【じゃあ日曜日の14:30、駅前のコンビニ前で】
そんな言葉を最後に、その日はカズマと別れた。
それで今。
時計を見た。日曜日、14:25。待ち合わせの時刻の五分前だ。意外とぎりぎりになってしまった。
小走りでコンビニへ向かう。
日差しがじりじりと照りつけてくるせいで、クロノは少し汗ばんでいた。つい最近まで冬だったのが信じられない。
額に浮かんだ汗を袖で拭いつつ、カズマを探す。
カズマは、コンビニの自動ドアの少し横に立っていた。仏頂面だ。眉にシワが寄っている。
「わり、待たせたか?」
スマホをいじっていたカズマは、クロノのその声に顔を上げた。
「おせーよ。」
明らかにいらいらしている。しかし、その表情の中に少しの緊張が見える。
カズマのそんな表情を見て、言い訳をする。
「服選んでたら、時間なくなっちゃって。」
「女子か」
カズマはふっと微笑んだ。
それだけで、クロノの心臓がどくりと跳ねる。思わず、心臓のあたりを押さえながら、ゆっくりと深呼吸をする。
あーやっぱり今日はやばいかもしれない。カズマと二人で過ごせるってだけで、かなり楽しみだ。
「よし、んじゃいくか!」
スマホを鞄の中に放り込むと、カズマは自分自身に言い聞かせるようにそう言った。
「ところでさ、今日は鬼丸さん来ねぇの?」
カズマの後について、歩きながら不意に問う。
「多分いる。でも、なんかお父様とかお偉いさんとかとの会議があるらしいから、あんま会えないかもな。」
「そうか....」
どうりで不安な顔をしているわけだ。
「でもカズマに何かあったら、一瞬で飛んでくると思うぜ。鬼丸さんなら。」
元気づけるようにクロノが言うと、カズマは、微笑し「かもな」と呟いた。
歩いているうちにだんだんと周りの雰囲気が変わってくる。
なんというか、張り詰めているような。皆が皆、息を詰めているような。
「...着いたぞ」
不意に、カズマが立ち止まり言葉を発した。
クロノもカズマが見ている方向に、目を向ける。目を向けて、言葉を失った。
目の前に立ちはだかるは、和風のどでかい家。家というより、お屋敷と表現したほうがしっくりくるだろう。
「こ、これが鬼丸家か.....」
震え声で、クロノが呟く。
ちらりとカズマの方を見やると、睨みつけるように目つきを鋭くしている。それでも顔色は悪い。やはり緊張しているのだろうか。
「カズマ、大丈夫か?」
顔を覗き込んで、優しく問いかけると、小さく「大丈夫」という声が返ってきた。
カズマが、一つゆっくりと息を吐き、一歩足を踏み出そうとした瞬間。
「カズマ様」
空気を切り裂くような声。女性の声が聞こえた。
カズマは、その声にびくりと肩を震わせる。
「ご案内致します。」
冷え切った声だった。とても歓迎しているようには聞こえない。
カズマは凍ったようにその場から動かなかった。目は大きく見開かれている。
【今のところまとめ】
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【その言葉に意味があるなら】
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