最後にしてあげる。じゃーねー」
私は笑顔で言いながら、桜と澄恋と一緒に帰るために二人の机に向かった。
あれ?桜と澄恋がいない。……ったく、下僕の癖に先に帰りやがって。私のおかげで苛められないですんでるんだから、毎日一緒に帰ることぐらい当然だろ?ったく、この恩知らず共が!
私はイライラし、ドスドスと階段を鳴らしながら下駄箱に向かった。私は自分のロッカーを見つけ、靴を取り出そうとする。すると、そこにはパソコンで文字が印刷されている紙切れが入っていた。
……ん?なんだろう?手紙?
私は、私の靴の中に入っていた紙切れを心の中で読む。
「里中さんに伝えたいことがあります。体育館で待っています」
ふーん、誰からだろう。もしかして、可愛い私に誰かが思いを伝えようとしている……?
私の心臓の鼓動が早くなっていく。
誰が相手なのかなぁ?……やっぱり美人な私に告白するのは文武両道で顔も性格もいい完璧な男子……?あぁ、楽しみ。
私はウキウキした気持ちで、階段を下っている時とは対照的な、軽やかな足取りで体育館に向かった。
私は体育館の扉を開ける。だがしかし、そこには誰もいなかった。
もしかして、いきなり出てきて私を驚かせて告白するのかな……?更に胸がドキドキしてきた。
どんな人なんだろう?同学年?それとも一年か二年の後輩?……顔が良ければ何歳でもいいや。性格は後で変えられても、顔は変えられないからね。それに、私みたいな美人の隣は、やっぱり格好いい相手を歩かせておかないと!
そんな妄想をしていても、誰も来ない。色々と妄想をしているうちに、七分ぐらい経っただろうか。
「すみませーん!誰かいますかー?」
私は大きな声で叫んでみた。
パシャンッ。私の背中に水がかかったような気がした。後ろを見てみると……。
何これ?水風船?!なんでこんな……。誰がやったの!?
「あっはははは!!派手に当たっちゃってのろまだなー。バーカ!」
体育館の舞台から、聞き覚えのある声がした。
後ろを振り向いてみると、そこには思いもよらない人達が私を見て笑っていた。
「まんまと引っかかっちゃって。茉莉のバーカ」
「う、嘘……?なんであんた達が?」
そこにいたのは、桜と澄恋だった。
「嘘でしょ……?なんで……」
「は?私達が、あんたなんかに本気で協力すると思ってた?本当の友達だと思ってたと思う?最初からあんたなんて、暇潰しに都合のいい道具としてしか見てなかったんだよ!」
は?なんで?都合のいい道具?こいつらは私の恩を忘れた訳?私の下僕でいるから、苛めのターゲットにされないですんでるのに。
私は脚をダンと強く鳴らす。
「あんた達……ふざけないでよ!誰のおかげで今までいい思いしていられたと思っているの?」
すると、二人は呆れたようにため息をつく。
「何?茉莉のおかげとでもいいたいの?最初からあんただって、私達の事を下僕としか見てないくせに。バーカ」
なっ……。私は馬鹿じゃない!私の顔は、怒りと羞恥で一気に赤くなる。
「私は馬鹿じゃない!成績も良くて、こんなに長く苛めの内容を考えることができて……馬鹿じゃない!」
「いーや、馬鹿だよ」と、澄恋が首を横に降る。私は訳がわからなくなった。
「だってさ、この間私達が茉莉の苛めの内容を担任にチクった時さ、私達だって気づかなかったじゃん?」
私は驚いた。
え、あれって梨奈じゃなかったの?う、嘘でしょ……?
それに続くように、桜が言葉を発する。
「それにさ、茉莉って自分の居場所を見つける為に苛めをしたんでしょ?弱い者を苛めて自分の地位を高めて居場所を求めてもさ、それって本当に居場所を見つけたわけじゃなくない?」
……だって、他の奴らは私と違って親の愛情を受けて育ってきたから!だから愛情のない生活を味わってほしくてやったこと。ただそれだけなのに!
「だからさ、もう私達はあんたに付き合わされるのは限界なんだよね。だからさ……明日から私達があんたがしてきたことをそっくりそのままやるつもりだから」
それって苛めを受けることでしょ?……許せない。私なんて、美人で勝ち組な筈なのに。私が苛められる意味なんてない!
「なんで……酷いよ!」
「あんたが苛めをしてきた年月と比べたら、私達の苛めなんて比にならないでしょ」
「や、やだ!私は……」
「あ、嫌なら私達を苛めたらー?まぁどうせ無理だよねぇ。だって、一人だと何も出来ないから私達を下僕にしたんでしょ?」
「違う!違うってば!」
二人は、私の意見を聞かずに笑いながら帰っていった。
私はしばらく体育館でぽつんと一人で立っていると、ようやく我に返り私はゆっくりと歩きながら家に向かった。
あまりにも突然のことで動きはかなりゆっくりとしているが、頭の中はとても焦っていた。
嘘でしょ?私が……苛められる?しかも下僕だったあいつらに?!
意味がわからない。なんで……なんであいつらは私を裏切ったんだ?私はあの二人を下僕にして、苛めのターゲットから外してやったのに。
裏切ったな、あいつら……絶対に許さない。
本当は、あの二人をこの手でころしたいぐらいだ。しかし、そんな事がバレたら私は先生から信頼されなくなり、折角推薦で高校を合格出来たのに、高校にバレて推薦を取り止められるかも知れない。
大体、私が苛められるなんておかしすぎる。私は顔も可愛くて、頭も良くて、苛めで皆のメンタルを鍛えてあげた……。こんなのおかしすぎる!
私の心の中は、二人への怒りと恨みでいっぱいになった。
あいつら……覚えておけよ!!!!!
私は家に帰り、怒りをぶちまけるように通学バッグを床に置いた。
私は携帯を開き、二人に文句を言う為に桜と澄恋との三人のグループラインを開こうとした。……しかし、澄恋によって私はグループを退会させられていた。
ふんっ。まだ個人の方があるんだから。文句なんていくらでも言える。
私は桜との個人のラインを開いた。そして、今の心の感情を表すかのように乱暴に文字を打つ。
「なんであんたなんかが私を苛めるわけ?意味わかんない!」
すると、タイミングが良かったのかすぐに返信が来た。
「なら、なんであんたが苛めをするのかもわからない」
わからない?なんで?私はただ、楽しいからやっていただけ。自分のやりたいことをして、何が悪いの?
私が返信する前に、桜から新しいメッセージが来た。
「とにかく、私はあんたに今までやられた借りを返すだけだから。そんなに苛められたくなかったなら、そもそもあんたが苛めをしなければ良かったんじゃない?」
「まぁ、そういうことだから。じゃあね」
うるさい。意味わかんない。なんで?私は苛めをしてもいい立場なのに。
桜とは話にならない。澄恋に文句を言おう。
「なんであんたが私を苛めるの?意味わかんない」
私は澄恋にイライラした気持ちをぶちまけるように乱暴にラインを送信した。
「意味わかんないのはこっちなんだけど。あんたがストレス発散の為に私達を利用した方が意味わかんない」
は?桜も澄恋も一体なんなの?私のおかげで今までいい思いしてきたっていうのに。
更にイライラしてきた私は、じっと携帯を見ているとますます落ち着かなってきたので、激しく貧乏ゆすりをし、ギュッと唇を強く噛んだ。
「今まで私のおかげでいい思いしてこれたのに?」
「こっちは頼んでないし。お願いしてきたのはそっちでしょ?」
何なの?それに賛同したのはこいつらなのに……。私は何も悪くない!!
「あーもう、あんたと話しているだけ時間の無駄だから。とにかく明日楽しみにしててね」
私のイライラは頂点に達し、私は通学バッグを強く蹴った。
何なの……?意味わかんない。あいつらなんて……消えろ!!
翌日、私はようやく冷静さを取り戻した。普通に考えて、まずあり得ない話だと思ったからだ。何故なら、あの二人は何も断れない人だから、苛めをする勇気なんてないに決まっているだろうからだ。
落ち着け、私……。あんな勇気のない奴に、苛めなんてできる筈がない。私は自分に強く言い聞かせた。
登校中。今日は天気がよく、冬だけど上着がいらなそうな気温だった。
ふーっ、今日も青い空が広がっていて、絶好の苛め日和だなぁ。清々しい天気を横に、梨奈の心はどんどん曇っていく……。クスッ、考えただけでニヤニヤしてくるなぁ。
まぁ、昨日のことは忘れて、今日の遊びの内容でも考えますか。………そうだ、桜と澄恋に痛い目を見させて、他の人を下僕にするのもいいかも。そして梨奈から桜達にターゲットを移すのもいいかもね。梨奈を苛めてもう一年ぐらい経ってるし……そろそろ変え時だろうし。
そんなことを考えている内に、校舎が見えてきた。
「里中さん、おはようございます」
「おはようございます」
私は深々とお辞儀をして校舎を通る。
私の裏の顔も知らないで私のことを信頼しちゃって……可哀想だなぁ。
教室の前に着き、私は自身に満ち溢れた顔でドアをガラッと開けた。
葬式ごっこの話実話なんだよね...
113:AL ◆6.:2020/09/05(土) 10:04凄く面白い!続き期待です!
114:みぃ◆VZbV1gU:2020/09/05(土) 20:19 >>112
はい、実話の話を元にして書きました。
>>113
ありがとうございます!
しかし、私の希望は次で一瞬で消された。
バシャッ。何これ?バケツ?嘘でしょ、まさか……。
私はびっくりして前をよく見ると、桜や澄恋を先頭に、クラスメイト全員が私の前に立ちふさがっていた。
「ばーか。昨日忠告したのにまさか本当に来るとはね。度胸のある人だねー」
「さ、桜!なんで、本当に……」
「え?昨日忠告したでしょ?明日からあんたに仕返しをするって。ついさっき、あんたが来る前にクラスの全員に伝えておいたから」
な、なんで……。なんでこいつらなんかに苛めができるの?何も断れない気の弱い人達なのに……。
クラスの皆が、勝ち誇ったような表情で私を見ている。
こんなの、卑怯だ……。顔もそこまで可愛くないこいつらが、クラスの人全員を味方につけるなんて。
「私達に今までしてきたこと、反省してよ!」
「そうだよ、バーカ」
皆が、私に色々な悪口を言ってくる。
こんなの……酷い。一人で味方のいないことを良い事に、皆で悪口を言うなんて。……こういうことをしていいのは、私だけなのに!!
思い切り叫びたいが、桜と澄恋がいないせいか、全く声がでない。
その瞬間、澄恋がニヤリと笑いながら声を発した。
「味方のいない茉莉なんて、全く怖くないね。さぁ皆、遠慮しないでこいつと遊ぼー」
その瞬間、澄恋が私のお腹を力強く蹴ってきた。私はその痛さで、その場にしゃがみこんだ。しかし、澄恋と桜がぐいっと私の腕を引っ張り、無理矢理立たせた。
痛い、酷すぎる……。
「あんたなんかに休ませるかっての。あんたなんかに休む権利なんてないんだよ!」
「私達がこいつのこと抑えてるからー、こいつに恨みのある人、どんどん殴っちゃってー」
二人が言葉を発してから、私が今まで苛めてきた人達が私のことを殴ったり髪を引っ張ったりした。
「いや、痛い。やめて……」
私がそう言っても、クラスの皆はやめない。
なんで……。私がクラスの女王様なのに……。私の言う事は絶対な筈なのに……。
「ふん、あんたが今までしてきた事に比べたら、今あんたが喰らっている痛みなんて、比にならないよ!」
クラスメイトは、皆私への恨みを晴らすように私への暴力をやめない。
嫌だ嫌だ。こんなのおかしすぎる!……でも、なんで……?言葉が出ない。
「おっと、もうすぐ先生来るし、続きは学級会の後にしますか」
「そうだね、じゃあまた後でこいつに仕返しをしよー」
皆はつかつかと自分の席に戻っていく。
嘘でしょ?まだ続くの……?
「結局あんたって、一人じゃ何もできない弱い奴なんだね」
桜がそう吐き捨てて席に戻っていった。
学級会が終わり、担任がいなくなると、皆は自分のロッカーから教科書を取ろうとしていく。
皆が取りに行っているところで取りに行くと、また何かされそうだな……。
「何やってんの?早く取りに行きなよ」
私は人が減っていくのを見ていると、後ろから背中をドンと押された。そのせいで私は思うように立ち止まれなく、教科書を取り出しているクラスメイトに思い切りぶつかった。そのクラスメイトは、私を睨んでガッと私の胸ぐらを掴む。
「お前、何ぶつかってんだよ。危ないじゃないか」
「こ、これは、その……」
私は手で腰を押されて、地面に付き倒された。
「お前の言うことなんて聞くかよ、この弱虫!!」
弱虫?私が?こんなに皆のことを支配していたのに?なんで?意味わかんない。……きっとこいつの頭が悪いだけだよね。
そのクラスメイトは、私の髪をぐいっと引っ張って自分の席に戻っていった。その様子を見ていたクラスメイト達が、こちらを見てクスクスと笑っていた。
>>114 そうなんですね、
こわい、、、
>>117 コメントありがとうございます
痛い……。さっき髪を引っ張られた所の頭が、まだ痛みを感じる。
まぁいいや。今は授業中。私は教師から好かれているので、誰かが私に嫌がらせをしていることがバレたら、その人は間違いなく先生から目をつけられるだろう。
そう思い、私は自分のノートを開いた。しかし、そこには思いもよらない物があった。
何これ、落書き……?酷い、なんでこんなことするの?!
ノートには、「しね」や「いじめ大好き野郎」や「迷惑者」などのあまりにも酷い内容の落書きでニページ分埋め尽くされていた。そのうえ、油性ペンで書かれているので消すことができない。
(もしかして……)と思い、私は他のページも見てみると、私が綺麗に板書していた所は全て油性ペンて塗りつぶされていた。
折角綺麗に板書していたのに……。これじゃあノートを提出できないじゃないか。学年末テストの後に、ノートを提出しないといけないのいうのに。なんてことをしてくれるんだ。
続き気になります!
120:みぃ◆VZbV1gU:2020/09/10(木) 17:23 >>119 ありがとうございます
キーンコーンカーンコーン。私が落書きに気を取られている間に、いつの間にか授業が終わっていた。
まぁ、もう推薦で合格しているから、一回ノートを出し忘れたぐらいどうってことないかも知れない。桜も澄恋も甘いのなんのって。これだから初心者は嫌なんだよ。
その瞬間、誰かが私の椅子を引いた。そのせいで私は椅子から転げ落ちた。
痛い、誰がやったの……?そう思い後ろを振り返ってみると、小学校の頃からずっと私の苛めを遠くから見ていた女子二人が立っていた。
「あはは、良い気味!ノートもあんなふうにしちゃってさ。ブース」
嘘?桜と澄恋がやったんじゃなかったの?……こいつら……今まで見ているだけだった癖に。調子乗るんじゃねぇよ……と、言いたい気持ちなのに、また何故か口に出せない。何故だ、何故なんだ……。
「やっぱりあんたってさ、一人じゃ何も言えない弱虫なんだね」
二人は私に指を指して馬鹿にしたように笑った。
な、何言ってんの……?いきなりこうなってびっくりしたから言えないだけで……そのうちまた私が学校の女王様になるに決まっている。
女王様は、私しかいないんだから。
毎回続きが楽しみです!
これからも頑張ってください!
応援しています!
あ、ごめんね乱入みたいになっちゃうけど、
専スレ来てくれる?
みぃちゃん!
>>122
うん、分かった
私は教室にいると四六時中苛められると思ったので、女子トイレに向かった。個室に入れば誰も来ないと思ったのだ。
椅子を引かれて転んで足が痛いが、今は足の痛さなど気にしてはならないのだ。ここにいると皆が私を苛めて来る。一秒でも早く逃げなければ。
トイレは教室のすぐそばにあるので、さほど距離はない。しかし、椅子から転げ落ちるというのは本当に痛い。遊び半分で皆やりがちだが、意識してないで突然転げ落ちるというのはやっている人たちが思っている以上にびっくりする。本当にこういうこと、やめてほしい。
それにしても、皆考えが甘いんだな。個室に入っちゃえば終わりなのに。やっぱり私の苛めを見ているだけじゃ駄目なんだね。苛めをしていいのはやはり私だけなんだな。
これで休み時間の逃げ方は分かった。授業が終われば、一刻も早くトイレに逃げ込めば良いだけだ。こんなにも早く答えが見つかるなんて……皆弱い弱い。
さて、あとは登下校の時と授業中の逃げ方だろうか。………まぁ、登下校中と授業中は先生達がいるので、そこで苛められる可能性は低いと考えよう。先生のいる前で先生から信頼されている私を苛めるほど、皆馬鹿ではないだろう。
そんなことを考え、足の痛さを我慢しながらなんとかトイレに辿り着いた。いつもは全く時間が掛からないのに、足が痛いせいか結構な時間が掛かった気がした。何も考えないで呑気に歩いていた方がもう少し早く感じただろうか。
そんなことはどうでもいい。もう休み時間に苛められることはなくなるんだから。ふふっ、随分と短い遊びだったなぁ。
ガチャリ。私はトイレのドアを開ける。すると、クラスの女子達が沢山溜まっていた。そのうち何人かの女子が私に気づき、驚いた表情で私に指を指し、私を見る。
「本当だー、高梨と橘の言ったとおりだ」
「あっははは!本当に来たー!!」
一時的に皆同じ表情をしたが、その後の皆の表情は、私をからかう様な笑顔を浮かべたり、驚いたままだったり、私を睨んだりと十人十色になった。
な、何……?本当に来た?桜と澄恋の言った通り……?もしかしてあいつら、クラスの奴らに口裏を合わせていたのか?……嘘だろ、信じられない……。
そっか、クラスで一番頭のいい桜の仕業か。ただ勉強ができるだけの頭でっかちな奴ではなかったのか……。私の行動や心理もしっかりと読むことのできる人だったのか……。
すると、女子トイレにいるクラスメイト達がいつの間にか私を囲んでいた。
「私達さぁ、高梨達にあんたがここに来たら苛めるように頼まれているんだよ」
くそっ、やっぱりあいつらが仕込んでおいたのか。頭のいい桜と計算高い澄恋を下僕にしておいたのが駄目だったか………。なんであの時の私はあの二人を下僕にしたのだろう……。
すると、前の方にいた女子が私を壁に追い詰めた。その女子は私を壁に追いつめると、壁を力強くグーでパンチする。
「私達さぁ、あんたには昔から借りがあるんだよ。その借り、少しずつ返してもらうよ?」
「そうだ、そうだ!私だって返して貰う!」
……ごちゃごちゃうるさいなぁ。私が一人でいることを良い事に皆好き勝手言いやがって。皆でいないと何もできない奴の集まりな癖に。
すると、後ろの方にいた女子が掃除用具入れからバケツとモップを取り出してきた。ここにいる女子は私を入れないで三人なので、十分に数は足りた。
こいつらは、バケツの水を掛けたりして私を汚そうとしているつもりだな……!?なんてことをしようとしてるんだ!可愛い私の外見を汚そうとするなんて……。
絶対こいつらは美人な私に嫉妬しているんだな?この嫉妬野郎共め!ただの嫉妬で私の外見を汚そうとするなんて……酷すぎる。
言いたい事は沢山あるのに、やはり口にする事が出来ない。
すると、三人の中の一人が私にバケツの水を思い切り掛けてきた。そのおかげで、私は体中ずぶ濡れになった。
ずぶ濡れになった私を見て、皆はこちらを指差して笑っている。
「あっははは!良い気味。皆、もっとやっちゃおうよ!」
すると今度は雑巾とモップで私の顔や制服を濡らしてきた。
おぇ……トイレの掃除に使われている雑巾とモップは自分の思っている以上に臭い。私の綺麗な顔にこんなことしやがって……。ふざけるなよ?
しかし、顔につけられている雑巾やモップのせいで、一言も話せない。こいつらは、雑巾とモップを交互に顔に当て、もう一つは制服に当てている。
数分経つと、今度は手の開いている一人がトイレの便器からバケツで水を組み、その水を私にバシャバシャとかけてきた。バケツの水が無くなると組み、またなくなると組む……そんなことを繰り返された。
「あっははは!!やれ、やれー!」
私はただ、時間が経つのを待っている。
「ねぇねぇ、あと三分だよ?」
……よかった、終わったのか……。ようやく解放される……。自分が苛めをしていたときはあまりにも楽しくて、直ぐに時間が経っていたが……自分がやられると長く感じる。
しかし、私の制服などは池に飛び込んだかのように、非常に水浸しになっていた。今までの人生でこんなに水に濡れたのは初めてだ。
まともに水にかかったことなんて、小学二年生の頃に遊びで当時のターゼットにバケツの水をかけたときにたまたまその水が少しかかった程度だ。
どうしてくれるんだよ。可愛い私の姿をこんな風にしやがって。これじゃあ授業に出れないじゃないか!
私の席は、後ろの方にあるので水に濡れた程度ではあまり気づかれないだろう。しかし、優等生で美人でクラスの女王様な私が、こんな姿で授業に受けるだなんて有り得ないのだ。
全部こいつらのせいだ!片付けぐらいはこいつらにやってもらわなくては……。
すると、私を苛めていた女子一人が私の背中を蹴ってきた。
「何のんびりしてんの?あんたがこれを片付けるんだよ!」
なんで私が片付けないといけないの?こいつらが掃除用具を出したのに。それに……私はクラスの女王様なんだぞ?なんで私がこいつらの言う事を聞かないといけないの?
「は?もたもたしてないでさっさと片付けろよ!」
「は?」と言いたいのはこっちだ。
「あんたが最初から苛めなんかしなければ、こうなることもなかった。だから、お前がこうやって少しずつ皆に謝罪するのは当然でしょ?」
「ほら、早く片付けろよ!おい!」
私をもて遊んでいた女子は、私を蹴り飛ばして脅してきた。
私が、謝罪……?どうして?私はただ、自分のやりたいことをやっていただけなのに。なんで私が皆に謝罪しないといけないの?
今すぐ文句を言いたい所だが、授業をさぼると先生からの信用が失われるので、ここは従っておいたほうがいいか。気持ちに余裕が出て来たら、その時に倍に返せばいい。
私は嫌嫌こいつらに従ってやった。渋々と乾いた雑巾を手に取り、床の水を拭いていく。
「ほら、もっと早く!早くしないと休み時間終わるんだよ!」
後ろからモップの先で私を思い切り叩いてきた。
……ごちゃごちゃうるせぇな。私の下僕である筈のこいつらの言う事を仕方なく聞いてやってるのに。先生から嫌われたくないから、言われなくても従うっての。
「ねぇねぇ、ちょっと時間見てきてよ」
そう命令された女は、床を拭いている私の頭のを軽く踏んづけ、時計を見に行った。
軽々と踏むんじゃねぇよ。あっちは軽い気持ちかも知れないが、こっちは十分痛いんだよ。何更に私を汚してくれてんだよ。
「あと二分だったよ」
時計を見に行った女が帰ってきた。
「そっかぁ。じゃあうちらはもう帰ろう。……あ、あんたはしっかりと掃除しといてよね」
は?なんでこいつら、私を置いていくの?意味分からないんですけど……。
ええい!なんで水をばら撒いたあいつらは私より先に戻るのに、私は戻れないのだ!こんなのはおかし過ぎる。私も戻ろう。もし掃除していないのがバレても、トイレに行かなければいいだけだ。
あの女……あと残り二分と言っていただろうか。そうするとあと一分ぐらいか。あらかじめ授業の用意はしてあるので、おそらく急げば間に合うだろう。
私は、いつもより気持ち早めに教室に向かった。できるだけ早く着きたかったが、脚も痛いので脚にも気を配りながら、早く丁寧に向かった。
私をこうやって急がさせたのも、全部あいつらのせいだ!あいつら……あとで覚悟しておけよ。何百倍にも返してやるからよぉ。
ガラッ。私は教室のドアを開けた。
よかった、間に合った……!
まぁいいや。あいつらにまだ苛立つ気持ちはあるが、今は早く自分の席に着くのが最優先だ。あいつらへの復讐方法は授業中に考えるとしよう。成績優秀な私なのだから、少し授業を聞かなくてもなんとかなるだろう。
キーンコーンカーンコーン。私が席に座ったのと同時に、授業が始まるチャイムがなった。
さてと、あいつらへの復讐方法を考えますか。
どんな風に倍に返してやろう……。ありきたりな苛めだとつまらないからなぁ。どうせなら自殺に追い込むぐらい復讐してやらないと。下僕の身分で私に逆らったぐらいのことをしたのだから。しんで償って貰わないと。でも自分の手は汚したくないから新しい下僕に全部やらせるか。その時までに新しい下僕を見つけ出さないとな……。
いや待てよ、新しい下僕が私に命令されたとか言ったら最終的に自分の手が汚れてしまうぞ……。自分の手が汚れてしまったら終わりだからな……。
そうだ、いっそのこと一定の期間は抵抗せずに大人しく苛められて、こっそりと証拠の写真を集めて校長やあいつらの親に渡すのもいい手だな……。そうすれば皆から冷たい目で見られて精神的に追い込まれる筈だ。
……あ、桜と澄恋にも復讐しないと駄目だな。元はと言えばあの二人が私を裏切ったからなのだから。それと、私が独りになってから手のひらを返してきたクラスメイト達も。
……そうだな、そいつらも証拠写真を集めて精神的に追い込むとしよう。それが一番無難で自分の手も汚れないやり方だろう。
授業が終わり、私は教科書をロッカーに入れようとした。すると、後ろから桜と澄恋に腕をがしりと掴まれた。
「あのさぁ、あんた授業妨害してくれない?私達、もう推薦で受かっているから退屈なんだよねぇ」
授業妨害………?ふざけるな。授業妨害なんてしたら、先生からの信頼が落ちるじゃないか。何故散々いじめられている上に、先生から嫌われなくてはいけないのか。
今まであまりにも衝突なことが続いて何も言い返せなかったが、これだけは断らなくてはいけない。そう思った。
「嫌に決まってんだろ?私は先生から信頼されてんだよ……。その信頼を失ってたまるか!」
この二人が私を裏切った時に私に反発したように、私もこの二人に反発する。
すると、二人は参ったかのように残念な表情を浮かべ、やがて仕方のないようにため息を吐きながら言葉を述べた。
「そっかぁ、信頼されている人からの信頼を失うのは流石に嫌かぁ」
「茉莉を信頼している人が可哀想だしね」
フッ、ようやく分かったか。この馬鹿共が。
そもそもこいつらは、本来なら私の一番の下僕でいなくてはならない存在なのだ。あんたらの命令なんて聞けるかよ!
「今回はあんたの言う事を聞いてあげる。感謝しろよ?」
そう言って二人は私の前から去っていった。
給食の時間になった。私達はいつものようにグループを作り、皆楽しそうに話しながら食事をしている。
私達の班の皆も、楽しそうに会話をしている。
よし、私もいつものように会話に混ざりますか!
「ねぇねぇ、何話しているの?」
私は笑顔で皆に聞こえる声で話しかけた。しかし、私の言葉はあっけなく無視された。
会話をしている所だったので聞こえなかったのだろうか?……まぁいい。もう一度話しかければいいだけだ。
「あの、聞こえないの?!私の言葉!!」
さっきより大きい声で言ったつもりだが、誰も返事をしてくれない。
「ねぇ、さっきいじめっ子の声がしなかった?」
「うん。でも無視していいでしょ。だっていじめっ子はクラスで不要な人物なんだから」
私が、クラスで不要……?ふざけるな!成績優秀で美人な女王様だぞ?なのに何故このクラスで不要な人物と言われなくてはならないのだ!何故無視されなければならない!
「それにさぁ、私達もいじめっ子に散々無視されたしね」
「今度は私達の番、だよね」
何が、「今度は私達の番」だ。私は苛めをしてもいい人だからやっているだけなのだぞ?こいつらは私のおかげでメンタルが強くなったのに……恩を仇で返すとは、まさにこのこと!
皆、私を無視したまま笑いながら給食を食べている。
酷い、私を無視するなんて……。私は女王様なのに。
「あっははは!!!」
私の隣の人が、突然私の方に顔を向けて大笑いをしてきた。そのせいで、私の顔は牛乳だらけになった。さっき濡らされた制服もまだ乾いておらず、私の姿はびしょ濡れになった。
何をしてくれるんだ。皆好き勝手やりやがって。今に見てろよ……。絶対に見返してやる!
「ねぇねぇ、なんか牛乳が宙に浮いていない?」
「本当だー。ここに人なんて居る筈がないのにね!なんだか怖いから拭かないと」
見えているくせに。見えているくせに私がいないように振る舞いやがって。これは立派な人権侵害だ。
私に牛乳を吹きかけた奴は、廊下で雑巾を取りに行き、その雑巾で私の顔をごしごしと力強く拭いてきた。
「あれ?苛めっ子、そこにいたんだー。要らなすぎて全然気づかなかったー」
さっきから気づいていたから私をそんな乱暴に扱った癖に。雑巾と牛乳で顔を汚された私の気持ちを考えろ。
昼休み。先生がいなくなると、桜と澄恋が自分の席から立ち上がった。
「皆で、茉莉のあだ名を考えようと思いまーす!!今から投票用紙を配るので、今日の放課後までにこの投票箱に入れてくださーい」
「発表は、明日の朝の学級会の後にしまーす!」
そうして、桜は投票用紙を皆に見れるようにビラビラと見せ、澄恋も投票箱が皆に見えるように投票箱を持っている腕を頭の上まで伸ばした。
「私も散々茉莉に嫌なあだ名で呼ばれたからね」
「嫌なあだ名で呼ばれた分、こっちも嫌なあだ名で呼ばないとね」
クラスメイト達は、皆ニヤリとした表情を浮かべながらヒソヒソと話している。私を悪者のように見る目で……。
何故、下僕であるあいつらに変なあだ名をつけられなくてはならないのだ。私が今まで皆にあだ名をつけてきたのは、私があいつらに嫌なあだ名をつけてもいい立場だからなのに……。何故下僕共が私に反発をしてくるのだ。
私が孤立した瞬間調子に乗りやがって……どいつもこいつも最低だ!下僕共が調子に乗らなければこんなことにならなかったのによぉ。
私はその場にいてもたってもいられなくて、思わず廊下へ走り出した。
ようやく六時間目が終わり、今までで一番辛い一日が終わった。
学級会が終わり、担任がいなくなると、私は逃げるように教室から素早く出ようとした。しかし、後ろからがしっと桜と澄恋に両腕を掴まれた。
「はい、まだ帰っちゃ駄目だよー?」
「放課後は、あんたへのお仕置きの時間なんだから。………はい、皆集まってー」
すると、皆が一斉に私の方へ来た。私は桜と澄恋から腕を離されて付き倒され、皆に囲まれた。
何をしようとしているのだ。散々私で遊んだ挙げ句、お仕置きと称した苛めをまだやるなんて!
「まだ反省してないの?仕方ないねぇ。こんな奴にはみっちりとお仕置きしないと」
私は思い切りお腹を叩かれた。それから一秒もしないうちに髪を引っ張られ、それからも次々と暴力を振るわれた。
一つの暴力をしている最中にもう一つの新しい暴力が跳んできて……親から暴力を振るわれている時より痛い。
手だけでなく、鞄や本でも殴ってくる。きっと、私の体は痣だらけだ。
「そろそろこいつの限界が来てるんじゃないか?」
「いやいや、精神的に追い詰められたうちらの痛みからしたら全然比にならないでしょう。だから、もっとやっちゃえー!!」
一人がそう言ってから、皆は更に殴る力が強くなっていった。
「あ、もうすぐ部活の時間になるよー」
一人がそう言い、皆は次々と暴力をやめていく。
よかった、これで解放される……。
「また明日…………」
私は解放されたのが非常に嬉しく、暴力が止んでから素早く帰った。最後に誰かが私に何か言っていたが、全く覚えていない。
私は家に帰ってから、すぐに着替えて家電屋に向かった。苛めの証拠を集める小型カメラと録音機とカメラのフィルムを買う為だ。携帯だと写真や動画を撮るときに音がなってしまうので、カメラと録音機を持っていこうと思った。
あったあった……。これぐらい小さければバレないだろう。
私は一番小さいカメラと録音機とフィルムを手に取り、会計に行った。値段は中々高かったが、これで苛めから解放できると思うと、全く高く思わなかった。
桜も澄恋も、他のクラスメイトも、今に見ていろ。あんたらが酷いことをする度に、その分後であんたたちの方が痛い目を見るんだから。
私には先生という強い味方がいる。お気に入りの生徒が苛められていると知ったら、先生達は絶対にクラスメイト達に激怒するだろう。
家に帰ったら、まずはこの痣だらけの体をカメラに納めよう。さっき制服から私服に着替えたとき、案の定私の体は痣だらけだったのだ。
私は家に帰ってカメラにフィルムを入れると、早速服を脱いで体中にある痣をバシャバシャと撮った。
私の綺麗な体をこんな風に汚しやがって。なんてことをしてくれたんだ、と、以前の私は怒りの気持ちしかなかったが、今は苛めのいい証拠になるので、むしろ痣が多くて嬉しい。
あ、ついでに親から殴られた所もクラスメイト達にやられたように撮ってしまおう。そうすれば更に証拠が増えるぞ。……そうだ、今度から当分の間親に殴られたらクラスメイト達のせいにしよう。そうすれば早く証拠の写真が集まって、苛められる日数が減るではないか。まぁ、あえて長く苛められて、その分多くの写真を集めるのも手だが……それだと私の体が持たないのでやめておこう。
それにしても、よくもやってくれたな……。痣の写真で中々の枚数が撮れたぞ。どれだけ殴ってくれたんだ、ニ、三ケ所同時に写っているものもあるので、枚数よりいくらか痣は多いだろう。
写真を取り終わると、私は自分でも気持ち悪くて体の痣を見たくないので、速やかに部屋着に着替えた。
大して偉くもないただのクラスメイト達が、よくもまぁ私の体を傷つけてくれたと。あいつら、私の体を汚した罪は思いぞ……。覚悟しておけ。
次の日、私はカメラと録音機を制服のポケットに入れて登校した。
桜も澄恋も他のクラスメイト達も、好き勝手やりやがって!許せない……。
まぁいい。今は我慢してやる。最後に勝つのはこの私なのだから。あいつら……見ていろよ。
これから苛められるという覚悟を決めて、教室に入った。その瞬間、桜と澄恋が待ち構えていたように教室の前に立っており、私の両腕をがしっと掴まれた。私はポケットに入れている録音機のボタンを押す。
「はい、今日も茉莉が来たので、お仕置きの始まりー」
「茉莉の一日は、お仕置きから始めないと!」
その瞬間、クラスメイト達が一斉に私を殴り始めた。
……痛っ!!この痛さ、素手ではないぞ。一体何で殴られたのだ?
私は隙をついて、チラリと周りをみる。すると、そこにはバレーボールが転がっていた。
なんて物で殴ってくるんだ!バレーボールだなんて……危ないだろ!しかし、今は我慢だ……。
「茉莉に対してのお仕置きなんて、素手では足りないね!」
そう言って皆は、私を素手でなく物で殴ってくる。しかも、ボールや棒などを、結構な強さでだ。
「あ、今日は茉莉のあだ名を発表するのでこのぐらいにして下さーい」
あだ名、だと……?ああ、そういえば昨日そんなことを言っていたな。
何故だ、何故私がこいつらにあだ名をつけられなくてはならないのだ。おかしすぎる。
皆が暴力をやめると、桜が声を発した。
「一番多かったのは……二十票の『奴隷』でーす!私達も今まで茉莉に散々奴隷のように扱われてきたので、私はこれでいいと思うのですが……どうですかね?」
何が奴隷だ!!私は女王様だぞ?奴隷なのはこいつらの筈だ。何故皆こんなに狂っているのだ。
皆は桜の言葉に大きく賛成していることを表しているように、素早く手をビシッと挙げた。
私は納得していないぞ。何故私が奴隷と呼ばれなくてはならないのだ。
どれもこれも、桜と澄恋が私を裏切ったからこうなったのだ。……桜、澄恋……………許さんぞ。
「じゃあ、今日からこのいじめっ子は『里中茉莉』から『奴隷』という名前に改名しまーす!」
澄恋が私の意志を無視して私を煽るかのような笑顔で言った。
「こいつを奴隷にして、今までのことを反省してもらう!」
「ああ、俺らも随分と奴隷のようにされてきたからな」
皆が私を白い目で見ている。
何だ、これは……。当の本人の意志を無視して変なあだ名をつけるとは……嫌がらせの他の何でもない。
「一点ー、二点ー」
休み時間、誰かが私にゴミを投げてきた。
私はまた苛めが始まると思い、録音機のボタンを押す。
誰がやったのか気になり後ろを振り向く。
全然話したことのない男子達じゃないか……。何故こいつらにゴミを投げつけられなくてはならない。
「おい、お前は奴隷なんだから、動かないで大人しく的あての的になれよ!」
「そうだよ、この奴隷野郎!」
くそっ、奴隷奴隷とうるさいな。奴隷という名前はお前らが嫌がらせでつけただけだろ?……私は「奴隷」ではない。「茉莉」だ!
「私は……茉莉だ!」
昨日と今日とストレスが溜まってきたので、私は大きな声で吐き出した。
「奴隷だなんて……そんなのお前らが勝手につけた名前だろ?本人の意志を無視して勝手にあだ名をつけるだなんて……そんなの拷問だよ!」
男子達は私の大きな声に一瞬だけ怯んだが、すぐに私を馬鹿にしたような笑顔を作った。そして、笑いながら声を発した。
「ぷっ、自分だって今まで散々人に嫌なあだ名をつけてきた癖によく言えるね」
近くにいたクラスメイト達も加勢してきた。
「私達の身にもなってよね」
「それとも、自分は何をしもいい女王様だとでも思ってるの?」
「うっわー、偉そうー」
何が偉そう、だ。女王様だから偉そうにしているだけだぞ。女王様なんだから何をしてもいいじゃないか。
「てかさ、的あてが出来ないんだから早く止まれよ、奴隷!!」
そうして男子達はまたゴミを投げつけてきた。主にティッシュなどのゴミなので全く痛くなかったか、自分の体にゴミを投げつけられるというのは精神的に大きく傷ついた。
「奴隷、こっち向け」
なんだ、女王様に向かってその口調は。本当に皆正確悪い。だから皆嫌いなんだよね。
今は従っておいた方がいいのだろうか。最後に私が勝つために。
私が体を向ける前に、近くにいたクラスメイトが私の体を男子達と向き合うように私の体の向きを動かした。
「顔に当てたほうが面白いじゃないか!」
「ああ。じゃあ奴隷の顔にゴミを当てた奴は五点手に入れられることにしよう」
男子達は、私の顔めがけてゴミを投げてきた。
くそっ、今は我慢してやる!そのかわり、覚えておけ。最後に勝つのはこの私なのだ!
私は自分にそう言い聞かせた。
怖っ…!でも面白い!
ちぃさん、頑張ってください!
すみません、ちぃじゃなくてみぃでした!
144:みぃ◆VZbV1gU:2020/10/03(土) 18:20 >>142-143 ありがとうございます!
そうだ、桜と澄恋にさっき録音した音声を聴かせよう。そして桜と澄恋に土下座してもらって、今度は桜と澄恋に奴隷になってもらおう。
本当はもっと証拠を集めたい所だが、もう我慢できん。今やらないと私の身体がいい加減持たないぞ。そして私の事をこんなにも心理的にも身体的にも追い詰めたのは、全部桜と澄恋のせいだ!だから次はあいつらを苛めてやる。
教室の隅で桜と澄恋が話していたので、私は二人の肩をがしっと掴んだ。
「あんたたち、もう私の事を苛めるのはやめたほうがいいよ?じゃないとあんたらが痛い目を見るだけだからさ」
そうして私は二人に向けて録音機を再生する。
「桜、澄恋。今ここで土下座して、次からあんたらが苛めのターゲットとなるならば、先生には黙っておいてあげる。でも、ここで土下座しなかったら、先生に見せちゃうから。………さぁ、どっちにする?」
私は勝ち誇ったような笑顔を作り、二人を睨んだ。二人は私を見て一瞬怯む。
……ふふっ、勝ったな。これを聴いたら、余程の馬鹿以外はここで土下座するだろう。あー、どんな風に痛ませてあげようかな。
あ、そうだ。新しい下僕相手も考えておかないと。そうだ、梨奈とかはどうだろう。あいつは気が弱くて断れないやつだから……。まぁいい。それはこいつらが土下座をしたら考えよう。
しかし、二人は一瞬怯んだものの、直ぐに表情が元に戻った。しばらくすると二人は私の見下したような目で見てきた。
一体何を考えているのだ?こんなことを忠告されて、笑っていられる奴なんて絶対にいないだろう?何なのだ、一体……。
「へぇー、奴隷にそんなこと、果たして出来るのかな?」
「口だけだったりして、ね」
二人は小馬鹿にしたように笑いながら言った。
「やれるならやってみなよ。まぁ、私達はあんたに沢山借りがあるから、どんなリスクがあろうがあんたを苛め続けるからね」
二人は随分と余裕な表情と声で言った。
この二人は相当な馬鹿なのか?こんなときに気持ちが余裕な奴なんて、焦るという考えがない程の馬鹿しかいないだろう。
「ま、私達は奴隷なんかに構っている暇はないんで。それじゃあ頑張ってねー」
二人は笑いながら教室を出ていった。
何を馬鹿にしている。先生に証拠を見せようと思えば、いつでも出来るのだ。そのぐらい一人でも出来るわ!
「やれるならやってみろよ」、か。ならば、その言葉に甘えて給食後に証拠を見せよう。
桜、澄恋。いまに見てろ。私はあんたらの奴隷でいるほど弱くないのだから!
おっと、もうすぐ授業が始まる。席に座っておかないとな。
私が席に座ると、近くにいた女子が私を待っていたように私に話しかけてきた。
「ねぇ、奴隷。次の授業私の分もノートとっといてよ」
その女子は、私の机にノートをドンと置いた。
ふんっ、誰が奴隷だ。私は今日で奴隷じゃなくなるんだ。もうすぐ奴隷じゃなくなるのだから、こいつらの指示なんて従わなくてもいいだろう。
「へー、どうしよっかな。引き受けようかなー」
私は馬鹿にした目でその女子をチラチラと見る。その女子はそんな様子の私を見て怒った様な表情をした。
「な、奴隷の癖にそんなこと言わないでくれる?」
残念だな。私はもう奴隷じゃないんだ。奴隷なのは桜と澄恋なんだ。
「言っとくけど、私はもうすぐ奴隷じゃなくなるんだ。だから私があんたらの言うことを聞く意味はない」
その女子は、更に眉間にシワを寄せる。
「な、なんなの?とにかく、私のノートとっといてよね!」
そう吐き捨て、女子は自分の席に戻っていった。
ふんっ、誰がとるかよ。散々私のことを奴隷のように扱いやがって。そんな奴のノートをとる意味なんてなかろう。意地でも取らない。
授業が始まり、私はさっき渡された女子のノートを机の中にしまった。そして先生が黒板に字を書き始めると、私は自分のノートだけを書いていった。
私は先生の話をしっかりと聞いてノートにメモしているから忙しいんだよ。ただのんびりと板書だけを書いているお前とは違うんでね。面倒なので二人分ノートなんて取るわけないだろ。
それに、私はもう奴隷ではないのだ。いや、正確に言えば昼休みまでなのだが。しかし、あとたった数時間だ。今更私があいつらの言う事を聞いて何になるという。
さぁ、気を取り直して集中して授業を受けるとしよう。
私は、いつも通り自分のノートだけを綺麗に取っていく。しっかりと先生の言う事と板書の書く場所を分け、赤、青、黒の三色のペンでまとめていく。しかし、さっきの女のノートには何もしない。
そういえば、さっき私の所にノートを置いた女は何をしているのだろう。ノートがないので何も書けない筈だぞ。
先生の説明が止んだので、私はさっきの女が座っている席をチラリと見た。
ふっ、教科書に顔を埋めて寝ているではないか。受験間近なのに馬鹿なやつだな。私の忠告も聞かずに本当に馬鹿。
そうだ、次の下僕は梨奈とアイツにするのも悪くない。頭の悪いアイツと、気が弱い梨奈なら、裏切られる心配がないからな。
まぁいいや。私は自分のノートを綺麗に取るだけだ。
先生の説明が再開し、私は再びノートを取っていった。
授業が終わると、さっきノートを置いて来た女子が腕を組んで私の前に立った。私は万が一の為に録音機のボタンを押す。
「ねぇ奴隷、私のノートちゃんと取ったわけ?」
さっきあれほど指図したのに奴隷と呼ばれるとは……。随分と調子に乗ってやがるな。こういう奴には、天罰を与えないと。
「してないよ。だって二人分のノートを取るなんてやりたくないし。私はやりたくないって言ったよね?」
ここで私がやりたくないと言ったところを録音しておけば、絶対先生はこいつを怒るだろう。……ふっ、良い気味。
すると、その女子は顔をしかめて言葉を発した。
「はぁ?なんで奴隷の癖に私の言う事を聞かなかったの?ふざけるな!」
女子が言葉を言い放ってから、私は録音機を止めた。
録音機を止めると、私はその女子のお腹を思いっきり強く叩いた。
「ごちゃごちゃうるせーな」
「なっ……何なの?!」
突然のことだからか、その女子は一瞬怯える。しかし、私がまだ奴隷なのだと思っているのか、その言葉からは強気な気持ちも感じられた。
「あのさぁ、私もうすぐ奴隷じゃなくなるって言ったよね?もし私がまたクラスの女王様になったらさぁ……あんたが下僕になってよ?」
女子はついに勇気が無くなったのか、その場を逃げていった。逃げながら女子はこう言った。
「意味わからない……。高梨と橘に報告しないと」
……無駄なのに。もうすぐあいつらはクラスの中で一番弱い部類になるんだから。本当に頭悪いな。
まぁいいか。もう給食の時間だ。もう少しで解放されるぞ。桜も澄恋も他の奴らも、今に見てろよ。
給食が終わった。今日は売店の日なので、私は給食の時間が終わると真っ先に教室へ向かった。
教室に戻ると、私は無意識に顔がニヤけた。皆にバレないように、私は手で口を覆った。
余程あいつらに天罰を与えるのが楽しみなのだろうか。なのでこんなにニヤけてしまうのだろうか。
顔のニヤつきが止まると、私は軽い足取りで職員室に向かった。
私は職員室に向かってる時も、あいつらからの苛めを報告したときの状況を想像せずにはいられなかった。うちの学校で苛めが起きて、先生やクラスメイト達がどんな風に絶望の底に落ちるのか考えたら、興奮せざるを得なかった。
あの二人の苛めを先生に報告したら先生はどんな反応をするだろうか。私を苛めたことか、自分の生徒が苛めをしていたこと、どちらにがっかりするだろうか。
ああ、そういえばクラスメイト達にはどんな風に天罰を降してやろう。取り敢えず梨奈とさっきの女を下僕にして……まぁ、詳細は後で考えればいいか。
職員室に向かってる途中で、校長の姿を見つけた。
折角だし校長に録音機を見せるか。クラスでは終わらせたくないから、担任の先生より校長に見せたほうが学校全体で問題になるだろうし。
「あっ、校長先生!あの………」
「里中!探したぞ。少し来い」
私の言葉を遮り、校長は私の腕を強く握ってぐいっと引っ張った。
なんだろう?また何か頼み事をされるのだろうか。腕まで掴んじゃって。もしかして校長に好かれてしまったのだろうか。ふふっ、可愛いと色々と面倒だ。
………と、いつもなら思っている所だが、校長の顔は酷く眉間にシワがよっており、とても怒っているような顔をしていた。
なんなだろう?私、学校で何かやらかしただろうか……?……嫌、やってないぞ。いつも先生の前ではいい子を演じているのだからな。それに、全く見に覚えがないぞ。
それでは何なのだろうか?もしかして、私に対しての苛めが発覚し、それで私を苛めたことに対してカンカンに怒っているのだろうか。……きっとそうだろう。他に思い当たることなど一つもない。
桜、澄恋。短い戦いだったな。見ろ、最後に勝ったのはこの私だぞ。
全く、とんだ迷惑だった。しかし、苛めの新しい計画を立てることができた。桜達のように、クラスメイトに口裏を合わせて待ち伏せさせた方が効率がよい。それだけは感謝してやろう。
だが、明日からは私が苛めをする時だ。いや、正確に言えばこの後話を聞かれて臨時の学級会が開かれた後、だ。
ほら、もう校長室が目の前に……。
私は校長と一緒に校長室に入った。
校長室に入るなんて初めてだな。きっと余程校長は怒っているんだろうな。
「なんでしょうか?校長先生」
私は姿勢を伸ばし、淡々とした口調で言った。
さーてと、何と言われるのかな。くすっ、今から楽しみ。
次の瞬間、校長が机を乱暴に強く叩いた。
「里中が苛めをしていると聞いたんだが……詳しく話してくれないか?」
……は?また桜と澄恋がチクった訳?こんなことするの……あいつらしかいないぞ。
でも大丈夫だ。私は先生方から信頼されている。上手いこと言えば誤魔化せるだろう。
「校長先生!私、何もしていません。苛めをしているというのもデマです」
凛々しい表情に、真面目な口調で言った。だがしかし、校長は更に険しい表情になった。
「嘘を言うな!お前が苛めをしていると言うのはお前のクラスの奴から聞いているんだ!!」
くそっ、執念深い奴め。何故私じゃなくてあいつらを信用する?これは少々説得に時間がかかるな。
続き、めっちゃ楽しみです!
頑張って下さい!
>>151
え〜どうなるんだろう?気になる!
>>152-153 ありがとうございます!
ええい!人間なんて涙でいくらでもごまかせるんだ!こうなったら嘘泣きをして落としてやるぞ。
私は顔を隠し、すすり声を出す。
「グスッ…………本当に、私は何もやっていないんです………」
どうだ、これできっと校長も理解しただろう。さぁ、どんな表情をしているのだろうか。
私は隠している手の隙間から、チラリと校長の様子を見る。その視界には、更に怒った様子の校長が映っていた。
「まだ薄情しないのか!お前のクラスの奴から証拠の写真まで貰っているんだ!」
そうして校長は机に写真を乱暴に乗せる。そこには梨奈を苛めた時だけでなく、小学一年生の時にやった苛めの写真まで置いてあった。
………桜と澄恋だ。こんなに証拠を集める事が出来るの、ずっと私のそばにいたあいつらしか出来ない。きっと、これ以上私を苛めたら桜と澄恋を苛めると忠告をした後にチクりやがったんだな………!
校長と話なんてしている場合じゃない。桜と澄恋を口封じしておかないと。急いで写真を奪わないと。そうしないとろくな事にならないぞ。
「里中!待て!!話はまだ終わってないぞ!」
普段は決して先生と話している途中に抜け出したりしないが、今は違う。私は素早く校長室を飛び出し、桜と澄恋の元へ向かった。
初めまして(*˘︶˘*).。.:*♡
156:みぃ◆VZbV1gU:2020/10/10(土) 16:40 >>155 初めまして!これからも見ていって下さい!
私は一気に二階へ駆け上がり、二人を探した。全力で体力を消耗している為、どんどん体力が減ってきているが、気にしない。廊下だけでなく、一組の教室や女子トイレも探した。
……あ、こんなところに!おのれ、あいつら……。許さんぞ!
桜と澄恋は三組前の廊下で二人でお喋りをしていた。私は話している桜と澄恋に遠慮なく話しかける。
「おい、桜!澄恋!お前ら、何校長にチクりやがってんだよ!」
私は二人の頬をビンタする。二人は一瞬びっくりしたが、直ぐに悪意のある笑顔を作った。
「クスッ……やっぱり怒られたのね。………皆ー、先生からも信用されなくなった奴隷に怖いものなんてないよー!!好き勝手やっちゃってー」
すると、クラスメイト達がどこからともなく現れてきて、ボキボキと関節を鳴らしている。そして、その中の体のでかい男子が私の襟を掴んできた。
「お前……今までよくやってくれたな。だが今のお前に怖いものなんてないんだよ!……さぁ、覚悟してもらおうか」
その男子はガタイがいい上に力も強いので、言いたいことも口に出せなかった。
嫌だ、何されるの……?お願い、私の綺麗な顔を汚さないで……。
その瞬間、桜が男子に呼びかけるように言った。
「ねぇねぇ、もうすぐ休み時間終わるからさ、今はやめとこ?」
「そうか。じゃあまた後で」
五時間目は技術の授業の予定だったが、体育館での学年集会にどのクラスも変更された。
きっと私の苛めのことを話すのだな。……はぁ、大げさな。あんなのただの遊びだっていうのに。なんでこんなに大事にするのだろう。
体育館に着き、私達は背の順で並んだ。すると前後から舌打ちの声が聞こえた。
「なんで奴隷の前なんだろ。凄いストレス溜まるんだけど」
「ていうか奴隷がいるってだけでストレス溜まるわな。だって元いじめっ子だからさ」
ごちゃごちゃうるせーな。私の予定では昼休みに先生に録音した声を聞かせて桜達の苛めについて学年集会を開く予定だったのに。
裏切られて苛められて、先生からも信用されなくなって……何してくれるんだよ。
ストレスのあまり私への苛めに加担している奴らを粉々に殴りたい所だったが、これ以上世間の評判を落とさない為に、今は大人しくしておこう。
学年集会には、学年の先生だけでなく、校長と教頭もいた。校長が前に出て、しんみりと話を始める。
「苛めは絶対にしてはいけない。苛めは物だけでなくその人の心まで奪う。ここにいる皆はそのような教育をされてきた筈だ。………しかし、この学年で小学生の頃から苛めをしてきた者がいると言うのだ」
うるせーな。綺麗事ばかり述べやがって。早く終わらせろよ。
凄い………どんどん破滅の道に進んでる!?
続きめっちゃ楽しみです!
>>158 ありがとうございます!
「三年一組、里中茉莉。お前は今まで、沢山の人を苛めて来たのだな。成績も良く、先生にもしっかりと挨拶をしていたお前が長い間苛めをしていたと言う事には……正直がっかりした」
何だよ、そっちが騙されたんだろ?騙されたお前が悪いんだろうがよ。何人のせいにしているんだよ、このハゲ教師。
「被害者の名前は伏せておくが…………」
その後も校長や学年先生方が何か話していたが、私はこの集会が開かれても反省する気は一ミリも無いので、適当に流していた。
だって、こっちは遊びのつもりだったし。苛めなんて遊びと同じだろ?何が違うんだよ。遊んでる最中に人が転んだりして傷つくことだってあるじゃないか。勝手に物事を大きくしたのはそっちだろ?
「話は以上だ。皆も今後、里中のように人を傷つけることのないように」
いつの間にか話は終わっていた。
ふぅ、やっと戻れる。ずっと立ちっぱなしで痛かったぞ。
帰り際、前の子にボソリと耳元で囁かれた。
「奴隷、反面教師になったら?奴隷が反面教師になったら、いい人が沢山出てくるよー?」
うるせーな。私のした事は間違っていない。そんなことで怖がるお前らの気持ちが弱いだけだ。
「苛めなんて遊びと同じ」という考え方を持つ
主人公、茉莉が怖いなと思いました。
(ストーリーも現実味があるし)
いつもハラハラしながら読ませて頂いています!
続き期待です!
くそっ、私はまだ諦めないぞ!絶対、後残り約二ヶ月の間に桜と澄恋に復讐し、私がまた学校の女王様になってやる!
帰り際にそんなことを考えていたら、良い事を思いついた。
それは、梨奈を下僕にして梨奈にあの二人の悪い噂などを流して孤立させ、梨奈に二人を苛めさせるという作戦だ。そして私は自分の手は汚さず陰で梨奈に苛めの指示をするつもりだ。
私が苛められる様になってからもあまり私に対しての苛めに加担していないし……きっとそのぐらい勇気のない奴なんだろう。なので、こちらが何か命令すれば、きっと断れないだろうと思った。
それに、今回のように自分が前に出て人を苛めると、証拠を集められる可能性が大いにある。なので私は自分より価値がなくて弱い人間を使うのだ。
休み時間、私は皆に見つからないように梨奈を探した。誰かに目をつけられると苛められてしまうので、なるべく急いで梨奈を探す。
………待てよ、高校に行けば皆バラバラになる。今いる奴らで遊ぶのは次で最後なのだし梨奈のことも絶望の底に落としたい。……そうだ、写真を集めて卒業式の日、誰かに写真を提出して貰おう。写真を提出する下僕を誰にするかは後で考えよう。
あっ、あんなところに!……相変わらず醜い顔しているなぁ。
私は水道で水を飲んでいる梨奈を見つけた。梨奈の地味な緑髪と丸眼鏡は直ぐに分かる。
「ねぇ、ブース子!」
私は梨奈の容姿を煽るように笑顔で梨奈の背中をポンポン叩く。
「あのさ、あんたも知ってると思うんだけど、私今苛められているんだよねー。しかも、相手はずっと下僕にしていた桜と澄恋だよ?」
「はい、知ってます」
梨奈は半月前と変わらない暗いトーンで話す。
「それでさ、あんたにお願いがあるんだよね。ブス子が私の下僕になって、私が色々と指示を出すからさ。桜と澄恋に嫌がらせをして二人を孤立させて復讐しようと思ってるんだけどさ……どうよ?」
答えはもう予想済みだ。自分の意見が言えない梨奈なら、絶対に嫌と言えないだろう。
さぁ!今から私の下僕になって、汚れていくがいい!
ところが、次に梨奈が口にした言葉は思いもよらないことだった。
「無理です。ごめんなさい」
………は?どういうこと?何でこいつが首を横に振るわけ?
私は強く拳を作った。拳を握る強さに、自分の怒りが表れている。
「な、なんでだよ!ブスの癖に……ふざけるな!」
感情的になっている私に対して、梨奈はそんな私を見ても冷静だ。その冷静さは、まるで怒っている私を馬鹿にしているような雰囲気だった。
「私、茉莉さんに苛められたせいでかなりストレスが溜まりました。なので、そのような思いをした苛めとは関わりたくないんです」
なんだよ、何も断れなかった癖に。調子に乗りやがって!
その様な発言をしている癖に、何故私の苛めは助けない?………ようし、そこの弱みを握ってみよう。
「じゃあなんで、私がいじめられているのに助けないわけ?ブスなんだからこういう時ぐらい頑張らないと駄目でしょう?」
すると、梨奈は首を大きく横に振った。
「貴女が反省していないからです。貴女以上に、私達は辛い思いをしました。私達の気持ちが分かってからまた来てください。」
なるほど。じゃあ反省している素振りを見せればいいのだな。演技なら私は得意だぞ。
茉莉がなんだか可哀想にみえてきますね、、
いじめはいけないですが、返すのもだめだと感じました……
校長は茉莉が人をいじめていたということをみんなの目の前で言っていて、校長も茉莉をいじめている気がします………
茉莉は毒親(みたいなもの)と暮らしてきたから少しだけ可哀想ですね……
茉莉を応援してしまいます><
>>164 ありがとうございます!
私は深々と頭を下げる。
「うん。反省している。自分がやられて、苛められる辛さを思い知ったよ。だから、裏切ったあの二人が許せない。だから、あの二人に対しての復讐を手伝って欲しいんだ」
「もし復讐に成功したら、梨奈の為に何でもしてあげる」と、私は付け加える。
フッ、勝ったな。こんな演技を見れば、誰だって引き受けるに決まってるだろう。
まぁ、これは梨奈を誘い込む為の演技なので、勿論反省なんてしていないし、梨奈のために何でもするわけでもない。桜と澄恋への復讐が成功したら、梨奈のことも追い込むつもりだ。
ところが、梨奈はまたも首を横に振った。
「嫌です。これは私を誘い込む為の演技ですよね?しっかりと反省してから出直して下さい」
そうして梨奈は、その場を走って去っていった。
……は?何であいつごときが私の魂胆を読めるの?何であいつなんかが私に逆らうの?許せない……。
梨奈に逃げられない為に、今は逃しておこう。だが、次はこうは行かぬぞ。次は梨奈を脅して、無理矢理やらせてやる。でないと今の梨奈はきっと逃げてしまうからな。
土曜日、私はぼんやりとベッドから起き上がり、朝食を食べる為に下へ降りた。
私は下へ降りてきてリビングに入った瞬間、母親に頬を叩かれた。すると、母親は私を見て泣き出した。
母親が私を殴るとは、珍しいな。父親が私のことを殴っていても、見て見ぬ振りをしているのに。何朝から情緒不安定になっているのだ。こっちまでイライラする。
母親はしばらくその後泣き続き、ある程度落ち着いたら中身が沢山入っている、分厚い封筒を三枚ほど机に出してきた。
「あんたが………小学校の頃から苛めをしているという手紙と写真が昨夜に届いていたの!」
…………嘘だろ。あいつら、こんなことまでするわけ?こんなこと親に知られたら、絶対もっと殴られるだろ?こんなことするの、私の家庭のことも知っていて証拠の写真も持っている、桜と澄恋しかいない。
あいつら、まさかこんなことまでする奴だとは思わなかった。私を裏切ってここまで追い詰めるなんて……最低。絶対梨奈を下僕にして、復讐してやる!!
母親は、とうとう我慢していた涙が溢れ出るように流れ出て、感情的な態度になる。
「あんたは、昔から…………幼稚園の時から苛めをして……………また同じことを繰り返して………自分の子供として恥ずかしい!!!」
……え?私が、幼稚園の頃に苛め……?この人、何言っているんだ?
「……………」
意味が分からず、私はその場に固まる。
「ねぇ、まさか、忘れた訳ないでしょうね!?」
そう言われても、私はなんの事かさっぱり分からないのでその場で黙る。
本当にこの人は何を言っているのだろう。幼稚園で苛めなんてしていないぞ?感情的になったからって八つ当たりしないで欲しい。
「………………」
誰も話さないので、当然沈黙が続く。しばらく沈黙が続くと、母親がとうとう話しだした。
「ああ!もう!やっぱり覚えてないのね!じゃあ思い出させてあげる!さっさと来なさい!」
母親は私の手首を思いっきり掴んで私の腕ををぐいぐい引っ張り、私の事を無理矢理どこかへ連れて行った。その時の母親の表情は、普段の私に無関心な感じの表情でなく、酷く険しい表情だった。
今までで一番面倒だ。自分が感情的になったからって私まで巻き込みやがって。私は梨奈を説得したり、桜と澄恋に写真をこの親に送ったことに文句を言うなど、まだまだやることが沢山あるというのに。私を傷つけている親共に付き合っている暇なんてないんだよ!
展開が読めず、ハラハラして凄く面白いです。
これからも読みます。
>>168 ありがとうございます
私は母親と共に二階へ向かい母親の部屋に入った。母親は自分の引き出しの中から数枚の写真と二枚の手紙を出してきた。
「この写真はあんたが幼稚園の時にやった苛めの証拠写真で、この手紙はあんたが苛めていた生徒の保護者からの文句の手紙!」
そこには、小さい頃の私が女の子を泣かしている写真があった。その女の子が誰なのかは思い出せない。
他にも、私が物を壊していたり、女の子に傷をつけている写真などがあった。
「あんたのせいでこの子は『幼稚園に行きたくない』とまで言い出して……。それからお父さんも全然お酒なんて飲まなかったのに毎日の様にお酒を飲むようになって、性格も荒々しくなって……」
母親は目に涙を浮かべながら、荒々しい口調で言った。
次に母親は、もう一つの幼い字で書かれた手紙を見せてきた。
「こっちはあんたが昔書いた謝罪の手紙!手紙を書いたから修まると思ったら、またあんたが苛めをして卒園まで続けて……。だから私もあんたに愛想尽きちゃったの!!」
ふんっ、愛想尽きたなら構ってくるなよ。鬱陶しい。
少しずつだが、その時の記憶が蘇ってきた。
そうだ、父親も母親も昔は優しかった。よく三人で出かけ、家族の仲も良かった。しかし、ある日を境にして私は暴力を受けるようになり、家族の仲は悪化していった。
そう言えば、昔女の子を仲間外れにして楽しんだこともある。……そうか、それが母親の言っている苛めなのか。
「今まであんたのことなんて放置していたけれど、人様を傷つけるなんてことは許せない!何度も苛めを繰り返して………」
次の瞬間、母親が机をバンと叩き、聞いたこともない大きな声で怒鳴り散らした。
「あんたなんてもう、顔も見たくない!!!早く出てって!!」
うわ!何なんだよ。びっくりするじゃないか。こんな大きい声なんて出されたら。朝から怒られているこっちの身にもなれよ。
私はあまりにもびっくりし、ここにいたら更に怒鳴り散らされそうなので、朝食も食べずに反射的に家を出た。
空は曇っており、それは今の私の状況を表すかのようだった。
幼稚園の頃に苛めをしただと?ふんっ、それがなんだって言うんだ。幼稚園児の苛めなんて、子供の喧嘩だろ?校長も母親もクラスメイトも、いちいち大事にしないで欲しいんだよね。
それに、親なら子供が何をしようと子供には優しくするのが普通だろ?勝手に私にガッカリして性格が変わったのはそっちだろ?だからうちの親は嫌なんだよ。
家を出たとはいえ、何も持っていないので買い物などにも行けない。一体どうしたらいいのだろう。
……そうだ、梨奈のアパートに行こう。梨奈を強引に説得し、今日こそ梨奈を下僕にするんだ!
頭の中でそうと決まると、私は鼻歌を歌いながら梨奈のアパートへ向かった。
ピンポーン。私は梨奈の部屋のインターホンを鳴らす。
「はーい。どちら様?」
梨奈のお母さんらしい人が出てきた。
「佐崎梨奈さんのお友達の、里中茉莉です。梨奈さんに会いたいので、開けてくれませんか?」
すると、梨奈のお母さんがアパートのドアを開ける。私は中に入ると、「お邪魔します」と礼儀正しくお辞儀をし、綺麗に靴を並べる。
まさか親がいるとは思ってなかったぞ……。こんな中途半端な面積で一階建てのアパートで強引に説得なんてしたら、親に聞こえるかも知れない。さて、どうする?……取り敢えず、梨奈を探そう。
私の家と違い、アパートなので見つけるのも容易そうだ。これなら早く見つけられそう。
梨奈は、奥の方の和室で折り紙を折っていた。和室は梨奈の祖父らしき人と幼い梨奈が写っている写真があるので、きっと祖父の部屋なのだろう。折り紙を折っているのも梨奈の祖父が好きだったのだろうか。だから梨奈が継承しているのだろうか。
そんなことはさておき、私は折り紙をしている梨奈の腕を無理矢理掴んだ。そのせいで折り紙が多少ぐしゃりとなってしまったが、そんなことは気にしない。
「こんにちは、梨奈!ちょっと梨奈に話したいことがあってさー」
さーて、腕を掴んで話しかけたはいいがどうしよう……。
そうだ、外に行って話そう。アパートの駐輪場なら誰もいないから大丈夫そうだ。それに、私も梨奈もそれほど体格が言い訳ではないので、見つかってもただの喧嘩と思われるかもしれない。
「すみません、少し梨奈さんと外で遊んでいきますね」
私は梨奈の母親にそう伝え、梨奈と一緒に外へ出た。
私は駐輪場に着くと、梨奈の胸元を引っ張った。
「おい、ブス子!とっとと私の下僕になれよ!じゃないと私がまたあんたを苛めちゃうよー?」
「あんたを苛める」というのは、下僕にさせる為の脅しだ。こいつで遊ぶのも飽きたので、次は何がなんでも桜と澄恋を苛めようと思っている。
バンッ!私は梨奈を怯えさせるために、梨奈の顔すれすれの所で地面を叩く。ここら辺ではあまり見かけない土の駐輪場だったので、手は多少汚れたがそこまで痛くなかった。
「なに黙ってるんだよ?すぐ応えないと……こうするぞ!」
私は梨奈の目を目がけて殴る振りをした。
「ほら、早く!トロいんだよ、このブス子がよぉ!」
いい加減早く首を縦に振るなり「はい」と言うなり応えろよ。そろそろ喉が乾いてきたから、私はフードコートで水を飲みに行きたいんだよね。
しばらくすると、梨奈はまた首を横に振った。
………何故?これだけ脅したというのに。話の分からない奴め!
こういう甘い考えの奴には、痛い目を見させないとな。女王様である私に逆らった罰だ!
さっき脅した通り、私は梨奈の顔をグーで殴りかかる。
しかし、梨奈が私の手を抑えたため、私は梨奈を殴ることができなかった。
「茉莉さん、私、言いましたよね?やりたくないと」
梨奈はスッと立ち上がり、喋り出す。
「この際なので、言わせて貰います」
何?何を言うわけ?こいつがこんなに自分の意見を貫くなんて……地球が滅亡でもするのだろうか?私はそのぐらい驚いた。
「私、茉莉さんに散々苛められて辛かったです。なので、いじめというものにはもう関わりたくないのです」
は?だったら今の私への苛めも止めろよ?言葉が矛盾しているではないか。……よし、そこを突いてみよう。
「ですが……………」
私が言い返す前に、梨奈が口を挟む。
全く、タイミングの悪い時にいいやがって。まぁいい、最後に勝つのはこの私なのだから。こいつがどんなに抵抗しても、私に勝てるわけないだろう。
「茉莉さんは、全く自分のしたことに反省していません!!貴女のような考えを持っている人がいる限り、この世に苛めは無くなりません!!!」
梨奈は、私が今までで聞いたことのないぐらいの大きな声で言った。
「貴女のような考えを持っている人がいる限り、この世に苛めは無くなりません」……?何故私の考えを否定する?人の考えなんて人それぞれだろ?苛めと遊びが同じだと思っていることの何が悪い!こいつは人の人権を侵害している!
「ですが……」と、梨奈はさっき大声を出したとは思えないような冷静な口調で言葉を続ける。
「茉莉さんに感謝していることもあります。それは茉莉さんが、私が意見を言えないからと、私を苛めてきたことです」
ふんっ、そうだ、もっと感謝しろ。私のおかげで、こいつは強くなれた。もっと感謝しないとおかしいだろう。
「ですが、その分必要以上のストレスも与えられました。毎日何されるのか分からなくて、辛くて、怖かったです……」
梨奈は少し悲しげな表情で言った。
だから何なんだよ。私がそういう思いをさせた分強くなれたんだろ?感謝しろよ!
私はそんな梨奈の主張を無視して言う。
「それがなんだって………」
「なので、そんな恐怖を与えられた茉莉さんとはもう会いたくないです!私の前から消えてください!」
梨奈が私の言葉を遮った。
何、こいつ。ブスの癖に私に反発した上に、私に消えてほしいだの色々と言いやがって。こうなったら暴力で勝ってやる。頭や顔、首やお腹など、色々な所を梨奈が下僕を引き受けるまで殴ってやる。
しかし、私が殴りかかる前に梨奈はその場から逃げ出した。私は梨奈を拳をつくって追いかける。
「ブス子!待てよ!」
しかし、梨奈は思った以上に速いスピードで階段を駆け上がり、自分のアパートに逃げていった。
私は当然のようにアパートの部屋のインターホンを鳴らす。しかし、インターホンには誰も出てくれず、鍵もかけてあった。
そ、そうだ!梨奈の家の前でやったのが行けなかったんだ!これは少々焦りすぎたか……。こうなったら登校中に梨奈を捕まえて下僕にさせるしかない!今日はとりあえず諦めよう。
くそ、桜も澄恋も梨奈も他のクラスメイトも、好き勝手やりやがって!裏切られて苛められて先生から信頼されなくなった挙げ句、親に苛めがバレて梨奈に反発されて……最近本当にろくな事がない!
喉が乾いてきたので、飲み物を買うために私は財布を取りに家へ向かった。
そろりそろり……私は家に入り、母親に気づかれないようにひっそりと自分の部屋へ向かった。
「あんた!!ちょっと来なさい!」
階段を登っていると、下から母親の声が聞こえた。
ったく、私の顔も見たくないって言ったのは誰なんだよ。言っていることとやっていることがめちゃくちゃじゃないか。
「……何?」
私は階段を降り、素っ気ない声で返事をした。
「さっき、受かっていた高校から推薦を取り消すという電話が来たわ!高校に苛めの写真が送られていて、『人を傷つけるような生徒を入れることは出来ない』、と」
なんだって!?折角推薦で皆より早く合格したというのに!なんてことをする!
……校長か桜達しかいない!こんなことが出来るのは!だって、私の苛めの写真を持っているのは、あいつらしかいないんだから!
まずは桜と澄恋から写真を奪わねば!あいつら、これからもきっと何枚も写真を現像して、私に嫌がらせをするに決まってる!
「待ちなさい!あんた!」
私は財布も持たずに家を飛び出し、桜と澄恋の住んでいるマンションへ向かった。
ピンポン、ピンポン、ピンポン。私はダッシュで桜と澄恋のマンションに行き、桜の家のインターホンを連打する。いつもは桜の親の目を気にしてインターホンを連打することなんてなかったが、今はそんなことをしている暇はなかった。
ガチャリ。桜がドアから出てくる。
「うわっ、奴隷じゃーん。どうしたの?あんまり近寄られるとばい菌が伝染るから近寄らないでねー」
なんだその言い方は!人をばい菌扱いしやがって。そんなこと言うなら桜に近づいたらこっちだってずる賢さが伝染る!
「あははー、まぁ入ってよ。沢山あんたのことをけなしてあげるからさ。まぁ、あんたと一緒にいると私まで奴隷になるかもしれないから、あんまり長居しないでねー」
うるさい!今はそのような話を聞いている暇はない。こいつから写真を奪わねば!
私はイライラを桜にぶつけるように、桜の胸ぐらをぐっと掴む。
「あんた、よくも高校にあの写真を送ってくれたな……」
「あ、推薦取り消されたんだー。よかったね、あんたがいなくなったことであんたが惹かれていた高校の魅力が軽減されないまま守られたんだから」
桜は私を煽るようににっこりと笑う。
私をバカにしやがって!今に見てろよ、絶対に見つけてやるから!
「あんた!今すぐ写真を返しなさい!これ以上好き勝手にはさせない!」
私は怒りで息を荒くする。そんな様子の私とは対称的に、桜は余裕のある涼しげな表情をしていた。
「あはは!よく私の所に来てくれたね。奴隷の望んでいる写真は私が預かっているよー」
桜は私をからかうように笑う。
なんでこいつは、こんなときに笑える……?普通だったら、自分でこのような秘密を言ってしまったら戸惑うに決まっているのに!
「でもさぁ、奪ってどうするの?あんたがいじめをしたことに関しては何も変わらないんだよ?」
黙れ!こんなことで怯む私じゃない!今までのことを取り消すことは出来ないが、これ以上事実を広めないことは出来る!
「うるさい!これ以上事実を広ませないためだ!さぁ、早く写真を出せ!」
そう言っても桜の表情は変わらず、冷静なままだった。
「ははっ!だったらあんただって人の個人情報とか人の失敗を皆に広めていたよね?それと同じだよ」
おのれ!こいつと話すと色々な屁理屈を言われるので腹が立つ。
これだと何を言っても屁理屈を返されそうなので、私は桜の家を出た。
「奴隷、もう耐えられなくなったのー?まぁ、私にとってはこれで満足だけど!」
ふん、今はあんなのは無視しよう。少し最近感情的になりすぎているかも知れない。一回落ち着いて、次の作戦を練ろう。
私は家に帰ると、更に家の中で孤立するようになった。
今まではリビングで食べていた食事も、今日からは母親が私の部屋の前に置いたものを勝手に食べるようになった。その上父親からの暴力も止まり、私は完全に見捨てられた。
なんなの?この食事の仕方は。私をペットみたいに扱いやがって!親の癖に私を見捨てやがって。親だったら私が何をしようが優しくしろっての!
全く、感情的になったらあいつらの思う壺になるから表で感情を爆発させることもできない。
しばらく食べていると、母親が部屋に入ってきた。
「あんた、高校はどうするわけ?」
そうだ、高校……。待てよ、私が二番目に希望していた高校は確かまだ試験が開催されていない筈……。
「第二希望の高校を受験するつもり」
私は母親を見ずに食べながら言った。今態度を悪くしても、どうせもう叩かれることもないと思うから。
「そう。自分で何とかしてよね。あんたはもう、うちの子じゃないんだから」
そうして母親は出ていった。
……待てよ?見捨てられたってことは、もう叩かれることも怒られることもないってことだろ?じゃあ、何をしてももう怒られない。また私がいじめをしても……。
そうだ、私は家庭の中で自由なんだ、自由になれたんだ!
そうだ、私はこれから何をしても怒られない。つまり、何をしてもいい。それなら、また苛めをしても家庭で怒られることはない。だから、苛めをしても先生にバレなければ大丈夫なのだろう。私はそう思うと、突然何かから解放されるような気分になった。
私はご飯を食べながら、頭の中で桜と澄恋の写真の件と、梨奈をどうやって説得するかを考えた。
まずは冷静にならないとな。冷静にならないと、桜と澄恋の思う壺になる。それに、感情を表に出して梨奈を説得すると、梨奈がビビってしまう。
そうだ、まずは冷静に。後のことは物事を冷静に捉えられるようになってから考えよう。頭に血が登っている時に考え事をしても、ろくな事を思いつかない。
落ち着くんだ、私……。私は女王様なのだから、きっと勝てる……。
私は自分に冷静になるように言い聞かせると、一人寂しくご飯を食べた。
「あー、奴隷が来たー」
クラスメイトの中の一人が、私が教室に入ってきたところを指差す。
「高梨、橘。今日の最初のお仕置きはどうするの?」
「普通の暴力じゃ物足りないからさ、誰かが奴隷に馬乗りして二階の廊下を一周して貰おうよ」
冗談じゃない。中学生の平均体重がどれくらいなのかこいつらは分かっているのか?わかっていてやっているなら……それはあんまりだ。なんで私がそんなことされなくちゃいけない訳?
……でも、今感情を表に出すとあいつらの思う壺だからな。今は我慢しておこう。今だけは。
「じゃあさ、高梨と橘がやってよ。二人が奴隷いじめのリーダーなんだからさ」
「わかった。皆の分までしっかりとお仕置きしておくね」
は?なんであいつら?私が今一番嫌いなやつに乗られるなんて……。でも、今は感情を出すことも首を横に振ることも出来ない。本当に面倒くさい。
近くにいたクラスメイトが私を四つん這いにさせて、その上に桜と澄恋が乗る。
……重い。二人ともそこまで太っていたりガタイが言い訳ではないが、やはり中学生二人に乗られると重い。
「ほら、奴隷。早く進んでよほら、急いで!」
二人は私を本物の馬のように扱い、私をべしべしと叩く。
くそ、馬じゃないんだから叩かれても早く走らないっての!
キャスフィにいた、まりんさんですか?
182:愛羅 あいちゃん:2020/11/10(火) 18:51 >>181
キャスフィにいる橋本さんですか?私は「優芽」って名前でやってました(もう卒業したけど)。
まりんさんはこっちだと思います。
https://ha10.net/novel/1590721010.html
https://ha10.net/novel/1589930492.html
https://ha10.net/novel/1592039149.html
はいそうです。
184:橋本:2020/11/12(木) 21:12はいそうです。
185:みぃ◆VZbV1gU:2020/11/15(日) 18:32 「はい、遅ーい。もっと早く走って」
相変わらず二人は私の体をべしべしと叩く。
くそっ、そんなに早く走って欲しいなら降りればいいだろ?本当に面倒くさい。こいつらが大人しくしていれば……。
「おい、奴隷。降りろ。水が飲みたいんだよ」
奴隷はどっちなんだよ。自分の立場を理解せずに女王様気取りしやがって!本当だったら私が女王様でこいつらが奴隷なのに……。
澄恋は、口の中に水を入れると、その水を私の顔に吹きかけてきた。
私の綺麗な顔を汚しやがったな……。許さない!本当だったら今すぐ殴りたい。だが、今感情的になったらこいつらの思う壺だからな………。全く、こいつらのせいで自由を次々と奪われて本当に意味がわからない。
「あっははは!あんたのその『苛めは遊び』だという汚い考えから目を覚ましてあげたから!感謝してよね?」
何が感謝しろ、だ。いじめと遊びが同じだと思っていることの何が悪い?人の考えなんて人それぞれだろ?そんなこともわからないなんて、頭の中小学生かよ。
「あ、あと三十秒ぐらいでなりそうじゃない?チャイム」
すると、桜が私のお腹を踏んづけてきた。
「じゃあ、私達は先に帰るから。じゃあね」
そう言って二人は私を置いて走って教室に戻っていった。
私は腰の痛さもあってか、二人はチャイム着席に間に合ったのに、私はチャイム着席に間に合わなかった。
「里中さん!チャイムはしっかりと守って下さい。この間まで苛めをしていたというのに……まだ反省していないのですか?」
うるせーな。最近まで私の事を信用していた癖に、何手の平返しているんだよ。……以前は泣いて上手いこと言えば大抵のことを許されていたが、今の状態じゃあ私の言い訳も通用しないだろう。
全く、あいつらのせいで私の道はどんどん壊れていって……本当に迷惑。早く復讐の方法を見つけないとな。
「はい、すみません。以後気をつけます」
私が苛めをしたということは先生方にも知れ渡っている。なので先生の中での私の評価をこれ以上下げないために、先生の前では大人しくしておこう。
「里中は本当に反省しているのー?」
「苛めをした挙げ句チャイム着席に遅れるとか……調子乗り過ぎ!!」
皆が私をからかっている。
ごちゃごちゃうるさいな。こっちは一ミリも悪くないのに。私の楽しみを潰したお前らが何を言う。
「こら、貴方達もはやしたてないの!」
そうして私は皆から罵声を浴びせられながら自分の机に向った。
茉莉ちょっと可哀想…
でも、自業自得だよね…
>>187 ありがとうございます
席に着くと机の中に色紙が入っていた。中身を見てみると、そこには「しね」や「クズ」などの私を中傷するような単語が寄せ書きされていた。
酷い、どうしてこんなこと……。あいつらにこんなことする権利なんてないのに。
「生きる意味無し」や「害虫」など、私を邪魔者扱いをするような言葉もあった。
どうしよう、この色紙。………そうだ、梨奈の机に入れて嫌がらせしよう。梨奈が私の下僕にならないと、毎日梨奈に嫌がらせをする……。いいじゃない。これなら絶対に梨奈も諦めてくれるだろう。
私は桜と澄恋に感情を読まれないように、できる限り冷静を装った。
最初からこうしておけばよかった。これなら、嫌がらせを受け続けられるか苛めをするかの二択だからな。皆、自分が嫌がらせを受けられるより、苛めをする方がよっぽど楽しいに決まっている。誰かを傷つけるというのは、人生の最高のスパイスだから。
そうだ、梨菜に対してのメッセージも書いておこう。
私は筆箱からメモ帳を取り出して一枚千切り、シャーペンを走らせた。
「梨奈へ
これ以上私に反発したら私があんたに嫌がらせをする。嫌なら私の下僕になりな。 茉莉」、と。こんな感じでいいかな。
私は他のクラスメイトに見つかると色紙を取り上げられると思ったので、こっそりと梨奈の机に入れた。
……よし、無事に入れられたぞ! 後は梨奈が私の下僕になるだけだ。
さっさと私に従っていれば良かったのに、ずっと反発していた梨奈……なんて生意気なのだろう。梨奈を下僕にしたら、梨菜にきつく説教しなきゃ。……そうだ、梨奈を下僕にしたら梨奈のことも陰で苛めよう。
私が心の中で一人ウキウキしていると、突然クラスメイトに後ろから背中を蹴られた。私は反射的に後ろを向く。
「何? お前の体があったから蹴っただけだけど?」
私の背中を思いきり蹴った男子は、余裕な表情をしてその場を去っていった。
ああ、もう! どいつもこいつも生意気な奴ばっかり! ……もう、梨奈には桜と澄恋以外の奴らも苛めさせよう。
絶対に私の手で、こいつらを絶望の底に落としてやるんだから……!
はじめまして!!小説すごく面白いです^-^
梨奈ちゃんがかわいそう、、、
「止めてください! これ以上私に近づかないでください!」
私が梨奈の机に色紙を入れた後、私に向って叫んてきた。
「私、言いましたよね? 下僕にはならないと」
下僕にはならない? これ以上近づくな? ふん、ブスの癖に何調子に乗ったことを言っている?
私の中で何かが切れた。
気づくと、私は梨奈のお腹を蹴り飛ばし、馬乗りになっていた。
「下僕にはならない? これ以上近づくな? ブスの癖に生意気なことを言ってんじゃねぇよ!! お前や桜や澄恋、それ以外の奴らは本来なら私の奴隷であるべきなんだよ! なのに最近私の下僕共は私を苛めるし校長に私がやったことをバラすしよぉ……。こんなのは本当ならあってはいけないんだよ!」
はぁ、はぁ……。怒鳴ったせいで、私の息は荒くなる。
もう、面倒な作戦とかも一切立てない! 私はもう、ただ手当たり次第にこいつらを苛めていく!
「だからよぉ……ブス子も桜も澄恋も、最近調子乗り過ぎなんだよ。だから、これからな私を傷つけた人全員の事を手当たり次第苛めるからな!」
私が言い終わると、一つの影が私達の前に立ちはだかった。
>>190 ありがとうございます
「ふーん。やっぱり奴隷は私達の事を下僕としてしか見ていなかったのね」
桜が立ちはだかった。その後ろに澄恋もいる。
しまった! 梨菜に気を取られていて周りを全く気にしてなかった………!
どうしよう、今の話聞かれたよね?
「私達の事を苛めようとしていたなんて、最低ね!」
うるせーな。私の何が悪いんだよ。最低なのは下僕の身分で私にはむかったお前らだろ?
「澄恋、こいつにどんな罰を与える?」
「そうね、それなら………」
二人が何かを話している。コソコソと話しているが、私にはしっかりと聞こえた。
……ふざけるな! 何が罰を与える、だ。何故私が下僕共に苛められなきゃいけない?
私は、クラスでカースト最上位の女王様だ!!!
「やっぱり、もっと苛めの強さを上げるしか無さそうだね」
澄恋が口にした。
苛めをもっときつくする? ふざけるな。何故スクールカースト最上位の女王様である私が下僕共を苛めただけでこうなった?
私は苛めをしても良い人間なのに……。許せない。
それから私は、本格的にクラスの奴隷になった。
今私は、机の中にゴミを沢山入れられ、油性ペンで机に「しね」「クラスのゴミ」等の悪口を掛かれた。そして、落書きをクラスにある洗剤で消し終わるまで、私は蹴られたりゴミ箱のゴミを投げつけられたりする。
「早く消し終われよ! ずっと蹴っている私の気持ちも考えろよ!」
間違えて途中で送ってしまいました🙇
私は強く蹴られる。その様子を見ている他のクラスメイトは、遠くで私を見てクスクスと笑っている。
そして横からはゴミを投げつけられ、おかげで私の制服にホコリが沢山ついている。
そう、私はターゲットになった。
もう、スクールカースト最上位にいた面影なんて無い……。私は一瞬でスクールカースト最底辺になった。
私がスクールカースト最底辺に落ちたおかげで、クラスの隅で細々と生きている奴らは急に教室の真ん中で調子に乗り始めた。スクールカースト関係なく、皆が敵になった。
私がクラスの奴隷になったことは桜と澄恋のせいでクラスの外にも一瞬で広まり、歳やクラス関係なく苛めていた私はクラスの外の人達からも睨まれるようになった。
なんで私がこんな目に……。私は何も悪くないのに。私の下僕達が大人しく私に従っていれば……。でも、今反発したらもっと酷い苛めが待っているんだよね。
桜も澄恋も、本当に許せない。様子を見計らって、タイミングが良い時に絶対に復讐してやる……!
休み時間、私は携帯を眺めていると、一つのニュースの記事が目に入った。
なんとそこには、私が苛めをしていたというニュースがあったのだ。
そのニュースには、私が唯一自殺にまで追い込んだ百々麻莉奈の事を中心に書かれていた。
百々麻莉奈を私が死なせた事、他にも何十人者人を苛めていた事など。とにかく分かっている分だけ書かれていた。私の顔写真も載ってあり、私が苛めをしたという事は誰が見ても分かる内容だった。
これもきっと、桜と澄恋の仕業……。だって、これらの写真、桜と澄恋の顔だけ上手く切ってあるから。絶対にあいつ等しかいない。
なんで自殺に追い込んだだけでこんな事書かれないと行けないんだよ。確かに百々には色々と遊ばせて貰ったけど、勝手に自殺したのは百々の方でしょ? あんな事で死ぬなんて思ってなかったし、あいつのメンタルが弱すぎなんだよね。
もう終わった事をどうしてあいつ等はネットに載せるのかな? 私は怒りを通り越して悲しみの気持ちで溢れた。
桜も澄恋もそうだけど、百々もふざけるなよ。お前が死ななければネットに挙げられる事もなかったかもしれないのに。お前のメンタルが弱いせいで……。私の遊びで死んだやつなんて、お前以外はいないんだよ!
さて、このニュースの記事をどうしよう……。早く消さないと大変な事になるぞ。いち早く記事を消す方法を探さないと。
そんな気持ちで携帯をいじりながら帰っていると、横から強くボールが当たってきた。
痛いなぁ……。誰がやったんだよ! 私には今こんな事をしている暇はないんだよ!
「やーい、人殺しー」
「おいおい、あまり近づくなよ。俺らまで殺されるぞ」
後ろを振り返ると、そこには近所の小さい男の子達がいた。
なんだよ、人殺しなんて。私は人を殺したなんかいねぇよ。あっちが勝手に死んだんだろ?
その瞬間、私は心臓が大きくドクンと鳴った。
待てよ、何故あの餓鬼共は私の事を人殺しと行ったんだ……? もしかして、もうあの事件の事が全国に広まっているのか?
嫌な予感がして、私は走って家に向かった。
私の勘違いであって欲しい……。何故私がこんな目に会わないといけないのか……。全く理解が出来ない。
私は悪くない。悪いのは勝手に死んだ百々の方……。
そう自分に言い聞かせた。
息を荒しながら家に着くと、そこには数台のパトカーが止まっていた。
う、嘘でしょう……? 悪い予感が当たっていたなんて……。この光景を見たら、信じがざるを得なかった。
家の前に立つと、そこには数人の警察官と両親がいた。一人の警察官がこちらに気づくと、両親がこっちを睨んできた。
「君は、里中さん家のお嬢さんかな?」
一人の警察官がにっこりと聞いてきた。私はその圧力に圧倒され、無言で頷くしかなかった。
「少し貴女に聞きたい事があるんだ。一緒に来てくれないかな?」
警察らは、私の応えを聞かずに私を何処かに連れて行った。
一体何をされるの? 不安で仕方がない。なんで私がこんな目に……。どうして……。
私は、何も悪くないのに……。
桜と澄恋が大人しく私の下僕でいてくれれば、私がクラスの奴隷になる事もなかった。あいつが死ななければ、こんな大事になる事もなかった。親が私が苛めをしている事を知っても、私に愛情を注いでいれば、家の中で孤立する事もなかった。私の奴隷だったクラスメイト達が調子に乗らなければ私はずっとクラスの女王様だった。梨奈が私の下僕になっていれば、私は今苛められずに済んでいた……………。
そう、全ては周りの奴らが悪い。
私の心の中は、周囲の人間に対する憎しみでいっぱいだった。
私は交番で、今までどれくらい苛めをしたのかという事など、とにかく苛めに関する事を全て丸裸にされた。
なんでわざわざ丸裸にするんだよ。たかが苛めだろ? 私の何が悪いんだよ。
そりゃあ、頭が良いだけで顔もそこまで可愛くない桜とかが苛めをするのは良くないと思う。けど、私は顔も成績も、世間の評価も高かったんだから。そんな私が苛めをするのは悪い事ではないと思うのだが。
「貴女のせいで、百々さんの遺族は大変辛い思いをしているんだぞ?」
警察が私に尋ねてきた。
ふん、何が辛い思いをしている、だ。そんなの知った事ない。勝手に死んだ奴の事で悲しむなんて……大人の癖に随分と意気地がないんだな。あー、笑っちゃう。
だが、ここで本当に思っている事を言うと更に嫌な目に会いそうなので、取り敢えず謝っておこう。
「はい………。こうやって警察沙汰になって、自分の愚かさを知りました。遺族の方には大変酷い事をしたなと……。そして、百々さん以外にも私は沢山の人を苦しめました。被害者の方々にはこうやって謝る事しか出来ませんが……非常に反省しています……」
私は心にも思ってない謝罪をした。
くす、我ながら上手い演技だな。昔から自分の手は汚さない様に何かと演技をしてきたので、演技は大得意だ。
私はその後も、警察の小言を適当に相槌をうってやり過ごした。
だって、たかが苛めだろ? なんで私より勝手に死んだ奴の肩を持つんだよ。意味が分からない。それに、私にはもっとやる事が沢山あるんだよ。ネットのニュースの記事を消したり、世間の評価を上げたりと。警察なんかに付き合ってられるか!
家に帰ると、親は私にもっと冷たくなった。夜ご飯も持って来ない。お腹が空いたら冷蔵庫の物を勝手に漁って食べるだけ。
父親はもっと酒を好むようになり、母親はいつも機嫌が悪い。私の家はどんどん崩壊していった。
ジリリリリリ、ジリリリリリ………。うるせーな。ろくに休めもしないじゃないか。
お風呂に入っていると、家の電話が物凄い頻度で鳴っていた。母親が出て切ったらまた電話が鳴る、切っても切ってもキリがない、そんな感じだった。
恐らく、私の苛めの事が原因だろう。その証拠に
「はい、本当に申し訳ありません! この事に関しては、何度謝罪をすればいいのか……」
と、何度も母親が謝っているから。
私がした事は近所に一気に広まり、近所内で私は「殺人鬼」扱いだった。
少し携帯から目を話すと、自分の携帯に「殺人鬼」「お前がしね」「お前がいなくなればこの世は平和になる」などの言葉が書いてあるラインやメールが百件以上あった。
なんで、どうして……。
メールやラインだけでなく、電話の履歴も溜まる一方なので、携帯は常に振動が鳴りっぱなしだった。私は携帯の振動に耐えられなくなり、携帯の電源を切ってクローゼットに携帯を放り投げた。
嫌だ、嫌だ……。どうしてこんな事に……。
「茉莉!!」
体育座りで蹲っていると、母親が急に部屋を開けてきた。
なんだよ、こっちはお前の顔なんて見たくないのに……。
「あんたが受験する予定だった高校からも『人を傷つけるような人はいらない』と、断られたわ!」
__?! 嘘だろう?
許せない、あいつ等のせいで私の人生をめちゃくちゃにされるなんて……。
「どうするかは自分で決める事ね。あんたのせいでこうなったんだから」
そう言って母親は部屋を出ていった。
あんたのせい? 何故? こうなったのは私を追い詰めた桜と澄恋____いや、この世の奴ら全員だろう?
もう、こうなったら……なるべく遠い所の私立高校しかないじゃない。どうしてくれるんだよ!