物語の舞台は現代日本
1万人に1人の割合で異能力者が生まれる世界
ある者は正義のために異能を使い
ある者は私欲のために異能を使う
異なる二つの信念が交錯する時、善悪をも超えた死闘が始まる
冷酷なまでに正義のために日夜犯罪者の粛清を繰り返す
日本の極秘特殊機関"八咫烏"と日本中の犯罪者達の死闘を描いた物語
>>2 ハウスルールと募集枠について
>>3 八咫烏について
>>4 キャラシートの作成例
>>5以降から募集開始&本編開始となります!
桜空「くそっ!!!!!」
ダッ・・・・・!
(桜空は紀をお姫様抱っこ状態で抱き上げ、そして「早く抜け出すぞ中川!!!!!」と叫ぶと、急いで水鴉同様この場からできる限り少しでも遠くへと逃げようとする・・・・・
倒した結果が、まさか自分たちの首を絞めかねることになるとは思わなかった・・・・・)
>>600
>>597、600、601
「ヒューッ! 信じられねえぜ、あのデカブツが沈んじまった!」
想定外の大金星をあげられたことに、思わず口笛を吹く。とりあえず今回ばかりは桜空の行動力に感謝だ。
「うぉっ!? っとっとぉ、危ねえ危ねえ」
蜈蚣の最後の意地なのか、のたうち回っての打撃が襲いかかる。
「そうは、いかねえよ!!」
ガントレットの要領で、右腕に鋼を纏う。
そして掌をかざし、打撃が当たる瞬間に、円形の壁を作るように掌を一回転させた。
回し受け。
空手の基礎的な防御技術。あらゆる受け技の基礎とも称される。円の動きをすることで、衝撃を分散させることが出来る。
「ぐおあああっっ!!」
鋼の腕で受け流した甲斐あって、一撃での粉砕を免れ、10m程吹っ飛ばされるだけで済んだ。
「あぁ〜っつつつ……ったく、やってくれるぜ」
ふらつく頭を押さえながら立ち上がる。
「! あいつは……ありゃ?」
ふと視界に水の男を捉え、第2ラウンド開始かと思いきや、桜空と言葉を交わした?直後逃げ出してしまった。
(いや、それよりも……)
放置された紀が気がかりだ。そして蜈蚣が暴れた影響で建物自体が崩壊を始めている。彼女も回収し脱出しなければ。
「……っと、おやぁ〜大将? 美味しい役回りですなあ?」
自分が動く前に、桜空が救出してくれた。そんな彼を茶化しつつ、後を追う形で走り出す。
【地下アジト】
狼谷
「…………ッ!!
何でここに……三羽鴉がいるんだ………!?」
中川、紀、桜空の三人が最初の頃に生じていた破壊音や爆発が無くなり、アジト内には沈黙か戻りつつあった……
何故なら、狼谷は右腕を切断され、狼谷が率いていた攻撃部隊もその半数以上が倒れ、絶命してしまっているからだ……
狼谷は桜空の時にも見せたように、銃弾や斬撃が進行時に生じる衝撃と風圧を利用することで回避することが出来る鉄壁のような防御力がありながらも、眼前にいる相手には通用しておらず、邂逅した一瞬にして斬り飛ばされてしまっている。
剱鴉
「…………他愛もない。」
青い髪を後ろで一本にまとめ、片目に眼帯を付け、背中には剱鴉の身長よりも明らかに長く、2mにも及ぶ大太刀を背負った少女……八咫烏の最高戦力が一人であり、八咫烏の頂点に君臨する氷華の相棒である『剱鴉』がこの惨劇をもたらした。
狼谷の他にも十人以上も中川や紀程ではないものの高い戦闘力を持った異能者がいたのだが、その多くが反応することすら出来ずにその体を斬り伏せられてしまっている。
一つの困難を乗り越えたその先にあるのは更なる困難か……
桜空「今はここから逃げることに集中しろ!!!!!」
(自分を茶化してくる余裕を見せる中川に、とりあえず今はこの場から逃げることだけに専念するようにと忠告する・・・・・
そして、ここから逃げ出したとしてもまだ課題はある、紀、狼谷、その他多くのファースト構成員の安否だ・・・・・
見たところ、紀は数分間水に囚われていた為か呼吸が停止しており、肌も青白くなっていて危険な状態であることがわかる・・・・・
それに、狼谷と合流するにも、今相手がどこにいるのかもわからない・・・・・
このアジトの敷地内のどこかにいるのはまず間違いないが・・・・・)
>>602、603
>>603、604
「でへへへ、すいませんね」
全く反省の色はない。
「ああそうだ、デカブツ倒したことを旦那に報告しねえとな」
狼谷に連絡を入れる。
戦況が大きく変わったなら、仲間にそれを教えるのが定石だ。
「旦那ぁ、まだ忙しいだろうけど聞いてくれよ。ついさっき蜈蚣のデカブツを大将のお陰で倒せたんだぜ。そんでさぁ……っ!?」
そこで異変に気付いた。
静かだ、静か過ぎる。先程連絡した時は激しい銃声や爆発音がひっきりなしに聞こえていたのに、今回は水を打ったように殆ど物音がしない。
(これは……!?)
明らかな異常事態。早急に彼らと合流し情報の共有をすべきだ。
「成る程、こりゃ確かに急いだ方がいいみたいですぜ、大将」
それによく見れば紀の容態も芳しくない。ちょっとシャレにならないレベルに移行しつつある。
両足に一層の力が籠った。
https://i.imgur.com/kxCeBFi.jpg
607:ニュージャージー ポップンミュージック:2021/12/24(金) 18:30犀賀の立ち絵です
608:ファースト◆gI:2021/12/25(土) 05:42 桜空「んなこたぁわかってる!!!!!それより狼谷がどこにいるかはわからねぇのか!?」
(早く合流して、能力が使えるところまで避難したところでアジトへと戻らなければ、敵に勝っても全滅という最悪の結末が考えられる・・・・・
桜空は、狼谷がどこにいるかは把握出来ていないのかどうかを中川に聞く・・・・・)
>>605
【かっこいい!】
>>606
>>608
「さっすが大将、話が早くて助かるぜ」
付けている手甲について聞こうとも思っていたが、彼の様子を見て後回しでいいと判断する。
「で、狼谷の旦那の位置だが……サッパリだ。何しろ応答が全くなかったもんでね、現在位置報告もクソもなかったよ」
桜空「・・・・・通信機の不具合って可能性はないか?何にも音は聞こえなかったのか?」
(桜空は逃げている中で考えて導き出した一つの可能性を中川に告げる・・・・・
もしかしたら、どこか通信障害が起きるような場所に今現在いたとしたら、狼谷からの連絡がないことも納得がいく、もしくは何かしらのトラブルに巻き込まれていて連絡不可能な状況にあるか、のどちらかだろう・・・・・)
>>609
>>桜空
>>中川
仮面の男
『…どうやら人探しをしているようですね?
もしかしたら…お力になれるかもしれません。』
瓦礫による倒壊の範囲から逃れた二人の背後に何の予兆もなく黒いローブに包まれており、笑顔の仮面を付けた得体の知れない冷たい雰囲気を身に纏った人物が現れる。
ローブによって体格が曖昧なものになってしまっている事や、その声は中性的である上に、仮面を隔てていることから性別も年齢も不明瞭なものとなってしまっている…
怪しげな風貌をしているものの、その声からは何の敵意も悪意も感じられず、優しげにさえ思われる。
桜空「・・・・・アンタが敵じゃないのなら、その言葉、信じるよ」
(この危機的状況の中、そう都合よく自分達の味方の助っ人が現れるのは出来すぎている話だと思ったからか、桜空は少々警戒しながらも、敵じゃないのであればその言葉を信じると返す・・・・・
今はとにかく、早く狼谷と合流してアジトへと戻らなければならないからか、桜空は少しでも今の状況を解決できる可能性があるならば、例え怪しい人物であったとしても頼らざるを得ない・・・・・)
>>611
>>611、612
(ん〜どうしたもんかね)
胸中で焦り始める。
狼谷達の位置が不明な上、唯一の通信手段も役目を果たせない状況ときた。
もはや八方塞がりか。
(……実はそうでもないんだな、これが)
奥の手がないこともない。
そして何故今まで使わなかったか。それはひとえに通信さえ出来れば不要な手段だからだ。しかし現状それが望めないのは明白となったので、消去法でこちらを選ぶことになったというわけだ。
(じゃ、早速取り掛かりますか)
一度深呼吸し、精神統一。
床に片手を添え、
『操作』を始めた。
(よぉ〜し、この建物もちゃんと操作の対象になってるな)
勿論建物の形をどうこうしようだとか、そんな大それたことは出来はしない。
しかし動かすことは叶わずとも、断片的に情報を得ることは出来る。
(この部屋は……なんもねえな。こっちの部屋もハズレか)
どこが『動かせない』部分なのか、どこが『そもそも対象外』の部分なのか、実は『少しだけ動かせる』部分なのかといった、感覚的な結果情報を手探りでかき集め、各部屋の状況を推測していく。
そうすると……
(お!)
今度の部屋は何か違う。
(床や壁の状態がおかしいな)
幾つか、『操作できない部分』が点在している。
(合成樹脂や塗料で挟んでるわけじゃない……こいつは)
傷だ。何らかの要因で壁や床が損傷している。そしてその形状は……
(刃物だな、それも随分切れ味のいい代物だ)
『操作できない部分』はどれも非常に細い直線であり、深いものである。そこから導き出される結論は、鋭利な刃物を持った人物が戦闘行為に及んだというところか。
自らのあずかり知らぬところでの戦闘、これだけで直接向かう価値は十分だ。
「ぃよいしょぉっ!!」
鋼鉄の円錐型ドリルを形成し、件の部屋目掛けて投擲。掘削させる。
これに関してはあっさり上手くいった。直前まで蜈蚣怪獣が暴れ回り、周囲の地形がボロボロになっていたからだ。
「さあ行きますよ大将、一度見るだけでも意義はあるぜ」
「ん? あんた誰? 何、助けてくれんの? ありがたいけど別にいいや、じゃな」
言い終わるや否や、謎の人物に向けて手をヒラヒラさせつつ穴へと入っていった。
>>612
>>613
謎の仮面
「クフフッ、そうですか……
では、私の助力は必要なさそうですので此処は下がりましょう。」
中川が幾つも部屋に穴を開けて移動口を作り、自分の助力が無くとも大丈夫だとわかると、仮面の男は口許に手を当てて笑いながら、通路の暗闇の中へと消えて行く……
仮面の男の笑い方は、昔に桜空が何処かで聞いたことのある、少し癖のある笑い方であるものの、彼は自分の素性について明かす前に去ってしまう。
中川のこの判断や行動が吉と出るか凶と出るかはまだわからない……
>>603
「はい到着っと〜」
ドリルで掘り進み、その後ろを追いかけることで目的の部屋へと辿り着いた。
「!」
直後、隆次の顔から余裕の色が消えた。
「旦那! それに皆も!」
なんと狼谷は片腕を切断され、他の者達も血塗れで倒れ伏していた。
明らかにシャレにならない事態だ。急いで彼のもとに駆け寄る。
「しっかりしろ旦那。こんなところでくたばっちゃ、笑い話にもならねえぜ」
残った腕の先端部を、針金で縛り止血を試みる。何もしないよりはマシだろう。
「やったのは……アイツか。旦那、何か弱点とかねえかい? 他には攻撃の特徴とかよ」
視線を移せば、青髪の少女。規格外に長い太刀が嫌でも目を引く。
(成る程、あんなのブン回してりゃそりゃ傷だらけにもなるわな)
壁、床に切り傷が幾つも付いたことに合点する。
そして身に纏うただならぬ気迫。他とは別格の存在だ。ともすれば虫の男や水の男より上かもしれない。
>>615
狼谷
「悪りぃ……まさかこんなところに三羽鴉がいるだなんて思ってもいなかった……作戦は失敗だ……」
直前までは十二鴉が一人か二人いるだけで、三羽鴉など居る筈も無かった……まして剱鴉は遥か遠方の四国の暴力団の制圧のために遠征している筈であった。
嘘の情報を掴まされたか、或いは何らかの方法で先回りをされたのか……いずれにしても完全に予想外の出来事だ。桜空の救出には成功したが……生還することは絶望的であり、作戦は失敗したと悟る……
狼谷
「アイツは……剱鴉は他の異能力者とは桁が違う……
まともに戦っても勝ち目はない……せめてお前らだけでも逃げてくれ……」
弱点について聞いてくる中川に対し、狼谷は戦っても勝ち目はないと応える……
普通に考えれば三羽鴉が来襲した時点で全滅は免れないのだが……ここで自分が命をかけて足止めをすれば中川達が逃げるまでの時間なら稼げるかもしれない。
細身な少女の姿をしているものの、彼女の纏う雰囲気は見た目通りではない。眼帯を付けていない剱鴉の左目、青い瞳は刹那の瞬間すらも見逃さない、狩人の眼をしており、奇襲や不意討ちといった小細工も通用しないだろう……
剱鴉を一言で現すのなら"磨き上げられた剣"であり
その剣を手にし、振るうのは人の心を捨てた氷の化身、氷華。
この場から生還できる可能性は限り無く無に等しい……
桜空《・・・・・あの笑い方・・・・・まさか・・・・・》
(桜空はあの癖のある笑い方に、どこか聞き覚えがあったものの、確信が持てなかったのと、今は狼谷達の救出が最優先すべきことである為、引き止めずに中川の後から目的地へと辿り着くと、表情が凍りつく・・・・・
狼谷は片腕を失い、他の皆も多くが瀕死、もしくは既に事切れていた・・・・・
桜空は、ただただ唖然としていたが、狼谷のお前らだけでも逃げてくれという言葉を聞いた瞬間に、表情が変わり狼谷の胸ぐらを掴む・・・・・)
>>614、615、616
>>617
狼谷
「……!!
何をしているんだ……!?
お前は早く逃げろ……!お前は敷地の外に出れば後は異能で逃げれるんだ、俺のことはいいから早く行け……!!」
狼谷は既に命を捨てる覚悟が出来ていた。
いや、最初に八咫烏に離反すると決めた時から命を失う覚悟はあった。
ましてや、それが自分の認めた男を守るためのものであるのだから何の後悔も無い……
桜空が脱出しようとする動きに合わせて自分が全力で剱鴉に攻撃することで桜空、中川、紀の三人だけでも逃げられるだけの時間を稼ごうと考えていた。
自分の命を捨てても、勝ち目の無い相手に対しても決して折れること無く挑みかかるその姿は、どれだけボロボロにされようと、どれだけ殴られたり罵詈雑言を浴びせられようと、桜空達を守ろうとしていた薫の姿を想起させるかもしれない……
>>617、618
「…………」
いつもの余裕が消え失せ、険しい表情のまま思考に浸る。
正直なところ、ここでどうするのか決めかねていた。
一斉に立ち向かうなら狼谷の激しい制止が入るだろう。実際自分の推測でも返り討ちに遭う可能性は高い。逆に全員で撤退するのも、同じく狼谷が反対するので駄目だ。
かといって、彼の要望通り囮になってもらうとしても、今度は桜空が割って入る。
堂々巡りというやつだ。どこか違う視点での解決策が要る。
「…………」
考え抜いた末、行動に移る。
剱鴉の背後の空間にナイフを生成。距離の空いた状態なので通常よりも遅いが、そこは必要経費だ。そして生成が完了すると同時に、彼女の背中へ飛ばす。一連の行動はその場から動かず、僅かな身動ぎすらなく完遂してみせた。
桜空と狼谷の衝突が避けられないのなら、いっそのことそれを利用する。彼らの口論という行動をデコイとして、敵の気が逸れたところに後ろから不意討ちを行う。
これが隆次の考えた結論だ。
>>619
《カコンッ》
剱鴉
「不意討ちとは随分とつまらない真似をする。」
背後にて、自然に起こることのない異音が聞こえると、即座にそれが他者による背面からの奇襲である事を察知し、振り返り際に大太刀をしまったまま鞘によって形成されたナイフを中川に向けて弾き返して対処しようとする。
剱鴉にはこれまでの蟲鴉や水鴉のような油断や慢心は何処にも無く、常に冷静に周囲の状況を分析し、攻撃に備えている彼女には一瞬の隙も無く、奇襲や不意討ちと言ったものは剱鴉には通じないだろう……
まともに戦おうとすれば全滅する…
不意討ちや奇襲も通じない…
逃げようにも唯一の出入口は剱鴉の後ろ…
剱鴉
「姑息な真似が出来ないように退路も絶たせてもらう。」
《ヒュカカカッ》
剱鴉の右手と、彼女が背負った大太刀が一瞬だけ激しくブレたと思いきや、その次の瞬間に三人が通って来た大穴の天井部分が切り裂かれ、人工建材によって作られたコンクリート塊や合金の鉄骨や鉄板が落下して退路を塞いでしまう……
大穴へ戻ってこの場から離脱すると言う策さえも潰そうとする。加えて、剱鴉が見せた攻撃の速度や攻撃範囲は明らかに人間の域を超えており、刻一刻と状況は絶望的なものへ変わってしまっていく……
だが、桜空は相手の異能を打ち消す鉄甲があるため、これを使って剱鴉の後ろにある扉を通って外へ脱出すればそのまま桜空の異能でアジトへ帰ることが出来るだろう。
問題はそれを剱鴉が大人しくさせてくれるかどうかだ……
桜空「ふざけんな!!!!!てめぇの状態よく見ていいやがれ!!!!!そんなボロクソの状態で何ができんだ!?言ってみろ!!!!!次まだ同じようなこと言ったらぶっ飛ばすからな!!!!!」
(桜空さは狼谷の自分の命を投げ出してでも自分達を守ろうとする行動に怒りを顕にして怒鳴りつける・・・・・
過去の大切な人と重なる部分があるからか、桜空は尚のこと狼谷を置いて逃げるだなんて考えられないのだろう・・・・・
桜空は怒鳴っているが、同時に少し涙目になっているようにも見える・・・・・)
>>618
桜空「・・・・・中川、紀と中川を頼んだぞ、こいつは俺が対処する・・・・・」
(中川の不意打ちも不発に終わり、紀は意識不明、狼谷は片腕切断の重症、となれば今異能を打ち消すことが出来る鉄甲を付けた自分が戦い、狼谷と紀の二人のことは中川に任せた方が最善の策だろう・・・・・
桜空は、剱鴉に立ち向かう決意をする・・・・・)
>>619
桜空「・・・・・お前の相手は俺だ、他の奴らには手を出すな」
(桜空は、剱鴉の顔を見ると、仲間達には手を出さないという条件を叩きつけ、お前の相手は俺だと告げる・・・・・
正直、相手から見たら桜空程度、ただの生意気なクソガキほどにしか見えないだろうし、鉄甲を付けていたとしてもそれでも純粋な戦闘力に大きな差があると思われるが、それでも桜空は怯むことなく立ち向かう・・・・・)
>>620
>>桜空
狼谷
「………………ッ!!!」
狼谷は桜空の言葉を聞くと黙り込む……
異能者であると同時に十二鴉屈指の実力を持つ自分でさえ何の対抗も出来ずに一方的に攻撃されていたにも関わらず、異能が使えず、小柄でありながらも決して臆すること無く剱鴉と対峙するその姿を狼谷は見ていることしか出来ない……
剱鴉
「誰一人この場から逃がすつもりはない。
裁きの剣から逃れる術など無いぞ咎人ども。」
桜空が自分に向かってくると言うことがわかると、剱鴉は強烈な殺気を放ち、桜空の戦意と覚悟を挫こうとする……
剱鴉の放つ殺気は形無き、心を切る刃であり、自らの命の保身を考えたり、自分自身よりも大切なものを持たない悪人であれば即座に戦意を失い、死を受け入れざるを得なくなる程の強い殺気となっている。
剱鴉
「来い悪党、一人残らず斬り捨てる……!」
《スッ》
剱鴉は両足を前後へ向けて広げ、腰を落としつつ、右手で大太刀の柄を握り、左手で大太刀の鞘紐を掴んで独自の構えを取る。
一歩でも前に踏み出せば数多の剣擊が万人の命を刈り取る死の旋風となり、全員の命を無慈悲に奪おうとするだろう……
剱鴉は"正義の剣"の象徴だ。
そして……剣とは古来より力を示してきた……
無慈悲なる正義の力を前に命を拾う術はあるのか……
桜空「・・・・・それじゃあ、いかせてもらおうか・・・・・」
ダッ・・・・・!
(桜空は、先ほど素鴉と戦った時のように、物凄いスピードで突進してくる・・・・・
昔は守られる立場だった桜空は、いつも近くで守ってくれる人を見てきた、今度は自分が守る側になるのだ・・・・・
桜空の表情と行動に、迷いも恐怖もなく、ただ仲間を守りたい気持ち一心で体が動いていた・・・・・)
>>剱鴉
>>623
剱鴉
「正面からとは……笑止……!」
スピードには自信がある。
愚直なまでに真っ直ぐ此方へ向かって来る桜空を見て、剱鴉は居合い斬りの要領でコンマ数秒の間に横薙ぎに大太刀を振るい、横に広がる巨大な斬擊を一つ放つと、再び鞘へ納める。
迎え撃つようにして放った斬擊は左右に動いて回避するにはあまりにも大きすぎるため、下手に方向転換しようとすればそのまま切り刻まれる事になってしまうだろう…
桜空「おらぁっ!!!!!」
ゴッ・・・・・!
(桜空は鉄甲武装した方の腕を前に突き出し、斬撃を防御しようとする・・・・・
正直、これが成功したとして、これを繰り返している内になんとか出来るとは思えない、むしろ戦いながらどうやってこの状況を打破し、敷地内へ出てファーストのアジトまで戻るかが肝心だ・・・・・)
>>624
《シュオッ》
剱鴉
「……………!!」
剱鴉の放った斬擊が桜空の身に付けた対異能の鉄甲に当たると、その斬擊は形状崩壊を引き起こし、そのままバラバラになって空気中に吸い込まれるようにして消えていく。
それを見た剱鴉は一瞬何が起こったのかわからずに驚くものの、直ぐに冷静さを取り戻し言う。
剱鴉
「………その鉄甲は……
素鴉から奪った物か。小癪な真似をしてくれる……」
>>620、626
返されたナイフを減速させ、側面を摘まむように受け止める。
「ちぇー、割と頭捻って考えた策なのによ」
内心の焦りを悟られない為、わざとらしい位に軽口を叩く。
(わかっちゃいたが……こいつ、口だけじゃねえ)
『本物』だ。達人だとか超人だとか呼ばれる類いの。
顔色一つ変えずに対応されたとなると。小手先は通用しないと断じていい。
格の違いは明確、その上で遊び無しで潰しにくる。
(今回ばかりは、お手上げかねぇ)
太刀筋も全く見えないときた。ここらが年貢の納め時となるか。
桜空と狼谷については、どうやら桜空が戦う方針になったようだ。
「了解です大将、二人のことは任せて下さい」
紀と狼谷を守って欲しいという命令を聞き入れ、動けない紀を鎖で巻き付け、部屋の隅まで運んだ。
(忘れないで下さいよ大将、仲間が死んだら嫌なのは、なにもあんただけじゃないんだぜ?)
怯むことなく立ち向かう彼の背中を見て、祈る。
祈ったところで何も変わらないかもしれない。だが、そうせずにはいられなかった。
「さ、旦那も下がってくれ。五体満足かつ二人がかりなら、まだ幾らか希望はある」
最低限の勧告を終え、自身も前へ出る。
「おっとお嬢ちゃん、俺とも遊んでくれよ?」
言いながら、パチンコ玉指弾を放つ。
桜空「そういうことだ、さぁ、続きを始めよう・・・・・」
(攻撃が打ち消されたことに驚くも、さすがの分析力といったところか、すぐに異能を打ち消すことができる鉄甲による防御だということに気づかれるも、こちらも気づかれたところでどうというわけではない・・・・・
相手が本気ならこちらも本気、一歩も引く気は無い・・・・・)
>>626
桜空「・・・・・中川、わかってんのか?あいつの強さは俺達二人が相手になったところでどうにか出来る強さじゃねぇ・・・・・俺達二人の強さが普通に1+1=2の強さなら、あいつはそれが10にも100にもなるんだぞ・・・・・」
(自分に続き応戦してくる中川に、相手の強さがわかった上での行動なのかどうかを問いかける・・・・・
今目の前にいる敵は、氷華と同じくらい規格外の強さを誇る、体の芯から身震いするほどに計り知れないほどの力があるのは確かであり、さっきの巨大な蜈蚣よりも強いだろう・・・・・)
>>627
>>627
>>628
狼谷
「お前ら……!
ったく、助けに来たのは俺らだってのに逆に助けられるだなんてな……情けねぇ話だ……」
本来なら年長者であり、この解放作戦の立案者であった自分が率先して桜空や中川達の事を守らなければならなかったのだが、予想を超えて度重なるイレギュラーが起こり、守るどころか守られる事になった自分に対して不甲斐なさを覚える……
剱鴉
「……いいだろう、それなら……私の技も見せよう。」
【無明流 壱の太刀「一閃」】
《ズッ》
剱鴉は中川が此方に向けて腕を翳したその瞬間に合わせて身を屈めて居合い斬りの姿勢を取る事で攻撃の構えと同時にパチンコ玉の回避を行い、中川に向けて横薙ぎに一太刀振るい、青白い斬擊を放つ。
単発の攻撃ではあるものの、その分、込められた速度と切れ味は凄まじく、大規模な防御を形成するための時間を与えないと同時に、下手に即席で形成したもので受けようとすればその防御もろとも切断されてしまうだろう……
桜空「情ねぇもクソもねぇ、お前は今は黙って守られてろ・・・・・」
(狼谷は片腕を失ってはいるものの、まだ喋れる余裕があることから、現状命に別状はないと見ていいといったところか・・・・・
が、その時、中川に向けて青白い斬撃が放たれるのを見た桜空は「危ねぇっ!!!!!」と叫び、中川を突き飛ばす・・・・・
あまりの速度から、鉄甲で防ぐ余裕すらなく、桜空の背中をかする・・・・・)
>>629
>>630
>>中川
剱鴉
「……よく避けた。
だが、次はどうかな?」
【無明流……】
剱鴉の放った青白い斬擊は桜空の背中を掠めると、10m後方の壁に深い切断跡が刻まれ、壁の中にあった合金性の鉄骨やコンクリートさえも豆腐のように切り裂かれてしまう……
一撃必殺の威力を誇る強力な斬擊を繰り出す…
これが剱鴉の持つ異能の真髄なのかは定かではないものの、更なる追撃を加えるべく、再び居合い斬りの構えを取り始める。
桜空「くそっ・・・!次から次へと・・・・・!」
(背中からポタポタと血を滴らせながら、桜空はなんとか体勢を直すものの、今の一撃でかなりのダメージを受けたことから、長期戦に持ち込むわけにはいかない・・・・・
手負いじゃない状態で戦ったところで、到底元から勝ち目はない相手だ、素鴉のように情けなど持ち合わせていない・・・・・)
>>631
>>631
「だったらどうして一人で突っ込んだんです? ここは言いっこなしですよ」
桜空の問いに人懐っこい笑顔で答えた。
彼の性格はよくわかっている。というよりバカ正直すぎて嫌でもわかってしまう。そんな彼がこの状況でとる行動など火を見るより明らかだ。
そして自分は、所属している組織のリーダーが危機に陥って、それを放置できる性分でもない。故にこの行動は必然といえた。
「どのみち奴(やっこ)さんは簡単には逃がしちゃくれねぇんだ。それなら少しでも可能性のある方に賭けましょうや」
「!」
剱鴉はとんでもない反応速度で対応、すかさず水平に一閃、浅葱色に輝く剣圧を飛ばした。
(防ぐのは……多分無理だ!)
ならば跳躍で躱そうと、足裏からコイル式ジャンプ台を形成しようとした瞬間、
「ごわあっ!?」
突如横から襲ってきた衝撃に姿勢を崩す。何かと思い視線を向けると、桜空が自分を突飛ばしたらしい。
「た、大将! これぐらい自分で対処できますって!」
完全に余計なお世話だった。むやみやたらと仲間を助けたがり、結果自身が傷つくのも厭わないのはもはや悪癖といえる。
どうやらありがた迷惑という言葉は、彼には存在しないようだ。
(まあそこが大将の美徳でもあるんだがな)
「お気持ちだけ受けとっときますよ!!」
呆れ気味の苦笑いで感謝を述べ、受け身をとる。
(って、もう次が来んのか!)
あれだけの技を使っておいて、まるでジャブのように連続で放つとは。
「やっぱ、次元が違うなあ」
こめかみに冷や汗が流れるも、反撃は怠らない。
今度は砂利の投げてのショットガンだ。太刀で防ぐにしても、それなりの動きをしなければならない。
>>632
>>633
【…伍の太刀「月輪」】
剱鴉は残像すら残らぬ速度で抜刀し、数回刀を振るい再び納刀する。
端から見れば刀を抜いた次の瞬間に再び鞘に戻しているように見えるだろう。
剱鴉が新たに放った斬擊は、先程の"一閃"とほぼ同等の速度でありながら、三日月状の特殊な形状をしており、斬擊そのものが高速で回転することで斬擊の起動が不規則なものとなっている。
避けようにも、斬擊そのものが回転しているため紙一重での回避は困難であり、大きく回避行動を取らなければならない……そんな斬擊が桜空に三つ、中川に二つ放たれてしまっている。
桜空達の勝利条件は剱鴉の後ろにある出入口からアジトの敷地外へ脱出する事なのだが……立ちはだかる壁はあまりにも厚く高い……
《ガガガガガガッ》
剱鴉の放った砂利のショットガンもまた、剱鴉の放った浅葱色の月輪を連想させる斬擊により阻まれ、弾き飛ばされてしまう……
攻撃は最大の防御
剱鴉はそれを体現した戦闘スタイルをしている。
攻撃の流れや動きを決まった型に合わせることで徹底的に無駄を省いた事で、磨き上げた圧倒的なスピードと、全ての力を斬擊に込める事で実現した破壊力。
我流で磨き上げた動きであるため、例えこの場に剣術に秀でた者であってもその動きを見切ったり、先読みする事は難しかっただろう。
桜空「それじゃあもし対処できなかったらどうするつもりだったんだ!?」
(これくらい自分で対処できると言い張る中川に対して、それじゃあもし対処できなかった時はどうするつもりだったのかと問いかける・・・・・
敵の放つ一撃一撃は、人体など容易く切断してしまうほどの恐ろしい威力を誇っており、もしまともに直撃してしまえば即死してもおかしくはない・・・・・)
>>633
桜空「くっ・・・・・!」
ゴガガッ・・・・・!
(必死に3つの斬撃を鉄甲で打ち消すものの、段々と桜空の体力も底が見え始めてくる・・・・・
逃げ道はすぐそこにあるのに、立ちはだかる壁があまりにも大きい上に、とても二人がかりでも足元にも及ばないほどに力の差かありすぎる・・・・・
このままでは全滅は免れない、もうこの手しか残っていない・・・・・)
桜空「おい、斬撃女・・・・・次で決めてやるぞ・・・・・」
>>634
>>636
剱鴉
「……いいだろう、それならお前の宣言通り……これで終わりだ……!!」
【無明流 参の太刀「逆神」】
強さを求める過程において、女であることを捨て、その言動や戦闘スタイルを中性的、或いは男性的にしている剱鴉にとって、桜空の言葉に対する自分への挑発の中に女と付けていた事に対して強い苛立ちを覚える。
そして攻撃を発動すると決めると再び、瞬間的に抜刀し、今度は下から上へと斬り上げるように刀を振るい、三つの浅葱色に輝く斬擊をほぼ同時に放つ。
今度は右腕の鉄甲だけでは相殺しきれないように、三つの縦斬擊が横一列に並んでおり、それぞれの斬擊の間隔は30cm程である上に、斬擊の高さは2mにも及ぶため、斬擊そのものに周囲の空気を巻き込んでいるため、下手に斬擊の間を潜り抜けようとすれば左右の斬擊に引き寄せられてズタズタに切り裂かれてしまうだろう……
斬擊そのものも幅が40cmもあるため、幅2m以上のキルゾーンがまるで壁のように迫ってくる……この技は前方にいる相手を切り刻む事に長けており、
周囲の空気を巻き込んで擬似的な引力を持っているからか、見た目以上にその斬擊による攻撃範囲は広く、無傷で避けるのも難しくなっている……
剱鴉
「(何かを仕掛けてくることはその言葉からわかっている。
だが、前面から迫る刃の壁を前に鉄甲だけでは完全に防ぐことは出来ないし、左右に飛び退いたとしても、着地するより先に次の一撃で確実に仕留められる)」
剱鴉
「(反撃する隙など与えない。
行動の選択肢を奪い、確実に仕留める……!)」
剱鴉は攻撃を放つと同時に、次の行動を予測し、早くも次の技を繰り出すための準備を行い始めている……その蜘蛛の糸程の隙も無い剱鴉の警戒心と、思考を即座に行動に変えることの出来る機敏さが脱出のための最後の壁となっている。
桜空「それじゃあ終わらせてもらうぞ・・・・・!!!!!」
ガッ・・・・・!
(桜空は敢えて鉄甲を外して斬撃へと投げつけるという、どう考えても自分が不利になる行動を取る・・・・・
だが、これこそ桜空の賭けに出た作戦、人間は窮地に追い込まれた時ほど自分の保身に回るものだが、桜空は敢えて異能が封じられている自分を今まで守ってきた鉄甲を外して斬撃に投げつけ木っ端微塵にしてまで、仲間達と一緒に助かる道を選んだ・・・・・
三つの斬撃の内二つが鉄甲を巻き込み、そのまま相殺させてゆくのに対して残った一つの斬撃はまだ活発なままだが、一つだけなら何とかギリギリで対処できる・・・・・
鉄甲が巻きこまれて砕けて残骸になってゆくのと同時に、桜空は猛スピードで突進して残り一つの斬撃を回避しながら、剱鴉の前まで近づいてくる・・・・・
桜空の眼には、迷いも躊躇いもなかった・・・・・)
>>637、638
>>638
「げぇ、マジかよ!」
タチの悪い冗談みたいな現象が次々と起こる。
砂利のショットガンもあっさり対処され、その次は回避も防御も難しい技が来る。
「っ……まだだああああっ!!!」
神経が焼き切れんばかりの気迫で金属形成。
硬度。ただ硬度のみを求めて作り上げたそれは数十cm四方と非常に小さく。板きれと呼ぶことすら烏滸(おこ)がましいものとなった。
が、
(これで十分!)
それを掌に張り付けるように操作し、回し受け。
「っでりゃあああっ!!!」
掌で円の動きを行い、擬似的な防壁を作る。
甲高い金属音が響き、かろうじて切り刻まれる事態は回避した。
(だが、守ってるだけじゃ勝てはしねえ……)
このままでは進展はのぞめない、何とか打開しなくては。
「はぁ……あのね、そこで対処できないようなら、そもそも立ち向かうこと自体してませんぜ」
未だに他人の意見に耳を貸さないリーダーに若干失望しかける。
更にいうなら、そこで『誰のせいで対処しにくくなったのか』を考えられない時点でまだまだ未熟という他ない。
「って、ああくそ! 言ってる暇はねえか!」
こうしている間にも猛攻は押し寄せる。
「はあああああっ!!」
先と同じ小型金属板での回し受けでしのぐ。確かに凄まじい剣技だが、流石に目が慣れてきた。防いでから呼吸を整える余裕くらいは出てきている。
「……つっても」
こちらからの攻め手がまるでないのが現実だ。まだ互角というには程遠い。
(どうする、何をやってもあのバカげた剣術で細切れになっちまう)
コンクリートや鉄骨まで容易に切断したところを見るに、下手な金属ではすぐ両断されるのがオチだ。
(ん? ちょっと待て。細切れ、細切れ……)
しかしその時、隆次はあることに気付く。
(……いっちょ、試してみっか!)
この土壇場で、即席ながら奇策を練り上げる。
「そぉらっ!!」
剱鴉の回りに、出来る限り大量の砂を生成。それらを纏わりつかせようと殺到させる。
どんな物でも切り刻まれるというのなら、はじめから極小の粒になっているものを、天文学的な数でぶつければどうなるだろうか。
それだけでなく、桜空が無茶を押し通し決死の突撃を敢行した。
流れを変えられるとするならば、この瞬間をおいて他にない。
>>639
>>640
剱鴉
「……問題ない、斬り伏せる……」
【無明流 陸の太刀……】
剱鴉
「……目障りな……」
桜空が鉄甲を投げつけ、鉄甲が破壊されるのと引き換えに斬擊二つを打ち消し、残った斬擊も回避したのを見て、予想とは少し違ったが、相手が足を止めているのならば好機と見て、間髪入れずに追撃を仕掛けようとするものの、突如として自身の周囲に大量の砂がまるで砂嵐のように巻き起こり、視界を奪われた事で桜空への追撃を中止せざるを得なくなる。
剱鴉
「……無駄な足掻きだ。」
【無明流 捌の太刀「滅陽」】
《ゴガガガガガガガガガガガガッ》
剱鴉は静かに目を閉じ、瞬時に自分の周囲に無数の浅葱色の斬擊群を放つ。この斬擊は先程の"逆神"と同じように周囲の空気を巻き込んで飛んで行く斬擊であるため、自身の周囲を舞う砂の流れを掻き乱すと同時に斬擊と共に遠方へ弾き飛ばす事で再び視界を取り戻してしまう……
この技は本来ならば多数の敵に囲まれた際に放つものであるため、これまでのものとは違って精度は低く、ある程度の距離を取っている二人に当たることは無い。
剱鴉
「……ふん、苦肉の策も徒労に終わったな。
悪は悪らしく惨めに死に絶えるがいい。」
【無明流 弐の太刀「双極」……】
狼谷
「させるかよ!!!」
《ドゴオォォォォォォッ》
既に桜空は鉄甲も無い事や、中川の異能の性質が土や砂の生成と操作であり、それに対抗するための手段も把握した剱鴉が手にした大太刀を鞘から抜き、二人を同時に斬り刻むべく神速の剣技を放とうとしたその瞬間……
狼谷が残った左手を地面に叩き付け、異能の範囲を剱鴉の近辺に集中展開する事で、常人であれば立っている事すら出来ない程の凄まじい大気圧を轟音と共に剱鴉にかけ、剱鴉の機敏さを封じ、その動きを一時的に鈍化させる。
狼谷
「この技もそうは持たねぇ……今のうちに行け!!!」
これで剱鴉は繰り出せる技の速度や移動速度は大きく鈍化させる事が出来るのだが、右腕を失っている現状ではせいぜい食い止めておけるのは一分足らずであり、同じ手は二度も剱鴉には通じないであろう事から、今のうちに三人に此処から脱出して欲しいと言う……
剱鴉は狼谷の起こした大気圧によって全身に強烈な負荷がかかっているものの、その瞳は変わらずに桜空と中川を捉えており、反撃をしかけて来たとしても即座に対応できるように手にした大太刀を構え続けている。
剱鴉にとって見れば、一分が経過した瞬間に最速の一撃を放てばそれだけで勝利出来る上に、反撃として攻撃されたとしても自分の動体視力を使えば容易く対処できると言うことから微塵も焦っている様子は無く、ただただ静かに……冷静に戦況を伺っている。
桜空「・・・・・俺は・・・・・もう、失いたくないだけなんだ・・・・・だが、それがお前達にとっての足枷になっていたのかもしれないな・・・・・」
(中川の言葉を書けば、小声で呟く・・・・・
思い返してみれば、失ってばかりの人生だった・・・・・
普通の幸せな日常、両親、姉との楽しい日々、薫先生、そして今この時も・・・・・
だが、それは客観的に見てみれば、足手纏いにもなりかねないほどの守護心だったのかもしれないと、気付かされる・・・・・)
>>640
桜空「・・・・・」
《ふざけんな・・・・・今のうちに行けだと・・・・・?それじゃあお前はどうなるんだ・・・・・?》
(桜空の体は、気づけば自然と動いていた・・・・・
桜空の考えは、揺るがず生き残った全員での脱出・・・・・薫先生からの教えもあるが、それとは別で桜空自身には命が一番大切なモノであるということをわかっていた・・・・・
ふざけるな、お前も一緒に逃げるんだ、帰ったら命と引き換えに俺たちを逃がそうとしたことを愚痴ってやる・・・・・
そう思っていたその時・・・・・)
紀「馬鹿が!!!!!逃げるなら今でしょうが・・・・・!!!!!」
ガッ・・・・・!
(少し前に意識を取り戻していたが、ここで戦闘に参加すれば他の三人の足手纏いになる上に、能力のデメリットも大きい自分では役に立たないと思っていた紀が、満を持して動き出し、桜空の服の首の部分、中川の腕をを掴んで三人で脱出口へと向かう・・・・・
狼谷が作ってくれたこの敵を足止めする為の一分、無駄にするわけにはいかなかった・・・・・)
>>641
>>642
狼谷
「……ああ、すまねぇ……」
気絶から回復した紀がこの場に残ろうとしていた桜空と、中川の二人を連れて出口に向かい始めたのを見て、狼谷は優しく微笑みながら、三人に謝る……
だが、狼谷の胸中に悔いは殆ど無い……
八咫烏に入ったその時からまともな死に方が出来るとは思わなかったし、数多くの同胞や戦友達が息を引き取る瞬間を幾度と無く見てきた……
こうなる事は始めから予想できていたのだが……
叶うことなら……桜空の理想が叶った世界……
八咫烏が変わった後の世界を見てみたかった事だけが心残りだ……
三人は動きを封じられている剱鴉の傍を通って敷地外へ出ることに成功する……
>>643
「くぅ〜、これも、ダメか〜」
苦虫を噛み潰したような表情で洩らす。桜空の特攻と自分の砂撃が合わさってもなお崩せない。
またもや猛攻に晒されるのかと身構えた瞬間、予想外の攻撃が剱鴉を襲った。
「っ! 旦那!?」
なんと狼谷が命懸けの拘束を仕掛けていた。この期に及んで自らを犠牲にするつもりらしい。
「ったく、やれやれ……二人揃って自己犠牲か」
その献身っぷりには頭が下がる。他人の為に命を投げ出すなど、滅多にできることではない。
「けどまあ、俺も人のこと言えねえがな!」
彼の命令に背き、再び剱鴉の周囲に砂を殺到させる。今度は『散らされたものを操作している』だけなので、手間や消耗は大幅に抑えられた。
(やっぱ、刃物に対しての砂は正解だったな)
直接的な破壊はされない分、幾らかこちらにアドバンテージがある。
「うおっ!?」
またも意外な事態。ここで紀が動いたのだ。狼谷と再三の口論を始めようとした桜空と自分を引っ張り、脱出しようと走り出した。
彼女の有無を言わさぬ振る舞いに、諦観のため息をつく。
「へっ、ありがとよ紀ちゃん……けど」
もうひと仕事だけやらせて貰う。
剱鴉に対し、砂だけでなく彼女の足元から無数の金属針を伸ばす。
さっきまでなら無造作に捌けただろう。しかし超大気圧の拘束に加え、砂まで被さろうとしているこの瞬間ならばどうだ。
斬撃では壊せない砂と、風では動じない金属針が彼女を捕らえんとする。
「何がなんでも全員で生き残る」
もう、誰も失わない。仲間を切り捨てての生存などまっぴら御免だ。
「そうだよな? 大将!!」
そう言い、不適な笑みを桜空へと向けた。
>>644
剱鴉
「ギリッ……」
【無明流 肆の太刀「黄昏」】
《ガガガガガガガガガガガガッ》
剱鴉は自身の視界を奪う砂、動きを封じる大気圧、そして足元から迫る金属針を見て、致命傷を避けはするものの、剱鴉の着ている藍色のコートに針が刺さり、その下に着ている黒いズボンや藍色のシャツにも針が掠った事でボロボロになっていく。
執念と意地だけで視界も動きも封じられている中、足元から伸びる針から致命傷となる部位や、手足と言った言動に支障の出る場所を避けているところから彼女の意思の強さや、身体能力の高さが伺える。
剱鴉は対抗策として、構えた大太刀を小さく振るう事で自身の周囲に大量の斬擊を飛ばし、先程の"滅陽"とほぼ同じように周囲の砂を吹き飛ばし、針も全て切り裂く事で対処する……
だが、振るう刀の範囲が狭くなり、斬擊そのものも半径3m程で自然消滅してしまうため、桜空達の元にまでは届くことはない。
狼谷
「ハッハッハッ!
とっくに死ぬ覚悟は出来ていたんだが……こうまでしてくれるのなら……もう少し足掻いてみるか!!!」
剱鴉
「……………!!?」
《ドゴオォォォォォォッ》
中川が生成したものの、切り裂かれた金属破や瓦礫を風によって一点に集めて巨大な塊に変え、それを剱鴉に向けて砲弾のようにして打ち出す事で技を発動した直後の剱鴉にぶつけ、剱鴉の体を吹き飛ばし、そのまま瓦礫の下敷きにする。
紀「・・・・・あなた達は本当に馬鹿ですね、せっかくあの馬鹿が体を張ってまで私達を逃がしてくれたというのに・・・・・」
(紀は二人を連れて脱出する際、狼谷の表情がかすかに見えた・・・・・
あれは、どこかまだ悔いが残っている表情だった・・・・・
だが、今更引き返して加戦したところで、ボロボロの自分達が束になってかかったとしても相手に適うわけがないどころか、狼谷の意思を無駄にすることにもなるし、ただただ足手纏いになるだけだと思っていた・・・・・)
桜空「・・・・・その通りだ、アイツだってここまでしてくれたんだ、借りを返さずに死なれちゃあ困る・・・・・」と言い、紀の忠告に刃向かうように、中川の意見に賛同する・・・・・
一人でも、全員生きて帰るという意志に賛同してくれる仲間がいるだけでも、桜空にとっては力になった、気がした・・・・・)
>>643、644、645
【皆様方、新年、明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願い致します!】
>>646
紀と桜空の二人の眼前には既にあと3m程に出入口となっている、ガラスが割られた自動ドアが見え、そのドアの向こうには少し離れた先にあるビルの明かりや、マンション、アパートまで見えており、異能封じの鉄甲による副作用や、建物そのものを構築している空間移動の作用が薄れており、直ぐにでもファーストのアジトにまで撤退できる状態となっている。
このまま外に出ればその瞬間にでも逃走する事が出来るし、流石の剱鴉も今では瓦礫の下に潰されていることから、紆余曲折があったものの、最終的には桜空達に運が回り始めている。
【あけおめです!!】
桜空「・・・・・行くぞ、お前達・・・・・」
ダッ・・・・・!
(桜空は、急いで来た道を戻り始める・・・・・
狼谷を救い、一緒に助かるとするならばチャンスは今しかない・・・・・
紀は反対気味の様子だが、中川は狼谷を助けることに賛同してくれた、桜空達はまだ知らないが、剱鴉も瓦礫の下敷きになっていることから、狼谷を助けるには丁度過ぎる状況であり、こういうのを天は我に味方した、と言うのだろうか・・・・・)
>>647
【今年もバリバリなりきりしていきましょう!】
>>648
狼谷
「ああ、行くぞ……!」
《ダァン》
自由まで後数歩だけと言ったところで、突如として辺りの空気を切り裂くようにして銃声が鳴り響き、狼谷が左足を撃ち抜かれ、そのまま床に倒れ込んでしまう……
見渡しても周囲には誰もおらず、何処から狙撃されたのか、狙撃手は誰なのかはわからないものの、絶望は重なってしまう……
【無明流 肆の太刀「黄昏」】
《ガガガガガガガガガガガガッ》
剱鴉
「まだだ……まだ終わってなどいない!」
剱が手にした大太刀から周囲に多数の斬擊を形成して自分の身動きを封じていた瓦礫をバラバラに切り刻み、そのまま弾き飛ばす事で姿を見せる……
【ですね!お願いします!!】
桜空「終わりっつってんだ・・・・・!!!!!」
ドガッ・・・・・!
(まだ終わっていないと怒りを顕にしながら瓦礫を切り刻み出てきた相手の背後から頭部へと蹴りを入れる・・・・・
瓦礫から出るのに必死で先程よりも不意打ちを比較的仕掛けやすい今が反撃のチャンスだと見た桜空の決死の覚悟での一撃だった・・・・・
これで相手が少しでも体勢を崩せばその間に全員での脱出は成功するだろう・・・・・)
>>649
>>650
《ズッ》
瓦礫を切り裂いて剱の前へ行こうとした桜空の脳裏に強烈な死のビジョンが映る……
剱鴉の大太刀の間合いである2m圏内に入った瞬間に蹴りを出そうとした桜空の伸ばした脚もろとも脳天にかけて一直線に、一刀両断されると言うものだ。
狼谷の瓦礫砲によって吹き飛ばされた事から剱の後ろは壁であり、背後に回り込むことは出来ず、正面から行こうものならものなら、この危険予知した未来が現実となってしまうだろう……
>>651
「させるかよォ!!」
それを放っておく隆次ではなかった。適当な大きさの金属板を飛ばし、桜空を押し出すことで致命の間合いから離す。当然金属板は無惨に両断された。
(マジで化け物かよこいつは!! 冗談キツいぜ……)
あれ程の策を講じても尚、僅かな時間稼ぎが関の山とは。
「っと、今助けるぜ旦那ぁ!!」
鎖分銅を形成、すかさず狼谷に巻き付けこちらに引き寄せた。
(このタイミングでの狙撃……いよいよもって王手をかけにきたか!)
しかしこちらも脱出まであと一歩だ。悔いの残る結末にする気など毛頭ない。
【遅れて申し訳ありません! リアルが立て込んでましたので!】
>>652
>>桜空
剱鴉
「……今の銃声は……ルインか?
……だが先ずは奴らを仕留める……!!」
【無明流 伍の太刀「月輪」】
剱鴉は今まさに桜空を両断すべく大太刀を振るおうとしたものの、二人の危機察知を前に桜空を両断する事に失敗し、身代わりとなった金属板をまるで豆腐のように殆ど抵抗を受けること無く切断する。
狼谷の左足に銃弾の傷があるのを見て"ルイン"と呼ばれる存在の名を口にするが、直ぐ様四人を殲滅すべく最初に放った時よりも速度が大幅に上げられた回転する三日月状の斬擊を五つ放ち、逃げられる前に仕留めようとする。
だが、既に出入口の側にいる事から今なら桜空の能力を使えばファーストのアジトまで帰還できるだろう。
【年末年始は忙しいのでしょうがないですよ!】
桜空《今のは、マジで危なかった・・・・・》
(即座に脳裏に過ぎった死のビジョン、幻覚などではなく、本当に未来が見えたような、そんな不思議な感覚・・・・・
走馬灯の逆バージョンとも言えるような不思議な現象に理解が追いつかず、中川の助けがなかったら確実に斬られていた・・・・・
中川に礼を言いたいところではあるが、今はとにかく逃げることが最優先だと判断し、咄嗟に
「全員掴まれ・・・・・!」
と叫び、死の斬撃が迫り来る中、アジトへと全員で戻ろうとする・・・・・)
>>651、652、653
狼谷
「ああ……悪いな……」
狼谷は撃ち抜かれた左足を左腕で強く押さえ、出血を少しでも遅らせようとするものの、押さえた手からは大量の血が止めどなく溢れ続けており、狼谷の顔色も青白くなり始めている。
その出血量から察するに、狙撃手はただ動きを封じるために脚を撃ったのでは無く、脚の太い血管がある場所を精確に撃ち抜いて出血を止めることが困難に成るようにしていた事がわかってしまう……
どれだけ殺戮を繰り返せば、どれだけの命をこの手段で奪えば、ここまでの狙撃力を身に付けることが出来るのか……想像もしたくない。
また、剱の放った人間を容易く膾切りに出来る破壊力を有した回転斬擊が眼前にまで迫って来ている……一つの判断ミスが全滅に繋がってしまうだろう……
桜空「おい斬撃女ぁあっ!!!!!てめぇらのボスによーく伝えておけ!!!!!俺が絶対にお前ら腐った正義の鴉共を潰してやるってなぁ!!!!!」
スゥゥッ・・・・・!
(桜空は転送ゲートを出現させると、アジトへと移動する直前に相手へ上記を仲間を傷つけられた怒りを顕にしながら叫ぶ・・・・・
そして、相手の斬撃は当たる直前に転送ゲートが閉じてしまった為、そのまま桜空達を切り刻むことなく空間の一角を切り刻み不発に終わる・・・・・
コンマ一秒でも桜空達の行動が遅れていれば、確実に仕留められたであろう時差だった・・・・・)
>>655
>>653
瀕死に陥った狼谷を見て、駄目だと知りつつも焦ってしまう。
「チッ……嫌な手を使いやがる。昔やったゲームで見たことあるぜ」
眉間に皺を寄せ、嫌悪感を露(あらわ)にする。
わざと一発で仕留めず、他の敵を炙り出すために重傷を与える。プロのやり方だ。
「けど、あんたらの思い通りにはいかねえよ!」
すぐに不敵な笑みに切り替え、狼谷の大腿部に先程と同じく、針金で止血を行う。流石に輸血などは不可能だが、これで少しでも猶予は伸びるだろう。
「旦那、もう少しだけ踏ん張ってくれ……!」
そして桜空の肩へ触れる。すんでのところで転送が間に合い、漸く脱出に成功したのだった。
>>656
>>657
狼谷
「ぐおぉぉぉぉぉぉ……!!
痛ッ……死ぬ程痛てぇ……!」
桜空が転移した事で窮地を脱した。
狼谷が率いていた攻撃部隊の内の半数と、潜入部隊の全滅と言うように、ファーストと言う組織が深傷を負う事になってしまったものの、四人は生還する事が出来た……
また、狼谷が殿を勤めた事で攻撃部隊の半数は剱鴉から逃れることにも成功している。
中川が傷口を縫う際に、傷口を通る針に激痛を感じつつも、何時もながらの軽い皮肉を口にする辺り、一先ずは一命を取り留める事に成功したものの、それがどのぐらいの延命になるかはわからない……
剱鴉
「腐った正義……か。
私達をそうしたのはお前達の秩序への無関心からだと言うのに……
愚かな……」
四人の去った後、体に付いた土埃を払いながら、桜空が残した言葉に対する答えのようなものを呟くものの、その真意は現状では伺い知れない……
何が正義で何が悪なのか……
八咫烏との死闘はその答えを探すための試練なのかもしれない……
桜空「・・・・・中川、紀、狼谷・・・・・すまなかった・・・・・」
(桜空は、転送が無事に済みアジトへと帰還すると、すまなかったと言い土下座をする・・・・・
今回の件で、攻撃部隊や潜入部隊に徹したメンバーの多くが命を落としたことや、生き残ったメンバーを危険に晒してしまったのは、すべて自分の責任だ、償おうとしても償い切れない・・・・・)
>>657、658
>>659
狼谷
「いや、謝るのは俺の方だ。
ボスを救うためとは言え……采配ミスで大勢の仲間を失ったし、この二人にも危ない目に合わせちまった……俺の責任だ。」
アジトに帰還すると、狼谷は苦々しい顔をして視線を背けながら、コンクリートの壁に背中を預けて息を整え、今回の作戦における被害の大きさについて話す……
事前に確認した際には十二鴉が1,2人いるだけだったのが、実際には四人もいた上に、三羽鴉の剱鴉まで現れたと言う、完全なるイレギュラーが重なってしまっていた。
桜空「いや、元はといえば俺が捕まったのがすべての原因だ・・・・・」
(そう言うと、座り込んで頭を抱える・・・・・
自分は組織のリーダーでありながら、まんまと敵に捕まった上にそれが原因で多くの仲間を失った、生き残った仲間達も傷つけられた、何も出来ない自分が情けない・・・・・
桜空の絶望と悲しみは、大きかった・・・・・)
>>661
《ズズズズ……》
狼谷
「おいおい…八咫烏のアジトから脱出する間際とは随分と違うじゃないか……?腐った正義の鴉共を……潰すんだろ……?」
狼谷はもたれかかったコンクリートの壁から力無く床に座り込むと、切断されずに残った左手で左足の弾傷を強く抑えながら、転移前に八咫烏を潰すと言い放った桜空と、打って変わって弱々しくなった桜空を励ますように言う。
桜空「・・・・・あぁ・・・・・だが、お前達が傷ついたこと、他の仲間達が命を落としたことに変わりはない・・・・・」
(そう言うと「・・・・・完治は叶わないが、治療マシンでいくらか回復はするだろう・・・・・狼谷、立てるか・・・・・?」と、肩を貸そうとする・・・・・
桜空は今回の件でかなり精神的にも追い詰められたのか、声が弱々しい・・・・・)
>>662
>>663
狼谷
「………そうしたいのは山々だが……
左足の動脈を断絶されている……傷口を塞ごうと、血管そのものがやられている以上、内出血になるだけだ……
治療マシンも万能じゃない……これだけの出血、身体組織の破壊じゃ治る見込みもない……」
片腕を失っただけなら治療マシンに入って治癒を開始すれば、時間こそかかるものの、出血を回復し、切断箇所を塞いで治癒することも出来たのだが、最後に放たれた弾丸だけは例外だった……
一見すると銃弾が一発だけ左足に当たっただけに見えるが、脚にある太い動脈が完全に断絶して骨にまで弾丸が入っているため、中川が傷口を縫った事で体外へ流れる血は止まったものの、切断された動脈から流れる大量の血が左足に溜まってしまい、重篤な内出血となってしまっている。
血が血管を通って正常な流れに入れなくなった事から、そう時間もかからずに出血死してしまう事を悟っている。もし、これが通常の銃弾によるものであれば、ここまで重篤なダメージにはならなかったのだが、今回ばかりは俗に言う"当たり所が悪い"と言えるだろう……
狼谷
「……俺はもう助からないし、仮に助かったとしても片手片足を失った状態じゃ足手まといにしかならん……だから俺は……残された時間を……お前らに伝えたい事を話すために使おうと思う……」
死が目前に迫り、一層顔が青白くなり、左足の傷口からは内出血によって起きた黒い血膿が滲み出す中、生きていられる内に三人に言葉を伝えるために費やそうとしている。
自分が足手まといとなって生き続けるのではなく、仲間に後の事を託した上で命を落とすことを選んだ……
>>664
「…………」
こんな状況では、いかに隆次といえど茶化すことは出来なかった。
周囲の大気が質量を持ったと錯覚するような、重苦しい空気を吹き飛ばせるほど彼は破天荒ではなかった。
三羽鴉、よもやあそこまで力の差があったとは。様々な悪条件こそ重なったものの、複数対一で圧倒し続けてみせたその実力は驚愕に値する。
何らかの打開策を打ち出さなければ。
だがどうする、個々の戦闘能力を向上させる為の訓練など、成果はたかが知れている。かといって強力な異能者の伝手があるわけでもない。
「……」
額を抑え、思考に影が差し始める。今は何とか生還できたが、今後を考えると八方塞がりな事態になる確立は濃厚だ。
次に全面対決などしようものなら今度こそ全滅しかねない。
「……それでも、やれることはやっときますか」
ネットで実践型格闘技について、一通り調べるだけでも少しは違ってくる筈だ。他には基礎体力向上トレーニング、能力を何度も限界まで使うなど、視野を広げれば意外とやれることは多い。
(けど、その前に……)
まずやるべきことは、狼谷の話に耳を傾けることだろう。
>>665
狼谷
「お前はまだこの組織に入って1ヶ月ほどだったな?
短い間だったが……色々と大変な事もあったと思うし、これからも幾つもの困難や苦難も訪れるだろうな……」
firstは裏社会の組織であり、裏の世界からも表の世界ででも敵が多い。
組織に入る前も、入った後も、そしてこの先も八咫烏を始めとした数多くの敵が立ちはだかる事になってしまうと言うことを告げる。
狼谷
「だが……剱鴉と言う化物を前にしても……諦めたり悲観すること無く最後まで勝機を探り続けることが出来たお前なら……負けること無く進んでいけると俺は思った……」
呼吸を整え、少しでも長く話すことが出来るように自分の左足の弾傷に微弱ながらも大気圧をかけて出血を遅らせながら言葉を紡いで行く。
狼谷が剱鴉に最期の足掻きを出来たのも、今こうして遺言を残すことが出来るのも、彼の助力の賜物だからだろう、一番始めに言葉を伝えていく……
剱鴉と言う、圧倒的な実力を持った敵に対しても屈すること無く挑み続け、勝機を諦めなかったその度胸を、勇姿を狼谷は見ており、それを高く評価している。
狼谷
「うちのボスはまだまだ若い……俺の代わりに支えてやってくれないか……?」
もう左足の間隔は無い。
全身の痛覚が無い…
神経が死滅し始めているのだろう…
幸いにもまだ意識が朦朧とするような事は無いが、それも時間の問題だ。一度意識を失えばもう目覚めることはない…
中川さえ良ければ、桜空の事を支えてやってくれないかと聞いてみる。
桜空「・・・・・」
(桜空は、認めたくなかった・・・・・
狼谷と一番長い付き合いだからか、桜空自身も心のどこかでわかっていた、狼谷はもう助からないということを・・・・・
だが、薫先生の死という前例があることから、大切な人の死というものを桜空自身がとうしても受け入れたくない、現実逃避をさせようとしていた・・・・・
だが、ここまで来て今改めて思い知らされる、そこにある確かな迫り来る死の気配・・・・・
あぁ、そうか・・・・・またか、と桜空の思考は停止する・・・・・
結局、守る側の立場になっても、以前よりも強くなっても、守れない者は守れない、現実とは非情だ、だが何よりも悪いのは、守れなかった自分自身の無力さだと・・・・・
桜空の顔に影がかかる・・・・・)
>>664、665、666
>>667
狼谷
「ははは……何を辛気臭い顔をしてんだよ……?
お前は最善を尽くした、寧ろよく四人もあの場から生存出来たと言ってもいいだろうな……お前は悪くない。」
死の間際にはその者の本性が現れるものであり、その多くは生への執着から醜いものになる事が多いのだが、狼谷は桜空を責めること無く、これまで見たこともない……いや、狼谷自身もした事の無い穏やかな笑みをしながら、恨み言は一切言わずにこの結果は最善のものだった事を言う。
狼谷
「お前はもっと強くなれる。
誰も理不尽な悪に踏みにじられないような世界を…
俺みたいな半端者には出来ない理想を…
お前なら叶えられると俺は信じている…!
だからこそ、こうしてお前に安心して託すことが出来る。」
狼谷はfirstの理念である不殺の信念を認め、桜空の想い描く理想を肯定し、自分の想いを託すことが出来ると言う……
自分はここで命を落とす。
だが、自分のような半端者では叶えることの出来なかった理想を桜空であれば安心して託す事が出来ると言う。
桜空「・・・・・俺の最初で最後のわがままだ、死なないでくれ・・・・・」
(自分の往生際の悪さが嫌になる・・・・・
狼谷はもう助からない、そんなのはわかっている、だが、桜空は裏社会の世界で生きるようになっても、誰かの死を受け入れられるほどに精神面は強くなかった・・・・・
桜空は、最初で最後のわがままとして、生きてくれと告げる・・・・・
桜空の表情は無表情だった、どんな感情を持てばいいのかすらもわからないほどに、悲しみが勝ってしまうと人間は表情が無になるのか・・・・・
だが、同時に目からは涙が流れていた・・・・・
死の間際に、わがまままで言って狼谷を困らせる自分が嫌になってくる・・・・・)
>>668
>>669
狼谷
「ははは……それは難しい願いだな……」
狼谷は桜空に自分の遺志を託した。
狼谷は徐々に意識が朦朧として来ており、言葉を話すことも難しくなっている中、何とか言葉を紡いで行く……
狼谷
「紀……お前とももう少し話してみたかったが……
お前は昔の俺に似ている…お前は俺みたいな半端者にはなるなよ……?」
狼谷は視線を紀に向けると、あまり多くを語る時間は残されていないとわかっているかるか、昔の自分と相手が似ていると言うことの続きなのか、自分のように正義にも悪にもなれなかった半端者にはなるなよとだけ伝える。
紀「・・・・・半端者、ですか・・・・・天地がひっくり返ろうと、私達は悪人です、ただ、あの黒服達のやり方が気に入らない、それだけの話です・・・・・」
(狼谷は半端者と言うが、狼谷も含めて自分達は天地がひっくり返ろうと悪人の集まりであり、腐っても正義にはなれない、八咫烏のやり方が気に入らないだけであり、結局は悪人なのだ・・・・・
「私に言わせれば、貴方はどちらかと言えば悪人ですよ、この組織にいて悪人じゃない人間なんていません・・・・・それに、逝く時まで一人ですか、どこまでも一匹狼ですね貴方は・・・・・」
と告げる・・・・・)
>>670
>>671
狼谷
「そうか?まともな人生だったとは言えないが……
俺は幸せ者だ……信じられる奴らに……自分の意思を託して……逝けるんだからな……」
遂に意識が朦朧として来たのか、狼谷は一人で逝くその姿から一匹狼だと形容されるものの、自分は幸せ者だと応える。
その声はとても弱々しおものではあったものの、決して嘘や偽りの無い、心からの安心をしている事が感じられる……
狼谷
「俺は……頼んだぜ?」
最期に桜空に優しく微笑みながら、後は頼んだとだけ言うと狼谷は出血の影響で意識を失い、そのまま目が覚めること無く衰弱死する……
険しく深い谷底を生きる孤独な狼であった彼は、太陽を求めて地上を進み、仲間を助け、助けらた結果、信じられる仲間に囲まれて命を落とした……
【狼谷陽助 死亡】
紀「・・・・・まったく・・・・・」
桜空「・・・・・」
(こんな時には、泣けばいいのか、叫べばいいのか・・・・・桜空にはわからない・・・・・
昔、薫先生が命を落とした時はまだまだ子供だったということもあり、ただただ悲しむだけだったが、こうして組織のリーダーとなり、守側の立場になっても守れなかった・・・・・
ここまでしても守れないとなれば、もうどうすればいいのかわからない・・・・・
桜空は、眠るようにして逝った狼谷を抱え上げると、硬く冷たい床ではなく、ベッドに寝かす・・・・・
桜空の表情は、人形のように、どこまでも無だった・・・・・)
_________
【某所・反社会的勢力拠点にて_____】
ボス「ひっ・・・!ひぃぃいいいいいいいっ!!!!!たっ・・・・・助けてくれっ・・・・・!頼む・・・・・!!!!!」
悠矢「いやいや、どうしてもアンタら潰さないといかんのよ、というわけで、さいなら♪」
ボス「ま、待っ・・・・・!」
ビチャッ・・・・・
ボス「・・・・・」
悠矢「さーてと、氷華ちゃんに知らせますかねぇ・・・・・」
(氷華に頼まれ、反社会的勢力の拠点を潰しに行っていた悠矢は、任務が完了した為スマホで氷華に任務終了の一報を知らせる為に、電話をかけ始める・・・・・
とんでもない収穫もあったことから、きっと喜んでもらえるだろう・・・・・)
【 ー 回想 ー 】
夕渚「・・・・・」
(前々から体は弱かったが、とうとう入院してしまったことで自分の今後が心配になり、表情には出さないものの、かなり精神的に夕渚は追い詰められていた・・・・・
まだ高校生、本当なら今頃、友人達と一緒に楽しく高校生活を、青春を謳歌していた頃だろうと思うと、泣きそうになる・・・・・)
>>666
「そいつぁ買いかぶりってもんよ、旦那」
双眼を閉じ、柔らかに彼の言葉を否定する。
「けど、そう言われて悪い気はしねぇな……OK、後は任せてくれ」
だからといって、他に適任がいるかと言われれば疑問が残る。紀は組織への忠誠心などが自分よりも欠けているので、消去法的にこうなったのだろう。
これからあの直情一本気リーダーの尻拭いをやらされると思うと、気が滅入ってくる。
(けれども……何だろうな)
不思議と、それを投げ出す気にはなれなかった。
「じゃあな。地獄(あっち)でまた会おうぜ」
それだけ言い残すと、踵を返しその場を後にした。
一人の漢を見送るのにそれ以上の言葉は要らない。きらびやかな虚飾も必要ない。
ただひとつ、何があろうとも曲がらぬ意思(たましい)を示せばよいのだ。
>>675
氷華
「随分と暗い顔をしているわね?
私で良かったから愚痴を聞くよ。」
夜になり、静寂と沈黙、無機質な機械音のみが鳴る夕渚の病室にて、病室の窓が開き、月明かりに照らされた氷華が入って来る。
入って直ぐに夕渚の顔を見てその暗く沈んだ様子を察し、何か愚痴があるのなら聞くと言う。
桜空「・・・・・」
(中川の言葉を聞き、心の中で思う・・・・・
そうか、自分達は悪人だ、もし死後の世界というのがあるならば、死後は地獄に堕ちる・・・・・
自分が死後地獄に堕ちるとしても桜空は今までの人生、地獄を見てきたからか今更地獄に対する恐怖なんて薄れている、本当の恐怖というのは、失うこと・・・・・
願わくば、狼谷には天国で安らかに眠ってもらいたい、そう思っていた・・・・・)
>>676
夕渚「・・・!氷華・・・・・」
(消灯時間になり、一人で気持ちが沈んでいた時、月明かりと共に姿を現した氷華に驚くも、夕渚も珍しく精神的に追い込まれていたのか、いつものように常に笑顔で接する夕渚とは違い、疲れたような表情で喋り始める・・・・・
「・・・・・私、とうとう入院しちゃった・・・・・なんか・・・・・ちょっと怖くてさ・・・・・これからのこととか・・・・・」)
>>677
>>678
氷華
「………そう。
此処では退屈でしょう……私は何かを買ってあげる事は出来ないけれど、話し相手ぐらいにはなれる筈よ。」
夕渚が入院する事になったと聞くと、氷華は窓の縁に座りながら、数秒の間だけ自分の顎に左手を当てて何かを推測するようにして考える。
そして、口を開くと、本来ならば何か物を購入して見舞品としてあげたいところなのだが、自分の立場上、購入履歴から足が着くことを警戒して見舞品の一つもあげられない事に歯痒さを覚える。
見舞品の代わりとして、自分が話し相手になる事で少しでも退屈を紛らわせようとする……
夕渚「氷華・・・・・」
(相手のどこまでも純粋な優しさが、身に染みて伝わる・・・・・
そして、夕渚は口を開く・・・・・
「・・・・・私ね、どうしても思っちゃうんだ・・・・・もしかしたら、自分がここで死んじゃうんじゃないかって・・・・・考えるとすっごく怖いけど、どうしても考えちゃうんだ・・・・・でも、もし死んじゃったとして、本当に死後の世界が、天国とか地獄とかっていうのが本当にあるなら、私はやりたいことがあるんだ・・・・・」
と言うと、氷華にも今まで見せていなかった、氷華が弟の写真を入れたペンダントを持つのと同じように、夕渚も写真入りペンダントを持っており、それを開いて中の写真を見せる・・・・・
「可愛いでしょ?私の妹なんだ・・・・・」
夕渚の表情は、静かな微笑みだがどこか哀しくもあり、無理して作っている微笑みなのは明らかだった・・・・・
写真には、幼少期の夕渚と一緒に、夕渚に雰囲気の似た当時の夕渚よりも少し幼いしょうじょがうつっていた・・・・・)
>>679
>>680
氷華
「そう……確かに今は良い状況だとは言えない……
けれど、一度しかない人生を悲観的に見るのは良くないわ、病は気からと言うでしょう?」
神童に選ばれた際に神道学についても叩き込まれた。
アニミズムや祖霊崇拝等の民族信仰についてや、陰陽道についての知識はあったものの、死後の世界について氷華は懐疑的だ。
天国も地獄も存在しない、人は命を死んだら無になるだけ……
だからこそ、今を生きる、悔いが残らないような生き方をすると決めている。
だからこそ、氷華は少しでも生きる活力が沸くように、悲観的に現状を見るのではなく、多少は楽観視してもいいと言う。
氷華
「ええ、貴方に似て可愛いわ。」
彼女の持つペンダントを見て、自分が昔、弟に誕生日プレゼントをあげるために街に行った時の事を思い出しつつ、愁いを帯びた微笑みを見せる夕渚の妹の写真をみて、サラリと夕渚を可愛いと言う。
夕渚「・・・・・照れるじゃん・・・・・」
(貴方に似て可愛いと言われると、想定外の発言だったからか、少し嬉しそうな笑みになるが、やはりどこか哀しみを感じることには変わりない・・・・・
そして、夕渚は語り始める・・・・・
「昔ね・・・・・家に不審者が入ってきて、お父さんとお母さん、私は縛られて妹は目の前で不審者に刃物で首を切り裂かれて命を落としたの・・・・・あの日以来、両親は笑わなくなってしまった・・・・・そして、今度は私・・・・・私が死んだら、両親は悲しむけれど、妹のいる場所に行ける、ずっと一人ぼっちにさせちゃった妹に会える・・・・・そんなことばかり、考えちゃってさ・・・・・」
と、いつもの夕渚からは考えられないほど暗い発言をする・・・・・
今でも脳裏にこびりついている、緋色の鮮血に染められた妹の姿が・・・・・
だが、今までそれを隠し、人と接する時は常に笑顔を絶やさないようにしてきた・・・・・
氷華は、夕渚が初めて本当の自分をさらけ出して話せた相手だったのかもしれない・・・・・)
>>681
>>682
氷華
「………それは辛いわね……
貴方にそんな暗い過去があったなんて驚いたわ……」
自分の見て来た夕渚は天然で人を疑うことがなく、犯罪現場を知りながらも捕らわれている者を身を案じたりと、どこか弱々しい様子であった事から、凄惨な過去があったと思っていたのだが、案の定、今にも引き摺る暗い過去があった事を知り合点がいく。
大抵の者は辛い過去があると復讐に走ったり、異常性を開花させたり、全てを諦観するようになるのだが、おそらく夕渚の場合は後者なのだろう。
氷華
「貴方は悪が憎い?」
本心を見せてくれた夕渚に対してさえ、氷華は自分の過去については一切語らず、悪が憎いのかどうかだけを聞いてみる……
自分は理不尽な悪、惨劇や悲劇をもたらすために力を渇望し、強さを追い求め、八咫烏に入った。そんな自分を突き動かす原動力は、悪に対する憎悪と、無力だったかつての自分への絶望から来ている……
彼女が復讐を望むのであれば八咫烏としての道を教えてもいいのかもしれない…
夕渚「・・・・・私は・・・・・」
(氷華との出会いは路地裏でチンピラ達に絡まれているところを助けられたことだった、そして、ある程度氷華は悪人という存在に対して嫌悪感を示す人物であるということはなんとなくわかってはいたが、いつも自分と話す時の氷華と比べると、今の氷華はどこか別人のようにも思えるほどに、その表情に氷のような冷たさを感じた・・・・・
そして、夕渚は氷華からの問いかけに答えを返す・・・・・
「私は、正直妹の命を奪った人達を許すことは、絶対にできない・・・・・私だけじゃなく、両親だってそう、自分の家族を○されて、犯人を許せるわけがないよ・・・・・」
と、俯いて言う・・・・・
が、少しして顔を上げると
「でもね、私は生き残った・・・・・いや、生き残ってしまった以上、妹が生きれなかった分、憎しみとか恨みとか持って生きてたら、申し訳なくてさ・・・・・妹は・・・・・結は、もし私が復讐鬼になったら、きっと悲しむだろうから・・・・・」
と、自分が復讐に走らない理由を明かす・・・・・)
>>683
>>684
氷華
「………そう……
やっぱり貴方はお人好しだわ。」
家族を失った境遇から、少しだけ親近感を覚えていたものの、世界にも自分にも復讐の矛先を向けずに、復讐の道を進まなかった事に、自分と対称的なものであると感じ取ると、夜空を照らす三日月を眺めながら、下記を呟く……
氷華
「けれど……貴方のような考え方の人こそ、不条理や不合理な悪に苦しまずに住む世界になって欲しいわね……?」
氷華の理想とする世界はお人好しとされる者達が苦しまず、悲しむことも恨むこともなく、平和に平穏に自由に生きていられる楽園のような世界にしたいと言うものだ。
自分はもう後には戻れない……
復讐の歩みを辞めようとしたところで、自分は取り返しのつかない数の命を奪って来てしまった……引き返すにはあまりにも遅すぎる。
だからこそ、この道の先に、理想の世界が誕生したとしても、自分の破滅は免れない……だがそんな破滅の決まった未来であっても自分には歩みを躊躇するような事は許されていない。
全ては……悪のいない世界を作るために。
夕渚「・・・・・氷華は、どこまでも優しいんだね・・・・・」
(そう言うと
「氷華はさ、優し過ぎるから、少し頑張り過ぎちゃうこともあると私は思うんだ・・・・・だから、たまには少し休まないと、駄目だよ・・・・・?」
と告げる・・・・・
氷華の掲げる信念、悪人に苦しめられることのない世界作りというものに、氷華の言うお人好しというものと同じものを感じたからだ・・・・・
自分もお人好しなら、どこまでも優しい氷華もまたお人好し、と言ったところか・・・・・)
______
【現在】
ヒュウウゥゥゥゥ・・・・・
(冷たい夜風が、氷華の髪を撫でるようにして吹き付ける・・・・・
弟の現在、そして脳裏に過ぎる夕渚との会話、色々な感情が入り乱れる今の氷華にとっては、冷たい夜風など何にも感じない程度なのだろう・・・・・)
>>685
>>686
たまには休まないと駄目だと言う言葉を聞いた氷華は嬉しいような、困ったような、複雑な内心を抱きながらも、もう止まることの出来なくなって自分の事については一切言葉にはせず、ただ微笑み返す。
氷華
「………………。」
現在に戻った氷華は多数の海外のマフィア構成員の死体の山の上の座りながら、夕渚と話した時と同じように三日月を見上げている……
だが、あの頃と違い、人の心はもはや残っておらず、正義のために殺戮を繰り返す氷のような心を持った冷酷な存在へと変わり果ててしまった……
殺戮や虐殺の後、体を刺すような冷たい夜風にさえ何も感じておらず、悪に対する憎悪と自身への絶望のみが渦巻く瞳を持って月を眺めていた……
【八咫烏 地下アジト】
剱鴉
「それで?
何故僕の戦いに水を刺したのか……
理由を説明してもらおうか、ルイン。」
四人がファーストのアジトにまで帰還した後、開け放たれた出入口の先を見ながら、大太刀を納刀し、体に着いた土埃を払いながら、狼谷に致死の凶弾を撃ち込んだ張本人である謎の仮面……"ルイン"に対して声をかける。
ルイン
「嫌だなぁ、その理由についてはだいたい検討が付いているんじゃないですか?それに……貴方はあのまま"四人全員を見逃すつもり"でしたよね?貴方の速度があれば四人をまとめてバラバラに切り刻む事だって出来たでしょうに。」
狼谷の左足を撃ち抜いた時に使ったロングバレル型の拳銃を持ったルインが剱鴉の直ぐ後ろから現れ、説明を求める剱鴉に対し、剱鴉は狼谷の右腕を斬り飛ばしてから、一度も剱鴉の"本来の戦闘スタイル"を見せること無く戦い、その結果見逃した事について指摘していく。
剱鴉
「……それは買い被りすぎだ。僕は最初から全員を斬るつもりだった。」
ルイン
「クフフッ、まあ貴方が何を考えているのかはわかりませんが、次に同じミスをしたら……"今の金鵄様"は貴方を生かしておくでしょうかね?」
剱鴉
「……………。」
今の氷華は剱鴉を相棒として認め、共に幾度もの死線を潜り抜けて来た頃とはまるで別人のようになっていた事を思い、剱鴉は何も言葉を返すこと無く、一度もルインの方へ振り返ることもなく、アジトの出口から外に出ては何処かへ向かって歩き去って行く………
ブーッ、ブーッ・・・・・
(三日月を見上げる氷華のスマホから、バイブ音が鳴る・・・・・
相手は悠矢であり、恐らく任務完了の知らせだと思われるが、何やら写真付きメールのようであり、添付された写真に写っていたのは、極秘と書かれた謎のリストのような物であり、メールの文章は「氷華ちゃん、任務完了だ、同時にちょっと真面目な話があるから、合流できる?」となっていた・・・・・)
>>687
>>689
氷華
「………確認した、合流についても私は構わないわ。」
氷華はスマホの振動から着信が来たことを理解すると、コートの内側からスマホを取り出し、慣れた手付きでパスワードを解除し、その内容とリストの帳簿を確認すると、合流しても構わないと言葉短く返す。
そのリストに記載されている事を確認し、その内容によっては今後の動向も変えなくてはならない程の重要なものである事から、彼の言う真面目な話よりも、そのリストの真偽、本物かどうかの確認や、その内容にある"黒い貴族"について気になっている。
「OK、それじゃあ、いつもの倉庫裏で」
(任務が完了した際、収穫があった時は人目につかない場所で得た物についての大まかな話し合いが行われる・・・・・
悠矢はいつものように、人目のつかない廃墟の近くにある寂れた倉庫の裏で待ち合わせしようとメールを送る・・・・・
悠矢が真面目な話があると言うことは、よほどのことだとも思えるが、今の氷華からすればさほどのことでもないだろう・・・・・)
>>690
>>691
氷華
「……わかったわ。」
短く返答すると、通話を切り、通話履歴を確認し、このスマホをによって電話を使用した回数が10回未満である事を確認すると、再びコートの内側に入れて倉庫に向かって移動するべく屍の山を降りて行く。
そして、地上に降り立つと、積み上げられた屍の山と、星一つ見えない夜空を照らす三日月を背にし、軽く指を鳴らして屍の山の全てを一瞬にして凍結させ、そのまま砕け散らせる……
砕け散った氷がまるで雪のように綺麗に月の光を反射しながら辺りに降り注ぐという幻想的な光景ではあるものの、それを実行した氷華の瞳には底無しの憎悪と厭悪が渦巻いている……
夜空に浮かぶ三日月は、いつの時代でも等しくその美しさを保ち続け、人々を魅了させる・・・・・
もしこの砕け散りゆく結晶が、死体などではなく純粋に氷が散る幻想的や光景だったら、もし過去のあの惨劇がなかったとしたら、氷華と桜空は今も隣同士で笑い合っていたのだろうか・・・・・
【倉庫裏にて・・・・・_____】
悠矢「おいーっす氷華ちゃん、これが、今回の収穫・・・・・一通り俺も目を通したけど、俺自分のことを棚に上げて他人をやばいとか言えるほど常識人じゃあないけど、なかなかにやばいよ・・・・・」
(そう言って、メールに添付した写真に写っていたリスト、大体小説と同じくらいのページ数であり、五冊分ほどある・・・・・
どれも表紙に、繋がっていたであろう有名な企業名、団体名、果ては孤児院や政治家など、人物や場所を問わず様々な黒い繋がりがあったことを連想させる・・・・・)
悠矢「今回潰した組織の奴らに片っ端からこれについて情報を聞き出そうとしたけど、どいつもこいつもこれを管理するようにとしか言われてなかったみたいでさ、悪いけどこれの大本についてまではわからなかったよ・・・・・」
>>692
>>693
氷華
「……そう、どうやら……私の読みは合っていたようね?」
氷華はリストを見て、自分の考えは間違っていなかった事を確信し、緋染の言うように、リストを所持していた東北の暴力団もリストの大元については知れないと聞くと「それはそうよ、彼らはこのリストの大元の使い走り過ぎないのだから……」と応える。
現世を贖罪の場……地獄に変えると言う自分の考えが正しいものである事を確信し、リストにある全ての有力者達を殲滅するべく、リストを渡すようにと右手を緋染に向けて差し出す。
悠矢「へぇー、大元についての大体のことは知ってるんだ」
(氷華の言葉から察するに、氷華は恐らくこのリストに関する大元について何かしらを知っているのだろうと思いながら、氷華にすべてのリストを渡す・・・・・
氷華にリストを渡すと「それとさ、実はもう一つあるんだよねぇ・・・・・俺は一ページ見ただけで吐き気がしちゃって見るのやめたけど・・・・・」と言い、もう一冊、表紙には何も書かれていない謎のリストを取り出す・・・・・
「奴ら、とんでもねぇリストを持ってやがった、どんな方法でやってるのかは知らないけど、死体を利用して別の人間に作り上げることができるらしい、記憶も、性別も、姿形も、まるで別人に・・・・・まぁ、こいつらが使い走りなら、やってるのはその大元ってことになるとは思うけど・・・・・」
と、にわかには信じ難いものの、様々な能力を持つ者がいる現代では、死者を蘇らせるのではなく、死体を元にして別の人間を作り上げる、ということも成せる能力者がいるのだろう・・・・・
悠矢はそのリストも氷華に渡す・・・・・)
>>694
>>659
氷華
「奴ら……"黒の貴族達"ならそれが出来るだけの科学技術も資金も設備も幾らでも揃えられるでしょうからね……驚きは無い。」
全ての根源と言える"黒の貴族達"について少し触れる。
生と死を弄び、神の領域まで冒すような技術力を奴らが持っている事を伝える。
おそらく、このリストを所持していた暴力団はその立場上、足を洗おうとした組員やホームレス、多重債務者に破産者などを殺害し、その死体をリストのある企業や組織に回しつつ、それぞれの組織や企業が表立っては出来ない汚れ仕事をしていたのだろう。
いずれにせよ、奴らにとっては幾らでも替えの利く駒に過ぎなかったのは確実であり、既に替えの組織も用意されていると思われる……
何が目的で死体から生命の創造を行っているのかは氷華でさえ知らないものの、その目的が果たされる前に自分が全て滅ぼすと決めているため、熟考せずにそう応える。
氷華
「漸く良い成果を上げたわね?
何か望みがあるのなら聞いてあげる。」
彼から最後のリストも受け取ると、これまでに無い成果を上げた緋染に対し、氷華は何か褒美が欲しいかと問いかける。
悠矢「望み・・・・・って言われても、前は氷華ちゃんの持ってるペンダントの中身とか気になってたけど、今はそこまで気になるものでもないし、特に無いかねぇ・・・・・まぁ、強いて言うなら・・・・・」
ビュオッ・・・・・!
バサッ・・・・・
悠矢「さっむ・・・・・早いとこ帰ろうぜ、氷華ちゃん・・・・・」
(何かを言おうとした瞬間、そこそこ吹いていた夜風が強く吹く、と言っても、何者かの攻撃でも何でもなく、ただ風が一瞬強く吹いただけであり、悠矢は冷たい風に寒がり早く帰ろうと呟く、これだけなら特に気にすることは何もない・・・・・
・・・・・が、問題は、風に吹かれたことで地面に落ちたリスト・・・・・たまたまページが開いた状態で地面に落ちているのだが、そこには元となった死体の人物名と生前の写真、、死体から新たに生まれ変わった人物名と、今現在の写真が貼られている・・・・・
見たことも聞いたこともない名前と写真が連なる中、途中にこのような表記があった・・・・・
「佐藤 結」
過去に、夕渚が話していた妹と同名の別の人物、ではなく、名前の横には夕渚が氷華に見せた幼少期の夕渚が写っている写真に一緒に写っていた少女と同一人物と思われる瓜二つな少女の写真が、死体の状態で貼られている・・・・・
夕渚の言っていた通り、本当に鋭利な刃物で首を切り裂かれている証拠として、右の首筋がぱっくりと開き、そこから血が溢れているという、なんとも痛々しく、生々しい写真だ・・・・・
だが、このリストに夕渚の妹の写真が載っている、ということは、夕渚の妹は、今現在別の人物になって、記憶も、姿も変わって生きている、ということになる・・・・・
果たしてこれは吉報か、それとも悲報か・・・・・)
>>696
氷華
「ええ、そうね。」
自然と開かれたリストのページの対象者の名前と写真に視線が向くものの、今の氷華は驚くことすら無く、何の動揺も見えない。例えここで緋染がペンダントの中身を見せて欲しいと言われても何の躊躇いもなく見せるだろう。
緋染が夜風を浴びて寒がる緋染の言葉を受けると、リストを拾い上げ、そのまま倉庫内に向かって歩き始める。
悠矢「・・・・・氷華ちゃんさぁ・・・・・」
(一緒に歩き始めて少しすると、悠矢は口を開き始める・・・・・
「なんかさ、前と変わったよね」
悠矢と氷華、なんだかんだで一緒に行動する機会も多く、付き合いもそこそこ長いからなのか、悠矢は氷華が文字通り氷のように心が凍てつき始めていることに気づいていた・・・・・
多分氷華本人は何も変わっていないと否定するだろうが、それでも自分は騙されない・・・・・)
>>698
氷華
「そうかしら?」
自分の変化について気付き、変わったと言う緋染に対して氷華は短く一言で応える。その声や様子、雰囲気は何処か冷たいものの、これまでのように緋染に対して避けたり距離を取って様子を見ていると言うものではなく他者への無関心さから来ている。
その冷たさが氷華の冷静さと冷酷さをいっそう引き出しており、緋染の問いかけに対しても特に興味無さそうに応えている事から、これまで以上に人の心を失ったのだと言うことがわかる…
また、その氷華の持つ無関心は他者だけでなく、自分自身にさえ向けられている。
その姿はまるで正義と言う概念が形を成したかのようにすら見えるが、その正義の中に慈悲も慈愛も無くなってしまっている…