カルとマヤの異世界記録

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1:なかやっち:2020/03/26(木) 12:56

小説として書いてしまっていたのでこちらに移しました💦

263:多々良:2020/04/26(日) 16:48

ブラッカル「まぁまぁ時間食っちまったな....後ろの連中がすぐそこまで来てなきゃ良いが」
魔耶「....多分大丈夫だよ。その為にドラゴンも残して来たし....」
ブラッカル「そうか.......おい、お前の傷、本当に大丈夫なんだろうな?」
少し腕を気にしながら走る魔耶を不信に思った。
魔耶「.....うん、大丈夫だって!ほら、今走れてるし.....ッ」
そうは言いつつも、やはり血で赤く染まった腕が痛々しく見えた。
ブラッカル「......無理すんなよ。....お前が倒れたら、またこいつが出てきて心配しちまうからな.....」
流石のブラッカルも、少し心配気に魔耶の様子を伺った。
魔耶「.....うん、分かってる」

それから、少しだけペースを落として走る事にした。それでも魔耶の腕は痛々しさを強調し続けた。だが、これで少しでも傷への負担が減ってくれたら.....そう思った。


ーーどれくらい走ったのだろう。二人共、色々な考え事をして走っていた為時間の感覚が良く分からなかったが、多分もう後半辺りには入っているだろう。
ブラッカル「.....ふぅ、一体どこまで走らせる気だ......」

264:なかやっち:2020/04/26(日) 20:09

魔耶「…道間違えたかなぁ…?」
ブラッカル「いやぁ、そんなこと…ねぇな」
ブラッカルがやけにはっきり否定したので、不思議に思う。
魔耶「…?なんでそんなはっきり言えるの?」
ブラッカル「あそこに看板があるからな」
彼女の視線の先には、木でできた看板がたっていた。
『この先ゴール地点。あと500m』
魔耶「あれかぁ。よくこの距離で見つけられたねぇ…」
ブラッカル「目はいいほうだからな。…あと500mか…もう少しだな」
魔耶「そうだね………ッ!」
ブラッカルの言葉にうなずいたとたん、軽く目眩がした。
グラリとバランスを崩して地面に座る。
ブラッカル「お、おい!どうした!?」
魔耶「いや…ちょっと目眩がしただけ…」
なんでいきなり目眩なんか……視線を落とすと、固定された左腕が目に入った。それを見てハッとする。
魔耶「まさか…血液不足…??」

265:多々良:2020/04/26(日) 20:57

ブラッカル「おいおい嘘だろ....!?」
改めて、魔耶の傷付いた左肩を観察する。
傷付けられた当初よりも血が溢れ出ている事はないが、それでも深い傷だった為、まだ血は止まっている様子はなかった。
ブラッカル「魔耶、立てるか....!?」
魔耶「う....ん...ちょっと....キツイかも.....」
意識がぐらついているのか、下を向いたまま話す。
ブラッカル「くそっ....!!....もう少し耐えろ、魔耶!!」
そう言うと、魔耶を背中にひょいと担いだ。
魔耶「ブラッカル....」
ブラッカル「直ぐに医者見っけてやるからよ....!!」
とは言え、参加者と共にここへ来ているのはギルドの役員だけ。出来ても、簡単な応急措置だけだろう。
魔耶「う....頭が....」
ブラッカル「しっかりしろ!!何とか意識保て!!」
魔耶「うん.....頑張る.....」
ブラッカル「もう少しでゴール出来っからよ!」
魔耶「....ありがとう」
ブラッカル「.....礼を言うのはこっちだ。....ありがとよ、魔耶.....中々こっち側の生活も楽しかったぞ」

「....後は頼んだぜ、私」
「....了解。」

魔耶「......え?」
ブラッカルの面影はいつの間にかすっかり消え、普段通りのカルセナの姿へと変わっていた。
カルセナ「絶対に助けるからね、魔耶!!」
魔耶「カル....セナ.....」
薄れて行く意識の中、似た様な光景が魔耶の頭を過った。

266:なかやっち:2020/04/26(日) 22:10

魔耶「なんか…助けられてばっか、だなぁ…」
意識をなんとか保とうとカルセナに話しかける。それで少しでも意識がもてばいいな…そう思った。
魔耶「虫のときも、背中怪我したときも…筋肉痛になったときも…」
カルセナ「私だって、魔耶にたくさん助けられてるんだから!帽子だって取り返してくれたし、今度は私の番なんだよ!」
魔耶「そ…っかぁ…ごめんね、いつも迷惑かけて…」
カルセナがはぁはぁと荒い息をしているのがわかった。私をおぶりながら全力疾走してるんだもんな、そりゃそうだ。
カルセナ「いってるでしょ、今度は私の番だって!迷惑かけてるのはお互い様なんだから!」
魔耶「ははっ……うぐぅ……そろそろ限界かも…。すごく眠い。…血液が足りないと、人は眠くなるのかぁ…あ、魔族か…」
視界が霞み、頭がどんどん重くなっていく。頭を起こしているのも辛くなって、カルセナの肩に頭をのせた。
カルセナ「待って‼あとちょっとだから…あっ!見えた!ゴールだよ、魔耶!しっかり‼」
ようやくゴールらしきゲートが見えたらしい。カルセナの言葉を聞いて、もう少し意識を保とうと努力した。
魔耶「う〜…はぁ…はぁ……!」
魔耶(…カルセナが私のために頑張ってくれてるんだ…!私が頑張らないでどうする!意識をしっかり保て!起きろ‼)
自分に心のなかで言い聞かせる。


カルセナ「あと…少し…‼」
重くなった足を引きずるようにして、カルセナの足がゴールのゲートを越えた。試験合格だ…!
だが、今はそれを喜んでいる場合ではない。魔耶を医者に見せなくては!
係員「おめでとうございます!一位でゴールしましたので、見事Cランクに…」
そこまでいいかけて、係員はカルセナの背中に傷を負った魔耶の姿があるのを見つけた。
係員「っ…!大変…!今医者を‼その人をこちらに‼」
カルセナは係員の言う通りに魔耶を預けた。魔耶はもう意識がないようで、目をつぶってぐったりとしている。

267:多々良:2020/04/26(日) 22:31

カルセナ「お願いします!!どうか....絶対助けてください!!」
係員「分かりました、安心して待っていて下さい!」
他数名の係員は、カルセナの姿がスタート時と変わっている事に気が付いていた。だが、今はそれどころじゃなかった。幸いにも、ギルドに医者が着いて来ていたらしい。血を調べた後、予め用意された血が、すぐに魔耶に輸血された。
意識のない魔耶の隣で、カルセナは心配そうに佇んでいた。近くには大きな火が焚かれていた為、モンスターは寄ってこなさそうだが.....いつ様態が変化するかなんて分からなかったからだ。
カルセナ「魔耶.......」
医者「そんなに心配しなくても大丈夫です。簡易的な応急措置がされていたお蔭でこの程度で済みました。.....この措置は、貴女が?」
カルセナ「....いや、魔耶が自分でやったものだと思います。私は何も.....」
医者「.....そうでしたか。....目覚めるまで、側に居てあげて下さい。それが今、貴女に出来る事です」
カルセナ「......はい」
黙って魔耶の顔をじっと見た。もっと他に何か出来る事はなかったのだろうか。そんな事ばかり考えてしまっていた。

268:なかやっち:2020/04/26(日) 22:50


魔耶「っう…ん…?」
カルセナ「…!魔耶っ!」
小1時間はたっただろうか。魔耶が目を覚ました。
魔耶「…あれ、カル…?えっと?なにがあったんだっけ?」
カルセナ「忘れたの?」
魔耶「ちょっとこんがらがってて……試験してて、ドラゴンに腕やられて、看板みて…そのあとは……えーっと〜…」
カルセナ「魔耶が血液不足になったから私がゴールまで運んで、今に至るって感じかな。…あぁ、よかったぁ…魔耶が死んじゃうのかと…」
魔耶「そうだったのね〜。あはは、大袈裟だなぁ。そんな簡単に死なないよ、魔耶さんは。私が死ぬのは…世界からキャラメルが消えたときだ」
カルセナ「なんだそれ…?」
思わず二人で笑う。
こういうやり取りができてよかったと、心の底から安堵した。
魔耶「カルセナ…ありがとう」
カルセナ「お礼なんていいって。帽子の恩を返しただけだから」
魔耶「うーん、そうか……っていうか、そんなにその帽子大事なのね。なにか理由でもあるの?」

269:多々良:2020/04/27(月) 07:07

カルセナ「あぁ、これね.....昔、お母さんから貰った帽子なんだ〜。私が小さいときに、病気で亡くなっちゃったけどね....」
頭から帽子を取って、それを見つめる。鍔にはドラゴンに付けられた、少し大きな切れ込みが入っていた。
魔耶「そうなんだ.....だからあんなに.....」
カルセナ「うん、まぁこれが無いと死ぬみたいな事は無いんだけどね....」
魔耶「その帽子の傷....」
カルセナ「.......大丈夫!!これも仕方無いよ!」
くるっと帽子を一回転させてから、再び頭に帽子を乗せた。
そのときの表情は、怪我をしている魔耶の前だからか、無理矢理笑顔を作っているかの様に見えた。
魔耶「カルセナ.....」
カルセナ「街に帰ったら何とかして直して貰う事にするよ!....はぁ、所で、もう一人の私は何でこの帽子大切に思わないんだろうな〜.....同じ自分なのにさ」
魔耶「さぁ....何でだろうね?聞いてみれば?」
カルセナ「.......何も返事返って来ないわ。んー、よく考えればこの状態が普通なのか....魔耶にも私みたいに、もう一人の魔耶がいるのかな?」
魔耶「あはは、もしかしたら居るかもね。カルセナみたいに簡単に飛び出しては来ないと思うけど」

帽子の話題から逸れ、他にも色んな話をした。
暫くして、他の参加者の姿が見えてきた。ここの試験を乗り越えた者達である。

270:なかやっち:2020/04/27(月) 09:55

魔耶「うわぁ…痛々しい…」
思わず呟いてしまった。
帰ってきた参加者の中には、魔耶と同じように怪我をしている人、火傷を負っている人(多分ドラゴンにやられたのだろう)がたくさんいた。
カルセナ「魔耶もそうとうな深手じゃない…痛々しいよ…」
魔耶「…そう?でももう処置されてるから大丈夫よ。こんな傷4日くらいあれば治るって!」
カルセナ「普通ならそんなに早く治らないって…魔族すげぇ〜」
魔耶「人間の基準で考えてるからでしょ〜。悪魔の基準にしたら、4日なんて遅いってなるよ」
カルセナ「はぁ…な、なるほど?」
人間の基準だと早いけど、悪魔の基準だと遅いのか…
カルセナ「そう考えればそうか…無意識に人間の基準として判断してたわ…」
魔耶「元人間だもんね。そういうものよ」
カルセナ「そういうものかぁ〜。…魔耶には、悪魔に近い細胞と人間に近い細胞があるっていってたよね」
魔耶「うん。そうだよ?」
カルセナ「魔族ってみんなそうなの?」
魔族って、もっとこう、魔族の細胞があるのかと思っていた。人間には人間の細胞、悪魔には悪魔の細胞、魔族には魔族の細胞…って感じで。実際のところどうなのだろう?
魔耶「あ〜…ちょっと秘密打ち明けてもいい?」
カルセナ「…?秘密?」
魔耶「うん。実はね、私…」
そこまでいいかけたとき、係員が大声で叫んだ。
係員「無事試験に合格できた参加者の皆さん、おめでとうございます。これより再び機関車にお乗りいただきます。私に着いてきてください!」
魔耶「…また今度にしようか。んじゃあいこう!」
カルセナ「う、うん…」
魔耶の秘密がどんなものか知りたかったが、しぶしぶ係員のあとに続いた。

271:多々良:2020/04/27(月) 10:36


係員「お疲れ様でした!それではお乗り込み下さい!治療が必要な場合、最前列のギルドの係員にお申し付け下さいね!」
行きと同じように、機関車にぞろぞろと参加者達が乗り込む。二人も後に続いて空いている席に座って一段落ついた。
カルセナ「ふぅ、やっと終わったのかな.....?フルで参加したかったなぁ〜....」
魔耶「そうだね、次回からは参加出来るんじゃない?」
全員が乗ったのか、機関車が動き出した感覚がした。
緊張感が抜けた車内は、参加者達の体験談や武勇伝を語る声でがやがやとしていた。
魔耶「はぁ〜.....無事に帰れたって、ひまりに報告だね....」
左肩を押さえながら、溜め息を吐く。
カルセナ「そうだね〜.....そう言えば、さっき話そうとした秘密って、何?」
心に残るモヤモヤを解決しようと、魔耶に問う。

272:なかやっち:2020/04/27(月) 11:16

魔耶「あぁ…」
あまり他の人に聞かれたくないため、少し声を潜めて言う。
魔耶「私ね、魔族って言ってるけど、実は悪魔と人間のハーフなんだぁ〜」
カルセナ「…!?え、えぇっ!?」
魔耶「ちょっちょ!声大きいから!」
カルセナ「いやだって、魔族…えぇ!?」
魔耶「落ち着け!」
カルセナの声によって少しだけ注目を浴びてしまったため、カルセナをなだめて落ち着かせる。


魔耶「普通魔族っていうのは、人間や妖怪が悪魔から力をもらって変化したものなんだよ。それが代を重ねていって、いろんな進化を遂げて、悪魔と人間や妖怪の中間くらいの種族ができる。悪魔との直接的な血のつながりはない。…はずなんだけど、私はちょっと違ってね〜…悪魔と人間が結婚してできちゃったって感じ☆」
カルセナ「できちゃったって感じ☆じゃないよ…。なるほど、だから細胞に偏りがあるの?」
魔耶「そうなんじゃない?普通の魔族だったら魔族の細胞があるんじゃないかなぁ。悪魔耶になれるのも、悪魔の血をもってるからなんだよ。ブラッカルには嘘をついちゃった。本当は、普通の魔族だとできないと思う。」
それを聞いてはぁ〜納得する。
カルセナ「なんで魔族って言ってるの?本当は少し違うじゃない」
魔耶「え〜?…悪魔と人間のハーフでーすなんて言うのめんどくさいじゃん。そこまで大きな違いはないし、容姿もそこまで変わらないしね」
カルセナ「あぁ、それだけの理由なのね…」
魔耶らしいな、と思った。
魔耶「…とまぁそんなわけで、私はそういうよくわからない種族なんですよ」

273:多々良:2020/04/27(月) 11:43

カルセナ「よく分からない.....成る程〜....そうだったんだねぇ」
魔耶「まぁそんなおっきい秘密でも無いんだけどさ」
カルセナ「いやいや、タメになりましたよ〜」

それから二人は色々な話をして、挙げ句の果てに疲れて眠ってしまっていた。

係員「皆様、到着致しました!!それでは降車して、ここから、北街に戻ります!」
魔耶「.....ん、到着....?」
カルセナ「ふぇ....?あ、駅まで帰って来た感じ....?」
二人して大きな欠伸をした。
窓の外では、燃えている様な大きな夕陽が沈もうとしていた。
魔耶「うぅ〜.....疲れた....」
カルセナ「今日は安静にして、宿でゆっくり休みましょ」
魔耶「そうだね〜....」
参加者達に紛れて機関車を降り、北街へとことこと歩いて帰った。

274:なかやっち:2020/04/27(月) 12:49

ギルドに着くと、そこには見慣れた二人の姿があった。
みお「おねぇちゃん!みて!」
ひまり「…?………ッ!カルセナ!魔耶!」
ひまりは私達の姿を確認し、こちらに走ってきた。
魔耶「はは、ただいま〜っ……!?」
ただ二人にお帰りと言うのかと思ったら、ひまりは走ってきた勢いのまま二人を抱き締めた。
カルセナ「うぇ!?ひ、ひまり!?」
ひまり「よかった…無事で…今回の試験はかなり難しいって聞いたから心配だったの…」
魔耶「ちょ、私、怪我人…痛い痛い…はーなーしーて〜…」
ひまりは魔耶の言葉を聞いて驚き、二人をはなした。
ひまり「怪我したの!?大丈夫!?」
しっかりと魔耶の姿を見て、その左腕に包帯が巻き付けてあるのを発見した。
魔耶「いろいろあってね…まぁ、それはまた今度話そう…」
ひまり「うわぁ…けっこうな深手じゃない…でも、無事で本当によかったわ…!」
カルセナ「そんなに心配してくれてたんだね…ありがと、ひまり。カルセナと魔耶、ただいま帰還しました!」
ひまり「あははっ!…お帰りなさい、二人とも!」
みお「無事でなにより…です」
魔耶「えへへ〜。左腕は無事じゃないけどね〜」
はにかんだ笑いを浮かべながら、四人でギルドに入っていった。


係員「…それでは、これから閉会式を行います。1位〜3位までにゴールした方々!前へどうぞ!」
カルセナ「えっと…うちらかな…?」
二人でおずおずと前にでた。
おそらく3位に入ったのであろう、巨漢な男の人も前に出てきた。
係員「今回、より難易度の高い昇格試験だった中、見事上位に入賞した三人にCランクバッチをお渡ししたいと思います!」
そういって金属でできた三角形のバッチを渡された。バッチの中央には大きくCと刻まれている。…Cランクの証みたいなものだろうか。
係員「これよりあなた方はCランクです。おめでとうございます!」
係員の言葉が言われると同時に、まわりから大きな拍手が起こった。ひまりとみおもにっこりと笑いながら拍手をしている。
係員「これで閉会式を終わります。皆様、今日は本当にお疲れ様でした!」

275:多々良:2020/04/27(月) 14:24


魔耶「....ふぅ、疲れた〜」
閉会式を終え、のそのそと宿に戻っている途中だった。
ひまり「うふふ、今日はゆっくり休みなね」
カルセナ「そうしようそうしよう」
ひまり「ところで....カルセナ、元に戻ったのね?」
カルセナ「え?あぁ、知ってんの?」
魔耶「昨日の昼過ぎくらいからずっとブラッカルのままだったからねぇ」
カルセナ「そうだったのか〜....うちの奴がご迷惑おかけしました〜」
ひまり「いやいや、楽しませて貰ったわよ」
昨夜の事を思い出し、くすくすと笑う。
カルセナ「何で入れ替わったのか覚えてないんだよね....」
魔耶「さぁ?きっと試験受けたすぎて飛び出てきちゃったんじゃない?」
カルセナには本当の事を言わない事にした。その方が少し面白そうだったからだ。

ひまり「....さ、二人共お疲れ様!!また明日から依頼頑張ってね!!」
魔耶「ありがとひまり、みお。そっちもね〜」
カルセナ「ばいばーい」
宿の前で二人と別れた。暫く遠ざかっていくひまりとみおを眺めていた。

276:なかやっち:2020/04/27(月) 15:14

魔耶「…ふぅ、部屋行こうか?」
カルセナ「そうだね〜。ベッドにぼふってしたい…」 
カルセナの謎の願望に笑いながら部屋に入った。

魔耶「1日もたってないのに、なんか久しぶりに感じるわ…」
カルセナ「だね〜。よっしゃ‼ベッドだぁ‼」
先程の言葉通りベッドに勢いよく飛び乗るカルセナ。
魔耶「埃がたつからやめい…」
カルセナ「え〜。ふかふかなベッドがあったらぼふってしたくなるじゃんか〜」
魔耶「分からんでもないけどさ」
昨日のお菓子がまだ残っているのを見つけ、ひとつだけ取り出して食べる。うん、美味しい。 
カルセナ「あ〜!魔耶ばっかりずるい〜!私のお菓子は?」
魔耶「はいはい、ここにあるから食べ……あっ」
カルセナ「…?どうしたの?」
魔耶「いや…」
カルセナのクランチチョコを見て、昨日の出来事を思い出した。カルセナがチョコを食べたら、またブラッカルがでてくるのかもしれない。…あげないほうがいいのだろうか…。ブラッカルも疲れているかもしれない。
魔耶「お、おやつよりご飯だよ!お昼食べてないからお腹空いてるでしょ?夕御飯買いにいこうよ!」
カルセナ「あぁ…そういえば…じゃあもう少しやすんでから行こうか」
魔耶「うん、そうしようそうしよう(ほっ…)」

277:多々良:2020/04/27(月) 17:57


カルセナ「....ん?何これ?」
テーブルの上に置いてある、剣のイラストが目に入った。
魔耶「これ魔耶が描いたやつ?」
魔耶「んー?あぁ、そうだけど....」
カルセナ「....めっちゃ上手いじゃん!!流石だなぁ〜....私もこんな風に描けたら良いのに」
魔耶「そんな事無いって、ただの剣のデザインだよ」
カルセナ「私ほんとに何の才能もないからさー。羨ましい.....」
冷蔵庫から出した飲料水をちびちび飲みながら話す。
カルセナ「私の才能、全部こいつに取られたんじゃないか....?」
首を傾げ、もう一人の自分、ブラッカルを疑う。
魔耶「流石にそれはどうなのかねぇ.....ま、戦闘で言ったらあっちかもしれないけど....」
カルセナ「ですよねぇ〜、ちょっとくれないかな....あ」
だらだらと話している内に、六時を知らせる鐘が時計台の方から鳴り響いた。
魔耶「良い時間帯かな?」
カルセナ「んだね、買い出し行きますか」

278:なかやっち:2020/04/27(月) 18:23

宿から出て街中をぶらぶら歩く。
魔耶「…うーん…」
カルセナ「ん?どうかしたの?」
魔耶「いや…この世界に来て、自炊したことないなって。買ったもの食べてるか、だれかから奢ってもらってるかだから…」
カルセナ「あぁ〜…確かに…」
料理をしようとしたときもあったけど、そのときは私が変なキノコ食べちゃってできなかったしなぁ…
カルセナ「…じゃあ、今日の夕飯は自分たちで作ろう!材料買って!」
魔耶「お、いいっすねぇ。なに作る?」
カルセナ「うーむ…シンプルにハンバーグとか…?」
魔耶「いいねハンバーグ!よし、今日の晩御飯はハンバーグに決定!」
カルセナ「…え?適当に言ったんだけど…採用しちゃうの?」
魔耶「だってハンバーグ食べたいし…あとはご飯とお味噌汁があれば最高」
肉汁たっぷりのハンバーグと白いご飯を思い浮かべて、空腹のお腹がぐぅと鳴る。
カルセナ「…んじゃあ、ハンバーグの材料買おうか。なにがいるんだろ…」

279:多々良:2020/04/27(月) 19:02

魔耶「ふっふっふ、私、これでも元居た世界では自炊してましたからね....大体は分かりますよ?」
カルセナの横でふんっ、と胸を張る。
カルセナ「おお!んじゃ、お店向かいながら何が必要なのか教えてよ〜」
魔耶「良いですとも。ま、まずはやっぱりお肉だよね。.....pork or beef?」
カルセナ「I like a pork.」
魔耶「だったら豚肉のミンチかな。あと、玉葱とかパン粉、卵と....あ、にんにくもちょっと入れると美味しいけど....」
カルセナ「なら入れときましょ」
魔耶「えーと、後はまぁもろもろ、お店に行って買い足せばいっかな....」
カルセナ「成る程成る程....お味噌汁何にする?」
魔耶「うーん、何が良いかな〜.....」
カルセナ「スープって言う手もありだよね」
魔耶「確かに、それでも良いかも....どーしよっか〜」

いつもの飲食店通りを過ぎ、八百屋や精肉店の建ち並ぶ大通りにやってきた。
少し時間は遅いものの、沢山の買い物客で賑わっている。

280:なかやっち:2020/04/27(月) 20:23

魔耶「んっと…手分けしたほうがいいかな?」
カルセナ「そのほうが早く買い物終わるか…そうしよう。必要なものを教えてくれ〜」
魔耶「じゃあ、カルセナはお肉買ってきて〜。私は八百屋いってくるから」
カルセナ「りょーかい!」
魔耶は八百屋、カルセナは精肉店に別れて行動することにした。


魔耶「玉ねぎは必要不可欠だよね〜。でも玉ねぎ切ると涙がでるからなぁ…そこは頑張るか。あ、人参も欲しいなぁ。あとはにんにく…」
軽く呟きながら食材を買いそろえる魔耶。なるべく艶があって、色の濃いいい感じの食材を選ぶ。
魔耶「…なんか懐かしい感じがするわ、こういうの。まだこの世界にきてそんなにたってないのに…不思議だなぁ〜」
左手が使えないためくまさんにカゴを持たせ、右手を使って食材を選ぶ。
魔耶「ふぅ。必要なものはこのくらいかなぁ…?」

281:多々良:2020/04/28(火) 09:06


カルセナ「えーと精肉店、精肉店.....あそこでいっかな?」
魔耶と別れた場所から一番近い店を選んだ。人にぶつからないように、少し小走りで向かう。
店主「はぃ、いらっしゃい!!」
カルセナ「えーと、豚肉のミンチだったよね....?それください」
店主「はいよ、何g必要なんだ?」
カルセナ「え?あ、えーと.....」
そう言えば魔耶に聞いたのは材料だけで、何g必要だとか、そう言うのを聞いておくのを忘れていた。
店主「....?もしかして分からないのかい?」
カルセナ「あのー....2人分のハンバーグ作ろうとしてるんですけど....」
少し申し訳無さそうに言う。
店主「あぁ、そう言う事なら....粗びきで200g位が妥当だよ」
カルセナ「おぉ!じゃあそのまんまの量ください!」
店主「そうかい、ありがとね!」
代金を払い終わったとき、不意に大きな音でお腹がなる。
カルセナ「(やっべ、恥ずかし....)」
店主「なぁあんた、もう100gおまけしてやろうか?」
ニコニコと笑いながら問い掛けてくる。
カルセナ「えっ、良いんすか?」
店主「あんたみたいな育ち盛りはいっぱい食べなきゃいけないからね!ほら持ってきな!」
気前良く、プラス100gの豚ミンチを差し出してくれた。
カルセナ「ありがとうございます!!(まぁもう育たないけど....)」

282:なかやっち:2020/04/28(火) 11:24

魔耶「疲れた疲れた〜。右手だけだと大変だね〜」
と言いつつ、つくったくまさんに買ったものを持たせ、自分は手ぶらで歩く魔耶。 
…と、歩いている途中でアクセサリーショップの前を通りかかった。ウィンドウに飾られた綺麗なアクセサリーに目を奪われる。
魔耶「わ、綺麗……。…そういえば、カルセナになにかプレゼント買ってやろうとか思ってたんだっけ。いや、まぁ自分でつくればいい話か。…あの人が欲しがりそうなもの…?」
お店のウィンドウに飾られたアクセサリーを睨みながらカルセナが欲しそうなものを考えるが、まったく思い付かない。
魔耶「…あの人の好きな色とか好みとかまったくわからないからなぁ…あれ?私ばっかり情報晒してない…?」
お子さま舌とか、キノコが苦手とか、おにぎりの具は鮭が好きとか…私のことは晒しているけど、カルセナのことはまったくわからない。
魔耶「むぅ…それはちょっとずるいよな…会ったら問い詰めてやる…」
子供「お母さん!みてみて!ぬいぐるみが動いてる!」
魔耶「…ん?」
子供の指は私のつくったくまさんを指していた。
…そうだ、普通にいつもの感覚でくまさん使ってたけど、ここ別の世界だったぁ…急いでくまさんを消し、荷物を右手で持つ。
母親「…?ぬいぐるみが動くわけないでしょう?早くお家に帰ってご飯にするわよ」
子供「ほんとだって!そこに…あれ?いなくなってる…」
母親「変な子ねぇ…」
子供「ほんとにほんとにさっきはいたんだもん!」
母親「はいはい。早く帰りましょ。今日はからあげよ〜」
子供「え!?やったぁ!」
そんな親子の会話を聞きつつ、胸をドキドキさせながらそそくさと立ち去った。
近くにあったベンチに座り、安心のため息をつく。
魔耶「そうだ…完全に元の世界の感覚だった…。ただでさえ魔族だってしれわたってるのに、ぬいぐるみを操れるなんて知られたら…」
想像して身震いする。ただ凄いと思われるだけならまだしも、珍しいということでなにかしらのトラブルに合う可能性がある。
魔耶「…自重しよう。うん」

283:多々良:2020/04/28(火) 14:58

カルセナ「ふぃー、良い買い物したわぁ〜....えーと、魔耶は.....」
300gの挽き肉が入った袋を持ち、買い物をしている、あるいは既に買い物を終わらせ、先に待っているであろう魔耶の姿を探す。
カルセナ「えー....あ、居た居た。魔耶ー!!」
ベンチに座っている魔耶に手を振る。
魔耶「お、来た来た....何だか随分ご機嫌そうだなぁ....買えたー?」
カルセナ「勿論!ついでにおまけしてもらったよ〜♪」
魔耶「おお!!それはありがたい!....んじゃ、帰りますか」
ゆっくりとベンチから立ち上がり、宿に帰る事にした。
魔耶「ふぅ、疲れた〜」
カルセナ「試験終わった後だもんね.....それ持とっか?」
魔耶「いえいえ、そんなに貧弱じゃないですよ〜....あ、そうだ」
歩いている途中で、カルセナに色々問い詰めようとしたのを思い出した。
カルセナ「ん?どった?」

284:なかやっち:2020/04/28(火) 18:06

魔耶「好きな色、食べ物、その他もろもろ!教えてください」
カルセナ「んんん?いきなりなにを言うかと思えば…なにそれ…?」
魔耶「いやぁ…私の情報は晒してるのに、カルセナのことはまったく知らないなぁ〜って思って」
まぁ本当はプレゼントの参考にしたいだけなんだけど。
カルセナ「なんだそんなことか。いや、私もそこまで魔耶について知らないと思うんだけど…」
魔耶「そう?色々話したくね?」
カルセナ「まぁ色々知ってるけど…誕生日とか好きな食べ物とか、そういうことは知らないよ」
魔耶「あれ、言ってなかったっけ…?じゃあ二人で個人情報公開し合うか」
カルセナ「言い方よ…w」
というわけで買い物は少し休憩して、二人で情報交換をし合うことにした。

魔耶「言い出したのは私だから私からいこうかな。
彩色魔耶っす。魔族(悪魔と人間のハーフ)で、かれこれ300年は生きてますね〜。能力はつくる程度の能力、誕生日は5月8日で牡牛座、血液型はA型です!好きな食べ物は甘いもの、鶏肉とかかな。嫌いなもの…はもう知ってるからいいか。好きな色は緑と青の中間色です。…こんな感じでいいよね?」
カルセナ「おぉ〜、いいと思う。…本当はこういうことって初めて会ったときにやるものだと思うけどね」
魔耶「うちらが初めて会ったときはドラゴンに襲われてたから…それどころじゃなかったでしょ。…んじゃあ、こんどはカルセナの番ね」

285:なかやっち hoge:2020/04/28(火) 18:13

(あれ、違うわ…買い物はもう終わったんだぁっ!ってことで、[というわけで買い物は少し休憩して]じゃなくて[というわけで宿に向かいながら]にします。ちゃんと読まないからこんなことになるんですよまったく…⬅誰やん)

286:多々良:2020/04/28(火) 18:53

カルセナ「おうよ。えーと、カルセナ=シルカバゼイションです。元々は人間だったけど、訳あって浮幽霊になっちまいました。アメリカ生まれだけど、日本語は得意中の得意だよ〜。物語を先読みする能力を持ってまーす」
魔耶「何かややこしい能力名だねぇ」
カルセナ「こっちの方が....何か格好いいじゃん?えー、誕生日は1月21日の水瓶座。年は.....うーん、多分110歳くらいだと思う.....好きな色は水色系かな。好きな食べ物は....お菓子?特にチョコ系が好きでーす」
魔耶「成る程成る程、良いじゃ〜ん?」
カルセナ「そっか、なら良かった....あ、因みにもう一人の方は.....えーと名前....」
魔耶「ブラッカルで。」
カルセナ「ぶ、ブラッカル??んまぁ良いか....こいつは何か良く分かりません」
魔耶「分かんないのに紹介しようとしたんかい....」
カルセナ「むぅ....あ、魔耶さ、こいつとちょっと位一緒に過ごしたでしょ?何か分からんかった?」
魔耶「え?あ、うーんと.....」
そう言われて、ブラッカルと過ごした時間を思い返す。
魔耶「うーんと....カルセナと同じで、チョコが好きそうだったかな?あと、肉弾戦が強いのと.....あー、あとね、ちょっと性格悪いかもしんない」
苦笑しながら、記憶の中にある情報をカルセナに話す。
カルセナ「あー.....性格悪いのは私も分かる。そんなもんかな、私についての大まかな情報は」
魔耶「うんうん、何かと知れたから良かったわ」
カルセナ「いやいやこっちこそ、情報提供ありがとうございます」

287:なかやっち:2020/04/28(火) 20:12

魔耶(うーん…水色系が好き、か…じゃあ水色にするとして〜…形どうしよ)
カルセナ「なに魔耶?考え事?」
魔耶「うん…」
カルセナ「どんなこと考えてたのさ?教えてよ〜」
魔耶「ちょっと教えられないかな〜。今度教えてあげるよ」
せっかく物を渡すんだ、サプライズにしておきたい。そのほうが面白いしね。
カルセナ「え〜。今度教えてくれるなら、今教えてくれたっていいじゃん」
魔耶「今はダメなの〜。…ほら、宿についたよ」
ちょうどいいタイミングで宿に着いたため、話題をそらす。
話題をそらされてカルセナは少し不満そうな顔をしたが、私の後に続いて宿に入った。


魔耶「んじゃあ、レッツクッキング!」
カルセナ「イエーイ!」
時計を見ると6時30分になっていた。うまくいけば8時前に食べられるであろう。
宿にある料理台と調理器具を借りる。 
カルセナ「…魔耶、左手使えなくね?」
魔耶「…あっ。…くまさんしょうかーん」
自分の左手変わりとしてくまさんを召喚する。
魔耶「これでよし、と。よし、料理しようか〜」

288:多々良:2020/04/28(火) 21:42

カルセナ「ハンバーグとその他でじゃんけんしない?」
魔耶「うん?別に良いけど....負けた人がその他でね」
カルセナ「んじゃ行くぞ!!最初はグー、」
魔耶カル「じゃんけん、ぽんっ!!」
結果は、魔耶がチョキ、カルセナがパーだった。
カルセナ「あぁくっそー!!最近じゃんけん弱いんだよなぁ.....」
魔耶「あっはっは、じゃあよろしくね〜」
カルセナ「は〜い....」
負けた理由を考察しながら、宿に常備してあった炊飯器の釜に買ってきた米を入れてとぎ始めた。
カルセナ「お米、硬めで良い?柔らかい方が良い?」
魔耶「うーん、特に硬くしろとか柔らかくしろとかは無いかな.....お任せするわ」
カルセナ「おっけー」
魔耶「さてと、私も下準備するかな〜....」
店の袋の中から野菜を取り出し、くまさんを操りながら切り始める。
魔耶「むむ....ちょっと難しい.....」
カルセナ「....大丈夫?」
ちらちらと魔耶の様子を伺う。
魔耶「親じゃないんだし、大丈夫。その内慣れるでしょ」
カルセナ「ほーん....なら良いけど」
少しして、とぎ終わった米入りの釜を炊飯器にセットし、ボタンを押す。ピッ、と言う音がして、炊飯器は自分の仕事を始めた。

289:多々良 hoge:2020/04/28(火) 21:44

【「親じゃないんだし、大丈夫。」←日本語おかしくね....?「親じゃないんだし、心配しないで。」に変えるわ。】

290:なかやっち:2020/04/28(火) 22:18

魔耶「…ふぅ。左手が使えないと不便だなぁ。聞き手じゃないだけましだけど…」
少々戸惑いながらも、野菜を切り終わることに成功した。
カルセナ「お疲れ様〜。大変そうねぇ…」
魔耶「おう…。ドラゴンにやられたのが悪かったな、うん。…さて、お肉お肉〜」 
袋から豚のひき肉を取り出す。思っていたよりズシリとしていたので少し驚いた。
魔耶「おぉ…こんなにたくさん買ったの…?」
カルセナ「いったでしょ、オマケしてもらったって。最初は200gだったんだけど…店主さんが『育ち盛りなんだからたくさん食べな!』っていって、100gオマケしてくれたのよ〜」
魔耶「なるほどなるほど……カルセナ浮幽霊なんだからもう育たないじゃん」
カルセナ「いやまぁそうなんだけど…言いづらいやん…。せっかくオマケしてくれたのに…」
魔耶「まぁそうか…ありがたくいただこうか〜。………私の育ち盛りっていつだろう…」
カルセナ「いきなりどうしたのよ…」
魔耶「いや…私は今300歳じゃない。人間でいうと15歳なんだけど…そうすると、今が成長期ってことになるのかなぁ」
カルセナ「どうなんだろうね…?魔族のことなんてわからんよ…」
魔耶「私もわからん」

291:多々良:2020/04/29(水) 07:46

カルセナ「まぁ、魔耶は死んでないしちょっとくらい成長するんじゃない?」
魔耶「成長するように祈るか〜....」
挽き肉ボウルに入れ、こね始める。これが思ったより重労働だ。
魔耶「あ〜....じゃん負けがハンバーグにすれば良かったかなぁ〜」
カルセナ「もう遅い遅い。頑張ってこねろ〜」
魔耶を軽く励ましながら味噌汁の下準備をする。
カルセナ「そう言えば、味噌汁ってあんま飲んだ事無いなぁー....」
魔耶「そうなの?....あ、そっか」
カルセナ「アメリカでは馴染みが無いからさ」
魔耶「じゃあ、逆に何飲んでたの?」
カルセナ「うーん.....飲んでてもスープ系かなー.....お米はちょっと食べてたけどね」
魔耶「へぇー.....食文化やっぱ違うんだなぁ」
カルセナ「そう言う魔耶こそ、そっちの世界では何か普通と違う食べ物とかあったりしたの?美味しいものとか」
目を輝かせながら、魔耶の顔を覗き込む。
魔耶「え〜?うーん.....」

292:なかやっち:2020/04/29(水) 12:23

少々悩む。私が普通だと思っているものが珍しかったりするかも知れないからなぁ…っていうか、前の世界ではあまり外食しなかったし。
魔耶「ん〜…あ、そうだ」
カルセナ「?」
魔耶「私の世界では色んな国が存在してるんだけど…年に2回くらい?すべての国の料理人が一ヶ所に集まって料理大会みたいなのをしてるのよ。個々に屋体をだして、お客さんは食べ比べをして、どの料理が一番美味しいかを評価する」
カルセナ「ふんふん。国ごとに料理が違うの?」
魔耶「そうそう、自分の国の料理を出すの。だから知らない料理がたくさんでるんだよ。みんな美味しかったなぁ…」
過去に食べた美味しい料理の味を思い出す。
カルセナ「すご…そんなのがあるんだ…魔耶の世界行ってみたいわ」
魔耶「はは、頑張ればこられるかもね?私はカルセナの世界に行ってみたいけど…あ、英語話せないわ」
魔耶の言葉に二人で笑い合う。

…そうこうしているうちに40分が経過した。あたりにハンバーグの美味しそうな匂いが漂っている。
魔耶「…よっしゃあ!完成っ!」
カルセナ「お疲れ〜」
一足先に料理を作り終えたカルセナが、ソファにおっかかりながら言葉を掛けてきた。
魔耶「うむ。なかなかの重労働だったわ…。左手の大切さがよくわかりました」
カルセナ「あはは、そんなにか…w」
魔耶「そんなにだよ〜。体力と精神力どっちも使ったんだから。…よし、良い感じにお腹も空いたから早く食べよう!」
カルセナ「そうだね〜。さっさと盛り付けて運んじゃお〜」

293:多々良:2020/04/29(水) 14:44

各々好きな分だけ自分の皿に盛り、余った分も調節して盛り切った。
あっという間に、テーブルの上に美味しそうな料理が並んだ。
魔耶「よし、んじゃあ....」
魔耶カル「いただきますっ!!」
手を合わせて、この食事を待ち望んでいたかの様に大きな声を出した。二人共、最初に手を付けたのはハンバーグだった。
カルセナ「もぐもぐ.....うん!美味しい〜!!」
魔耶「我ながら、中々良い出来栄えだわ〜....もぐもぐ....」
カルセナ「それにしても、ハンバーグ久し振りに食べたなぁ」
魔耶「それは私もだよ、こっちに来てからは全然違うもの食べてたからね」
カルセナ「うんうん、北街の料理も美味しいけど、やっぱ馴染みがある料理も美味しいよねぇ」
挽き肉を多めに貰えた事もあって、1人につき2つのハンバーグを作る事が出来た。
がつがつと食べ進める。
魔耶「ご飯との配分むずいな....美味しいから良いや」
カルセナ「美味しいと、ついそれに夢中になっちゃって後のご飯忘れちゃうんだよね....」

294:なかやっち:2020/04/29(水) 17:12

魔耶「そしておかず全部食べたあとにご飯だけが残るっていうね…」
カルセナ「そうそう。ご飯だけで食べるのちょっとキツいよね」
魔耶「めっちゃ分かる」
久しぶりに食べたハンバーグがとても美味しくて、二人ともペロリと平らげてしまった。


魔耶「あぁ美味しかったぁ〜…ご馳走さまでした!」
カルセナ「ご馳走さま〜」
いっぱいになったお腹に満足感を感じながら、ベッドにゴロンと寝転がる。
カルセナ「魔耶、ご飯食べたあとにすぐ寝たら太るよ〜」
魔耶「能力使うとカロリーがめっちゃ消費されるからいいの〜…って、この流れ昨日もやったな」
カルセナ「え?やったっけ?」
魔耶「やったじゃん。ほら、ひまりん家で…って、あれブラッカルだったわ」
カルセナ「ブラッカル…あぁ、もう一人の私ね」
お皿を洗いながら、カルセナが納得したように言う。
魔耶「そうそう。…やっぱりどっちもカルセナなんだねぇ…。あ、皿洗いくらいやるのに〜」
カルセナ「え〜…じゃあ交代でやろうよ。自分のお皿は自分で洗うって感じで」
魔耶「はーい」
返事を返しながら自分の左手を見つめる。もうほとんど痛みはなくなっていて、触ると痛いなくらいの感覚だった。
…あれ?普通だったらまだズキズキと痛みがあるはずなのに。治るの早すぎないか?
魔耶「…?」
カルセナ「魔耶〜。こうたーい」
魔耶「あっ、はーい」
…気のせいか。魔族だからな、少しくらい回復が早くたって不思議じゃないよね。
自分の変な考えを振り払うように、皿洗いに集中した。

295:多々良:2020/04/29(水) 18:18

カルセナ「そう言えばさ〜」
魔耶「ん、何?」
カルセナ「どっちもあんま驚かなかったけど....この世界って凄い不思議じゃない?ドラゴンみたいなモンスターはいるし、変な事件は起こるし....」
魔耶「そうだね〜」
洗い物中の手をカチャカチャと動かしながら応える。
カルセナ「ドラゴンなんて本でしか見た事ないし....怖いけど、そう言うのって、何だかワクワクするんだよね」
魔耶「それは....私もだよ。こんな世界生まれて初めて見たもん」
カルセナ「それもあるかもだけど......私の場合多分あれだな」
魔耶「....あれ?」
そう言うとカルセナは、魔耶の方向を向いて、
カルセナ「魔耶がいる事っ!」
にこりと笑い掛けた。洗い物をしている魔耶の手が一瞬止まった。
魔耶「な...何?いきなり.....」
カルセナ「こんな世界に1人で来ても、今ほど楽しくないと思うんだよね〜。やっぱ最初に魔耶に会えて、良かったなって感じ」
魔耶「それは....ありがとね」
率直に自分の気持ちを放つカルセナに、魔耶も笑みを返した。
カルセナ「今度ご飯でも奢ってあげるわー」
魔耶「ほんと?んじゃあお言葉に甘えちゃおうかな〜....」
くすくすと笑いながら話し続ける。気が付くと、自分の食器を全て洗い終わっていた。
カルセナ「ふぅ....ん、あれ?魔耶、もう左手使えるの?早くね?....あ、でも魔族だからって言うのもあるのかな.....」

296:なかやっち:2020/04/29(水) 18:50

魔耶「!……さ、さぁね。よし、疲れたから早く寝ようよ。あ、先にシャワー浴びなきゃか?んじゃあ行ってくる〜」
自分の思っていたことを言われ、少し焦りながら…逃げるようにシャワールームに入っていった。


魔耶「…はぁ」
一人きりになった空間でため息をつく。
魔耶(ちょっとカルセナから逃げるように来ちゃって申し訳ないなぁ。………左手使っちゃってたけど…やっぱりおかしいよね?回復が早すぎると思うんだけど)
あらためて怪我をした左手を見つめる。包帯をしているため、怪我の状態はよくわからない。
…スルスルと包帯をとって左肩を見てみた。
魔耶「…っ…‼?」
怪我をしたはずの左肩は、まだ少しのキズはあるものの…今日怪我をしたとは思えないくらい回復していた。
魔耶「はぁ…!?な、なにこれ…いくら魔族でも、これは…あり得ない、でしょ…」
何度か瞬きをして確認するが、やはり怪我の状態は変わらない。
魔耶(こんなに回復してるなんて…この回復力は、悪魔くらいなんじゃないか?)
魔耶「……あれ、私悪魔だっけ…?…いやいや、ハーフハーフ。私はハーフなんだから。回復力は悪魔と人間の中間くらい、のはず…」
でも、やはりこの回復量はおかしかった。いくら魔族であろうとも、これは…
魔耶「…なんなんだよ〜…」
訳が分からなくて、思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。

297:多々良:2020/04/29(水) 19:31


カルセナ「...?まぁ、良いか....」
一息ついて、ベッドに寝転ぶ。薄暗い天井をじっと見ながらボーッとしていた。
カルセナ「疲れた....お腹いっぱいになると、何でか眠くなっちゃうね。ちょっと寝ようかな....ちょっと、ね.....」
殆ど参加していないとはいえ、試験で出た疲れも多少あったが為に、すぐ深い眠りに落ちてしまった。

???「.....おかしい」
カルセナ「....うん.....ん?ここは.....あれ、今日は起きてたの....?」
眠い目を擦りながら確認したその者の姿は、魔耶がブラッカル、と呼んでいる人物だった。
ブラッカル「....今目ェ覚めたばっかだけどな」
カルセナ「....で、何かおかしいとか言ってなかった?何が?」
『向こう側』でブラッカルが溜め息を吐く。
ブラッカル「.....魔耶だ」
カルセナ「....え?ま、魔耶....?」
じわじわと溢れ出る動揺を、カルセナは隠しきれなかった。
カルセナ「で、でも今さっきまで、魔耶は何の変わりも無かったよ....??」
ブラッカル「外見はな。だが、さっき魔耶から感じたのは違った。あんなの魔耶じゃねぇよ」
カルセナ「......どう言う事?」
ブラッカル「は?」
パッと投げ掛けられた言葉に、疑問の表情が浮かぶ。
カルセナ「魔耶は魔耶でしょ」
ブラッカル「まぁそれはそうだが.....あいつは違ぇっての。だから今の内に、あいつをどうにかした方が良いと思うぜ。親友であれな」
その言葉を聞いた瞬間、カルセナの表情が曇った。
カルセナ「.....それこそ、おかしいでしょ?」
ブラッカル「.....あぁ?」

298:なかやっち Longlong.:2020/04/29(水) 20:33

魔耶「あがったよ、カル……って、あら?」
部屋に戻ると、カルセナがベッドの上でスースーと寝息をたてていた。寝てしまっているようだ。
魔耶「カルセナ〜、あがったよ〜。カル〜?………まぁいっか」
カルセナを起こすことは諦めて、隣のベッドで自分もゴロリと横になる。

魔耶(……)
一人になれたんだ、この傷のことについて冷静に考えてみよう。…今日はなにをしたかをまず振り返ろう。
魔耶(今日したことは…甘めのコーヒー飲んで、試験で怪我して、輸血してもらって、ハンバーグつくって、お風呂入って…)
…当たり前だが、怪我が早く治るような行動なんてしてない。
魔耶(本当なら怪我が早く治るのは良いことだけど…こんなに早いと流石に怖いというか…)
普通に考えて不気味だ。
魔耶「…あーあ…訳わから〜ん…寝るか」
とうとう考えることを放棄し、寝ることにした。考えてもわからないし、怪我が早く治るのは不気味だけど悪いことではないし。
魔耶「今日は色々あって疲れたし。おやすみ〜……」



??「……だめだよ…。もう、これ以上は…」
魔耶「…?」
知らない声が聞こえる。
??「これ以上したら…戻れないよ。変わっちゃうよ」
魔耶「…なにをしたらだめなの?なにが変わっちゃうの?」
知らない声に向かって疑問を問いかける。が、??には声が聞こえていないのだろうか。私のした問いかけに答える様子はなかった。
??「だめだよ。これ以上やったらだめだよ…」
魔耶「だからなにが?…私のあの傷のことと関係があるの?」
??「…だめだよ…変わっちゃうから…君が君じゃなくなっちゃうかも…」
魔耶「聞いてる〜?聞こえてないの〜?」
??「……もう戻れないから…」
意味が分からないことを言う声に少しイライラした。
魔耶「ねぇ!なんのことをいってるの?」
少し大声で言ってみる。すると、ようやくまともな答えが帰ってきた。
??「君のことをいってるよ」
魔耶「私がなにをしたらだめなの?」
??「悪魔に関わること」
魔耶「え…?悪魔になんて関わってないよ。っていうか私が悪魔と人間のハーフなんだから…」
??「悪魔状態にならないで。もうならないで」
魔耶「悪魔耶のこと?なんで?」
??「君の細胞が変わっちゃう。性格が変わっちゃう。今の君がいなくなっちゃう」
魔耶「…??私がいなくなる…?」
??「君の人間の細胞はどんどん悪魔の細胞によって侵食されてる。また悪魔状態になったら、君は悪魔になっちゃうよ」
魔耶「あ、悪魔になる…の?悪魔になったらどうなっちゃうの?」
??「君がいなくなるよ」
…訳が分からない。悪魔耶になると、私が私じゃなくなる…?
魔耶「もう何度かなっているじゃない。どうして今更?」
??「もう分かってるでしょ。今日わかったでしょ。もう君が人間でいられる時間は少ないよ」
また会話が噛み合わなくなった。
魔耶「どういうことなの?私は人間じゃないじゃん」
??「僕は君に変わらないでほしい。でも、もう一人の君は外に出たくてしょうがない。暴れてる。もし友達のことを大切に思うなら…もうなっちゃだめだよ」
魔耶「友達…?カルセナのこと?もう一人の私…??」
??「君が悪魔になりたいなら、僕は止めないけどね…」

299:多々良:2020/04/29(水) 22:05


ブラッカル「....何だ?私の言っている事が不満なのか?」
カルセナ「当たり前でしょ。魔耶をどうにかした方が良い....って、魔耶の事どう思ってんの?」
ブラッカル「....良いか、魔耶は確かに大切な仲間だ。但し、お前にとっては、な」
カルセナ「私にとって...は....?」
ブラッカル「私が魔耶を守ってやったり、一緒に協力してやってる理由が分かるか?」
カルセナ「それは....仲間だから」
ブラッカル「魔耶の事を大事に思ってる、お前のご機嫌を取る為だよ」
カルセナ「......ッ!!」
背中がざわっとするのを感じた。驚きのあまりか、言葉が出てこない。
ブラッカル「私の力は、本体の活力がメインとなってつくられる。だから私は、その活力を切らさない為に、お前の大事な存在である魔耶と協力してやってる。つまり、だ。お前が魔耶の事を大事に思ってなければ、私にとって魔耶はどうでも....」
カルセナ「「 魔耶を馬鹿にするなよッ!!! 」」
台詞を言い終わる前に、カルセナが怒鳴った。
ブラッカル「....ったく、ゴチャゴチャうるせぇな....テメェは黙って私の言う事を聞いてりゃ良いんだよ!」
カルセナ「やだね!!誰が聞くもんか!!」
ブラッカル「テメェが私の言う事を聞いて損した事あったか!?幹部にやられそうになったときも、試験で一発決め落とす前も!!つーか、まずそれらの場面で私が出てなかったら、どうせテメェはもうここには居なかったんだよ!!分かったか!?」
カルセナ「それとこれとは訳が違う!!それら場合の話と、今の、魔耶の状況をどうするかなんて話は関係ないじゃん!!魔耶は私の大事な仲間なんだから!!ちゃんと守ってよ!!」
ブラッカル「そうか、1つ言い忘れてたけどな、大事なものと命だったら私は後者を優先するからな!!こっちはテメェの事を考えて言ってやってんだ!!この話を聞かねぇんだったら、もう窮地に追い込まれたって助けてなんかやんねーからな!!」
カルセナ「ふん、助けて貰わなくたってどうにかするよ!!魔耶の事は自分で考える!!」
ブラッカル「ッ....あーそーかよ!!じゃあ勝手にしろ!!」
激しい言い争いの末、ブラッカルは舌打ちし、背を向けて喋る事を止めた。
カルセナも同じく背を向けて、この夢から覚める事を決めた。


カルセナ「....う.....ん、魔耶....もうあがってたのか....」
ベッドで寝息をたてて寝ている魔耶が視界に入る。窓の外は暗闇に包まれていた。
カルセナ「....私も、シャワー浴びて来るか」
ゆっくりとベッドから立ち上がり、バスルームに向かった。

300:なかやっち:2020/04/29(水) 22:44

魔耶「っ…うーん…?」
謎の夢から覚め、現実に戻ってきた。体を起こす。
魔耶「……なんだったんだろ、あの夢…なんか…すごく大事なことを言われた気がする…」
??の言っていることは意味が分からなかったが、辛うじてわかったことはすごく重要なことだった。
魔耶「確か…悪魔耶になると私は悪魔になっちゃって、別の私になる。…ブラッカルみたいな感じになるのかなぁ…」
もう一人のカルセナを思い浮かべる。私の中にも、もう一人の私が存在しているのだろうか…。
魔耶(とにかく、これから先は悪魔耶にならないほうがいいのかな。…細胞が悪魔に侵食されちゃう、か…)
…ようやく、この傷の疑問が解けた。私の体は今…悪魔に近づいていってるんだ。そう考えれば辻褄が合う。あの夢は真実を語っていたんだろう。
魔耶(じゃあ本当に…私が悪魔になっちゃったら、私はいなくなるの…?他の誰かが私になるの…?)
…不意に、涙がボロリとこぼれた。…その涙は、怖さと不安からの涙であった。
魔耶「私…いなくなっちゃうの?まだカルセナと冒険したいのに…いつか、この世界から消えちゃうの?カルセナと会えなくなる時が来るの?」
涙は次から次へと溢れてきて、止めようと思っても止めることができなかった。

301:多々良:2020/04/30(木) 07:15


シャワーの水音が響き、湯気の立ち上るバスルームの中で一人考え事をする。
カルセナ「(あいつの言ってる事はおかしい.....だから、これで良かったよね....)」

「あんなの魔耶じゃねぇよ」

ブラッカルに言われた事を思い返す。魔耶が魔耶でない....?どう言う事なのかさっぱり分からない。魔耶の身体に何か起こっているとでも言うのだろうか。外見では分からない、何かがーー。

「お前が魔耶の事を大事に思ってなければ、私にとって魔耶はどうでも....」

思い返しただけでも、自分の事しか考えてないかの様な発言にいらっとする。だが、大事なものを守ってくれるという点に関しては、どうも引っ掛かる部分がある。試験中、大事な帽子を落としたときには真っ先に拾いに行ってくれなかった。私にとっては、命より大事な帽子であると言うのに。
カルセナ「.......」
蛇口をキュッと捻り、シャワーを止める。常備してあるタオルを手に取り、髪の毛を拭き始める。
カルセナ「(....魔耶をどうにかしろなんて言われたって、今の私には何も出来ないし......)」
ネガティブな考えばかり頭に浮かんでくる。
いや、駄目だ。まだ何も事件は起こってないし魔耶も普段通りだ。こんな顔をしていたら不審に思われる。いつも通り、笑顔でいよう。
嫌な思考を無理矢理振りほどき、気持ちを整える。ささっと寝間着に着替え、魔耶のいる部屋へと戻った。

302:なかやっち:2020/04/30(木) 10:14

魔耶「…どうすれば、いいんだろ…」
??は、日々私の細胞が悪魔の細胞によって侵食されていると言っていた。つまり…悪魔耶にならなくても、いずれは悪魔になってしまうということだ。
悪魔耶になるとその時期が早まってしまうというだけで、いずれは…
魔耶「っ……」
友達のことを大切に思うなら……カルセナのことを大切に思っているなら…変わってはいけない。つまり、私が変わるとカルセナになにかしらの被害があるということだろうか。
魔耶(…いつ変わるかも分からない…ずっとカルセナと過ごしていれば、いやでもそのときはやってくるはず…。カルセナを、傷つけてしまうかもしれない…)
確かに私はカルセナと一緒に過ごしていたいと思ってる。でも、そのせいでカルセナが傷ついてしまうのは…私の願っていることではない。不本意だ。
…ここから、離れるべきだろうか。カルセナから離れて、北街から離れて…。
魔耶「………」
カルセナ「ーーあがったよ〜」
魔耶「…‼」
急に聞こえたカルセナの声に驚く。色々なことを考えていた頭が、一気に現実に引き戻されていった感じがした。
カルセナ「魔耶?起きてたんだ…って涙目じゃん‼なになにどうしたの!?」
魔耶「…カルセナ……」
また涙が溢れてきた。
カルセナにこのことを打ち明けるべきだろうか……。本当は、全部話してしまいたい。全部話して、二人で解決策を探して、この気持ちをすっきりさせてしまいたい。
…でも、心配させてしまうだろうか。私から離れていってしまうかもしれない。私のことを恐れてしまうかもしれない…。それは、自分から別れを切り出すよりももっと辛い。
魔耶「…なんでも、ないよ」
私は自分でも分かるくらい無理矢理な笑顔をつくった。

303:多々良 バカ短けぇ。:2020/04/30(木) 11:15

カルセナ「魔耶......?」
魔耶「ほんとに、何でもないから....!ッ」
何でもない筈が無い。普段通りならば、魔耶が理由なく泣いている事はないといっても良いのに。
気持ちを振りほどいた頭の中に、又もや嫌な考えが入ってくる。
カルセナ「......話して」
魔耶「....え?」
ブラッカルから言われた事を脳裏で再生し、魔耶の状況を理解する為に話を聞く事を求めた。
それに、安易なものだったが、確かに誓ったのだ。魔耶の事は自分で考える、と。
カルセナ「なんかあるんじゃないの?....魔耶が良ければ、話して欲しいな...」
近くの椅子に座って、魔耶を見る。
話をするかどうかは魔耶の勝手だ。ただ、出来るだけ魔耶の情報が欲しかった。今はこの世界を出る情報よりも大事なものに思えたのだ。

304:なかやっち:2020/04/30(木) 11:58

私はカルセナのまっすぐな瞳を見つめた。彼女の瞳は、私がどんなことを話しても受け入れてくれそうな目だった。
…その瞳を見て、カルセナには話そうと思った。ゆっくりと話しだす。
魔耶「……私、今日怪我したじゃない」
カルセナ「…?…うん、ドラゴンにやられたやつ?」
魔耶「それ。……その傷の回復がすごく早かったのよ」
カルセナ「そうだね。皿洗いのときにはもう使えるようになってたね。…でも、それって魔族だったからじゃないの?」
魔耶「確かに私は魔族だけど…それでも、異常に早かったの。悪魔と同じくらい早かったの」
カルセナ「…それで?」
カルセナはその続きが知りたくて、話を先へと促した。
魔耶「おかしいなって思ってたんだ。そしたら、夢を見た」
カルセナ「どんな夢?」
魔耶「知らない声が、私に言うの。『君の細胞は悪魔の細胞に侵食されてる。このままだと、君は悪魔になっちゃう。別の君になっちゃう』って…。傷の治りが早かったのも、きっと私の体が悪魔に近くなっていってるからなんだよ。私が完全に悪魔になったら、今の私の人格はいなくなっちゃうんだ。…いつか、私はこの世界から消えちゃうんだよ…。別の私になっちゃうんだよ…ッ」

305:多々良:2020/04/30(木) 14:07

絶え絶えな声で、魔耶は真実を話してくれた。その目には、溢れんばかりの大量の涙が溜まっていた。
魔耶「もうどうしたら良いのかな、私......ッ」
カルセナ「.........」
ブラッカルの言っていた事は本当だったらしい。だが、言われた通りにしようとは思わなかった。
魔耶「......こんな事言ったって、何の役にも立たないよね.......ごめん...」
謝られることなんか無い。むしろ何も考えれていない、私が謝りたいくらいだった。
カルセナ「....ッ、大丈夫!!」
魔耶「....?」
何が大丈夫なのだろう。自分で言った事が一瞬、良く分からなくなった。魔耶の泣いてる顔を見たくない。恐らく、そういう思いから出た言葉だった。
カルセナ「きっとどうにかなるよ!私達がこの世界に来て、乗り越えられなかった事は無いんだからさ!だから、大丈夫.....ッ」
確信も無かった。言葉を並べていく程、自分の言った事の無責任さがじわじわと伝わってくる。でも今は、これが最善の策だ。ここで黙り込んでも、否定しても結果は悪くなる一方なのだから、そう考えた。もう一人の自分に何と言われようとーー

.....ブラッカルも、今の私と同じ気持ちだった?
同じ様に、自分が思う『最善』を貫きたかった?

....でも、魔耶の事はどうでも良いと言わんばかりの発言をしていた。
.....やっぱり向こうが間違っている筈だ。私は魔耶を、そうとは思ってないんだから。

カルセナ「だから....泣かないでいて、魔耶....」

306:なかやっち:2020/04/30(木) 15:12

魔耶「……ありがとう、カルセナ……。そうだよね。きっと、大丈夫だよね…」
カルセナのその言葉から、本気で私を心配してくれているのだとわかった。…これ以上カルセナを不安にさせたくない。そう思って、この言葉を放ったのだった。…本当は大丈夫なはずがないと分かっているのに…。
魔耶「まだ時間はあるだろうからね…この世界なら解決策も見つかるかもしれないし…」
思っていることとは裏腹の言葉が自分の口から出てくる。もしかしたら、私は強がりなのかもしれない。
時間がどれくらい残されているかなんて自分でも分からないし、私の特殊なケースを救う方法がこの世界にある確立は0に等しいだろう。
カルセナ「そうだよ。きっとなにかしらの方法はあるよ。諦めたらおしまいなんだから、希望を持っていようよ…!」
魔耶「…うん」
彼女が私を勇気づけようとしてくれているのがわかった。
魔耶「カルセナがいてくれて良かったよ。…出会えて良かった。ほんとに、ありがとう……」
カルセナ「はは、泣かないでよ」
魔耶「いいじゃん。これは嬉し泣きなんだから…」
…確立は0に近いかもしれないが、足掻けるだけ足掻いてみよう。今の私が私でいられる時間を…カルセナと過ごせる時間を大切にしよう。そう思った。

307:多々良:2020/04/30(木) 22:27

カルセナ「取り敢えず、今日のところは寝て、また明日にしよう」
魔耶「そうだね、もう良い時間だもんね」
少し安心感出た途端、考え疲れた体が大きな欠伸をした。
二人とも今日は良く眠れるか心配だったが、気持ちを落ち着かせて寝る事にした。
魔耶「おやすみー」
カルセナ「ん、また明日」
部屋の電気が、パチッと消えた。


カルセナ「....またここか」
いつもブラッカルと話をしていた場所。『向こう』には、いつもなら居る筈のブラッカルの姿は見えなかった。無理もない。あんな喧嘩をしたのだから。
カルセナ「それにしても、喧嘩して話すことないってのに....何でここに来させられるんだろ」
何か理由があるのだろうか。あったとしたら、何をさせようとしているのだろうか。
カルセナ「相変わらず、私の夢は意味分からないのばっかだなぁ....一回目ぇ覚めるのは嫌だけど、早く抜けよっと....」

「......して」

カルセナ「....ん?何か聞こえた様な......まさかね。ここに私とあいつ以外居るわけないし」
念のためもう一度耳を澄ますが、やはり何も聞こえやしなかった。
カルセナ「空耳かぁ....」
何も無い事を確認して、この夢から覚める事にした。

カルセナ「.......ふぅ(....まだこれだけしか経ってないのか....)」
枕元の時計を見て、まだ数十分しか経っていない事に気付く。
カルセナ「(そりゃそうか、あんだけしか滞在しなかったしね)」
隣のベッドには、疲れきった顔でスヤスヤと寝ている魔耶がいた。
カルセナ「(......もっかい寝るか)」
再び布団を肩まで掛け、眠りに就いた。

308:なかやっち:2020/04/30(木) 23:15

気がつくと自分は真っ白な空間の中にたっていた。白すぎて床も壁も分からないくらい真っ白な部屋に、たった一人で。
…私は確かに眠ったはず。宿にいたはず。ではこれは…
魔耶「……夢?」
でも夢にしてはずいぶんはっきりとしているし、自分の考えがあやふやではない。ここはどこであろう?
??「…こんにちは〜」
不意に後ろから声をかけられた。反応して振り向く。
??「初めまして、かな?私は君のことを知ってるけど、君は私のこと知らないよね〜」
魔耶の後ろにいたのは、鋭い角と大きい漆黒の翼を持った…自分だった。その体は複数の鎖で繋がれている。
魔耶「…わ、私…?」
??「そう。私は君だよ。君は私。…まぁ、私は君の悪魔の部分なんだけどね」
口調といい、声の高さといい、鎖に繋がれた私は自分とまったく同じだった。
魔耶「あなたが悪魔の…私…?」
??「そーそー。まぁ悪魔耶とでも呼んでよ」
魔耶「悪魔耶…」
悪魔耶「うんうん。自分と話すのって変な感じだね〜?」
魔耶「…」
私の沈黙は気にしていないのか、悪魔耶はそのまま言葉を続けた。
悪魔耶「やったぁ。君に会えたってことは、もうすぐ私が外にでられるってことだよね。君と私の立場が変わって、君は鎖に繋がれる。あぁ、楽しみ〜」
魔耶「っ…!」
立場が変わる…私が、鎖に繋がれる…?
魔耶「な、なにそれ!なんで私が繋がれるの?なんで君が外に出られるようになるの!?」
悪魔耶「え〜。簡単なことじゃない?人間の君がいままで外にいたから、今度は私の番!ってこと!」
魔耶「なっ…!……外にでて、なにをする気なの…?」
悪魔耶「うーん…色々やりたいことはあるけど、まずはね〜…あっ!」
いきなり悪魔耶が驚いたような声を出した。
悪魔耶「もう朝だよ。続きはまた今度ね〜」
悪魔耶がそう言うと、あたりの景色が歪みだした。
魔耶「まってよ!まだ聞きたいこと…が………?」
目覚めたばかりの体に朝日が眩しかった。

309:多々良:2020/05/01(金) 07:29

魔耶「......はっ!!...もう、何なんだよ.....」
夢の様な空間から目覚め、少し溜め息を吐く。
カルセナ「....あ、魔耶。おはよー」
魔耶「え、あぁ、おはよ....」
キッチンからひょっと顔を出したカルセナに挨拶を返す。それでも魔耶は、昨日の夢の事が気になって仕方がなかった。
カルセナ「何か悪い夢でも見てたん?」
魔耶「え?」
カルセナ「いや、何かちょっと魘されてたから」
魘される程の夢では無かった気がするが、現実の魔耶はどうやら少し苦しんでいたらしい。
魔耶「うん、まぁねー.....てかカルセナ、起きるの早いね」
カルセナ「あー....何か良く眠れなくってさ....」
魔耶「そっちこそ、何か悪い夢見たんじゃないの?」
カルセナ「別に悪い夢、ではないんだけどね〜......まぁ、取り敢えずご飯食べれば?何故かパンとか買い溜めしてあるし」
ブラッカルが出ているときに沢山買ったものだ。その中の1つを頬張りながら魔耶に朝食を勧める。
魔耶「んー、そうだね.....んじゃ食べるわ」
寝起きの体を起こして、キッチンへと向かう。
窓からは木々を萎えさせるかの様な、冷たい風が吹いていた。

310:なかやっち:2020/05/01(金) 07:57

カルセナ「…んで、今日はなにする?」
魔耶「…なに、って…?」
パンを頬張りながら、質問を質問で返す。
カルセナ「今日やることだよ。やらなきゃいけないことたくさんあるじゃん?」
魔耶「あぁ…そうだね。元の世界に帰る方法を探す、私の状況を解決する。大きく分けて2つだけど、どっちを優先するかだね」
カルセナ「優先順位は魔耶のことだけど…。元の世界に戻る方法はその次でいいよ」
カルセナが私にむかって笑いかけてきた。それに反応して私も微笑みを返す。
魔耶「ありがとう。…んで、私の状況を良くするために、今日なにをするか考えなくちゃか…」
カルセナ「そゆことそゆこと。今日なにをするかっていうのは、そーゆー意味」
魔耶「あ、そういう意味ね。うーん…図書館に行くか…誰かに情報を聞き出すか…」
カルセナ「誰かに聞く………あ、はいはーい!良い案がありまーす!」
その場でカルセナが勢いよく手を挙げた。
魔耶「んー?なんか思いついた?」
カルセナ「うん!…ニティさんのところ、行ってみない?」

311:多々良:2020/05/01(金) 10:47

魔耶「あぁ〜....確かに、あの人なら色々知ってるかもだしね」
カルセナ「ね!だから、準備終わったら行ってみよう!!ほら、多分まだ岩場にいるだろうからさ」
魔耶「んじゃあそうしよっかー」
朝食を食べ終わった後、いつもの通り、歯磨きや着替えを済ませ、宿の外に出た。
カルセナ「...よし、行こ!」
魔耶「おー、確か向こうの方だったよね」
北街方面とは真逆の、南を指して確認した。
カルセナ「自分で言ってなんだけど、居るといいなぁ.....何か心配性発生しちゃう....」
魔耶「大丈夫なんじゃない?きっと居るよ」
そうして二人は飛び立ち、ニティが居るであろう岩場へと向かった。

魔耶「.....何か懐かしいなぁ、こっち方面」
冷たい風を翼で切りながら、この世界に来たばかりの時を思い出す。
カルセナ「あんまり日にち経ってるような感じもしないのにね〜」
魔耶「色々あったから、自然と懐かしくなっちゃうのかな」
気分良く空を飛んでいる内に、目的の岩場が見えてきた。
カルセナ「あっ、あそこじゃない?」
魔耶「ホントだ〜、意外と早く着いたね」

312:なかやっち:2020/05/01(金) 11:27

二人でスタっと地面に降り立ち、岩場に向かって歩いていく。
魔耶「カルセナが変なキノコ食べちゃって、ニティさんに助けてもらったんだよね。あのときは本気で心配したなぁ〜」
カルセナ「……これからは、気を付けます」
魔耶「あはは、ほんとだよ〜。………って、あれ?」
魔耶が驚いたような、不思議がっているような声を出した。
カルセナ「…?どしたの?」
魔耶「いや、なんか羽がしまえな…あっ、しまえた」
魔耶の漆黒の翼がシュッと小さな音をたてて消えた。
カルセナ「……」
魔耶「……」
魔耶が翼をしまってみせてくれたときのことを思い出す。彼女は『悪魔は翼をしまえないけど、魔族の私はこの通りよ』なんて言っていた。…つまり、翼がしまいにくくなっているってことは…
魔耶「…急いで情報を集めたほうがいいのかもね」
カルセナ「そうみたいだねぇ…」


ニティさんがいた岩場に到着し、覗き込んでみる。
カルセナ「ニティさ〜ん?いらっしゃいますか〜?」
すると、奥から懐かしい声が聞こえた。
??「誰だ?…いや、声を聞けば分かる。久しいな。なにか用か?」
この口調…声の高さ…間違えようがない。いてくれて良かった。
魔耶「ニティさん!」
ニティ「二人でここに来たのか。立ち話もなんだ、入れ」
岩場の奥からニティさんが顔を見せた。一週間程度会っていなかっただけなのに、彼女をみるのがとても久しぶりに思えたのだった。

313:多々良:2020/05/01(金) 12:18

見慣れた岩場の、洞窟内の地面に座る。
ニティ「....うむ、二人共、少しは成長している様じゃないか」
魔耶「見ただけで分かるの?」
ニティ「勿論、それ程おおっぴらに気をさらけ出していれば、見抜くのは容易い事だ」
そう言うニティからは、これっぽっちも覇気がしなかった。きっと自分の実力を相手に見抜かれない様、隠しているのだろう。
ニティ「互いに、仲間に対する執念が強くなっているな」
カルセナ「そりゃ、色々あったからねぇ.....」
ニティ「カルセナよ」
カルセナ「へ、はい?」
ニティ「お前の執念は人一倍だな。それ程思いが強くなっているのだろう」
カルセナ「あ、そうなんすか.....」
きっとそれには、ブラッカルの分の気持ちも入っている。でないと人一倍になんてそうそうならないだろう。
ニティ「そして魔耶」
魔耶「はい....?」
ニティ「お前もカルセナと同じ様な成長を遂げている....が」
魔耶「が.....?」
ニティは、少し顔を歪めて魔耶に伝えた。
ニティ「何か....自分で自身の異変などに気付いた事はないか?」
魔耶はドキッとした。そこまで見抜かれる程、侵食されて来ていると言う事なのか。

314:なかやっち:2020/05/01(金) 13:15

魔耶「…分かります?」
ニティ「あぁ。前にはなかった邪悪な気がかすかに感じられる」
やっぱりそうなのか。あの夢は本当で、私は…。
もしかしたらという小さな希望を持っていたが、あの夢は真実を語っていたんだ。
カルセナ「…今日はそのことについて相談しに来たんだ」
ニティ「なるほどな…。確かにこれは簡単な問題じゃなさそうだ。詳しく教えてくれ」
魔耶「……はい。実は…」
それから私は語り続けた。昨日の試験のこと。傷の治りがおかしかったこと。夢をみたこと。このままだと悪魔になってしまうこと。…たまに辛くなって声が止まることもあったが、分かっていることは全て語った。


ニティ「…魔耶は悪魔と人間のハーフだったのか…。そんな種族は初めて知った」
カルセナ「神様なのに?」
ニティ「あぁ。神様なのに、だ。普通なら悪魔と人間が結婚するなんてありえない。悪魔は人間のことを下に見ているからな。…それに、たとえ結婚したとしても子供ができるなんて……確立はとても低いだろう」
魔耶「……」
私はニティさんとカルセナの会話をぼんやりと聞いていた。…やっぱり、こんな種族…普通じゃないんだ。
カルセナ「…魔耶?」
私の様子をおかしいと感じたのであろう。カルセナが声をかけてきた。
魔耶「……が…った」
カルセナ「…え?」
魔耶「普通が…よかった…」
つい、思っていたことを口に出してしまった。
魔耶「私も普通の種族だったら…こんな状況にならなかったのに。なんで私は…普通になれないの…?どうして私は、生まれたの…?」
なんで、なんでばかりが浮かんでくる。
辛かった。苦しかった。訳の分からない状況に追い込まれた自分の心はもう修復できないほどにボロボロになっていて。自分のおかれている状況を脳みそは理解したくなくて。
魔耶「どうして…?私は、ただ普通でいたいのに……普通でいたいだけなのに……ッ」
カルセナ「…魔耶……」
魔耶「…っ…………ごめん、ちょっと…外の空気吸ってくるね……」
この場にいるのが気まずくなって、私は外に出た。じゃないと、このやり場のない怒りと悲しみを二人にぶつけてしまいそうで怖かったから。溢れてくる感情を抑えられそうになかったから。

315:多々良:2020/05/01(金) 15:47

ニティ「....やはり、重要な問題だったな」
カルセナ「.......」
ニティ「....もし」
カルセナ「....?」
ニティ「仮に、もし魔耶の体が全て悪魔の細胞で覆われてしまったら、恐らく後戻りすることは出来ないだろう....」
深刻な顔でカルセナに伝える。
カルセナ「....それは分かってるけど...」
ニティ「....私の神としての役割は、今いる地を見守る事だ。魔耶が悪魔になってしまった場合、私が対象せざる負えない状況になる。だから出来るだけ、そんな事にしたくはないが....あの様な形は初めてだからな....どうしたものか」
目の前で燃え盛る焚き火に、薪を放り込む。その薪を取り込んで少し炎が強くなる様子を、カルセナはじっと見ていた。
カルセナ「.....悪魔の細胞と、うまく合わさる事は出来ないのかな.....」
自分の意識の中で暮らす、ブラッカルの様に。
ニティ「....それは難しいだろう。真逆の関係である種族の細胞と調和出来る事はほぼ有り得ない」
カルセナ「そっか......」
暫く沈黙が続き、洞窟内に聞こえるのは森の動物達の鳴き声と、焚き火の燃える音だけだった。
その沈黙を破るかの様に、ニティが軽く溜め息を吐いた。
ニティ「.....仕方が無い、何百年も戻ってなかったがな....」
カルセナ「?」
ニティ「私が.....天界へ向かい、情報を探しに行こう」

316:なかやっち:2020/05/01(金) 17:57

魔耶「っ……はぁ…」
嫌なことばかりが頭に浮かぶ。…だめだなぁ…私。
魔耶(…感情を抑えないと…。落ち着け、自分…)
自分は悪魔と人間のハーフだと知らされたときも、人間の子供に恐れられたときも…ここまでの動揺はなかった。こんなに気持ちが落ち着かない時間は生まれて初めてだろう。
魔耶(…自分が消えちゃうから…?いや、それもあるけど…)
なぜここまで動揺してしまうのか。原因はわかっていた。
…カルセナともう会えないということだ。カルセナはいつも私と一緒にいてくれて、どんなときも私を見捨てようとなんてしなくて……命の恩人であり、大切な親友だった。
魔耶「…やだなぁ。まだこの世界でカルセナと過ごしてたいのに…」
まだ消えたくない。300年も生きててワガママかもしれないけど、もう少しだけ生きていたい。
魔耶「っ……」
涙が頬を伝うのが分かった。
…心が弱くなっているからだろうか?最近の私は、泣き虫だな…。

317:多々良:2020/05/01(金) 19:00


カルセナ「....天界に?」
ニティ「あぁ、上には私より博識な賢者が沢山居る。特に、私の師匠とかがな」
カルセナ「師匠なんて居たんだ....」
ニティ「勿論。その他にも私の古き友や、天界の主である大天使様がいらっしゃる。それだけの人材があれば、何か必ず有力な情報が得られる筈だ。情報だけあっても、行動には起こせぬ確率が高いと見込まれるが....」
カルセナ「いや大丈夫、ありがとう。...あ、じゃあ魔耶に.....」
ふと、外の空気を吸いに行ったときの魔耶の表情を思い出した。
きっと、一人になりたいが為に外に出た。気持ちを冷ます為に、外に出たのだ。
そんな今、魔耶を呼びに行ってしまって良いのだろうか......。
ニティ「.......どうするかは、お前次第であるぞ。無論、私は口を出す事は無い」
少し姿勢を崩すと、壁に掛けている槍の様な武器を手に取り、先を指でそっと撫でる。
しかし、鋭くも温かい視線はしっかりとカルセナに向けられていた。
カルセナ「.......私は....」
そう言い残してスッと立ち上がり、洞窟の外へ魔耶を探しに向かった。
その背中を、先程と変わらない目で見送った。
ニティ「......良い仲間だ。もしかしたら彼奴等には、確率など関係無いのかも知れないな....」

318:なかやっち:2020/05/01(金) 20:29

魔耶「…!」
…後ろから誰かの足音が聞こえてきた。カルセナだろうか…?
急いで涙を拭い、気持ちを整える。カルセナにこれ以上心配をかけさせたくない。
カルセナ「…魔耶〜?」
やはり、カルセナだ。カルセナの声だ。
魔耶「…カルセナ…?ここだよ」
カルセナ「ん〜?あ、ここか」
木々の葉の間からカルセナが顔を出した。
カルセナ「ふう。結構遠くまで行ってたのね〜。………落ち着いた…?」
魔耶「…なんとかね。ごめん、急にいなくなって…」
カルセナ「いやいや、昨日今日で色々あったもんね。そうなるのは当たり前だよ。むしろそうやって感情を抑えられるのがすごいと思うけどね〜?私だったら怒鳴り散らしてたかも…」
魔耶「それはないでしょ…。…ニティさんは?」
カルセナ「ニティさんはね、天界に戻って情報を集めてくれるって。神様達に聞いて回ってくれるんだよ。きっと悪魔にならない方法だって見つかるよ!」
魔耶「…!」
ニティさんが、私のために…。
天界なら有力な情報が得られるだろうか。私は、元に戻れるのだろうか…?
魔耶「…そっか。お礼言わないとなぁ。…少しだけ希望が見えたような気がするよ」

319:多々良:2020/05/02(土) 07:44

カルセナ「取り敢えず、あっちに戻ろ」
魔耶「うん....そうだね」
カルセナは魔耶を引き連れ、ニティが居る洞窟へと戻った。

魔耶「あの、カルセナから聞いたよ。....ありがとう、ニティさん」
ペコリと頭を下げる。
ニティ「いやいや、別に良い。まぁ、その代わり少し時間が掛かってしまうが....出来るだけ早く戻って来れる様にはする。その間、お前は絶対に悪魔状態にはなるでないぞ。良いか?」
魔耶「....分かった」
ニティ「カルセナ、お前もしっかりと見守っておけ」
カルセナ「はーい」
ニティ「......それでは、私は直ぐ様天界へと向かう事にしよう」
武器の先端で焚き火を指すと、微かな青い光と共にシュウッという音がして、何も無かったかの様に火が消えた。

洞窟の外で、一時的な別れの言葉を交わした。
魔耶「じゃあ、気を付けて」
ニティ「うむ、行ってくる。....お前等の拠点は、北街で合っているか?」
カルセナ「そうだけど....」
ニティ「ならば、情報を集め終わり次第そちらに向かおう。その方が効率も良いだろう」
魔耶「ありがとう」
ニティ「......安心しろ、お前等に乗り越えられない壁は無い筈だ」
そう言って二人に会釈をすると、天界へと向かって行った。

320:なかやっち:2020/05/02(土) 09:15

魔耶「…じゃあ、北街に帰ろうか」
カルセナ「そうだね。こっちもできるだけ情報をあつめよう!」
魔耶「うん。頑張ろう…!」
まだ少しの不安はあったが、ニティさんの『お前達に乗り越えられない壁はない』という言葉をもらって少し元気がでた。
魔耶(そうだよね。私一人だと無理でも、二人なら…まだ希望はあるんだ。きっとまだ時間もある。私が諦めてどうするんだ…!)
少しでも諦めていた自分を情けないと思った。私の為に頑張ってくれている人がいるのに、私が諦めたらその人達に申し訳ない。
カルセナ「魔耶?行くよ〜?」
魔耶「あ、はーい」
二人で再び北街に戻るべく飛び立った。まだ朝の空気はひんやりとしていたが、その冷たさは魔耶の頭を目覚めさせてくれているような気がした。

321:多々良:2020/05/02(土) 11:55

街へ戻っている最中、少し話をした。
カルセナ「で、私達はこれからどうする?」
魔耶「何もしない訳にもいかないしね〜....この事について自分でも調べてみたいな」
カルセナ「そうだねー....んじゃ、また図書館にでも行ってみる?」
魔耶「最初はやっぱりそこだよね....情報は限りなく少ないだろうけど....」
カルセナ「じゃあ、そうしますか〜」
図書館と聞いてふと、借りた本の事を思い出した。
魔耶「....前に借りた本って、貸出期間いつまでだっけ?」
カルセナ「あー、そう言えば色々あって忘れてた....」
魔耶「もうそろそろじゃない?」
カルセナ「でもまだ解読しきって無いよね.....でも、今の件の方が先だもんな」
魔耶「....それなら、ついでに返しとこ?」
カルセナ「だね〜」

そんなこんなで北街が目前となった。図書館に向かう前に、二人は宿へ本を取りに行くこ事にした。

322:なかやっち:2020/05/02(土) 14:04



魔耶「本、本…あ、あった」
本は宿のテーブルに置いたままだった。本を手にとって宿から出る。
魔耶「カルセナー。取ってきたよ〜」
カルセナ「お、ありがとう。早速返しに行こうかー」
魔耶「はーい」
二人で図書館に向かって歩きだした。宿からそう遠くないので、そこまで時間もかからないだろうと予想する。
図書館までの短い道のりで二人は会話を始めた。
魔耶「う〜…最近色々あって疲れたなぁ…。こういう時は糖分が欲しくなるんだよね」
カルセナ「わかるわかる。考え疲れた時は糖分だよね〜。まだ宿にチョコが残ってるよ?いる?」
魔耶「チョコもいいけど、私がいま欲しいのはキャラメルなんだよ〜」
カルセナ「ほう?理由は?」
魔耶「キャラメルを食べるとなんか…元気が出るんだよね。どんな時でもキャラメルがあれば生きていける」
カルセナ「ふーん…魔耶そんなにキャラメル好きなのね〜」
魔耶「カルセナの力の源がチョコなら、私の力の源はキャラメルだよ」
カルセナ「…私の力の源ってチョコなの…?」
魔耶「え、前に自分で…あ、それブラッカルだった〜」
ふと、ブラッカルは自分の状況を知っているのかどうかが気になってカルセナに尋ねてみる。
魔耶「ねえ、ブラッカルは私の今の状況知ってるの…?」
もし私が悪魔になってカルセナに危険が迫っても、ブラッカルならなんとかしてくれるかもしれない。もしブラッカルが知らないのなら、知らせておいてほしいが…。

323:多々良:2020/05/02(土) 14:58

カルセナ「あー、知ってると思うよ?」
魔耶「そっか、それは良かった....」
カルセナ「でも、あいつ酷いんだよ!!魔耶の事を変に言いやがって〜....だから今絶賛喧嘩中!」
魔耶「え....そうだったの?てか話したんだ...」
カルセナ「うん。あいつが言った事に私が口出ししたら何か怒って、もう助けてやらないみたいな事言われたからさ〜....本当に、短気で嫌なやつ!!」
昨夜の出来事を思い出しながら、不満気に愚痴を溢す。
カルセナ「....ところで、魔耶が会ったもう一人の自分?との関係はどんな感じなの?流石に協力出来る、なんて事はないかもだけど....」
自分の状況と重ね合わせて、魔耶に問い掛ける。

324:なかやっち:2020/05/02(土) 15:23

魔耶「うーん…カルセナとブラッカルみたいに口調が違ったりはしてなかったな。性格はよくわからんけど、ほとんど私だったね」
カルセナ「え〜…じゃあ協力できたりしないかなぁ?あいつ(ブラッカル)みたいに嫌な奴じゃないかもしれないじゃん」
魔耶「それは…どうだろうね」
魔耶は彼女が言っていた言葉を思い出した。外に出るのが楽しみだとかなんとか言ってたのに、そのチャンスを不意にするなんて嫌だと思うだろう。まだよく性格も分かんないし…
魔耶「…まあ次会ったら説得してみるよ。期待はできないけど…」
カルセナ「うんうん。…あ、着いたね」

325:多々良:2020/05/02(土) 17:22

前と変わらない綺麗さを保った、大きな図書館に到着した。
魔耶「はぁ〜....何かしらがあるといいけどな....」
カルセナ「ま、探してみよっか」
魔耶「だね〜」
中に入り、受付の人に借りた本を返した。

魔耶「....そういうジャンルの文献は、どこにあるんだろうねぇ」
広い図書館の中、限りなく近いものを求めて探し回る。
カルセナ「こんだけ広いんだもん、どっかにあるでしょ」
魔耶「てか、ジャンル的にはどーゆー風なものなのかな」
カルセナ「う〜ん......魔術系統?」
魔耶「そんなんあるかなぁ〜....取り敢えず全部回ってみるか....」
手分けをして、ありとあらゆる本棚を端からチェックする事にした。
カルセナ「....あ、お菓子の本だ〜。美味しそう....いやいや、こんな事してる暇じゃないわ」
魔耶「....今んとこ無いか....そりゃ、そんな簡単に見つかったら苦労しないよね」

326:なかやっち:2020/05/02(土) 18:53

ふと先ほど返した本を見つけた時のことを思い出した。
…確か、カルセナが適当に選んだ本がそれだったんだよね…
魔耶「頑張れカルセナ、君にかかってる」
カルセナ「まって一人で勝手に考えて勝手に自己解決しないで。どういうことよそれ…?」
魔耶「いやぁ、さっき返した本はカルセナが偶然見つけた本だったじゃん。だから今回もカルセナが適当に選べば見つかるんじゃないかな〜って」
カルセナ「あれは偶然だったんだよ…?今回もそんなことが起こったら、私超ラッキーガールじゃない。偶然の意味わかってる…?」
魔耶「むう…それもそうか…。でも私運がないからな〜。見つけられる可能性が高いのはカルセナだと思うよ」
カルセナ「私もそこまで運があるわけじゃないと思うけどなあ…」
魔耶「私よりはあるよ、きっと」
カルセナ「むしろ最近色々な目にあってる魔耶のほうが見つけられるんじゃない?」
魔耶「そうかな…。プラマイゼロ?」
カルセナ「プラマイゼロ」

327:多々良:2020/05/02(土) 19:30


....まぁまぁな時間が経っただろうか。二人はまだ、需要がありそうな書籍を見つける事が出来ていなかった。
カルセナ「うおぉ〜.....無いなぁ.....」
魔耶「今回ばかりはちょっと大変かもね....」
しかし、諦める訳にもいかない。この間にも、魔耶の悪魔化は僅かながらも進んでしまっているのだろうから。
カルセナ「....何かそれっぽいもの見っけた〜?」
魔耶「う〜んとねぇ.........この妖怪辞典と〜」
カルセナ「ほぉ....」
魔耶「あと、黒魔術の本的なやつ」
二冊の本をテーブルにドサッと置く。これまた、どちらも分厚い本だった。
カルセナ「あっち側は無さそうだったよ」
魔耶「本当に無いんだねぇ、こーゆーの....黒魔術の本とかに、何かの情報とか載ってたりしないかな」
カルセナ「黒魔術って、どんなの?」
魔耶「見る限りはねー.....悪魔召喚とか、呪術とかかな?」
カルセナ「当たり前だけど、怖い系ばっかですね.....悪魔召喚ねぇ.....。悪魔召喚してみて、どうすれば良いか聞き出せば?」
冗談混じりで魔耶に提案する。
魔耶「普通、侵食されてる相手に聞くもんかねこれ....」

328:なかやっち:2020/05/02(土) 20:01

魔耶「…っていうか、そもそも私魔法なんて使えないし…」
カルセナ「え、使えないの?魔耶ならなんやかんやでできそうだと思ってたんだけどな〜」
魔耶「私をどんな奴だと思ってたのよ…。私は魔力をものに変える、これだけ」
カルセナ「魔力を使ってものをつくってるんでしょ?そんな感じで魔法も使えないの?」
魔耶「…」
カルセナ「…魔耶?」
…カルセナの言葉で嫌な記憶が蘇ってきた。
魔耶「…私の魔法を習おうとしたときの失敗談、聞きたい?」
カルセナ「え、なにそれ?聞きたい聞きたい!」
私は軽くため息を吐きながら話し始めた。
魔耶「私を育ててくれた人は魔法をよく使っててね。それを見て私も魔法使いたいって思ったのよ。それで、特訓をすることになった」
カルセナ「育ててくれた人…?親?」
魔耶「いや、親の知人だった人。私の親は私が生まれてすぐに死んじゃったらしくてね、覚えてないや。…んで、特訓してときに私はすごいことに気がついちゃったのよ」
カルセナ「どんなこと?」
魔耶「私に魔法の才能が全くないってこと」
カルセナ「え、なんでそう思ったの…?」
魔耶「私は幼い頃から能力が使えてたみたいでね。魔法を使うために…例えば炎をイメージして、それを出そうとするじゃない?でも私は魔法より能力を無意識に使っちゃってて…何度やっても、固形の炎をつくっちゃうのよ」
カルセナ「それは…能力の才能がありすぎるのかな…?w」
魔耶「そうかも…wどうやってもできなくて、仕方なく魔法を諦めました。…カルセナは、魔法使えたりしないの?」

329:多々良:2020/05/02(土) 22:08

カルセナ「使える訳ないじゃないっすか〜。ただの人間から転生?した、ただの浮幽霊なんですから。未来を読む事しか出来ません」
魔耶「そっかー....」

少し休憩しようと図書館内にある休憩所まで向かい、そこにあったソファに腰掛けた。
魔耶「カルセナの能力って、人間の頃からあったものなの?」
カルセナ「いんや、能力は無かったけど....人間だった頃は展開を予想すんのが得意だったからなぁ....」
魔耶「ふーん、じゃあ浮幽霊になって初めて、そう言う能力を手に入れたって感じか〜」
カルセナ「そんな感じ。何か、自分の年の分だけ未来を読めるっぽい。内容は忘れたけどこの前、めっちゃ限界まで未来を読んでみたことがあってさ」
魔耶「て事は.....110年先まで読めるって事?」
カルセナ「そゆこと。ま、滅多にこの能力使わないけどね〜」
魔耶「そりゃまた何でさ」
カルセナ「えーだって、先の事分かっちゃったら生き甲斐無いじゃん。まぁ既に死んでるから生き甲斐って言わないけど」
魔耶「確かに....それはそうだなー」
話しながら、窓の外をちらっと見た。近くにある公園では、小さな子供達がはしゃいでいる姿が見えた。
魔耶「うーん....中々重労働だなぁ」
カルセナ「そうだねぇ〜......魔耶って、元の世界に居たときは何して過ごしてたの?」

330:なかやっち:2020/05/03(日) 09:31

魔耶「ゴロゴロしてたよ、うん」
キッパリと言い放つ。
カルセナ「ええ…なんかやることなかったの?」
そんな私に少し呆れながらも、カルセナが質問してきた。
魔耶「お金は欲しかったから月一くらいでつくったもの売ったりしたかな。丈夫だから結構売れたのよ〜?」
カルセナ「お店をもってたの?」
魔耶「いやいや、知り合いのお店を月に一回借りてただけよ。…まあほとんど自給自足生活みたいなものだったからそこまでお金は必要じゃなかったかな。料理道具とか必要なものは自分でつくれたし…たまーに街に降りていって食材買ったりしてたけどね」
カルセナ「ふーん…他に何かやってた?」
魔耶「あとは〜…うーん……あ、たまーにお仕事のお手伝いをしてましたよ」
カルセナ「なんの仕事?」
魔耶「街のパトロール…みたいなの。私を育ててくれた人は結構偉い人でね〜。風紀の管理?を任されてて、ちょっとでも街でトラブルが起こったらすぐ駆けつけられるように街でパトロールしてるの。たまに私もそれを手伝う」
「ほとんどはひったくりを捕まえたりとかだからつまんないけどね」と付け足しておいた。
カルセナ「へえ…すごいことしてるんだねえ…警察みたいなかんじか」
魔耶「そんな感じ。…でもほとんどの時間は家で能力を使った遊びとか、散歩とか、ゴロゴロしたりだとか…そんな生活だったからさ。この世界でカルセナと冒険できて、今とっても楽しいんだ〜」
カルセナ「あはは。私も楽しいよ」
魔耶「ありがと〜。…カルセナはどんなことしてたの?」

331:多々良:2020/05/03(日) 09:51

カルセナ「えーとねぇ.....そう言われると、浮幽霊になってからは魔耶と同じような生活をしてたかも....」
魔耶「ゴロゴロしたりとかって事?」
カルセナ「そうそう、マンションの屋上とかでさ。あと.....家族見守ったり?」
魔耶「へぇ〜、良いことしてんじゃん」
カルセナ「少なからず、悪霊ってもんがいたからねぇ.....でも、良いことだけしてたとは言い切れんな」
腕を組んで考える。
魔耶「....何してたのさ」
カルセナ「うーん......悪戯したり、ちょっと食べ物盗ったり....あ、でも家族からだから!店からは盗ってないからね!?」
少し慌てながら魔耶に強調する。
魔耶「ほぉ.....まぁ、家族からなら百歩譲って許そう」
その言葉に、ほっと安堵の溜め息を吐く。
カルセナ「....てか、何で私はそのまま成仏しなかったんだろうね〜」
魔耶「あれじゃない?まだこの世界に残りたいって気持ちが強かったとか....」
カルセナ「あー、ありそう....ま、あのまま成仏したら魔耶と冒険は出来なかったって事で。別にいっか〜」
ソファにずるずるともたれ掛かって時計を見ると、図書館に入って本を探し始めた時間から2時間程経っていた。

332:なかやっち:2020/05/03(日) 13:16

魔耶「…そろそろ2時間くらいか…お腹すいた。なんか食べない?」
カルセナ「食べてる場合じゃないと思うけどね〜」
魔耶「お腹空いてたら脳みそも働かないよ。腹が減っては戦はできぬ!ってね」
その言葉を聞いて、カルセナが私に質問する。
カルセナ「…なんか最初と比べて危機感薄れてない?自分が消えるかもしれないってときに…」
魔耶「え、そうかな…?…カルセナと話して気持ちが楽になったからかなぁ。あとは、二ティさんが解決方法を探してくれてるってのもあるけど。…も、もう泣いたりしないから!今思い返せば恥ずかしいことを…」
あんなに大泣きしていた自分を思い出して赤くなる魔耶。
元の世界では滅多に泣かなかったのに…この世界に来てもう何度も泣いてるなあ。なんか恥ずかしい言葉も言ってたし、すっごく恥ずかしい。
カルセナ「あはは。恥ずかしがれるってことは元気になったってことだね。よかった〜」
魔耶「たしかに元気は元気だけど…そ、それよりご飯だよ〜。なんか食べに行こ!」
カルセナ「はいはい。ちょっと疲れたし、なんか食べて回復しよう」
二人は図書館から出て、二時間ぶりに外に来た。新鮮な空気を肺いっぱいに吸えて心地よかった。

333:匿名希望:2020/05/03(日) 14:45

二人して、大きな深呼吸をして落ち着いた。
カルセナ「ふぅ〜......んで、何食べに行きます?」
魔耶「いつもの所で良いんじゃない?あそこなら何でもあるし」
カルセナ「そうしよっかー」
お昼と言う事もあり、大通りは沢山の人が歩いていた。恐らく、家族連れが多いだろう。
魔耶「いっつも賑わってて、良いねぇ〜」
カルセナ「人混みはあんま得意じゃあ無いんだけどね....ま、すごい静かっていうのよりは良いけど」
魔耶「だよねー....あれ?さっきの図書館、いつも私達が行ってるお店と近いんだー」
カルセナ「え?あ、ホントだ〜。ラッキーだったね」
そう喜びながら、店に入る。
店員「あ、二人共、いらっしゃいませー!!」
聞き慣れた店員の声が店に響く。何度もこの店に通っているおかげで、店員に顔を覚えられていた。空いている席は、まだあった。
魔耶「あー、お腹空いてきた〜」
カルセナ「今日はどうしよう....」
メニューを見ながら、注文を考える。
カルセナ「.....んじゃ、日替わり定食にしよっかな。魔耶はどーする?」

334:なかやっち:2020/05/03(日) 15:53

魔耶「…じゃあ私もそれでー。苦手な食材が入ってたらカルセナにあげるわ」
カルセナ「好き嫌いしてると大きくなれないぞ」
魔耶「…それは身長のことを言ってるのかな?つまり私が小さいと…?」
魔耶がいつもとは違う笑顔を見せる。なんというか…顔は笑っているのに、本当は笑ってないような…私に圧をかけてるような…そんな笑顔。
カルセナ「い、いや別にそういうわけじゃ…っていうか、気にしてんの…?」
魔耶「別に気にしてなんかいないし〜」
少し不機嫌そうな顔をしながらも、クスリと笑って店員を呼ぶ魔耶。

店員「ご注文をどうぞ!」
魔耶「日替わり定食二つお願いしまーす」
店員「日替わり定食二つですね、かしこまりました。少々お待ちください!」
カルセナ「…デザートも欲しいねぇ…」
魔耶「私も…キャラメルが足りない…。またお菓子買いに行くか」
カルセナ「お、いいねえ。チョコ買いだめしてやろー」
店員さんが料理を運んで来てくれるまでの待ち時間ができたので、二人で会話を始めた。

335:多々良:2020/05/03(日) 18:28

魔耶「買いだめしすぎると全部食べれなくて、消費期限切れちゃうぞ」
カルセナ「程々によ、程々に」
魔耶「ま、程々って人それぞれだもんなぁ.....」
カルセナ「そうそう。....あ、そう言えばさー、今日の新聞の広告にあったんだけど、何かこの北街に新しいお菓子屋さんがオープンしたらしいよ〜。知ってた?」
魔耶「そうなの?知らんかったー。今日の朝新聞見るの忘れてたからなぁ....」
カルセナ「後で行ってみない?デザート調達も兼ねてさ」
魔耶「よし、行こう」
カルセナ「やった〜、良かった割引券持って来といて」
魔耶「....て事は、どっちにしろ行こうとしてたのね」
カルセナ「そうでーす」
すぐ近くの厨房からは、二人の会話を押し退けるかの様な声や物音が聞こえる。とても活気があった。
魔耶「....元気だねぇ、このお店は」
カルセナ「何もかも、元気が一番だよ。うんうん....」
独り言の様に魔耶に言い、自分で頷いた。

336:なかやっち:2020/05/03(日) 20:58

魔耶「…元気が一番、か…。そうだよね、どんなときにでも元気は大事だよね……よし!」
カルセナ「ん?なになに、どしたの?」
魔耶「えへへ。さっきも言ったけど、より気持ちを奮い立たせるためにカルセナの前で今誓います。私、もう泣かないようにします!」
元気よく手をあげて、少し語尾を強調する魔耶。
カルセナ「…それはいいことかもしれないけど…無理して辛いのを我慢しないでよ?そっちのほうが魔耶が泣いてるよりももっと辛いから」
魔耶「分かってるよ。無理するつもりはない。…ただ、後ろ向きに考えて泣いてるよりは前向きに…ポジティブにいこうかと思ってね。カルセナをこれ以上心配させたくないし、泣いてる暇があったらそれを解決できないかを考えないと」
カルセナ「…なるほどね。ほどほどに頑張って」
魔耶「ほどほどに頑張ります」
カルセナと話していて、心が朝よりも強くなったような気がする。でなければこんな発言はできなかったであろう。
…もう泣かない。明るく、前向きに生きる。たとえ悪魔になる一秒前になったって、笑っててやる。


店員「お待たせしました!」
店員の元気な声とともに料理が運ばれてきた。

337:多々良:2020/05/03(日) 22:14

魔耶カル「あ、ありがとうございまーす」
店員「ごゆっくりどうぞ〜」
腹ペコだった自分の目の前にたった今、温かい料理が並んだ。
魔耶「お、今日は生姜焼きかな?美味しそう!」
カルセナ「だねー、早速食べましょうか」
魔耶カル「いただきまーす!!」
手を合わせ、元気良くいただきますの挨拶をした。
ほかほかのご飯と、肉汁が染み出ている生姜焼きを頬張る。
カルセナ「もぐもぐ.........あー、うまぁ〜い.....」
魔耶「活力沸いてくるねぇ〜、このメニューなら.......もぐもぐ....後半も頑張ろう!」
カルセナ「おぅよ!!絶対に見つけてやる!」
空っぽの胃にご飯が入った事で、やる気がどんどん満ち溢れてくるのが分かった。魔耶の言っていた、『腹が減っては戦は出来ぬ』と言う言葉は本当なのかもしれない。

カルセナ「....所でさ〜」
魔耶「ん?どうしたの?」
カルセナ「図書館は全部探すつもりではあるけど.....何も手掛かりなかったらどーする?次はどこに頼る?」
少し頭を傾げながら、飲んでいた水の入ったコップを置く。
魔耶「あー.....どうしよっか.......ま、その時考えれば良いんじゃないかな?ニティさんにも頼む事は頼んであるし」
カルセナ「そっかー、だったら別に良いか....」

338:なかやっち:2020/05/03(日) 22:31

魔耶「とにかく、食べ終わったらまた図書館に行かないとね。…あの図書館だけで何日…何週間かかるか…」
カルセナ「そんなにかからないでしょ。そういうジャンルのところだけ探せばいいんだから…全部の本を見ていくわけじゃないんだよ?」
魔耶「あ、確かに」


カルセナ「あー美味しかったぁ〜」
お店から出て、カルセナが満足そうに息をはいた。
魔耶「ね〜。常連になっちゃうわ……。…さて、図書館行こうか?」
カルセナ「ストップ!その前に、なにか忘れていないかね?」
カルセナの突然の言葉に首をかしげる。なにかあったっけ…
魔耶「ん〜?なにが…あ、デザート?」
カルセナ「うむうむ。図書館の後だといいやつが売り切れてるかもしれないし…」
魔耶「…たしかにそうだねぇ。じゃあちょっと行ってみよっか〜。場所分かるの?」

339:多々良:2020/05/04(月) 07:18

カルセナ「えーっと、時計台のすぐ近くだった筈....新しいお店だから、多分見れば分かるよ」
魔耶「へぇ、じゃあ行こっか〜」
書籍探しは少し休憩し、新しいお菓子屋へと足を進めた。
魔耶「カルセナはどんなスイーツが好きなの?」
カルセナ「うんとねー、私チーズケーキがめちゃくちゃ大好きなんですよ〜。あとチーズタルトとか.....」
魔耶「ほうほう、チーズ系か〜。逆に嫌い....と言うか苦手なものとかある?」
カルセナ「苦手なもの.....生クリームを使ってるお菓子かなぁ....ドライフルーツもあんま好きじゃないな」
魔耶「ふ〜ん、意外と好き嫌いあるんだね」
カルセナ「生クリーム食べると気持ち悪くなっちゃって......」
魔耶「成る程ね.....チーズ系のお菓子あると良いね」
カルセナ「まぁ流石にあると思うけど.....そう言う魔耶はどんなのが好みなの?やっぱりキャラメルとか?」

340:なかやっち:2020/05/04(月) 08:21

魔耶「キャラメルは好きだけど、スイーツとなると…チョコケーキとかが好きかなぁ…」
カルセナ「お、なんで?」
魔耶「キャラメルは固形のほうが好き…というか、ドロッとしたやつはなんかやなんだよね。…嫌いなものはカルセナと同じくドライフルーツ系。あとは…モンブランかなぁ」
カルセナ「ほうほう。チーズケーキは?」
魔耶「チーズケーキも好きよ。生クリームは大好きです☆」
カルセナ「えー、生クリーム食べたら気持ち悪くならない?」
魔耶「ちょっとそれはよくわかんない…」
二人で好みのスイーツを話し合っていると、いつのまにか時計台の近くまでやってきていた。

341:多々良:2020/05/04(月) 11:50

魔耶「あ、ここら辺じゃない?時計台近くって言ったら.....」
カルセナ「だよねぇ、えーと....」
目的の店を探すため、キョロキョロと辺りを見回す。
カルセナ「....あっ、あれだ!!」
指差した店の外見は洋風で小綺麗な建物、そして入り口に『新オープン!!』と貼り紙が貼られていた。
魔耶「あ、ほんとだ。それっぽいね」
カルセナ「早速行きましょぜ〜」
軽快に店内へと足を進める。ドアを開けると、カランという小さな鐘の音が鳴った。
正面から奥へと続く硝子のケースの中には、ずらっと色とりどりなスイーツが並べられている。そのケースの上には、ケーキなどの生菓子だけでなくクッキーやラスクの様なお菓子も並べられていた。新しくオープンしたからか、まぁまぁな人数の客が買いに来ている様だった。
魔耶「おぉ〜!綺麗なお店!」
カルセナ「甘い匂いがして最高だ〜......全部美味しそうだし」
魔耶「だね〜、じゃあ各自好きなの見定めますか〜」

342:なかやっち:2020/05/04(月) 14:04

カルセナ「そうだね…あ、チーズケーキ!買っちゃお〜」
自分の好物を見つけ、嬉しそうにチーズケーキを取りに行くカルセナ。
魔耶「早速お目当てのものを見つけたか…私はどうしよっかな〜?色々あるから迷うわ〜」
順番にケースを覗いていく。抹茶ケーキに、ロールケーキに、ミルクレープに…どれもきれいで美味しそうだった。
魔耶「うーん……あ、あった!チョコケーキ〜♪…ん、ショートケーキもある…。」
チョコケーキの隣にはショートケーキが置いてあった。…どっちも好きだからなぁ…。魔耶の心がふたつのケーキの間で揺れる。
魔耶(チョコケーキの隣にショートケーキを置くとは…私を迷わせる気満々な配置。…まさか、両方買わせようというお店の魂胆か…!?)
カルセナ「…魔耶、なんか変なこと考えてる…?」
いつのまにか戻ってきていたカルセナが、私の表情を見て呆れたような声を出す。
魔耶「いんやまったく。チョコかショートかで迷ってて…どっちがいいかなぁ?」
カルセナ「どっちも買えば?」
魔耶「ん〜…ケーキは賞味期限あんまりもたないから一つに絞りたいんだよね…そんなに食べきれないし…」
カルセナ「ふーん……あ、これにすればいいじゃん」
カルセナが指を指したのは、普通のケーキの半分しかない小さなケーキだった。値段も半分だ。
カルセナ「これのチョコとショート買っちゃえばどっちも食べれるじゃん?」
魔耶「……天才っ…!」

343:多々良:2020/05/04(月) 15:45

カルセナ「ふっふっふ、選択の神と呼んでくれたま..」
魔耶「あとは何か美味しそうなものあるかな〜♪」
カルセナ「おいっ!」
魔耶「ん?何よ?」
カルセナ「.....何でもないっす。」
先程のやり取りは忘れ、他のお菓子も見ることにした。
カルセナ「何か、シェア出来るようなお菓子とか欲しいなぁ....」
魔耶「ケースの上のお菓子とかどう?クッキーとかあるし」
カルセナ「そうだねぇ....あ、これとか?」
目をつけたものは、角砂糖の様に四角い形をしているクッキーだった。一口サイズで食べやすそうだ。
カルセナ「うーん、プレーンとチョコ.....どっちが良いかなぁ」
魔耶「........あ、ねぇねぇ、こっちにそのミックスがあるよ〜?」
魔耶が、少しずれた所に置いてある籠を指差して教えてくれた。
カルセナ「え?ほんと?じゃあそっちの方が良いな....それにするわ」
魔耶「お買い上げありがとうございま〜す」
カルセナ「何か、借りを返された気分だわ.....」
楽しそうに他の商品を見ている魔耶の顔を見て、カルセナも笑う。
カルセナ「.....うん、私はもう良いかな〜。魔耶どーする?」

344:なかやっち:2020/05/04(月) 18:50

魔耶「私ももういいや〜。早く食べたい…」
カルセナ「せっかちだなあ…じゃあ魔耶の分もまとめて買ってきてあげよう。二人で並ぶよりも効率がいいじゃない」
魔耶「感謝感激…んじゃあ外で待ってるわ〜。よろしくね〜」
カルセナ「おう」

魔耶「どっか座れるところないかなあ〜」
お店から出た魔耶は休憩できる場所を探していた。ベンチか何かはないかとあたりを見回す。
…すると、見慣れた影が視界の端に映った。
魔耶「ん?…あれは…」
少し小さめの帽子に、赤と白の服装…
魔耶「ひまり〜!」
ひまり「…あら、魔耶?」
時計台から少し離れたところにひまりがいた。

345:多々良:2020/05/05(火) 08:20


魔耶「......〜!」
カルセナ「(....ん?何か言ったか?)」
店の外で魔耶が何かを口にし、手を降っている様子が見えた。
カルセナ「(....あぁ、誰かいたのかな)」
店員が、白く小さな紙の箱でケーキを梱包してくれている間、ボーッと色々な事を考えていた。
1つは、魔耶の事。
自分で魔耶に大丈夫、などと言ってはいる。ニティさんも情報を集めに行ってくれている。それでも、心の中に不安という文字が残ってしまっていた。これまで出会った事もない異変。簡単に解決も出来ないであろうものに、不安感など消せる筈が無かった。....でも、今は全力を尽くすしかないのだ。魔耶を助ける為に。
そしてもう1つは、ブラッカルの事。
もう考えたくもない。仲直りなんて、あいつと出来る訳がない。そう思って思い出さないようにしているのに、頭の中で考えてしまっている。何故だろうか....今の自分には分からなかった。だから、これからも出来るだけ思い出さないようにするだけだ。

店員「....お待たせしました〜!」
カルセナ「....あ、はい、ありがとうございます」
ケーキの梱包が終わった様だった。

346:なかやっち:2020/05/05(火) 10:29

小走りをしてひまりの元に行く。
ひまり「今日は一人?カルセナはいないの?」
魔耶「カルセナはスイーツ買ってくれてるよ。ほら、そこの新しくオープンしたお店で」
カルセナがケーキを買っているであろうお店を指で指す。
ひまり「…あぁ、あそこね。私もこれからいこうと思ってたのよ。………ところで、魔耶?」
魔耶「ん?なに?」
ひまり「今日の朝宿まで迎えに行ったのに、なんでいなかったのよ?そのあとギルドにも行ったけどいなかったし…。どこにいってたの?」
魔耶「…!」
ひまりからジーッと見つめられて焦る魔耶。
どうしよう…ひまりに伝えるべきだろうか……でも、ひまりとみおまで巻き込みたくないなぁ…
魔耶「え、えっと、あの〜…」
なんとかひまりを納得させる答えを発しようとしていると…
カルセナ「…魔耶〜買ってきたよ〜?…あ、ひまりじゃん」
いいタイミングでカルセナが来てくれた。ケーキを買い終わったようだ。そのお陰で話をそらすことに成功する。
魔耶「つ、ついさっき見かけたから声をかけたのよ」
カルセナ「そうなん?偶然だね〜。ひまりもケーキ買いに来たの?」
ひまり「そうそう。私甘いものが大好きなのよね〜。あ、じゃあ私も今から買ってこようかな。一緒に食べようよ」
カルセナ「オーケーオーケー。そこら辺で待ってるね」
ひまり「うん。じゃあササッと買ってくるから〜」
ひまりがお店に向かっていき、私とカルセナがその場に残された。

347:多々良:2020/05/05(火) 16:01

カルセナ「いってら〜.....ふぅ、何話してたの?」
魔耶「いや、別に何も.....今の私の状況知られたくなくて、つい話逸らしちゃった」
カルセナ「?むしろ知られた方が良いんじゃないの?あわよくば協力も....」
魔耶「いやさ、ひまりとかみおとか巻き込みたくないなぁって思って....」
その顔からは、ひまり達を想う意識が滲み出ていた。
カルセナ「成る程....そーゆー事ね。まぁ、魔耶が言うならそれは合ってるな」
魔耶「どうだかねぇ.....所で、どこで食べよっか」
カルセナ「ここら辺に何かそう言う休憩スペースがあったっけ?あるならそこらで良いとは思うけど」
魔耶「そう言うのに関してはひまりの方が詳しそうだし、戻ってきたら聞いてみよ」
カルセナ「だね〜」

のほほんと雑談をしている内に、店の出入口からひまりが顔を覗かせた。
ひまり「ごめんごめん、お待たせ〜!!」

348:なかやっち:2020/05/05(火) 17:22

魔耶「おかえり、早かったねぇ。急かしちゃった?」
ひまり「ううん、買うものはとっくに決めてたから〜」
カルセナ「ほう…なに買ったの?」
ひまり「えへへ、これこれ〜」
ひまりが袋から取り出したのは、カップの中に入ったかわいらしいイチゴタルトだった。
魔耶「わ、美味しそう…!」
ひまり「でしょでしょ!?私いちご好きなんだー。チラシに載ってて、ひとめぼれ☆」
カルセナ「へー、ひまりいちごが好きなんだ?たしかにそんな感じするわ〜。…んで、どこ座りましょう?」
ひまり「んーと…あ、時計台の後ろにベンチがあるからそこで食べよっか」
カル魔耶「はーい」

349:なかやっち hoge:2020/05/05(火) 17:26

(あれ、カップに入ったいちごタルトってなんやねん…。最初カップケーキかアイスかにしようと思ってたから間違えちゃった…w
『ひまりが袋から取り出したのは、かわいらしいイチゴタルトだった』に訂正。暑さで頭がショートしたか…w)

350:多々良 分かる。最近いきなり暑くなったよね....:2020/05/05(火) 18:12

三人で時計台の後ろへと移動する。
見ると、丁度良く影が出来ていて、燦々と降り注ぐ日光が直に当たる事はなかった。
腰を降ろし、ふぅと息を吐く。
魔耶「あ〜.....この場所気持ち良いね」
ひまり「でしょ?中々オススメの隠れスポットよ。....さ、悪くならない内に食べよ!」
一同「いだだきまーす」
カルセナ「はい魔耶、これ」
魔耶が選んだ2つの小さなケーキを箱から出し、手渡す。
魔耶「ありがとー。2つも違う種類が食べれるなんて贅沢だわ〜」
ひまり「ふふふ、欲張りじゃん?」
魔耶「違いますー、悩んだの!そしたら丁度良いのをカルセナに見っけて貰ったからさ」
美味しそうにチーズケーキを食べているカルセナの顔の方を向く。
カルセナ「もぐもぐ.....うまぁ〜!!もぅほんと最高......Thank you チーズケーキ....」
ひまり「大好きなんだねぇ、チーズケーキ」
カルセナ「ケーキの中で一番美味しい。Best。Best of cake に輝いて良いよこれは....」
魔耶「あはは、何か英語飛び出してるし....」
カルセナ「あぁ、美味しすぎてつい.....二人のも美味しそうだね....お味はどうですか?」

351:なかやっち:2020/05/05(火) 20:10

ひまり「超美味しいよ!イチゴタルト大正解だったなぁ〜♪」
魔耶「うん、チョコとショートも美味しい…!甘すぎない生クリームが絶妙…最高ですね…」
カルセナ「…魔耶は感動すると敬語になるのかな?」 
カルセナに言われて今までの言動を振り返ってみる。初めてキャラメルを食べたとき…梅グミを食べたとき…
魔耶「…たしかにそうかも…」
そんな私達を見て笑うひまり。
ひまり「あははっ!二人とも普通にリアクションできないの?」
カルセナ「私一応外国人だから…しょうがないね」
魔耶「…無理っすね。感動すると敬語になるくせがあるのかな〜」
ひまり「二人とも面白いわ〜。こういうの何て言うんだっけ…あ、そうそう、似た者同士!」
魔耶「ん〜…?似てるかなぁ?」
カルセナ「まぁたまに意見が一致することもあるけど…」
ひまり「ずっと一緒にいたから性格が似ちゃったんじゃない?結構似てるとこ多いと思うよ、二人とも。第三者の目じゃないと分からないかもだけど」
魔耶「そうかねぇ…」

352:多々良:2020/05/05(火) 22:51

カルセナ「まぁほら、ペットは飼い主に似るって言うもんねー?」
魔耶「はっはー、どっちがペットだと言いたいんだ?」
目以外が笑っている顔でカルセナを見る。
カルセナ「う....別にまだ何も言ってないっす....」
魔耶の視線に一瞬たじろぐ。こんなやり取りをもう何回しているのか....。
ひまり「あははっ!!あーあ、面白いなぁ。二人が来てから、笑う事が更に増えたわ」
魔耶「そりゃどうも。もぐもぐ.....」
顔を直して、再びケーキを頬張る魔耶。その左隣で、口に気を付けるのを忘れていた事を少し悔やむカルセナ。右隣で、笑顔を絶やさずに二人を見るひまり。
この世界にいる間、この光景がずっと続けば良いのに。それなら平和でいられるのに。日常茶飯事である当たり前の出来事でも、色々な考えが浮かんでくるものだった。
そんな考えを遮るかの様に、時計台の、午後2時を知らせる鐘が北街に鳴り響いた。
魔耶「.....う〜、ここは中々大音量だねぇ....鐘が」
ひまり「そりゃあ、この時計台から鳴ってるからね。....そう言えば、この時計台の中ってどうなってるのかな〜」
カルセナ「あれ、ひまり知らないの?」
ひまり「うん、多分だけど....かなり長い間、この時計台に出入りした人はいないと思うわよ」
魔耶「へぇ〜......手入れとかしないのかな」
ひまり「こうして動いてるから、問題はないだろうけどね」
カルセナ「ふーん......ふぅ、ごちそうさま〜」
あっという間に、ぺろりとチーズケーキを平らげた。

353:なかやっち:2020/05/05(火) 23:11

魔耶「私もごちそうさま〜。満足満足」
続いて魔耶もケーキを平らげ、満足そうな顔をする。
ひまり「あ、二人ともはやーい。もっと味わって食べなよ〜?」
魔耶「え…結構味わって食べたつもりだったんだけど…」
ひまり「ほんとに〜?」
カルセナ「ほんとに〜。……さて、図書館に戻ろう…」
魔耶「あっ」
カルセナ「あっ」
ひまり「…図書館…?」
カルセナがうっかり図書館というワードを口にしてしまった。…なにをするのかと聞かれる前にごまかさないと…
魔耶「そ、そうそう!図書館で料理本借りてこなきゃね!」
カルセナを横目で見て、話しを合わせろと目で訴える。それに気づいてかカルセナもあわてて話しにのっかった。
カルセナ「う、うんうん!最近料理にはまっちゃってさ〜」
ひまり「へぇ…そうなの…あ、だから今日の朝いなかったの?料理本探しに図書館へ行ってたの?」
魔耶「実はそうなんだ〜。なんかもう朝一番に探しにいきたいくらい料理にはまっちゃって〜」
カルセナ「そーゆーこと〜。…んじゃ魔耶、行こっか〜?」
魔耶「そーだねー。じ、じゃあひまり〜またね〜!」
ひまり「え、えぇ…」
いきなり様子がおかしくなった二人の姿を見送りながら、ひまりは一人ベンチで首をかしげたのだった。

354:多々良:2020/05/06(水) 08:48


カルセナ「....ふぅ〜、危ない所だったぁ〜」
魔耶「全く、気を付けて欲しいわ....ま、あれで誤魔化せたなら良いけどね....」
小走りで時計台から離れ、頃合いを見計らって歩き始めた。
カルセナ「いやー、ナイスフォローだったよ魔耶」
魔耶「いえいえ、どういたしまして」
ずっと時計台の後ろにいたから気付かなかった。午後になると、太陽がより強く日光を浴びせてくる。加えて街の活気もあったせいで、まぁまぁ蒸し暑い。
カルセナ「あ〜......ちょい暑いなぁ....」
帽子を脱いで、それで自分を扇ぐ。
魔耶「そうだねー、さっさと図書館に入っちゃお」
少し早歩きで図書館に向かう。小走りした分もあって、結構早く図書館に着いた。

図書館内で一息つく。
魔耶「.....はぁ、ここなら外よりは良いねぇ」
カルセナ「だねぇ、んじゃあ本探し再開しますか〜」

355:なかやっち:2020/05/06(水) 09:30



魔耶「………眠い…」
本を探し初めて1時間ほどたった頃、魔耶がぼそりと呟いた。
カルセナ「うーむ、ご飯食べたばっかだもんねぇ…」
魔耶「うん、ご飯食べたあとにずっと座ってるんだもん。眠くもなるよ〜……。…カルセナ、なんか眠気を吹き飛ばすくらい面白いことして」
カルセナ「むちゃ言うなよ〜」
…眠いなぁ…瞼を閉じたらすぐ寝れちゃいそうなくらい眠い…。軽く頬を叩いて眠気を覚まそうとする。
魔耶「寝てる場合じゃないってのに〜。むー…」
カルセナ「コーヒーでも買ってこようか?」
魔耶「…苦いのは嫌い」
カルセナ「小さい子供みたいなこと言ってんなよ〜」
魔耶「だって嫌いなんだもの〜。あと小さいは禁句」
軽くカルセナを睨む。
カルセナ「あ、ごめん。…ん〜……眠気を覚ます方法…あっ」
魔耶「…?なに?」
カルセナ「お化け図鑑見つけた〜。怖いのみれば眠気も覚めるんじゃない?」
カルセナが手に持っているお化け図鑑の表紙にはカラーのお化け達がたくさん描いてあり、少しリアルということも相まってとても怖そうだった。
魔耶「……もうお化け…幽霊は見飽きてるよ。っていうか、カルセナお化け苦手じゃなかったっけ」
カルセナ「う…うん、苦手ですけど…イインジャナイカナーと…」
魔耶「ははっ、お化けが苦手な幽霊にお化け図鑑を読むことを薦められるとは…人生って面白いわ」
カルセナ「いきなり人生の面白さを説く、彩色魔耶(魔族)」
魔耶「べつに魔族が人生の面白さを説いたっていいじゃない。100年そこらしか生きていない人間に説かれるより信憑性があると思うんだけど〜」
カルセナ「…まぁたしかにそうだけど…元人間の前でそれ言う?」
魔耶「あ、ごめん…」
…やっぱり楽しいな、カルセナとのこういうやり取り。なんの心配もなく、下らない話しをずっとしていたい。昨日みたいにシリアスな話しなんてもうしなくていい。…なんて、少し考えてしまった。
魔耶「…変なこと話してて眠気も覚めた気がするよ」
カルセナ「そう?それは良かった〜」
魔耶「あと2時間くらいは粘ろうか」
カルセナ「了解でーす」

356:なかやっち hoge:2020/05/06(水) 09:33

(『100年そこらしか生きていない人間』じゃなくて、『100年そこらしか生きられない人間』の方がいいか。訂正)

357:多々良:2020/05/06(水) 13:36


約2時間後....

魔耶「.....うぅ〜、疲れた....」
カルセナ「ね.....何かそれっぽいものあった?」
二人共、疲労困憊した様子で結果発表をする。
魔耶「あっちの棚にありそうだったから探したんだけど......有力な情報が載っている本は一切無し」
カルセナ「そうか〜....こっち側も、そう言う感じの本は無かったよ」
魔耶「やっぱ難しいなぁ....悔しいけど、今の所はニティさんの情報を待つしかないのかなぁ....」
カルセナ「....取り敢えず、宿に帰る?」
魔耶「....そうだね」
のそのそと図書館を後にする。空に浮かぶ太陽は、既に傾きかけていた。
カルセナ「あーあ、何か特別なとことかじゃないと、情報という情報は無いのかな〜....」
魔耶「特別なとこって?」
カルセナ「例えば、ニティさんが向かった天界とか....あと....うーん...あの人達に聞く....?」
魔耶「あの人達......あー。いや〜、難しいんじゃない?それは....」
二人が思い浮かべたのは、前に事件を起こした蓬達の事であった。
カルセナ「そっかー。確かに、遠いしなぁ....もっと身近に良い情報落ってないか〜」
魔耶「はは....そうだったらこんな苦労してないよ」
カルセナ「うん、そだねぇ....」

358:なかやっち:2020/05/06(水) 15:14

魔耶「…ギルドマスターに聞くっていう手もあるけど…」
カルセナ「あー…いや、めぐみさんにはもとの世界に帰るための情報を探してもらってるからなぁ〜」
魔耶「そっかぁ。流石にちょっと頼りすぎか…」
二人で情報を持っていそうな人を考えたが、やはり思い浮かばなかった。
魔耶「ねぇ、実はピンチだったりする?」
カルセナ「あれ今更??」
魔耶「いやぁ…なんか危機感薄れちゃって〜。自分が消えちゃうなんて、現実味がない話というか…」
…少しだけうつむいてカルセナの視線から顔を外す。
カルセナ「…そうだろうね…私も、明日自分が消えるってなったって実感わかないだろうなぁ〜…」
魔耶「…」
せめて、いつ私が消えてしまうのかくらい知っておきたい。余計に不安になってしまう。…いつ自分が消えるか分からない恐怖と不安が重なって………
魔耶「っ!」
自分の両の頬を思いっきり手で叩く。
カルセナ「わ!なに、どうしたの!?」
魔耶「…ポジティブにいくって決めたのに、なんか嫌なこと考えちゃって…リセット‼」
カルセナ「……はは、魔耶らしいや」
半分呆れたように、半分面白そうにカルセナが呟いた。

359:多々良:2020/05/06(水) 19:03

魔耶「嫌な事は忘れちゃわないとね!あ、着いたじゃん」
時間の流れは早い。話している内、あっという間に宿に着いた。
ささっと自分達の部屋へと向かう。

カルセナ「....たっだいまぁ〜」
魔耶「ただいま〜。帰ってきたぁ〜」
そう言って、魔耶はベットに転がり込む。疲れ果てた体がほぐされるかの様な気分になった。
魔耶「ベットこそ真の我が家って感じ....」
カルセナ「疲れたときはそうだよねー。まだ夕飯時まで時間あるし、私も休もっかな....」
魔耶「そうしろそうしろー。私は寝るぞー」
がばっと掛け布団を顔の位置まで掛けた。かなり疲れている様だ。
魔耶「お休みー」
カルセナ「ん、お休み〜......私も魔耶に続くか」
帽子をテーブルの上に置いてから自分のベットに座り、そのまま倒れ込む。
カルセナ「.....お休みっと」
掛け布団を掛けずに、眠りに就く事にした。

360:なかやっち:2020/05/06(水) 20:06



悪魔耶「また会ったね。いらっしゃ〜い」
再び目を開けたとき、見えたのは鎖に繋がれた悪魔耶の姿だった。心なしか前よりも鎖の数が減っているように思える。
魔耶「…またここかぁ…。私は眠るとここへ来ちゃうの?」
悪魔耶「そうなんじゃない?まぁ今だけだろうけどね〜」
悪魔耶がニコニコと笑いながら問いかけに答える。
魔耶「ふぅん……あのさ、私の体を浸食するの、やめる気ない?」
今度会ったら説得してみようとカルセナに約束したのだ。それを今、口にしてみる。
魔耶「私まだ消えたくないし…君はなんで外に出たいの?」
悪魔耶「…」
悪魔耶が考え事をしているような表情を見せる。
悪魔耶「こんなところに私がずっといたいと思う?外の方が楽しそうじゃん。だから私は外にでたい。…外に出て……いや、やめとこう。とにかく、私は君を浸食するのをやめる気はないよ」
魔耶「……」

361:多々良:2020/05/06(水) 21:58



カルセナ「....またかぁ」
感じ慣れた空気、いつもの空間。行きたくなくとも、一度はここへ来てしまうようだった。
カルセナ「もう来る必要無いと思うんだけどなぁ......あっ」
遠くを見て、思わず口に出る。そこで背を向けていたのは、紛れもなくブラッカルだった。
声は向こう側に聞こえている筈だが、こちらを向く素振りを一切見せない。
カルセナ「....そりゃそうか。だって喧嘩してるもん....」
「...お願い........り....して」
カルセナ「.....え?何....?」
前にも聞いた事がある様な声だ。もう一度耳を澄ます。
「.....仲直り....して」
今回は空耳なんかじゃない。はっきりと聞こえる。
カルセナ「....仲直り?あいつと....?....と言うか、誰?」
声は、正体を現すことは無さそうだった。質問をしても黙られてしまう。
カルセナ「......無理でしょ...だってあいつは、魔耶の事....」
「......早まっちゃっただけ」
カルセナ「....え?」

362:なかやっち:2020/05/07(木) 09:15

魔耶「」


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