「いやー!それにしても大変だったなー!!な、カズマっ!!」
「....そうだな。」
妙なテンションのクロノとやけにテンションの低いカズマは、すっかり暗くなった夜道を歩いていた。
カズマは、今日のことをぼんやりと思い返す....思い返そうとするのだが、ある場面までいくと発狂するほどの恥ずかしさに襲われ、うまく思い出せない。
クロノの張り付いた笑顔を横目で見て、思う。
俺は、コイツと、キ、キスをしたのか....。
一人で顔を赤くさせながら、「いや、その反応はおかしいだろう」と顔をぶんぶんとふり正気を取り戻そうとしていると、ふと思った。
.....普通に考えて、同性の友達にキスする奴がいるだろうか。
好きでもないやつとキスなんてするだろうか。
うーん、と考え込んでいると「最後にキスをねだったお前も同罪だ」という自分自身の声が聞こえ、おもわず叫びたい衝動に駆られる。
頭の中はとんでもなくやかましいが、外は静かだった。
少しだけ冷たい、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込み、落ち着かせようしていると、すっかり静かになってしまった場を和ませようと、クロノがふと呟く。
「月が綺麗だなー」
ああ、そうだな。と答えようして、カズマはぴたりと固まった。
.....数秒、二人の間に沈黙が生まれた。
「んん?」
やがて、カズマは疑問の声を溢した。
...今、こいつは【月が綺麗だ】って言ったのか? このタイミングで?キスをした今日に?
顔がじわじわと熱くなっていくのがわかる。
いやいや、落ち着け東海林カズマ。
この馬鹿がこんなロマンチックこと言うわけがない。
ふっと鼻で笑うと、「なんだよ」と不機嫌そうなクロノの声が隣で聞こえる。
でも。
もしも、その言葉に意味があるとしたら。
「.....なぁ、クロノ」
「ん?」
言いにくそうに口を開いたからか、優しい声が返ってくる。
そんな声に、心臓が余計にうるさくなったのを感じながら、掠れた、消え入りそうな声で言う。
「【私、死んでもいいわ】.....とか?」
再び、沈黙が生まれた。
涼しい風が、二人の間を通り抜けてカズマの熱くなった頬を冷やしていく。
カズマは、クロノの顔をまともに見れないような状態で俯く。
やがて、静かな夜にクロノの声が響いた。
「は?」
なにいってんだ、お前。 いや、死ぬなよ。
そんなことをこの間抜けヅラは、表している。
やがて、だんだんと冷え始めた頬が、羞恥でまた熱くなりだす。
「ばっ.....、お前ほんっっとに馬鹿だな!!くそっ。この馬鹿!!」
叫ぶだけ叫んで、一目散に駆けていったカズマを呆然と見ていたクロノは、しばらくして急いでカズマの後を追う。
「ちょ、ちょっと!?俺、道わからないんだけどー!?」
その後。
家で【月が綺麗ですね】の真の意味を知ったクロノは、翌日カズマと気まずくなったんだとか。
【その言葉に意味があるなら】
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