キーンコーンカーンコーン....
無機質な鐘の音。
「起立。」
はっきりとした学級委員長の声。
....あれ?
急いで目を開け、椅子を倒す勢いで立ち上がる。
「礼!」
ありがとうございましたー、とだるそうな声が教室に響く。
その直後、緊張が解かれたかのように、がやがやとしだしたクラスメイトを横目に、机の上に乗っているノートを恐る恐る見た。
「......まっっ白だ。」
しまった。やはり自分は寝ていたらしい。
「保健って、ノートの提出があったよな...」
まずい。非常にまずい。
とりあえず、今俺が取るべき行動は....
はじかれたように、保健のノートを掴み、カズマにノートを写させてもらおうと、いそいそと教室をでた。
確か、今日からカズマは学校に来ているはずなのだ。保健の授業はもう終わった、だとか前に言っていた気がするので、是非ともカズマのノートを入手したい。
廊下には人がまばらにいた。
教室とは違って、少し温度の低い廊下は、寝起きで目を覚ましたい人兼クロノに優しい。
あくびをしつつ、カズマの教室に向かおうと、一歩を踏み出したその時。
「あ。」
「お。」
噂をすれば、というやつだ。
「カズマ!ちょうどお前に会いに行こうとしてたんだよ!...ってもしかしてお前もか?俺の教室の前にいたもんな。」
「....まぁな。」
カズマは、なんだかいつもよりテンションが低いようだった。といっても、もともとコイツはファイトのとき以外は熱量が低い感じはするのだが。
「お前の要件から言えよ。っつっても、手に持ってる保健のノートの時点で、だいたい察しはつくけどな。」
うっ、と言葉に詰まってしまう。
「しょ、しょうがねーだろ....。その、だからさ。写させて欲しいなーなんて....。」
カズマは、じーっとクロノの目を見た。ソーダみたいに爽やかな色の目と合って、その目がなんだか綺麗だ、なんて思ってしまった。
廊下は涼しいはずだったのに、一気に体温が上がっていく。
「あ、そうだ。」
不意にカズマが、手をぽんと叩く。
それから、にやりと笑った。嫌な予感しかしない。
「いーぜ。ノート貸してやるよ。」
「....へ?」
その悪そうな表情にそぐわない言葉に、思わず間抜けな声を出してしまう。
「でも!」
でも....?やはり条件付きか、と眉をひそめる。
「....その....あー...」
視線を、ふらふらと宙にやりながら、頬をかりかりとかく。明らかに様子のおかしいカズマに、クロノは戦慄した。
....なんだよ。どんだけ俺にやばいことさせるつもりなんだよ。
「な、なんだ?」
促すように、できる限り優しく問いかけてやる。
「....今週の日曜日、俺の家で写せ。」
溜めに溜めた上で、言いにくそうに言われた内容は、思ったよりも悪くなかった。....というか悪い要素がない。
「え、別にいいけど。」
拍子抜けして、即答してしまう。いや、本当に悪い要素なんてないよな。カズマの家なら何回か行ったことあるし。
ほんとに良かった良かった....
「わりぃ、今ちょっと嘘ついた。」
「はぁ!?」
思わず、素っ頓狂な叫び声を上げる。
「【俺の家】って言ってもさ。【鬼丸家】なんだよ。」
【今のところまとめ】
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【その言葉に意味があるなら】
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