思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。
↓
電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする
今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る
レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ
何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”
「玩具×戦=(イコォル)」
音楽鳴った
始まるんだよ
玩具の遊び
積み木のお城を
組み立てよう
相手より
立派に高く
積んで積んだら
整列だ
足並み揃えて
一二一二
構え用意は
元気良く!
旗を掲げよう
自分達の
志と誇りを乗せて
わぁわぁ騒げ
けちらし目指せ
相手のお城
今だ!くずせ!
やれそこだ!
がしゃあん崩れた
お城が崩れた
やぁやぁ勝利
我等の勝利!
ファンファアレを
吹き鳴らせ
相手の上で
吹き鳴らせ
響き渡れ
我等の
勝利の音!
「青い鯨の印」
鯨よ
青い鯨よ
貴方は
陸にあがって
ひとりぼっち
さみしいから
歌を大きな声で
歌っているのね
とても良く
響いているわ
私は印として
鯨を腕に
刻んだの
貴方の為に
青い鯨よ
貴方の歌を
聞いていると
何も怖くなくなるの
何回も傷を
作るのも
線路の
上に立つのも
きっと貴方の歌は
生きる価値と
気力を奪うのね…
鯨よ
青い鯨よ
私は今
橋の上の
貴方の下にいるの
貴方の歌が
間近に
聞こえるわ
此処から
飛べば
私は貴方と
共に歌える
「血鷲」
人間から鷲を
作れるだろうか
さらけた背を向ける
君に私は聞いてみた
作れる訳が
無いだろうと君は云った
其んな事
やってみなきゃ
判らないよ
君の背中を
深く切ってみる
其処から両手で
広げてみる
白い骨が
目に見えている
骨を折って
背中に逆刺し
ほら出来たじゃない
作れたじゃない
人間から鷲が
赤い体の
白い翼の鷲が
「Avatar 持たざる者」
自分の
Avatarと云う物を
作ってみる
パァツが
色々ある
パチリとした
大きい目や
化粧の紅い唇
スラリとした
細長い手足
何れも現実で
私が持たざる物
目頭が
熱くなるも
私はAvatarを作る
Avatarが出来た
サラリと長い髪に
パチリとした二重の目
スラリと細長い手足
私が現実で
持たざる物を
詰めてみた
Avatarは
画面にて
手を振っている
皆は可愛いと
褒めてくれる
だが其れは
Avatarであって
私では無い
其れでも
己の事の様に
錯覚する
現実で
涙を流す
私に対して
Avatarは
仮想世界で笑顔で
他のAvatarに
挨拶する
「暴客」
呆れた云い分と
云う物は
本当に存在する
嘘だと
思われるかも
しれないが
一人一個の
限定物を
二個寄越せと云う
理由は
腹の中にいる
赤子の分だとか
焼肉をしていた
女等は
肉が焦げたと云い
料金も払わないと云った
理由は
食べて無いからだと
靴のせいで
異性に
振られたと云う
理由は
店員のあどばいすの
せいだとか
他にもあるさ
祭りのお面に説明が
バスの番号が
縁起悪いと
変えさせられ
明らか
いちゃもん
客の方が
悪いと云うに
悪いのは
店の者だと云う
店員の
身と心は
如何に
「夢の悪」
寄らば招かれ
招かば魅いられ
魅いらば入れる
夢の中
甘く匂う
ムラサキの花
幻をみせよう
絡まる
棘のツタ
現の痛み
私は痛い
逃れたい
寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入る
夢の中
天頂に刺さる
白骸に手を引かれ
血走る
眼が見てる
檻へとおいで
私は嫌だ
逃れたい
寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入った
夢の中
貘は
助けに
来ちゃくれない
感覚なんて
わからない
私は何処に
私は誰
寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば逃れられず
悪夢の中
「蜚(ひれん)の観察」
蜚に
出会った
蜚は
彼方此方
動いている
噴射器が
手元に無い
しょうがないので
暫し観察する
相変わらず
蜚はカサコソ
動いてる
八つ時に食べた
カステイラの破片を
蜚の方へ投げる
蜚は長い触角で
カステイラをつつき乍
食べていた
其の隙に
蜚を
捕まえた
仰向けに
してみる
六本ある足を
一本千切ってみる
其れでも未だ
元気に動くので
全部千切った
見た目はもう
蜚では無く
達磨だ
馘を切り取った
其れでもまだ
生きている
段々動かなく
なったので
蜚を
ちり紙に丸めて
捨てた
「塵捨ての歌」
塵を捨てた
燃えない塵を
歯ブラシ コップ
プラスチック
塵を捨てた
燃える塵を
ちり紙 写真
指輪と箱
塵を捨てたら
気分が良くなった
二人の人間は
泣いているけど
未だ何処か
気分が晴れない
粗大塵を
捨てたら
気分は晴れるのか?
塵を捨てた
粗大塵を
箪笥 自転車
掃除機も
私は捨てたい
塵を捨てたい
生塵は
捨てただろうか
そういえば
生塵は明日だ
少し重たく
なるかも
知れないが
何回にか
分ければ
良いだろう
「水沈」
目を閉じている
冷たい感覚が
私を包んでいた
目を開いた
水に刺す日光が
私を照らしていた
沈む音と共に
吐き出される泡は
直ぐに消えては現れ
直ぐに現れては消えた
何処迄
沈んでいくのだろう
今 足掻いて泳げば
助かるかもしれない
だがそうはしない
私は見てみたい
沈める水に
此の身を委ねて
其の先に
辿り着く
底の国を
其して又
私は目を閉じる
次に私が
目を開ける時は
何時だろうか
「九相図」
美人様が
横たわて
おりました
草場の陰で
ひっそりと
息はしてないので
経過を見守る事に
致します…
先ずは脹相と
なりました
体が瓦斯で風船みたく
次に壊相と
なりました
皮膚が 破れ 壊れ出し
次に血塗相と
なりました
脂肪 血液 体液滲み
次に膿瀾相と
なりました
体が溶けてる
次に青?相と
なりました
体が青黒く
次に?相と
なりました
虫が湧きて鳥獣喰らう
次に散相と
なりました
部位が彼方此方に
次に骨相と
なりました
骨だけに
最後に焼相と
なりました
燃えて灰となったのです
どんな人様も
此の美人様の様に
辿る末路は
皆同じなので
御座います…
「刻と老」
刻は動きて
今の我在り!
この世に
生を授かりて
只の一度も
この世の刻は
止まった事無し!
刻は我を我等を
置いてゆく!
過ぎ去りし刻は
我を我等を
老い得させる!
ならば刻を
止めとするならば
老いをやめられるか?
否!其れは!
生くる事を
やめし者だ!
そうなるならば
我は老い得る方を選ぶ!
「時よ止まれ今こそは」
カッカコ カッカコ
私の中で動く時計は
世話しなく
私を意味無く
駆り立てる
動かねばならない
兎に角兎に角
周りの者は皆遅い
あぁもう早くしてくれ…!
あぁもう焦れったい!
周りは私の事を
せっかちだと云う
何をそんなに
急ぐ事あるかと
止められる物ならば
止めたいさ…
時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!
カッカコ カッカコ
それでも時計は
容赦なく
私を意味無く
駆り立てる
もう止められはしない
私が身時計
だれか止めておくれよ
もう疲れたわ…
私の身抱きしめ云ってくれ…
もう止まってよいのだと…
急く必要は無いのだと…!
時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!
「猫について」
可愛い可愛い
あぁ可愛ゆらしぃ…!
何かしらの反応示す度動く
其の三角耳
明るひ時と暗ひ時で
魅力が変わる二つの眼
四つ足全てにつく
桃色の肉球
ふりふりふるう
感情表現のしっぽ
全身覆う
もふもふやわ毛…!
小首かしげて
此方を見るな…!
にやうと鳴いて
此方に近づくな…!
あぁもう何処まで
私をまどわせる!
「汝ヲ 己ガ罪デ 償ワソウゾ」
汝 侵せし罪は
汝 侵せし罪で
償うが良かろう
己が児を
己が鬱憤のみで打つ親は
親より力強き者で打つが良ひ
己が児に毒言吐く親は
児に吐いた毒言を反芻させやう耳元で
己が情欲満たさんが為に
児を玩具にする親ならば
己が玩具になる事知らずに
児の行動一片一片に
点数付ける親よ
御前の行動一片一片に点数を
付けてやろうか?
目には歯を!
歯には牙を!
そして牙には金剛を!
「修道毒女」(ポイゾシスタァ)
教会の鐘が鳴る
幼児を抱く聖母描かれし
彩色玻瑠に光入る
十字架の前に跪つきて
黒の聖布纏う修道女は今日も祈る
或る日を境に修道女は
祈らなくなってしまった
修道女は知ってしまった
背徳の蛇と毒林檎を
蛇に惑わされ毒林檎を食べた
味を知った修道女は
祈らなくなってしまった
では代わりに修道女は何になる?
毒を伝える者となるかいや?
「猪口齢糖あげます」
鍋の中ぐつぐつ煮える猪口齢糖
渡したい貴方を想い乍作ってる
ドロドロに溶けた猪口齢糖に
私なりの呪いを掛けてあげる
私の片と私の糸とか
魔法じゃないわ 呪いよ
貴方は虫が直ぐたかるから
私が守ってあげなくちゃ
渡す日になったら
少し照れくさくなるわね
でも貴方の事が好きだから
勇気を出して渡すわね
見返りなんて
要らないわ
貴方が食べた時から
私が貴方の中にいるもの
「雪上の侵略者」
雪だ
積もった雪に
誰一人足跡は
ついていない
僕は一歩
踏みしめる
もう一歩
踏みしめた
ざくざくざくざく
あぁ楽しい!
楽しいなぁ!
僕はあれだ
そうあれだ
侵略者!
侵略者だよ!
雪の上を
我が物顔で
歩いて
僕だけの
足跡で満たした!
「三途」
小石等の上に立っていた
中通るさらさら流れる川の向こうは
彩色溢れる花達が埋めていた
彼方に行き 花を摘んで持ち帰りたい
渡ろうとした 出来なかった
向こうに在る者達が止めたから
皆同じ格好をしていた
三角巾の白装束
お前が此処へ来るのは 未だ早い
帰るが良い 帰るが良い
目覚めた時
私の手には花が一本握られていた
何処で取ったかは 覚えが無い
「狂い鬼女」
呪うてやる!呪うてやる!
我裏切りし者を呪うてやる!
おまへの毛髪は手に入れた
後はおまへを苦しめるだけだ!
おまへが長く苦しむやうに
心臓より遠き端から打ってやらう
おまへを模した人形の右足から打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の左足に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の右手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の左手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の脳天に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の首に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを模した人形の胸に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!
おまへを七日呪うた!
あぁおまへが我が呪いによりて
苦しみ悶え命果てる姿が
想像出来るわ!
苦しめ 苦しめ 苦しめよ!
「赫い牙の黒い鬼」
彼奴はもういない
遂に我は裏切り者に復讐終えたり
彼奴の最期は
それはそれはもう
陰惨たるものだったと云う
我 呪い 込めし 部位が
全て 有り得ぬ 方へ 捻曲がって
いたそうな
あ はは ははは
はは は はははは…!
此れで如何して笑いが
込み上げて来なかろうか!
我を苦しめる彼奴は
我が呪いにより命果てた!
…こいつは誰だ?
水面に映るこいつは誰だ?
乱らた髪に赫い牙
まるで鬼のやう…
…嗚呼 我か
これが今の我か…
「しゃあぼん玉」
しゃあぼん液に
ちゃぽんとストロォつけて
ぷぅと吹いたら
しゃあぼん玉が出来た
ふうわりふわり浮いていき
呑気にとびては
突然ぱちんと消えてった
しゃあぼん玉は何処へと
消えたろか
幼き私は考える
久しく吹いていたら
幼き頃を思い出した
「まほろしの骸」
私は誰だ?
私は骸か
ならば招かねば
がしゃがしゃ揺らして
甘幻にて誘い
何時までも飾りの骸ではいられない
おや 人が来たようだ
現世で受ける痛みをどうやら
忘れたいらしい
ならば好都合
ならば招かねば
ならば夢を見せねば
おいでよ おいで
痛みで流れる血を止めて
逝き先は彼方
此方の方へ
君は方向音痴か?
ならば手を引こう
怖いからと泣いても
引き摺って連れていく
望んだのは君だ
今更帰す訳が無い
甘い汁だけすすって帰る?
馬鹿云うな
あぁ 五月蝿いな
口を塞げば良かった
でも駄目だ
君が云うから
さぁ着いた
此処なら思う存分泣いても良い
誰にも聞こえはしないから
勿論私にも
「私の友達」
遊びに行く
友達が待っているから
じめじめした所で
蜚と百足と蛾とかが
私の友達だ
何が可笑しい?
私に人間の友がいない事に
笑っているのか?
ならば聞こうか
何故お前は
私に人間の友がいない事で
笑っている?
ほら黙った
黙るくらいなら
私を笑うな
あぁ ごめんよ
蜚と百足と蛾よ
さ 遊ぼうか
皆が忌み そして嫌う者等が
私の友達だ
蜚は私の頭を這い回る
百足は私の腕に絡み伝う
蛾は私の体にしがみついた
こうやって なついてくれるから
愛着が湧いて
そして今や私の友達なのだ
「春をみせよう」
月に照らされた
地面を歩く
土の色は白かった
それでも俺は
白積もる土から
おまへを見つけて救ってやる
おまへに春を
見せたいから
土を掘る
手が冷たくそして痛い
それでも俺はやめない
おまへが此の下で
日光を浴びれずに
眠り続ける事に比べれば
俺は此んな手の痛み位
此の白土共にくれてやる
皮膚は裂け
白土は赤土に変わる
全て持っていくがいいさ…!
其れでおまへに会えるのなら
安い対価だ…!
…見つけた
やっとおまへを
見つけた…!
嗚呼 此れで
おまへは日光を
浴びれるな!
そして俺は満足だ
おまへに春を見せてやれたから…
俺は眠るさ
なに ほんの少しだけだ…
「多恨酩酊感」
やぁ 今日もおまへは
善の皮を被りやて
人に欺滿しやがるの
だが私は知っていなかった
だから近付いて仕舞ったのよ
私がおまへの機嫌損なうならば
おまへは激昂して私を打つ
其の癖おまへは鉄面皮で
私に摺り寄り他の女と酒へ
享楽に更ける
あぁ私は鳩でありたい
かの英国お伽噺踊靴の
姉二人の目をくり貫いたから
あぁ私はガロットでありたい
私におまへを座らせて
鉄の輪で馘を絞めるかへし折るか
ただ何方も叶わぬ事よ
せめておまへの私へした事の
非道の数々を
おまへの友人 家族 そして
おまへの愛人へ送ってやらう
其しておまへは
私以外の全てを
失った時
おまへは私に対して
泣いて請うのだろうな
そうしたら愛してやるさ
おまへが私の隷属になる迄
其してそうなったら
私は梟になっておまへの元を去る
其しておまへは
酔生夢死を送るがいいさ
其して私は
酩酊感に浸るのだ
(作者ヨリ)
>>225ニツイテ
以下ノ言葉ハ、コウ云ウ読ミ方デアル
↓
・英国お伽噺踊靴(シンデレラ)
・酩酊感(エクスタシー)
「枯花」
私がお話しましょうか
私の膝の上に座りなさい
却説 どんな話が良いかしら?
こんな話が良いわね
昔々 大変美しい少女がいました
ですが少女は容姿を理由に
何時も村の人々を馬鹿にしてました
人々は願います
少女に何時か罰が下ればいいと
其の願いが通じたのでしょうか?
或る日少女は森で遊んでいると
体の一部に花が咲きました
幾ら抜いても幾ら抜いても
其処から新しく花が咲くばかり
少女はやがて花になりました
其れを見た村人は
花を持ち帰りました
綺麗な花は
村の人々に代わる替わる
愛でられました
ですが花は枯れる物です
其して花は枯れました
ボロボロのシワシワに
花は 枯れて 棄てられた
誰も 見向き なんてしない
踏みにじられて 其れで お終い
「銀短剣」(題材人魚姫)<全5章>
<1章>
海の岩の上にて
玲瓏の歌声で
単吟たる者あり
彼女は憧れた
何時か地上に行く事を
でも其れは叶わない事
判ってい乍も
憧れて仕舞う
或る荒波立つ夜
海の中で沈みつつの
眉目秀麗の男がいた
彼女は助けて
近くの浜辺へ男を置いた
男が目覚めぬ内に
彼女は海に戻る
自分の姿を
見られる訳にはいかないから
其の日を境に
単吟は聞こえない
<2章>
寝も覚めも
想ふのは
彼の人ばかり…
あぁ彼女は恋をした
愛しの… 愛しの…
会いたい… 会いたい…
彼女は魔女に云ふ
どんな対価も払って良いから
地上に行きたいと
魔女は等価に
彼女の声を欲した
彼女は魔女に
声を捧げた
魔女は彼女に
足を与えた
彼女は喜んだ
地上へ行ける
彼の人に会いに
魔女は笑った
想いを伝えられ無い時
お前は泡沫になるよ…
<3章>
彼女は地上にいた
己の足であって
足で無いので
歩く度に痛みが…
痛い… 灼ける様に…
砂浜にて倒れる
彼女を助けたのは
あの男である
気付いた彼女は城の中
礼を云おうと歩き回る
話し声聞こえて
知って仕舞った
彼の人の結婚話
彼女は悩む
彼の人の愛が欲しい…
彼の人を助けたのは…
目の前に彼の人が
礼を云いたいのに
声が出ない…!
彼の人が心配している
彼の人が私に優しくする…
<4章>
お願いよ…
これ以上私に
優しくしないで…!
こんな心になるのなら
彼の人に恋など
抱かねば良かった…!
砂浜にて
うつ向く彼女
魔女は其処に
銀の短剣を差し出す
其れで彼の人を
刺しなさい
そうすればお前は
泡沫にならないよ
彼女は決めねばならない
海の為の単吟か
彼の人の為の泡沫か
刻限は
教会が祝福の鐘を
鳴らす迄
<5章>
月昇の夜
彼女は眠る彼の人の横にいた
銀の短剣を握り閉めて
振り下ろせば終るかな…?
彼の人に対する私の苦しみが…
矢っ張り無理だ…
彼の人には
生きていて欲しいから
そもそもは
私が勝手に彼の人に
恋をして苦しんだ事なのよ…
祝福の鐘が鳴った
砂浜に一人の女がいた
彼女は海に向かい
歩き出した
漣が彼女に触れる
彼女は自分が泡沫になり乍も
彼の人への愛を忘れずに
最終単吟叫喚を
黙して何時までも…
「菓子幻譚」(全6章)(1)
(題材ヘンゼルとグレーテル)
仲良し兄妹
木こりの父と母の話をきいて
怖気が立った
明日子供達を
捨てちまおうよ
口減らしの為にさ
妹はわんわん
泣いていた
兄はコソリと森に行き
月の光で照らされた白石を集める
父と母
実の子捨てる為
手を引き森へと入る
兄は歩き乍
石を落とす
父は聞いた
何故歩く度家の方を振り向くか
兄は云った
屋根の上にいる 飼い猫シロが
バイバイしてるんだ
(2)
兄妹に麺麭を渡して
父と母は去ってった
木を切りに行く為だとさ
勿論其れは嘘であると
兄妹は判っている
でも只木を切る為に
去っただけなのだと
兄妹は信じたかった
無理も無い
宵闇の森の音は
不安がる兄妹を
嘲笑けて笑う
月の光と白の石が
兄妹を導く標となって
二人は家に帰る
父と母は
大層驚いた
兄と妹は
ベッドにて
すやすやぁ眠った
(3)
次の日も父と母
兄妹の手を引いて
森へと入る
今度は麺麭の欠片を
道標とす
父と母去る
兄妹は麺麭の標を
辿ろとす
標が無い
標が無いのは鳥のせい
鳥が麺麭を食べたから
兄妹は迷いて嘆いた
彷徨う 彷徨う 森の中
突如現れた謎の家
家と呼ぶには妙過ぎる
屋根や扉は猪口齢糖で
壁は曲奇餅で
柱は飴だ
普通なら怪しむが
今の兄妹にとっては
とても蟲惑的に見えたそうな
(4)
飢えし兄妹
貪り喰らう
屋根と柱と壁と扉
誰だい 誰だい?
ワシの家を食べるのは?
中から出てきた
しわくちゃの小さな婆は
二人を中へ招いたよ
さぁさぁお食べ
いっぱいお食べ
シチュウや 木の実 焼き立てのパイも
おやおやお腹いっぱいかい?
ならならふかふかベッドで
すやすやお眠りよ…
…久々のご馳走だよ
人間の子供 どちらも美味そうだ…
太らせて喰らおうかねぇ!
婆の正体 魔女だった
眠る兄妹の顔を見ては
にたりニヤニヤ笑う
(5)
起きろ!起きろ!
いつまで寝てるんだい?愚図女!
お前は私の召し使いだよ!
ほらほら働きな!
手ぇ休めるんじゃ無いよ!
因みにお前の兄は
太らせて私が喰うからねぇ
ご馳走用意してやろう
召し使いには
ザリガニの殻で充分さ
幾ら日が経とうとも
何故か兄は太らずの痩せたまま
おかしいねぇ…
もう待ちくたびれたよ!
痩せたままだが喰ってやる!
実云えば
兄は魔女を騙してたのです
動物の骨を
触らせて自分だと思わせて
(6)
召し使い竃の火を焚いとくれ
お前は丸焼きにしようかねぇ…
兄は鍋に入れてシチュウにしようか
魔女様よ 竃の調子が悪いのかしら
少し覗いて見てくれませんか?
しょうがないと魔女は確める
其して閉まる扉の音
出せ!出せ!出しとくれ!
燃える火の中 魔女一人
熱いと叫ぶの誰かしら?
悪い魔女は火でやっつけた
帰りましょう 帰りましょう
私達の家 父が待ってるわ
魔女の宝をお土産に
二人で仲良く帰ったよ
其して三人で幸せに
暮らしたよ
お母さん?いないわよ
そんな物
「朝餉と昼餉と夕餉と」
朝餉を食べていた
フォオクに刺した目玉焼きを見てみた
其して私は考える
此の目玉焼きの材料の
卵を産んだ親鶏は
今も卵を産み続けてるのだろうか?
昼餉を食べていた
箸でつまんだ魚を見てみた
其して私は考える
此の魚はどの海を泳いで
どんな餌を食べているのだろう?
夕餉を食べていた
鶏の唐揚げだった
其して私は考える
若しかしたら此の鶏は
朝餉の目玉焼きの
親なのかもしれない…
其んな事を考え乍
私はご馳走様と云う
「天使を埋めた」
天使を埋めた
目の前に
光を纏っていたから
本を読んでいるから
光を消してと頼んでも
天使が無理と云ったから
天使はしきりに訴えている
何でも鉄の塊が
直ぐ隣迄迫ってるんだって
あんまりにも五月蝿いので
天使を掴んで
穴を掘って埋めた
天使はもがいているね
飛んでみせてよ
白い翼で
埋めたら其の直後
鉄の塊が
ぶつかってきたから屍んだ
悪い事をした
天使は穴から出てきて
僕の体を掴んで
馘から下を埋めて
其れで飛んでった
せめて手は出してよ
本の続きが
読めないよ
「トランプの決め方」
赤く染めようか?
黒く染めようか?
お前達よ何方が良い?
ハアト ダイヤ
スペエド クロオバア
赤か黒か決めたなら
次は役割を決めようか?
お前達は何が良い?
王子?女王?
王様?其れともエース?
悉皆うっかり忘れてた
切り札のJOKERを決めてない
残りの役割ね
数字の兵士2〜10で
列をなしなさいな
なさないなら捨てるから
約立たずなら
馘をはねるわよ
「鉄処女」
さぁ 始めようか
鉄処女よ裁いておくれ
汚れた魔女等を
私は地に住む天の裁判官だ
お前達魔女を裁きに来た
主である泥烏須に背き
じゃぼと契りを交わして
自ら堕落歩む者等よ
お前等はこの私と
鉄処女が痛みを与え
其の後の浄化の炎にて
お前等魔女を
因辺留濃に堕とすのだ
其の前にお前等が魔女か
本当に確めねば
自ら吐けよさぁ吐けよ
己が魔女だと云え!
吐かぬのならば
おまへの体に
鞭の赤蚯蚓を這わそうか?
吐かぬと云うならば
梨をおまへの体に喰わせよう
吐いたか?吐いたならば
鉄処女の中へと入れ
開いたお前の血は
鉄処女の涙となった
あぁ主よ!我等が泥烏須よ!
今日も悪しき魔女等を
我等が住まう
波羅葦僧弖利阿利より
追い出しました
「朝と麺麸」
朝が私を起こす
気怠く私は体を動かし
麺麸を焼く為に下の台所へ
麺麸を一枚オォブントスタアに入れる
目盛りを捻り麺麸を焼く
ヂイヂイと云っていますよ
焼いてますよ 焼いてますよと
オォブントスタアは云っている
零に近付く目盛りを見てたら
又うとうとと眠くなる…
そしたら急にチインと鳴った
焼けましたよと云っていた
私は麺麸を手で踊らせ乍
皿の上に乗せる
もそもそ さくさく
私は麺麸を食べる
寝乍食べる
「奈落の掌」
巨大な掌だった
奈落に落ちていく私を
受け止めたのは
如何してこうなったのだろう
誰かに突き落とされたのか?
違うな と 答えたのは掌だった
お前が自ら落ちたのだ
成程納得した
だったら何故私を
受け止めた?
お前が勝手に落ちたのだ
今直ぐにでも落とそうか
落とす前に聞いてくれ
何故掌しか無い?
お前には俺が掌に見えるのか
とんだ阿呆が居たものだ
阿呆で結構
自ら奈落に来たのだから
違ぇ無ぇわ 違ぇ無ぇわ
其処の阿呆
奈落に行くのも悪くは無ぇが
掌の俺に喰われてみるか?
其れは其れは面白い
喰ってみせてみ此の私を
「悪夢食獏」
何処かに味の良い
夢はあるかなぁ
やぁ 其処のお嬢さん
今 お眠りかい?
悪夢を見たんなら教えておくれよ
この獏がバクバク
食べてあげよう
下らない冗談はいらない?
それもそうだ では お休み
やぁ 其処のお坊っちゃん
何で泣いているのだい?
怖い夢を見たんだね
それはそれは悪夢だったと?
ほうほうほう!?
だったら食べてあげよう
その悪夢を
目を閉じておくれよ
はい!ご馳走さまです
怖い夢は今夜もう見ないよ
それじゃあバイバイね
悪夢と云うのは
外れ無しに美味いんだ
見た子の恐怖が
程好い塩加減だからさ
だから僕は
悪夢を見る子が
大好きさ
先程のお嬢さんは
何の夢を見てるかな?
おやおや楽しそうだ
悪夢じゃ無いのか
残念な事だなぁ
別に良いのさ
悪夢を見る子は
他にいる
「衆合」
今日も男が群がるわ
蓮の花上に座る美女目指して
無駄なのにのぉ 無駄なのにのぉ
あの男等にゃ一生届きゃあせんよ
ほれ見てみい 蓮の花上に
既に美女はおらん
下におるじゃろうて
其の美女は
男等は下の美女目指して
降りてくよぉ
無理じゃねぇ 無理じゃねぇ
今度は蓮の花上におりよるよ
そなにも手ぇ伸ばしたいかえ
登る降りる間に傷付いた体で
剣林が男等を傷付けよるのよ
男等が流す紅の血はぁ
剣林と蓮と其して美女の
栄養となるのじゃよ
ほれ見てみさ
また登りよるよ男等が
あれが此処に来た
助平共の末路じゃて
色欲に眈溺した
者共の末路じゃて
「夢先案内人」(全3章)
夢を見せて何が悪い?
あれはあの子等が望んだ事だ
私は只 夢を見せただけ
あの子等は現で場所を
失くしつつあるんだ
其処に安寧を与えるのが
夢先案内人の私なのさ
お腹が空いてる子には
食べ物の夢を
遊びを望む子には
遊ぶ夢を
ほら見てよ
あの子等の笑顔
現じゃ絶対見られない
私は好きなんだ
そんな子等の笑顔がね
現を忘れて
夢へと来てよ 楽しいよ
(2)
誰かが云ったっけ
私の事を残酷な奴だと
夢を見せるだけ見せて
後に起こる更なる現の痛みを
知らない奴だと
勿論 知っているさ
そんな事は
だが私にとっては
如何でもいい事だ
私はあの子等が
望むから 夢を見せたに
過ぎないよ
何故其の事迄
私が責任持たなきゃいけない?
私は只の夢先案内人よ
夢を見る時は御自由に
但し責任は取らないよ
杖をつついて
次の子へ
(3)
私の見せる夢で
悪夢を見る子がいると?
たまにあるよ そんな事も
きっと夢を見る過程(プロセス)で
現を見たんだね 可哀想に…
なんで現を見ちゃう哉
夢に其の侭溺れて欲しいのに
現の事を夢として
夢の事を現と認識して
現に戻らなければいいのに
私が悪い奴だって?
私は自分の事は
悪い奴だとも
良い奴だとも
一度も云った事は無いよ
悪夢は貘に喰わせて
次の子の所へ行こうか
飾りの小さい礼帽翻して
「涙の血」
白い景に
椅子が一つあった
私は其れに座る
ギィと少し軋む音がした
見上げれば空の色は血だった
不思議な事に
大地には少し水が
張っていたのだけれど
空の色なぞ全く
映っていなかった
目を閉じていたら
声が聞こえてきた
目を開いたら
声は聞こえなくなった
聞きたいので
もう一度目を閉じた
痛い…苦しい…
何故…私が…!
其れは自分の声だった
はと目を開いたら
私は目から
血を流していた
痛み等は無く
服も汚れていない
血は全て
珠になって
空へと還って
目を開いていた私は
何の感情なぞ湧かなく
其れを見送った
「八寒」
猛る吹雪の中を
歩いていましたら
或る物を見つけました
紅蓮の花を咲かせた
人間がいたのです
綺麗だと
思いました
でも無理なんです
其の紅蓮の花は
正物では無いので
皮膚が裂けて
ようやっと咲いた花なので
見つめるしか
愛でる術は無いのです
良く見ると
彼方此方に咲いてますよ
見てみれば
如何ですかね?
「舞赤靴」(『童話』赤い靴)
赤いクツ 赤いくつ
ちいたか ちいたか
踊ってる
厳かな教会の下
皆は同じ格好
黒い服に黒い靴で
天へ逝く者へ
祈りを捧げる
其処にたった一つある赤い靴
目立たない筈が無い
赤いくつ 赤いクツ
ぐうるりぃ 狂うりぃ
回あって踊ってる
ぬげない ぬげない
つかれた つかれたよ
足を切って ぶつりと切って
赤い靴は更に赤いクツ
赤いくつは森の奥へ
てぇらら てぇらら
歩いて消えた
森の奥の廃れた教会
欠けた十字架と聖母の前で
赤い靴をはいた
足だけが
ちいたか たった
踊ってた
「猫とまんま」
まんままんまと
合唱的叫喚を
繰り返して私を起こす猫
少し前迄は
其の行為に対して
可怖可驚していた自分がいた
今はもう慣れた
そんな自分がいた
餌の猫缶をかぱんと開けて
中身をぷるんと出せば
猫は食ぐ食ぐ其れを食べる
水も時々てちてち飲む
私は見ているだけ
食べ終わった猫は
私を見てにやうと鳴き
むっくりの腹を見せてまた眠る
猫はどの様な夢をみるのだろう?
私はそう思い乍
猫の寝顔を見て微笑む
「黙れ 蝿」
卓子の煎餅を
食べてました 八つ時に
そんな時 目の前を
蝿が飛んで いたのです
目の前で 目の前で
ぶんぶんぶんぶん
五月蝿いので
黙れ 蝿
煎餅の食べる続きを
してました
卓子に頬杖を
つき乍
先刻の蝿が
飛んでました
ぶんぶんぶんぶん
手元に噴射器が
ありましたが
煎餅に掛かったら
不味くなる
なので退治するのに
蝿叩きを使ったのです
ぶんぶんぶんぶん
五月蝿いので
黙れ 蝿
卓子の蝿を
ぶえっちんと
蝿叩きで叩いた
「照坊主」
雨の降り止まぬ村
人が幾ら願っても
止む事は無い
坊主を雨晒しにしても
雨は止まない
照る坊主よい 照る坊主よい
晴れぬのはお前のせい
お前の馘をはねようか
はねた馘を天に晒そうか
そうすれば晴れるのか
晴れはした
坊主は泣いている
離れた馘を思って泣いている
村人は涙すら出ない
乾いた体からは何も
照る坊主は笑っていた
馘も体も
「海(うな)の旅人」
私は海を旅したいのです
でも生きている間じゃ無い
厶(し)んだら海旅をしたいのです
火葬場で私を焼いて下さい
もくもく上がる煙を見上げても
私はいません…
骨は粉になる迄砕いて下さい
骨壺には入れないで
お墓は嫌です作らないで下さい
私が海を旅立て無くなるから
私が粉になったら
海へと撒いて下さい…
海波が 何千となった
私を 連れて行ってくれる
ざざぁざざぁと音立て乍
私は旅立ちます
左様なら皆さん…
私は海の旅人
私は海の旅人…
「或る掃除婦の愚痴」
或る掃除婦が
掃除をしていました
厠の掃除を
道行く人々の中には
厠を使う人もいるのですが
掃除婦は笑顔で譲るんです
でも私には
笑顔で愚痴を云ってる様に
見えますが?
清掃中の看板が見えない?
怪訝な顔をして此方を睨むな
扉を急に閉めるな
はぁ…思っている事を上げれば
キリが無いのです
掃除婦が何時でも
ニコニコしている訳では無いです
心の中は規則無い客達に対しての
愚痴で一杯です
でも判りますよ掃除婦の気持ちは
私も同業なので
「夕焼ノスタルヂア」(全2章)
(題材:赤とんぼ)
夕焼の空の下
姉様におぶられて
僕はいました
赤とんぼが飛んでいます
捕まえたかったのですが
姉様に背中で暴れないでと
怒られて仕舞いました
そんな懐かしい記憶が
僕の中にあるのです
夕焼空の赤とんぼに
僕はノスタルヂイとなった
あの日もそんな感じだ
姉様がいなくなったのは
十五でお嫁に行ったと聞きました
何処の誰のお嫁になったかは
僕にはちっとも判りません
僕は大人になりました
町で購い物をしてました
すると姉様がいたのです
(2)
僕は姉様に声を掛けました
でも姉様は僕の事を
他人のやうな目で見てました
姉様は僕の事を
ちっとも覚えて無いのです
姉様は虚いた目で
又歩き始めました
僕が見送った其の背中に
あの頃の姉様は
もういないんです…
僕は川原で
わんわん泣く
其の時の空は
夕焼でした
赤とんぼが
数匹飛んでました
夕焼空の
赤とんぼ
僕は其の度に
ノスタルヂアになる…
「羊を抱いたメリー」(全4章)
(1)
メリーメリーメリー
鳴る電話からは
知らない番号
私はメリー
今 駅に着いたの
羊と共に
貴方の所へ行くわ
メリーメリーメリー
また鳴った
私はメリー
今 商業場の前にいるの
貴方は今
家にいるかしら?
メリーメリーメリー
また鳴る
私はメリー
今 レストランの前にいるの
貴方に云うわ
この電話を切っちゃ駄目
(2)
僕は恐ろしくなり
電話を切った
メリーメリーメリー
電話が鳴った
切った筈なのに
私はメリー
今 煙草屋の前にいるの
貴方 電話を切ったわね
…許さないわよ
どんどん近付いてくる
僕は家を出ようとした
メリーメリーメリー
鳴っている
私はメリー
今 電柱から貴方を
見ているわ羊と共に
家から出ないで
ちょうだい
(3)
メリーメリーメリー
ずっと鳴っている
僕は取るのが怖い
私はメリー
今 貴方の家の前にいるの
会いに行くわ
羊も貴方に会いたいって…ウフフ
僕は部屋に
鍵を掛けて
震えて閉じ籠る
メリーメリーメリー
鳴りっぱなし
メリーメリーメリー
私はメリー
今 部屋の前にいるの
開けてちょうだい…
扉の叩く音が止んだ
電話の音も止まった
メリーメリーメリー
メリーメリーメリー
メリーメリーメリー
(4)
激しく鳴る音
線を千切っても
メリー叫喚は
止みはしない
止めてくれ!
僕はあんたの事なんか
知らない…
メリーメリーメリー…
私はメリー
今 貴方の後ろに羊と共に
…いるの
「縁切屋」(全3章)
でっかい鋏を持った
縁切屋
他人の糸が見えると云う
切りたい縁はお有りかい?
ならこの縁切屋にお任せを
おや 早速お客さんの様だ
ちょいと其処を退いとくれ
これは御嬢さん
一体誰との縁を切りたいと?
成程 成程
元彼との縁を切りたいか
普通の太さの赤い糸
ちょんちょん切れ掛かってる
ちょきんと切ったさ
其の糸は
今日か明日から効果が出るよ
次のお客さんは誰だろね?
(2)
これは珍しい
子供のお客さんだ
坊よ一体如何したんだい?
親との縁を切りたいと?
自分を打つから切りたいか
わかった わかった
叶えよう
其の薄汚い糸はばっさりだ
次のお客さんは誰だろね?
これはこれは男のお客さん
一体誰との縁切りをお望みで?
数多の女との縁を切りたいと?
この男は一体如れだけの身勝手で
女を捨てたのだろうな
黒重油みたく
女の怨嗟がねっとりと
糸に絡みつきよるわ
正直云って
切りたくない
切りたくはないが
切るしかない
(3)
この縁切屋に
御代はいらんさ
無一文でも構わんよ
御代代わりと云っちゃ
何だがだ
御前さん等の
生き様ならぬ
別れ様を
見せて貰おうかい!
縁を切ったからと
良い結末が訪れる
わきゃあせん
女は誰ぞに刺された
坊の親は目の前で窓から落ちよった
男は女の怨嗟で病んだとさ
今日も私は満足だ
御前さん等の大団円が見れたから
嗚呼 愉快だ 愉快だ面白い!
其れでも客は絶えんのよ
この縁切屋には
これは次のお客さん
一体誰との縁切りをお望みで?
「強請(ねだ)る女」
頂戴よ と
私は貴方に強請る
貴方は桃の液を
口に含んで
私に親嘴をする
流れてくる液体を
残さずに受け飲むの
すると躰が熱を帯びるわ
段々火照って来て
目もトロンと蕩ける
躰は既に貴方を縋る
心は更に貴方を求める
貴方は笑んで
私を受け止める
私の意に反して乱る躰と
求めて止まない心を
全て全て
貴方にあげる
其の代わり
淫靡な夢を
貴方に強請るわ…
「蝶の千切絵」
春になったら
庭先の菜の花に
蝶が止まった
私は蝶を捕まえてみました
羽を広げたら綺麗な色なので
千切って紙に散りばめました
もっと色が欲しいので
庭に来た蝶達を皆捕まえて
羽を千切って千切絵に
体は如何して仕舞おうか
潰して絵具と混ぜよう
調色板にぶちゅると
潰された蝶の体
絵具と
ぐるぐる混ぜる
蝶の体と触角と
口と復眼は
絵具の中に
寸断寸断である
千切絵に
蝶の体を溶かした
絵具を塗る
そうして出来たのは
蝶で表す銀河の千切絵
(作者ヨリ)
>>267は、
自分にとってだが
やや官能的な詩なので、
やらかしたのかもしれない…御免ね
(引き続き詩の感想御待ちシテマス)
全部の感想は言えないけど、
ストーリー系の縁切屋がめっちゃ好きだなぁ
一人でここまで伸ばすの凄いね!( ˶ˆ꒳ˆ˵ )
感想はたまにしか書き込めないけどまた見にくるね〜!
>>270
!?
見に来てくれるだけでも、
有難いっス!ヒャッホウ!
(夜間でテンションが可笑しな事になっている)(笑)
所々、わからない言葉があるけど、なんかグッと来ました。
また書いてほしいです‼才能あると思いますよ‼
「桃花心木(マホガニー)の乙女」
崖の上に
小さな家が建っている
其処からは紺碧の海が広がっていた
夏の日が照ってる
蒼穹の下で
天鵞毛のアッパッパを纏った乙女が
日傘を差して
三明治と珍陀の酒を共にして
海を眺めている
乙女はつまらなそうだった
私は声を掛けてみる
乙女は私の方を振り返って
にこりと微笑み頭を下げる
潮風になびく
乙女の髪は浪漫的だ
乙女は身体が弱く
三千世界を自由に旅する私が
羨ましいと云った
私は乙女の為に話をした
あんな事や こんな事
乙女はコロコロと笑ふ
紺碧の海は
黄昏により 橙に染まる
乙女は私を
家に招ひた
家の中はひんやりとしてたが
静謐であった
家具は全て桃花心木だ
裕福なのだろう
鹿嶺を用意してくれた
私は其れをかっか食べる
急いで食べてむせる私を見て
乙女はコロコロ笑い乍
水を差し出した
乙女は寝る前に
他に何処を旅したか
聞かせて欲しいのだと
私は一杯話したさ
乙女が退屈しない様に
乙女はわくわくしながら聞いてる
まるで子供の様だ
空は暁闇となる
乙女は海からの
日の出を待っていた
私は次の旅へと行き
乙女はひらひら手を振った
>>272
有り難う!
書ける限りはとりあえず書いてくが
私のスタンスだからねぇ。
乙女に当てはまる人っているんですか?
あと、表現の仕方がうまくてこの男の人の気持ちがぐんぐん伝わってきて、読みやすいです‼
>>275
有り難うね
乙女に当てはまる人…?
んー…?…?如何だろうねぇ…
私は詩を書く場合、
頭に言葉が朧気に来るから、
其れをノートに書いてから載せてる。
詩に対する情景を問われたら
申し訳無いけど少しきついなぁ。
私は感想述べるのは下手だからねぇ…
「掴肉」
クレーンがあった
何かを掴んでいる
掴んでいるのは犬
動かない犬
クレーンから落ちて
ぐちゃっと音がした
ウィーン ウィーンと機械音
次に掴んだのは猫
猫は暴れている
瓦斯が出たら
猫は大人しい
クレーンは猫を落とす
猫はぼとっと落ちて
ぐるぐる回りべしゃっとなる
クレーンによって
積んで積まれて
動物の山が出来る
上の動物は何か判るが
下の動物は何だったけ
動物の重みで
ぐずぐずになる動物
引っ張ったら肉がずるりと抜けた
ちょ、ちょっとホラーですね…。
想像すると、寒気が……。
でも、想像しやすい表現で、まるで自分がその場にいるかのように感じられます‼
表現力、神に近いですね……‼
>>278
か、神に近きとな!?
うおおぉ…嬉涙が出るよ…
次に書くのは全5章から為る詩だよ
「砂漠の球」(全5章)
(1)
宵闇の空に浮かぶ月が見下す
砂漠を私は歩いていました
御供のラクダに乗って
ゆらりゆらぁりゆっくりと…
私は目指しているのです
この砂漠の何処かにある
瑰麗なる塔を
(2)
…えんえんと えんえんと
私は砂漠を歩いています
ラクダを引く綱は切れました
喉が渇きました
もう何日も水は飲んでいません
続く 続く 砂漠の風景
僅かに在るのは仙人掌の緑…
(3)
ゆらぁ ゆらゆら
陽炎の中に見えるのは
生い茂る緑とオアシスの泉だ
満たされる…!喉の渇き…!?
…遠くて 遠くて…遂に届かず
消えたオアシス…
砂漠と云う物は残酷です
決して手に入らぬ物を
いとも簡単に作り出す…
(4)
只 孤独(ひとり) 絹のローブを纏い
塔を目指して砂漠を彷徨います
砂塵が私を阻むのです
ごうごうごうごう
私は其の場から動けません
激しき砂塵の中で目を開いた
其の中で見えた謎の影
(5)
あれだ!あれだ!
私が目指した塔!
蜃気楼ならば疾く消えよ!
砂塵は止みて塔は姿現す
月が塔に光与るので
私の目に眩しく見える瑰麗の塔よ
塔よ!私は貴方を探し続けた
そして今!私は貴方の前にいる!
願いを叶える塔よ!
私は願ふ!私は云う!
この砂漠の球に
私以外の人間がいる事を!
叶わぬならば私は久遠に孤独!
「悪戯子」(全2章)
(1)
にしし にししと真ッ闇で笑う声
小妖達の悪戯会合
今日は如何 悪戯しよか?
時計をいじって遅刻させよか
犬の毛毟ってきゃいんと云わせよか
八つ時の砂糖天麩羅をかじろか?
やってみよう やってみよう
ははは ははは
面白う 面白う
見たか?見たか?
困て周章てふためく
人間と畜生の顔
これだから止められんのよ 悪戯は
口の端を引っ張って
イーッと白牙見せて
笑ってやらう
次はどんな悪戯を
仕掛けてやらか?
(2)
もっと過激たる物を望むぞ
泡吹く様な悪戯が良い
其れならこれは如何だらか?
山葡萄のじうすを
洋種山牛蒡にすり替えよか
馬鈴薯の芽を
どんどこ生やそか
河豚の肝を
コソリ鍋に入れよか?
見てみさらせよ
人間が蟹みたく泡吹く様を
白目剥いて倒れる姿を
人間等にとっては惨事だらうが
我等小妖には
只の悪戯にしかならんのよ
笑うた 笑うた
腹を抱えて転げ回って
げらげらげらげら
「塵の翼」
塵が街にやって来た
塵は街を覆った
一体何が起こるのか
街の人々はゴホゴホ咳した
僕は平気
次に人々はゼェゼェ云ってる
僕は平気
最後に人々バタバタいった
僕は平気
僕のいる街は皆何故か
こうなるんだ
だから僕には人がいない
だから僕は次の街に行く
人が欲しいから
塵も又
僕の背中にくっついてる
まるで翼
「糸を切る人」
ぼちゃん ぼちゃん
ぼちゃん ぼちゃん
落ちているんです
落ちているんですよ
池に人がね
うわあああと云い乍
落ちってってるんですよ
脱出しようとしても
周りが出ない様
押さえてるんですよね
其処に蜘蛛の糸が
一本だけ垂れてくる
救いの糸だと
皆縋ってわらわらわら
其の糸を
ちょん切ってみたら
糸に捕まってた皆は
うわあああと云い乍
落ちたんですよ
無慈悲だと
云われましても
別に良いんですよ
気にしません
其れが私の仕事なので
天界の御釈迦様が
垂らした糸を
亡者が縋る糸を
ちょきんと切るのが私なのです
「命怪盗」
夜空に
猫がニャオンと鳴いたのよ
そんな時に何時も現れるのは…?
怪盗です 怪盗です
黒い服に黒マント
頭にゃ高帽子 杖だって持ってる
やぁ今晩は 街の皆様方
今夜は悪徳街主の
宝石盗みに来ました
捕まえてみて御覧よ
悪徳街主の犬ころ共
まぁ私は捕まらないけど
今晩は悪徳街主さん
市民から巻き上げた血税で得た
宝石の輝きは如何かしら
助けなんて呼んだって無駄なんだ
犬ころ共の命は既に盗んだよ
宝石を盗むのは只の建前さ
本当はお前の命が欲しいのさ
杖で叩きゃあね
命は私の手の中さ
金はいらんよ
宝石さえあれば事足りる
さぁ お喋りはこれ位に
お前の命を盗もうか?
盗った命は杖の中
欲にまみれた其の魂
中でゆっくりと消えてゆく
怪盗は微笑むさ
高帽子を目深にして
そして次の夜空に
黒影浮かばすのさ
「終末の奇羅星」
空ヨリ来タレ!奇羅星ヨ!
塵ノ尾ヲ引ク奇羅星ヨ!
地上ニ終来ヲ告ゲヨ!
私ハ掃キ清メル者
地上ニ住マウゴミ共ヲ掃除ニ来タ!
カツテハ宇宙ノ青キ宝玉ヨ
今ヤオ前ハタダノ石コロ
ダカラ私ガ掃除スル!
地上ノゴミ共ヲ一掃スレバ
オ前ハカツテノ姿ニナレルンダ!
浄化ノ焔ヲ纏エ奇羅星ヨ
災ノ叫吼ヲ轟カセ
喚クゴミ共ニ鉄槌下セ!
「或春の一日」
草っ原に寝っ転がる私
空には青と白と陽
バッタがぴょいん飛んでいた
捕まえようとするが逃げられた
草っ原に突っ伏す私
さふさふの草が私の体包み
草の香りが直に来た
野兎がぴょんぴょん飛んでいた
時折二本足で立っては
長い耳をひこひこ動かす
私は野兎に向かって走った
兎は逃げる
ぴょんぴょこ逃げる
追い疲れて寝っ転がる私
童になって遊んだ
そんな春らららな或一日
「傷竜と心臓」
脈打つ物を守っている何かがいた
ドクンドクンと云う物を囲む様に
私は近付いた
そうしたら尻尾の様な物で
追い払われた
真ッ闇に浮かぶ2つの赤い眼は
近付くなと私を睨む
そして何かはまた地に伏せる
私は懲りずに近付く
何かは吠える
私は怯むも前に進む
其れは竜の姿をしていた
傷だらけで胸の部分に穴が
穴から伸びる鎖は
脈打つ物と繋がってる
とりわけ翼はボロボロで
飛翔そうにもなく
時折弱々しく鳴き眠る
私は竜に寄り添い眠る
何故 そうしたのだろう
何時の間にか
私は竜の背に乗り
竜の傷が無くなって
胸の穴は塞がっている
竜は私を乗せた侭
猛り吠えて飛翔する
「給仕係(メイド)の本音」
笑っているんですね
ハハハハ ハハハハ
皿を割っている女が
パリン パリン
床にある物全ては皿だった
今は只の破片ですよ
楽しそうだなぁ
掃除するの大変なのに
まぁ 良いんだけど
プラスチック製の皿に
御飯を盛り付けたんです
何時もの御飯なのに
何時もより安く見えてしまう
女が割っちゃったからなぁ
硝子の皿を残らずに
あれは高かった
あの女を主人と呼ばねばいけない
正直云って嫌なんですよ
嗚呼 嫌です
「さけびたり」
酒場の隅の席に私は一人いた
店内は酒の匂いと笑い声で溢れていて
ボックスからは陽気なぢゃずが大音量
私は頼むのよカルヴァトスを
そんで飲む 只飲む
ステェジの上じゃあ
ぢゃずの音に合わせて
陽気女と伊達男が踊ってる
客達はやんややんやと
拍手を送っている
そんな中 私は只一人
陰気に酒仰ぐ
次に頼むのはスピリタス
強い酒で私は酔う
店から出た私はヒックヒック
誰からも相手にされない…ヒック
「墓場で吹く」
真ッ闇の墓場に
笛を吹いています
ボーボーボー
墓の下から
手が生えたんです
ボコボコボコ
カタカタ云い乍
ヌヌヌッと出て来て
ワラワラ寄って来る
周りを囲って
私や他の亡者と
話をしてるんです
私は生きてる者とは
友達にはなれません
疎まれるばかりで
だけど亡者は
話を聞いて
笑ってくれるのです
笛を吹いたら
亡者が出てくるよ
真ッ闇の中で
ボウボウ吹いたら
ワラワラ出てくるよ
孤独の生者は
生きてない亡者と
友達なのさ
闇の闇の墓場の中
今日も生者は語らうのさ
屍骸と語らうのさ
「要の子」
いるよいるよ
私の子は
ここにいるよ
縫いぐるみじゃないよ
可笑しな事云うわね貴方達
ねぇ 私の子
またそんなにぽろぽろ溢して
しょうがないから私が食べさせるわ
ねぇ 私の子
そろそろ寝んねしましょうね
私が子守唄を歌ってあげる
ねぇ 私の子
私の子になんで綿を詰めてるの?
やめてよ痛いって泣いてるじゃない
よしよし可哀想に私の子
こんなに綿を詰められて
痛かったでしょう辛かったでしょう
ごめんね気付いてやれなくて
全部全部抜いてあげたから
これでもう痛くないわ
ねぇ私の子 少し軽くなった?
肉よ 肉が足りないのね
今 用意するからね
食べさせてあげるから
おいしい?良かった
お姉ちゃんに分けてもらったものね
でも 一人だけじゃ悪いから
あの子にも分けてもらうわね
あの子は今 遊びに行ってるのよ
帰ったら分けてもらおうね
可愛いわ 私の子
ほら こんなにも笑ってる
キャッ キャッ
帰って来たのね
ただいまも云わないであの子は…
悪い子ね
お部屋で少し待っててね
あの子からも分けてもらうから
出てらっしゃい…
あんたはお兄ちゃんなんだから
少し位分けてもいいでしょう?
「独隠鬼」
私が鬼よ
貴方の腹を引き裂いて
中を全て米にするわ
裂いた腹は
赤い糸で縫いましょう
貴方の名前は太郎ね
太郎 私と遊びましょ
隠鬼をして遊びましょ
二人だけで遊びましょ
テレビの画面は灰の砂嵐
お部屋はみぃんな真ッ闇に
太郎は何処に隠れたの?
太郎見ぃつけた
お風呂場で見ぃつけた
太郎が鬼
太郎が鬼
太郎が鬼
次は私が隠れるからね
太郎に私が見つかるかな?
ピチャ…ピチャ…ズルズル…
太郎が私を探してる
襖で息を潜めるの…
足音が止まった
襖の前で
開けてみた…
目の前で太郎が云った
お前を見付けた
お前を見付けた
お前を見付けた
隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい
アビスってほんと詩のセンスいいよね、羨ましい…
299:アビス◆wc:2018/04/08(日) 23:04 >>298
ふぇやう!?(驚)ありがとう!(嬉)
自分の書きたい事を
書いてるだけだからなぁ
書きたきゃ書くってのが私なのさ。
「厶(し)の花嫁」
とても美しい花嫁だった
顔はベェルで判らなく
手に手巾を持っている
白い馬車から降りて
目の前の家で赤い手巾を
ヒラヒラ振っている
翌日の事
棺を載せた黒い馬車が来て
人を一人棺に入れて去る
夜の時
僕の所に花嫁が
ヒラヒラ赤い手巾を振っている
手を斬り落とせば助かると
誰かが云った
僕にはそれが無理だった
こんなに美しい花嫁の手を
誰が斬り落とせようか
明日は僕が乗るのだろう
黒い馬車に