カルとマヤの異世界記録

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1:なかやっち:2020/03/26(木) 12:56

小説として書いてしまっていたのでこちらに移しました💦

363:なかやっち hoge:2020/05/07(木) 09:16

(間違えて書き込む押しちゃいましたあああ!!超スーパーミラクルダイナチックウルトラ土下座)

364:なかやっち:2020/05/07(木) 09:43

魔耶「…まあそうだろうとは思ってたけど…ほんとに、君は何をしようとしてるの?何が目的…?」
悪魔耶「うーん…今言うとダメだから言わなーい。昨日言おうとしてたんだけど…やっぱりやめとくよ。君が鎖に繋がれる直前になったら教えてあげる」
魔耶「…」
悪魔耶「…まあ、一つだけ君に言っておくなら」
魔耶「…?」
悪魔耶「私が死んだら君は死ぬ。君が死んだら私は死ぬよ」
魔耶「っ…‼」
当然の衝撃告白に瞳孔が大きく開かれる。
…だから、私は消えるんじゃなくて鎖に繋がれなきゃいけないのか…?私を生かしておかないと自分の命が危ういから…??…なぜか驚きと衝撃の中でそんなことを考えた。
悪魔耶「…だから、私をどうにかしようとしてるなら私だけを封じなきゃいけないよ。そんなことできないだろうけど」
魔耶「…な、なんで…そんなこと…こんなタイミングで…?っていうか、君をどうにかしなきゃって…私がやっていること、わかってたの…?」
悪魔耶「早めにいっておかないといけないことだったからさ。私を止める方法として、この空間で私を…なんてことにされたらたまんないし…。あと君がやってること知ってるのかって?うん、知ってるよ。君の外の世界での様子は全部伝わってきてる。…君が大事に思ってる人のことも、ね」
魔耶「…!……カルセナに手を出したら…許さないから…!」
悪魔耶「はは、どうだろうねえ。私が外に出たら君と私が会うことなんて二度とないんだから、君が私の行動を止めることなんてできないと思うけど。……ん?」
魔耶「な、なに…?」
悪魔耶「現実で、君のところにお客さんが来たみたいだよ?…んじゃあまたね。もう会う回数は少ないだろうけどー」
魔耶「わ!ちょ、まだ…」
昨日と同じように空間が歪み、私は夢の世界から現実に放り出された。


魔耶「むう…悪魔耶と別れるときはいつも歯切れが悪い……」

365:多々良:2020/05/07(木) 12:21


声は、少し間を空けて会話してくる。
カルセナ「....何が?早まっちゃっただけって言われても.....」
「....魔耶ちゃんの事、大切でしょ?」
カルセナ「うん」
「....だから、気持ちが入りすぎちゃって、こんな風になっちゃったんだよ」
カルセナ「何?どっちが....?」
「....どっちも。二人は一心同体だからね。気持ちも同じになるんだよ」
カルセナ「....それが分かった所で、仲直りなんて出来ないって....」
「....何で二人は喧嘩出来ているの?」
カルセナ「え?それは....あいつが魔耶を悪く言ったから....」
「....それは違う。聞いているのは、何で『出来ているのか』だよ」
カルセナ「.....分からない」
「....感情があるからだよ」
カルセナ「感情....?」
「....感情があるから喧嘩出来る。だから、仲直りだって出来る筈。過去の嫌な発言は一旦忘れて、仲直りしてみなよ」
カルセナ「.....うん」
そう簡単に出来るものなのだろうか。多少の疑問と不安を持ちながら、ブラッカルの方を向く。

366:なかやっち:2020/05/07(木) 12:44

独り言のようにポツリと呟く。…すると、それに反応するかのように玄関口からトントンという音が聞こえた。
魔耶「わっ!…な、なんというタイミング…誰だろ」
玄関へ歩いて向かっていく。その間もトントンというノックの音が絶え間なく続いていた。

玄関の扉を開け、ノックをしている人物を確認する。
魔耶「はーい…どちら様…………ッ」
??「…夕飯時にすまないな。あと遅くなってすまない。…まだ悪魔化はそこまで進んでないようだな。安心したぞ」
魔耶「…に、ニティさん‼」
そこにいたのは今朝天界に行ってしまったはずのニティさんだった。少し安心したような、それでいて険しさもある不思議な表情を浮かべている。
魔耶「早かったねぇ……なにか分かったの…?」
ニティ「……分かったには分かったが…とりあえず中に入れてくれるか?部屋の中で話そう」
魔耶「あ、はい…」
ニティさんの表情からはなにも読み取れない。この問題が解決できるのか、できないのか……不安を抱きながら魔耶はニティを部屋に招き入れた。

367:多々良:2020/05/07(木) 17:20


カルセナ「.....あのさ」
そっと声を掛ける。
カルセナ「ねぇ、ちょっと、聞いてくんない....?」
そう促すと、ブラッカルは嫌々こちらを見た。
カルセナ「.....昨日の事なんだけど....あの.....何とか和解出来ないかな....」
暫く沈黙を貫いていたブラッカルだが、漸く口を開いた。
ブラッカル「.....よく分からねぇ声に唆されて、適当な事ほざいてんじゃねぇ。何が和解だ」
カルセナ「えっ......そっちも声が....聞こえるの?」
この質問に応えず、話を進める。
ブラッカル「....私とテメェは一心同体。声の言ってる事は、あらかた間違っちゃあいねぇ」
カルセナ「そう、だから私は、仲直りしようと....」
ブラッカル「さっきの言葉の意味が分かるか?」
カルセナ「....え?」
ブラッカル「一心同体って事はだ。まだ、私達は駄目って事だ。私も、今はお前が嫌いだ」
言っている意味が良く分からない。まだ、駄目....?今は嫌い....?
カルセナ「....何で?どういう事....?」
ブラッカル「言われた事をそのままやるだけじゃ、何も解決しねぇんだ。....本当に和解してぇんだったら、自分を変えてからもう一度来やがれ」
カルセナ「え?ちょ、ちょっと、何か教えてよ!!」
ブラッカル「うるせぇ、聞いて楽しようとすんじゃねぇよ!こんくらい自分で考えられんだろ!.....じゃあな」
何の前触れも無く、強い眠気が襲って来た。また対応を間違えたのかなぁ.....。それとも、今回は大丈夫なのかな.....分からない.....な。


カルセナ「....うぅ....ん」

368:なかやっち:2020/05/07(木) 17:55

ニティ「…カルセナは…?」
部屋に向かっているとき、ニティさんが質問してきた。
魔耶「あ、夕飯まで少し時間があったからついさっきまで二人で寝てて…カルセナはまだ起きてないよ」
ニティ「…そうか。あやつはお前の相方だからな、できれば二人で聞いてほしい」
魔耶「…分かった。部屋に行ったら起こす」
ニティ「あぁ。そうしてくれ」


カルセナ「…うぅ…ん」
魔耶「ん?あ、カルセナ。いいタイミングで起きたね」
ちょうど部屋に入ったとき、カルセナがゆっくりと体を起こすのが見えた。
カルセナ「…いいタイミング…?あれ、ニティさん…?」
ニティ「寝起きのところ悪いな」
カルセナ「いや、それは別にいいけど……なんでニティさんが部屋に…?まだ夢の中…?」
魔耶「寝ぼけてんの?朝のこと忘れた…?」
カルセナ「朝…今日の…あっ!な、なにかわかったの?」
ニティ「…あぁ…まぁな。とりあえず座れ」
ニティさんに言われ、ニティさんと向かい合うように二人で並んで座る。
魔耶「…じゃあ、お願いします」

369:多々良:2020/05/07(木) 19:07

ニティ「あぁ。収集してきた情報を理解して貰う為、取り敢えずは天界の仕組みについて話そう......この世には、この世界以外にも様々な世界がある事を知っているか?」
魔耶「うん、聞いた事はあるよ」
ニティ「天界は、その多種多様な世界が全て繋がっている。つまり、他の世界に行く事や、他の世界の情報を集める事も容易な環境....と言う訳だ」
カルセナ「成る程成る程....」
ニティ「さて、本題はここからだ。私はそれを利用し、非人間的なもの....言わば悪魔や妖怪などの生物がさ迷っている世界で噂されている、微かな情報を入手してくる事が出来た」
魔耶「え、本当!?」
いかにも、今までで一番有力そうな発言を聞き、一瞬目を輝かせた。
ニティ「まぁ待て。それが本当の話かどうか、信じるのはお前達次第だが.....信憑性はあると思われる」
カルセナ「へぇ〜.....早速、話してちょうだい」
ニティ「分かった。....これは、魔耶....お前に関係深いものだ」
魔耶「わ、私に....?」
今からされる話と自分が関係深いとは....魔耶は驚いた様子で、静かに息を呑んだ。

370:なかやっち:2020/05/07(木) 20:31

ニティ「…お前は、親に育てられたわけではないようだな。育て親のことを聞いてもよいか?」
魔耶「……?」
なぜ今そんなことを聞くのだろう。…理由は分からないが、とりあえずなにかしら言ったほうがいいのだろうか。
魔耶「…私の育て親は、族に言う閻魔様…だね。地上と地獄の管理、魂の管理が主な仕事だよ。私の親とは知り合いだったらしくて、親が死んで身寄りがなかった私を育ててくれた」
カルセナ「え、閻魔様…!?魔耶、閻魔様に育てられたの!?」
魔耶「そうだよ?あ、言ってなかったっけ…ごめんごめん。……それで、それとこれとなんの関係が…?」
ニティ「その閻魔が悪魔と人間のハーフの子を育てているって噂があったんだ。…やはりお前のことのようだな」
…別の世界で…?私のことが噂に…?
魔耶「…噂の内容を詳しく聞いてもいい…?」
ニティ「あぁ。それを話すために私はここへ来たのだからな。…その噂では、閻魔がその子供の中にいる悪魔を封じ、子供は人間と悪魔のハーフとして存在できている、と」
魔耶「……え、閻魔様が…私の中の悪魔を、封じていた…??」
そんな素振り、見せたことなんて…
ニティ「…お前の中の悪魔が出てきたのは、この世界に来てからだろう?」
魔耶「た、確かにそうだけど…。…ってことは、悪魔がでてきた理由って…!」
ニティ「…お前がこの世界に来て、閻魔と離れてしまったからだろうな。封印が弱まってしまったのだろう」
…辻褄は合う。私がこの世界に来て悪魔状態になってしまったから封印が弱まった…。私が幼い頃に悪魔状態にならなかったのは、閻魔様が封じ込めていてくれたから…
カルセナ「…魔耶を育ててくれた閻魔様が魔耶の中の悪魔を封じていた…ってことは、封印する方法があるってこと?」

371:多々良:2020/05/07(木) 21:37

ニティ「勿論だ。しかし、そう簡単に出来るものでは無い。再び封印するとなれば悪魔の方も学習し、何とかして封印されぬ様に足掻くだろう。....たとえ、宿主の体がどうなろうとな」
嫌な光景が頭の中に浮かぶ。表情がつい堅くなる。
ニティ「....すまぬ、恐怖を与えるつもりは無かったのだが....表現が悪かったな」
魔耶「....いや、それが正しいと思う......あの、その封印の手順とかって分かる?もしかしたら、出来るものかもしれないし....」
ニティ「残念だが、手順までは聞き出す事は出来なかった....大天使様にもお伺いしたのだが、詳しくはご存知無かったのだ」
魔耶「そっか......」
カルセナ「どうしようね.....何か、違う種類の封印とかは出来ないのかなぁ?」
魔耶「うーん、例えば?何か思い付くものでもある?」
カルセナ「いやー、封印っていうのか分からないんだけど....ブラッカルいるじゃん?」
ニティ「ぶらっかる....とは何だ?」
カルセナ「魔耶がつけた、もう一人の私の名前っす」
ニティ「二重人格....なのか?まぁ良い、話を進めてくれ」
カルセナ「んで、通常モード?今の私ね。これの時は、あいつは何か違うスペースで格子みたいなの張られてて、出てこれないようになってるんだよねー....」
魔耶「試験の時はまぁ出てたけどね....」
カルセナ「あれは、あれじゃん.....チョコ食ったから.....いやその原理知らんけどさ。だから、魔耶もそんな感じに出来ないのかなーって。キャラメル食ったら出てきちゃうかもしんないけど.....」
苦笑しながら、二人に案を出す。

372:なかやっち:2020/05/07(木) 21:59

魔耶「…好物で出てきちゃうなら、苦手なもので封印ってことか…?」
ニティ「ふむ…悪魔の苦手なものを使って出てこないようにする、というのはいい案かもしれんな」
魔耶の言葉にうんうんと頷くニティ。
カルセナ「…でも、悪魔の苦手なものってなに?魔耶の苦手なものだったら知ってるけど…」
魔耶「私に無理矢理キノコを食わせる気か!?」
カルセナ「そんなことしないわ…。でも、悪魔の苦手なものがわからなきゃこの案は使えないよ。本人が教えてくれるわけないし」
魔耶「むぅ…閻魔様に聞けたらいいけど、今別の世界にいるし…あ、でもその封印方法はもう効かないかもしれないのか…だったら意味ないな」
二人で頭を悩ませる。吸血鬼は十字架やにんにくが苦手とか聞くけど、悪魔は分からないなぁ…。
魔耶「…でも、私と好物が同じだったら、キャラメル食べたときにブラッカルみたいに出てきてたはずだよね?」
カルセナ「…確かに…」
ニティ「…食べ物より悪魔が本能的に苦手だと感じるものが効果的だと思うぞ。それか封印できる能力の持ち主を探す、とかな」

373:多々良:2020/05/08(金) 07:44

魔耶「成る程.....悪魔が本能的に苦手なものって....何なんだろうねぇ」
カルセナ「うーん、パッと見つけるのは難しそうだね〜」
魔耶「あと、能力者を見つける.....この世界に、そんな事出来る人いるかなぁ?」
カルセナ「まー多分、全くいない事はないんじゃない?どっちが良いかな....」
ニティ「この二つの選択肢に限られている訳では無い。己で新たな選択を切り出すのもありだぞ」
魔耶「ニティさんは何か思い当たるものとか、人物とかっていたりしない?」
問い掛けに、腕を組んで考え始める。
ニティ「ふむ、そうだな.....天界には封印術たるものが無くは無かったが....それで封印出来るのかは不明であると共に、実際に使用している者を見た事が無い。私の師匠も封印術専門ではないし....」
魔耶「そっか.....」
ニティ「役に立てなくてすまないな」
魔耶「ううん、色々教えてくれてありがとう。前進する事は出来たよ」
カルセナ「後は私達で解決出来たらしよう」
ニティ「....そうか。それなら良かった。ではまた、何かしらの情報を手に入れたら伝えに来るとしよう」
テーブルに手を付き、立ち上がる。
魔耶「お願いしまーす」
そうして、ニティは宿を出て元居た岩場へと帰っていった。

374:なかやっち:2020/05/08(金) 09:26

魔耶「…うーむ…」
カルセナ「…困ったねぇ。情報はもらえたけど、その肝心の封印方法が分からないからなぁ…」
魔耶「どうしようね…また図書館かな」
カルセナ「また図書館だね〜」
二人で今日の図書館での疲れを思いだし、はぁとため息をつく。
魔耶「…夕飯にしよう。考え疲れた」
カルセナ「そだね。…また自炊?」
魔耶「気力がおきないからなんか買ってこよ〜。これからつくったら9時になっちゃうよ〜」
ちらりと時計を見ると、今は8時前だった。そうとう長く話し込んでしまったらしい。
カルセナ「それもそうね。なに買ってくる〜?」
魔耶「食えればなんでも〜。あ、苦手なものはなしで」
カルセナ「それじゃあ大きくなれ…おっと。じゃあ外行くか」
魔耶「…そうね」

375:多々良:2020/05/08(金) 13:12

靴を履き、外へ出た。大通りの街灯がつき、暗い夜道を仄かに照らしてくれていた。
カルセナ「スーパー....と言うか、あっちの商店で良い?」
魔耶「うん、良いんじゃない?何でもあるしね」
そこへ向かう為、とことこ歩き始めた。
カルセナ「はぁ、早く解決策が見つかると良いねぇ〜」
魔耶「ねー、いつ悪魔化するか分からないし....頑張らないと」
カルセナ「出来る限りはやりたいよね.....店行ったら、何買いたい?」
魔耶「んー、今はどうだろうなぁ....取り敢えず、手軽に済ませれるやつが良いかな。カルセナは?」
カルセナ「私はあっさりした麺類が食べたい」
魔耶「麺好きだねぇ....つけ麺とか、冷麺とかならあっさりしてるんじゃない?」
カルセナ「それ良いな....あったらそうしよっと。あと、お菓子の買い足しも....」
魔耶「また?十分食べてたような....」
カルセナ「う、まぁそうですけど.....てか、そろそろ金銭的にやばいんじゃない?依頼受けないと....」

376:なかやっち:2020/05/08(金) 13:42

魔耶「そうねぇ…もしかしたらクエスト中にいい情報が得られるかもしれないし」
カルセナ「そうそう。Cランクになったんだし、一回くらい受けておきたいじゃん」
魔耶「危険な仕事が多そうだね〜」
カルセナ「まぁそうだろうけど…うちらなら大丈夫だって!」
魔耶「その自信はどこからくるのよ〜。ブラッカルには頼れないんでしょ?私も悪魔耶になれないし…」
…まぁ、もしカルセナの身に危険が迫ったら…自分のことよりもカルセナの身を優先したいけど。
カルセナ「…そっかぁ…。…ブラッカル…」
魔耶「…ん?どうかしたの?」

377:多々良:2020/05/08(金) 14:52

カルセナ「あ、いや.....まだ駄目だとか、今は嫌いだとか、また変な事言われちゃってさー....もう訳分からんのよ」
魔耶「ふぅん....考えるのが難しいの?」
カルセナ「うん....次来るときは、自分を変えてから来いって....何か違うのかなぁ、今の私....」
魔耶「んー、何だろうね....他には何て言われた?」
カルセナ「えっと.....最初に言ったのはブラッカルじゃないんだけど、私とあいつは一心同体って事かな?」
魔耶「成る程.....二人は一心同体で、ブラッカルはカルセナの事が今は嫌い....と」
カルセナ「まぁ、そう言う事だね〜.....何でかな?....って、そうだ。自分で考えろって言われたんだった.....聞かないでおくわ」
魔耶「あ、そうなの....?ならまぁ良いけど......お店見えてきたよ」
明かりがついているその商店は時間帯が遅いせいで殆ど人気は無かったが、まだ開店している様だ。
カルセナ「ほんとだ。さーて、ご飯選びますかね〜」

中に入ると閉店間際なのか、惣菜コーナーなどに値下げした貼り紙で値段が記されていた。
だが、その中の殆どが売り切れている状況だった。
魔耶「えーと、私達が欲しいのはこっちの方かな....?」

378:なかやっち:2020/05/08(金) 15:37

おにぎりやお弁当などが売られているコーナーに行ってみる。こちらも売り切れているものが多く、商品がまばらに置いてあった。
カルセナ「…少ないね」
魔耶「少ないねぇ…。ま、私はおにぎりでいーや」
あまり人気がなく売れ残ったのであろう具材のおにぎり達を眺める。その中に一つだけ梅があり、ひょいと手にとってカゴに入れた。
魔耶「梅がいた!ラッキ〜。…カルセナは麺類がいいんだっけ?」
カルセナ「うん。適当に探してくるわ〜」
魔耶「お〜。じゃあ私はおやつコーナーでお菓子を漁ってきまーす」
カルセナ「…魔耶もお菓子買うんじゃん」
少し前にした会話を思いだし、反応するカルセナ。
魔耶「まぁついでってやつよ。…もしかしたらもう来れないかも知れないんだからさ?」
カルセナ「縁起でもないこと言うなよ〜」
魔耶「あはは、冗談冗談。そんなことこれっぽっちも思ってないから〜。んじゃ、行ってきまーす」
カルセナ「チョコあったら教えて〜」
魔耶「了解でーす」

379:多々良:2020/05/08(金) 16:33

棚に並べられている数少ない商品を見て回る。
カルセナ「うーん.....こんなに売り切れてたら、麺類なんてもう残ってないかもなぁ....ま、念には念を、ちゃんと見ておきますか」
商品がどう並べられているか、曖昧な記憶を頼りに目当ての物を探す。しかし、一周回って見てもやはり売り切れていたのか、見当たらなかった。
カルセナ「ちぇ.....んじゃあどうしよっかな....いざここの場所で決めるとなると、結構迷うタイプなんだよなー私....」
食べたいご飯を考えようとしても、他の商品に目が行ってしまって考えが逸れてしまうのだ。
カルセナ「こう言う時に、ビシッと決められる人羨ましい....どうすれば迷わずに決める事が出来るんだろうなぁ....」
ご飯を決めるごときで少々時間を食ってしまう。悩んだ挙げ句決めたのは、売れ残ったパンとスープだった。
カルセナ「最近パンばっか食べてる様な気もするけど....こればっかりは仕方ないよねぇ.....」
それらを手に取って、魔耶の所へ向かう事にした。

380:なかやっち:2020/05/08(金) 17:20

魔耶「……お菓子が、少ないっ…!」
やはり他の商品と同様、お菓子も売り切れているものが多かった。特に王道のチョコやグミはほとんどない。
魔耶「…キャラメル…いてくれ…梅グミでもいい……!」
神に祈りながら目当てのお菓子を探し始める。半分悪魔の私が神頼みをするなんて変な話だが…。

…しかしその神頼みもむなしく、10分ほどたっても目当てのお菓子は見つけることができなかった。きっともう売り切れてしまったんだろう。
魔耶「…私の力の源〜…キャラメル…売り切れちゃったのかなぁ…」
カルセナ「……魔耶〜、お待たせ…って、お菓子少なっ‼」
パンとスープを手に持ったカルセナが戻ってきた。売れ残ったお菓子の量に驚いている。
魔耶「カルぅ…キャラメルがない…」
カルセナ「あらら…売り切れちゃったんだろうね…。ドンマイ」
魔耶「むぐぅ…明日の糖分がないではないか…」
カルセナ「一日くらいなら大丈夫でしょ…チョコあった?」
魔耶「ほとんどないよ…」
カルセナ「えぇ…チョコもかぁ…とりあえず美味しそうなお菓子探そう。売れ残ったお菓子の中にいいのがあるかもよ」
魔耶「あるかねぇ…」

381:多々良:2020/05/08(金) 17:56

目を凝らしながらゆっくり棚を物色する。
カルセナ「残り物には福があるって言う言葉を聞いた事があるし....うーん」
魔耶「せめて酸っぱいお菓子が欲しい....」
カルセナ「....あ、ラムネ。....でも別にいらんな....」
魔耶「ちっちゃいスナック菓子とかは?」
カルセナ「口の水分奪われるからあんまりいらん。うー、何か目ぼしいものないか〜」
棚の横を通りすがったとき、あるものに目が行った。
食べると口の中に爽快感が溢れる、タブレット的なお菓子だった。
カルセナ「お!!私これにしよっかな〜、ミントは好物なんだよねぇ」
魔耶「そうだったのか〜、そこ酸っぱそうなのある?」
カルセナ「うーん、ミントはあるけど、酸っぱそうなのはないなぁ....酸っぱいの人気なんじゃない?」
魔耶「そうかぁ....」
それからまた少しお菓子を探す。
カルセナ「....あ、魔耶ー、これはこれは?」
そう言って魔耶に見せたものは、個包装になって種が抜かれている、梅だった。
カルセナ「おにぎりも梅だったからどうなのかって感じだけど....それとも、お菓子の梅は嫌いですか?」

382:なかやっち:2020/05/08(金) 18:44

魔耶「いや、好きよ。梅系は大好き〜。…カルセナさん、ナイス!」
カルセナ「あ、気に入ってもらえたならよかったです…。んじゃあ買おうか」
魔耶「はーい。お腹空いた〜」
カルセナ「もう少し我慢しなさい」
魔耶「お母さんみたいだなぁ…」
カルセナ「魔耶が子供っぽいこと言ってるからでしょ」
魔耶「これでも300歳でーす」


会計を終え、お店から出てきた二人。その手には買ったばかりの夕飯が入った袋が握られていた。
魔耶「…お母さん、ねぇ…」
カルセナ「…どうかした?」
魔耶「いや…私お母さんのこと覚えてないからさ、母ってどんな感じなんだろうな〜って。さっきは何となくでふざけて言ったけど…カルセナは人間のとき家族がいたんでしょ?どんな感じの家族だったの?」

383:多々良:2020/05/08(金) 19:25

カルセナ「うーんとねぇ....至って平凡な家族かな。上から最強、怠慢、鬼才、鳥好き、ギャンブラー、SNSな姉達がいたよ。あと私の下に妹が一人」
魔耶「それ平凡なのか....?てか姉妹多いな〜、両親は?」
カルセナ「お父さんは優しい人だったよ。めっちゃ強いけど。お母さんはね〜、色んな所に連れてってくれてたなぁ....妹が産まれてから暫くして、持病が悪化しちゃったみたいで....それから5年も経たない内に亡くなっちゃった」
家族の事を思い出しながら憂鬱に浸る。身内の事を想うと、心が満たされていく様な感覚になった。
魔耶「どっちも優しい人だったんだね〜....良いなぁ」
カルセナ「えへへ、この帽子もお母さんから貰ったやつなんだよね〜」
魔耶「あぁ、だからあんなに大事にしてたんだ....」
カルセナ「忘れてたけど、この帽子も早く修復してくれる所見っけないと....どこかにそーゆーお店あるのかな?」
試験で、ドラゴンに付けられた帽子の傷を触りながら考える。
魔耶「そうだね、今度探してみよ」
カルセナ「うん。......そう言えば、魔耶ってお姉ちゃん居るとか言ってなかったっけ?お姉ちゃんはどんな人柄してるの?」

384:なかやっち:2020/05/08(金) 20:31

魔耶「……イジワル。ドがつくほどのS」
カルセナ「…わぉ…」
魔耶「…あの人は私が小さい頃にはもう一人で暮らしててね。滅多に顔を合わせたりしなかったんだけど…たまーに会ったときには私のつくったくまさんを消したり、いたずらしてきたり…最悪の人柄デスネ」
姉が過去にしてきたいたずらを思い出して嫌な顔をする魔耶。
カルセナ「へぇ…ちょっと会ってみたいかも…」
魔耶「止めといた方がいいと思うけどね…。まぁあの人が今どこにいるかなんて知らないけど」
カルセナ「姉妹なのに?」
魔耶「姉妹なのに。ときどき閻魔様のところに来たりしてるけど、私から姉に会いに行ったことなんてないし…っていうか会いになんて行きたくない」
カルセナ「そんなにか…仲よくないの?」
魔耶「さぁね。少なくとも私はあの人のこと嫌いだよ。あの人が私をどう思ってるかなんて分かんないけど…旗から見たら仲良し姉妹ではなさそうだね〜」
カルセナ「ふぅん…それはそれで楽しそうだけどね」
魔耶「いたずらされてる側は楽しくないよ…。…カルセナは姉妹とどんな感じなの?仲はいいの?」

385:多々良:2020/05/08(金) 21:52

カルセナ「基本的に仲悪くないかな。逆に私、姉妹に甘やかされて育ったし....」
魔耶「じゃあ喧嘩とかは全然しなかったって事かー....」
カルセナ「うーん、実際そう言う訳でも無いんだよね....ルファ姉とは全然仲良くなかったし。....私がちっちゃい頃、ルファ姉の私物にちょっかい出してたからだけど」
魔耶「ルファ姉....名前?」
カルセナ「あ、うん。本当はルファイって言うんだけどね。ルファイ姉って呼ぶの面倒臭いから略して呼んでる。私も、魔耶がたまに呼ぶような呼び方されてたし」
魔耶「んー?何か違う呼び方してたっけ.....」
これまでカルセナの名前を呼んだときの事を思い出す。が、名前を呼びすぎて来たからか、無意識に出ているものだからか中々思い出せない。
カルセナ「最近それで呼んでないからねぇ。ほら確か、カルって言ってたじゃん」
魔耶「あぁ〜、それかぁ。微妙に名前長いからね....」
カルセナ「まぁ何とでも呼んでくれ。そんな感じでした、うちの8人姉妹は」
魔耶「へぇ〜、平和なお家だったのねぇ」
カルセナ「だから私は、平和ボケしすぎて死んじゃったのかもしれん」
けらけらと笑いながら魔耶に言う。
魔耶「どんな死に方したのかはあんま触れないけどさ....人間として生きてたかった気持ちもあるんじゃないの?」
カルセナ「それもあるけど....浮幽霊になってなかったら今はなかったと思うよ?ほんと、この旅が出来て良かったわ....」
ぐんっ、と背伸びをしながら魔耶を見る。
魔耶「....そうだね」
カルセナ「今まで何回か言っちゃってるけどね.....あー、お腹空いた〜」

386:なかやっち:2020/05/08(金) 22:15

魔耶「私も〜。さっさと宿に…あっ」
…カルセナは帽子が大事、か…
カルセナ「…?どした?」
魔耶「いーいのが思いつきました〜。カルセナ、ちょっとだけ目をつぶっててもらっていい?」
カルセナ「なにさいきなり…いたずらとかしないよね?」
魔耶「しないしない。いいからつぶって〜」
カルセナ「…わかったよ…」
前々から考えていたカルセナへのプレゼント…先程思い付いたものを頭の中で思い浮かべ、手の中で形にする。
…どんな反応するかな。センスがなくてちょっと申し訳ないけど…

魔耶「…いいよ、目開けて〜」
20秒ほどたっただろうか。魔耶の声が聞こえ、ゆっくりと目を開けた。
カルセナ「いきなりなんなのよ〜。なにが……」
目を開けてまず目に入ったのは魔耶のニコニコとした笑顔だった。そして次に見えたのは…
魔耶「いつもありがとね、カルセナ。これからもよろしく」
魔耶の手のなかには小さなブローチがあった。黄色と水色を基調とした帽子を型どった…私の帽子のブローチだ。帽子の上にはちょこんと魔耶のくまさんが乗っていて可愛らしい。
魔耶「えへへ、前からカルセナになにか渡そうと思ってたんだけどなかなか思い付かなくて…今思い付いたからつくってみた。…どうかな…?」

387:多々良:2020/05/09(土) 08:19

カルセナ「うわぁ.....ありがとう....!」
魔耶の手からそっと小さなブローチを受け取る。金属の冷たい感触が手のひらを通して伝わってきたが、そこには間違いなく、誰かを想う温かさも入り交じっていた。
カルセナ「....あ、あれ?」
小さな熱い水滴が不意に頬を伝う。自然と目から涙がポロッと溢れ、次から次へと止まらなかった。ブローチが視界の奥で歪む。
魔耶「わ、もう、いきなり泣かないでよ〜」
カルセナ「泣こうとして...泣いてる訳じゃないよ.....」
確かにこのまま泣きっぱなしな訳にもいかない。涙を腕で拭い、込み上げる感情を何とか抑え、笑顔をつくる。
カルセナ「....へへ、本当にありがと。魔耶....こちらこそよろしく」
魔耶「うん、喜んで貰えて良かった〜」
カルセナ「可愛いデザインだね....魔耶だと思って大事にするよ!」
魔耶「そうして下さいな」
カルセナ「これは.....そうだな〜。帽子にでも付けておこうかな?」
キラキラと光る星空にブローチを翳す。
魔耶「帽子に帽子のブローチ付けるの?」
カルセナ「良いじゃないか別に〜」
二人でクスクスと笑いながら宿に帰る。その姿を、街灯と月明かりがずっと照らし続けていた。

388:なかやっち:2020/05/09(土) 09:21

魔耶「…梅うまいっすね〜」
カルセナ「うむ、パンもなかなか…スープが体に染み渡ります」
魔耶「食レポ…!?」
カルセナ「ちゃうわ」
宿でいつもより遅めの夕食をとるカルセナと魔耶。ちょっとした会話をしながらご飯を食べ進めた。
魔耶「パンとスープって…外国人って感じするわ〜。麺類なかったの?」
カルセナ「外国人ですからねぇ…麺類なかったのよ〜」
魔耶「それはドンマイって感じだねぇ…。私だったらおにぎりと味噌汁を選んでいたな」
カルセナ「和風…」
魔耶「味噌汁は美味しいんだぞ〜。最近になって味噌汁の良さに目覚めてさ〜」
カルセナ「ふーん…外国人はスープだからなぁ…」
魔耶「もうそれは…人生の5割損してる」
カルセナ「味噌汁を飲まないというだけで人生の半分も…!?」
魔耶「まぁ冗談だけど」
カルセナ「知ってる」
二人で笑い合いながらなんてことのない会話をする楽しい時間。…魔耶はこの時間が好きだった。ずっとこの時間が続けばいいのに…なんて思うほどに。


魔耶「ごちそうさまでした〜」
カルセナ「おにぎりだけで足りた?」
魔耶「うむ。まぁまぁかな…。あとはお菓子で補う」
カルセナ「体に悪いんじゃないか?それ…」
魔耶「どうだろうねぇ。さーて、皿洗いだ〜。くまさんしょーか〜ん」
いつものようにくまさんをつくり、皿洗いをさせる。今日は二匹を操るつもりだ。
カルセナ「…今思ったんだけどさ、その能力があれば永遠にこたつで過ごすことも可能なのでは…?」
魔耶「…今さら気づいたか…そう、この能力があれば永遠にこたつで過ごすことも可能なのだよ」
カルセナ「すげぇ〜」
魔耶「でしょ〜?自分でもいい能力だと思うわ〜。魔力がすぐになくなるのがマイナスな点だけど……カルセナの能力はなにか使ったりしないの?魔力とか…精神力とか…?」

389:多々良:2020/05/09(土) 12:20

カルセナ「魔力は使わないけど....精神力はまぁ使うよ。集中したりしないといけないからね〜」
魔耶「へぇー、でも軽い方じゃない?良いなぁ〜」
カルセナ「魔耶はハイリスクハイリターンだけど、私はローリスクローリターンなんですね」
魔耶「ほんとにローリターンなのか?だって未来読めるんだよ?」
カルセナ「それはそうだけど....先の事が分かっても対処出来る様な力は持ってないし....魔耶の能力の方が素早く対処出来たりして良いと思うけどなぁ....」
魔耶「そうか〜....?ま、お互い様って感じだね」
ぬいぐるみを操りながら話す。
カルセナ「.....そう言えば、魔耶の能力ってつくった物に命を宿す事は出来ないの?操れるだけ?」

390:なかやっち:2020/05/09(土) 15:02

魔耶「命なんて宿せないよ〜。操るだけだね。命宿せてたらわざわざつくったもの消したりしないよ〜」
カルセナ「まぁそうか……っていうか、なんで戦うときとかなんかするときとかにくまさんなの?」
魔耶「可愛いから」
カルセナ「…それだけ?」
魔耶「や、もう少し理由はある」
カルセナ「ほう?その理由とは?」
魔耶「んっとねぇ…まず可愛いものが好きだから、手足があるやつのほうが操るときに便利だから、可愛いからかな」
カルセナ「3分の2可愛いじゃないですか…」

391:多々良:2020/05/09(土) 15:21

魔耶「ま、そう言いなさんな.....よーし、終わった〜」
キッチンでは聞こえていた水音が途絶え、魔耶が操っていたぬいぐるみが消えた。
カルセナ「お疲れ〜」
魔耶「良い仕事したわぁ〜。よっ、と」
ベッドに腰掛ける。ごろんと転がろうか迷ったが、取り敢えず座るだけにしておいた。
カルセナ「今日はゴロゴロしないのね」
魔耶「なんとなくね。取り敢えず座った」
カルセナ「その方が良いぞ。多分」
魔耶「確信はないだろうに....」
カルセナ「食後にすぐ寝たらステーキになるって言うじゃん」
魔耶「何で既に調理済みなのよ....牛じゃない?」
カルセナ「あ、そっか。まぁ似たようなもの.....だよ」
魔耶「どうだかねぇ〜」
端から思えば下らない会話に聞こえるが、この何気ない会話は、二人にとっては大事なコミュニケーションの一環であった。
カルセナ「今日はシャワーどっちが先に使う?じゃんけんでもしますか?」

392:なかやっち:2020/05/09(土) 16:29

魔耶「んじゃあそうしようか。勝ったほうが先に入れる、ね」
カルセナ「了解!いくよ〜?さーいしょーはグー!」
カル魔耶「じゃーんけーんポンッ!」
結果、魔耶がグーでカルセナがパーだった。カルセナの勝ちだ。
魔耶「負けちゃったぁ。じゃあカルセナ先ね」
カルセナ「意外…普通言い出しっぺが負けるのに…」
魔耶「私じゃんけん弱いから…そのせいかな?」
カルセナ「へぇ…まぁいいや。さっさと入ってきまーす」
魔耶「行ってらっしゃーい」


カルセナがシャワーを浴びにいき、魔耶は一人になった部屋の中で考え事をしていた。
魔耶(…悪魔耶だけを封印する方法、か…)
悪魔耶は夢の中で「私だけを封印するなんて無理だ」と言っていた。自分自身もそう思う。私ごと封印するのならまだしも、一つの体の意識の内の一つを封印するなんて…
魔耶「…私はどうなるのかねぇ…」

393:多々良:2020/05/09(土) 17:16


蛇口を捻り、適温なシャワーを頭から浴びる。
カルセナ「....ふぅ〜、体に染み渡るわぁ〜.....にしても、どうしたらブラッカルは許してくれるのかな.....」
考えても考えても、今の脳じゃ答えは出てこなかった。いや、そもそも正確な答えがあるのかすらも分からない。
カルセナ「....ええい、今夜もっかい行ってみて、どう言われるかでまた考えよう」
頭をわしわしと洗っているとき、ふと戸の奥の、帽子がある脱衣場を見る。
カルセナ「....あのプレゼントは嬉しかったなぁ。すごい感動しちゃった」
受け取った瞬間、心の中に魔耶の優しさや温かさが流れ込んできた様な感覚に陥ったのだ。今日は何か、心が満たされるような事が多かった気がする。
カルセナ「されてばっかじゃ申し訳ないなぁ.....私も今度、魔耶にお返ししよっかな。ご飯とか」
北街の飲食店で、良い店があるか考える。今度ひまりでにも聞いてみようか。魔耶が喜ぶ様な、美味しいお店があるかを。

394:なかやっち:2020/05/09(土) 17:45

魔耶「…先のことなんて考えたって仕方ないか。私の能力じゃ未来なんて分かんないんだし…」
…カルセナの能力があれば、私の未来は分かるのだろうか。私が悪魔になっているのか、なっていないのか…
魔耶(…いや、そもそも私にそれを知る勇気なんてないか…)
私には未来を知る勇気なんてない。そう考えると、カルセナのほうが私なんかよりよっぽど勇気があるのかもしれない。未来を見る覚悟を持つことができるのだから。
魔耶(幽霊を怖がるのに、未来は怖くないのか…へんなの〜)
だが、自分はそのカルセナを最も信頼しているのだ。

395:なかやっち hoge:2020/05/09(土) 17:46

[やっべ、途中であげちゃった…まぁいいや(雑)]

396:なかやっち hoge:2020/05/09(土) 17:46

[変なとこで切れてるけど気にしないでくださーい]

397:多々良:2020/05/09(土) 19:17

体の泡を流しているときに、ある事に気付く。
カルセナ「ん?そう言えば魔耶の好きなご飯系って何なんだろう....お菓子とかは知ってるけど.....後でさりげなく聞いてみようかな〜....」
暫くして全て流しきったので、再び蛇口を捻って温水を止め、脱衣場に手を伸ばしてバスタオルを取る。そして、頭からしっかりと拭く。髪の毛を拭いているときに顔に掛かる水は、今日流した涙よりは全く熱くはなかった。
カルセナ「....ふぅ、上がったら何か飲み物でも飲もうかな.....まだ炭酸飲料あったっけ」
冷蔵庫の中身を思い出しながら寝間着を着る。
カルセナ「お待たせ〜」
こう声に出しながら、魔耶のいる部屋へと戻る。

398:なかやっち:2020/05/09(土) 22:10

魔耶「…あ、あがった?意外と早かったじゃない」
カルセナがあがったのを確認し、寝かせていた体を起こす。
カルセナ「結局寝てたのね…早かったかな?…まぁシャワーだし…」
魔耶「シャワーだから…なのか…?なるほどわからん」
カルセナ「そのくらい理解できないと立派な大人になれませんよ!」
魔耶「もう人間の大人より長生きー…って、これ前もやったなぁ」
カルセナ「もっとバリエーションを増やしてみなさいよ」
魔耶「バリエーションっていったって…なかなか思い付かないわ〜。んじゃあ私も入ってきまーす」

399:多々良:2020/05/10(日) 08:48

カルセナ「おー、いってらー」
魔耶がシャワールームに行ったのを確認すると、キッチンにある冷蔵庫を開ける。
炭酸飲料があるのか、目でくまなく探す。すると、他の飲料の中に紛れて1本だけ未開封のまま残っているものを発見した。
カルセナ「ラッキー。また依頼受け終わったら買い足したいなぁ」
それを手に取り、冷蔵庫を閉める。蓋を開けるとプシュッという爽快感のある音が鳴った。一口ぐいっと飲む。
カルセナ「これこれ、やっぱシャワーの後は炭酸ですわ〜」
そのままベッドの方に向かい、腰掛ける。ふと、近くにある窓の奥を見る。
すっかり闇に包まれ、仄かな街灯の灯りにしか頼る事の出来ない北街の大通りには、当たり前かの様に人の気配は無かった。
その更に奥、北街の外壁の奥を見る。小さな三日月が顔を覗かせているが、生命の存在は感じられない。飛竜でさえも静まる時間帯なのだろうか。
カルセナ「....そう言えば最近飛竜をプライベートで見てないなぁ....危機感薄れてきちゃう。....そもそもそう言う化物がいなけりゃあ、危機感なんて持つ必要ないのにねぇ」
そのとき、魔耶と初めて出会ったときの事を思い出した。あれは、私が飛竜を前にして叫んだから起きた出来事である。この世界に来るとき、もしあそこで目が覚めなかったら、叫ぶ必要が無い状況だったら、魔耶とは出会えなかったのかもしれない。
カルセナ「.....未来って些細な事で大きく変わっちゃうもんな....そこんとこは、飛竜に感謝って感じか。攻撃してきたのは許さんけど....」
外を見ながら、大きく息を吐いた。遠くで、飛竜か何かの遠吠えが聞こえた様な気がした。

400:なかやっち:2020/05/10(日) 09:32

脱衣場で上着を脱いだとき、ふと左肩の包帯が目に入った。包帯をしているといっても左肩を固定するためにしていたものなのだが。
魔耶(…今どんな感じになってるんだろ…)
気になって肩に巻かれた包帯を取ってみる。スルスルととっていき、ほどかれた包帯が床の上で山をつくった。
包帯を取り終え、怪我の状態を視認する。
魔耶「…!」
…傷はきれいさっぱり消えてしまっていた。まるで最初から怪我なんてしていなかったかのようにきれいな自分の肌だった。
魔耶「…2日で治るなんて…悪魔ってすごいなぁ…」
自分の中にいる悪魔に対する少し皮肉をこめた発言だったが、それに反応する者はいなかった。
…自分の中の悪魔はいつ出てくるのだろうか。いっそのこと、ブラッカルのようにONOFFが切り替えられたらよかったのに。
魔耶「……まぁいいや。さっさとシャワー浴びてすっきりしよう」

401:多々良:2020/05/10(日) 12:37


カルセナ「さーて、寝るまでの間何しよっかな〜....」
取り敢えず、部屋の中をうろつく。元の世界ならば遊び道具が沢山あって暇を潰す事が出来たのだが....生憎この世界にはそう言う物があるのかすらも分からない。
カルセナ「むー....本当に暇だなぁ....歌でも歌うか〜....?」
自分に提案しつつ、どんな歌があったか思い出す。
カルセナ「そう言えば、良く歌ってたやつあったなぁ....懐かしい.....」
そっと歌を口ずさむ。よく家族の誰かしらと、2パート合わせて歌っていた。こうやって歌っているときは、自然と自分の意識の中に入る事が出来る。
カルセナ「(あいつはこの歌知ってるのかな....同じ私だし、思い入れある歌だから知ってて欲しいけどな〜)」
そんな事を一瞬、心の中で思った。続けて歌っていたそのとき、頭の中に自分が歌っているパートとは違う、もう1つのパートが流れ込んできた。
カルセナ「....あれ?」
驚いて歌を止める。
カルセナ「......今のは...?」

402:なかやっち:2020/05/10(日) 13:31

シャワーを終え寝間に着替えていたとき、どこからか綺麗な歌声が聞こえてきた。
魔耶「…カルセナ…?」
聞こえてくる声はカルセナの声のように聞こえる。聞いたことのない歌だったが、なんだか懐かしく感じるような…暖かいような…いい歌だった。
魔耶「いい歌…ってか、カルセナ歌うまいな〜…」


寝間着に着替え終え部屋に入ろうとしたとき、カルセナの歌が突然途切れた。聞いていたのがばれてしまったのだろうか…?
部屋の扉を開け、中を覗きこむ。
魔耶「カルセナ〜?ただいまあがりましたー…」

403:多々良:2020/05/10(日) 15:35

カルセナ「わっ!?魔耶!?」
扉からひょこっと現れた魔耶に驚く。歌を聞かれるのが恥ずかしかったからだ。
魔耶「何故そんな驚くのよ....」
カルセナ「あ、あぁ....別に何も....いきなり来たからちょっとビックリしちゃいまして....」
魔耶「ふ〜ん、そっかー」
魔耶には何となくの理由が分かっていたが、あえて言わなかった。
カルセナ「(....何だったんだろう、また空耳みたいなものなのか....?)」
その声は自分とそっくりだけどちょっぴり低い、聞き覚えがある声だったのだが....。
カルセナ「(....まぁ、いっか)」
魔耶「さてと、ジュースジュース〜」
先程のカルセナの様に、キッチンへ向かい冷蔵庫を開ける魔耶。1本のジュースを取り出してゴクゴクと飲んでいた。
カルセナ「よっ、良い飲みっぷり〜」
魔耶「飲み会かっての。美味しいわー、これ」
カルセナ「あんまり普通のジュース飲まないからな〜。炭酸ばっかりで」
魔耶「1つのものに集中しすぎるなよ〜」
カルセナ「分かりましたよ〜」

404:なかやっち:2020/05/10(日) 16:30

魔耶「…まぁ、炭酸をたくさん飲みたくなる気持ちはわからんでもないけどね」
カルセナ「…え?魔耶、炭酸飲めたの?」
魔耶「逆に飲めないと思ってたの!?」
カルセナ「だって魔耶が炭酸飲んでるの見たことなかったし…」
…確かにこの世界で炭酸飲んでなかったような…じゃあそう思われるのも仕方ないか…?
魔耶「炭酸くらい飲めるわ。むしろ強炭酸大好きだわ」
カルセナ「ほぇ〜。炭酸に強いんだねぇ」
魔耶「強い…のかな?…でも飲みすぎるとお腹がふくれるからあんまり飲まないんだ。ご飯が食べれなくなったら困るし」
カルセナ「あー。炭酸ってお腹ふくれるよね〜」
魔耶「うむうむ。カルセナは炭酸の中でもなにがいいの?私はサイダーが好きです。あとジンジャーエールとか」

405:多々良:2020/05/10(日) 18:45

カルセナ「すっきりしたやつだったら何でも好きだよ〜、あと果物系とか。....ただ、ジンジャーエールは前に飲み過ぎて胸焼けした事があったんだよね....」
魔耶「ええ?そんな事あんの?」
カルセナ「ほら、あの....あんまジンジャー得意じゃないから....喉にきましてね」
魔耶「そう言う事ね....じゃあやっぱ私がさっき言った事は間違ってないね」
カルセナ「ごもっともですわ」
飲んでいた炭酸飲料を近くの棚の上に置き、ベッドにうつ伏せになる。
カルセナ「あぁ〜、頭が疲れた〜....」
魔耶「文字ばっか見てたもんね、今日は....明日は何をしよっか」
カルセナ「本格的に、魔耶の悪魔化を止める方法でも探します?苦手なものとかを....」
魔耶「まぁそう言っても、ジャンルが広すぎるからなぁ....何かに絞れれば良いんだけどさ」
カルセナ「確かに....それをどうするかだね」

406:なかやっち:2020/05/10(日) 19:52

魔耶「…それに、もうお金がない」
机に置いてあった財布を手に取り、軽く振ってみる。チャラチャラと小銭の音がした。
カルセナ「それはやばい…食べていけないじゃないの…」
魔耶「うむ…悪魔になる前に餓死するかもしれん…だからクエストも受けないといけないぞ」
カルセナ「やること盛りだくさんだ〜」
魔耶「ほんとにね…」
ため息をついて財布を机の上に戻す。
カルセナ「まぁ食料問題は外でなにかしら採ってくればなんとかなるし…申し訳ないけど、ひまりとかに頼るって手もあるしね」
魔耶「なるほどね。あとはまぁ…私がなんかつくって売るか…」
カルセナ「でもお店がないぞ〜」
魔耶「うーむ…確かに…それに、一日でつくれる量には限度があるからな〜」
カルセナ「魔力だもんね。やっぱりつくりすぎると疲れるの?」
魔耶「うん。魔力を使いすぎると体力がなくなる。あと疲れすぎて動けなくなる」
カルセナ「一日にどのくらいの量をつくれるの?」
魔耶「ん〜…ベッド一個分くらい」
カルセナ「…多いのか少ないのかわかんないな」

407:多々良:2020/05/10(日) 22:11

魔耶「まぁ、思ってるよりは多いよきっと」
カルセナ「ふーん、中々大変なんだね〜......ふあ〜ぁあっ、欠伸が....」
ご飯を食べて、二人共シャワーを浴び終わったら少し遅い時間になってしまっていた。
魔耶「本当だー、明日に備えてもう寝る?」
カルセナ「うん....私はもう眠いし、寝るよ〜」
魔耶「んじゃあ私も寝よっかな....部屋は暗い方が良いしね。あ、炭酸ちゃんと冷蔵庫に仕舞っときなよ?」
カルセナ「へいへーい....」
ベッドから立ち上がり、飲みかけの炭酸飲料を持ってキッチンへ向かう。冷蔵庫の右側に入れパタンと戸を閉めた後、すぐにベッドに戻り寝転ぶ。
魔耶「んじゃ、お休み。また明日〜」
カルセナ「はい、お休み〜.......」
部屋の照明が消え、一気に闇に包まれる。掛け布団を被り、カルセナは、今日あった色々な出来事を思い浮かべた。そして、魔耶がシャワーを浴びているときに歌った懐かしい歌を頭の中でゆっくり再生しながら眠りに就いた。

408:なかやっち:2020/05/10(日) 22:50

魔耶「…寝ちゃえば、一日に何回でもこれるのか?」
悪魔耶「そうみたいだねぇ。いらっしゃい」
いつものように、目の前には鎖に繋がれた悪魔の自分がいた。ニコニコと愛想よく笑っている悪魔耶も相変わらずだ。
魔耶「…やっぱり、鎖…減ってるよね?」
悪魔を封じている鎖を指差し、問いかけてみる。
悪魔耶「あ〜、気づいちゃった?そうそう、最近鎖が外れてきててね。つまり封印が解けかけてるって証拠だよ」
魔耶「…」
封印が解けかけている…つまり、それは魔耶にとってタイムリミットが少なくなっていることを意味している。
悪魔耶「はは、君と私が入れ替わるのもあとちょっと、かな。もって五日ってところ?」
魔耶「あと、五日…?」
悪魔耶「まぁあくまで私の勝手な推測だよ。もっと早いかもしれないし、もっと遅いかもしれない。…あ、また鎖がとれた」
魔耶の見ている前で、悪魔耶の翼を封じていた鎖がガチャンとはでな音をたてて落ちていった。すると…
魔耶「……ッ!?あぐぅっ…‼いっ……!?」
いきなり魔耶の背中に痛みが走った。ギシギシと背中が軋む。まるで背中の骨を無理矢理変形させられているみたいな痛み。
…そんな私の様子を顔色ひとつ変えずに見つめ、声を発するもう一人の自分。
悪魔耶「…翼が自由に動かせるようになったから、君にも影響がでちゃったんだね。起きたときを楽しみにしてなよ」

409:多々良:2020/05/11(月) 13:39


カルセナ「.....?まただ....」
今は自分は歌っていないにも関わらず、どこからともなく、あの歌の下パートが聞こえてくる。
まぁ、そんな事はどうだって良い。今はブラッカルに用があるのだ。早足でブラッカルが居るであろう方向へと向かう。それに伴い、歌声も近くなってきていた。
カルセナ「....あっ....!?」
闇の中に光る金髪を見つけた。それは確認するまでもなく、ブラッカルの姿だった。これまで背中を向けていた筈だが、今日は何故か正面を向いて座っている。そして何より驚いた事。
カルセナが大好きで、懐かしい、あの歌の下パートを上機嫌そうに歌っていたのだ。
カルセナ「......知ってたんだ、その歌....」
ブラッカルは、カルセナの姿を確認した途端、ぴたりと歌を止めた。
ブラッカル「....当たり前だろ。前に言った事を覚えてねぇのか」
カルセナ「....私達は、一心同体.......」
その言葉を言った瞬間、唐突に色々な気持ちが込み上げてきた。ブラッカルと喧嘩した時の怒り、魔耶と過ごし、プレゼントを貰った時の喜び、いつ魔耶が悪魔化するのかが分からない時の不安、家族を思い出し、歌を歌った時の少しの哀しみと懐かしさ。そして、自分の目の前に立ちはだかる壁を乗り越える辛さ。その壁を打ち破るには、ブラッカルと仲直りするにはーー。
ブラッカル「....で、どうしたってんだ。何か思い付いた....」

カルセナ「「 ごめんっ!!! 」」

頭の中で考えるよりも先に、この言葉が声に出てきた。

410:なかやっち:2020/05/11(月) 14:49



魔耶「ぐっ……お、きた…とき…?」
痛む背中に苦痛を感じながら、悪魔耶の言葉を繰り返す。
悪魔耶「そう。起きたとき。この空間の中で君が痛みを感じてるってことは、現実でもなにかしらの変化が起きてるってことだろうからね」
魔耶「…っ…現実で…」
悪魔耶「うんうん。早速起きて、見てみなよ。自分にどんな変化が表れてるかさ」
悪魔耶がそういい放った瞬間、また空間が歪み出した。空間の白色と悪魔耶の黒色が混ざりあって渦をつくる。
悪魔耶「…またね。君の反応が楽しみだよ」

411:多々良:2020/05/11(月) 17:45


ブラッカル「........」
話す事を止めて、カルセナをじっと見始めた。
カルセナ「ごめん!!....最初からこう言えば良かった....!!」
少し俯きながら、それでも目線はブラッカルへと向けながら話す。
カルセナ「....ブラッカルの言った事は間違ってる。絶対に間違ってる筈だけど.....もっと詳しく質問すれば良かったかな....」
相変わらず、ブラッカルの視線はカルセナから外されていなかった。
カルセナ「.......ごめん」
完全に足元に視線を落とす。
ブラッカル「.......お前」
カルセナ「.....?」
ブラッカル「...魔耶から何か貰ったみてぇだな」
カルセナ「...あぁ、これ....?」
帽子を指差す。そこには、魔耶から貰ったブローチが輝いていた。それに視線を向ける。
カルセナ「.....そう言えば、ブラッカルは私と一心同体なんだよね......なのに、帽子は大事じゃないの....好きじゃないの?」
ブラッカル「......好きじゃねぇ。私はその、帽子に籠る念みてぇなのに封印されてる様なもんだ」
カルセナ「....そう...か.....」
ブラッカル「....でも、ちょっとだけ嫌いじゃなくなった」
その言葉を聞いて、足元に向けてた顔を上げる。ブラッカルが何故か照れ臭そうに視線を反らす。良く見ると、ブラッカルの帽子にも色は違うがブローチらしきものがついていた。
ブラッカル「...ふん、中々良い奴っぽいな.....魔耶って奴は。.....こっちこそ、早とちりして悪かった....」
瞬間、ぱぁっとカルセナの顔が明るくなる。涙ぐむのを堪えて、笑顔をつくる。
カルセナ「ッ.........でしょ!!もっと語ってあげようか!魔耶の事!!どうでも良くなんかないんだからな!」
ブラッカル「ッ...う、うるせぇこっち来んな!!用件が済んだんだから終わりだ!!まだ、完全に信じれるなんて言ってねぇんだからな!」
照れ顔を見られたくないからか、夢から早く覚めさせる為か、全力で突き飛ばされた様な気がした。

412:なかやっち:2020/05/11(月) 18:26


魔耶「…っ‼…はぁ…はぁ…」
夢の空間から放り出され、痛みと驚きで飛び起きる。どうやら現実の私も痛みに悶えていたらしく、汗びっしょりになってしまっていた。
魔耶「…はぁ……はぁ………な、なんだったの…?」
あらい呼吸をしながら夢の中でいきなり起こった出来事を思い返す。夢の中では耐えきれないほど痛かった背中の痛みは現実に戻ってきたと同時に消えてしまったらしく、もう痛みはなかった。
…が、代わりになにか違和感のようなものを感じた。いつもとは違う…なにかが違う感覚がある。
…なんだろう、この違和感は。痛みとは違う、慣れないような…落ち着かないような…そんな感じがする。
おそるおそる後ろを振り返り、自分の背中を確認してみた。
魔耶「……翼…?」
違和感の正体は自分の翼だった。
…なぜ、違和感を感じるのだろう?翼なんて生まれてからずっとついてるし、特になにか変化があるわけではないのに…?
魔耶「…?………っ‼」
…寝ぼけていた頭がようやく違和感に気づいた。自分に問うように違和感の正体を口に出してみる。
魔耶「…私、寝るときは翼しまってる…よね…?」
そう。私はいつも寝るときに翼はしまっている。翼をだしていると寝返りがうちづらく、寝にくいからだ。
…どうして翼が出てしまっているのだろう?先程の痛みと関係があるのだろうか…?

413:多々良:2020/05/11(月) 19:55

カルセナ「.......ん....」
重い瞼をゆっくりと上げる。壁側に寝返りをうっていたせいか、目が覚めて一番最初に視界に飛び込んできたのは壁だった。
カルセナ「(ちゃんと仲直り.....出来たよね....)」
夢でした事は幻ではない。そんな事を実感し、不思議と嬉しくなった。昨日まではずっと喧嘩していたと言うのに。
壁にそりながらのそっと体を起こす。振り向くと、魔耶が体を起こしている様子が見えた。どうやら魔耶も目が覚めているらしい。
カルセナ「....おはよぉ〜、魔耶」
魔耶「あぁカルセナ....おはよう」
少したじろいでいるかの様な挨拶だった。少し違和感を覚え、魔耶の様子を観察する。
沢山の汗をかいているが、嫌な夢でも見たかの様に思えた。あとは翼がちゃんと生えていてーー。
カルセナ「......あれ?魔耶って......」
魔耶「ん....何....?」
カルセナ「.....いや、何でもない.....」
こう言う事も、たまにはあるのか....?そう思って、いつも寝るときにはしまっている筈である、翼の事は別に聞かなくても良いと判断した。

414:なかやっち:2020/05/11(月) 21:15

魔耶「はぁ…なんか夢の中でいきなり背中が痛くなってね…そのせいで汗かいちゃった」
カルセナに説明しながら額の汗を拭う。
カルセナ「へぇ…だからそんなに汗かいてるのね。今は背中大丈夫なの?」
魔耶「うん。痛くはない…けど…」
カルセナ「…けど?」
魔耶「…なんか…いや、やっぱりいいや」
翼のことを言おうと思ったが、もしかしたら今日は翼をしまい忘れていたかもしれない。それか、痛みで翼がでてきてしまったのかもしれない。そう思って言わないことにした。
魔耶「…あー、汗がひどいわ…ちょっとシャワー浴びてきていい?」
カルセナ「…ん。いってきなさい」
魔耶「ありがとう。いってまいりまーす」

415:多々良:2020/05/11(月) 22:06

そう言い、部屋に置いてあるタオルと着替えを持ってこの部屋を出て行った。
カルセナ「.....うーん、やっぱり何かおかしいよね.....まさか、悪魔化が進んでるとかは....無いかなぁ.....」
魔耶の事を考えながら、ベッドから降りようとする。
カルセナ「......うん?頭が......ッ」
突如、まるで夜通し起きていた時の様な眠気に襲われた。瞬きをすればするほど眠気は増していく。そうして謎の睡魔に負け、再びベッドに仰向けで倒れ込んだ。


ブラッカル「.....おい、起きろ」
カルセナ「......うぅ....あれ、何でまたここに....?」
目を覚ました場所は、ブラッカルが居るいつもの空間。
ブラッカル「私が呼び戻したんだよ。寝起きだったから出来た事だ....それよりも」
カルセナ「うん....?なぁに?」
眠い目を擦りながらブラッカルと視線を合わせる。
ブラッカル「....魔耶の悪魔化が急に深刻化している。もってあと3、4日程にな」
カルセナ「......えっ?....う、嘘ッ......だって、今はあんなに普通に....」
普通にしている。果たしてそうなのだろうか。もしかしたら、自分が気付いていないだけかもしれない。魔耶がそれを隠しているのかもしれない。実際、自分もついさっき悪魔化を疑ったばかりだ。
ブラッカル「いよいよ平和ボケしてらんねーぞ。どうするかは、もうお前に託した。私がやれる事っつったら、お前のやりてぇ事を手伝ってやるだけだ」
カルセナ「........魔耶....」

416:なかやっち:2020/05/11(月) 22:51


一人シャワーを浴びながら考え事をする。シャワーから出るお湯が魔耶の髪を濡らし、前髪から水が滴った。
魔耶(…あと、4日…か…)
…この4日という数字は悪魔耶が私と入れ替わるまでの日数だ。もっと言うなら、私がこの世から消えるまでのタイムリミット…
魔耶(…あと、4日しかない…ほんとに解決策なんて見つかるの…?)
魔耶の心の中は不安でいっぱいだった。
確かに、カルセナとはどんな困難も乗り越えてきた。ドラゴンだって異変だって乗り越えてきたんだ。今度の壁も乗り越えられる…そう思ってた。昨日までは。
…でも、いざちゃんとした数字が分かると考えが変わってしまう。
魔耶(…あと4日で解決策を探して、実行して、元の自分に戻れる…?もしその解決策にたくさんの準備が必要だったら?貴重な植物を取りに行かなければならなかったら?…4日で、足りるわけないじゃん…)
…だから、本当はずっと言いたくなかったけど…それを頼みたくなかったけど…カルセナに、あの話をしよう。今話さないといけないことだから。手遅れになってしまう前に対策を打たなければいけない。
魔耶「…やだなぁ。自分から言わなきゃいけないなんてね…」
…覚悟は、出来ている。悪魔化していると知った日からうすうす感じてはいたのだから。

417:多々良:2020/05/12(火) 13:17


カルセナ「....ねぇ」
ブラッカル「何だよ」
カルセナ「魔耶は、一回悪魔になったら本当にもう戻れなくなるの....?」
ブラッカル「あぁ、そうなる可能性が高いな。だから何だ、分かりきった事だろ」
カルセナ「いや、その.....悪魔だけを倒せば、魔耶が戻ってくるんじゃないかなって.....」
ブラッカル「.....それは無理だ」
一度溜め息を吐いて、説明する。
ブラッカル「魔耶の中の悪魔っつーやつは、魔耶が生まれた頃から居るんだろ?」
カルセナ「うん、だからその悪魔を、閻魔様が封印してたって言ってた」
ブラッカル「閻魔程の力を持った奴が、わざわざ悪魔を倒さなかった理由が分かるか?」
カルセナ「......何?」
ブラッカル「....本体のバランスが崩れるからだ。きっと、魔耶が生まれつきで持っていた悪魔の力を閻魔は無くしたくなかったんだろ」
カルセナ「....魔耶の事を想って?」
ブラッカル「多分な。何れにせよ、悪魔を倒しちまったら倒しちまったでまた厄介な事が起きかねねぇ。それ以外の方法を考えるしかねぇよ」
カルセナ「.....そうか....封印も出来るか分からないしなぁ....ブラッカルみたいに出来れば良いのに....」
ブラッカル「私は封印術なんてもんは使われてねぇ。あいつの強い念があって....」
その瞬間、うっかり口を滑らしてしまったかの様な目付きをし、そのまま口を閉じた。
カルセナ「.....ん?....あいつって?....気になる、はぐらかさないでよ」
ブラッカル「.......チッ、仕方無ぇな....あいつってのは....」

418:なかやっち:2020/05/12(火) 13:48

魔耶「…ん?」
服を着ようとしたとき、翼を出しっぱにしていたことを思い出した。このままでは翼が引っ掛かってしまって服を着れない。
魔耶「はぁ…そうだった。…なんで翼でちゃったんだろ…痛みで出てきちゃったのかなぁ?」
服を着るために翼をしまおうとする。
魔耶「…よいしょ……って…あれ…?」
いつものように翼をしまいこんだ…はずだったのだが、なにかに妨害されているかのように翼がしまえなかった。
…なんとか翼をしまおうとするが、しまえない。
魔耶「……えぇ…?なんで翼がしまえないの…?昨日まではしまえてたのに…」
……私の悪魔化は、もうそこまで…?
魔耶(…もしかして…夜の背中の痛みの原因は、これ…?)

419:多々良:2020/05/12(火) 16:13


ブラッカル「私達、つーか.....テメェの母親の事だよ」
カルセナ「えっ.....?お母さん?....お母さんが、ブラッカルを封印してるって事??」
ブラッカル「....正確には少し違ぇが....ま、そんな所だ。お前の中に残る親の念が、私を邪悪な存在と認識してここに閉じ込めてんだろうな。良く言うだろ、死んだとしてもずっと心の中に居るとか」
カルセナ「そうだったんだ....じゃあもしかして、あの声も.......いや、そんな事言ってる場合じゃないよ!魔耶の悪魔化、どうやって止めよう....」
そう言うと、ブラッカルがきょとんとした顔でカルセナを見た。
ブラッカル「お?珍しいな。お前が執着せずに、気持ちを切り替えるなんて」
カルセナ「だって......大事な人を二人も失いたくないもん....」
ブラッカル「....成る程な、そりゃそうだ。ま、さっきも言ったように、私はお前のやる事をやるだけだからな」
カルセナ「何か情報収集とか手伝ってくんないのー?」
ブラッカル「無理だろ....こっからあんま出れねぇんだから。二人で考えろ、私は知らねぇ」
そんな事を言うブラッカルに、少しムスッとした顔を見せる。
カルセナ「もー、こんなとこで性格の悪さ出してくんなよー!!何か考えといてよ?私も全力で考えますからー!!」
ブラッカル「へーへー。分かったよ......ん、そろっと魔耶が来んな。お前、起きてた方が良いんじゃねぇか?」
カルセナ「呼んだのはそっちの癖に.....んじゃあ行くね、バイバイ」
ブラッカル「あー、何か思い付いたらまた言うから。それと.....」
カルセナ「....?」
ブラッカル「........いや、やっぱ良い。早く行け、早くしねーと来るかもしれねーぞ」
カルセナ「もう、何なん....」
呆れた様に言い返して戻るカルセナの背中を、ブラッカルはずっと見ていた。
ブラッカル「........頑張れよ。死んでも、負けんじゃねぇぞ....」

カルセナ「......ふぁ〜......まだ魔耶は来てない....か」

420:なかやっち:2020/05/12(火) 17:00


魔耶「…悪魔耶の鎖がとれて、それと同時に背中が痛くなったんだよね……。…じゃあ、悪魔耶がどこかの部位を動かせるようになったら…その部位が痛くなるのかな…」
…でも、それで悪魔化の進行状態が分かるかもしれない。痛いのは嫌だけど、それで今の状態が分かるなら…
魔耶「…はぁ。これもカルセナに報告しなきゃ。あの話と一緒に話しちゃおう…」
深いため息をつき、能力で服をつくった。いつも上着の下に着ている白シャツの背中に翼を出すための穴を開けたデザインだ。この服なら着やすいであろう。
魔耶「上着は着れないけど…まぁしょうがないか」

カルセナがいるであろう部屋の扉のドアノブに手をかけ、ガチャリと開ける。
魔耶「…カルセナ〜、あがったよ。…待たせちゃった…?」

421:多々良:2020/05/12(火) 18:09

カルセナ「あっ、魔耶....全然大丈夫だよー」
魔耶「そう、なら良いけど.....」
ゆっくりとベッドに腰掛ける。シャワーを浴びた後にも関わらず、魔耶の背中から翼が出たままになっているのを見て、本当に悪魔化が進んでいるんだという事が実感出来た。
カルセナ「魔耶さ.....悪魔化の件、大丈夫....?」
大丈夫な訳が無い。しかし、どんな言葉を言えば良いのか良く分からず、少しまどろっこしい質問をしてしまった。単刀直入に問い掛けるのも、ちょっと気が引けた。
魔耶「あー.....それね......」
座ったまま、斜め上らへんの空間を見ながらふぅ、と小さな溜め息を吐いた。
カルセナ「まぁまぁ時間経っちゃってるし.....どうなのかなって....」
本当は知っている。魔耶の悪魔化が進行している事も、魔耶が魔耶でいられるタイムリミットも。自分とは違う、魔耶の表現が聞きたかっただけなのかもしれない。

422:なかやっち hoge:2020/05/12(火) 20:07

魔耶「…ちょっと、まずいかな…羽もしまえなくなっちゃった」
苦笑いを浮かべて自分の足元をみる。
カルセナ「…だから、ずっと羽出してたのね。いつから…?」
魔耶「気づいてたのね。…昨日の夜からかな。気づいたのはさっきだけど。…それに、私が悪魔になるまで、あと4日くらいだって…もう一人の自分に言われた」
カルセナ「…そっか…」
魔耶「……だからさ、カルセナに言わなきゃいけないことがあるの」
下へと向けていた視線を上げ、カルセナの瞳を見つめた。

423:多々良:2020/05/12(火) 21:58

カルセナ「....な、何.....?」
これまでとはうって変わった魔耶の真剣な眼差しに、ごくりと息を呑む。
魔耶「ずっと言わないとって思ってたけど、すぐには言い出せなかった....大事な事」
魔耶は、視線をカルセナから外すかの様な素振りは全く見せなかった。今までこんな魔耶を見たことが無い。それ程重大で、言い出しにくい事なのだろうか。
カルセナ「.....うん、分かった。聞くよ.....」
そう言うと魔耶は、一呼吸置いてから話し始めた。
魔耶「ありがとう......あのね」

424:なかやっち:2020/05/12(火) 22:21

魔耶「…単刀直入に言おうかな。…今日から三日後の夜、カルセナには私をこの世から消してほしい」
カルセナ「…え…?」
カルセナが混乱したような、私の言葉を理解できないような表情を浮かべた。…もちろんそんな反応になるだろうなとは思っていたが。
カルセナ「…な、なんで…なんで私が、魔耶を…」
魔耶「はは、ざっくり言い過ぎたね。詳しく説明するから聞いて」


魔耶「…さっき、あと4日くらいがタイムリミットだって言ったの、覚えてる?」
カルセナ「もちろん…」
魔耶「…もし私が悪魔になったら…カルセナを傷つけるかもしれない。もちろんならないように解決策を探すけど……もし、だよ。解決策が見つからなかったら?…そしたら、手遅れになる前に対策をうたなきゃでしょ」
カルセナ「…」
カルセナは魔耶の言おうとしていることがなんとなく分かった。…でも、それを考えたくなかった。
そんなカルセナの思いを知らない魔耶は、話を続ける。
魔耶「私の中の悪魔がどんなやつかなんてよくわからない。どんなことを企てているかなんてわからないでしょ。…だから、私が悪魔になって罪を重ねる前に…この命を摘み取ってほしい。……もちろん、無理にカルセナがやる必要はないよ。カルセナが無理そうだったら私がそこらへんのモンスターの巣にでもいくか、ニティさんに任せるかすればいい」
魔耶はまるで他人事のように淡々と話しを続けた。…感情的になってしまったら、また泣いてしまいそうだったから…。
魔耶「まだはっきりとはわからないけど、きっとあと4日に近い数字で私はいなくなる。どっちにしても私は消えるんだよ?だったら、私は人間に近い…今の状態のまま消えたいから…」

425:多々良:2020/05/12(火) 23:19

カルセナ「.......やだ......そんなの、おかしいよ........」
魔耶だって、苦渋の決断だったのだろう。そうするしかないのだろう。でも、そんな事、少しも考えられなかった。
沢山協力し、笑い合い、これまで触れ合ってきた魔耶を、今までの時間を、全て闇に葬るなんてーー。
魔耶「.....ごめん。でも、カルセナやひまり達....皆が傷付かない様にする為には、そうするしかないの....」
カルセナ「...............から」
小さな、消え入りそうな声でボソッと呟く。
カルセナ「...諦めないから......絶対、助かる方法を見つけるから.........だから......」
言葉を重ねて行く内に感情がこもる。瞼がじんと熱くなるのが分かる。
カルセナ「.......もっと一緒に居ようよ、魔耶....お願い......大事な人をまた失っちゃうなんて、もう嫌だよ.....」
勝手に涙がこぼれ落ちる。泣こうと思ってないのに、泣きたくなんてないのに。これは、魔耶を不安にさせてしまう悪い涙なのに。それに加え、どこまでも勝手な自分を、懲らしめてやりたかった。こんな事を言ったって、解決には繋がる筈が無い。それなのに言葉に出してしまう自分は、前に比べ全く成長していない。泣きたいのは、魔耶の方であるだろうに。本当に情けない。
魔耶「........カルセナ......」
カルセナ「.......こっちこそ、勝手に泣いちゃってごめん.....我儘だって事は、分かってる........」
窓の外では、この世界に来てからは見たことが無い、雨が降っていた。それも寂しそうな、しとしととした雨だった。

426:なかやっち:2020/05/13(水) 13:18

魔耶「……本当は、この話を最期までしたくなかったんだよ…カルセナが嫌がるだろうと思ってたから…」
再びカルセナから視線を反らし、申し訳なさそうに顔を背けた。
魔耶「私だってもっとカルセナと一緒にいたいよ…。それに、三日の夜までに解決策が見つかればこんな話は忘れていい。……でも、これから私がどうなるかわからないから…今言わなきゃいけなかったんだよ…。…ごめんね、辛い話して…」
カルセナ「…魔耶…」
魔耶「…ありがとう。大事な人に泣いてもらえて、私は今とっても幸せだよ」
カルセナ「っ…あたりまえ、じゃん…親友が死んじゃうのに泣かない人なんて…いないでしょ…」
魔耶「…そっか」
幼い頃から化け物扱いされていた自分のために、涙を流してくれる人がいる。昔では考えられなかったことだなぁ。
魔耶「…辛いけど、もし三日目の夜までに解決策が見つからなかったら…私は消える。それはもう決めたことだから…カルセナがいくら嫌がっても、私はやるから」
決意するように言い放ったあと、カルセナの涙で濡れた瞳を見つめて軽く微笑みかけた。
魔耶「私にとっては自分の命なんかより…カルセナの、皆の命が大切なんだ」

427:多々良:2020/05/13(水) 17:30

魔耶の小さな笑みを見て、少し気が楽になった様な気がした。このままではいけない。魔耶より悲しんでいて、どうするんだ。
カルセナ「........うん、ごめん....ありがとう.....」
鼻を啜りながら袖で涙を拭った。こんな姿、あいつに見られたらなんて言われるだろう。....いや、そんな事、今は気にしなくて良い。
カルセナ「......私、魔耶よりも、もっともっと頑張るから....!だから魔耶も、悪魔になっちゃう日までは一緒に頑張ろ....!!」
魔耶「......そうだね、一緒に頑張ろっか....」
期間をいつまで延ばせるか、はたまた延ばせないかもしれない。でも、出来る限りこの体で居れるよう、自分のままで居れるように努力しよう。そう決心した。
魔耶「.......話は終わり、朝ごはん食べよ!」
カルセナ「.....うん、そうしよう!....今日は雨降っちゃってるし、買ってあるもの食べよー」
先程の話を今は忘れようとしているかの様に、ベッドから素早く立ち上がってキッチンへと足を進める。

428:なかやっち:2020/05/13(水) 18:13

カルセナ「なんやかんやでお腹空いたわ…」
戸棚を漁り、なにを食べようかと悩んでいるカルセナ。
魔耶「そうね〜。昨日今日で色々あったし…考え疲れたし…糖分が必要ですねこれは」
カルセナ「チョコパンならあるぜ?」
魔耶「お、ナイスチョコパン。じゃあそれいただきます」
カルセナ「あいよ〜」
魔耶「ありがと〜。……む、これは牛乳が必要だな」
席を立ち、冷蔵庫の中に入っている牛乳を取りに行く。ハンバーグをつくったときに使った牛乳がまだ残っていたはずだ。
カルセナ「魔耶牛乳なんて飲むの?」
魔耶「なんてとはなによ。私牛乳大好きなんだからね〜。甘いもの×牛乳は相性バッチリなんだからな〜。特にこういうチョコパンとかは牛乳が必須アイテム」

429:多々良:2020/05/13(水) 21:00

カルセナ「そうなのか〜....パン食べるときも私は飲み物あんま飲まないんだよねぇ」
魔耶「よくそれで詰まらないな....」
カルセナ「気合いで押し込んでるからね....私は何にしよっかなー....」
続けて戸棚の中身を漁る。
魔耶「クリームパンは?生クリームじゃないし、いけんじゃない?」
カルセナ「確かに....丁度良い量だな.....んじゃ、これにしよっと」
クリームパンを掴んで戸棚を閉め、テーブルまで向かう。キッチン側の椅子を引いてそこに座った。
魔耶「よーし、これで完璧〜....」
片手に牛乳、もう片手にチョコパンを持った魔耶が、カルセナが引いた椅子と向かい合っている椅子に座る。
魔耶カル「いただきまーす」

430:なかやっち:2020/05/13(水) 21:33

魔耶「…うまいわ…糖分大事」
カルセナ「魔耶…さっきから糖分しか言ってないよ…」
魔耶「む、そんなことない…はず…」
言葉を言いながら前の発言を振り替える。
魔耶「……気のせい気のせい」
カルセナ「間があったように感じましたけど」
魔耶「む〜…しょうがないじゃーん。私の源は糖分なんだからさ〜」
カルセナ「ふーん…じゃあ、もし世界から糖分が消えたらどうなる?」
魔耶「生きていけなくなる」
カルセナからの問いかけに即答する。…我ながら最低の答えだなぁ…
カルセナ「…はは…そんなにか…」
魔耶「そんなにだ。カルセナだって、この世からチョコが消えるってなったらそうならない?」

431:多々良:2020/05/14(木) 07:20

カルセナ「流石に生きてけなくなるって事は無いけど....もう死んでるし。でも、無くなったら最悪だな」
魔耶「でしょー、どうか無くならないで欲しいわ」
カルセナ「まず無くなる事はないんじゃない?」
魔耶「まぁ、そうか〜」
甘いチョコパンをもぐもぐと頬張る。
魔耶「ん〜....牛乳牛乳.....」
喉に詰まる前に、即座に牛乳を流し込む。
魔耶「ぷはぁ〜....やっぱ合うね〜」
カルセナ「牛乳流し込んじゃったら、パンの味消えない?」
魔耶「その前にちゃんと味わってますし....詰まるよりかはマシだよ」
カルセナ「ふーん....ちゃんと歯磨きしとけよー?それは歯磨きをしないと確実に虫歯になるぞ」
魔耶「勿論ですとも」
カルセナ「....そういや魔耶って、牙とかあんの?魔族ってどうなのかな....」

432:なかやっち:2020/05/14(木) 18:41

魔耶「うーむ、普通の人間よりは鋭いかな。悪魔になったらもっと鋭くなるかもね」
軽く口を『いー』の形にする。魔耶の人間よりは鋭めな牙が見えた。
カルセナ「へぇ〜。流石魔族って感じだねぇ」
魔耶「そうかな〜…そういうカルセナの、幽霊らしいところはないの?」
カルセナ「…幽霊らしいところ…?」
魔耶「そうそう。カルセナは幽霊なのに実体もってるし…幽霊怖がるし…そんなカルセナに幽霊らしいところはあるのかな〜って」

433:多々良:2020/05/14(木) 19:12

カルセナ「馬鹿言え、あるわ!まず、空飛べるでしょ?それと、人に気付かれないでしょ?あと、暗いとこでも良く見える....」
魔耶「ちょいちょい、2つ目は怪しくないか?と言うより、既に見えてるし....」
カルセナ「前の世界では気付かれなかったんだけどなぁ〜....実体はあるけど見えない透明人間みたいな感じでさ。....てか、この世界に来てから何か色々変わっちゃったんだけど.....本当は他にも、お腹空かなかったり、いつも少しだけ浮いてたりしたのよ?」
魔耶「そうなんだ....じゃあ結構不便になっちゃった感じ?」
カルセナ「不便....では無い。むしろ人間時代を思い出せて、楽しいっちゃ楽しいかな....そう言えば、何で私実体あっちゃってんだろう.....普通、ゴーストって実体無いよね?」
魔耶「うん、カルセナは何か違うよね....」
カルセナ「何が原因なんだろうか....そもそも、良く成仏しなかったなぁ私....」
魔耶「未練があると、成仏出来ないって話は聞いた事あるけど」
カルセナ「多分それだなー。でも、また元の世界に戻っても、未練増えちゃったから更に成仏出来なくなるな」
魔耶「未練増えたの?」
カルセナ「魔耶が恋しくなるかもしんない....分からんけど」
魔耶「何じゃそりゃ」
カルセナ「中々消えないもんだよ?そう言う体験ない?」

434:なかやっち:2020/05/14(木) 19:49

魔耶「ん〜…死んだことないからわかんないかな〜」
カルセナ「えー…いきなりなにかが恋しくなることないの?」
魔耶「キャラメルは常に恋しいけど?」
カルセナ「そういうことじゃないんだよなぁ…」
カルセナのあきれたような反応を見てクスリと笑う魔耶。
魔耶「はは、冗談だよ冗談。…私ももとの世界に帰ったらカルセナとこの世界が恋しくなるかもね〜。カルセナの気持ち、わかるよ」
カルセナ「そう…ありがとね。……キャラメルはほんとに冗談か?」
魔耶「…二割くらいは冗談…」

435:多々良:2020/05/14(木) 21:48

カルセナ「流石キャラメル好き.....もぐもぐ...ごちそうさま〜」
食べ終わると、パンの包装紙を備え付けのゴミ箱に捨てに行った。
魔耶「ごちそうさま。朝にしては丁度良い量だったかな〜.....」
空のコップを流し台に持って行くと、今回は自分で洗い始めた。
カルセナ「あ、自分で洗ってる」
魔耶「コップ1つだけですから〜....流石にこれだけにくまさんを召喚するのは魔力の無駄遣い!」
カルセナ「まぁそっか〜....さて、今日はどうします?解決策真剣に探さないと、そろそろやばいし....」
魔耶「うーん....図書館以外にどこか当たれる場所はあるのかな....」
カルセナ「んー....詳しい人のところとか?でもなー.....あんまり思い浮かばない....かなぁ....」
二人で頭を悩ませる。部屋に響き渡るのは、流し台の水音だけとなっていた。

436:なかやっち:2020/05/14(木) 22:16

魔耶「ゆうてここの世界で出会った人少ないしね…」
いままで出会ったことのある、接点の深い人物を思い出してみる。
カルセナ「確かに…んっと、まずはニティさんでしょ?次にひまり、みお、めぐみさん、あとはあの異変メンバー…くらいか」
魔耶「一番情報をもってそうなのはニティさんとめぐみさん、異変メンバーだけど…異変メンバーに協力なんてしてもられるのかねぇ…」
カルセナ「かってに敷地に入って暴れたもんね」
魔耶「その言いかたはやめてよ。仕方なかったんだから〜。…んでも、まぁ…間違ってはいない、けど…」
カルセナ「挙げ句のはてに暴力を…」
魔耶「ぐっ…せ、正当防衛だからセーフセーフ。…んでも、流石にそんな人達には頼れないか…?」
カルセナ「昨日の敵は今日の友みたいな展開にならないかなぁ…いくだけ行ってみようよ。なにかしら情報がもらえるかもしれないじゃない」
魔耶「…そうね。じゃあ行ってみるか。まだあの基地にいるのかなぁ?」

437:多々良:2020/05/15(金) 19:29

カルセナ「そんなコロコロ変えるようなもんじゃないでしょ〜。きっと居るよ」
魔耶「そっか、じゃあ手っ取り早く準備して向かいますか」
その後、素早く各々の準備を済ませて基地へと向かう事にした。

宿の外へ出ると、先程より小雨になってくれていた。これなら飛び立てそうだ。
魔耶「えーっと......確かあっちだったかな」
カルセナ「魔耶が言うなら大丈夫よ」
魔耶「さぁ、どうだか。途中で雨がどしゃ降りにならない事を祈ろう....」
いつもの調子で軽く地を蹴り、ふわっと空へ飛び立った。僅かに顔に当たる小さな水滴が、考え事をして熱くなった頬を冷ましてくれる。カルセナは、バサバサと羽ばたく魔耶の翼を見ながら問い掛けた。
カルセナ「....普通に飛べる?悪魔化が進んで来てて、もしかしたら....って思ったんだけど....」

438:なかやっち:2020/05/15(金) 20:39

魔耶「…うん。特に飛びにくいとかそういうことはないかな」
カルセナ「そっかぁ…ならいいけど…」
魔耶「…飛べなくなることはないと思うよ…?悪魔だって飛べるんだから。悪魔ができないことは出来なくなるかもしれないけど、悪魔でもできることはできると思う」
カルセナ「ふーん…じゃあさほど大きな変化はしないのか…?」
魔耶「…ちょっと角が生えるくらいじゃないかな?」
カルセナ「充分大きな変化じゃないですかヤダー」
なんて軽く会話をしながら、前に基地があったはずの方向へと飛んでいく。少しずつ見覚えのある景色が見えてきて、やはりこの方向であってるんだと安心した。

439:多々良:2020/05/15(金) 21:19

魔耶「....こーやって飛んでると、気持ち良いねぇ」
少し肌寒くはあるが、上空から周りの景色を眺めるのは悪いものではない。
カルセナ「そうだね〜、もう少し天気良くあって欲しかったけど」
魔耶「まぁ、飛ぶと暑くなるし丁度良いかもよ?」
カルセナ「確かに....後の事を考えると今の方が良いかもな〜」
魔耶「そうだよ〜」
ゆっくりと雑談をしながら、それでも速度は落とさずに目的地へと向かう。
魔耶「....はぁ、何かしらの有力情報あると良いなぁ....」
カルセナ「あれだけの組織だし、少しくらいあると思うけど....今の私達には、祈る事しか出来ないからね」
魔耶「もしくは別の解決策を考える....かな。と言っても、あんまり思い付かないもんな〜」
カルセナ「取り敢えず、聞いてみるだけ聞いてみよ」

その後、暫く飛んでいると、見覚えのある建造物が顔を覗かせた。
魔耶「.....あっ!あれだ!」
カルセナ「うん?....あっ、ほんとだー」
魔耶「流石にこのまま入るのはあれかな.....」
カルセナ「だからと言って侵入も....どうする?」
魔耶「周りに誰か居たら良いんだけど....そんな事ないかなぁ」
カルセナ「うーん......」

440:なかやっち:2020/05/15(金) 22:07

魔耶「……まぁ…とりあえず降りてみよっか。誰かいるかもしれないし…」
魔耶の言葉で、二人は蓬達がいるであろう建物に向かって降りていった。建物の入り口が近づいてくる。

カルセナ「…ん、また見張りの人がいるじゃん」
魔耶「え…あ、ほんとだ。事情話せば入れてくれるかな…」
前に来たときと同様、入り口には見張りが立っていた。…ひとつ前と違うことをあげるとすれば、見張りが一人から二人に増えていることくらいだ。
魔耶「…なんか増えてない?」
カルセナ「だね……」
…もしかして、私達が簡単に進入してしまったから見張りを強化したのだろうか…いや、これ以上深く考えるのはやめておこう。私達のせいなんかじゃない…はず。

441:多々良:2020/05/16(土) 08:13

カルセナ「じゃあちょっと行ってみようか.....?」
魔耶「うん......」
そっと見張りの前に姿を現す。当然、警戒されている様だ。
魔耶「あの〜、すみませ〜ん.....」
見張りA「何だ、お前等は」
魔耶「少し急用があって、あの.....柚季さんや逸霊さんとかに聞きたい事があるんですけど....」
見張りA「.....!?何故お前等が幹部の名を知っている!!何者なのか答えろ!!」
構えていた剣の切っ先を二人に向ける。
見張りB「...!!待て......こいつらまさか、あの時の......ッ」
見張りA「.....何だ?」
見張りB「幹部達が負けた話を聞いただろ!!その時に居た侵入者だよ!!」
見張りA「な....何だと!!?じゃあどうしろってんだ....」
二人の見張りが私達をどうするかで相談している。それを私達は黙って見ていたが、不意に後ろから、何者かに声を掛けられた。

???「あれ?もしかしてそこに居るのは、魔耶さんとカルセナさんじゃないですか〜?」

聞いた事のある、天然口調でほわっとした声。気配もしなかった後ろを振り向く。そこに居たのは紛れも無く、幹部の1人である柚季であった。

442:なかやっち:2020/05/16(土) 09:20

カル魔耶「…柚季‼」
柚季「お久し振りですね〜。わざわざこんなところまで来るなんて…なにかお困り事でもあるのでしょうか?」
…流石幹部というだけあって、鋭い。瞬時に見抜かれるとは…
魔耶「……まぁそんな感じなんだけど…中に入ってもいいかな?他の幹部達にも相談と情報収集したいからさ」
今事情を話すよりもいっぺんに話したほうが楽だし都合が良い。見張りの前であんな話したくないし。
柚季「?……わかりました〜。見張りさん達、カルセナさんと魔耶さんを入れてあげてくれませんか〜?」
見張りA「っ…し、しかし…」
もちろん戸惑う見張り達。当たり前だ。前に基地を荒らした侵入者を招き入れるなど、見張りの意味がない。しかしわざわざ幹部にお願いされてしまっている。普通なら幹部が私達を追い払おうとする立場であるのに…
見張りとしてのプライド。絶対な幹部の発言。この二つの間で彼らの心が揺れているのが透けて見えるようだ。
柚季「大丈夫ですよ〜責任は私がとりますから〜」
見張りA「……本当に大丈夫なんですか?こいつらは前にここに来て基地を荒らした、侵入者なんですよ」
見張りB「また今回もなにを企んでいるのやら…」
見張りの視線が私達に向けられる。なんにも企んでないんだけどな…まぁそう思われるのも無理はない行動しちゃったからしょうがないっちゃあしょうがないんだけど。
柚季「大丈夫ですって〜。なにかあったら私が対処しますから。…それに、私の友人らを疑うのはやめてほしいですね」
珍しく、柚季が怒ったようにしかめ面をした。いつもニコニコした表情を浮かべている柚季の初めて見せた顔だ。
流石にこれ以上はやばいと感じたのか、ついに見張りも折れた。
見張りA「…わかりました。失礼な態度をとってしまい、申し訳ありません。お通りください」
柚季「それでいいのですよ。さぁカルセナさん、魔耶さん、どうぞ中に」
カルセナ「…初めて柚季さんの幹部らしいところを見た気がするよ」
魔耶「…ね…」

443:あんあん:2020/05/16(土) 09:35

https://www.youtube.com/watch?v=bQvoT3roxFI

鬼滅の刃の声真似動画です! !
似てますか??

444:多々良:2020/05/16(土) 17:35

柚季に案内され、建物の中へと入る。前に来た頃とは何も変わっていなかった。
柚季「こちらへどうぞ〜。どうせなら、幹部達がいる所が近い方が良いでしょう」
そう言って地下へと誘導する。二人はそれに従順に従い、階段を降りていく。
柚季「.....さ、どこかしらにでも座って下さい」
カルセナ「じゃあ、お言葉に甘えて....よっと」
機械の一部だろうか、何もなく丈夫そうな場所だったので、そこに腰を下ろした。
柚季「さて、今回はどんなご用件ですか?」
朗らかな笑顔を向けながら、こちらの用件を聞いてきた。
魔耶「えっと....どう話せば良いかな.....まぁ、まずは....」
細々と、余す所なく魔耶の悪魔化について説明する。それを聞いている柚季の表情はころころと変わっていたが、話し終わる頃には元の笑顔へと戻っていた。
魔耶「.......と言う訳で、悪魔化を鎮める為の解決策を探していて.....何か思い当たるものありませんかね....」

445:なかやっち:2020/05/16(土) 18:08

柚季「うーん…すみませんが、私はあまりそういうことに詳しくはないので…。そういう人体のことは雅さんのほうが詳しいと思います」
魔耶「…そう、ですよね…自分で言うのもなんですが、こんなのレアケースだと思うので。ありがとうございました」
柚季の回答に少しガッカリしたが、いい情報も得られた。雅なら詳しいかも、と。
柚季「お力になれず申し訳ないです…。その代わり、というわけではありませんが私にできることならなんでもしますよ」
カルセナ「ありがとう。…んじゃあ、雅が今どこにいるか分かる…?」

446:多々良:2020/05/16(土) 20:57

柚季「雅さんなら、恐らくいつもの.....地下3階で実験でもしてると思いますよ〜。行ってみたらどうです?」
カルセナ「今行っても大丈夫なんすかね......」
柚季「うーん、まぁ大丈夫でしょうけど.....何なら着いていきましょうか〜?」
魔耶「ん〜.......んじゃあ、よろしくお願いします」
二人だけで行ったら、何らかの理由を付けられて相手にされない可能性もある。だが、同じ幹部に着いてきて貰っていれば少しでも違いはあるだろう。そう考えた。
柚季「了解でーす。早速行きましょうか」
再び柚季の後に続く事となった。地下2階を通り越して、地下3階へと降りる。
前にも嗅いだ事のあるおかしな匂い、言わば薬の強い匂いが漂ってきた。
カルセナ「う.....ここはやっぱ変な匂いだねぇ.....」
魔耶「慣れるしかないよ、こればっかりは....」
奥に見える部屋に向かって柚季が呼び掛ける。
柚季「えーっと....雅さ〜ん?お客さんですよ〜」

447:なかやっち:2020/05/16(土) 21:42

すると、聞き覚えのある少し低めの声が部屋から聞こえてきた。
雅「………客?あとにしてくれないか。私は今忙しいんだ」
柚季「まぁまぁ…そんなこと言わないでくださいよ〜。せっかく二人が訪ねてきてくれたんですし…それに、後じゃだめです。大事なことのようなので〜」
雅「…二人…?客とは誰なんだ?」
柚季「カルセナさんと魔耶さんです。…それに、これは雅さんにとって興味深いことかもしれませんよ?」
雅「……ちっ、入れ」
柚季の言葉に興味をそそられたのか、雅が部屋に入ることを許可してくれた。三人で部屋の中に入る。
…部屋は相変わらず薬品のにおいが漂い、色々な生物が緑色の液体に浮いていて薄気味悪かった。だがこの際そんなこと言ってられない。っていうかそんなこと言ったら追い出されてしまいそう。
魔耶「お邪魔しまーす。お久し振りです…」
雅「できれば二度と会いたくなかったがな。…で、何の用だ。さっさと用件を言え」
カルセナ「…ひどい言い種ですなぁ…」
雅「私はお前らに構っているほどの暇がないんだ。…わざわざ私の実験を中断させたんだ、さぞかし興味深い話なんだろうな?」
魔耶「…はは、どうですかね。少なくとも簡単には解決できないような話ですが。……じつは…」

448:多々良:2020/05/16(土) 22:27

柚季にした様に、雅にも同じ事を話した。
魔耶「....と言う事なんですけど......」
雅「....ふん、どんな酷い話が来るかと期待していたものだが....少しは調べがいがありそうだな」
顎に手を掛けて、魔耶の話を聞く。
魔耶「この事について、何か知っている事とかありますかね.....何でも良いので」
雅「....どうだろうかな。過去にその様な事例があったのならば、覚えている筈だが....生憎そんなものは、記憶には無い」
魔耶「....そうですかー......」
がっくりと肩を落とし、項垂れている様に見えた。
柚季「....ほんとに初めて見たんですかー?何か似たような事とかは無かったんです?」
雅「私の記憶に無いだけ、と言う可能性は極めて低い.....が」
元居た部屋をちらっと見る。
雅「私の部屋には、実験を記録したもの以外にも様々な文献がある。もしかしたら、その文献の中に1ページくらい有力情報が混ざっている事も、無くは無いだろう」

449:なかやっち:2020/05/16(土) 23:10

カル魔耶「……!」
雅のような研究者が持っている本なら図書館の本よりも有力な情報が見つかりそうだ。それに、ある程度のジャンルに絞られているだろうから探しやすいかもしれない。
魔耶「そ、その文献を見させてくれませんか?お願いします!」
雅「……別に見させてやってもいいが……そのかわり、私の研究の邪魔になるようなことはするな。あと文献は丁重に扱え。ほんの少しでも汚したりしたら…どうなるかはわかっているな?」
魔耶「は…はい…」
カルセナ「…は、はーい…やっぱ怖いわ、この人…」
雅「…ふん、じゃあ私は研究に戻るぞ。邪魔するなよ」
そういって雅はまたもといた場所に戻ってしまった。
柚季「愛想ってやつがないですねぇ、雅さんは。…さて、それじゃあ文献とやらを漁ってみますか」

450:多々良:2020/05/17(日) 07:59

柚季が先導してそっと部屋に入る。部屋の中の棚には、様々な薬品が並べられていた。その隣に、沢山の文献があった。殆どのものは保存状態があまり良くなかったが、それでもギリギリ読めそうだった。
3人で静かに情報を探す。それっぽいものを見つけて、手に取っては読み、情報が得られなかったら再び棚に戻す。そんな作業を続けた。

カルセナ「.....あった〜?それっぽいの....」
ひそひそ声で問い掛ける。
魔耶「うーん、今のところ無いかなぁ.....惜しい様なのはあるんだけど....」
カルセナ「そうかー....」
やはり難しいものか....そう思い、情報探しを再開しようとしたそのとき、柚季が話し掛けてきた。
柚季「魔耶さーん、こんなのはどうですかね〜?」
1冊の本....と言うより、書類を纏めただけの様なものを持っていた。どうやら雅の研究報告書らしきものだった。
魔耶「えっ....?どれどれ.......」
柚季が指を栞代わりにして挟んでいるページを見る。そこには、悪魔についての色々な事が書き留められていた。

451:なかやっち:2020/05/17(日) 11:18

魔耶「…!悪魔について、色々書いてある…」
カルセナ「えっ!本当!?見せて見せて!」
カルセナと一緒に研究報告書を覗きこむ。
文字が小さくて読みづらかったが、やはり悪魔のことを記してあるようだ。
内容を声にだして読んでみる。
魔耶「タイトル…『人ならざるもの、悪魔について』」
カルセナ「ほんとに悪魔についての内容なんだね…悪魔について、ならなにかいい情報が載ってるかも!」
魔耶「うん…そうかもしれない…!…続き読んでみるね…」
少しだけ胸に期待を抱きながら続きを読み進めた。

452:多々良:2020/05/17(日) 12:43

魔耶「悪魔とは.....人間の恐怖心、邪心などから生まれたものと推測される....悪事を好んで行う.......これはまぁ、良いかな....」
次の項目を探す。見つけた所には、雅が実際に悪魔関連の何かを体験したかの様に、色々と書いてあった。
魔耶「えっと....再び悪魔が解き放たれたときの為、まだ付け焼き刃ではあるが、自己流の対処法をここに記す....」
カルセナ「それ、何か凄い有力そうじゃない....?」
魔耶「うん、そうだね.....悪魔を閉じ込める為には、何かの物体へと封印する事が有効だと考察した。その悪魔が、もしも自分と関係深いものであったなら、自身が思い入れのある物体が良い。それなら、自分自身の思い入れで、より強靭となった封印で悪魔を閉じ込められるだろう...」
カルセナ「封印ってワードが出てきたね....どこかに封印方法書いてあるかな....」
魔耶「分かりやすいのがあると良いけど....」
ペラッと次のページを捲る。
魔耶「悪魔の封印手順....あった!えーと.....封印するとは言っても、悪魔は悪魔。身を封じられる事を安易に受け入れる筈がない。封印する手始めに、どうにかして悪魔を弱らせる必要がある....だって」
カルセナ「弱らせるって言ったって....魔耶の悪魔は魔耶の中にいるんでしょ?どうすれば良いのかな....」

453:なかやっち:2020/05/17(日) 16:18

魔耶「…ちょっと危険すぎる方法なんだけど…一回、悪魔を外に出してみる…とか…?」
真っ先に頭に思い浮かんだ案を口に出してみる。案の定カルセナにはとてもショックを受けたような顔をされた。
カルセナ「えっ…で、でもそんなことしたら…魔耶がもとにもどれなくなるんじゃ…!?」
魔耶「…まだ入れ替わったばかりの頃だったら、早めに悪魔を封印すれば戻れるんじゃないかなぁ…根拠はないけど」
カルセナ「…流石にその案は危険だって…。どうなるか分からないんだよ?…それに、そうしたら私が悪魔を攻撃して弱らせなきゃいけないじゃん」
魔耶「いやいや、悪魔の相手をカルセナ一人に任せたりしないよ。いざとなったら戦えそうな人におねがいしてまわればいいし。…柚季さんはどう思う?この案」

454:多々良:2020/05/17(日) 17:35

魔耶からの問い掛けに少し首を傾げて考える。
柚季「うーん....まぁ、魔耶さん本人が言ってるのであれば良いと思いますよ。ご本人の意思を尊重するのは大事な事ですし」
魔耶「ありがとう。....だってさ。だから、大丈夫だよ」
カルセナ「うー.....心配だけど......時間がないし、それくらいしか無いのなら仕方無いのか.....分かったよ」
魔耶「....うん、じゃあお願いね。えーと....肝心な封印方法は.....抵抗が殆ど出来ないくらいに弱らす事が出来たら、私が作り出した『あれ』を使って、物体に封印する。保存場所と用途は、もし、この書を何者かに読まれてしまったときの為、記さない事とする.....って」
カルセナ「えっ....んじゃあどうするの....?」
魔耶「うーん....これはもう、あの人に....」
柚季「雅さんに頼んでみれば良いんじゃないですか〜?」
話を割るかの様に、今まさに魔耶が言おうとしていた事を提案してきた。
魔耶「うん、だから....そうするしか無いのかな〜って....」
柚季「一回言ってみれば、もしかしたら教えてくれるかもしれませんよ?」
カルセナ「.....じゃあ、ちょっと怖いけど....言ってみる?」
魔耶「だね......」

455:なかやっち:2020/05/17(日) 20:02



魔耶「…えーと…雅さん…?ち、ちょっと聞きたいことがあるんですけど〜…」
恐る恐る実験中の雅に近づき、声をかけてみる。実験の邪魔をするなと言われていたため、どんな反応をされるかと内心ドキドキしていた。
雅「……またお前らか。なんだ?」
実験をまたもや中断されたためだろうか、少し不機嫌そうに魔耶達の方向を向く。
カルセナ「…この研究報告書をみたら、悪魔のことについて色々と書かれてたんです。でも肝心なことが記されていなくて…だから、これを書いた雅さんに直接お尋ねしたいな〜と…思いまして…」

456:多々良:2020/05/17(日) 20:45

引きぎみの魔耶達からそう聞かれ、少し時間をおいて応える。
雅「....それか......新たな情報入手の為ならば仕方が無い、特別に教えてやる。....柚季、お前は聞くんじゃない。離れていろ」
二人の後ろから距離をとって見ていた柚季に注意する。
柚季「別に聞いたって、悪用なんかしませんよ〜。もしかして私の事、そう言う風に思ってたんですか?それに、離れたって、私には全部聞こえちゃいますけどね」
雅「...はぁ.....」
大きな溜め息を1つ吐いて、部屋のある壁をグッと押した。するとその壁は、金属音が混じった様な、少し不快な音を立てながら180°回転した。何やら小さな引き出しが出てきた様だ。雅がそこから取り出したものは、無色透明でキラキラと光る水晶の欠片の様な、とても綺麗なものだった。
魔耶「それは......」
雅「これがそこに書いてある、私が作ったものだ。封印結晶と言い、一切の穢れを持たない物質から出来ている。どう作ったかは企業秘密だ」
カルセナ「へぇ.....綺麗....それで、どうやって使うんですか.....?」

457:なかやっち:2020/05/17(日) 21:24

雅「…封印するには物質が必要だと書いてあったろう?この封印結晶をその物質と触れさせればいい。そうすればその物質は悪魔を封印するためのよりしろとなる」
魔耶「なるほどなるほど…その物質って、なんでもいいんですか?」
雅「物質ならなんでもいいぞ。まぁ、その研究報告書にも書いてある通り、思い出深い物の方がいいだろう。なんせお前の体の中にいる悪魔らしいからな、よっぽど思い出深い物じゃないと封印できないかもしれん」
カルセナ「…ふーん…魔耶、そういう思い出深い物ある?」
魔耶「………うーん…」
腕を組んで少々考えてみる。思い出深い『場所』とか『思い出』とかならすぐに思い付きそうだが…物となるとすぐには思い付かない。
視線をさげ、しっかり考えようとしたとき。
魔耶「んーと……あっ、ペンダント……」
うつむいたときに目に入ったのは、いつも身に付けている赤いペンダントだった。
魔耶「…このペンダントなら、いけるかもしれない」
カルセナ「…あぁ、そういえばいつもそのペンダント着けてるよね。思い出深いものなの?」
魔耶「うん。このペンダント、私が初めてつくった物なんだよね〜。まだ幼い頃だったからつくったあとは魔力切れで倒れちゃったらしいんだけど…閻魔様にも友達にもたくさん誉めてもらえて、嬉しかった記憶がある」

458:多々良:2020/05/18(月) 19:46

カルセナ「へぇ〜....それならいけそうだね」
魔耶「だね....じゃあ、これにします」
ペンダントを手のひらに乗せ、雅に見せる。
雅「....ならばこれを、先程私が言った様に使ってみろ」
封印結晶を魔耶に手渡す。魔耶は、雅から言われた様に、ペンダントに封印結晶を触れさせた。すると、結晶が砕け散り目を刺すかの様な眩い光となってペンダントに吸い込まれて行った。
魔耶「わぁ.....!!す、凄い.....」
カルセナ「眩しかった〜.....」
雅「これで、封印する物体の準備は整った。封印方法についてはだな.....」
魔耶「....やっぱり、悪魔を封印するものだから難しかったりするんですかね......?」
雅「聞いてからでないと分からないだろう。難しいかどうかは、聞いてから考えろ」

459:なかやっち:2020/05/18(月) 20:17

雅「…で、肝心の封印方法だ。始めに、悪魔を動けなくなるくらいにまで弱らせる」
魔耶「…それって、物理的に攻撃するんだよね?悪魔は回復力が高いし、全ステータスも高いから…まずそこで苦労しそう」
自分が悪魔状態になったときを思い出しながら意見を述べる。
魔耶が悪魔状態になったときは全ステータスが飛躍的に上がっていた。もし悪魔が外に出たとしたら、その悪魔は悪魔状態のときと同じくらい…もしくはそれ以上の力をもっているだろう。
雅「…そうだな。もしかしたら精神的な攻撃も必要になるかもしれん。悪魔の体力は多いからな、真っ正面から戦えば先にこっちの体力がなくなるだろう」
カルセナ「えぇ…精神的な攻撃ってなによ…罵倒を浴びせればいいの?」
雅「そうだな…悪魔が嫌がる物を使うとか、だろうか。罵倒なんぞ浴びせたって意味ないと思うぞ」
魔耶「ふーん…ここでも、悪魔の苦手なもの問題か…それは後でじっくり調べなきゃな。……それで、次の手順は?」

460:多々良:2020/05/19(火) 19:50

雅「弱らせる事が出来たら悪魔の額に、悪魔を入れる物体を触れさせる。....それで終わりだ」
意外と呆気ない説明に、二人できょとんとした顔を見合わせる。
カルセナ「あ、え...それだけ?」
雅「あぁ、そうすれば悪魔は自然と物体に吸い込まれ、封印されるだろう」
魔耶「弱らせた後は思ったより...簡単そうなんだけど.......」
雅「まぁ、悪魔が本当に何も抵抗出来ない状態ならばな」
その一言に、何らかの疑問を抱く様に再び前を向く。
雅「悪魔は悪魔.....だ。何が起こるか分からん。封印される直後に突然変異し、更に凶暴化しても何もおかしくはない」
魔耶カル「........」
悪魔を封印するシーンを思い描き、ごくりと息を呑む。再び封印する事は決して甘くないという事実を、改めて悟った。

461:なかやっち:2020/05/19(火) 20:10

雅「…封印の手順はわかったか?」
雅の言葉で、頭に思い浮かべていたシーンが振り払われる。
魔耶「あ、うん…ありがとうございました」
カルセナ「ありがとうございました…。いい情報が得られたよ」
雅「そうか…まだ調べものがあるんだろう?さっさと調べてこい。私は大切な実験を早く再開したいんだ」
柚季「…雅さん、ほんとはこういうこと知ってたんじゃないですか〜。なんでさっき教えてくれなかったんです?意地悪ですよ〜?」
少々不機嫌そうに、でも面白そうに柚季が質問する。
雅「……ただ忘れていただけだ。そんな研究したのは何百年も昔だからな」
魔耶「そんな昔に…なぜ悪魔の研究なんかしたんですか?もしかして…昔悪魔関連でなにかあったとか?」

462:多々良:2020/05/20(水) 17:15

雅「.....ある....が、お前達3人に話す義理は無い。用が済んだならば、早く去れ」
魔耶カル「....はーい.....」
雅が話を止めて実験を再開し始めたので、仕方無くここを去る事にした。

柚季「....うちの雅さんが、すみませんね〜」
魔耶「いやいや、かなり良い情報や封印方法が得られたから良かったです」
カルセナ「戻るんなら早く戻って、今度は悪魔を倒す情報集めでもしないとね」
魔耶「そうだねー」
柚季「頑張って下さいねー、何かあったらまた協力しますよ」
魔耶「うん、そのときはよろしくお願いしまーす」
柚季「はーい、それじゃあ....」
魔耶カル「さよならー」
二人が飛び立って暫くした後、柚季は再び雅の元に戻った。

柚季「...なーんで話さなかったんですか?話したって良い内容でしょうに」
雅「....何だ、またお前か。他人にペラペラと話す様なものじゃない....ただそれだけだ」
柚季「....もしかして、話してる暇があったら少しでも有力な情報を集めに行って欲しい....とか、そんな感じでした?」
雅「......五月蝿いな、実験の邪魔だ。暇なら見張りでもしていろ」
柚季「....ふふ、素直じゃないですね〜....」
少しご機嫌そうに、雅に聞こえない様に笑いながら地下3階から上がった。


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